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▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023071
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】通信システム、及びロボット
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20230209BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H04L12/28 400
H04L12/28 200M
G06F3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128261
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】野口 直之
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 正吾
(72)【発明者】
【氏名】上甲 均
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA06
5K033DA11
5K033DB25
5K033EA03
5K033EA04
5K033EA07
5K033EB03
5K033EB08
(57)【要約】
【課題】下位制御部(71~75)からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位制御部の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することができる通信システム70を提供する。
【解決手段】主制御部50と、複数の下位制御部(71~75)と、個々の下位制御部(71~75)に対する電源供給を個別に入り切りする下位電源スイッチ(52、71b~75b)とを備え、並び順で互いに隣り合って通信を行う2つの制御部の間における通信が不通になった場合に、それら2つの制御部のうち、下位側の制御部に対する電源供給を切った状態で、上位側の制御部における通信機能の異常の有無を確認する確認処理を実行する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備える通信システムであって、
個々の下位機器に対する電源供給を個別に入り切りする電源入切手段を備え、
並び順で互いに隣り合って通信を行う2つの機器の間における通信が不通になった場合に、それら2つの機器のうち、下位側の機器に対する電源供給を切った状態で、上位側の機器における通信機能の異常の有無を確認する確認処理を実行する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
個々の下位機器が、制御機と、上位側通信ドライバと、下位側通信ドライバとを備え、
前記上位側通信ドライバが、前記制御機から発信された信号を、最上位機器又は上位側の下位機器に向けて送信し、且つ最上位機器又は上位側の下位機器から発信された信号を、前記制御機及び前記下位側通信ドライバに向けて送信し、
前記下位側通信ドライバが、上位側通信ドライバから発信された信号を、下位側の下位機器に向けて送信し、且つ下位側の下位機器から発信された信号を、前記上位側通信ドライバに向けて送信し、
前記制御機が、前記上位側通信ドライバの受信素子と、前記下位側通信ドライバの送信素子とを接続する受信ラインに繋がる第1受信端子、及び前記上位側通信ドライバの送信素子と、前記下位側通信ドライバの受信素子とを接続する送信ラインに繋がる第2受信端子とを備える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の通信システムであって、
並び順で互いに隣り合う2つの下位機器の間における通信が不通になったことに基づいて開始された前記確認処理が、最上位機器からテスト信号を発信する工程と、前記2つの下位機器のうち、上位側の下位機器において、前記上位側通信ドライバで受信した前記テスト信号について前記下位側通信ドライバと前記第2受信端子とを介した前記制御機による受信の有無を確認する工程とを具備する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の通信システムであって、
並び順で互いに隣り合う2つの下位機器の間における通信が不通になったことに基づいて開始された前記確認処理が、前記2つの下位機器おける上位側の下位機器に対して上位側で隣り合う下位機器からテスト信号を発信する工程と、前記2つの下位機器のうち、上位側の下位機器において、前記上位側通信ドライバで受信した前記テスト信号について前記下位側通信ドライバと前記第2受信端子とを介した前記制御機による受信の有無を確認する工程とを具備する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の通信システムであって、
前記電源入切手段が、個々の下位機器に配置されたスイッチであり、
前記スイッチが、上位側から送られてくる電源の下位側への伝導を入り切りする、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項5に記載の通信システムであって、
個々の下位機器の前記制御機が、前記制御機の送信端子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する状態と、前記下位側通信ドライバの受信素子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える通信切り替えスイッチを備え、
前記制御機が、信号を発信する場合に、前記通信切り替えスイッチにより、前記制御機の送信端子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する処理を実行する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項7】
ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行う通信システムを備えるロボットであって、
前記通信システムが、請求項1乃至6の何れか1項に記載の通信システムである、
ことを特徴とするロボット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、及びこれを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備える通信システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の通信システムとしてのネットワークシステムは、最上位機器たるマスタ装置と、下位機器たる複数のスレーブ装置とを備える。それらマスタ装置と、複数のスレーブ装置とは、互いにデイジーチェーン接続された状態で通信を行う。
るとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-192012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなネットワークシステムにおいては、スレーブ装置からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、スレーブ装置の故障なのかを特定することができないという課題がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような通信システム、及びロボットを提供することである。即ち、下位機器からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位機器の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することができる通信システム等である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備える通信システムであって、個々の下位機器に対する電源供給を個別に入り切りする電源入切手段を備え、並び順で互いに隣り合って通信を行う2つの機器の間における通信が不通になった場合に、それら2つの機器のうち、下位側の機器に対する電源供給を切った状態で、上位側の機器における通信機能の異常の有無を確認する確認処理を実行する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下位機器からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位機器の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るロボットの構成を示す図である。
図2】同ロボットに搭載される制御システム、監視用信号生成部、各駆動部、及び5つのA/D変換器を示す電気ブロック図である。
図3】同ロボットの制御システムにおける主制御部、第1下位制御部、第2下位制御部、第3下位制御部、第4下位制御部、及び第5下位制御部を示す電気ブロック図である。
図4】第1実施例に係るロボットの主制御部によって実行される監視処理の処理フローを示すフローチャートである。
図5】同ロボットの主制御部のCPUによって実行される初期ルーチン処理における処理フローを、下位制御部によって実施される処理フローとともに示すフローチャートである。
図6】第2実施例に係るロボットの主制御部のCPUによって実行される初期ルーチン処理における処理フローを、下位制御部によって実施される処理フローとともに示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る通信システムを搭載したロボットの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造、並びに、各構造における縮尺及び数、などを異ならせる場合がある。
【0011】
まず、実施形態に係るロボットの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るロボット1の構成を示す図である。このロボット1においては、本体部(基体)10に対して複数のアームが組み合わされて装着され、各アームの動きが制御されることによって所望の動作が行われる。共通アーム11は、本体部10の上に装着される。アーム14、及びアーム15のそれぞれは、共通アーム11に対して連結アーム12、連結アーム13を介して装着される。
【0012】
本体部10に保持される共通アーム11は、回動軸A1を中心にして回転駆動される。連結アーム12に保持されるアーム14は、回転軸A2を中心にして回転駆動される。連結アーム13に保持されるアーム15は、回動軸A3を中心にして回転駆動される。
【0013】
本体部10には、共通アーム11を駆動するための機械的機構が設けられる。回動軸A1は、ロボット1における全体の軸となる。これにより、アーム14、アーム15を含む共通アーム11に接続される全ての構成要素が駆動されるため、特に共通アーム11の駆動時の負荷は大きくなる。この負荷に耐え得るように、第1駆動部21、第2駆動部22が設けられている。共通アーム11の回動軸A1を中心とする駆動は、第1駆動部21による回動軸A11の駆動と、第2駆動部22による回動軸A12の駆動とによって行われる。回動軸A11の駆動、及び回動軸A12の駆動は、第3駆動部23によって回動軸A1の駆動に変換される。即ち、回動軸A1の駆動は、直接的には第3駆動部23によって行われる。
【0014】
連結アーム12は、第4駆動部24を保持する。第4駆動部24は、アーム14を駆動するための機械的機構を具備する。また、連結アーム13は、第5駆動部25を保持する。第5駆動部25は、アーム15を駆動するための機械的機構を具備する。第4駆動部24、第5駆動部25のそれぞれは、モータ、ギヤ、軸受等を具備する。第1駆動部21、第2駆動部22のそれぞれも、モータ、ギヤ、軸受等を具備する。第3駆動部23は、回動軸A11、回動軸A12のそれぞれの駆動を、回動軸A1の駆動に変換するためのギヤ、軸受等を具備する。
【0015】
ロボット1は、第1駆動部21、第2駆動部22、第3駆動部23、第4駆動部、第5駆動部25のそれぞれの駆動により、共通アーム11、アーム14、アーム15の動きを制御するための通信システム70を具備する。通信システムとしての通信システム70は、CPU等を具備する。図1に示される例では、通信システム70が本体部(基体)10内に配置されるが、ロボット1とは別体で、例えばロボット1から離間した位置に配置されてもよい。
【0016】
ロボット1の稼働に伴って、摩耗や経年劣化等が発生するのは、主に第1駆動部21、第2駆動部22、第3駆動部23、第4駆動部24、及び第5駆動部25である。ロボット1は、それら駆動部における故障の予知に役立つ所定の特性を個別に検知する5つのセンサ30を具備する。それぞれのセンサ30は、例えば駆動部に発生した振動を検知するための加速度センサ等からなる。センサ30は、駆動部において振動を検知する部分に固定される。センサ30の大きさ、重量は、前述の部分に比べて無視できる程度の値になっているため、センサ30によって検知された振動(加速度)は、前述の部分に加わった加速度に相関する値になる。センサ30からは、振動の大きさに応じた値の直流電圧がアナログ信号として出力される。
