(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002310
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】浴室監視装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/08 20060101AFI20221227BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221227BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221227BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G01S13/08
G08B25/04 K
G08B21/02
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103480
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 孝司
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5J070
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA06
5C086CA30
5C086DA40
5C086FA06
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA37
5C087DD03
5C087DD49
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5J070AB17
5J070AC04
5J070AD01
5J070AE09
5J070AF01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来よりも簡便に浴室内の人を監視することが可能な浴室監視装置を提供する。
【解決手段】浴室監視装置では、センサモジュール10が検出波を送波する一方の対向壁81からその前方の他方の対向壁82との間の監視空間Sにおける前方物体の有無や動きによって、他方の対向壁82からの反射波の受信強度が変化することに着目し、従来のように監視空間Sの全ての位置からの反射波を利用せずに、他方の対向壁82又はそれに相当する物体(例えば、蓋70)が位置する基準距離からの反射波に基づいて監視空間S全体を監視している。これにより、従来よりもセンサモジュール10の出力に対する演算処理が簡素になる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室(80)の1対の対向壁(81,82)の一方の前記対向壁(81)から他方の前記対向壁(82)を含む前方物体に向けて検出波を送波し、前記一方の対向壁(81)からの距離(A)毎の反射波の受信強度(R)を検出して出力するセンサモジュール(10)と、
予め定められた基準距離(As)における前記受信強度(R)の変動幅(ΔR1)が、予め定められた異常判定用変動幅(H3)内であるか否かに基づいて前記浴室(80)内の人(90)の異常の有無を判定する異常判定部(37)と、を備える浴室監視装置(100)。
【請求項2】
前記センサモジュール(10)が出力する前記受信強度(R)の変化に基づいて前記浴室(80)が有人状態であるか無人状態であるかを判定する有人判定手段(36)を備え、
前記有人状態と判定された場合に、前記異常判定部(37)により前記浴室(80)内の人(90)の異常の有無を判定する請求項1に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項3】
前記有人判定手段(36)は、前記基準距離(As)における前記受信強度(R)の現状からの変動幅が、予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項4】
前記有人判定手段(36)は、前記一方の対向壁(81)からの他方の対向壁(82)までの各前記距離(A)における反射波の全体の前記受信強度(R)が、現状から予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項5】
前記無人状態での前記基準距離(As)における前記受信強度(R)を基準強度(Rs)として予め定めておき、
前記有人判定手段(36)は、前記基準距離(As)における前記受信強度(R)が、前記基準強度(Rs)に対して予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項6】
前記無人状態と判定された場合に、前記センサモジュール(10)が出力する前記受信強度(R)が最も高くなる前記距離(A)を、前記基準距離(As)として更新する基準更新部(35)を備える請求項2から5の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項7】
前記センサモジュール(10)の作動と休止とを切り替えると共に、前記無人状態と判定された場合に、前記有人状態と判定された場合に比べて前記センサモジュール(10)の作動頻度を落とす作動頻度変更部(33)を備える請求項2から6の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項8】
前記浴室(80)内の人(90)にメッセージを出力するためのメッセージ出力部(40)と、
前記浴室(80)内の人(90)が応答情報を入力するための応答入力部と、を備え、
前記異常判定部(37)により異常有りと判定された条件の下、前記応答入力部に異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージを前記メッセージ出力部(40)から出力し、それに対して前記応答入力部への前記応答情報の入力が無いときに、外部に異常検出情報を出力する請求項1から7の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)。
【請求項9】
