(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022824
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】アンカーボルト用固定部材および固定部材セット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20230208BHJP
E01D 22/00 20060101ALN20230208BHJP
E02D 29/045 20060101ALN20230208BHJP
【FI】
E04B1/41 503B
E01D22/00 Z
E02D29/045 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121784
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021127430
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517068704
【氏名又は名称】遠州スプリング有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 彬
(72)【発明者】
【氏名】波田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】牛島 栄
(72)【発明者】
【氏名】信岡 靖久
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊男
(72)【発明者】
【氏名】下村 将之
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 紘介
【テーマコード(参考)】
2D059
2D147
2E125
【Fターム(参考)】
2D059GG39
2D059GG55
2D147HA10
2E125AA42
2E125AA66
2E125AA68
2E125AC13
2E125AE01
2E125AG13
2E125BA14
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA56
2E125EA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】十分な強度でアンカーボルトに装着可能である。
【解決手段】アンカーボルト用固定部材100は、アンカーボルトの周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部を含み、アンカーボルトの外周面を把持する第1把持部11と、周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部を含み、アンカーボルトの外周面を把持する第2把持部12と、所定の配列方向に沿って第1把持部11と第2把持部12との間に位置し、周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部を含み、アンカーボルトの外周面を把持する第3把持部13と、第1把持部11の一端と第3把持部13の一端とを連結する第1連結部21と、第2把持部12の他端と第3把持部13の他端とを連結する第2連結部22と、第1把持部11の他端から、配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部41と、第2把持部12の一端から、基準直線から離れる方向に突出する第2突出部42とを具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の線材からなり、アンカーボルトの外周面に装着される部材であって、
前記アンカーボルトの周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該アンカーボルトの外周面を把持する第1把持部と、
前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第2把持部と、
所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第3把持部と、
前記第1把持部の一端と前記第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、
前記第2把持部の他端と前記第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、
前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、
前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、
前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の一端と同じ側にあり、
前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の他端と同じ側にある
アンカーボルト用固定部材。
【請求項2】
前記第1把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第1把持部とが交差する部分に前記第1把持部の一端よりも近い位置にあり、
前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線と当該第2把持部とが交差する部分に前記第2把持部の他端よりも近い位置にある
請求項1のアンカーボルト用固定部材。
【請求項3】
前記第1突出部と前記第2突出部とは、直線状である
請求項1のアンカーボルト用固定部材。
【請求項4】
前記基準直線に平行な方向からみたときに、
前記第1突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第1把持部の他端から前記第3把持部側に傾斜し、
前記第2突出部は、0°より大きく60°以下の角度で前記第2把持部の一端から前記第3把持部とは反対側に傾斜する
請求項3のアンカーボルト用固定部材。
【請求項5】
前記第1突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜し、
前記第2突出部は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線に対して0°より大きく90°以下の角度で傾斜する
請求項3のアンカーボルト用固定部材。
【請求項6】
アンカーボルトに装着された状態において、前記配列方向からみたときに、前記第1突出部と前記第2突出部とは平行な方向に突出する
請求項5のアンカーボルト用固定部材。
【請求項7】
前記第3湾曲部は、円弧状であって、
前記配列方向からみたときに、前記第3湾曲部の内側で確定される円の中心と前記第1連結部の先端とを通る直線と、前記中心と前記2連結部の先端とを通る直線とがなす角度は、30°以上180°以下である
請求項1のアンカーボルト用固定部材。
【請求項8】
前記第1把持部と前記第3把持部との間隔は、前記基準直線と前記配列方向に平行な直線とを含む平面から前記第1突出部側に向かって連続的に小さくなり、
前記第2把持部と前記第3把持部との間隔は、前記平面から前記第2突出部側に向かって連続的に小さくなる
請求項1のアンカーボルト用固定部材。
【請求項9】
一連の線材からなり、アンカーボルトの外周面に装着される部材であって、
前記アンカーボルトの周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該アンカーボルトの外周面を把持する第1把持部と、
前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第2把持部と、
所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する(2N-1:Nは2以上の整数)個の第3把持部と、
前記第1把持部の一端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第1把持部に隣接する第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、
