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特開2023-22825小型歪み波動歯車装置および小型歪み波動歯車装置を備える車両昇降システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022825
(43)【公開日】2023-02-15
(54)【発明の名称】小型歪み波動歯車装置および小型歪み波動歯車装置を備える車両昇降システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121892
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】63/228,971
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202210502380.3
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】510288840
【氏名又は名称】ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJINGWEST INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.85 Puan Road,Doudian Town,Fangshan District,Beijing,The People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(74)【代理人】
【識別番号】100219117
【弁理士】
【氏名又は名称】金 亨泰
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ファネリ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク パンピリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセリン マルシャン
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA02
3J027FA12
3J027FA18
3J027FA36
3J027FB27
3J027FB32
3J027FB40
3J027GC06
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027GE01
3J027GE11
3J027GE14
(57)【要約】
【課題】軽量で、小型である波動歯車装置を提供する。
【解決手段】波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを有する。複数のスプライン歯が中心軸に向かって内面から延設される。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置される。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設されるとともに、径方向外側に延設される複数のベルト歯を有する。ベルト歯の総数はスプライン歯の総数より少ない。出力部材は、波動発生器とベルトとを収容する凹み領域を有する。出力部材は、波動発生器からの回転運動に応じて、波動発生器と同じまたは反対方向に回転する。ベアリングアセンブリが、波動発生器とベルトアセンブリとの間に配置されるとともに、それぞれが中心軸と平行に延設される複数のニードルを有する。また波動歯車装置を有する車両昇降システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、底面、外面および内面を有し、前記上面と前記底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置されており、前記外面と前記内面とが中心軸の回りに環状にかつ前記上面と前記底面との間に延設されているスプラインであって、複数のスプライン歯が前記内面から前記中心軸に向かって延設されているスプラインと、
前記スプライン内に回転可能に配置されるとともに偏心コアを有する波動発生器と、
前記波動発生器の回りに延設されるベルトアセンブリであって、前記ベルトアセンブリは径方向外側に延設されるとともに前記スプライン歯と係合するよう構成される複数のベルト歯が形成されるリング状基体を有しており、前記ベルト歯の総数が前記スプライン歯の総数より少ないベルトアセンブリと、
前記波動発生器と前記ベルトアセンブリとの間に配置されるとともに、それぞれが前記中心軸と平行に延設される複数のニードルを有するベアリングアセンブリと、
前記ベルトアセンブリと係合するとともに、前記波動発生器および前記ベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する出力部材と、
を備える波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波動歯車装置であって、前記リング状基体は弾性材料のベルトを備える波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1に記載の波動歯車装置であって、前記リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを備えており、それぞれのリンクが前記ベルト歯の一つを形成している波動歯車装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の波動歯車装置であって、
前記ベルトアセンブリはさらに裏打ちスリーブを備えており、
前記ベアリングアセンブリの前記複数のニードルは、前記裏打ちスリーブに沿って転動するよう構成されている波動歯車装置。
【請求項5】
請求項1に記載の波動歯車装置であって、
前記出力部材は、前記ベルトアセンブリと前記波動発生器とに当接するよう配置されるベースプレートを有しており、
前記ベースプレートは、前記中心軸の回りに環状に延設される周辺部を有している波動歯車装置。
【請求項6】
請求項5に記載の波動歯車装置であって、さらに、前記ベースプレートから前記周辺部に沿って軸方向に延設されるとともに、前記スプラインと係合するよう構成される壁部を備えており、
前記壁部は、互いから間隔を空けて配置されるとともに前記ベルトアセンブリと係合するよう前記中心軸に向かって径方向に延設される複数の壁歯を有する波動歯車装置。
【請求項7】
請求項1、3、5および6のいずれか一に記載の波動歯車装置であって、前記ベルトアセンブリはさらに裏打ちスリーブを備える波動歯車装置。
【請求項8】
請求項7に記載の波動歯車装置であって、前記裏打ちスリーブは鋼で形成されている波動歯車装置。
【請求項9】
請求項7に記載の波動歯車装置であって、前記裏打ちスリーブは中空円筒体として形成される波動歯車装置。
【請求項10】
請求項7に記載の波動歯車装置であって、前記リング状基体は弾性材料のベルトを備える波動歯車装置。
【請求項11】
請求項10に記載の波動歯車装置であって、前記ベルトアセンブリは、前記裏打ちスリーブに被覆成形される弾性材料の前記ベルトを有する波動歯車装置。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一に記載の波動歯車装置であって、
前記偏心コアは凹部を有しており、
前記波動歯車装置は、前記波動発生器の前記偏心コアを囲繞する被覆スリーブをさらに備えており、
前記被覆スリーブは、前記偏心コアと前記被覆スリーブとの間の相対的な回転を防止するために前記偏心コアの前記凹部と係合するよう構成される凸部を有しており、
前記ベアリングアセンブリは、前記被覆スリーブと前記ベルトアセンブリとの間に配置されている波動歯車装置。
【請求項13】
請求項12に記載の波動歯車装置であって、
前記凹部は、前記偏心コアに形成される複数の凹部の一つであり、
