(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022875
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】物品保持装置、物品保持装置の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127927
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】山本 彩代
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707FS01
3C707FT11
3C707KS33
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT06
3C707KW03
3C707KX10
3C707LU06
(57)【要約】
【課題】安定的に物品を処理可能な物品保持装置の制御装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の物品保持装置は、保持機構と、アーム機構と、回動機構と、力覚センサと、制御部と、を備える。保持機構は、物品を吸着し保持する保持部を備える。アーム機構は、保持機構を移動させる。回動機構は、保持機構を回動させる。力覚センサは、保持機構にかかるアーム機構が保持機構を移動させた際のモーメントを取得する。制御部は、力覚センサからモーメントを取得し、取得したモーメントの方向及び大きさが、保持部の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す所定の範囲を超えるか否かを判定し、モーメントが所定の範囲を超える場合、モーメントが所定の範囲を超えないよう回動機構を制御し保持機構を回動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を吸着し保持する保持部を備える保持機構と、
前記保持機構を移動させる移動機構と、
前記保持機構を回動させる回動機構と、
前記保持機構にかかるモーメントを取得する力覚センサと、
前記力覚センサから前記移動機構が前記保持機構を移動させる際にかかる前記モーメントを取得し、取得した前記モーメントの方向及び大きさが、前記保持部の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す所定の範囲を超えるか否かを判定し、前記モーメントが前記所定の範囲を超える場合、前記モーメントが前記所定の範囲を超えないよう前記回動機構を制御し前記保持機構を回動させる制御部と、
を備える物品保持装置。
【請求項2】
前記所定の範囲は、前記保持機構が前記物品を保持した状態で、前記移動機構が前記保持機構を移動させた際にかかる前記モーメントによって前記保持機構から前記物品が落下するか否かを示す範囲である、請求項1に記載の物品保持装置。
【請求項3】
前記所定の範囲は、前記保持機構が前記物品を保持した状態で、前記移動機構が前記保持機構を移動させた際にかかる前記モーメントによって前記保持機構から前記物品が落下するモーメントよりも小さい値を示す範囲である、請求項1に記載の物品保持装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記モーメントが前記所定の範囲を超える場合、前記所定の範囲においてモーメントが最も大きい方向に前記モーメントの方向が向くよう前記回動機構を制御し前記保持機構を回動させる、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の物品保持装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モーメントが前記所定の範囲を超える場合、さらに、前記保持機構を移動させる速さを減速させるよう前記移動機構を制御する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の物品保持装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記保持機構が前記物品を保持する前に、前記保持機構が前記物品の保持を開始してから終了するまでの前記保持機構の移動経路を決定する前記移動機構の動作計画を決定し、
前記保持機構が前記物品を保持して所定の距離移動させた際に取得した前記モーメント及び前記動作計画に基づいて、前記動作計画において前記移動機構を動作させた際のモーメントが前記所定の範囲を超えることがあるか否かを判定する、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の物品保持装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記保持機構が前記物品を保持する前に、前記保持機構が前記物品の保持を開始してから終了するまでの前記保持機構の移動経路を決定する前記移動機構の動作計画を決定し、
前記制御部は、前記保持機構が前記物品を保持した状態で、前記保持機構を前記移動機構により前記動作計画に基づいて移動させる間に前記力覚センサから前記モーメントを取得し、前記モーメントが前記所定の範囲を超えるか否かを判定する、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の物品保持装置。
【請求項8】
物品を吸着し保持する保持部を備える保持機構と、
前記保持機構を移動させる移動機構と、
前記保持機構を回動させる回動機構と、
前記保持機構にかかるモーメントを取得する力覚センサと、を備える物品保持装置を制御する制御方法であって、
前記力覚センサから前記移動機構が前記保持機構を移動させる際にかかる前記モーメントを取得するステップと、
取得した前記モーメントの方向及び大きさが、前記保持部の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す所定の範囲を超えるか否かを判定するステップと、
前記モーメントが前記所定の範囲を超える場合、前記モーメントが前記所定の範囲を超えないよう前記回動機構を制御し前記保持機構を回動させるステップと、
を有する物品保持装置の制御方法。
【請求項9】
物品を吸着し保持する保持部を備える保持機構と、
前記保持機構を移動させる移動機構と、
前記保持機構を回動させる回動機構と、
前記保持機構にかかるモーメントを取得する力覚センサと、を備える物品保持装置を制御する制御装置であって、
前記物品保持装置と通信する通信部と、
前記保持部の数と位置を記憶する記憶部と、
前記通信部を介して前記力覚センサから前記移動機構が前記保持機構を移動させる際にかかる前記モーメントを取得し、取得した前記モーメントの方向及び大きさが、前記記憶部が記憶する前記保持部の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す所定の範囲を超えるか否かを判定し、前記モーメントが前記所定の範囲を超える場合、前記モーメントが前記所定の範囲を超えないよう前記回動機構を制御し前記保持機構を回動させる制御部と、
を備える物品保持装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物品保持装置、物品保持装置の制御方法及び制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
小包などの物品(荷物)を配送する仕分システムでは、収集した荷物を荷降ろし等の荷役作業が必要となる。例えば、物品を保持する保持機構と、保持機構を移動させる移動機構とを有するロボットアームと、ロボットアームの動作を制御する制御装置と、制御装置に動作を指示する情報処理装置とを備えるシステムが実用化されている。
【0003】
ロボットアームの保持機構は、物品に吸着する吸着パッドを備える。保持機構は、吸着パッドが物品の表面に接し、且つ吸着パッド内が負圧になった場合に、物品を保持することができる。