前記第2把持部の他端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第2把持部に隣接する第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、
相互に隣接する2個の第3把持部の一端同士を連結する(N-1)個の第3連結部と、 相互に隣接する2個の第3把持部の他端同士を連結する(N-1)個の第4連結部と、 前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、
前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、
前記第3連結部と前記第4連結部とは、前記配列方向に沿って交互に位置し、
前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の一端と同じ側にあり、
前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の他端と同じ側にある
アンカーボルト用固定部材。
【請求項10】
N個の貫通孔が形成された板状の保持部材と、
請求項1に記載のN個のアンカーボルト用固定部材とを具備し、
前記N個の貫通孔のそれぞれに前記N個のアンカーボルト用固定部材の全長方向における前記第1把持部の他端から前記第2把持部の一端までの間の部分を嵌め込むことで、前記N個のアンカーボルト用固定部材が前記保持部材に保持されている
固定部材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトを固定するための固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、トンネル、ダム、ビルおよび工場等の各種の建築構造物において、コンクリート躯体には他の部材を連結するためにアンカーボルトが使用される。例えば、アンカーボルトは、耐震補強工事において落下防止ブラケットや耐震ダンパー等をコンクリート躯体に取り付ける場合や、機械や配管設備等をコンクリート躯体に取り付ける場合に使用される。これらの場合には、まず、コンクリート躯体に穿孔を形成して、当該穿孔内にアンカーボルトを固定する施工が行われる。
【0003】
アンカーボルトを固定する施工には、例えば、孔内に挿入されたアンカーボルトの底部を機械的に拡張させて孔壁に食い込ませる金属アンカー工法が提案されている。しかし、既設の建築構造物に対する補修工事や補強工事においては、コンクリートの経年劣化により十分なコンクリート強度が期待できない場合が多い。したがって、金属アンカー工法では、アンカーボルトを十分な強度で固定できない可能性がある。
【0004】
そこで、コンクリート躯体の穿孔内にアンカーボルトを接着剤により固定する接着工法も提案されている。具体的には、接着工法では、コンクリートに穿孔を形成して、穿孔内に接着剤(例えば、エポキシ系、アクリル系およびポリエステル系等の高分子系接着剤またはセメント系の無機系接着剤)を充填した後に、アンカーボルトを挿入する。そして、接着剤を硬化させることで、コンクリート躯体にアンカーボルトを固定する。なお、接着工法において、一般的にはアンカーボルトの直径の7~15倍程度の深さで穿孔が形成されるため、アンカーボルトの固定力が十分に確保される。
【0005】
ここで、接着工法では、アンカーボルトの直径よりも2.0~10.0倍程度のクリアランスを確保して穿孔を形成する。しかし、このクリアランスが原因でアンカーボルトが適切に固定されない場合がある。例えば、水平方向に穿孔を形成する際(横向き施工の際)には、接着剤の硬化前に自重によってアンカーボルトが下方に移動して孔壁面に接触することで、当該アンカーボルトの全周に接着剤が充填されず、アンカーボルトと接着剤との接着面積が十分に確保できない場合がある。同様に、垂直方向に穿孔を形成する際(上向き施工の際)においても、接着剤が硬化する前に自重によって下方に移動することで、アンカーボルトと接着剤との接着面積が十分に確保できない場合がある。そして、接着面積が十分に確保できないと、アンカーボルトが十分な強度で固定されない。以上の通り、接着剤が硬化する前にアンカーボルトが下方に移動することでアンカーボルトが適切に固定されないという問題が発生する。
【0006】
そこで、接着剤の硬化前にアンカーボルトが移動してしまうことを防ぐための各種の技術が提案されている。例えば、横向き施工の場合には、穿孔内の下側にアンカーボルトを保持するためのキャンバーを押し込む技術がある。上向き施工の場合には、接着剤の硬化前にアンカーボルトを線材等でコンクリート躯体に仮保持させることで、アンカーボルトが自重により下方に移動することを防止する技術がある。しかし、これらの技術は、非常に手間がかかり、効率的でないという問題があった。
【0007】
そこで、接着剤の硬化前における移動を防ぐための固定部材をアンカーボルトに装着させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、アンカーボルトの周方向を把持する1個の固定部と、当該固定部における双方の端部から突出する2個の腕部とを具備するアンカーボルト用固定部材が開示されている。アンカーボルト用固体部材を装着した状態でアンカーボルトが穿孔内に挿入される。穿孔内に挿入されたアンカーボルトは、アンカーボルト用固定部材における2つの腕部の先端が孔壁に食い込むことで穿孔内に強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のアンカーボルト用固定部材は、アンカーボルトに対する装着は容易であるものの、アンカーボルトに十分な強度で装着するという観点からは改善の余地がある。アンカーボルトに十分な強度で装着できないと、穿孔内に挿入する際にアンカーボルト用固定部材の位置がずれるという問題や、アンカーボルト用固定部材が外れるという問題がある。これらの問題は、特に、異形棒鋼やねじ節鉄筋などの異形鉄筋の場合に顕著である。以上の事情を考慮して、本発明では、十分な強度でアンカーボルトに装着可能なアンカーボルト用固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアンカーボルト用固定部材は、一連の線材からなり、アンカーボルトの外周面に装着される部材であって、前記アンカーボルトの周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該アンカーボルトの外周面を把持する第1把持部と、前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第2把持部と、所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第3把持部と、前記第1把持部の一端と前記第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、前記第2把持部の他端と前記第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の一端と同じ側にあり、前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記第3把持部の他端と同じ側にある。
【0011】
本発明に係るアンカーボルト用固定部材は、一連の線材からなり、アンカーボルトの外周面に装着される部材であって、前記アンカーボルトの周方向に沿うように湾曲する第1湾曲部と一端および他端とを含み、当該アンカーボルトの外周面を把持する第1把持部と、前記周方向に沿うように湾曲する第2湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する第2把持部と、所定の配列方向に沿って前記第1把持部と前記第2把持部との間に位置し、前記周方向に沿うように湾曲する第3湾曲部と一端および他端とを含み、前記アンカーボルトの外周面を把持する(2N-1:Nは2以上の整数)個の第3把持部と、前記第1把持部の一端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第1把持部に隣接する第3把持部の一端とを連結する第1連結部と、前記第2把持部の他端と、前記(2N-1)個の第3把持部のうち当該第2把持部に隣接する第3把持部の他端とを連結する第2連結部と、相互に隣接する2個の第3把持部の一端同士を連結する(N-1)個の第3連結部と、相互に隣接する2個の第3把持部の他端同士を連結する(N-1)個の第4連結部と、前記第1把持部の他端から、前記第3把持部の一端と他端とを通る線分の中点を通り、前記配列方向に直交する基準直線から離れる方向に突出する第1突出部と、前記第2把持部の一端から、前記基準直線から離れる方向に突出する第2突出部とを具備し、前記第3連結部と前記第4連結部とは、前記配列方向に沿って交互に位置し、前記第1把持部の一端および前記第2把持部の一端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の一端と同じ側にあり、前記第1把持部の他端および前記第2把持部の他端は、前記配列方向からみたときに、前記基準直線を中心として、前記各第3把持部の他端と同じ側にある。