前記凸部は複数の凸部の一つであり、前記複数の凸部のそれぞれが前記偏心コアの前記複数の凹部の対応する一つと係合するよう構成されている波動歯車装置。
【請求項14】
請求項12に記載の波動歯車装置であって、前記ベアリングアセンブリは、前記被覆スリーブに沿って転動するよう構成される複数のニードルを有する波動歯車装置。
【請求項15】
請求項14に記載の波動歯車装置であって、
前記ベルトアセンブリはさらに裏打ちスリーブを備えており、
前記ベアリングアセンブリの前記複数のニードルは、前記裏打ちスリーブに沿って転動するよう構成されている波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してストレイン(歪み)波動歯車装置に、特に車両昇降システムに用いるストレイン波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーモニックドライブ(登録商標)は、当該技術においてよく知られている。典型的には、ハーモニックドライブ(登録商標)は三つの主要構成要素を有する単段の歯車伝導装置(トランスミッション)である。これらの構成部品は、円形スプライン(サーキュラスプライン)、可撓性スプライン(フレックススプライン)および波動発生器としてよく知られている。サーキュラスプラインは、内面上に歯を有する円形状の剛性太陽歯車である。フレックススプラインは、円形スプラインの歯と噛合するよう設計されている歯を外面上に有する薄い壁状カップである。フレックススプラインは、径方向に可撓性があり、捻れに対しては剛性であり、サーキュラスプラインより歯の数が少なくかつ半径が小さい。波動発生器は、フレックススプラインの内部に嵌合しており、変形することによってその歯のうちのいくつかがサーキュラスプラインの歯と噛合するが、他の歯はサーキュラスプラインの歯とは完全に非噛合状態となる非円形カムである。波動発生器の一回転毎に、サーキュラスプラインの歯数に対するフレックススプラインの歯数の差と同じ比で、サーキュラスプラインの内周をフレックススプラインが移動する。例えば、サーキュラスプラインが100の歯を有し、フレックススプラインが98の歯を有する場合、波動発生器の各回転によって、フレックススプラインが二つの歯と等しい距離だけサーキュラスプラインの内周を移動することになる。例えば、サーキュラスプラインが100の歯を有し、フレックススプラインが98の歯を有し、出力部材が98の歯を有する場合、波動発生器の各回転によって、フレックススプラインが二つの歯と等しい距離だけサーキュラスプラインの内周を移動することになる。この場合、出力部材は波動発生器の反対方向に回転する。他の場合において、サーキュラスプラインが98の歯を有し、フレックススプラインが98の歯を有し、出力部材が100の歯を有するときにも、波動発生器の各回転によって、フレックススプラインが二つの歯と等しい距離だけサーキュラスプラインの内周を移動することになる。この場合、出力部材は波動発生器と同じ方向に回転する。
【0003】
波動歯車装置が貢献する産業には、半導体、工作機械、ファクトリー・オートメーション(工場自動化)、ロボット工学、医療機器および航空宇宙産業が含まれる。波動歯車装置による貢献を受ける医療応用には、患者ベッド、リハビリテーション機器およびMRI/CATスキャン・ガントリーが含まれる。ハーモニックドライブ(登録商標)の他の用途には、放射線治療装置、撮像カメラ位置決め・外科手術ロボットが含まれる。半導体部品製造において用いられるロボットは、ハーモニックドライブ(登録商標)を用いて、加工、装填、取り出し、検査および試験のためにウエハーを正確に位置決めすることができる。波動歯車装置の軍事および航空宇宙応用には、通信、軍事偵察、気象衛星、およびハッブル宇宙望遠鏡ならびに国際宇宙ステーションを含むいくつかの深宇宙プローブや望遠鏡が含まれる。ハーモニックドライブ(登録商標)はアンテナおよびコンパス・ジンバルを正確に制御するよう、科学器具を配置し、孔と太陽電池パネルを調整し、ハッチおよび戸口を開閉するよう、用いられる。
【0004】
これらの応用では、高い位置精度、反復性および低振動性が必要とされる。ハーモニックドライブ・ギア・セット(「ハーモニックドライブ」は、登録商標)は、コンパクト設計や重量に比して高トルクを必要とする高精度な用途に理想的である。これらは、出力段におけるフィードバックを受けることなく1角度分未満の位置精度および+/-5角度秒の反復性を実現できる。
【0005】
従来の波動歯車装置設計は、サーキュラスプラインよりも歯数が二つ少ないフレックススプラインと、直径方向に互いに反対側にあり楕円の長軸に対応する二つの領域においてフレックススプラインの歯をサーキュラスプラインの歯と噛合させるよう設計された楕円状の波動発生器と、を有する。波動発生器の短軸は、フレックススプラインの歯を短軸に沿った領域において完全に非噛合状態にできるよう、非接触の領域においてサーキュラスプラインとフレックススプラインとの間の長さが一つの歯の差となるよう、十分に短い。伝動装置システムのトルク能力は、歯を接触から外すのに必要な剪断力と等しい。したがって、このことにより、フレックススプラインがサーキュラスプラインに対して一つの歯の距離でスリップしうる「ラチェッティング・トルク」の実現が可能となる。これにより、接触状態にある歯数が増加し、したがってトルク能力および捩れ剛性が増加する。しかしながら、この条件は、フレックススプラインへの力を大幅に増加させ、その疲れ寿命を大幅に短くする。さらに、システムのバランスが崩れ、ノイズおよび振動が大幅に増加し、位置の精度が低下する。
【0006】
そのようなハーモニックドライブ伝動装置(「ハーモニックドライブ」は、登録商標)の一つが米国特許第3906527号明細書に開示されている。そのハーモニックドライブ伝動装置(「ハーモニックドライブ」は、登録商標)は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを有する。上面と底面とは、軸方向に互いから間隔を空けて配置される。外面および内面は、中心軸の回りに環状に延設されるとともに、上面を底面に接続している。複数のスプライン歯が中心軸に向かって内面から延設される。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置される。
【0007】
したがって、モータの大きさを最小化し、軽量で、低ノイズ・振動・ハーシュネス(乗り心地の粗さ)(NVH)である種々の異なる車両構成に適応可能であるハーモニックドライブ(登録商標)を提供する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3906527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、軽量で、小型である波動歯車装置を提供する。本発明は、また、組み立てが容易な波動歯車装置を提供する。本発明は、さらに、ノイズ、振動およびハーシュネス(NVH)を最小限に抑えた波動歯車装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の面では、波動歯車装置を提供する。波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに、偏心コアを有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するよう構成される複数のベルト歯が形成されるリング状基体を有する。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。波動歯車装置は、ベアリングアセンブリと出力部材とを備える。ベアリングアセンブリは、波動発生器とベルトアセンブリとの間に配置されるとともに、それぞれが中心軸と平行に延設される複数のニードルを有する。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する。
