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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023055
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/16 20060101AFI20230209BHJP
   B26F 1/02 20060101ALI20230209BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B65D51/16 100
B26F1/02 B
B26F1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128232
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】592145039
【氏名又は名称】協栄プリント技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小林 明宏
(72)【発明者】
【氏名】梶 孝之
【テーマコード(参考)】
3C060
3E084
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060AA04
3C060BA01
3C060BB12
3C060BB13
3C060BB19
3C060BC01
3C060BC13
3C060BC14
3C060BC21
3C060BD01
3C060BG02
3C060BH01
3E084AA02
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA25
3E084AA26
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB11
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FC01
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA01
(57)【要約】
【課題】蓋に小サイズの通気孔を形成する。
【解決手段】使い捨てタイプの食品用容器における蓋3の製造方法は、プレス金型10におけるパンチ11を用いて蓋を完全に打ち抜くことにより蓋に通気孔4を形成する孔加工工程を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法であって、
プレス金型におけるパンチを用いて前記蓋を完全に打ち抜くことにより前記蓋に通気孔を形成する孔加工工程を備える
ことを特徴とする蓋の製造方法。
【請求項2】
前記通気孔は、0.1mm以上1mm以下の直径または最小幅を有する
請求項1に記載の蓋の製造方法。
【請求項3】
前記通気孔は、長孔状、円形、Y字状、クランク状または十字状である
請求項1または2に記載の蓋の製造方法。
【請求項4】
前記プレス金型は、ストリッパプレートを備え、前記ストリッパプレートは、前記パンチをスライド可能に常時挿通させるパンチガイド穴を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋の製造方法。
【請求項5】
前記プレス金型は、前記パンチを支持するパンチプレートを備え、前記パンチプレートは、前記パンチを嵌合挿入させるパンチ挿入穴と、前記パンチ挿入穴の周囲に設けられ前記パンチの先端側に向かって突出された凸部とを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓋の製造方法。
【請求項6】
前記パンチは、シャー角を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は蓋の製造方法に係り、特に、使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当、生鮮食品等の食品を入れる容器本体と、容器本体に被さってその上端開口部を閉じる蓋とを備えた食品用容器が公知である。こうした食品用容器は一般的に、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店で食品を販売するときだけ使用される使い捨てタイプであり、蓋は中味が見えるよう、透明なプラスチックシートでできている。また、容器内の食品の鮮度を保つため、蓋には通気孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-20850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この通気孔に関しては、外部の塵埃等が通気孔を通じて容器内に浸入しないよう、そのサイズをできるだけ小さくすることが望まれる。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、蓋に小サイズの通気孔を形成することができる蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法であって、
プレス金型におけるパンチを用いて前記蓋を完全に打ち抜くことにより前記蓋に通気孔を形成する孔加工工程を備える