【0012】
本発明に係る固定部材セットは、N個の貫通孔が形成された板状の保持部材と、N個のアンカーボルト用固定部材とを具備し、前記N個の貫通孔のそれぞれに前記N個のアンカーボルト用固定部材の全長方向における前記第1把持部の他端から前記第2把持部の一端までの間の部分を嵌め込むことで、前記N個のアンカーボルト用固定部材が前記保持部材に保持されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアンカーボルト用固定部材によれば、十分な強度でアンカーボルトに装着可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るアンカーボルト用固定部材が装着された状態のアンカーボルトの正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る固定部材が装着された状態のアンカーボルトの背面図である。
【
図10】固定部材が装着された状態のアンカーボルトの写真である。
【
図11】固定部材が装着された状態のアンカーボルトを打設する工程の説明図(打設前)である。
【
図12】固定部材が装着された状態のアンカーボルトを打設する工程の説明図(打設後)である。
【
図13】第2実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
【
図14】第2実施形態に係るアンカーボルト用固定部材が装着された状態のアンカーボルトの正面図である。
【
図15】第3実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
【
図16】第3実施形態に係るアンカーボルト用固定部材が装着された状態のアンカーボルトの写真である。
【
図17】第4実施形態に係る固定部材をZ方向からみたときの図である。
【
図18】第5実施形態に係る固定部材セットの正面図である。
【
図19】第5実施形態に係る固定部材セットを例示する背面図である。
【
図20】第5実施形態に係る固定部材セットを例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るアンカーボルト用固定部材(以下「固定部材100」と表記する)は、コンクリート躯体に形成された穿孔内においてアンカーボルトBを固定するために使用される部材である。
【0016】
図1および
図2には、固定部材100が装着された状態のアンカーボルトBの正面図および背面図である。
図1および
図2に例示される通り、固定部材100は、アンカーボルトBの外周面に装着される構造体である。なお、
図1では、外周面に凸部(節)が設けられた異形型のアンカーボルトB(異形棒鋼)を例示する。固定部材100が装着されたアンカーボルトBは、コンクリート部材に形成された穿孔内に接着剤を充填した後に挿入される。
【0017】
以下の説明では、アンカーボルトBの軸方向に平行な方向をX方向と表記し、X方向に垂直な方向をY方向と表記し、X方向およびY方向の双方に垂直な方向をZ方向と表記する。
【0018】
図3は固定部材100の斜視図であり、
図4は固定部材100をX方向からみたときの図であり、
図5は固定部材100をZ方向からみたときの図であり、
図6は固定部材100をY方向からみたときの図である。
【0019】
図3から
図6に例示される通り、固定部材100は、一連の線材(線状の金属材料)からなる部材である。第1実施形態の固定部材100は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22と第1突出部41と第2突出部42とを具備する。固定部材100を構成する各要素(11,12,13,21,22,41,42)は、切れ目なく連続的に形成される。
【0020】
第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、アンカーボルトBの外周面を把持する部分である。第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、X方向に沿って配列される。第1把持部11と第2把持部12との間に第3把持部13が位置する。すなわち、X方向は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが配列する方向(「配列方向」の例示)であるとも換言できる。
【0021】
なお、以下の説明では、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とを区別する必要がない場合には、単に「把持部」と表記する。
【0022】
各把持部(11,12,13)は、アンカーボルトBの外周面に巻回された状態で強固に把持することが可能なように形成される。第1実施形態の各把持部は、全体としてアンカーボルトBの周方向に沿うような形状に形成される。各把持部は、相互に所定の間隔をあけてX方向に沿って配置される。以下、各把持部について詳述する。
【0023】
図7は、
図4の固定部材100のうち第3把持部13に着目した図である。
図5から
図7に例示される通り、第1実施形態の第3把持部13は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)において延在する部分である。
【0024】
図7に例示される通り、第1実施形態の第3把持部13は、第3湾曲部131と、第1直線部132と、第2直線部133と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Tc1および第2端(「他端」の例示)Tc2とを含む。第1端Tc1と第2端Tc2とは、同一平面内において周方向に沿うような形状に形成された部分(すなわち第3把持部13)における相互に反対側に位置する端部とも換言できる。
【0025】
第3湾曲部131は、第3把持部13のうちアンカーボルトBの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第3湾曲部131は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第3湾曲部131の内側で確定される仮想的な円S3の直径は、アンカーボルトBの直径を下回る構成が好適である。第3湾曲部131の長さ(弧長)は、円S3の半円の周の長さを上回る構成が好適である。
【0026】
第1実施形態では、X方向からみたときに、円S3の中心Pを通り、Z方向に平行な直線L3について対称になるような形状に第3把持部13が形成される。
図7には、第3把持部13の第1端Tc1と第2端Tc2とを通る線分Jの中点を通り、X方向に直交する直線(以下「基準直線」という)L0を図示する。第1実施形態の基準直線L0は、直線L3と一致する場合を例示するが、第3把持部13の形状によっては当該直線L3と一致しない場合もある。
【0027】
図7に例示される通り、第1直線部132と第2直線部133とは、第3湾曲部131を挟んで相互に反対側に位置し、第3湾曲部131から連続的に形成される直線状の部分である。
図7の例示では、第3湾曲部131におけるY方向の負側の端部から第1直線部132が形成され、第3湾曲部131におけるY方向の正側の端部から第2直線部133が形成される。第1実施形態では、基準直線L0に向かって傾斜するように第1直線部132と第2直線部133とが形成される。第1直線部132と第2直線部133とは、同じ長さに形成される。ただし、第1直線部132と第2直線部133との長さを相違させてもよい。
【0028】
第1実施形態では、第1直線部132における第3湾曲部131とは反対側の端部が第1端Tc1であり、第2直線部133における第3湾曲部131とは反対側の端部が第2端Tc2である。第1端Tc1と第2端Tc2とは所定の間隔で離間する。