前記センサモジュール(10)は、周波数変調された連続波を送受信するFMCWセンサモジュールである請求項1から8の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人の異常の有無を監視するための浴室監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浴室監視装置として、浴室内の所定の壁に固定されて前方物体に向けて検出波を送波し、所定の壁からの距離毎の反射波の受信強度を検出して出力するセンサモジュールを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-017835号公報(段落[0013]、[0039)及び
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の浴室監視装置では、人の動作を監視するために、センサモジュールから前方の壁又は浴槽までの間の全ての位置からの反射波の受信強度の変化に基づいて前方物体までの距離を演算しているため演算処理量が膨大になるという問題があった。これに鑑み、本開示では、従来より簡素な演算処理にて浴室内の人を監視することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、浴室(80)の1対の対向壁(81,82)の一方の前記対向壁(81)から他方の前記対向壁(82)を含む前方物体に向けて検出波を送波し、前記一方の対向壁(81)からの距離(A)毎の反射波の受信強度(R)を検出して出力するセンサモジュール(10)と、予め定められた基準距離(As)における前記受信強度(R)の変動幅(ΔR1)が、予め定められた異常判定用変動幅(H3)内であるか否かに基づいて前記浴室(80)内の人(90)の異常の有無を判定する異常判定部(37)と、を備える浴室監視装置(100)。
【0006】
請求項2の発明は、前記センサモジュール(10)が出力する前記受信強度(R)の変化に基づいて前記浴室(80)が有人状態であるか無人状態であるかを判定する有人判定手段(36)を備え、前記有人状態と判定された場合に、前記異常判定部(37)により前記浴室(80)内の人(90)の異常の有無を判定する請求項1に記載の浴室監視装置(100)である。
【0007】
請求項3の発明は、前記有人判定手段(36)は、前記基準距離(As)における前記受信強度(R)の現状からの変動幅が、予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)である。
【0008】
請求項4の発明は、前記有人判定手段(36)は、前記一方の対向壁(81)からの他方の対向壁(82)までの各前記距離(A)における反射波の全体の前記受信強度(R)が、現状から予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)である。
【0009】
請求項5の発明は、前記無人状態での前記基準距離(As)における前記受信強度(R)を基準強度(Rs)として予め定めておき、前記有人判定手段(36)は、前記基準距離(As)における前記受信強度(R)が、前記基準強度(Rs)に対して予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて前記有人状態であるか前記無人状態であるかを判定する請求項2に記載の浴室監視装置(100)である。
【0010】
請求項6の発明は、前記無人状態と判定された場合に、前記センサモジュール(10)が出力する前記受信強度(R)が最も高くなる前記距離(A)を、前記基準距離(As)として更新する基準更新部(35)を備える請求項2から5の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)である。
【0011】
請求項7の発明は、前記センサモジュール(10)の作動と休止とを切り替えると共に、前記無人状態と判定された場合に、前記有人状態と判定された場合に比べて前記センサモジュール(10)の作動頻度を落とす作動頻度変更部(33)を備える請求項2から6の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)である。
【0012】
請求項8の発明は、前記浴室(80)内の人(90)にメッセージを出力するためのメッセージ出力部(40)と、前記浴室(80)内の人(90)が応答情報を入力するための応答入力部と、を備え、前記異常判定部(37)により異常有りと判定された条件の下、前記応答入力部に異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージを前記メッセージ出力部(40)から出力し、それに対して前記応答入力部への前記応答情報の入力が無いときに、外部に異常検出情報を出力する請求項1から7の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)である。
【0013】
請求項9の発明は、前記センサモジュール(10)は、周波数変調された連続波を送受信するFMCWセンサモジュールである請求項1から8の何れか1の請求項に記載の浴室監視装置(100)である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の浴室監視装置(100)では、センサモジュール(10)が検出波を送波する一方の対向壁(81)からその前方の他方の対向壁(82)との間の空間(以下、「監視空間」という)における前方物体の有無や動きによって、一方の対向壁(81)からの距離(A)毎の反射波の受信強度(R)が変化することに着目し、従来のように監視空間(S)の全ての位置からの反射波を利用せずに、予め定められた基準距離(As)からの反射波に基づいて監視空間(S)全体を監視することにより浴室(80)内の人(90)の異常の有無を判定する。これにより、従来よりセンサモジュール(10)の出力に対する演算処理が簡素になり、異常の有無の判定の処理速度が速くなる。しかも、本開示では予め定められた基準距離(As)における受信強度(R)を監視するので、検出した受信強度(R)が示す一方の対向壁(81)からの距離(A)すべての受信強度(R)を演算する必要がなく、より一層異常の有無の判定の処理速度を速くすることが可能になる。なお、センサモジュール(10)として、例えば、周波数が連続して増加又は減少するチャープ信号である検出波を送波するFMCWセンサモジュールが挙げられる(請求項9の発明)。
【0015】
浴室(80)内の人(90)の異常の有無の判定は、浴室(80)が有人状態のときに実行することで効率よく判定を行うことができるが、有人状態であるか無人状態であるかは、例えば、センサモジュール(10)が出力する受信強度(R)の変化に基づいて判定することができる(請求項2の発明)。