ことを特徴とする蓋の製造方法が提供される。
【0007】
好ましくは、前記通気孔は、0.1mm以上1mm以下の直径または最小幅を有する。
【0008】
好ましくは、前記通気孔は、長孔状、円形、Y字状、クランク状または十字状である。
【0009】
好ましくは、前記プレス金型は、ストリッパプレートを備え、前記ストリッパプレートは、前記パンチをスライド可能に常時挿通させるパンチガイド穴を有する。
【0010】
好ましくは、前記プレス金型は、前記パンチを支持するパンチプレートを備え、前記パンチプレートは、前記パンチを嵌合挿入させるパンチ挿入穴と、前記パンチ挿入穴の周囲に設けられ前記パンチの先端側に向かって突出された凸部とを有する。
【0011】
好ましくは、前記パンチは、シャー角を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、蓋に小サイズの通気孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る食品用容器を示す図である。
図2】通気孔を示す拡大平面図である。
図3】別の通気孔を示す拡大平面図である。
図4】プレス金型を示す正面断面図である。
図5】パンチの断面形状(図4のZ-Z断面)を示す図である。
図6】ダイ穴の断面形状(図4のZ-Z断面)を示す図である。
図7】パンチとダイ穴およびパンチガイド穴とのクリアランスを示す正面断面図である。
図8】第1変形例の構成を示す正面断面図である。
図9】第2変形例の通気孔を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係る食品用容器を示し、(A)は平面図、(B)は正面断面図((A)のIb-Ib断面図)である。便宜上、前後左右上下の各方向を図示の通り定める。但しこれら各方向が説明の便宜上定められたものに過ぎない点に留意されたい。また以下に述べる各図の寸法は、理解容易のため誇張している場合があり、必ずしも正確ではない点に留意されたい。
【0016】
食品用容器1は、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店で食品を販売するときだけ使用される使い捨てタイプの容器である。食品用容器1は、食品Fを入れる容器本体2と、容器本体2に被さってその上端開口部を閉じる蓋3とを備える。本実施形態の食品Fは弁当であり、食品用容器1は、例えばコンビニエンスストアで販売される弁当を入れる密閉容器として使用される。本実施形態の容器本体2と蓋3は、図1(A)に示すように平面視において円形であるが、その形状は限定されず、四角形、楕円形等であってもよい。
【0017】
容器本体2と蓋3は、ともにプラスチック製であり、プラスチックのシート材を真空成形等することにより形成される。プラスチック材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が使用可能である。例えば、容器本体2をポリプロピレン製、蓋3をポリエチレン製とすることができる。蓋3は、内容物が見えるよう透明とされる。
【0018】
なお、容器本体2と蓋3の材質はプラスチック以外であってもよく、例えば紙であってもよい。
【0019】
容器本体2は、円形ボウル状とされ、その上端縁部2Aは半径方向外側に向かって折り返されている。この上端縁部2Aの外側に、略円盤状の蓋3の外周縁部3Aがきつく嵌合され、容器1内が密閉状態とされる。蓋3の外周縁部3Aも、容器本体2の上端縁部2Aに符合した折り返し形状とされている。蓋3の外周縁部3Aより内側の部分は、外周縁部3Aより低く位置された水平円板状の中央部3Bとされる。
【0020】
この蓋3の中央部3Bに、容器1内の食品Fの鮮度を保つための通気孔4が形成される。特に本実施形態では、後述の孔加工工程により、非常に小さいサイズの通気孔4が複数形成される。本実施形態では、長孔状の6個の通気孔4が格子状に配列されている。この6個の通気孔4群は、本実施形態では図1(A)に示すように、蓋3の中心から半径方向外側(前側)にオフセットして配置されている。
【0021】
なお、通気孔4の数、位置、配置方法等は任意であり、1個でもよいし、6個以外の複数個であってもよい。
【0022】
図2に拡大して示すように、通気孔4は、本実施形態では左右方向に延びる長孔状とされている。通気孔4は長さAと幅Bを有する。幅Bは長さA方向に一定である。通気孔4の長さA方向の基端(右端)5と先端(左端)6は半円状に形成されている。また基端5と先端6を結ぶ前後の側縁7,8は左右方向に平行な直線状とされている。
【0023】
前述したように、外部の塵埃等が通気孔4を通じて容器1内に浸入するのを防止するため、通気孔4のサイズはできるだけ小さいのが望ましい。また後述の孔加工工程では、プレス金型におけるパンチを用いて蓋3を完全に打ち抜くことにより蓋3に通気孔4が形成される。通常のプレス金型では、パンチの小型化に限界があり、本実施形態の通気孔4のような微小孔を加工できない。しかし本実施形態では、後述するような高精度タイプのプレス金型を用いるので、通常のプレス金型よりパンチを小型化でき、通気孔4のような微小孔を加工できる。
【0024】