【0017】
図2は、ロボット1に搭載される通信システム70、監視用信号生成部40、各駆動部(21~25)、及び5つのA/D変換器31を示す電気ブロック図である。同図においては、破線の領域内がロボット1の内部に相当する。
【0018】
通信システム70は、最上位機器たる主制御部50と、下位機器たる第1下位制御部71と、下位機器たる第2下位制御部72と、下位機器たる第3下位制御部73と、下位機器たる第4下位制御部74と、下位機器たる第5下位制御部75とを備える。以下、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を、まとめて各下位制御部という。
【0019】
主制御部50と、各下位制御部とは、ケーブルC1~C5によって互いデイジーチェーン接続されて通信を行う。主制御部50は、主制御部50及び各下位制御部のうち、並び順で最上位に位置する最上位機器である。以下、各下位制御部のそれぞれの位置関係について、より主制御部50に近い方の位置を上位、より主制御部50から遠い方の位置を下位という。各下位制御部においては、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、第5下位制御部75という順で、上位に位置する。
【0020】
ロボット1は、5つのA/D変換器31を具備する。それぞれのA/D変換器31は、互いに異なる下位制御部(71~75)に接続される。第1駆動部21のセンサ30から出力されたアナログ信号G1は、A/D変換器31を経由することで振動の大きさを示すデジタル信号からなる振動信号S1に変換された後、第1下位制御部71に入力される。第2駆動部22のセンサ30から出力されたアナログ信号G2は、A/D変換器31を経由することで振動信号S2に変換された後、第2下位制御部72に入力される。第3駆動部23のセンサ30から出力されたアナログ信号G3は、A/D変換器31を経由することで振動信号S3に変換された後、第3下位制御部73に入力される。第4駆動部24のセンサ30から出力されたアナログ信号G4は、A/D変換器31を経由することで振動信号S4に変換された後、第4下位制御部74に入力される。第5駆動部25のセンサ30から出力されたアナログ信号G5は、A/D変換器31を経由することで振動信号S5に変換された後、第5下位制御部75に入力される。
【0021】
センサ30とA/D変換器31との間の電気接続には、例えばノイズの混入を抑制しやすい同軸ケーブルを用いることができる。A/D変換器31を対応するセンサ30の近傍に設置すれば、同軸ケーブルの長さをロボット1の全長と比較して無視できる程度の長さに留めることが可能になる。
【0022】
第5下位制御部75は、第4下位制御部74、第3下位制御部73、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S5を主制御部50に送信する。第4下位制御部74は、第3下位制御部73、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S4を主制御部50に送信する。第3下位制御部73は、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S3を主制御部50に送信する。第2下位制御部72は、第1下位制御部71を介して、振動信号S2を主制御部50に送信する。第1下位制御部71は、振動信号S1を主制御部50に送信する。主制御部50は、各振動信号(S1~S5)を、監視用信号生成部40に送信する。監視用信号生成部40は、各振動信号(S1~S5)を時系列的に分割してシリアルデータに変換し、監視用信号S0としてロボット1の外部に出力する。
【0023】
監視装置100は、ロボット1側のコネクタCN1(CN11、CN12)と、単一の外部ケーブル線Cと、監視装置100側のコネクタCN2(CN21、CN22)とを介して、監視用信号S0を受信する。監視装置100は、前述の受信によってそれぞれのセンサ30からの出力値を認識して記憶することが可能である。
【0024】
図3は、通信システム70の主制御部50、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を示す電気ブロック図である。主制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、下位電源スイッチ52、通信ドライバ53、下位電源54等を具備する。下位電源54は、各下位制御部に供給するための電源を出力するものであり、下位電源スイッチ52に接続されている。下位電源スイッチ52は、第1下位制御部71に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU51から出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU51は、通電命令信号を下位電源スイッチ52に出力することで、下位電源スイッチ52を「入」の状態にして、第1下位制御部71に電源を供給することが可能である。また、主制御部50のCPU51は、通信ドライバ53と、ケーブルA(C1)と、後述の第1下位制御部71の上位側通信ドライバ71cとを介して、第1下位制御部71のCPU71aと通信することが可能である。
【0025】
主制御部50と、第1下位制御部71とは、電源線Vcc、アース線GND、第1データ線D+、及び第2データ線D-を具備する少なくとも4線からなるケーブルA(C1)によって互いに接続され、ケーブルA(C1)を介して互いに通信を行う。
【0026】
第1下位制御部71は、CPU71a、下位電源スイッチ71b、上位側通信ドライバ71c、下位側通信ドライバ71d、通信切り替えスイッチ71e、電流・電圧計71f等を具備する。下位電源スイッチ71bは、第2下位制御部72に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU71aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU71aは、通電命令信号を下位電源スイッチ71bに出力することで、下位電源スイッチ71bを「入」の状態にして、第2下位制御部72に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71を介して、第1駆動部(図2の21)の駆動を制御する。また、第1下位制御部71のCPU71aは、下位側通信ドライバ71dと、ケーブル(図2のC2)と、後述の第2下位制御部72の上位側通信ドライバ72cとを介して、第2下位制御部72のCPU72aと通信することが可能である。通信切り替えスイッチ71eは、CPU71aの送信端子Tx1と上位側通信ドライバ71cの送信素子とを接続する状態と、下位側通信ドライバ71dの受信素子と上位側通信ドライバ71cの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える。電流・電圧計71fは、第1下位制御部71に流れる電源電流と、第1下位制御部71に印加される電源電圧とを計測し、結果をCPU71aに送る。
