(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023044
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20230209BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20230209BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20230209BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A47K13/10
E03D9/00 Z
A47K17/00
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128207
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】里井 喬行
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AB07
2D037AD16
2D038KA02
2D038KA03
2D039AA02
2D039FA05
(57)【要約】
【課題】便座の閉動作をスムーズに行う。
【解決手段】第一軸111周りを回転して開閉する便座110と、便座110を開閉駆動する便座駆動手段120と、便座110の第一基準角度に対する角度を検出する便座角度検出手段161と、便座駆動手段120を制御する制御手段170と、を備え、制御手段170は、便座110の角度を便座角度検出手段161から取得する角度取得部171と、便座110の角速度を導出する角速度導出部172と、便座駆動手段120の動作を制御する駆動制御部173と、を備え、駆動制御部173は、便座110が所定の第一角度を閉方向に通過する際において、便座110の角速度に応じた第一トルクを便座駆動手段120に発生させ、便座110が閉状態になるまで便座110の閉じる動作を維持するように便座駆動手段120を制御する便座装置100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸周りを回転して開閉する便座と、
前記便座を開閉駆動する便座駆動手段と、
前記便座の第一基準角度に対する角度を検出する便座角度検出手段と、
前記便座駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記便座の角度を前記便座角度検出手段から取得する角度取得部と、
前記角度取得部からの出力に基づき前記便座の角速度を導出する角速度導出部と、
前記便座駆動手段の動作を制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記便座が所定の第一角度を閉方向に通過する際において、前記便座の角速度に応じた第一トルクを前記便座駆動手段に発生させ、前記便座が閉状態になるまで前記便座の閉じる動作を維持するように前記便座駆動手段を制御する
便座装置。
【請求項2】
前記第一軸に平行な第二軸周りを回転して開閉する便蓋と、
前記便蓋を開閉駆動する便蓋駆動手段と、
前記便蓋の第二基準角度に対する角度を検出する便蓋角度検出手段と、を備え、
前記角度取得部は、
前記便蓋の角度を前記便蓋角度検出手段から取得し、
前記角速度導出部は、
前記角度取得部からの出力に基づき前記便蓋の角速度を導出し、
前記駆動制御部は、
前記便座が閉状態であり、かつ前記便蓋が所定の第二角度を閉方向に通過する際において前記便蓋の角速度に応じた第二トルクを前記便蓋駆動手段に発生させ、前記便蓋が閉状態になるまで前記便蓋の閉じる動作を維持するように前記便蓋駆動手段を制御する
請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記便座周辺の人の存在を検出する人検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記便座の周辺の人の存在を前記人検出手段から取得する存在取得部を備え、
前記駆動制御部は、
人が存在する状態から存在しない状態になってから所定の第一時間後に閉方向の第三トルクを前記便蓋駆動手段に発生させる
請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記便座が閉状態の際において前記便座角度検出手段から取得した角度に基づき前記第一基準角度を更新する基準角度更新部を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動で便座を閉じることのできる便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座などを電動で開閉することができる便座装置としては、閉状態の便座の位置を基準角度として便座の角度を検出し、手動で操作された便座の角度が所定の角度になると、モータを起動させて便座を自動的に閉じる方向に回転させる制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電動の便座装置は、便座が閉状態、開状態になる際の打音、衝撃などを軽減するため、閉状態、開状態の直前からモータにブレーキ動作をさせる制御、モータの駆動を停止するなどの制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが昨今では、便座を開閉するモータは、DCモータからサーボモータなどを含む同期モータに変わってきており、モータのディテントトルクにより、便座が異常な角度で停止してしまうなど、使用者が意図しない動作をしてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ディテントトルクが高い同期モータを使用する場合、またはモータの特性のバラつきが在る同期モータを使用する場合でも、使用者の意図通りの動作となる便座装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである便座装置は、第一軸周りを回転して開閉する便座と、前記便座を開閉駆動する便座駆動手段と、前記便座の第一基準角度に対する角度を検出する便座角度検出手段と、前記便座駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記便座の角度を前記角度検出手段から取得する角度取得部と、前記角度取得部からの出力に基づき前記便座の角速度を導出する角速度導出部と、前記便座駆動手段の動作を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記便座が所定の第一角度を閉方向に通過する際において、前記便座の角速度に応じた第一トルクを前記便座駆動手段に発生させ、前記便座が閉状態になるまで前記便座の閉じる動作を維持するように前記便座駆動手段を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ディテントトルクなどモータの特性にバラツキがあったとしても、使用者の意図どおりに便座をスムーズに閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る便器に取り付けられた便座装置を示す側面図である。
【
図2】便座装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】制御手段の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】第一角度を通過した便座の状態を模式的に示す側面図である。
【
図7】第二角度を通過した便蓋の状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る便座装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0011】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0012】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る便器200に取り付けられた便座装置100を示す側面図である。便座装置100は、便器200の上面に取り付けられ、人が座るための座面を形成する装置であり、便座110と、便座駆動手段120とを備えている。本実施の形態の場合、便座装置100は、便蓋130と、人検出手段140と、衛生洗浄装置150と、を備えている。
【0014】
便器200は、使用者が着座して排泄することができるいわゆる洋式便器であり、便鉢210の後方に洗浄水タンク220が固定され、便鉢210の上に便座装置100が載置されるように取り付けられている。
【0015】
衛生洗浄装置150は、水を温めて温水を作成し、作成した温水をノズルから噴射することができる装置であり、ノズルは、便座装置100の後方の所定の場所に通常配置され、使用者の指示の入力に従いノズルを所定の位置に突出させることができるものとなっている。
【0016】
便座110は、便鉢210の上側においてU型またはO型の着座面を形成する部材であり、第一軸111周りを回転して便鉢210に対して開閉する。
【0017】
便蓋130は、便座110の上側において便座110を覆い隠す部材であり、第二軸132周りを回転して便鉢210に対して開閉する。なお、本実施の形態の場合、第一軸111と第二軸132とは平行に配置されているが、第一軸111と第二軸132とが同一軸状に配置されてもかまわない。
【0018】
図2は、便座駆動手段120などの便座装置100の機能構成を模式的に示す図である。便座駆動手段120は、便座110を開閉駆動する装置であり、モータ121を備えている。本実施の形態の場合、便座駆動手段120は、モータ121と、第一伝達機構122と、を備えている。
【0019】
モータ121は、ディテントトルクが発生するモータが採用される。例えばモータ121は、同期モータであり、サーボモータ、ステッピングモータなどを例示することができる。
【0020】
第一伝達機構122は、機械要素の組み合わせによりモータ121の出力を便座110に伝える。例えば、第一伝達機構122は、減速機構などであり、具体的にはギヤの組み合わせやベルトドライブなどを例示することができる。
【0021】