幅Bは、通気孔4の最小幅(Bmin)を規定する。ここで最小幅とは、通気孔4のうち、幅が最小となる部分の幅をいう。本実施形態ではこの最小幅を、通常のプレス金型を用いた場合より小さくでき、0.1mmまで小さくできる。一方、通常のプレス金型の最小幅は1mmを超える。従って本実施形態の通気孔4の最小幅は、0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0025】
本実施形態の場合、通気孔4の幅Bは0.3mmである。一方、長さAはそれより大きく、5.0mmである。なおこれら寸法は変更可能である。
【0026】
因みに、通気孔4の形状は図3に示すような円形とすることもできる。この場合、通気孔4の直径Dは0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0027】
このように本実施形態の通気孔4は非常に小さいサイズを有する。そのため、通気孔4を通じて外部の塵埃等(塵埃、虫、異物等)が容器1内に浸入するのを効果的に抑制することができる。本実施形態の蓋3は、外部の塵埃等の容器1内への浸入抑制に極めて有利である。
【0028】
勿論、通気孔4を通じて容器内外間の空気の流通を行うことができるので、容器1内の食品Fの鮮度を良好に保つことができる。
【0029】
一方、蓋3が被せられて密閉された容器1内の食品Fは、容器1ごと電子レンジで加熱することが予定されている。こうした加熱時に、食品Fから水蒸気や湯気(水蒸気等という)が発生するので、これを外部に逃がす必要がある。
【0030】
本実施形態によれば、通気孔4を通じて水蒸気等を良好に逃がすことができる。また通気孔4を複数設けているので、通気孔4の合計面積を増加し、水蒸気等の排出に必要な合計面積を十分に確保できる。こうして通気孔4は良好な蒸気抜き孔として機能する。
【0031】
ところで、通気孔4の用途は上記に限られない。例えば、食品Fがカップ焼きそばの麺であるとき、通気孔4を湯切り孔として使用することができる。また、食品Fが水分を多く含む野菜等であるとき、野菜等が所謂汗をかいて容器内に水が溜まることがある。このとき、通気孔4を水切り孔として使用することもできる。
【0032】
通気孔4のサイズ、数および形状等は、上記機能を満足できるよう最適に設定される。
【0033】
本実施形態は、このように優れた小サイズの通気孔4を蓋3に形成することができる蓋3の製造方法を提供するものである。
【0034】
本実施形態の蓋3の製造方法は、プラスチックシート材を切断および成形(特に真空成形)して所定形状の蓋3を作製する成形工程と、成形工程によって作製された蓋3に通気孔4を形成する孔加工工程とを備える。特に本実施形態の製造方法は、孔加工工程において、後述のプレス金型におけるパンチを用いて蓋3を完全に打ち抜くことにより通気孔4を形成する点に特徴がある。ここで「蓋3を完全に打ち抜く」とは、通常のピアス加工のように、パンチの全周で蓋3をせん断し、パンチの断面形状と同一形状の貫通孔が形成されるよう蓋3を打ち抜くことをいう。
【0035】
図4は、孔加工工程で用いられるプレス金型を示す正面断面図である。なお、6個の通気孔4は同様の方法で作製されるので、以下便宜上、通気孔4を1個とした場合について説明する。
【0036】
プレス金型10は、蓋3から通気孔4を打ち抜くためのパンチ11と、打ち抜き時にパンチ11が挿入されるダイプレート12と、パンチ11を支持するパンチプレート13と、打ち抜き後に蓋3をパンチ11から離脱させるためのストリッパプレート14とを備える。プレス機の可動側上型15にパンチプレート13が、固定側の下型16にダイプレート12が、それぞれ図示しないボルト等により固定される。
【0037】
パンチ11は、上下方向に伸長され、打ち抜きを行う先端側(下端側)の刃部17と、パンチプレート13によって支持される基端側(上端側)の被支持部18とを有する。パンチ11は、図5に示すように、通気孔4と同一の形状およびサイズである長孔状の断面形状を全長に亘って有する。従って刃部17と被支持部18も図5に示すような断面形状を有する。パンチ11の先端部は図4に示すように断面V字状に形成され、パンチ11にはシャー角θが設けられている。
【0038】
通気孔4と同様、パンチ11の断面のサイズが非常に小さく、パンチ11が極めて細長いので、打ち抜き時にパンチ11がブレないよう、工夫する必要がある。本実施形態のプレス金型10では、こうした工夫が随所に凝らされている。
【0039】
ダイプレート12の上面部には、パンチ11の刃部17を挿入させるためのダイ穴19が設けられている。ダイ穴19は、図6に示すように、刃部17と同一の断面形状を有する。パンチ11の刃部17と、ダイ穴19の周縁部とによって、蓋3がせん断され、通気孔4が打ち抜かれる。打ち抜き後のスクラップ(抜きカス)20は、ダイ穴19と、その下方に連続するテーパ状のスクラップ穴21とを通じて、穴底部に位置する下型16上に落とされる。
【0040】
パンチプレート13には、パンチ11の被支持部18をぴったりと嵌合挿入させるためのパンチ挿入穴22が設けられている。パンチ挿入穴22は、パンチプレート13を上下方向に貫通され、図6に示すように、被支持部18と同一の断面形状を有する。なおパンチ挿入穴22の断面形状はダイ穴19の断面形状と同じなので、便宜上図6に併記する。被支持部18はパンチ挿入穴22の全長に亘って挿入される。本実施形態では被支持部18が接着剤によりパンチ挿入穴22に固定される。パンチ11ないし被支持部18の基端面(上端面)23は、パンチプレート13の基端面(上端面)24と面一とされる。特に、被支持部18がパンチ挿入穴22に固定された後、被支持部18の基端面23とパンチプレート13の基端面24とが同時に研磨され、同一平面上に高精度で位置される。これら基端面23,24が共に上型15に面接触されるので、上型15からの下向きの力を効率よく安定してパンチ11に伝達することができる。また、打ち抜き時のパンチ11の反力を上型15によって確実に受け止めることができる。