【0027】
第1下位制御部71の制御機たるCPU71aは、第0~第5内部スイッチ(SW0~SW5)、送信端子Tx1、第1受信端子Rx1、及び第2受信端子Rx2を備える。CPU71aの第0内部スイッチSW0が入り状態になると、第0内部スイッチSW0からの出力がオンになって、下位電源スイッチ71bが入り状態になる。CPU71aの第1内部スイッチSW1が入り状態になると、上位側通信ドライバ71cからの信号出力が可能になる。CPU71aの第2内部スイッチSW2が入り状態になると、上位側通信ドライバ71cによる信号受信が可能になる。CPU71aの第4内部スイッチSW4が入り状態になると、下位側通信ドライバ71dからの信号出力が可能になる。CPU71aの第5内部スイッチSW5が入り状態になると、下位側通信ドライバ71dからの信号入力が可能になる。CPU71aの第3内部スイッチSW3が入り状態になると、通信切り替えスイッチ71eが、送信端子Tx1と、上位側通信ドライバ71cの送信素子とを接続する状態になる。これに対し、CPU71aの第3内部スイッチSW3が切り状態になると、通信切り替えスイッチ71eが、下位側通信ドライバ71dの受信素子と上位側通信ドライバ71cの送信素子とを接続する状態になる。これにより、下位側通信ドライバ71dの受信素子から出力された信号が、通信切り替えスイッチ71eと、上位側通信ドライバ71cの送信素子とを介して、上位側に送られるようになる。
【0028】
上位側通信ドライバ71cによって受信された信号は、CPU71aの第1受信端子Rx1を介してCPU71a内に送られるとともに、下位側通信ドライバ71dを介して下位側に送られる。下位側から送られてきた信号は、下位側通信ドライバ71dと第2受信端子Rx2とを介してCPU71a内に送られる。また、この信号は、通信切り替えスイッチ71eの状態によっては、上位側通信ドライバ71cにも送られる。
【0029】
後述の第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、第5下位制御部75のそれぞれも、同様の内部スイッチ(SW0~SW5)、送信端子Tx1、第1受信端子Rx1、及び第2受信端子Rx2を備えている。
【0030】
第1下位制御部71と、第2下位制御部72とは、電源線Vcc、アース線GND、第1データ線D+、及び第2データ線D-を具備する少なくとも4線からなるケーブルB(C2)によって互いに接続され、ケーブルB(C2)を介して互いに通信を行う。
【0031】
第2下位制御部72は、CPU72a、下位電源スイッチ72b、上位側通信ドライバ72c、下位側通信ドライバ72d、通信切り替えスイッチ72e、電流・電圧計72f等を具備する。下位電源スイッチ72bは、第3下位制御部73に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU72aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU72aは、通電命令信号を下位電源スイッチ72bに出力することで、下位電源スイッチ72bを「入」の状態にして、第3下位制御部73に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71及び第2下位制御部72を介して、第2駆動部(図2の22)の駆動を制御する。また、第2下位制御部72のCPU72aは、下位側通信ドライバ72dと、ケーブル(図2のC3)と、後述の第3下位制御部73の上位側通信ドライバ73cとを介して、第3下位制御部73のCPU73aと通信することが可能である。通信切り替えスイッチ72eは、CPU72aの送信端子Tx1と上位側通信ドライバ71cの送信素子とを接続する状態と、下位側通信ドライバ72dの受信素子と上位側通信ドライバ72cの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える。電流・電圧計72fは、第2下位制御部72に流れる電源電流と、第2下位制御部72に印加される電源電圧とを計測し、結果をCPU72aに送る。
【0032】
第2下位制御部72と、第3下位制御部73とは、電源線Vcc、アース線GND、第1データ線D+、及び第2データ線D-を具備する少なくとも4線からなるケーブルC(C3)によって互いに接続され、ケーブルC(C3)を介して互いに通信を行う。
【0033】
第3下位制御部73は、CPU73a、下位電源スイッチ73b、上位側通信ドライバ73c、下位側通信ドライバ73d、通信切り替えスイッチ73e、電流・電圧計73f等を具備する。下位電源スイッチ73bは、第4下位制御部74に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU73aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU73aは、通電命令信号を下位電源スイッチ73bに出力することで、下位電源スイッチ73bを「入」の状態にして、第4下位制御部74に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、及び第3下位制御部73を介して、第3駆動部(図2の23)の駆動を制御する。また、第3下位制御部73のCPU73aは、下位側通信ドライバ73dと、ケーブル(図2のC4)と、後述の第4下位制御部74の上位側通信ドライバ74cとを介して、第4下位制御部74のCPU74aと通信することが可能である。通信切り替えスイッチ73eは、CPU73aの送信端子Tx1と上位側通信ドライバ73cの送信素子とを接続する状態と、下位側通信ドライバ73dの受信素子と上位側通信ドライバ73cの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える。電流・電圧計73fは、第3下位制御部73に流れる電源電流と、第3下位制御部73に印加される電源電圧とを計測し、結果をCPU73aに送る。
【0034】
第3下位制御部73と、第4下位制御部74とは、電源線Vcc、アース線GND、第1データ線D+、及び第2データ線D-を具備する少なくとも4線からなるケーブルD(C4)によって互いに接続され、ケーブルD(C4)を介して互いに通信を行う。