【0004】
ロボットアームの制御装置は、情報処理装置から供給された動作計画に基づいて、移動機構により保持機構を移動させる。さらに、制御装置は、保持機構により物品を保持させ、移動機構により保持機構を移動させ、物品を仕分先まで移動させる。しかしながら、移動機構の動作により物品にモーメントが生じ、それによって、吸着パッドから物品が落下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、安定的に物品を処理可能な物品保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の物品保持装置は、保持機構と、移動機構と、回動機構と、力覚センサと、制御部と、を備える。保持機構は、物品を吸着し保持する保持部を備える。移動機構は、保持機構を移動させる。回動機構は、物品を回動させる。力覚センサは、保持機構にかかるモーメントを取得する。制御部は、力覚センサから移動機構が保持機構を移動させる際にかかるモーメントを取得し、取得したモーメントの方向及び大きさが、保持部の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す所定の範囲を超えるか否かを判定し、モーメントが所定の範囲を超える場合、モーメントが所定の範囲を超えないよう回動機構を制御し保持機構を回動させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る物品保持装置の概略構成の一例を示す上面図。
【
図2】実施形態に係る物品保持装置が物品を保持した際の概略構成の一例を示す側面図。
【
図3】実施形態に係る物品保持装置の装置構成の一例を示すブロック図。
【
図4】実施形態に係る物品保持装置が備える保持機構と限界範囲の一例を示す模式図。
【
図5】実施形態に係る物品がある座標から別の座標へ到達するまでの経路を模式的に示す模式図。
【
図6】実施形態に係る物品保持装置が備える保持機構を移動させた際のモーメントと限界範囲の一例を示す模式図。
【
図7】実施形態に係る物品保持装置が備える保持機構を移動及び回動させた際のモーメントと限界範囲の一例を示す模式図。
【
図8】実施形態に係る制御装置が有するプロセッサの動作フローの一例を示すフローチャート。
【
図9】実施形態に係る制御装置が有するプロセッサの搬送動作計画の修正の一例を示すフローチャート。
【
図10】実施形態に係る制御装置が有するプロセッサの搬送動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。実施形態の物品保持装置は、例えば集積領域から保持した物品を所望領域まで移動させる装置であり、物品を保持する物品保持装置において荷役の実作業を行う。物品保持装置は、例えば物流センタなどで稼働する物流システムを構成する装置の一つであり、荷役に必要な各種の処理を行う。物品は、宅配物、小包、郵便物等を含む荷物、各種の部品や製品など、荷役の対象となり得る有形物である。物品は、物品そのものの他、その物品を梱包や包装した状態の有形物を含む。物品の態様(形状、大きさ、重量、材質など)は、一律ではなく多種多様である場合を想定するが、一律であってもよい。物品には、その材質(梱包状態や包装状態を含む)として、形態が自由に変形しない物品(以下、箱物という)と、形態が自由に変形する物品(以下、柔軟物という)の双方が含まれる。荷役には、荷降ろし、荷積み、仕分けなどのような移動を伴う物品に対する各種の作業が含まれる。
【0010】
箱物は、荷役作業中に自重により変形せず、一定の形態を保つ。例えば、各面が平坦の段ボールなどの梱包容器に収容された箱状の物である。梱包容器は、六面体に限らず、六面体の特定の角や辺が平面とされている多面体も含む。これに対し、柔軟物は、荷役作業中に自重により変形し、形態を変える。例えば、ビニールフィルムや包装紙などで包装された衣類や食品類のように比較的軽量な扁平の物であるが、これらに限定されない。
【0011】
図1を用いて実施形態に係る物品保持装置1について説明する。
図1は、実施形態に係る物品保持装置1の概略構成の一例を示す上面図である。
図2は、実施形態に係る物品保持装置1が物品を保持した際の概略構成の一例を示す側面図である。
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る物品保持装置1は、検出装置2と、アーム機構3と、制御装置4と、保持機構6を備える。
【0012】
検出装置2は、集積領域11から所望の領域(以下、移動先領域という)12への物品5の移動を制御するために必要な各種の検出を行い、検出結果(取得データ)を制御装置4に与える。集積領域11は、例えば荷降ろしされた各種の物品5が次工程に搬送される前に一時的に集積される領域である。集積領域11の物品5は、整然と集積されていてもよいし、ばら積みされていてもよく、一つ一つ単体で載置されていてもよい。移動先領域12は、例えば物品5を仕分工程や組立工程などに搬送するための領域である。集積領域11および移動先領域12は、例えば箱、ケージ、棚などの物品5を収容する什器、ベルトコンベアやローラコンベア、台車などの搬送装置、仕分けや組み立てなどの作業台である。
図1には、集積領域11として作業台、移動先領域12としてベルトコンベアのセルを適用した例を示す。
【0013】
検出装置2は、集積領域11における物品群5sの集積態様を検出する。物品群5sは、集積領域11に集積されている物品5の集合体であるが、集積されている物品5が一つのみである場合も含めて規定される。集積されている物品5が一つのみである場合には、例えば集積された物品5が当初から一つのみである場合のほか、複数の物品5が一つずつ集積領域11から移動先領域12に順次移動され、最終的に一つになっている(移動されていない物品5が一つだけ残っている)場合などが含まれる。
【0014】
物品群5sの集積態様は、例えば集積された各物品5の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質などの態様である。これらの集積態様を検出するべく、本実施形態では、検出装置2としてRGBカメラ及び距離センサを適用している。RGBカメラは、集積領域11に集積された物品群5sのカラー画像を撮像する。したがって、RGBカメラは、集積領域11が画角内に収まり、ピントを合わせられる所定位置に配置されている。距離センサは、距離センサから集積領域11に集積された物品群5sまでの距離を示す距離情報を取得する。例えば、集積領域11を区画するフレームや物流センタの建屋の天井や壁面、あるいはアーム機構3、後述する保持機構6の本体部61などの任意の位置に、RGBカメラ及び距離センサは配置可能である。これにより、RGBカメラ及び距離センサは、物品群5sの集積態様を捉え、物品群5sの集積態様を把握可能とされている。ただし、検出装置2には、RGBカメラ及び距離センサに代えてもしくは加えて、3Dカメラ、複数の2Dカメラ、分光カメラ、光学センサなどを適用してもよい。検出装置2は、検出結果、一例としてRGBカメラが撮像した画像のデータ及び距離センサから取得した距離情報を制御装置4に送信する。
【0015】
アーム機構3は、保持機構6を移動及び回動させる。例えば、アーム機構3は、物品保持装置1において物品5を移動及び回動させる装置であり、集積領域11から物品5をピッキングし、移動先領域12に移動させ、必要に応じて回動させる。
図1及び
図2に示すように、アーム機構3は、基台部31と、移動機構32と、回動機構33と、力覚センサ34と、を備え、移動機構32が基台部31に対して変位するいわゆるピッキングロボットである。ただし、アーム機構3は、スカラロボット(水平多関節ロボット)、XYZステージ、直動アクチュエータ、あるいはこれらとの組み合わせなどとすることも可能であり、物品5の移動範囲に応じた可動範囲を有し、保持機構6を回動可能であり、保持機構6にかかるモーメントを取得することが可能な物品保持装置を適用すればよい。