【0011】
本発明の他の面では、波動歯車装置を提供する。波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。また、波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに偏心コアを有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、裏打ちスリーブとリング状基体とを有する。リング状基体は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するための複数のベルト歯が形成される。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。波動歯車装置は、ベアリングアセンブリと出力部材とを備える。ベアリングアセンブリは、波動発生器とベルトアセンブリとの間に配置される。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する。
【0012】
本発明の他の面では、波動歯車装置を提供する。波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。また、波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに偏心コアを有する。偏心コアは凹部を有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、リング状基体を有する。リング状基体は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するための複数のベルト歯が形成される。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。また、波動歯車装置は、被覆スリーブとベアリングアセンブリと出力部材とを備える。被覆スリーブは、波動発生器の偏心コアを囲繞する。被覆スリーブは、偏心コアと被覆スリーブとの間の相対的な回転を防止するために偏心コアの凹部と係合するよう構成される凸部を有する。ベアリングアセンブリは、被覆スリーブとベルトアセンブリとの間に配置される。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する。
【0013】
本発明の他の利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明からより理解され、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一の実施形態の構成にかかる波動歯車装置の上部斜視図である。
図2】波動歯車装置の分解組立図である。
図3】本発明の一の実施形態にかかる波動歯車装置の組み立て状態の、図1の切断線3-3に沿った、断面斜視図である。
図4】本発明の一の実施形態にかかる波動歯車装置において用いられるベルトの斜視図である。
図5図4におけるベルトの部分破断拡大図である。
図6】本発明の変形例としての実施形態の構成にかかる波動歯車装置の上部斜視図である。
図7図7の波動歯車装置の底部斜視図である。
図8】波動歯車装置を有する車両昇降システムを有するダンパの断面図である。
図9】本発明の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置の分解図である。
図10】波動歯車装置の底部斜視図である。
図11】波動歯車装置の上部斜視図である。
図12】本発明の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置の分解図である。
図13】本開示の一の面にかかる波動歯車装置のチェーンの分解図である。
図14】本開示の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置の分解図である。
図15】本開示の一の面にかかる波動発生器の斜視図である。
図16】本開示の一の面にかかる波動歯車装置のチェーンアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の一の実施形態に基づいて構成された波動歯車装置20を、概略的に図1に示す。図面では、対応する部品には同じ符号を付している。
【0016】
図1図3からよく分かる通り、波動歯車装置20は、スプライン22と波動発生器24とベルトアセンブリ26と出力部材28とを備える。スプライン22は、上面30、底面32、外面34および内面36を有する。上面30と底面32とは、互いに平行であり、互いから間隔を空けて配置される。外面34および内面36は、中心軸Aの回りに環状に延設され、上面30を底面32に接続する。スプライン22は、内面36上に上面30に隣接して配置されるとともに、中心軸Aに向かって径方向内側にかつ中心軸Aの回りに環状に配置される突出部38を有する。また突出部38は、内面36に沿って上面30から底面32に向かって、底面32から間隔を空けて配置される終端部40へと、延設される。突出部38は、内面36から径方向内側に突出部38に沿って延設されるとともに互いから周方向に間隔を空けて配置される複数のスプライン歯42を有する。本発明の一の実施形態では、複数のスプライン歯42のそれぞれのスプライン歯は、第一歯形状を形成する略台形形状を有する。
【0017】
波動発生器24は、スプライン22と係合するようスプライン22に回転可能に配置される。波動発生器24は底部44と上端部46とを有する。底部44は、略楕円形状を有し、中心軸Aの回りに延設される。上端部46は、略円形状を有し、底部44から外側に延設される。突起部48は、上端部46から外側に、中心軸Aと平行に、延設される。波動発生器24は、中心軸Aに沿って上端部46と底部44とを貫通して延びる円筒空間部50を有する。ベルトアセンブリ26は、底部44の回りに延設される。ベルトアセンブリ26は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯42と係合するよう構成される複数のベルト歯52が形成されるリング状基体を有する。つまり、ベルト歯52は、スプライン歯42と直径方向に噛合する。ベルト歯52の総数は、スプライン歯42の総数より少ない。本発明の実施形態では、スプライン歯42の総数とベルト歯52の総数との間の差は、2または4である。ベルト歯52の総数がスプライン歯42の総数より少ないので、ロータの回転速度と波動発生器24の回転速度との間には減速比が生じる。ある実施形態では、リング状基体は、単一部材の連続ループとして形成できるエラストマ材料等の弾性材料のベルトを有する。任意選択的にまたは追加的に、リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを有することができる。チェーンのそれぞれのリンクは前記ベルト歯の一つを形成している。
【0018】
出力部材28は、波動発生器24とベルトアセンブリ26とを収容するための凹み領域54を有する。出力部材28は、ベルトアセンブリ26と係合する。こうして、波動発生器24からの回転運動に応じて、出力部材28は波動発生器24と同じまたは反対方向に回転する。波動発生器24が出力部材28の凹み領域54に収容されるので、波動歯車装置20をよりコンパクトにでき(小型化でき)、波動歯車装置20の組み立てを容易に行うことができる。出力部材28は、略円形状を有し、中心軸Aを中心として配置されるとともに、ベルトアセンブリ26と波動発生器24と当接するベースプレート56を有する。ベースプレート56は、中心軸Aの回りに環状に延設される周辺部58を有する。壁部60が、ベースプレート56から周辺部58に沿って軸方向に延設されるとともに、スプライン22と係合するよう構成される。壁部60は、互いから間隔を空けて配置されるとともにベルトアセンブリ26と係合するよう径方向に中心軸Aに向かって延設される複数の壁歯62を有し、これにより、出力部材28がベルトアセンブリ26および波動発生器24と同じ速度で回転できる。出力部材28がベルトおよび波動発生器24と同じ速度で回転できるよう、壁歯62は、スプライン歯42の第一歯形状とは形状が異なる第二歯を有する。本発明の一の実施形態では、壁歯62のそれぞれは、第二歯形状を形成する略三角形状を有する。出力部材28はベースプレート56から外側にかつ中心軸Aの回りに環状に延設されるカラー64を有し、これにより、中心軸Aの回りにカラー64とベースプレート56と壁部60との間で延びる凹み領域54が形成される。カラー64は、円筒空間部50を通るよう延設され、そして中心軸Aに沿って延びる開口部66を形成する。