本実施の形態の場合、便座駆動手段120は、便蓋駆動手段としても機能している。具体的には、便座駆動手段120は、モータ121の出力を便蓋130に伝える第二伝達機構124と、モータ121の出力を第一伝達機構122、および第二伝達機構124のいずれか一方に伝えるための切替手段123を備えている。つまり便座駆動手段120は、便座110を開閉させることができ、切り替えにより便蓋駆動手段として便蓋130を開閉させることができるものとなっている。これに代えて、便座駆動手段120は、第1モータおよび第2モータを具備し、第1モータが第一伝達機構を介して便座を駆動し、かつ第2モータが第二伝達機構を介して便蓋を駆動してもよい。
【0022】
また
図2に示すように、便座装置100は、便座角度検出手段161と、便蓋角度検出手段162と、制御手段170と、を備えている。
【0023】
便座角度検出手段161は、便座110の第一軸111周りに取り付けられ、便座110の第一基準角度に対する角度を検出するセンサである。便座角度検出手段161の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ポテンショメータが採用されている。なお、便座角度検出手段161は、ロータリーエンコーダなどでもかまわない。第一基準角度とは、便座110の開閉角度を検出する基準となる角度(位置)である。本実施の形態の場合、第一基準角度は、便座110が閉状態、つまり便座110が便鉢210の上端面に当接している状態における便座角度検出手段161の出力値が採用されている。
【0024】
便蓋角度検出手段162は、便蓋130の第二軸132周りに取り付けられ、便蓋130の第二基準角度に対する角度を検出するセンサである。便座角度検出手段161の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、便座角度検出手段161と同じポテンショメータが採用されている。第二基準角度とは、便蓋130の開閉角度を検出する基準となる角度(位置)である。本実施の形態の場合、第二基準角度は、便蓋130が閉状態、つまり、便鉢210の上端面に当接している便座110に便蓋130が当接している状態における便蓋角度検出手段162の出力値が採用されている。
【0025】
人検出手段140は、便座装置100の周辺、特に便座装置100の前方の人の存在を検出するいわゆる人感センサ、操作情報、着座情報などであり、人感センサは本体とは別体で、トイレ空間に設置されている。人検出手段140の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、人感センサは焦電センサが採用されている。
【0026】
図3は、制御手段170の機能構成を示すブロック図である。制御手段170は、プロセッサを備え、プログラムをプロセッサに実行させることにより実現される処理部として、角度取得部171と、角速度導出部172と、駆動制御部173と、を備えている。本実施形態の場合、制御手段170は、存在取得部174と、計時部175と、基準角度更新部176と、を備えている。
【0027】
角度取得部171は、便座110の第一基準角度からの角度を便座角度検出手段161から取得する。本実施の形態の場合、角度取得部171は、便蓋130の第二基準角度からの角度を便蓋角度検出手段162から取得する。角度取得部171は、第一基準角度における便座角度検出手段161の出力値を第一基準値として記憶しておき、第一基準値からの差分を便座110の角度として取得している。また、角度取得部171は、第二基準角度における便蓋角度検出手段162の出力値を第二基準値として記憶しておき、第二基準値からの差分を便蓋130の角度として取得している。なお、角度取得部171は、実際の便座110、便蓋130の角度を把握しているのではなく、角度にリニアに換算できる値によって角度を把握している。つまり、本明細書、および特許請求の範囲における角度とは、角度、および角度に換算することができる値も含むものである。
【0028】
角速度導出部172は、角度取得部171からの出力に基づき便座110の角速度を導出する。例えば、角速度導出部172は、所定の時間間隔で角度取得部171から角度を取得し、二つの角度の差分(厳密には、二つの角度の差分を当該所定の時間角で除した値)を角速度として導出してもかまわない。また、順次角度を取得するタイミングを計時部175から取得し、異なるタイミングで取得した二つの角度の差分とタイミングの差分を用いて角速度を導出してもかまわない。角速度導出部172は、同様に角度取得部171からの出力に基づき便蓋130の角速度を導出する。なお、角速度とは、角度と同様に、本明細書、および特許請求の範囲においては、正しい角速度に換算することができる値も含むものである。
【0029】
駆動制御部173は、便座110が所定の第一角度を閉方向に通過する際において、角速度導出部172が導出した便座110の角速度に応じた第一トルクを便座駆動手段120に発生させ、便座110が閉状態になるまで便座110の閉じる動作を維持するように便座駆動手段120を制御する。また、駆動制御部173は、便座110が閉状態であり、かつ便蓋130が所定の第二角度を閉方向に通過する際において便蓋130の角速度に応じた第二トルクを便蓋駆動手段として機能する便座駆動手段120に発生させ、便蓋130が閉状態になるまで便蓋130の閉じる動作を維持するように便座駆動手段120を制御する。なお、具体的な動作例は後述する。
【0030】
なお、本実施の形態の場合、便座110と便蓋130とは同時に駆動できないため、弊動作を実施する際において駆動制御部173は、便座110が閉状態になった後、便蓋130の動作の制御を行う。