【0041】
パンチプレート13におけるパンチ挿入穴22の周囲には、下方すなわちパンチ11の先端側に向かって突出された凸部25が設けられている。これによりパンチ挿入穴22が長くなり、パンチ11の支持長を長くすると共に、パンチ挿入穴22から突出するパンチ11の突出長を短くすることができ、パンチ11のブレを抑制することができる。
【0042】
ストリッパプレート14は周知のように、図示しないスプリング等を介してパンチプレート13に昇降可能に取り付けられている。ストリッパプレート14は、パンチ11による打ち抜き直前に蓋3をダイプレート12上に押さえ付ける役割と、打ち抜き後にパンチ11が上昇したとき蓋3をパンチ11から離脱させる役割とを果たす。
【0043】
特に本実施形態では、このストリッパプレート14を利用してパンチ11をガイドし、パンチ11のブレを抑えるようにした。すなわち、ストリッパプレート14には、パンチ11の刃部17をスライド可能に常時挿通させるためのパンチガイド穴26が設けられている。パンチガイド穴26は、ストリッパプレート14を上下方向に貫通され、図6に示すように、刃部17と同一の断面形状を有する。なおパンチガイド穴26の断面形状もダイ穴19の断面形状と同じなので、便宜上図6に併記する。刃部17がパンチガイド穴26に挿通されたとき、刃部17はパンチガイド穴26の内周面によって全周支持される。これにより打ち抜き時に刃部17が反力で撓もうとしても、その撓みが抑制される。そして刃部17のブレが抑制され、打ち抜きを精度よく安定的に行うことができる。
【0044】
図4は、パンチ11が下死点にある打ち抜き後の状態を示しているが、刃部17ないし、凸部25から下方に突出されたパンチ11の部分は、パンチガイド穴26に常時挿通されている。よってパンチ11の上死点から下死点まで常に、パンチ11をパンチガイド穴26によって案内でき、パンチ11を一定軌道で安定して昇降させることができる。
【0045】
ストリッパプレート14には、パンチプレート13の凸部25を隙間を以て嵌合させるための凹部27が設けられている。
【0046】
このように本実施形態のプレス金型10によれば、パンチ11のブレを抑制した結果、通気孔4の加工精度を高めることができる。またパンチ11のブレが抑制されているので、図7に示すように、パンチ11とダイ穴19のクリアランスCLa、およびパンチ11とパンチガイド穴26のクリアランスCLbを、小さくすることができ、これも加工精度の向上につながる。本実施形態では、前者のクリアランスCLaを0.005mm、後者のクリアランスCLaを0.003mmとしている。但しこれらクリアランスCLa,CLbの大きさは、蓋3の材質、厚さ等に応じて適宜変更可能である。
【0047】
本実施形態ではパンチ11にシャー角θを設けたので、打ち抜き時にパンチ11に付加されるインパクトを軽減し、パンチ11のブレを抑制することができる。また、スクラップ20が静電気でパンチ11に付着し、パンチ11と共に持ち上がってしまうことも抑制できる。これによりスクラップ20が蓋3に付着したままとなり、誤って容器内に混入するリスクも大幅に軽減できる。
【0048】
パンチ11のブレを抑制したので、打ち抜き時にパンチ11がダイプレート12に接触して起こるカジリも抑制できる。
【0049】
本実施形態では、パンチ11がワイヤー放電加工によって作製される。すなわち、パンチ11の長さ(上下方向の寸法)以上の厚さの導電性金属(特に鉄)の素材を、図5に示した断面形状となるようにワイヤー放電加工でくり抜くことによってパンチ11が作製される。これによりパンチ11の小サイズの断面形状を、高精度かつ容易に作製することができる。
【0050】
同様に、ダイ穴19、パンチ挿入穴22およびパンチガイド穴26も、ワイヤー放電加工で作製される。これにより、図6に示したような各穴の小サイズの断面形状を、高精度かつ容易に作製することができる。
【0051】
なお、可能であれば、これらパンチ11、ダイ穴19、パンチ挿入穴22およびパンチガイド穴26の少なくとも一つを、高精度型のマシニングセンタで機械加工してもよい。
【0052】
次に、本開示の変形例を説明する。なお前記基本実施形態と同様の部分については説明を割愛し、以下、基本実施形態との相違点を主に説明する。
【0053】
[第1変形例]
図8は、第1変形例の構成を示す。この第1変形例では、パンチプレート13に対するパンチ11の固定方法が変更されている。
【0054】
すなわち、パンチ11の被支持部18がパンチ挿入穴22に嵌合挿入される点は前記同様である。しかし、接着剤による固定はなされておらず、代わりにパンチ11は、キー28とキー溝29によって、パンチ挿入穴22内に位置決め固定されている。
【0055】
キー28は、パンチ11の側面(図示例では左側面)に一体的に突出して設けられ、パンチ11の基端面(上端面)23から先端側(下側)に向かって所定長さ延びている。キー28は図示するように縦長長方形の断面形状を有する。