【0019】
図4図7に、本発明の変形例としての実施形態を示す。図4図5からよく分かる通り、複数のベルト歯52のそれぞれのベルト歯は、ベルト歯52を補強し剛性を与えるよう内部に配置される金属インサート68を有する。金属インサート68は、中心軸Aに沿ってベルトアセンブリ26内を通り、ベルトアセンブリ26から離れて位置するインサート端部70へと延設される。図6図7からよく分かる通り、ベースプレート56は、インサート端部70を収容するよう中心軸Aの回りに配置された複数の孔72を有し、これにより、出力部材28を波動発生器24とベルトアセンブリ26とに連結して、波動発生器24とベルトアセンブリ26とともに回転させる。
【0020】
動作時において、回転運動またはトルク荷重は、まず波動歯車装置20に波動発生器24を介して入力される。なお、入力を電気モータまたは他の回転運動発生源を介して印加できることを記載しておく。本発明の一の実施形態では、波動発生器24の突起部48を電気モータまたは回転運動発生源に連結することができ、これにより、波動発生器24が波動歯車装置20に回転運動を入力できる。波動発生器24がスプライン22内で回転すると、波動発生器24の移動に応じてベルトアセンブリ26が変形し、波動発生器24の周囲で摺動する。ベルトアセンブリ26が波動発生器24の周囲で摺動するとき、ベルト歯52の上半分はスプライン歯42と噛合状態となる。ベルト歯52の総数がスプライン歯42の総数より少ないので、波動発生器24がスプライン22内で回転すると、波動発生器24の回転速度が低減される。また、ベルトアセンブリ26が波動発生器24の周囲で摺動するとき、ベルト歯52の下半分は壁歯62と噛合状態となる。壁歯62の総数がベルト歯52の総数と等しいので、出力部材28は、波動発生器24の回転方向と同じか反対の方向に回転する。したがって、ベルト歯52がスプライン歯42と壁歯62の両方と係合するので、トルク荷重の入力により剪断力が発生する。本発明の一の実施形態では、ベルトアセンブリ26はエラストマ材料から例えばゴムから形成できる。ベルトアセンブリ26がエラストマ材料から形成される場合、回転運動またはトルク荷重の入力により生じる剪断力に耐えることができ、したがって、波動歯車装置のノイズ、振動およびハーシュネス(NVH)を低減することができる。
【0021】
本発明の他の面では、車両昇降システム74を提供する。本発明の一の実施形態の構成にかかる車両昇降システム74を図8に概略的に示す。
【0022】
車両昇降システム74は、車両のダンパ76に連結して用いることができる。なお、ダンパ76を油圧式ダンパまたは磁性流体(MR)ダンパとできることを記載しておく。図8に分かりやすく示す通り、ダンパ76は、略円筒形状を有し中心軸Aを中心として配置されるハウジング78を有する。ハウジング78は、第一端部80と第二端部82との間で延設されて、作動流体を収容するよう第一端部80と第二端部82との間で延びる流体チャンバ84,86を形成する。なお、作動流体を作動油またはMR流体とできることを記載しておく。略円形状を有する装着リング88は、ハウジング78の第一端部80を車両に取り付けるよう機能する。
【0023】
ピストン90は、流体チャンバ84,86内に摺動可能に配置されて、流体チャンバ84,86を圧縮チャンバ84と反発チャンバ86とに分割する。圧縮チャンバ84は、ハウジング78の第一端部80とピストン90との間で延びる。反発チャンバ86は、ハウジング78の第二端部82とピストン90との間で延びる。反発チャンバ86に配置されるロッド・ガイド92は、流体チャンバ84,86を密閉するようピストン90の第二端部82に取り付けられる。ピストンロッド94は、中心軸Aに沿ってロッド・ガイド92を貫通して反発チャンバ86内へと延設され、圧縮ストロークと反発ストロークとの間でピストン90を中心軸Aに沿って移動させるようピストン90に取り付けられる。圧縮ストロークは、ピストンロッド94とピストン90とがハウジング78の第一端部80に向かって移動した位置として定義される。反発ストロークは、ピストンロッド94とピストン90とがハウジング78の第二端部82に向かって移動した位置として定義される。
【0024】
アクチュエータ96が、車両が異なるドライブモードに適合できるよう車両の高さを変更するようにハウジング78に取り付けられる。アクチュエータ96は、ネジ形成シャフト98と、ネジ形成ブッシング100と、複数のブッシング・ボールベアリング102と、を有する。略管状形状を有するネジ形成シャフト98は、ハウジング78の外面に取り付けられるとともに、第一開口端部104と第二開口端部106との間で中心軸Aの回りに環状に延設される。第一開口端部104は、ハウジング78の第一端部80に隣接して位置するよう、ハウジング78に形成されている。第二開口端部106は、第一端部80から軸方向に間隔を空けて位置するよう、ハウジング78に形成されている。略円形状を有するスナップリング108が、ネジ形成シャフト98とハウジング78との間で第一開口端部104に隣接して配置されており、中心軸Aの回りに延設されて、ネジ形成シャフト98をハウジング78に固定している。言い換えれば、ネジ形成シャフト98は、ハウジング78に固定され、ハウジング78の回りに環状に延設されている。ネジ形成ブッシング100は、ネジ形成シャフト98の回りに配置され、中心軸Aの回りに回転可能でありかつネジ形成シャフト98に沿って軸方向に移動可能である。ネジ形成ブッシング100は、一次端部110と二次端部112との間で延設される。ネジ形成ブッシング100の一次端部110は、ネジ形成ブッシング100の第一開口端部104に隣接した位置にある。ネジ形成ブッシング100の二次端部112は、第二開口端部106から軸方向に間隔を空けた位置にある。複数のブッシング・ボールベアリング102が、ネジ形成ブッシング100とネジ形成シャフト98との間に配置され、これにより、ネジ形成ブッシング100がネジ形成シャフト98の回りに回転して、ネジ形成ブッシング100の回転運動をネジ形成シャフト98に沿った軸方向移動に変換することができる。
【0025】
略管状形状を有するカバー114が、中心軸Aの回りに配置され、ネジ形成ブッシング100から径方向に間隔を空けて配置される。カバー114は、中心軸Aに沿って近端部116と遠端部118との間で延設される。近端部116は、ネジ形成ブッシング100の一次端部110に隣接して位置する。遠端部118は、ネジ形成ブッシング100の二次端部112に隣接して位置する。カバー114とネジ形成ブッシング100とで、合わせて、カバー114とネジ形成ブッシング100との間で中心軸Aの回りに延設される隔室120が形成される。終端板122が、近端部116から一次端部110へと径方向内側に延設され、一次端部110と当接する。複数の留め具124が、カバー114の近端部116に隣接して配置され、カバー114と終端板122とを貫通するよう延設され、これにより、カバー114に終端板122を取り付ける。バネ受け部126が、隔室120に配置され、カバー114の遠端部118とネジ形成ブッシング100の二次端部112との間で延設される。バネ受け部126は、カバー114とネジ形成ブッシング100とに取り付けられて、ハウジング78の回りに螺旋状に延設されるコイルバネ(図示せず)を受ける。複数のボルト128が、カバー114の遠端部118に隣接して配置され、カバー114とバネ受け部126とを貫通するよう延設され、これにより、バネ受け部126をカバー114に取り付ける。複数のカバー・ボールベアリング128がバネ受け部126とネジ形成ブッシング100との間に配置され、これにより、ネジ形成ブッシング100がバネ受け部126の回りに回転できる。