【0029】
第1端Tc1と第2端Tc2とは、円S3の円周のうち最もZ方向の正側に位置する部分(円S3と基準直線L0とにおけるZ方向の正側の交点)よりもZ方向の正側に位置する。第1実施形態の第1端Tc1と第2端Tc2とは、基準直線L0を挟んで対称となる位置にある。
【0030】
図8は、
図4の固定部材100のうち第1把持部11に着目した図である。
図8では、基準直線L0についても図示する。
図5,
図6および
図8に例示される通り、第1実施形態の第1把持部11は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)において延在する部分である。
【0031】
図8に例示される通り、第1実施形態の第1把持部11は、第1湾曲部111と直線部112と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Ta1および第2端(「他端」の例示)Ta2とを含む。第1端Ta1と第2端Ta2とは、同一平面内において周方向に沿うような形状に形成された部分(すなわち第1把持部11)における相互に反対側に位置する端部とも換言できる。
【0032】
第1湾曲部111は、第1把持部11のうちアンカーボルトBの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第1湾曲部111は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第1湾曲部111の内側で確定される仮想的な円S1の直径は、アンカーボルトBの直径を下回る構成が好適である。第1湾曲部111の長さ(弧長)は、円S1の半円の周の長さを上回る構成が好適である。なお、円S1の直径は、円S3の直径と同等である。
【0033】
直線部112は、第1湾曲部111における一端(Y方向の負側の端部)側から連続的に形成される直線状の部分である。第1実施形態では、X方向からみたときに、円S1の中心Pを通り、Z方向に平行な直線と、基準直線L0とが一致する場合を例示する。
【0034】
基準直線L0に向かって傾斜するように直線部112が形成される。例えば、直線部112は、X方向からみたときに第3把持部13の第1直線部132と重なるように傾斜する。なお、第1実施形態では、直線部112の長さが第1直線部132の長さと同等である構成を例示する。
【0035】
第1実施形態では、直線部112における第1湾曲部111とは反対側の端部が第1端Ta1であり、第1湾曲部111における直線部112とは反対側の端部が第2端Ta2である。第1端Ta1と第2端Ta2とは、基準直線L0を挟んで相互に反対側に位置する。
【0036】
第1把持部11における第2端Ta2は、X方向からみたときに、基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の一端よりも近い位置にある。
【0037】
図9は、
図4の固定部材100のうち第2把持部12に着目した図である。
図9では、基準直線L0についても図示する。
図5,
図6および
図9に例示される通り、第1実施形態の第2把持部12は、全長にわたり同一平面内(第1実施形態ではY-Z平面に平行な平面内)において延在する部分である。
【0038】
図9に例示される通り、第1実施形態の第2把持部12は、第2湾曲部121と直線部122と、相互に反対側に位置する第1端(「一端」の例示)Tb1および第2端(「他端」の例示)Tb2とを含む。第1端Tb1と第2端Tb2とは、同一平面内において周方向に沿うような形状に形成された部分(すなわち第2把持部12)における相互に反対側に位置する端部とも換言できる。
【0039】
第2湾曲部121は、第2把持部12のうちアンカーボルトBの周方向に沿うように湾曲する部分である。第1実施形態の第2湾曲部121は、円弧状に形成される。X方向からみたときに第2湾曲部121の内側で確定される仮想的な円S2の直径は、アンカーボルトBの直径を下回る構成が好適である。第2湾曲部121の長さ(弧長)は、円S2の半円の周の長さを上回る構成が好適である。なお、円S2の直径は、円S3および円S1の直径と同等である。
【0040】
直線部122は、第2湾曲部121における一端(Y方向の正側の端部)側から連続的に形成される直線状の部分である。第1実施形態では、X方向からみたときに、円S2の中心Pを通り、Z方向に平行な直線と、基準直線L0とが一致する場合を例示する。
【0041】
基準直線L0に向かって傾斜するように直線部112が形成される。例えば、直線部122は、X方向からみたときに第3把持部13の第2直線部133と重なるように傾斜する。なお、第1実施形態では、直線部122の長さが第2直線部133の長さと同等である構成を例示する。第1把持部11と第2把持部12とは左右(X方向の正側および負側)を反転させた関係にあるとも換言できる。
【0042】
第1実施形態では、直線部122における第2湾曲部121とは反対側の端部が第2端Tb2であり、第2湾曲部121における直線部112とは反対側の端部が第1端Tb1である。第1端Tb1と第2端Tb2とは、基準直線L0を挟んで相互に反対側に位置する。第2把持部12の第1端Tb1は、X方向からみたときに、基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある。
【0043】
図3から
図6に例示される通り、第1把持部11および第2把持部12は、典型的には、X方向からみたときに第3把持部13に重なるように設けられる。円S1の中心Pと円S2の中心Pと円S3の中心PとがX方向からみたときに一致するように、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが設けられるとも換言できる。なお、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とは、それぞれがアンカーボルトBの外周面を把持することが可能であれば完全に重なる必要はなく、製造上の誤差の範囲内で位置がずれる場合もある。
【0044】
図7から
図9に例示される通り、X方向からみたときに、第1把持部11の第1端Ta1と第2把持部12の第1端Tb1とは、基準直線L0を中心として、第3把持部13の第1端Tc1と同じ側に位置し、第1把持部11の第2端Ta2と第2把持部12の第2端Tb2とは、基準直線L0を中心として、第3把持部13の第2端Tc2と同じ側に位置する。
【0045】
図5に例示される通り、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、周方向にわたり一定である。同様に、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、周方向にわたり一定である。間隔D1および間隔D2とは、アンカーボルトBの節の幅に応じて設定される。
【0046】
なお、本発明において「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」と記載する場合には、厳密に「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」場合はもちろんのこと、製造上の誤差の範囲内で「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」場合も包含される。
【0047】
図5および
図6に例示される通り、第1連結部21は、第1把持部11の第1端Ta1と第3把持部13の第1端Tc1とを連結する部分である。具体的には、第1連結部21は、X方向(アンカーボルトBの軸方向)に沿って延在する部分である。
【0048】
図6に例示される通り、第1実施形態の第1連結部21は、曲線状に形成される。具体的には、第1連結部21は、Y方向(「配列方向および基準直線に直交する方向」の例示)からみて、第3湾曲部131とは反対側に湾曲するように形成される。
【0049】
図5および
図6に例示される通り、第2連結部22は、第2把持部12の第2端Tb2と第3把持部13の第2端Tc2とを連結する部分である。具体的には、第1連結部21は、X方向(アンカーボルトBの軸方向)に沿って延在する部分である。
【0050】