【0031】
存在取得部174は、便座110の周辺の人の存在を人検出手段140から取得する。例えば、存在取得部174は、人検出手段140が人を検出している間は、オンのフラグを立て、人検出手段140が人を検出していない間は、オフのフラグを立てるなど、人検出手段140の出力に応じた値を出力する。
【0032】
駆動制御部173は、存在取得部174がオンのフラグからオフのフラグに変わったタイミングから計時部175の計時情報に基づき所定の第一時間後に便蓋130を閉方向に駆動させる第三トルクを便蓋駆動手段としても機能する便座駆動手段120に発生させる。第一時間は、特に限定されるものではないが、1分以上、10分以下の範囲から選定される(例えば5分)。
【0033】
制御手段170は、当該動作を実行することにより、便座110や便蓋130が閉状態にならずに異常な角度で停止してしまっても、確実に便蓋130とともに便座110を閉状態にすることができる。
【0034】
基準角度更新部176は、便座110が閉状態の際において便座角度検出手段161から角度取得部171が取得した角度に基づき角度取得部171が記憶している第一基準角度を更新する。本実施の形態の場合、基準角度更新部176は、便蓋130が閉状態の際において便蓋角度検出手段162から角度取得部171が取得した角度に基づき角度取得部171が記憶している第二基準角度を更新する。第一基準角度、および第二基準角度の更新のタイミングは特に限定されるものではないが、便座装置100の周辺から人が居なくなってから第一時間経過後に実行される便座110、便蓋130の閉動作の終了後に更新する場合を例示できる。これにより、便座110、便蓋130が閉状態になっている可能性が高い状態でそれぞれの基準角度を更新することができる。また、形状が異なる便器200に取り付けられても、柔軟にそれぞれの基準角度を決定することができる。
【0035】
次に、便座110の開状態から閉状態になるまでの処理の流れを説明する。
図4は、開状態の便座110を模式的に示す側面図である。ここで、第一基準角度は、閉状態の角度であり0度の位置(水平)などである。開状態の便座110は、第一基準角度に対して90度よりも大きな位置で停止している。例えば便座110の開状態は108度などである。なお、第一基準角度は、基準角度更新部176により更新されるため、一定ではない場合がある。
【0036】
次に、使用者が便座110のみ、または便座110と便蓋130とを手で動かし、
図5に示すように、便座110を第一角度に到達させる。第一角度は例えば70度などである。
【0037】
この段階で、角度取得部171は、便座角度検出手段161により便座110は第一角度を閉方向に通過したことを把握し、角速度導出部172は、角速度ω1を導出する。
【0038】
角速度ω1を取得した駆動制御部173は、便座110の角速度ω1に応じた第一トルクを便座駆動手段120に発生させ、便座110を閉方向に動作させる。
【0039】
ここで、制御手段170は、便座駆動手段120が便座110を閉方向に動作させる際の目標角速度が定められている。目標角速度は一つでも複数でもかまわない。本実施の形態の場合、開状態から閉状態までに3つのエリアであるエリアA、エリアB、エリアCを設け、それぞれエリアAには第一目標角速度、エリアBには第二目標角速度、エリアCには第三目標角速度を設定している。これらの大きさの関係は、第一目標角速度>第二目標角速度>第三目標角速度、となっている。便座110が開状態から自動的に閉状態になる場合においてもそれぞれの目標角速度に従うように駆動制御部173は、便座駆動手段120を制御する。
【0040】
使用者が便座110を角速度ω1で第一角度を通過させた場合、駆動制御部173は、第一角度を含んでいるエリアAの第一目標角速度になるような第一トルクを便座駆動手段120に発生させる。角速度ω1が第一目標角速度以上の場合、駆動制御部173は、ブレーキ的な第一トルクを便座駆動手段120に発生させ、角速度ω1が第一目標角速度未満の場合、駆動制御部173は、アシスト的な第一トルクを便座駆動手段120に発生させる。
【0041】
角度取得部171は、便座110が閉状態になるまで便座110の角度を逐次取得し、角速度導出部172は、都度角速度ω1を導出している。駆動制御部173は、便座110がエリアA内で動作している間は、第一目標角速度になるように第一トルクを発生させ、エリアB内で動作している間は、第二目標角速度になるように第四トルクを発生させ、エリアC内で動作している間は、第三目標角速度になるように第五トルクを発生させる。
【0042】
以上により、使用者が便座110に手を添えているような場合でも、また自動的に便座110を閉じる場合でもスムーズな動作で便座110を閉じることが可能となる。なお、使用者が便座110を動作させる場合、開状態から第一角度まではエリアA内ではあるが、駆動制御部173は、トルクを発生させる制御は行わない。
【0043】
次に、便蓋130の開状態から閉状態になるまでの処理の流れを説明する。
図6は、開状態の便蓋130を模式的に示す側面図である。ここで、第二基準角度は、閉状態の角度であり0度の位置(水平)である。開状態の便蓋130は、第二基準角度に対して90度よりも大きな位置で停止している。例えば便蓋130の開状態は102度などである。第二基準角度は第一基準角度に依存し、基準角度更新部により更新されるため、一定ではない場合がある。