【0026】
電気モータ130が、隔室120内に配置され、ネジ形成ブッシング100に連結され、これにより、ネジ形成ブッシング100に回転運動を与え、ネジ形成ブッシング100をネジ形成シャフト98に沿って軸方向に移動させ、車両の高さを上昇し下降することができる。言い換えれば、電気モータ130は、車両を昇降させる回転運動を起動する。電気モータ130は、略管状形状を有し、ネジ形成ブッシング100の二次端部112に隣接して中心軸Aの回りに回転可能に配置されるロータ132を有する。円筒形状を有する本体134が、ロータ132の回りに配置され、中心軸Aの回りに環状に延設される。一ペアのボビン136が、互いから軸方向に間隔を空けて、本体134に隣接して配置され、中心軸Aの回りに環状に延設されて、本体134をボビン136の間に挟持している。ボビン136のそれぞれは、中心軸Aの回りに延設されるコイル138を有する。コイル138は、コイル138に電流を供給するため電源と電気的に接続されて、これにより、磁界を発生して、隔室120内のロータ132を回転させることができる。
【0027】
波動歯車装置20は、隔室120内に配置され、ネジ形成シャフト98の一次端部110とロータ132とに連結され、これにより、ロータ132の回転を減速して電気モータ130のトルクを増加させて、ネジ形成ブッシング100を中心軸Aの回りに回転させることができる。本発明の一の実施形態では、スプライン22は、ロータ132に隣接してカバー114に取り付けられて、隔室120内に配置される。波動発生器24は、スプライン22内に回転可能に配置されて、電気モータ130と係合し、ネジ形成シャフト98にロータ132の回転運動を伝導する。波動発生器24の上端部46から外側に延設される突起部48は、波動発生器24を電気モータ130のロータ132に連結し、ロータ132とともに回転運動させる。
【0028】
波動発生器24とベルトアセンブリ26とを収容している出力部材28は、ネジ形成ブッシング100に連結されて、ネジ形成ブッシング100にロータ132の回転運動を伝導する。出力部材のカラー64は、中心軸Aの回りに延設されるとともに、ネジ形成ブッシング100に連結されてネジ形成ブッシング100とともに回転する。
【0029】
動作時において、車両を昇降させるために、電気モータ130は、ロータ132を介して波動歯車装置20への回転運動を起動する。ロータ132の回転運動に応じて、ロータ132に連結された波動発生器24はロータ132とともに回転する。ベルト歯52の総数がスプライン歯42の総数より少ないので、波動発生器24がスプライン22内で回転するとき、ロータ132の回転は波動発生器24によって減速される。さらに、波動発生器24が出力部材28と係合しているので、出力部材28は波動発生器24とともに回転する。壁歯62の総数がベルト歯52の総数と等しいので、出力部材28は、波動発生器24と同じ速度で回転できる。したがって、出力部材28に取り付けられたネジ形成ブッシング100は、波動発生器24と同じ回転速度で出力部材28と回転し、ネジ形成シャフト98に沿って軸方向に移動して、車両を昇降させる。
【0030】
図9図11に、本発明の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置200を示す。波動歯車装置200は、スプライン202と波動発生器204とベルトアセンブリ206と出力部材208とを備える。スプライン202は、上面210、底面212、外面214および内面216を有する。上面210と底面212とは、互いから間隔を空けて配置される。外面214および内面216は、上面210を底面212に接続するよう中心軸Aの回りに延設される。スプライン202は、内面216から径方向内側に中心軸Aに向かって延設されるとともに互いから周方向に間隔を空けて配置される複数のスプライン歯218を有する。本発明の一の実施形態では、複数のスプライン歯218のそれぞれのスプライン歯は、第一歯形状を形成する略台形形状を有することができる。
【0031】
波動発生器204は、スプライン202内に回転可能に配置される。略リング状の波動発生器204は、中心軸Aの回りに延設される。本発明の実施形態では、波動発生器204は楕円形状を有することができる。波動発生器204は、中心軸Aに沿って波動発生器204を貫通して延びる円筒空間部220を有する。ベルトアセンブリ206が、波動発生器204の回りに延設される。ベルトアセンブリ206は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯218と係合するよう構成される複数のベルト歯222が形成されるリング状基体を有する。つまり、ベルト歯222は、スプライン歯218と直径方向に噛合する。ベルト歯222の総数は、スプライン歯218の総数より少ない。本発明の実施形態では、スプライン歯218の総数とベルト歯222の総数との間の差は、2または4である。ベルト歯222の総数がスプライン歯218の総数より少ないので、ロータの回転速度と波動発生器204の回転速度との間には減速比が生じる。ある実施形態では、リング状基体は、単一部材の連続ループとして形成できる弾性材料のベルトを有する。任意選択的にまたは追加的に、リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを有することができる。チェーンのそれぞれのリンクは前記ベルト歯の一つを形成している。
【0032】
出力部材208は、波動発生器204とベルトアセンブリ206とを収容する凹み領域224を有する。出力部材208は、ベルトアセンブリ206と係合し、これにより、波動発生器204からの回転運動に応じて、出力部材208が波動発生器204と同じまたは反対方向に回転する。波動発生器204が出力部材208の凹み領域224に収容されるので、波動歯車装置200をよりコンパクトにでき(小型化でき)、波動歯車装置200の組み立てを容易に行うことができる。出力部材208は、略円形状を有し、中心軸Aを中心として配置されるとともに、ベルトアセンブリ206と波動発生器204と当接するベースプレート226を有する。ベースプレート226は、中心軸Aの回りに環状に延設される周辺部228を有する。壁部230が、ベースプレート226から周辺部228に沿って軸方向に延設されて、スプライン202と係合する。
【0033】
壁部230は、互いから間隔を空けて配置されるとともにベルトアセンブリ206と係合するよう径方向に中心軸Aに向かって延設される複数の壁歯232を有し、これにより、出力部材208がベルトアセンブリ206および波動発生器204と同じ速度で回転できる。出力部材208がベルトアセンブリ206および波動発生器204と同じ速度で回転できるよう、壁歯232は、スプライン歯218の第一歯形状とは形状が異なる第二歯を有する。本発明の一の実施形態では、複数の壁歯232のそれぞれの壁歯は、第二歯形状を形成する略三角形状を有する。出力部材208は、壁部230から径方向内側にかつ中心軸Aの回りに環状に配置されるカラー234を有し、これにより、中心軸Aの回りにカラー234とベースプレート226と壁部230との間で延びる凹み領域224が形成される。複数の連結部材236が、カラー234から径方向外側に延設されるとともに、カラー234をベースプレート226に接続するようベースプレート226と連結される。カラー234は、円筒空間部220を通るよう延設され、そして中心軸Aに沿って延びる開口部238を形成する。
【0034】