【0035】
第4下位制御部74は、CPU74a、下位電源スイッチ74b、上位側通信ドライバ74c、下位側通信ドライバ74d、通信切り替えスイッチ74e、電流・電圧計74f等を具備する。下位電源スイッチ74bは、第5下位制御部75に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU74aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU74aは、通電命令信号を下位電源スイッチ74bに出力することで、下位電源スイッチ74bを「入」の状態にして、第5下位制御部75に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、及び第4下位制御部74を介して、第4駆動部(図2の24)の駆動を制御する。また、第4下位制御部74のCPU74aは、下位側通信ドライバ74dと、ケーブル(図2のC4)と、後述の第5下位制御部75の上位側通信ドライバ75cとを介して、第5下位制御部75のCPU75aと通信することが可能である。通信切り替えスイッチ74eは、CPU74aの送信端子Tx1と上位側通信ドライバ74cの送信素子とを接続する状態と、下位側通信ドライバ74dの受信素子と上位側通信ドライバ74cの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える。電流・電圧計74fは、第4下位制御部74に流れる電源電流と、第4下位制御部74に印加される電源電圧とを計測し、結果をCPU74aに送る。
【0036】
第4下位制御部74と、第5下位制御部75とは、電源線Vcc、アース線GND、第1データ線D+、及び第2データ線D-を具備する少なくとも4線からなるケーブルE(C5)によって互いに接続され、ケーブルE(C5)を介して互いに通信を行う。
【0037】
第5下位制御部75は、CPU75a、下位電源スイッチ75b、上位側通信ドライバ75c、下位側通信ドライバ75d、通信切り替えスイッチ75e、電流・電圧計75f等を具備する。下位電源スイッチ75bは、第5下位制御部75よりも下位にある下位制御部に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU75aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU75aは、通電命令信号を下位電源スイッチ75bに出力することで、下位電源スイッチ75bを「入」の状態にして、第5下位制御部75よりも下位にある下位制御部に電源を供給することが可能である。但し、図示の例では、第5下位制御部75よりも下位に下位制御部が配置されていない。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を介して、第5駆動部(図2の25)の駆動を制御する。通信切り替えスイッチ75eは、CPU75aの送信端子Tx1と上位側通信ドライバ75cの送信素子とを接続する状態と、下位側通信ドライバ75dの受信素子と上位側通信ドライバ75cの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える。電流・電圧計75fは、第5下位制御部75に流れる電源電流と、第5下位制御部75に印加される電源電圧とを計測し、結果をCPU75aに送る。
【0038】
主制御部50の下位電源スイッチ52、及び各下位制御部の下位電源スイッチ(71b、72、、73b、74b、75b)は、個々の下位機器に対する電源供給を個別に入り切りする電源入切手段として機能する。
【0039】
各下位制御部(71~75)は、上位側から送られてくる信号を、上位側通信ドライバ(例えば71c)の受信素子と、CPU(例えば71a)の第1受信端子Rx1とを介してCPU71aに受信させることが可能である。また、各下位制御部は、下位側から送られてくる信号を、下位側通信ドライバ(例えば71d)の受信素子と、CPUの第2受信端子Rx2とを介してCPUに受信させることが可能である。また、各下位制御部は、CPUの送信端子Txから発信した信号を、上位側通信ドライバの送信素子を介して上位側に送信することが可能である。
【0040】
通信システム70において、主制御部50と第2下位制御部72との通信が不通になったとする。この場合、第1下位制御部71の故障によって第1下位制御部71と第2下位制御部72との通信が不通になっているのか、ケーブルB(C2)の障害によって第1下位制御部71と第2下位制御部72との通信が不通になっているのかを、特定することが困難である。ケーブルの障害とは、具体的には、4線のうちの少なくとも2線で短絡があったり、少なくとも1線が断線したりすることによる障害である。このような障害が発生すると、上位側の下位制御部から下位側の下位制御部に応答要求信号が送られても、下位側の下位制御部に正常に到達しないことから、下位側の下位制御部から応答信号が発信されず、応答タイムアウトになる。
【0041】
次に、実施形態に係るロボット1の特徴的な構成について説明する。
互いに隣り合う制御部の間(主制御部50と第1下位制御部71との間、又は互いに隣り合う2つの下位制御部の間)における通信が不通になったりしたとする。この場合、通信システム70は、それら2つの制御部のうち、下位側の制御部に対する電源供給を切った状態で、上位側の制御部における通信機能の異常の有無を確認する確認処理を実行する。例えば、第1下位制御部71と第2下位制御部72との間における通信が不通になった場合には、主制御部50は、下位側である第2下位制御部72に対する電源供給を切った状態で、上位側である第1下位制御部71における通信機能の異常の有無を確認する。
【0042】
かかる構成において、上位側の制御部における通信機能の異常があった場合には、通信の不通の原因について、上位側の制御部と下位側の制御部とを接続するケーブルの障害ではなく、上位側の制御部の故障によるものであると特定することが可能である。これに対し、上位側の制御部における通信機能の異常がなかった場合には、通信の不通の原因について、上位側の制御部の故障によるものではなく、上位側の制御部と下位側の制御部とを接続するケーブルの障害によるものであると特定することが可能である。よって、ロボット1によれば、下位制御部からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位制御部の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することができる。
【0043】