図6に例示される通り、第1実施形態の第2連結部22は、曲線状に形成される。具体的には、第2連結部22は、Y方向からみて第3湾曲部131とは反対側に湾曲するように形成される。
【0051】
なお、第3把持部13の第1端Tc1は、Y-Z平面に平行な平面内に延在する第3把持部13と、当該平面から交差する方向に延在する第1連結部21との境界部分であるとも換言できる。同様に、第3把持部13の第2端Tc2は、Y-Z平面に平行な平面内に延在する第3把持部13と、当該平面から交差する方向に延在する第2連結部22との境界部分であるとも換言できる。
【0052】
図2に例示される通り、第1連結部21の長さ(X方向における長さ)および第2連結部22の長さ(X方向における長さ)は、例えば、固定部材100をアンカーボルトBに装着した際に、X方向において相互に隣接する2つの節(リブ)の間に配置可能なように設定される。
【0053】
図1および
図2に例示される通り、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22との全体(固定部材100の全長方向において第1把持部11の第2端Ta2から第2把持部12の第1端Tb1までの間の部分)で、アンカーボルトBの外周面に固定部材100を取り付けるための要素として機能する。第1連結部21と第2連結部22との間の空間(開口)からアンカーボルトBを嵌め込むことで、アンカーボルトBに固定部材100が取り付けられる。
【0054】
図1および
図2の第1突出部41および第2突出部42は、アンカーボルトBを穿孔内に挿入した際に穿孔の内壁に接触することで、当該アンカーボルトBを穿孔内で固定するための要素である。
【0055】
図8に例示される通り、第1突出部41は、第1把持部11の第2端Ta2から、基準直線L0から離れる方向に突出する部分である。第1実施形態の第1突出部41は、直線状である。第1突出部41が基準直線L0から離れる方向に突出するとは、X方向からみたときに、角度θ11で傾斜する状態をいう。角度θ11は、基準直線L0と第1突出部41とがなす角度であるとも換言できる。なお、角度θ11は、第1湾曲部111とは反対側において第1突出部41と基準直線L0とがなす角度である。
【0056】
具体的には、角度θ11は、0°より大きく90°以下である。第1実施形態の角度θ11は、例えば10°以上88°以下であり、好適には20°以上85°以下である。
【0057】
図5に例示される通り、Z方向(すなわち基準直線L0に平行な方向)からみたときに、第1実施形態の第1突出部41は、角度θ12で第1把持部11の第2端Ta2から第3把持部13側に傾斜する。角度θ12は、例えば、0°より大きく60°以下であり、好適には20°以上50°以下である。角度θ12を上記の範囲内に設定することで、穿孔内にアンカーボルトBを挿入しやすくなり、かつ、抜けにくくなるという利点がある。
【0058】
なお、角度θ12が0°である状態とは、第1把持部11が存在する平面(Y-Z平面に平行な平面)内に第1突出部41が存在する状態である。すなわち、角度θ12は、第1把持部11が存在する平面と第1突出部41とがなす角度であるとも換言できる。
【0059】
図9に例示される通り、第2突出部42は、第2把持部12の第1端Tb1から、基準直線L0から離れる方向に突出する部分である。第1実施形態の第2突出部42は、直線状である。第2突出部42が基準直線L0から離れる方向に突出するとは、X方向からみたときに、角度θ21で傾斜する状態をいう。角度θ21は、基準直線L0と第2突出部42とがなす角度であるとも換言できる。なお、角度θ21は、第2湾曲部121とは反対側において第2突出部42と基準直線L0とがなす角度である。
【0060】
具体的には、角度θ21は、0°より大きく90°以下である。第1実施形態の角度θ21は、例えば10°以上88°以下であり、好適には20°以上85°以下である。
【0061】
図5に例示される通り、Z方向(すなわち基準直線L0に平行な方向)からみたときに、第2突出部42は、角度θ22で第2把持部12の第1端Tb1から第3把持部13とは反対側に傾斜する。角度θ22は、例えば、0°より大きく60°以下であり、好適には20°以上50°以下である。角度θ22を上記の範囲内に設定することで、穿孔内にアンカーボルトBを挿入しやすくなり、かつ、抜けにくくなるという利点がある。
【0062】
なお、角度θ22が0°である状態とは、第2把持部12が存在する平面(Y-Z平面に平行な平面)内に第2突出部42が存在する状態である。すなわち、角度θ22は、第2把持部12が存在する平面と第2突出部42とがなす角度であるとも換言できる。
【0063】
第1実施形態では、角度θ12と第2角度θ22とが同じである構成を例示するが、相違してもよい。
【0064】
図10は、固定部材100が装着された状態のアンカーボルトBの写真である。
図10(a)は、Z方向からアンカーボルトBを撮像した写真であり、
図10(b)は、アンカーボルトBをX方向から撮像した写真である。
【0065】
図10(b)に例示される通り、アンカーボルトBに装着された状態において、X方向からみたときに、第1突出部41と第2突出部42とが平行な方向に突出するように、角度θ11と角度θ21とを設定する構成が好適である。以上の構成を採用することで、地面に対して垂直方向以外(水平方向や垂直方向から傾斜する方向)沿って形成された穿孔にアンカーボルトBを挿入する場合でも、当該アンカーボルトBを穿孔の中心に配設することが可能になる。
【0066】
第1突出部41および第2突出部42の長さは、アンカーボルトBを穿孔内に挿入した際に、先端が穿孔内に接触可能なように、穿孔の直径に応じて適宜に設定される。例えば、アンカーボルトBの半径と穿孔の半径との差を上回る長さに第1突出部41および第2突出部42が形成する構成が好適である。第1突出部41および第2突出部42の長さは、例えば、円S3(
図7)の直径の0.45~2.30倍である。以上の構成を採用することで、第1突出部41と第2突出部42とが強固に穿孔の内壁に接触することが可能である。
【0067】
図7には、X方向からみたときに、円S3の中心Pと第1連結部21の先端とを通る直線と、円S3の中心Pと第2連結部22の先端とを通る直線とがなす角度θ3が図示されている。第1連結部21の先端とは、X方向からみたときに、第2連結部22に最も近い部分(最もY方向の正側に位置する部分)である。同様に、第2連結部22の先端とは、X方向からみたときに、第1連結部21に最も近い部分(最もY方向の負側に位置する部分)である。
【0068】
角度θ3は、例えば30°以上180°以下であり、好適には45°以上120°以下に設定される。角度θ3を以上の範囲内に設定することで、第1連結部21と第2連結部22との間の空間からアンカーボルトBを嵌め込みやすくなる。
【0069】
以下、第1実施形態に係る固定部材100を装着したアンカーボルトBを用いた接着工法について説明する。
【0070】
図11および
図12は、固定部材100が装着された状態のアンカーボルトBを穿孔H内に打設する工程を説明する説明図である。
図11は、アンカーボルトBを穿孔H内に挿入する前の図で、
図12は、アンカーボルトBを穿孔H内に挿入した後の図である。
図11および
図12では、アンカーボルトBに2個の固定部材100を装着する場合を例示する。なお、アンカーボルトBに装着する固定部材100の個数は任意である。
【0071】
図11に例示される通り、コンクリート躯体Wに形成された穿孔H内に接着剤Qを注入した後に、アンカーボルトBが挿入される。穿孔H内に注入される接着剤Qは、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ系、アクリル系およびポリエステル系等の高分子系有機系樹脂、または、セメント系の無機系接着剤等が用いられる。穿孔Hと、挿入されたアンカーボルトBとの間の空間を埋める量の接着剤Qが穿孔H内に注入される。
【0072】
次に、
図12に例示される通り、接着剤Qが硬化する前に穿孔H内にアンカーボルトBを挿入する。第3把持部13とは反対側に傾斜する第2突出部42が穿孔Hの開口側に位置し、第3把持部13側に傾斜する第1突出部41が穿孔Hの底側に位置するようにアンカーボルトBが穿孔H内に挿入される。また、各固定部材100の第1突出部41と第2突出部42とが穿孔Hの内壁面に接触するようにアンカーボルトBが挿入される。
【0073】