複数のベルト歯222のそれぞれのベルト歯222は、ベルト歯222を補強し剛性を与えるよう内部に配置される金属インサート240を有する。金属インサート240は、中心軸Aに沿ってベルトアセンブリ206内を通り、ベルトアセンブリ206から離れて位置するインサート端部242へと延設される。インサート端部242は、壁歯232と噛合状態にあり、これにより、波動発生器204の回転運動を出力部材208に伝導する。
【0035】
ベルトアセンブリ206を、複数のリンク246を有するチェーン244として構成できる。それぞれのリンクの構造は、同様または同一である。リンク246は、互いに接続されて、連続ループを形成する。それぞれのリンク246は、ベルト歯222のうちの対応する一つを形成する。波動発生器204は、電気モータ等の駆動部材に波動発生器204を連結するための複数の穴(オリフィス)248を有することができる。カラー234は、周方向に互いから間隔を空けて配置される複数の係合部材250を有する。複数の係合部材250は、中心軸Aに向かって径方向内側に延設されてシャフトと係合し電気モータの回転運動をシャフトに伝導する。スプライン202の外面214は、互いから周方向に間隔を空けて配置され上面210から底面212に延設される複数の溝(チャンネル)252を有する。
【0036】
動作時において、回転運動またはトルク荷重は、電気モータまたは他の回転運動発生源によって、まず波動歯車装置200に波動発生器204を介して入力される。本発明の実施形態では、波動発生器204の複数のオリフィス250を電気モータまたは回転運動発生源に連結することができ、これにより、波動発生器204が波動歯車装置200に回転運動を入力できる。波動発生器204がスプライン202内で回転すると、波動発生器204の移動に応じてベルトアセンブリ206が変形し、波動発生器204の周囲で摺動する。ベルトアセンブリ206が波動発生器204の周囲で摺動するとき、ベルト歯222はスプライン歯218と噛合状態となる。ベルト歯222の総数がスプライン歯218の総数より少ないので、波動発生器204がスプライン202内で回転すると、波動発生器204の回転速度が低減される。また、ベルトアセンブリ206が波動発生器204の周囲で摺動するとき、金属インサート240のインサート端部242は壁歯232と噛合状態となる。壁歯232の総数がベルト歯222の総数と等しいので、出力部材208は、波動発生器204と同じ速度で回転できる。
【0037】
したがって、ベルト歯222がスプライン歯218と壁歯232の両方と係合するので、トルク荷重の入力により剪断力が発生する。本発明の一の実施形態では、ベルトアセンブリ206はエラストマ材料から例えばゴムから形成できる。ベルトアセンブリ206がエラストマ材料から形成される場合、回転運動またはトルク荷重の入力により生じる剪断力に耐えることができ、したがって、波動歯車装置200のノイズ、振動およびハーシュネス(NVH)を低減することができる。
【0038】
図12に、本開示の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置300を示す。波動歯車装置300は、スプライン302と波動発生器304とベルトアセンブリ306と出力部材308とを備える。スプライン302は、上面310、底面312、外面314および内面316を有する。上面310と底面312とは、互いから間隔を空けて配置される。外面314および内面316は、上面310を底面312に接続するよう中心軸Aの回りに延設される。スプライン302は、内面316から径方向内側に中心軸Aに向かって延設されるとともに互いから周方向に間隔を空けて配置される複数のスプライン歯318を有する。本開示の一の実施形態では、複数のスプライン歯318のそれぞれのスプライン歯は、第一歯形状を形成する略台形形状を有することができる。
【0039】
波動発生器304は、スプライン302内に回転可能に配置される。略リング状の波動発生器304は、中心軸Aの回りに延設される。本開示の実施形態では、波動発生器304は楕円形状を有することができる。波動発生器304は、中心軸Aに沿って波動発生器304を貫通して延びる円筒空間部320を有する。ベルトアセンブリ306が、波動発生器304の回りに延設される。
【0040】
ベルトアセンブリ306を、複数のリンク345を有するチェーン344として構成できる。それぞれのリンクの構造は、同様または同一である。リンク345は、互いに接続されて、連続ループを形成する。それぞれのリンク345は、連続ループの中心に面する裏打ちプレート346と、裏打ちプレートに取り付けられるとともに連続ループの中心から外側へと離間する方向に面する二つの第一管状部347と、を有する。二つの第一管状部347は、互いに同軸状に配置され、第一管状部347のそれぞれの軸方向の長さにほぼ等しい距離で互いから間隔を空けて配置される。それぞれのリンク345は、また、裏打ちプレートに取り付けられるとともに連続ループの中心から外側へと離間する方向に面する二つの第二管状部348を、第一管状部347とは反対側に有する。二つの第二管状部348は、互いに同軸状に配置され、第二管状部348のそれぞれの軸方向の長さにほぼ等しい距離で互いから間隔を空けて配置される。
【0041】
チェーン344のリンク345うちのある一つにおける第一管状部347は、チェーン344のリンク345のうちの次に隣接する一つにおける第二管状部348とずれた位置で組み合わさるよう構成される。リンクピン340が、リンク345のうちの一つにおける第一管状部347と、リンク345のうちの次に隣接する一つにおける組み合わされた第二管状部348と、を貫通して延設されることによって、チェーンのうちの該二つリンク345が連結される。また、リンクピン340は、ベルト歯322に補強および剛性を与えるよう機能することもできる。一体に接続される第一管状部347および第二管状部348の各積み重ね部分によって、チェーン344のベルト歯322が形成される。ベルト歯322は、このように、スプライン歯318と係合するよう径方向外側に延設される。つまり、ベルト歯322は、スプライン歯318と直径方向に噛合する。ベルト歯322の総数はスプライン歯318の総数より少ない。図13は、チェーン344の分解図を示す。
【0042】
本開示の実施形態では、スプライン歯318の総数とベルト歯322の総数との間の差は、2または4である。ベルト歯322の総数がスプライン歯318の総数より少ないので、これにより、ロータの回転速度と波動発生器304の回転速度との間に減速比が生じさせることができる。
【0043】
出力部材308は、波動発生器304とベルトアセンブリ306とを収容するための凹み領域324を有する。出力部材308は、ベルトアセンブリ306と係合し、これにより、波動発生器304からの回転運動に応じて、出力部材308が波動発生器304と同じまたは反対方向に回転する。波動発生器304が出力部材308の凹み領域324に収容されるので、波動歯車装置300をよりコンパクトにでき(小型化でき)、波動歯車装置300の組み立てを容易に行うことができる。出力部材308は、略円形状を有し、中心軸Aを中心として配置されるとともに、ベルトアセンブリ306と波動発生器304と当接するベースプレート326を有する。ベースプレート326は、中心軸Aの回りに環状に延設される周辺部328を有する。壁部330が、スプライン302と係合するよう、周辺部328から外側にかつ中心軸Aの回りに延設される。壁部330は、互いから間隔を空けて配置されるとともにベルトアセンブリ306と係合するよう壁部330から外側にかつ径方向に中心軸Aに向かって延設される複数の壁歯332を有し、これにより、出力部材308がベルトアセンブリ306と波動発生器304と同じ速度で回転できる。出力部材308がベルトアセンブリ306および波動発生器304と同じ速度で回転できるよう、壁歯332は、スプライン歯318の第一歯形状とは形状が異なる第二歯を有することができる。本開示の一の実施形態では、複数の壁歯332のそれぞれの壁歯332は、第二歯形状を形成する略三角形状を有する。出力部材308は、略円形状を有し中心軸Aを中心として配置され円筒空間部320と連通する開口空間部334を有する。