【0016】
基台部31は、例えば物流センタの建屋の床面に位置決め固定される。ただし、基台部31は、このように位置決め固定されることなく、床面に対して移動可能となっていてもよい。例えば、床面に敷設したガイドレールなどに沿って基台部31をスライド可能に支持する構成、リニアステージや自走台車に載置した構成などとしてもよい。これにより、アーム機構3を床面に対して必要に応じて移動させることが可能となる。
【0017】
移動機構32は、保持機構6を移動させる。例えば、移動機構32は、基台部31との接続部位である基端から他方の先端まで、複数の関節部で連結されて伸長している。移動機構32は、関節部によって複数に細分され、各部分が関節部において所定の軸(関節軸)まわりに回動する。これにより、移動機構32は、基台部31に対して所望の姿勢とされ、所定範囲内において自由に変位(動作)する。所定範囲(つまり、可動範囲)には、物品5の集積領域11および物品5の移動先である移動先領域12が含まれる。したがって、移動機構32の各部分を軸まわりに任意の角速度や角加速度で回動させることで、移動機構32を集積領域11および移動先領域12に対して変位させることが可能となる。なお、関節部および軸の数は、移動機構32に要求される動作精度や可動範囲などに応じて任意に設定すればよい。
【0018】
回動機構33は、保持機構6を回動させる。例えば、回動機構33は、移動機構32の先端(アーム先端部32a)に取り付けられており、物品5を解放可能に保持する保持機構6を備える。保持は、例えば吸着、挟持など、物品5の保持態様全般を包含する概念として規定される。本実施形態では一例として、回動機構33は、エアによって物品5の吸着と解放を行う。これにより、回動機構33は、集積領域11から物品5を保持機構6で吸着し、吸着した物品5を移動先領域12で解放することで、物品5を集積領域11から移動先領域12へ移動させることが可能とされている。また、回動機構33は、移動機構32の先端を中心に保持機構6を回動させる。これにより、回動機構33は、保持機構6が保持する物品の姿勢を変えることができる。なお、回動機構33は、移動機構32又は保持機構6の一部として構成されてもよい。
【0019】
保持機構6は、物品を保持する。例えば、保持機構6は、本体部61と、吸着パッド62(保持部)と、を備える。保持機構6は、真空発生器や、コンプレッサ、電磁弁、圧力センサ、配管など物品を真空吸着するための機構を含む。これにより、アーム機構3は、集積領域11から物品5を保持機構6で保持(具体的には吸着パッド62で吸着)し、保持した物品5を移動先領域12で解放することで、物品5を集積領域11から移動先領域12へ移動させることが可能とされている。
【0020】
本体部61は、アーム先端部32aに取り付けられ、保持機構6の各構成部材を支持する。本体部61は、真空吸着に必要な配管、バルブ等を含む。本体部61の形態は、移動機構32の動作に支障がなければ特に限定されず、箱体や枠体などであればよい。本体部61は、保持機構6の各構成部材を支持可能な剛性を有する金属製であればよいが、必要な剛性を有していれば樹脂製などでも構わない。
【0021】
吸着パッド62は、容易に変形可能な素材、例えばシリコーンやポリ塩化ビニルなどの低硬度のゴム素材で形成されている。一例として、吸着パッド62の剛性は、箱物よりも低く、柔軟物よりも高ければよいが、柔軟物より低くてもよい。吸着パッド62は、本体部61の内部に設けられた配管及びバルブ、保持機構6の外部に設けられた排気装置等の不図示の排気系と接続される。一つの吸着パッド62は、他の吸着パッドとは独立して排気可能である。なお、吸着パッド62の数及び位置は、特に限定されない。本実施形態では一例として、吸着パッド62が正方形に四つ配置されている場合を想定するが、単数であっても構わない。
【0022】
力覚センサ34は、保持機構6にかかるモーメントを取得する。例えば、力覚センサ34は、保持機構6にかかるXYZ軸方向にかかる力と、XYZ軸それぞれを中心とするモーメントの値を取得するセンサである。直方体状の物品5を鉛直上方から吸着する場合、制御装置4は、吸着パッド62を物品5に吸着させ、アーム機構3により物品5を所定距離だけ移動させる。力覚センサ34は、この時に保持機構6にかかるモーメントを取得し、制御装置4に送信する。力覚センサ34の各軸で検出される応力の測定値は、物品5の重量によって変動する。力覚センサ34の各軸の測定値は、物品5の重量が大きくなるほど大きくなる。また、物品3Dの重心とピッキング位置とが水平方向にずれている場合、物品3Dを所定距離持ち上げた時の力覚センサ34の測定値は、複数の軸で差が生じる。具体的には、物品3Dの重心とピッキング位置とのズレは、水平方向を軸とするモーメントとして力覚センサ34の測定値に現れる。
【0023】
物品移動処理を開始する場合、アーム機構3および保持機構6は、それぞれ初期状態とされている。アーム機構3の初期状態は、移動機構32が基準位置に位置付けられた状態である。基準位置は、例えば集積領域11および移動先領域12のいずれとも移動機構32が干渉しない位置である。保持機構6の初期状態は、吸着パッド62の内部が大気開放(真空破壊)された状態である。
【0024】
図3は、実施形態に係る物品保持装置1の装置構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置4は、プロセッサ301(制御部)と、ROM302(read-only memory)と、RAM303(random-access memory)と、補助記憶デバイス304(記憶部)と、ロボットインタフェース305(通信部)と、センサインタフェース306と、を有している。
【0025】
プロセッサ301は、物品保持装置1の処理に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピュータの中枢部分に相当し、物品保持装置1全体を統合的に制御する。プロセッサ301は、ROM302又は補助記憶デバイス304などに記憶されたシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア又はファームウェアなどのプログラムに基づいて、物品保持装置1の各種の機能を実現するべく制御を実行する。プロセッサ301は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、又はDSP(digital signal processor)である。あるいは、プロセッサ301は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。
【0026】
ROM302は、プロセッサ301を中枢とするコンピュータの主記憶装置に相当する。ROM302は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM302は、上記のプログラムを記憶する。また、ROM302は、プロセッサ301が各種の処理を行う上で使用するデータ又は各種の設定値などを記憶する。
【0027】
RAM303は、プロセッサ301を中枢とするコンピュータの主記憶装置に相当する。RAM303は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM303は、プロセッサ301が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアなどとして利用される。
【0028】