ここで、固定部材100を使用せずにアンカーボルトBを挿入する方法(以下「比較例1」という)では、接着剤が硬化する前の状態ではアンカーボルトBが固定されずに穿孔内で移動してしまう。アンカーボルトBが移動した場合、アンカーボルトBが適切に固定されないという問題が発生する。
【0074】
それに対して、第1実施形態の固定部材100を装着したアンカーボルトBは、固定部材100の第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁面に接触するから、比較例1と比較して、アンカーボルトBが穿孔内で固定される。したがって、アンカーボルトBを穿孔の中心に設置することが可能である。
【0075】
また、接着剤の硬化前にアンカーボルトBを線材等でコンクリート躯体に仮保持させることで、アンカーボルトBが自重により下方に移動することを防止する構成(以下「比較例2」という)では、施工に手間がかかるという問題がある。それに対して、第1実施形態では、固定部材100にアンカーボルトBを装着させて穿孔に挿入するだけで、アンカーボルトBが穿孔内で移動することを防止することができる。すなわち、比較例2と比較して、簡便な方法でアンカーボルトBを穿孔内に固定することが可能である。
【0076】
さらに、アンカーボルトBの周方向を把持する1個の固定部と、当該固定部における双方の端部から突出し、穿孔の内壁面に接触する2個の腕部とを具備する固定部材(「比較例3」という)を想定する。比較例3は、例えば特許文献1の技術である。比較例3では、アンカーボルトBに十分な強度で装着できず、穿孔内に挿入する際に固定部材の位置がずれるという問題や固定部材が外れるという問題がある。
【0077】
それに対して、第1実施形態の固定部材100は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と、第1把持部11と第3把持部13とを連結する第1連結部21と、第2把持部12と第3把持部13とを連結する第2連結部22とを含むから、比較例3と比較して、十分な強度でアンカーボルトBに装着できるという利点がある。したがって、アンカーボルトBを穿孔内に挿入する際に、固定部材100の位置がずれることや外れることを防止できる。
【0078】
なお、以上に説明した第1実施形態による効果は、穿孔が垂直方向に形成される場合はもちろんのこと、垂直方向以外の方向(水平方向や垂直方向に対して傾斜する方向)に沿って穿孔が形成される場合にも実現される。
【0079】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0080】
図13は、第2実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第1実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1と、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2とが、周方向にわたり一定である構成を例示した。第2実施形態では、間隔D1と間隔D2とが周方向に沿って変化する構成を例示する。
【0081】
図13には、基準直線L0と、X方向に平行な直線(基準直線L0に直交する直線)とを含む平面を基準平面Fと表記する。X-Z平面が基準平面Fの例示である。
【0082】
図13に例示される通り、第2実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなる。また、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなる。
【0083】
Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間において、第3把持部13を傾斜するように配置する。すなわち、第2実施形態の第3把持部13は、Y-Z平面に対して傾斜する平面内において延在する。
【0084】
具体的には、Z方向からみたときに、第3把持部13の第1端Tc1と第2把持部12の第1端Tb1との間の距離が、第3把持部13の第1端Tc1との間の距離を下回り、第3把持部13の第2端Tc2と第1把持部11の第2端Ta2との間の距離が、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との間の距離を下回るように、第・BR>R把持部13を配置する。第3把持部13を以上のように配置することで、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなるように設定される。
【0085】
なお、間隔D1のうち基準平面Fから第1連結部21までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第1連結部21から基準平面Fにかけて連続的に小さくなってもよい。同様に、間隔D2のうち基準平面Fから第2連結部22までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第2連結部22から基準平面Fにかけて連続的に小さくなってもよい。
【0086】
図14は、第2実施形態の固定部材100を装着したアンカーボルトBの図(
図1に対応)である。
図14に例示される通り、アンカーボルトBの外周面のうち左半周に位置する節と、右半周に位置する節との間において固定部材100を装着することができる。
【0087】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第2実施形態において、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなるように設定されること以外は、第1実施形態と同様である。
【0088】
<第3実施形態>
【0089】
図15は、第3実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1と、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2とが周方向に沿って変化する構成を例示する。
【0090】
図15に例示される通り、第3実施形態では、第1把持部11と第3把持部13との間隔D1は、基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなる。また、第2把持部12と第3把持部13との間隔D2は、基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなる。
【0091】
Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間において、第3把持部13が傾斜するように配置する。すなわち、第2実施形態の第3把持部13は、Y-Z平面に対して傾斜する平面内において延在する。
【0092】
具体的には、Z方向からみたときに、第3把持部13の第1端Tc1と第2把持部12の第1端Tb1との間の距離が、第3把持部13の第1端Tc1との間の距離を上回り、第3把持部13の第2端Tc2と第1把持部11の第2端Ta2との間の距離が、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との間の距離を上回るように、第3把持部13を配置する。第3把持部13を以上のように配置することで、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなるように設定される。
【0093】
なお、間隔D1のうち基準平面Fから第1連結部21までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第1連結部21から基準平面Fにかけて連続的に大きくなってもよい。間隔D2のうち基準平面Fから第2連結部22までの間の部分については、周方向に沿って一定であってもよいし、第2連結部22から基準平面Fにかけて連続的に大きくなってもよい。
【0094】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
図16は、第3実施形態の固定部材100が装着された状態のアンカーボルトBである。
図16に例示される通り、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に大きくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に大きくなる第3実施形態の固定部材100によれば、第3把持部13がアンカーボルトBの節に重ならないように(乗らないように)装着することが可能である。