次に、実施形態に係るロボット1に、より特徴的な構成を付加した各実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るロボット1の構成は、実施形態と同様である。
【0044】
〔第1実施例〕
デイジーチェーン接続された機器の間で正常な通信を行うためには、各下位制御部のそれぞれに固有の識別符号を付している必要がある。各下位制御部のそれぞれが、固有の識別符号とともに各種の信号を発信することで、主制御部50のCPU51は、発信された信号について、どの下位制御部から発信されたものであるのかを判定することができる。また、主制御部50が任意の下位制御部に発信する信号をその下位制御部の固有の識別符号とともに発信することで、各下位制御部に対してその信号について自己宛に発信されたものであるのか否かを判定させることができる。
【0045】
工場から出荷されるときの各下位制御部には、固有の識別符号が付されていない。このため、初期起動時には、各下位制御部のそれぞれに対して固有の識別符号を付す必要がある。後述の識別符号付与処理は、各下位制御部のそれぞれに対して固有の識別符号を付すための処理である。
【0046】
図4は、第1実施例に係るロボット1の主制御部50によって実行される監視処理の処理フローを示すフローチャートである。主制御部50のCPU51は、この監視処理によって制御部間での通信エラーの有無を監視する。主制御部50のCPU51は、5つの下位制御部(71~75)における何れかからの応答信号がなくなった場合に、通信エラーありと判定して、自己の下位電源スイッチ(図3の52)を切りの状態にした後、後述の初期ルーチン処理を実行する。主制御部50の下位電源スイッチが切られることで、全ての下位制御部(71~75)に対する電源供給が停止して、全ての下位制御部の下位電源スイッチが切りの状態になる。
【0047】
図5は、主制御部50のCPU51によって実行される初期ルーチン処理における処理フローを、下位制御部によって実施される処理フローとともに示すフローチャートである。この初期ルーチン処理は、主制御部50を初期起動した直後のタイミング、あるいは、後述の監視処理で通信エラーが検出されたタイミングで実行される。
【0048】
主制御部50のCPU51は、初期ルーチン処理を開始すると、まず、自己の下位電源スイッチ52をONにして、第1下位制御部71に対して電源を供給する。なお、図5におけるs7~s20の工程は、第1下位制御部71だけの工程を示すものではなく、全ての下位制御部に共通する工程である。
【0049】
次に、主制御部50は、識別符号を所定の規則に従って更新した後、更新後の識別符号を下位側に発信する(s2)。この識別符号は、初回の発行時には、第1下位制御部71のためのものであり、2回目、3回目、4回目、5回目の発行時には、第2、第3、第4、第5下位制御部(72、73、74、75)のためのものである。識別符号を更新するための所定の規則としては、例えば、識別符号の下3桁が数字になっており、その3桁の数字がデフォルトの「000」から順に、1ずつ加算されていく規則が挙げられる。
【0050】
電源が供給された下位制御部(例えば主制御部50の下位電源スイッチがONされた場合には第1下位制御部71)は、通信モードを交互モードに設定する(s8)。交互モードは、信号を送信するための送信モードと、信号を受信するための受信モードとを交互に実行するモードである。送信モードでは、第1内部スイッチSW1~第5内部スイッチSW5のうち、第1内部スイッチSW1、第3内部スイッチSW3、及び第5内部スイッチSW5だけがONされる(入りの状態にされる)。また、受信モードでは、第1内部スイッチSW1~第5内部スイッチSW5のうち、第2内部スイッチSW2、及び第4内部スイッチSW4だけがONされる。なお、送信モードにおいて、CPU(例えば71a)は、下位側から送信されてくる信号を、下位側通信ドライバ(例えば71d)の受信素子と、自己の第2受信端子Rx2とを介して受信すると、その信号を送信端子Txから発信して上位側に送る。
【0051】
下位制御部は、受信モードにおいて識別符号を受信すると(s9にてY)、その識別符号を自己の記憶回路に記憶した後(s10)、送信モードにおいて記憶完了信号を発信する(s11)。この記憶完了信号は、下位制御部に付された識別符号と組み合わせて発信される。以降、下位制御部のCPUから上位側に向けて発信される信号には、全て識別符号が組み合わされる。
【0052】
上述のようにして記憶完了信号を発信した下位制御部は、自己の下位側通信ドライバ(例えば71d)の故障の有無を診断するために、通信モードをテストモードに設定する(s12)。このテストモードでは、CPUの第1内部スイッチSW1~第5内部スイッチSW5のうち、第1内部スイッチSW1を除く5つがONされる。第1内部スイッチSW1、第4内部スイッチSW4、及び第5内部スイッチSw5がONされることで、上位側から送られてくる信号を、次のようにしてCPUに受信させることが可能になる。即ち、上位側通信ドライバ(例えば71c)の受信素子と、下位側通信ドライバの送信素子及び受信素子と、第2受信端子Rx2とを介して、信号をCPUに受信させることが可能になる。
【0053】
一方、主制御部50は、下位制御部から発信された記憶完了信号を受信すると(s3にてY)、テスト信号を、テスト対象となる下位制御部の識別符号と組み合わせて送信する(s4)。通信モードを上述のようにしてテストモードに設定していた下位制御部は、そのテスト信号を自己の識別符号とともに受信すると(S13にてY)、通信モードを交互モードに設定した後(s14)、下位側通信ドライバの異常なしを示す結果OK信号を送信モードにおいて送信する(s15)。これに対し、下位制御部は、テスト信号を受信しなかった場合には(s13にてN)、通信モードを交互モードに設定した後(s16)、下位側通信ドライバの異常ありを示す結果NG信号を送信モードにおいて送信する(s17)。その後、下位制御部は、自己の下位電源スイッチ(例えば71b)をONにして、自己に対して下流側で隣り合っている下位制御部に対して電源を供給する。このようにして電源を供給された下位制御部は、s8~s18、及び後述のs19の処理フローを実行する。
【0054】
主制御部50は、下位制御部から発信された結果信号(結果OK信号又は結果NG信号)を受信すると(s5にてY)、その結果信号を、発信元となった下位制御部の識別符号とともに自己の記憶回路に記憶した後(s6)、処理フローを上述のs2にループさせる。このループにより、新たな識別符号が発信される。
【0055】