補助記憶デバイス304は、プロセッサ301を中枢とするコンピュータの補助記憶装置に相当する。補助記憶デバイス304は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)(登録商標)、HDD(hard disk drive)又はSSD(solid state drive)などである。補助記憶デバイス304は、上記のプログラムを記憶する場合もある。また、補助記憶デバイス304は、プロセッサ301が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ301での処理によって生成されたデータ又は各種の設定値などを保存する。補助記憶デバイス304は、吸着パッド62の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す限界範囲L(所定の範囲)を記憶する。限界範囲Lは、プロセッサ301が力覚センサ34から取得したモーメントに基づいてアーム機構3を回動又は減速させるか否かを判定するための範囲を示す。本実施形態の一例として、限界範囲Lは、保持機構6が物品を保持した状態で、アーム機構3が保持機構6を移動させた際にかかるモーメントによって保持機構6から物品が落下する値を示す範囲である。
【0029】
ここで、
図4を用いて、限界範囲Lについて説明する。
図4は、実施形態に係る物品保持装置1が備える保持機構6と限界範囲Lの一例を示す模式図である。限界範囲Lは、アーム機構3が保持機構6を回動させる軸に垂直な面(X-Y平面)に仮想的に示される領域を示す範囲である。保持機構6に保持された物品5は、力覚センサ34から取得されたモーメントの方向と大きさが限界範囲Lの領域よりも外側である場合に、保持機構6から落下する。限界範囲Lは、吸着パッド62の数及び位置等によって定まる。本実施形態では、4つの吸着パッド62が正方形に並べられた保持機構6を用いており、
図4(a)に示すような限界範囲Lの領域を用いる。同一の方向に並ぶ吸着パッド62の数が多いほど、その方向に対するモーメントの許容値が大きくなる。プロセッサ301は、力覚センサ34から取得したモーメントと限界範囲Lに基づいて、アーム機構3を制御する。
【0030】
なお、保持機構6が備える吸着パッド62の数及び位置は特定の構成に限定されない。例えば、
図4(b)のように6つの吸着パッド62が並べられた保持機構6‘では、限界範囲L’のような領域を示す。また、限界範囲Lは、吸着パッド62の吸着力、物品5及び吸着パッド62の材質、物品保持装置1が設置される場所の温度又は湿度によっても変化するようにしてもよい。本実施形態で用いる限界範囲Lは、吸着パッド62の数及び位置によって定義される。本実施形態では、吸着パッド62の吸着力、物品保持装置1が設置される場所の温度及び湿度は一定とし、物品5及び吸着パッド62の材質を含め、限界範囲Lに影響を与えないものとする。
【0031】
また、限界範囲Lは、保持機構6が物品5を保持した状態で、アーム機構3が保持機構6を移動させた際にかかるモーメントによって保持機構6から物品5が落下するモーメントよりも小さい値を示す範囲であってもよい。さらに、限界範囲Lは、物品保持装置1が設置される場所を基準に仮想的に示してもよいし、基準面に垂直な軸を加えた3次元空間に仮想的に示した領域であってもよい。
【0032】
ROM302又は補助記憶デバイス304に記憶されるプログラムは、物品保持装置1を制御するためのプログラムを含む。一例として、物品保持装置1は、当該プログラムがROM302又は補助記憶デバイス304に記憶された状態で物品保持装置1の管理者などへと譲渡される。しかしながら、物品保持装置1は、当該プログラムがROM302又は補助記憶デバイス304に記憶されない状態で当該管理者などに譲渡されても良い。そして、物品5を保持するためのプログラムが別途に当該管理者などへと譲渡され、当該管理者又はサービスマンなどによる操作の下に補助記憶デバイス304へ書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク又は半導体メモリなどのようなリムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはネットワークなどを介したダウンロードにより実現できる。
【0033】
ロボットインタフェース305は、ネットワークなどを介して他の装置と有線又は無線で通信し、他の装置から送信される各種情報を受信し、また、他の装置に各種情報を送信するためのインタフェースである。例えば、プロセッサ301は、ロボットインタフェース305を介してアーム機構3に制御命令を送信する。また、プロセッサ301は、ロボットインタフェース305を介して保持機構6に制御命令を送信する。
【0034】
センサインタフェース306は、種々のセンサと有線又は無線で通信し、種々のセンサが取得した情報を受信し、種々のセンサに各種情報を送信するためのインタフェースである。例えば、プロセッサ301は、センサインタフェース306を介して検出装置2から物品情報を取得する。また、プロセッサ301は、センサインタフェース306を介して力覚センサ34からモーメントを取得する。
【0035】
プロセッサ301は、物品情報を取得する。例えば、プロセッサ301は、センサインタフェース306を介して検出装置2から取得した検出結果(一例として画像データ)を解析し、物品群5sの集積態様を解析する。具体的には、物品群5sの集積態様を示す画像データ及び距離情報を解析し、集積された各物品5の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質などをそれぞれ特定するための情報(解析データ)を出力する。
【0036】
画像データ及び距離情報の解析方法としては、例えばRGB各色の強さ、色相、彩度、明度などの値を閾値判定し、その境界線(エッジ)がなす形状に基づいて物品5の輪郭や境界を判定する手法などが適用可能である。物品群5sにおける物品5の切り分け(後述する選択物品の特定)手法としては、例えばエッジが閉曲線をなす場合、その閉曲線の内部を一つの物品5とする手法などが適用可能である。また、切り分けた物品5の形状、位置、姿勢の解析(判定)手法としては、閉曲線内の画像をデータベース(マスタデータ)内の物品データと照合する手法などが適用可能である。また、例えば検出装置2として3Dカメラを適用した場合、取得した点群データを解析することで、物品群5sにおける物品5の切り分けと、切り分けた物品5の形状、位置、姿勢を判定することが可能である。プロセッサ301は、付与された物品群5sの集積態様の解析データに基づいて、物品群5sの中から保持する物品5を選択する(詳細は後述)。
【0037】
プロセッサ301は、解析した解析データに基づいて、物品存否条件を判定する。物品存否条件は、集積領域11に物品5が集積されているか否かを判定するための条件である。例えば、解析データとして、物品5の態様を具体的に示す何らかのデータが出力されている場合、プロセッサ301は、集積領域11には少なくとも一つ以上の物品5が存在しており、物品存否条件が成立すると判定する。これに対し、解析データとして、物品5の態様を具体的に示す何らのデータも出力されていない場合、プロセッサ301は、集積領域11には、物品5が存在しておらず、物品存否条件が成立しないと判定する。この場合、プロセッサ301には、例えば集積領域11である作業台などの画像の解析データのみが解析結果として出力されている。物品存否条件が成立しない場合、プロセッサ301は、アーム機構3および保持機構6の動作計画を策定することなく、物品移動処理を終了する。
【0038】
プロセッサ301は、集積領域11から移動させる物品5(以下、選択物品という)を物品群5sの中から選択する。プロセッサ301は、解析データに対応する所定の選択基準に基づいて物品群5sの中から選択物品を特定する。選択基準は、例えば物品群5sにおける高さ位置、アーム機構3からの距離、他の物品5との隙間、集積領域11における位置、物品5の材質(梱包状態や包装状態を含む)などである。具体的には、物品群5sの中で最も高い位置にあるもの、アーム機構3から最も近い位置にあるもの、他の物品5から最も離れているもの、集積領域11の中央付近にあるもの、保持(吸着)しやすい物品5として予め規定された材質を有するものなどを、プロセッサ301は選択物品として特定する。あるいは、これらを複合的な選択基準として、プロセッサ301は選択物品を特定してもよい。また、プロセッサ301は、解析データに基づいて選択物品の位置、輪郭、大きさ、向き、姿勢、重なり、境界、材質(梱包状態や包装状態を含む)などの属性情報(属性データ)をそれぞれ特定する。