【0095】
ここで、第3把持部13がアンカーボルトBの節に重なった状態で固定部材100が装着されると第1突出部41と第2突出部42とに加わる力が対称でなくなり、アンカーボルトBを適切に固定できない場合もある。それに対して、第3実施形態の固定部材100によれば、第3把持部13がアンカーボルトBの節に重ならないから第1突出部41と第2突出部42とに加わる力を対称にできるという利点がある。
【0096】
なお、第2実施形態において、間隔D1が基準平面Fから第1突出部41側に向かって連続的に小さくなり、間隔D2が基準平面Fから第2突出部42側に向かって連続的に小さくなるように設定されること以外は、第1実施形態と同様である。
【0097】
<第4実施形態>
【0098】
図17は、第4実施形態に係る固定部材100をZ方向からみたときの図である。第1実施形態では、固定部材100が1つの第3把持部13を含む構成を例示したが、第4実施形態では固定部材100が複数の第3把持部13を含む構成を例示する。
【0099】
第4実施形態の固定部材100は、第1把持部11と第2把持部12と第1突出部41と第2突出部42と第1連結部21と第2連結部22とに加えて、(2N-1)個の第3把持部13と、(N-1)個の第3連結部23と、(N-1)個の第4連結部24とを具備する。Nは、2以上の整数である。なお、
図17では、Nが2である場合を例示する。
【0100】
(2N-1)個の第3把持は、X方向に沿って第1把持部11と第2把持部12との間に位置する。(2N-1)個の第3把持は、所定の間隔をあけて配置される。第4実施形態では、各第3把持部13は、第1実施形態の第3把持部13と同様に形成される。
【0101】
第1把持部11の第1端Ta1と第2把持部12の第1端Tb1とは、X方向からみたときに、基準直線L0を中心として、各第3把持部13の第1端Tc1と同じ側にある。第1把持部11の第2端Ta2と第2把持部12の第2端Tb2とは、X方向からみたときに、基準直線L0を中心として、各第3把持部13の第2端Tc2と同じ側にある。
【0102】
第4実施形態の第1連結部21は、第1把持部11の第1端Ta1と、(2N-1)個の第3把持部13のうち当該第1把持部11に隣接する第3把持部13の第1端Tc1とを連結する要素である。第4実施形態の第2連結部22は、第2把持部12の第2端Tb2と、(2N-1)個の第3把持部13のうち当該第2把持部12に隣接する第3把持部13の第2端Tc2とを連結する要素である。
【0103】
第3連結部23は、相互に隣接する2個の第3把持部13の第1端Tc1同士を連結する部分である。具体的には、第3連結部23は、X方向(アンカーボルトBの軸方向)に沿って延在する部分である。第4実施形態の第3連結部23は、第1連結部21と同様の形状に形成される。
【0104】
第4連結部24は、相互に隣接する2個の第3把持部13の第2端Tc2同士を連結する部分である。具体的には、第4連結部24は、X方向(アンカーボルトBの軸方向)に沿って延在する部分である。第4実施形態の第4連結部24は、第2連結部22と同様の形状に形成される。
【0105】
第3連結部23と前記第4連結部24とは、X方向に沿って交互に位置する。すなわち、相互に隣接する2個の第3把持部13において第1端Tc1同士が第3連結部23で連結される場合には、当該2個の第3把持部13において第2端Tc2同士は連結されない。同様に、相互に隣接する2個の第3把持部13において第2端Tc2同士が第4連結部24で連結される場合には、当該2個の第3把持部13において第1端Tc1同士は連結されない。
【0106】
第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態では、複数の第3把持部13を具備するから、第1実施形態の構成と比較して、アンカーボルトBにさらに強固に装着できるという利点がある。なお、第2実施形態や第3実施形態の構成に第4実施形態の構成を適用してもよい。
【0107】
<第5実施形態>
ここで、固定部材100は、複数個(例えば100個)を袋詰めにされた状態で梱包され、施工の際に一個ずつ取り出して使用することも想定される。しかし、複数個が袋詰めにされていると、固定部材100同士が絡んでしまい、1個の固定部材100を取り出しにくいという問題がある。以上の事情を考慮して、第5実施形態では、固定部材100の梱包形態を提案する。
【0108】
以下の説明では、固定部材100の全長方向における第1把持部11の第2端Ta2から第2把持部12の第1端Tb1までの間の部分(すなわち固定部材100の全長方向において第1突出部41と第2突出部42とを除いた部分)を、便宜的に「取付部M」と表記する。例えば、第1実施形態においては、取付部Mは、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22とである。
【0109】
第5実施形態に係る複数の固定部材100の梱包形態(以下「固定部材セット」という)について説明する。
図18から
図20は、第5実施形態は、固定部材セット500を例示する図である。
【0110】
図18および
図19に例示される通り、固定部材セット500は、保持部材300と、当該保持部材300に保持されたN個(Nは自然数)の固定部材100とを具備する。
【0111】
保持部材300は、平板状の部材である。
図18は、保持部材300を第1面R1側(Z方向の正側)からみたときの正面図であり、
図19は、保持部材300を第1面R1とは反対側の第2面R2側(Z方向の負側)から見たときの背面図である。
図20は、1個の固定部材100に着目した側面図(X方向の正側からみたときの側面図)である。
【0112】
保持部材300の厚さは、例えば0.5~1.5mmである。保持部材300は、典型的には紙製(厚紙)であるが、樹脂製等であってもよい。保持部材300の大きさ(面積)は、保持する固定部材100の個数に応じて適宜に変更し得る。
【0113】
保持部材300には、N個の貫通孔Kが形成される。
図18および
図19では、Nが8の場合を例示するが、Nの値(すなわち貫通孔Kおよび固定部材100の個数)は任意である。なお、貫通孔Kの形成には、公知の穴あけ技術(例えばレーザー加工や打ち抜き加工)が任意に採用される。
【0114】
各貫通孔Kの形状は、取付部Mを嵌め込み可能であれば、特に限定されない。第5実施形態では、長方形である貫通孔Kを例示する。
図20に例示される通り、X方向からみて、取付部Mのうち第1突出部41および第2突出部42よりもZ方向の負側にある部分Maが貫通孔Kに嵌め込まれる。
【0115】
取付部Mの部分Maが第1面R1側から貫通孔Kに嵌め込まれると、第1突出部41と第2突出部42とが保持部材300を挟んで部分Maとは反対側に位置する状態で、固定部材100が保持部材300に保持される。すなわち、部分Maは保持部材300の第2面R2側に位置し、第1突出部41と第2突出部42とが第1面R1側に位置する。
【0116】
図18および
図19に例示される通り、取付部Mの部分Maが貫通孔Kに嵌め込まれて、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とが貫通孔Kの内面に当接することで、固定部材100が保持部材300に保持される。第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とはそれぞれY方向の負側と正側との双方において、貫通孔Kの内面に当接する。したがって、固定部材100が保持部材300に保持される。なお、Y方向は、第3把持部13の第1端Tc1と第2端Tc2とを通る線分(
図7に図示するJ)に平行な方向であるとも換言できる。
【0117】
貫通孔KにおけるY方向の長さK1は、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13とがそれぞれY方向の負側と正側との双方において貫通孔Kの内側に当接可能であり、取付部M(部分Ma)を貫通孔Kに嵌め込んだときに固定部材100がずれずに、かつ、貫通孔Kから取付部M(部分Ma)を抜き差しすることが可能なように設定する。長さK1は、第3湾曲部131の外周で確定される仮想的な円Sa(