【0044】
波動発生器304は、電気モータ等の駆動部材に波動発生器304を連結するための複数の穴(オリフィス)350を有することができる。ベースプレート326は、周方向に互いから間隔を空けて配置される複数の係合部材352を有する。複数の係合部材は、中心軸Aに向かって径方向内側に延設されてシャフトと係合し電気モータの回転運動をシャフトに伝導する。波動発生器304は、オリフィス348に隣接して配置されるとともに波動発生器304から径方向外側にかつ中心軸Aの回りに環状に延設されるフランジ352を有する。フランジ352はスプライン302と当接し、スプライン302を出力部材308と波動発生器304との間に挟持してスプライン302の軸方向移動を防止する。
【0045】
動作時において、回転運動またはトルク荷重は、電気モータまたは他の回転運動発生源によって、まず波動歯車装置300に波動発生器304を介して入力される。本開示の実施形態では、波動発生器304の複数のオリフィス350を電気モータまたは回転運動発生源に連結することができ、これにより、波動発生器304が波動歯車装置300に回転運動を入力できる。波動発生器304がスプライン302内で回転すると、波動発生器304の移動に応じてベルトアセンブリ306が変形し、波動発生器304の周囲で摺動する。ベルトアセンブリ306が波動発生器304の周囲で摺動するとき、ベルト歯322はスプライン歯318と噛合状態となる。ベルト歯322の総数がスプライン歯318の総数より少ないので、波動発生器304がスプライン302内で回転すると、波動発生器304の回転速度が低減される。また、ベルトアセンブリ306が波動発生器304の周囲で摺動するとき、ベルトアセンブリ306はまた壁歯332と噛合状態となる。壁歯332の総数がベルト歯322の総数と等しいので、出力部材308は、波動発生器304の回転方向と同じか反対の方向に回転する。したがって、ベルト歯322がスプライン歯318と壁歯332の両方と係合するので、トルク荷重の入力により剪断力が発生する。本開示の一の実施形態では、ベルトアセンブリ306はエラストマ材料から(例えばゴムから)形成できる。ベルトアセンブリ306がエラストマ材料から形成される場合、回転運動またはトルク荷重の入力により生じる剪断力に耐えることができ、したがって、波動歯車装置300のノイズ、振動およびハーシュネス(NVH)を低減することができる。
【0046】
図14は、本開示の他の実施形態の構成にかかる波動歯車装置420の分解図である。図14の波動歯車装置420は、波動発生器424と、波動発生器424の周囲に巻き付いてその回りで回転するよう構成されるベルトアセンブリ426と、を有する。また、波動歯車装置420は、ベルトアセンブリ426が波動発生器424から軸方向に外れてしまうのを防止するために、ベルトアセンブリ426を覆うよう配置される上端部ワッシャ428を有する。波動発生器424は、図2の波動歯車装置20のベルトアセンブリ26と同様に機能することができる。ベルトアセンブリ426は、図2の波動歯車装置20のベルトアセンブリ26と同様に機能することができる。
【0047】
波動発生器424は、外形が長円形状である外壁432を有する偏心コア430を有する。偏心コア430を成形プラスチックで形成することもできる。なお、他の材料を、例えば金属または複合材料を、用いることもできる。偏心コア430は、外壁432の、対向する両側に、軸方向の一方の端部に隣接する位置に、二つの凹部434を有する。また、波動発生器424は、硬い素材の例えば鋼の被覆(クラディング)スリーブ440を有する。クラディング・スリーブ440は、偏心コア430の外壁432を被覆(カバー)するよう構成される中空の長円形円筒形状を有する。クラディング・スリーブ440は、曲率がない外面442と、径方向内側へ延設される二つのタブ(凸部)444と、を有する。クラディング・スリーブ440のタブ444は、偏心コア430の二つの凹部434の対応する一方と係合するよう、構成され、これにより、クラディング・スリーブ440を偏心コア430へと保持し、クラディング・スリーブ440と偏心コア430との間の相対的な回転を防止する。
【0048】
また、波動発生器424は、ケージ452と複数のニードル454とを有するベアリングアセンブリ450を有する。それぞれのニードル454は、偏心コア430の軸と平行に延設されるとともに、互いから間隔を空けてケージ452の定位置に保持される。ベアリングアセンブリ450は、クラディング・スリーブ440の曲率がない外面442の周囲に延設されるよう、構成される。ベアリングアセンブリ450を可撓性とすることができ、これにより、ベルト460が波動発生器424の回りを回転するときに、ベアリングアセンブリが偏心コア430の外壁432の形状に対応できる。
【0049】
ベルトアセンブリ426は、弾性材料の例えば硬いポリウレタンのベルト460を有する。ベルト460は、硬い素材の例えば鋼の裏打ちスリーブ462の周囲に配置される、裏打ちスリーブ462を、薄い側壁を有する中空円筒体として形成できる。裏打ちスリーブ462を可撓性とすることができ、これにより、ベルト460が波動発生器424の回りを回転するときに、裏打ちスリーブが偏心コア430の外壁432の形状に対応できる。ある実施形態では、ベルト460の弾性材料を、裏打ちスリーブ462上に被覆成形(オーバーモールド成形)することによって形成することもできる。ベルト460の弾性材料を、例えば摩擦嵌合を用いる他の手段、接着剤を用いる接合等によって、裏打ちスリーブ462に結合することもできる。
【0050】
動作時において、ベアリングアセンブリ450を、波動発生器424のクラディング・スリーブ440とベルトアセンブリ426の裏打ちスリーブ462との間に挟持し、これにより、ニードル454をクラディング・スリーブ440と裏打ちスリーブ462との間で転動させ、したがって、ベルトアセンブリ426と波動発生器424との間の嵌合の摩擦を比較的が小さくできる。
【0051】
図15は、本開示の一の面にかかる波動発生器424の斜視図である。
【0052】
図16は、本開示の一の面にかかるチェーンアセンブリ470の斜視図である。チェーンアセンブリ470は、裏打ちスリーブ462の周囲に配置されるチェーン344を有する。チェーンアセンブリ470が、ベアリングアセンブリ450を有する波動発生器424と組み合わせて用いられる場合、さらなる効率向上および/またはさらなる耐荷重性能が得られる。
【0053】
波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに、偏心コアを有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するよう構成される複数のベルト歯が形成されるリング状基体を有する。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。波動歯車装置は、ベアリングアセンブリと出力部材とを備える。ベアリングアセンブリは、波動発生器とベルトアセンブリとの間に配置されるとともに、それぞれが中心軸と平行に延設される複数のニードルを有する。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する。
【0054】
ある態様では、リング状基体は弾性材料のベルトを備えることができる。ある態様では、リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを備えており、それぞれのリンクがベルト歯の一つを形成している。
【0055】
ある態様では、ベルトアセンブリはさらに裏打ちスリーブを備えており、ベアリングアセンブリの複数のニードルは、裏打ちスリーブに沿って転動するよう構成される。
【0056】