【0039】
プロセッサ301は、選択物品の目標保持位置を設定する。目標保持位置は、吸着パッド62で選択物品を吸着させる際、吸着パッド62が選択物品を安定して吸着可能な位置であり、選択物品上で吸着パッド62を接触させる位置である。例えば、選択物品上における軸芯との交点(仮想点)が目標保持位置に当たる。具体的には、吸着パッド62の軸芯を選択物品の重心を通るように位置付けたとき、該軸芯と選択物品の表面との交点が目標保持位置として設定される。目標保持位置が設定される選択物品の表面(被吸着面)は、水平面(一例として物流センタの建屋の床面)と平行であればよいが、これに限らず、水平面に垂直な面や斜めの面なども含む。このため、選択物品は、集積態様にかかわらず、鉛直上方、水平方向、それ以外の方向のいずれからでも吸着パッド62で吸着され得る。したがって、集積態様に応じた最適な方向から吸着パッド62で選択物品が吸着可能とされている。
【0040】
プロセッサ301は、保持機構6が物品5を保持する前に、保持機構6が物品5の保持を開始してから終了するまでの保持機構6の移動経路を決定するアーム機構3の動作計画を策定する。例えば、プロセッサ301は、アーム機構3の搬送動作計画および保持機構6の保持動作計画を策定する。アーム機構3の搬送動作計画の策定にあたって、プロセッサ301は、保持経路存否条件を判定する。保持経路存否条件は、吸着パッド62の保持基準位置が目標保持位置と一致するように現在位置(一例として、基準位置)から移動機構32を動作させる経路が存在するか否かを判定するための条件である。
【0041】
ここで、経路について説明する。
図5は、物品Pがある座標から別の座標へ到達するまでの経路を模式的に示す模式図である。
図5に示すように、経路は、ある座標から別の座標まで、経由する点(以下、経由点という)WP1~WP5の間を順につないだデカルト座標系(直交座標系)における軌跡である。
図5に示す例では、経由点WP1が経路の始点、経由点WP5が経路の終点であり、経由点WP2,WP3,WP4が経路の各中間点である。例えば、
図5に実線で示す軌跡が経路に相当し、経路は障害物M1を適宜避けるように設定される。経路は、このように障害物M1を避けるなど所定のルールに基づいて経由点を設定することで、自動生成すればよい。あるいは、予め定義された一部またはすべての経由点を辿るように生成されてもよいし、経由点をランダム探索するようなアルゴリズムによって経路が生成されてもよい。保持経路は、基準位置から目標保持位置までアーム機構3を動作させるべく、経由点間をつないだ軌跡として規定される。
【0042】
保持経路存否条件は、基準位置から目標保持位置に到達するまで、経由点を設定できるか否かによって判定される。経由点の設定可否は、例えば想定される保持経路上を移動機構32が動作した場合、支障となる別の物品5や他の障害物が存在するか否か、支障となる別の物品5などを回避可能か否かなどに応じて判定される。基準位置から目標保持位置に到達するまでの経路点を設定できる場合、つまり保持経路が確保できる場合、プロセッサ301は保持経路存否条件が成立すると判定する。これに対し、基準位置から目標保持位置に到達するまでの経由点を設定できない場合、つまり保持経路が確保できない場合、プロセッサ301は保持経路存否条件が成立しないと判定する。保持経路存否条件が成立しない場合、プロセッサ301は、選択物品の選択を再び行う。この場合、プロセッサ301は、一旦特定した選択物品以外の物品5の中から別の選択物品を特定する。一方、保持経路存否条件が成立する場合、プロセッサ301は、確保可能な保持経路に基づいてアーム機構3の搬送動作計画を策定し、アーム機構3の搬送動作計画に基づいて保持機構6の保持動作計画を策定する。
【0043】
アーム機構3の搬送動作計画は、確保された保持経路上の隣り合う経由点間を、移動機構32の関節部の動作負荷ができるだけ小さくなる(動作負荷を最小限にとどめる)ように順につないだ軌跡(軌道)を設定することである。すなわち、軌道は、経路と一致する場合もあれば異なる場合もある。かかる軌道は、逆運動学に基づいて移動機構32の関節座標系で設定される。搬送動作計画では、基準位置から目標保持位置までの軌道(以下、保持軌道という)が設定される。
【0044】
プロセッサ301は、策定された搬送動作計画に基づいて、保持機構6及びアーム機構3を動作させる。例えば、プロセッサ301は、策定した搬送動作計画及び保持動作計画に基づいて、アーム機構3および保持機構6を動作制御する。ここでは、プロセッサ301は吸着パッド62の内圧を負圧とする。吸着パッド62の内圧を負圧とするにあたって、プロセッサ301は、電磁弁を開くとともに、コンプレッサ、及び真空発生器を作動させる。これにより、プロセッサ301は、コンプレッサから真空発生器に圧縮空気を供給させ、吸着パッド62の内部を真空引きして負圧にさせる。吸着パッド62の内圧が負圧とされた状態で、プロセッサ301は、移動機構32を動作させて吸着パッド62に選択物品を保持(吸着)させる。以下、このような移動機構32の動作を保持動作という。
【0045】
プロセッサ301は、策定した搬送動作計画に従って、目標保持位置へ向けて移動機構32を保持軌道に沿って動作させる。その間、プロセッサ301は、例えば吸着パッド62を選択物品の上方まで位置付けた後、吸着パッド62を選択物品に向けさせる。続けて、プロセッサ301は、吸着パッド62の保持基準位置が目標保持位置と重なるように移動機構32を下降させる。
【0046】
プロセッサ301は、保持適否条件を判定する。保持適否条件は、吸着パッド62で選択物品が適切に保持されているか否かを判定するための条件である。保持適否条件の判定にあたって、プロセッサ301は、吸着パッド62の内圧値を所定の閾値(以下、保持適正値という)と比較する。保持適正値は、例えば選択物品の大きさや重量、周囲環境などに応じて設定されており、補助記憶デバイス304に保持され、保持適否条件の判定時にパラメータとしてRAM303に読み出される。特に限定されないが、保持適正値の目安は、ゲージ圧が-20kPaから-40kPa程度の範囲内の値であればよい。また、保持適正値は、一定値であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動値であってもよい。
【0047】
本実施形態では一例として、内圧値が保持適正値以下である(吸着パッド62内が高真空状態である)場合、プロセッサ301は、吸着パッド62で選択物品が適切に保持されており、保持適否条件が成立すると判定する。保持適否条件が成立する場合、移動機構32が保持軌道に沿って動作して、吸着パッド62の保持基準位置が目標保持位置とほぼ一致した状態となっている。この状態は、後述する目標保持位置到達条件が成立した状態であり、この状態で保持適否条件が成立していれば、保持動作は適正に完了する。これに対し、内圧値が保持適正値を超えている(吸着パッド62内が低真空状態である)場合、プロセッサ301は、吸着パッド62で選択物品が適切に保持されておらず、保持適否条件が成立しないと判定する。ただし、内圧値が保持適正値である場合における保持適否条件の成否は、上記とは逆であってもよい。
【0048】