【0044】
次に、使用者が便蓋130のみ、または便蓋130と便座110とを手で動かし、
図7に示すように、便蓋130を第二角度に到達させる。第二角度は例えば70度などである。
【0045】
この段階で、角度取得部171は便蓋角度検出手段162により便蓋130は第二角度を閉方向に通過したことを把握し、角速度導出部172は、角速度ω2を導出する。
【0046】
角速度ω2を取得し、便座110が閉状態であることを確認した駆動制御部173は、便蓋130の角速度ω2に応じた第二トルクを便座駆動手段120に発生させ、便蓋130を閉方向に動作させる。なお、使用者が便蓋130と便座110とを同時に移動させている場合、便座110が閉方向に移動している間、便蓋130は自重により閉方向に動作する場合がある。
【0047】
ここで、制御手段170は、便蓋駆動手段としても機能する便座駆動手段120が便蓋130を閉方向に動作させる際の目標角速度が定められている。目標角速度は一つでも複数でもかまわない。本実施の形態の場合、開状態から閉状態までに3つのエリアであるエリアD、エリアE、エリアFを設け、それぞれエリアDには第四目標角速度、エリアEには第五目標角速度、エリアFには第六目標角速度を設定している。これらの大きさの関係は、第四目標角速度>第五目標角速度>第六目標角速度、となっている。便蓋130が開状態から自動的に閉状態になる場合においてもそれぞれの目標角速度に従うように駆動制御部173は、便座駆動手段120を制御する。
【0048】
例えば、便座110が閉状態である場合において、使用者が便蓋130を角速度ω2で第二角度を通過させた場合、駆動制御部173は、第二角度を含んでいるエリアDの第四目標角速度になるような第二トルクを便座駆動手段120に発生させる。角速度ω2が第四目標角速度以上の場合、駆動制御部173は、ブレーキ的な第二トルクを発生させ、角速度ω2が第四目標角速度未満の場合、駆動制御部173は、アシスト的な第二トルクを発生させる。
【0049】
角度取得部171は、便蓋130が閉状態になるまで便蓋130の角度を逐次取得し、角速度導出部172は、都度、角速度ω2を導出している。駆動制御部173は、便蓋130がエリアD内で動作している間は、第四目標角速度になるように第二トルクを発生させ、エリアE内で動作している間は、第五目標角速度になるように第六トルクを発生させ、エリアF内で動作している間は、第六目標角速度になるように第七トルクを発生させる。
【0050】
以上により、使用者が便蓋130に手を添えているような場合でも、また自動的に便蓋130を閉じる場合でもスムーズな動作で便蓋130を閉じることが可能となる。なお、使用者が便蓋130を動作させる場合、開状態から第二角度まではエリアD内ではあるが、駆動制御部173は、トルクを発生させる制御は行わない。
【0051】
また仮にエリアCに便座110が入った段階で使用者が力を入れて便座110の動作を止めた場合、便蓋130を閉状態から少し持ち上げる場合など、不測の事態により便座110や便蓋130が閉状態にならない場合がある。この場合、使用者がトイレを退出し便座装置100の周辺には人が存在しなくなってから所定の時間(例えば5分)経過後に駆動制御部173は、便蓋130に閉動作をさせるように便座駆動手段120を制御する。これにより、便蓋130とともに便座110を確実に閉状態にすることができる。
【0052】
以上のような制御を行うことで、簡単な制御で使用者が便座110、便蓋130を閉じる場合の制御、自動で便座110、便蓋130を閉じる場合の制御を実現することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0054】
例えば、開状態から閉状態まで三つのエリアに分割してエリアごとに異なる制御をする場合を説明したが、エリアは一つでも二つでもよく、四つ以上でもかまわない。
【0055】
また、人が居なくなってから所定時間後に便蓋130を動作させ便座110とともに閉状態にする場合を説明したが、便座110を閉状態にした後、便蓋130を閉状態にしてもかまわない。便座110と便蓋130とを同時に駆動できる場合、同時に閉状態になるような制御を行ってもかまわない。
【0056】
また、便座開閉手段120、および便蓋開閉手段は、それぞれモータを備え、便座110と便蓋130とを同時に駆動することができるものでもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、自動で便座、便蓋を閉じる事のできる便座装置に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
100 便座装置
110 便座
111 第一軸
120 便座駆動手段
121 モータ
122 第一伝達機構
123 切替手段
124 第二伝達機構
130 便蓋
132 第二軸
140 人検出手段
150 衛生洗浄装置
161 便座角度検出手段
162 便蓋角度検出手段
170 制御手段
171 角度取得部
172 角速度導出部
173 駆動制御部
174 存在取得部
175 計時部
176 基準角度更新部
200 便器
210 便鉢
220 洗浄水タンク