図7に図示)の直径に応じて適宜に設定される。具体的には、長さK1は、円Saの直径に対して、例えば0.75~0.99倍であり、好ましくは0.91~0.97倍になるように、設定される。
【0118】
貫通孔KにおけるX方向の長さK2は、Z方向からみたときに、第1把持部11と第2把持部12との間の距離を上回る長さであれば任意である。長さK2は、
図19におけるZ方向からの平面視において、第1把持部11におけるX方向の正側の表面から第2把持部12におけるX方向の負側の表面までの距離(すなわち取付部MにおけるX方向の長さ)に対して、例えば1.1~1.3倍程度である。
【0119】
図18および
図19では、N個の固定部材100の各々は、貫通孔Kに対して第1突出部41がY方向の正側に位置し、第2突出部42がY方向の負側に位置するように、貫通孔Kに嵌め込まれた場合を例示する。
【0120】
以上の説明から理解される通り、第5実施形態では、取付部Mを貫通孔Kに嵌め込むことで、各固定部材100が保持部材300に別個に保持されている。ひいては、複数個の固定部材100が袋詰めにされた状態で梱包されている構成と比較して、固定部材100を一個ずつ取り出しやすいという利点がある。
【0121】
なお、第5実施形態に係る固定部材セット500において、1つの保持部材300に、相異なる大きさのN個の固定部材100が保持されてもよい。以上の構成では、各固定部材100の大きさに応じて各貫通孔Kの大きさ(K1およびK2)も異なり得る。また、第5実施形態に係る固定部材セット500として梱包される固定部材100は、前述の各形態の固定部材100には限定されない。
【0122】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0123】
(1)前述の各形態では、各湾曲部(111,121,131)は円弧状である構成を例示したが、各湾曲部の形状はアンカーボルトBの外周面に沿う形状であれば円弧状には限定されない。各湾曲部の形状および大きさは、装着対象となるアンカーボルトBの外周面を把持することが可能であれば任意である。
【0124】
(2)前述の各形態では、第1把持部11が直線部112を含む構成を例示したが、第1把持部11において直線部112は必須ではない。例えば、第1湾曲部111が第1端Ta1まで連続して形成さてもよい。また、直線部112に代えて曲線状の部分を第1把持部11が含んでもよい。同様に、第2把持部12が直線部122を含む構成を例示したが、第1把持部11において直線部122は必須ではない。
【0125】
また、前述の各形態では、第3把持部13が第1直線部132と第2直線部133とを含む構成を例示したが、第2把持部12において第1直線部132および第2直線部133は必須ではない。例えば、第3湾曲部131が第1端Tc1および第2端Tc2まで連続して形成されてもよい。また、第1直線部132および第2直線部133に代えて曲線状の部分を第3把持部13が含んでもよい。
【0126】
(3)前述の各形態では、X方向からみたときに基準直線L0に対して対称な形状である第3把持部13(
図7)を例示したが、第3把持部13の構成は以上の例示に限定されない。例えば、第1端Tc1および第2端Tc2の何れか一方が第3把持部13と基準直線L0とが交差する部分に近い構成も採用される。
【0127】
(4)前述の各形態では、X方向からみたときに、第1把持部11の第2端Ta2が基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の第1端Ta1よりも近い位置にある構成(
図8)を例示したが、例えば、当該部分Uからみて相互に反対側において同じ距離に第1端Ta1と第2端Ta2とがある構成や、第2端Ta2が第1端Ta1よりも部分Uから離れた位置にある構成も採用される。
【0128】
ただし、第1把持部11の第2端Ta2が基準直線L0と当該第1把持部11とが交差する部分Uに第1把持部11の第1端Ta1よりも近い位置にある構成によれば、第2端Ta2が当該部分Uを挟んで第1端Ta1と同じ位置にある構成と比較して、第1端Ta1と第2端Ta2との間隔が広がるから、アンカーボルトBを嵌め込みやすいという利点がある。
【0129】
(5)前述の各形態では、X方向からみたときに、第2把持部12の第1端Tb1が基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある構成(
図9)を例示したが、例えば、当該部分Uからみて相互に反対側において同じ距離に第1端Tb1と第2端Tb2とがある構成や、第1端Ta1が第2端Ta2よりも部分Uから離れた位置にある構成も採用される。
【0130】
ただし、第2把持部12の第1端Tb1が基準直線L0と当該第2把持部12とが交差する部分Uに第2把持部12の第2端Tb2よりも近い位置にある構成によれば、第1端Tb1が当該部分Uを挟んで第2端Tb2と同じ位置にある構成と比較して、第1端Tb1と第2端Tb2との間隔が広がるから、アンカーボルトBを嵌め込みやすいという利点がある。
【0131】
なお、X方向からみたときにおいて、第3把持部13の第1端Tc1と第1把持部11の第1端Ta1との位置は、同じである構成を例示したが、第3把持部13や第1把持部11の形状によっては相違する場合もある。同様に、X方向からみたときにおいて、第3把持部13の第2端Tc2と第2把持部12の第2端Tb2との位置は、第3把持部13や第2把持部12の形状によっては相違する場合もある。
【0132】
(6)前述の各形態では、第1突出部41と第2突出部42とが直線状である構成を例示したが、例えば、第1突出部41と第2突出部42とが曲線状の部分を含んでもよい。固定部材100を装着された状態のアンカーボルトBが穿孔内に挿入されたときに、第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁に接触することが可能であれば、第1突出部41と第2突出部42との形状は任意である。なお、第1突出部41と第2突出部42とが直線状である構成によれば、例えば第1突出部41と第2突出部42とが曲線状である構成と比較して、アンカーボルトBを穿孔内で強固に固定できるという利点がある。
【0133】
同様に、角度θ11と角度θ12と角度θ21と角度θ22とについても、第1突出部41と第2突出部42とが穿孔の内壁に接触することが可能であれば、任意である。
【0134】
(7)前述の各形態では、第1連結部21と第2連結部22とが曲線状である構成を例示したが、第1連結部21と第2連結部22との形状は以上の構成には限定されない。例えば、第1連結部21と第2連結部22とが直線状である構成も採用される。第1連結部21の形状は、第1把持部11と第3把持部13とを連結することが可能であれば任意である。同様に、第2連結部22の形状は、第2把持部12と第3把持部13とを連結することが可能であれば任意である。
【0135】
(8)前述の各形態において、第1把持部11と第2把持部12と第3把持部13と第1連結部21と第2連結部22と第1突出部41と第2突出部42とに加えて、他の要素を固定部材100が含んでもよい。
【0136】
(9)前述の各形態では、異形棒鋼に固定部材100を装着させる場合を例示したが、その他の各種のアンカーボルトBに本発明の固定部材100は利用される。
【0137】
(10)前述の各形態において、固定部材100を構成する線材の線径は、装着対象となるアンカーボルトBの種類やサイズに応じて適宜に選択される。例えば、アンカーボルトBが全ねじボルトである場合には、線材の線径はねじピッチ以下に設定することが好適である。線材の線径は、例えば1.0mm以上2.3mm以下である。
【符号の説明】
【0138】
11 :第1把持部
12 :第2把持部
13 :第3把持部
21 :第1連結部
22 :第2連結部
23 :第3連結部
24 :第4連結部
41 :第1突出部
42 :第2突出部
100 :固定部材
111 :第1湾曲部
112 :直線部
121 :第2湾曲部
122 :直線部
131 :第3湾曲部
132 :第1直線部
133 :第2直線部
300 :保持部材
500 :固定部材セット
B :アンカーボルト
F :基準平面
H :穿孔
L0 :基準直線
Ta1 :第1把持部の第1端
Ta2 :第1把持部の第2端
Tb1 :第2把持部の第1端
Tb2 :第2把持部の第2端
Tc1 :第3把持部の第1端
Tc2 :第3把持部の第2端
W :コンクリート躯体