保持適否条件が成立しない場合、プロセッサ301は、目標保持位置到達条件を判定する。目標保持位置到達条件は、移動機構32が保持軌道に沿って動作して、吸着パッド62の保持基準位置が目標保持位置とほぼ一致しているか否かを判定するための条件である。目標保持位置到達条件の判定にあたって、プロセッサ301は、移動機構32に動作経過に基づいて保持基準位置の現在位置を取得する。現在位置が目標保持位置と一致していれば、プロセッサ301は、保持基準位置が目標保持位置に達したとして、目標保持位置到達条件が成立すると判定する。例えば、移動機構32が保持動作計画の最終軌道の最終経由点まで動作していれば、保持基準位置の現在位置は目標保持位置と一致している。これに対し、現在位置が目標保持位置と一致していなければ、プロセッサ301は、目標保持位置到達条件が成立しないと判定する。
【0049】
目標保持位置到達条件が成立する場合、保持基準位置が目標保持位置に達しているにも関わらず、吸着パッド62が選択物品を適切に保持できていない状態(エラー状態)である。したがって、プロセッサ301は、物品移動処理を最初からやり直すべく、集積領域11における物品群5sの集積態様を検出装置2に検出させる。なおこの場合、プロセッサ301は、物品移動処理をやり直すのではなく、エラー状態であるとして処理を終了させてもよい。その際、プロセッサ301は、所定の異常処理を実行してもよい。例えば、警告灯の点灯(点滅)、警告音の鳴動、警告メッセージの表示などを行うことで、保持動作時に生じたエラー状態の周知徹底を図ることが可能となる。
【0050】
一方、目標保持位置到達条件が成立しない場合、吸着パッド62の保持基準位置が目標保持位置まで達しておらず、吸着パッド62で選択物品がまだ保持されていない状態となっている。すなわち、この状態では保持動作がまだ完了していない。したがって、プロセッサ301は、移動機構32の保持動作を継続させるべく、目標保持位置へ向けて移動機構32を保持軌道に沿ってさらに動作させる。
【0051】
プロセッサ301は、選択物品の目標解放位置を設定する。目標解放位置は、吸着パッド62に保持された選択物品を解放する際、吸着パッド62から選択物品を適切に解放可能な位置であり、例えば移動先領域12の載置面の鉛直上方の任意の位置である。目標解放位置は、一定位置であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動位置であってもよい。また、目標解放位置は、選択物品の荷降ろし、荷積み、箱詰めなどの目的に応じて任意のアルゴリズムによって設定可能である。
【0052】
プロセッサ301は、アーム機構3および保持機構6の解放動作計画を策定する。解放動作計画の策定にあたって、プロセッサ301は、解放経路存否条件を判定する。解放経路存否条件は、吸着パッド62の保持基準位置が目標解放位置と一致するように現在位置(一例として、目標保持位置)から移動機構32を動作させる経路が存在するか否かを判定するための条件である。
【0053】
解放経路存否条件は、目標保持位置から目標解放位置に到達するまで、経由点を設定できるか否かによって判定される。経由点の設定可否は、例えば想定される解放経路上を移動機構32が動作した場合、支障となる別の物品5や他の障害物が存在するか否か、支障となる別の物品5などを回避可能か否かなどに応じて判定される。目標保持位置から目標解放位置に到達するまでの経路点を設定できる場合、つまり解放経路が確保できる場合、プロセッサ301は解放経路存否条件が成立すると判定する。これに対し、目標保持位置から目標解放位置に到達するまでの経由点を設定できない場合、つまり解放経路が確保できない場合、プロセッサ301は解放経路存否条件が成立しないと判定する。解放経路存否条件が成立しない場合、プロセッサ301は、目標解放位置の設定をやり直す。この場合、プロセッサ301は、例えば一旦設定した目標解放位置とは異なる別の位置に目標解放位置を設定する。
【0054】
解放経路存否条件が成立する場合、プロセッサ301は、確保可能な解放経路に基づいてアーム機構3の解放動作計画を策定し、アーム機構3の解放動作計画に基づいて保持機構6の解放動作計画を策定する。解放経路は、目標保持位置から目標解放位置までアーム機構3を動作させるべく、経由点間をつないだ軌跡として規定される。
【0055】
アーム機構3の解放動作計画は、確保された解放経路上の隣り合う経由点間を、移動機構32の関節部の動作負荷ができるだけ小さくなる(動作負荷を最小限にとどめる)ように順につないだ軌跡(以下、解放軌道という)を設定することである。解放軌道は、逆運動学に基づいて移動機構32の関節座標系で設定され、経路と一致する場合もあれば異なる場合もあることは、搬送動作計画と同様である。解放動作計画では、目標保持位置から目標解放位置までの解放軌道が設定される。本実施形態では、目標解放位置(リリース点)も含めた経由点が0~nまでn+1個ある場合、i-1番目の経由点からi番目の経由点までをつなぐ解放軌道を軌道iとして規定する。この場合、目標保持位置を0番目の経由点として捉え、iは1からnのいずれかの値(自然数)である。
【0056】
プロセッサ301は、策定した解放動作計画に基づいて、アーム機構3および保持機構6を動作制御する。ただし、本実施形態では、アーム機構3および保持機構6の動作制御に際して、解放動作計画(具体的には解放軌道)が適宜修正される。
【0057】
プロセッサ301は、吸着パッド62の内部を大気開放(真空破壊)する。吸着パッド62の内部を大気開放するにあたって、プロセッサ301は、電磁弁を閉じ、コンプレッサから真空発生器への圧縮空気の供給を停止させる。これにより、吸着パッド62の内部が真空破壊し、大気開放される。
【0058】
プロセッサ301は、解放適否条件を判定する。解放適否条件は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されているか否かを判定するための条件である。解放適否条件の判定にあたって、プロセッサ301は、吸着パッド62の内圧値を所定の閾値(以下、解放適正値という)と比較する。解放適正値は、例えば選択物品の大きさや重量、周囲環境などに応じて設定されており、補助記憶デバイス304に保持され、保持適否条件の判定時にパラメータとしてRAM303に読み出される。特に限定されないが、解放適正値の目安は、大気圧と同程度、例えばゲージ圧が0kPaから-5kPa程度の範囲内の値であればよい。また、解放適正値は、一定値であっても、選択物品の大きさや重量に応じて設定された変動値であってもよい。
【0059】
本実施形態では一例として、内圧値が解放適正値以上である(吸着パッド62内が低真空状態である)場合、プロセッサ301は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されており、解放適否条件が成立すると判定する。これに対し、内圧値が解放適正値未満である(吸着パッド62内が高真空状態である)場合、プロセッサ301は、吸着パッド62から選択物品が適切に解放されておらず、保持適否条件が成立しないと判定する。ただし、内圧値が解放適正値である場合おける解放適否条件の成否は、上記とは逆であってもよい。
【0060】
解放適否条件が成立しない場合、プロセッサ301は、移動機構32を再び解放動作させる。なお、この場合、例えば所定時間経過後に物品移動処理を終了させるタイムアウト処理や、所定回数だけ解放動作を繰り返しても、解放適否条件が成立しない場合には物品移動処理を終了させるリトライ処理などを組み合わせてもよい。さらにまた、プロセッサ301は、所定の異常処理を実行してもよい。例えば、警告灯の点灯(点滅)、警告音の鳴動、警告メッセージの表示などを行うことで、解放動作時に生じたエラーの周知徹底を図ることが可能となる。
【0061】
プロセッサ301は、プロセッサ301が策定したアーム機構3および保持機構6の動作計画(保持動作計画および解放動作計画)における一連の制御(物品移動処理)が正常終了したことを示す信号をプロセッサ301に送信する。その際、プロセッサ301は、移動機構32を基準位置に戻し、アーム機構3および保持機構6をそれぞれ初期状態に戻す。ただし、プロセッサ301は、移動機構32を基準位置に戻すことなく、移動先領域12からそのまま集積領域11に変位させてもよい。これらの動作(退避動作)にあたって、プロセッサ301は所定の動作計画を策定し、所定の軌道(退避軌道)を設定する。なお、プロセッサ301は、解放動作計画の策定時に解放起動とともにもしくはその一部として、退避軌道を設定してもよい。