【0056】
一方、キー溝29は、パンチ挿入穴22の内側面(図示例では左内側面)に設けられ、パンチプレート13の基端面(上端面)24から先端側(下側)に向かって、キー28と同じ長さだけ延びている。キー溝29も図示するように縦長長方形の断面形状を有する。またキー溝29の横幅(左右方向の幅)はキー28よりも若干大きくされる。キー溝29の基端側は開放されている。
【0057】
パンチ11およびキー28は、パンチ挿入穴22およびキー溝29にそれぞれ着脱可能に挿入される。キー28はキー溝29にぴったりと嵌合挿入される。これによりパンチ11の前後左右方向および周方向の位置ずれが防止される。挿入状態において、キー28の先端面(下端面)30がキー溝29の先端面(下端面)31に接触される。また、パンチ11の基端面23およびキー28の基端面32は、上型15に接触される。これによりキー28がキー溝29の先端面31と上型15に挟まれ、軸方向に拘束されるので、パンチ挿入穴22に対するパンチ11の軸方向の位置ずれを防止することができる。
【0058】
こうしてパンチ11はパンチ挿入穴22に実質的に固定される。
【0059】
本実施形態によれば、パンチプレート13を上型15から取り外し、パンチ11を基端側に引き抜いてパンチプレート13から取り外すことができる。また逆方向の手順でパンチ11をパンチプレート13に取り付けることができる。よってパンチ11が劣化、破損等したときにパンチ11を容易に交換することができる。
【0060】
[第2変形例]
通気孔4は、図2に示したような長孔状、または図3に示したような円形のものに限らず、様々な形状のものに変更可能である。特に、パンチ11等は、ワイヤー放電加工によって作製されるので、比較的複雑な断面形状にすることができる。よって通気孔4を、より複雑な形状にすることが可能である。本実施形態によれば、意匠の自由度が高い微小な通気孔4等を容易に作製することが可能である。
【0061】
図9には、こうした通気孔4の変形例を示す。なお通気孔4の形状変更に合わせてパンチ11等の断面形状も変更することは勿論である。
【0062】
図9(A)は、Y字状の通気孔4を示す。この通気孔4は、孔中心Oを中心として放射状に延びる3つの延在部33を有する。これら延在部33は周方向等間隔(120°間隔)で配置されている。延在部33の先端34は半円状に形成され、延在部33の一対の側縁35は互いに平行で半径方向に延びる直線状とされている。
【0063】
延在部33の基端はくびれ形状とされ、隣り合う延在部33の近い方の側縁35の基端同士が円弧部26で繋がれている。互いに対向する一対の円弧部26の最小間隔が、通気孔4の最小幅(Bminで表す)を規定する。この最小幅は前述したように、0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0064】
図9(B)は、斜めのクランク状の通気孔4を示す。この通気孔4は、図2に示した長孔状の通気孔4を長手方向に延長し、クランク状に曲げ、さらに回転させたものであると言える。この通気孔4は幅Bを有し、この幅Bが通気孔4の最小幅を規定する。最小幅は0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0065】
図9(C)は、十字状の通気孔4を示す。この通気孔4は、図9(A)に示したY字状の通気孔4を十字状に変更したものである。通気孔4は前記同様、孔中心Oを中心として放射状に延びる4つの延在部33を有する。これら延在部33は周方向等間隔(90°間隔)で配置されている。延在部33は先端34と一対の側縁35とを有する。
【0066】
延在部33の基端はくびれ形状とされ、隣り合う延在部33の近い方の側縁35の基端同士が円弧部26で繋がれている。互いに対向する一対の円弧部26の最小間隔が、通気孔4の最小幅(Bminで表す)を規定する。この最小幅は、0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0067】
ところで、図9(A)~(C)に示した通気孔4の形状に合わせてパンチ11の断面形状を変更すると、パンチ11の強度を増加することができる。よってこうした通気孔4の形状変更は、孔形状の精度向上にも効果的である。
【0068】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。例えば、蓋3は必ずしも透明でなくてもよく、不透明であってもよい。上記の数値はあくまで一例であり、適宜変更可能である。通気孔4は、他の単純形状であってもよく、四角形、楕円形等であってもよい。
【0069】
前述の基本実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 食品用容器
3 蓋
4 通気孔
10 プレス金型
11 パンチ
13 パンチプレート
14 ストリッパプレート
22 パンチ挿入穴
25 凸部
26 パンチガイド穴
θ シャー角
図1
図2
図3
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図5
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図9