処理フローを上述のs2にループさせた主制御部50は、識別符号を発信したにもかかわらず(s2)、所定時間が経過しても記憶完了信号を受信しない場合には(s3にてN)、全ての下位制御部に対する識別符号の付与と、下位側通信ドライバの通信機能のテスト(異常の有無の確認)とを終えたと判断する。そして、主制御部50は、全ての下位制御部のそれぞれに対して終了信号を識別符号と組み合わせて発信した後(s7)、一連の処理フローを終了する。また、その終了信号を受信した下位制御部も(s19にてY)、一連の処理フローを終了する。
【0056】
なお、図5において、s1~s3、及びs8~s11の工程が、下位制御部に対して識別符号を付与するための識別符号付与処理に該当する。また、s4~s6、及びs12~s18の工程が、下位制御部の通信機能の異常の有無を確認する確認処理に該当する。
【0057】
作業者は、通信の不通の原因について、主制御部50の記憶回路に記憶されている結果情報がOKである場合には、ケーブル(例えばケーブルB)であると特定し、NGである場合には、下位制御部(例えば71)の下位側通信ドライバであると特定することが可能である。
【0058】
なお、識別符号付与処理が正常に完了したことは、識別符号の付与対象となった下位制御部のCPUの第1内部スイッチ、第2内部スイッチ、及び上位側通信ドライバ(例えば71c)が正常に動作したことを意味する。
【0059】
監視処理において、例えば第4下位制御部74からの応答がなくなったとする。この場合、第4下位制御部74に対する電源供給を切った上で、第3下位制御部73の下位側通信ドライバ74dの通信機能について、正常であるか否かを判定すれば、次のことが可能になる。即ち、応答不能の原因について、下位側通信ドライバ74d、ケーブルC(C3)の何れであるのかを特定することが可能である。しかしながら、この場合、第3下位制御部73の通信機能について正常であるか否かを判定するための専用の制御を実行する必要がある。これに対し、第1実施例に係るロボット1においては、複数の下位制御部のうち、どの下位制御部の応答が不能になったかにかかわらず、応答不能を検出した場合には、初期ルーチン処理を実行する。そして、初期ルーチン処理において、各下位制御部における下位側通信ドライバの通信機能の異常の有無を確認する。
【0060】
かかる構成では、応答がなくなった下位制御部よりも1つ上位の下位制御部における下位側通信ドライバの通信機能の異常の有無を確認するための専用の制御プログラムを用いることなく、その異常の有無を確認することが可能である。よって、ロボット1によれば、応答がなくなった下位制御部よりも1つ上位の下位制御部における下位側通信ドライバの通信機能の異常の有無を確認するための専用の制御プログラムを不要にして、制御プログラムの情報容量を低減することができる。
【0061】
〔第2実施例〕
第2実施例に係るロボット1の主制御部50のCPU51は、図4に示される監視処理と、図5に示される初期ルーチン処理とを実行する。
【0062】
図6は、第2実施例に係るロボット1の主制御部50のCPU51によって実行される初期ルーチン処理の処理フローを、下位制御部によって実行される処理フローとともに示すフローチャートである。以下、図6に示される処理フローについて、図5に示される処理フローとは異なる点についてだけ、説明を行う。
【0063】
主制御部50は、s2の工程において、予め定められた所定の識別符号を発信する。その識別符号は、第1下位制御部71に対して付与されるものである。また、主制御部50は、下位制御部から送られてくる結果情報の信号(結果OK信号又は結果NG信号)を記憶すると(s7)、処理フローをs2ではなく、s3にループさせる。このため、主制御部50は、初期ルーチン処理において、第1下位制御部71に付与するための初手の識別符号を1回だけ発信する。また、主制御部50は、後述の送信済みフラグをセットしていないときだけ(s4にてN)、テスト信号を発信した後(s5)、送信済みフラグをセットするs6)。そのテスト信号は、第1下位制御部71の下位側通信ドライバ71dの通信機能をテストするためのテスト信号であり、第1下位制御部71の識別符号と組み合わせて発信される。つまり、主制御部50は、初期ルーチン処理において、テスト信号を1回だけ発信する。
【0064】
s14において設定されるテストモードでは、CPUの第1内部スイッチSW1~第5内部スイッチSW5の5つがONされる。通信モードを前述のようなテストモードに設定した下位制御部のCPUは、テスト信号を発信する。このテストは、送信端子TXと、上位側通信ドライバ(例えば71c)と、下位側通信ドライバ(例えば71d)と、第2受信端子Rx2とを介してCPUに受信されるが、下位側通信ドライバに異状がある場合にはCPUに受信されない。下位側制御部のCPUは、受信結果に応じた結果信号(結果OK信号又は結果NG信号)を発信する(s17、s19)。
【0065】
また、下位制御部は、自己の下位電源スイッチをONにして下位側の下位制御部に電源を供給すると(s20)、識別符号を発行して発信する(s21)。この識別符号は、識別符号を発行する下位制御部の識別符号に基づいて発行される。
号の信号とともに、送信端子Txから出力する(s7)。出力された信号は、上位側通信ドライバ(例えば71c)を介して、主制御部50に受信される。
【0066】
以上のように、第2実施例に係るロボットにおいては、互いに隣り合う2つの下位制御部のうち、上位側の下位制御部が、下位側の下位制御部の識別符号を発行し、且つテスト信号を下位側の下位制御部に発信する。
【0067】
かかる構成においては、下位側通信ドライバ(例えば71d)の故障の有無を、その下位側通信ドライバを備える下位制御部によって実行される確認処理によって判定することができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態及び各実施例について説明したが、本発明は、実施形態及び各実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。実施形態及び各実施例は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
本発明は、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
〔第1態様〕
第1態様は、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器(例えば主制御部50)と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器(例えば第1下位制御部71~第5下位制御部75)とを備える通信システム(例えば通信システム70)であって、個々の下位機器に対する電源供給を個別に入り切りする電源入切手段(例えば下位電源スイッチ52、71b、72b、73b、74b、75b)を備え、並び順で互いに隣り合って通信を行う2つの機器の間における通信が不通になった場合に、それら2つの機器のうち、下位側の機器に対する電源供給を切った状態で、上位側の機器における通信機能の異常の有無を確認する確認処理を実行する、ことを特徴とするものである。