【0062】
なお、本実施形態では一例として、プロセッサ301は、アーム機構3および保持機構6の動作計画を策定しているが、制御装置4はこれらの動作計画を個別に策定する複数のプロセッサを有していてもよい。また、プロセッサ301は、アーム機構3及び保持機構6の動作を制御しているが、制御装置4はこれらの動作を個別に制御する複数のプロセッサを有していてもよい。あるいは、動作計画を行う制御装置と、動作計画に基づいて保持機構6及びアーム機構3を制御する制御装置とを物理的に分離させてもよい。
【0063】
プロセッサ301は、保持機構6が物品5を保持して所定の距離移動させた際に取得したモーメント及び動作計画に基づいて、動作計画においてアーム機構3を動作させた際のモーメントが所定の範囲を超えることがあるか否かを判定する。例えば、プロセッサ301は、搬送動作計画における始点の経由点から次の経由点まで移動させた際に、力覚センサ34からモーメントを取得する。プロセッサ301は、取得したモーメントに基づいて、現在の経由点以降の経由点において、物品5を移動させた際にかかるモーメントがどのように変化するかを推定する。プロセッサ301は、推定したモーメントの値が補助記憶デバイス304に記憶される限界範囲Lの範囲を超えるか否かを判定する。これにより、物品保持装置1が物品5を搬送する動作を開始する前に、搬送の際に物品5にかかるモーメントを推定し、推定したモーメントが限界範囲Lを超えるか否かを判定することで、搬送動作中に物品5が落下する可能性があるか否かを、搬送動作を行う前に判定することができる。なお、プロセッサ301は、保持機構6が物品5を移動した後に静止した際にかかるモーメントに基づいて、搬送動作時のモーメントを推定してもよい。
【0064】
プロセッサ301は、力覚センサ34からモーメントを取得する。例えば、プロセッサ301は、センサインタフェース306を介して力覚センサ34からモーメントを取得する。取得したモーメントは、RAM303等に一時的に記憶される。
【0065】
プロセッサ301は、取得したモーメントの方向及び大きさが、所定の範囲を超えるか否かを判定する。例えば、プロセッサ301は、力覚センサ34から取得したモーメントが補助記憶デバイス304が記憶する限界範囲Lを超えるか否かを判定する。プロセッサ301は、搬送動作計画において、ある経由点から次の経由点まで移動する際に、力覚センサ34からモーメントを取得する。プロセッサ301は、取得したモーメントが補助記憶デバイス304に記憶される限界範囲Lを超えるか否かを判定する。つまり、プロセッサ301は、保持機構6が物品5を保持した状態で、保持機構6をアーム機構3により動作計画に基づいて移動させる間に力覚センサ34からモーメントを取得し、モーメントが所定の範囲を超えるか否かを判定する。これにより、物品保持装置1が物品5を搬送する動作と並行して、搬送の際に物品5にかかるモーメントが限界範囲Lを超えるか否かを判定することで、搬送動作中に物品5が落下する可能性があるか否かを、搬送動作中に判定することができる。
【0066】
プロセッサ301は、モーメントが所定の範囲を超える場合、モーメントが所定の範囲を超えないようアーム機構3を制御し保持機構6を回動させる。例えば、プロセッサ301は、回動機構33を制御し保持機構6を回動させる。例えば、プロセッサ301は、力覚センサ34から取得したモーメントが限界範囲Lを超える場合、取得したモーメントの方向を、限界範囲Lにおいて許容可能なモーメントが最も大きい方向に近似する且つ保持機構6の回転角度が最小となるように保持機構6を回動させる。つまり、プロセッサ301は、モーメントが所定の範囲を超える場合、所定の範囲においてモーメントが最も大きい方向にモーメントの方向が向くよう回動機構33を制御し保持機構6を回動させる。なお、アーム機構3(回動機構33)が保持機構6を回動させる速さは、どのような速さであってもよい。本実施形態では、プロセッサ301は、取得したモーメントが限界範囲Lを超えたと判定してから次の経由点に到着するまでに回動が完了するように保持機構6を回動させるようアーム機構3を制御する。また、プロセッサ301は、アーム機構3によって保持機構6を移動させながら回動させるよう制御しても良いし、回動が完了してから移動させるよう制御しても良い。
【0067】
プロセッサ301は、動作計画に基づいて推定されたモーメントが限界範囲Lを超える場合、モーメントの方向を、限界範囲Lにおいて許容可能なモーメントが最も大きい方向に近似する且つ保持機構6の回転角度が最小となる方向に保持機構6を回動させるよう動作計画を修正する。なお、アーム機構3(回動機構33)が保持機構6を回動させる速さ及び方向は、保持機構6から物品5が落下しないのであれば、どのような速さ及び方向であってもよい。本実施形態では、プロセッサ301は、策定した動作計画において経由点の始点から取得したモーメントが限界範囲Lを超える箇所に到達するまでに回動が完了するようにアーム機構3を制御する。
【0068】
保持機構6の回動について、
図6を用いて詳細を説明する。
図6は、実施形態に係る物品保持装置1が備える保持機構6を移動させた際のモーメントと限界範囲Lの一例を示す模式図である。
図6(a)に示すように、保持機構6は、アーム機構3によってV1の速度で移動される。その際に、力覚センサ34は、保持する物品5(不図示)によって生じるM1のモーメントを取得する。プロセッサ301は、取得したモーメントM1が限界範囲Lを超えるか否かを判定する。取得したモーメントM1が限界範囲Lを超える場合、プロセッサ301は、
図6(b)に示すように保持機構6をθ1だけ回動するようアーム機構3を制御する。つまり、物品保持装置1は、保持機構6が保持する物品5にかかるモーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を回動させることで、物品5が保持機構6から落下することを防ぐことができる。
【0069】
プロセッサ301は、モーメントが所定の範囲を超える場合、さらに、保持機構6を移動させる速さを減速させるようアーム機構3を制御する。例えば、モーメントは、アーム機構3が保持機構6を移動させる速さに比例する。プロセッサ301は、力覚センサ34から取得したモーメントが限界範囲Lを超える場合に保持機構6を回動させた後、力覚センサ34から再度モーメントを取得する。プロセッサ301は、保持機構6を回動した後に力覚センサ34から取得したモーメントが限界範囲Lを超える場合、モーメントが限界範囲Lを超えないようアーム機構3(移動機構32)が保持機構6を移動させる速さを減速させる。また、プロセッサ301は、動作計画に基づいて推定されたモーメントが保持機構6を回動させる後も限界範囲Lを超える場合、モーメントが限界範囲Lを超えないようアーム機構3が保持機構6を移動させる速さを減速させるよう動作計画を修正する。
【0070】
保持機構6の減速について、
図7を用いて詳細を説明する。
図7は、実施形態に係る物品保持装置1が備える保持機構6を移動及び回動させた際のモーメントと限界範囲Lの一例を示す模式図である。
図7(a)に示すように、保持機構6は、アーム機構3によってV2の速度で移動される。その際に、力覚センサ34は、保持する物品5(不図示)によって生じるM2のモーメントを取得する。プロセッサ301は、取得したモーメントM2が限界範囲Lを超えるか否かを判定する。取得したモーメントM2が限界範囲Lを超える場合、プロセッサ301は、保持機構6をθ2だけ回動するようアーム機構3を制御する。さらに、プロセッサ301は、保持機構6をθ2だけ回動させた後にかかるモーメントを推定し、推定したモーメントが限界範囲Lを超えるか否かを判定する。保持機構6をθ2だけ回動させた後にかかるモーメントが限界範囲Lを超える場合、プロセッサ301は、