ある実施形態では、出力部材は、ベルトアセンブリと波動発生器とに当接するよう配置されるベースプレートを有する。ベースプレートは、中心軸の回りに環状に延設される周辺部を有する。
【0057】
ある実施形態では、波動歯車装置は、さらに、ベースプレートから周辺部に沿って軸方向に延設されとともに、スプラインと係合するよう構成される壁部を備えることができる。壁部は、互いから間隔を空けて配置されるとともにベルトアセンブリと係合するよう中心軸に向かって径方向に延設される複数の壁歯を有する。
【0058】
波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。また、波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに偏心コアを有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、裏打ちスリーブとリング状基体とを有する。リング状基体は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するための複数のベルト歯が形成される。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。波動歯車装置は、ベアリングアセンブリと出力部材とを備える。ベアリングアセンブリは、波動発生器とベルトアセンブリとの間に配置される。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹部を有する。
【0059】
ある態様では、裏打ちスリーブは鋼で形成される。ある態様では、裏打ちスリーブは中空円筒体として形成される。
【0060】
ある態様では、リング状基体は弾性材料のベルトを備える。ある態様では、ベルトアセンブリは、裏打ちスリーブに被覆成形される弾性材料のベルトを有する。ある態様では、リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを備える。それぞれのリンクは、ベルト歯の一つを形成する。
【0061】
ある実施形態では、出力部材は、ベルトアセンブリと波動発生器とに当接するよう配置されるベースプレートを有する。ベースプレートは、中心軸の回りに環状に延設される周辺部を有する。
【0062】
ある実施形態では、波動歯車装置は、さらに、ベースプレートから周辺部に沿って軸方向に延設されとともに、スプラインと係合するよう構成される壁部を備える。壁部は、互いから間隔を空けて配置されるとともにベルトアセンブリと係合するよう中心軸に向かって径方向に延設される複数の壁歯を有する。
【0063】
本発明の他の面では、波動歯車装置を提供する。波動歯車装置は、上面、底面、外面および内面を有するスプラインを備える。上面と底面とが互いから軸方向に間隔を空けて配置される。外面と内面とが中心軸の回りに環状にかつ上面と底面との間に延設される。スプラインには、複数のスプライン歯が内面から中心軸に向かって延設されている。また、波動歯車装置は、波動発生器とベルトアセンブリとを備える。波動発生器は、スプライン内に回転可能に配置されるとともに偏心コアを有する。偏心コアは凹部を有する。ベルトアセンブリは、波動発生器の回りに延設される。ベルトアセンブリは、リング状基体を有する。リング状基体は、径方向外側に延設されるとともにスプライン歯と係合するための複数のベルト歯が形成される。ベルト歯の総数は、スプライン歯の総数より少ない。また、波動歯車装置は、クラディング・スリーブとベアリングアセンブリと出力部材とを備える。クラディング・スリーブは、波動発生器の偏心コアを囲繞する。クラディング・スリーブは、偏心コアとクラディング・スリーブとの間の相対的な回転を防止するために偏心コアの凹部と係合するよう構成される凸部を有する。ベアリングアセンブリは、クラディング・スリーブとベルトアセンブリとの間に配置される。出力部材は、ベルトアセンブリと係合するとともに、波動発生器およびベルトアセンブリとを収容する凹み領域を有する。
【0064】
ある実施形態では、凹部は、偏心コアに形成される複数の凹部の一つである。凸部は複数の凸部の一つである。複数の凸部のそれぞれが偏心コアの複数の凹部の対応する一つと係合するよう構成される。ある実施形態では、ベアリングアセンブリは、クラディング・スリーブに沿って転動するよう構成される複数のニードルを有する。
【0065】
ある態様では、ベルトアセンブリはさらに裏打ちスリーブを備えており、ベアリングアセンブリの複数のニードルは、裏打ちスリーブに沿って転動するよう構成される。ある実施形態では、リング状基体は弾性材料のベルトを備える。ある実施形態では、リング状基体は複数のリンクを有するチェーンを備える。それぞれのリンクがベルト歯の一つを形成する。
【0066】
もちろん、本発明に多くの変形および変更を上記の教示に基づいて行うことができ、詳細な説明以外にも添付の特許請求の範囲内で実現できる。上記の記載が本発明の新規性が有用となるあらゆる組み合わせにわたることは理解されよう。装置の請求項における語「前記」の使用は、それが前出されていて、その請求項またはその請求項が従属する請求項の範囲に含まれていることを意味する明確な引用である。「前記」を使用していないものでも、その請求項またはその請求項が従属する請求項の範囲に含まれている場合もある。
【符号の説明】
【0067】
20,200,300,420 波動歯車装置
22,202,303 スプライン
24,204,304,424 波動発生器
26,426 ベルトアセンブリ
28 出力部材
30 上面
32 底面
34 外面
36 内面
38 突出部
40 終端部
42 スプライン歯
44 底部
46 上端部
48 突起部
50 円筒空間部
52 ベルト歯
54 凹み領域
56 ベースプレート
58 周辺部
60 壁部
62 壁歯
64 カラー
66 開口部
68 金属インサート
70 インサート端部
72 孔
74 車両昇降システム
76 ダンパ
78 ハウジング
80 第一端部
82 第二端部
84 圧縮チャンバ
86 反発チャンバ
88 装着リング
90 ピストン
92 ロッド・ガイド
94 ピストンロッド
96 アクチュエータ
98 シャフト
100 ブッシング
102 ブッシング・ボールベアリング
104 第一開口端部
106 第二開口端部
108 スナップリング
110 一次端部
112 二次端部
114 カバー
116 近端部
118 遠端部
120 隔室
122 終端板
124 留め具
126 バネ受け部
128 ボルト
130 電気モータ
132 ロータ
134 本体
136 ボビン
138 コイル
200,300 波動歯車装置
202,302 スプライン
204,304 波動発生器
206,306 ベルトアセンブリ
208,308 出力部材
210,310 上面
212,312 底面
214,314 外面
216,316 内面
218,318 スプライン歯
220,320 円筒空間部
222,322 ベルト歯
224,324 凹み領域
226,326 ベースプレート
228,328 周辺部
230,330 壁部
232,332 壁歯
234 カラー
236 連結部材
238 開口部
240,340 金属インサート
242 インサート端部
244,344 チェーン
246,345 リンク
248,348,350 穴(オリフィス)
250 係合部材
252 溝
334 開口空間部
340 リンクピン
346 裏打ちプレート
352 係合部材
352 フランジ
347 第一管状部
348 第二管状部
428 上端部ワッシャ
430 偏心コア
432 外壁
432 凹部
440 クラディング・スリーブ
442 外面
444 タブ(凸部)
450 ベアリングアセンブリ
452 ケージ
454 ニードル
460 ベルト
462 裏打ちスリーブ
470 チェーンアセンブリ
A 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16