【0070】
第1態様において、上位側の機器における通信機能の異常があった場合には、通信の不通の原因について、上位側の機器と下位側の機器とを接続するケーブルの障害ではなく、上位側の機器の故障によるものであると特定することが可能である。これに対し、上位側の機器における通信機能の異常がなかった場合には、通信の不通の原因について、上位側の機器の故障によるものではなく、上位側の機器と下位側の機器とを接続するケーブルの障害によるものであると特定することが可能である。よって、第1態様によれば、下位機器からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位機器の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することができる。
【0071】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の通信システムであって、個々の下位機器(例えば第1下位制御部71~第5下位制御部75)が、制御機(例えばCPU71a~75a)と、上位側通信ドライバ(例えば71c~75c)と、下位側通信ドライバと(例えば71d~75d)を備え、前記上位側通信ドライバが、前記制御機から発信された信号を、最上位機器又は上位側の下位機器に向けて送信し、且つ最上位機器又は上位側の下位機器から発信された信号を、前記制御機及び前記下位側通信ドライバに向けて送信し、前記下位側通信ドライバが、上位側通信ドライバから発信された信号を、下位側の下位機器に向けて送信し、且つ下位側の下位機器から発信された信号を、前記上位側通信ドライバに向けて送信し、前記制御機が、前記上位側通信ドライバの受信素子と、前記下位側通信ドライバの送信素子とを接続する受信ラインに繋がる第1受信端子(例えば第1受信端子Rx1)、及び前記上位側通信ドライバの送信素子と、前記下位側通信ドライバの受信素子とを接続する送信ラインに繋がる第2受信端子(例えば第2受信端子Rx2)とを備える、ことを特徴とするものである。
【0072】
第2態様によれば、各下位機器において、下位側通信ドライバの送信素子と受信素子とを順に経由したテスト信号を、第2受信端子を介して制御機に受信させることができる。
【0073】
〔第3態様〕
第3態様は、第2態様の通信システムであって、並び順で互いに隣り合う2つの下位機器の間における通信が不通になったことに基づいて開始された前記確認処理が、最上位機器からテスト信号を発信する工程(例えば図5のs4)と、前記2つの下位機器のうち、上位側の下位機器において、前記上位側通信ドライバで受信した前記テスト信号について前記下位側通信ドライバと前記第2受信端子とを介した前記制御機による受信の有無を確認する工程(例えば図5のs13)とを具備する、ことを特徴とするものである。
【0074】
第3態様によれば、最上位機器から発信したテスト信号について、確認対象となる下位機器において上位側通信ドライバと下位側通信ドライバと第2受信端子とを介した制御機による受信の有無を確認することで、その下位機器の通信機能について、異常の有無を確認することができる。
【0075】
〔第4態様〕
第4態様は、第1態様の通信システムであって、並び順で互いに隣り合う2つの下位機器の間における通信が不通になったことに基づいて開始された前記確認処理が、前記2つの下位機器おける上位側の下位機器に対して上位側で隣り合う下位機器からテスト信号を発信する工程と、前記2つの下位機器のうち、上位側の下位機器において、前記上位側通信ドライバで受信した前記テスト信号について前記下位側通信ドライバと前記第2受信端子とを介した前記制御機による受信の有無を確認する工程とを具備する、ことを特徴とするものである。
【0076】
第4態様によれば、通信機能の確認対象となる下位機器の下位側通信ドライバの有無について、その下位機器に対して上流側で隣う下位機器から発信されるテスト信号に基づいて異常の有無を確認することができる。
【0077】
〔第5態様〕
第5態様は、第3態様又は第4態様の通信システムであって、前記電源入切手段(例えば下位電源スイッチ52、下位電源スイッチ71b~75b)が、個々の下位機器に配置されたスイッチであり、前記スイッチが、上位側から送られてくる電源の下位側への伝導を入り切りする、ことを特徴とするものである。
【0078】
第5態様によれば、個々のスイッチの入切によって個々の下位機器に対する電源供給を入切することができる。
【0079】
〔第6態様〕
第6態様は、第5態様の通信システムであって、個々の下位機器の前記制御機が、前記制御機の送信端子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する状態と、前記下位側通信ドライバの受信素子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する状態とで、接続状態を切り替える通信切り替えスイッチを備え、前記制御機が、信号を発信する場合に、前記通信切り替えスイッチにより、前記制御機の送信端子と前記上位側通信ドライバの送信素子とを接続する処理を実行する、ことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0080】
第6態様では、上位側の下位機器において、下位側から送られてくる信号を第2受信端子から制御機に受信させた後、その信号を制御機の送信端子から送信して上位側に送ることができる。
【0081】
〔第7態様〕
第7態様は、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行う通信システムを備えるロボットであって、前記通信システムが、第1態様~第6態様の何れかの通信システムである、ことを特徴とするものである。
【0082】
第7態様によれば、下位機器からの応答がなくなった場合に、その原因について、ケーブルの障害なのか、下位機器の故障なのかを特定するのに有用な情報を収集することが可能な通信システムを用いて通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
50・・・主制御部(最上位機器)、 71・・・第1下位制御部(下位機器)、 72・・・第2下位制御部(下位機器)、 73・・・第3下位制御部(下位機器)、 74・・・第4下位制御部、 75・・・第5下位制御部(下位機器)、 C1~C5・・・ケーブル

図1
図2
図3
図4
図5
図6