図7(b)に示すように、物品5にかかるモーメントM3が保持機構6をθ2だけ回動させ、さらに移動させる速度をV2より小さく、限界範囲Lを超えないV3に減速させるようアーム機構3を制御する。これにより、物品保持装置1は、保持機構6が保持する物品5にかかるモーメントが保持機構6を回動させた場合であっても限界範囲Lを超える場合に、保持機構6を移動させる速度を減速させることによって物品5が保持機構6から落下することを防ぐことができる。
【0071】
なお、プロセッサ301は、保持機構6を回動及び減速させる制御は、どのような順序であってもよい。例えば、プロセッサ301は、任意の経由点で保持機構6を静止した後に保持機構6を回動し、回動が完了してから保持機構6を減速させて移動させてもよい。本実施形態の一例では、プロセッサ301は、保持機構6の回動と減速させた移動とを並行して行う。
【0072】
図8は、実施形態に係る制御装置4が有するプロセッサ301の動作フローの一例を示すフローチャートである。プロセッサ301は、センサインタフェース306を介して検出装置2から物品情報を取得する(ST1)。プロセッサ301は、物品5が集積領域11に存在するか否かを判定する(ST2)。物品5が存在しない場合(ST2、No)、プロセッサ301は、制御を終了する。物品5が存在する場合(ST2、Yes)、プロセッサ301は、取得した物品情報に基づいて保持動作計画と解放動作計画を策定する(ST3)。また、プロセッサ301は、アーム機構3の動作性能に基づいて最も動作時間が短くなるように搬送動作計画を策定する(ST4)。プロセッサ301は、策定した保持動作計画に基づいて物品5を保持する(ST5)。プロセッサ301は、策定した搬送動作計画を修正する(ST6)。プロセッサ301は、修正した搬送動作計画に基づいて物品5を搬送する(ST7)。プロセッサ301は、策定した解放動作計画に基づいて物品5を解放し(ST7)、制御を終了する。
【0073】
図9は、実施形態に係る制御装置4が有するプロセッサ301の搬送動作計画の修正の一例を示すフローチャートである。プロセッサ301は、策定した搬送動作計画で搬送した際に、搬送動作の中で保持機構6にかかるモーメントが限界範囲Lを超えることがあるか否かを判定する(ST11)。モーメントが限界範囲Lを超えることがある場合(ST11、Yes)、搬送動作の中で保持機構6にかかるモーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を回動又は減速させるよう搬送動作計画を修正し(ST12)、処理をST6に戻す。
【0074】
図10は、実施形態に係る制御装置4が有するプロセッサ301の搬送動作の一例を示すフローチャートである。プロセッサ301は、策定した搬送動作計画に基づいて、現在の経由点から次の経由点まで物品を移動させるよう制御し、力覚センサ34から保持機構6にかかるモーメントを取得する(ST21)。プロセッサ301は、取得したモーメントが限界範囲Lを超えるか否かを判定する(ST22)。取得したモーメントが限界範囲Lを超える場合(ST22、Yes)、プロセッサ301は、モーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を回動する(ST23)。プロセッサ301は、さらに、保持機構を回動させた際にかかるモーメントを推定し、推定したモーメントと限界範囲Lに基づいて、保持機構6を減速させる必要があるか否かを判定する(ST24)。保持機構6を減速させる必要がある場合(ST24、Yes)、プロセッサ301は、モーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を減速させる(ST25)。プロセッサ301は、搬送動作計画に基づいて最終経由点(経由点の終点)に移動したかを判定する(ST26)。最終経由点に移動した場合(ST26、Yes)、プロセッサ301は、処理をST8に戻す。最終経由点に移動していない場合(ST26、No)、プロセッサ301は、ST21に処理を戻す。
【0075】
なお、上述の各実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わってもよい。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されてもよい。
【0076】
上記したように、実施形態の物品保持装置1は、物品5を吸着し保持する吸着パッド62を備える保持機構6と、保持機構6を移動及び回動させるアーム機構3と、保持機構6にかかるモーメントを取得する力覚センサ34と、を備え、力覚センサ34からモーメントを取得し、取得したモーメントの方向及び大きさが、吸着パッド62の数及び位置に基づいて算出されるモーメントの方向毎の大きさを示す限界範囲Lを超えるか否かを判定し、モーメントが限界範囲Lを超える場合、モーメントが限界範囲Lを超えないようアーム機構3を制御し保持機構6を回動する物品保持装置1の制御方法で、荷役処理を実施する。
【0077】
本実施形態によれば、物品保持装置1は、保持機構6で物品5を保持し、アーム機構3によって保持機構6を移動させる際に力覚センサ34から保持機構6にかかるモーメントを取得する。これにより、物品保持装置1は、保持機構6にかかるモーメントに基づいてアーム機構3を制御することで物品5の落下等を回避し、安定的に物品を処理することが可能である。
【0078】
また、物品保持装置1は、取得したモーメントが限界範囲Lを超えるか否かを判定し、モーメントが限界範囲Lを超える場合、アーム機構3が備える回動機構33を制御してモーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を回動させる。これにより、物品保持装置1は、物品5を移動させる速度を減速させることなく物品が落下することを回避し、安定的に物品を処理することが可能である。
【0079】
また、物品保持装置1は、取得したモーメントが保持機構6を回動させた後であっても限界範囲Lを超えるか否かを判定し、モーメントが限界範囲Lを超える場合、アーム機構3が備える移動機構32を制御してモーメントが限界範囲Lを超えないように保持機構6を移動させる速度を減速させる。これにより、物品保持装置1は、保持機構6の回動及び減速を組み合わせた制御によって、保持機構6の回動のみでは物品5が落下してしまう場合であっても物品5の落下を回避し、安定的に物品を処理することが可能である。
【0080】
また、物品保持装置1は、物品5を保持する前に保持機構6の保持動作計画及びアーム機構3の搬送動作計画を策定する。物品保持装置1は、保持動作計画に基づいて物品5を保持した際に力覚センサ34からモーメントを取得する。物品保持装置1は、取得したモーメントに基づいて搬送動作計画における保持機構6の移動の際にかかるモーメントを推定する。物品保持装置1は、推定したモーメントが限界範囲Lを超えることがあるか否かを判定し、モーメントが限界範囲Lを超えることがある場合には、アーム機構3によって保持機構6を回動及び減速させるよう制御して限界範囲Lを超えないよう搬送動作計画を修正する。これにより、物品保持装置1は、搬送動作計画に基づいて実際に物品5を搬送する前に、搬送する際に物品5が落下するか否か推定することで物品5の落下を回避し、安定的に物品を処理することが可能である。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 物品保持装置
2 検出装置
3 アーム機構
4 制御装置
5 物品
5s 物品群
6 保持機構
11 集積領域
12 移動先領域
31 基台部
32 移動機構
33 回動機構
34 力覚センサ
61 本体部
62 吸着パッド
301 プロセッサ
302 ROM
303 RAM
304 補助記憶デバイス
305 ロボットインタフェース
306 センサインタフェース