【0016】
具体的には、請求項3の浴室監視装置(100)のように、基準距離(As)における受信強度(R)の現状からの変動幅が、予め定められた有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて判定してもよいし、請求項4の浴室監視装置(100)のように、監視空間(S)全体の反射波の受信強度(R)が、現状から有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて判定してもよい。また、請求項5の浴室監視装置(100)のように、無人状態での基準距離(As)における受信強度(R)を基準強度(Rs)として予め定めておき、基準距離(As)における受信強度(R)が、基準強度(Rs)に対して有人判定用変動幅(H2)を超えて変化したか否かに基づいて判定してもよい。
【0017】
また、基準距離(As)は、他方の対向壁(82)又はそれに相当する物体が位置する距離とすれば、監視空間S内における前方物体の有無や動きによる受信強度(R)の変化を検出しやすくなるので、請求項6の浴室監視装置(100)のように、浴室(80)が無人状態のときの受信強度(R)が最も高くなる距離(A)を、基準距離(As)として更新することにより、他方の対向壁(82)又はそれに相当する物体が位置する距離を基準距離(As)として設定することができる。
【0018】
ここで、例えば、他方の対向壁(82)に蓋(70)が立てかけられた場合、基準距離(As)である他方の対向壁(82)における受信強度(R)は、蓋(70)により弱められる。このため、蓋(70)の前にいる人(90)が動いても、その動きによる受信強度(R)の変化を検出しにくくなることがある。また、センサモジュール(10)が劣化して基準距離(As)における受信強度(R)が変動した場合にも、人(90)による受信強度(R)の変化を検出しにくくなることがある。
【0019】
これらに対しても、前述の請求項6の浴室監視装置(100)によれば、無人状態と判定されたときに、受信強度(R)が最も高くなる一方の対向壁(81)からの距離(A)を、基準距離(As)として更新するので、前述した蓋(70)や劣化等の問題を解決することができる。例えば、他方の対向壁(82)に蓋(70)が立てかけられた場合には、蓋(70)までの距離(A)を基準距離(As)として更新することができるので、それ以後、蓋(70)によって遮られた他方の対向壁(82)の受信強度(R)ではなく、蓋(70)における受信強度(R)を監視することができる。
【0020】
また、請求項7の浴室監視装置(100)のように、センサモジュール(10)の作動と休止とを切り替えると共に、浴室(80)が無人状態と判定された場合に、有人状態と判定された場合に比べてセンサモジュール(10)の作動頻度を落とす構成を備えることで、消費電力を抑えることができる。
【0021】
さらに、請求項8の浴室監視装置(100)のように、浴室(80)内の人(90)にメッセージを出力するためのメッセージ出力部(60)と、浴室(80)内の人が応答情報を入力するための応答入力部と、を備え、有人状態において、基準距離(As)における受信強度(R)の変動幅(ΔR1)が異常判定用変動幅(H3)内であって浴室(80)内の人(90)に異常ありと判定されたときに、応答入力部に異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージをメッセージ出力部(40)から出力し、それに対して応答入力部への応答情報の入力が無いときに、外部に異常検出情報を出力する構成とすれば、例えば、異常ありと判定された人(90)が、実際には、異常なく入浴していた場合や、軽い意識障害を起こしてはいるが自分の意思で動ける場合であればそのメッセージに気づいて応答することができるため、頻繁に外部に異常を報知する事態を招くことなく、人(90)に実際に異常事態が発生したときに適切な対処をすることができる。また、浴室(80)内の人(90)が入浴中に眠ってしまった場合にも、前記メッセージにより、その人(90)が起きるきっかけが出来る事になる為、未然に意識障害等の異常状態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浴室監視装置が備えられた浴室を上方から見た概略図
【
図3】浴室監視装置の電気的な構成を示すブロック図
【
図4】浴室監視装置の機能的な構成を示すブロック図
【
図5】(A)無人状態、(B)有人状態、の距離スペクトル強度データ
【
図6】(A)無人状態、(B)有人状態、の距離毎の受信強度を模式的に示す図
【
図7】(A)蓋が立てかけられたとき、(B)センサモジュールが劣化したとき、の距離毎の受信強度を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の浴室監視装置100に係る第1実施形態について、
図1~
図10を参照して説明する。本実施形態の浴室監視装置100は、例えば、
図1に示すように浴室内ユニット101と浴室外ユニット102とに分かれている。
【0024】
浴室内ユニット101は、防水ケース11にセンサモジュール10とメッセージ出力部40とを収容して備える。そして、浴室内ユニット101は、例えば、
図2に示すように、浴室80内の浴槽83を挟んで対向する1対の対向壁81,82の一方の対向壁81に取り付けられて、浴槽83に漬かった人90の頭部と対向する位置に配置される。
【0025】
本実施形態の浴室監視装置100が有するセンサモジュール10は、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)センサモジュールである。
【0026】
具体的には、FMCWセンサモジュールである本実施形態のセンサモジュール10は、周波数が連続して増加又は減少するチャープ信号である検出波を無線送波し、その反射波と送信中の検出波(以下、「反射波」との対比のために適宜「送信波」ともいう)との差に起因するビート信号に基づき、センサモジュール10からの距離A毎の反射波の受信強度Rを演算して出力するようになっている。つまり、センサモジュール10は、一方の対向壁81から検出波を送波し、レーダーの如く、1対の対向壁81,82の間の空間(以下、「監視空間S」という)の全体を監視可能にする情報を出力する。
【0027】
なお、本実施形態の浴室監視装置100は、浴室内ユニット101と浴室外ユニット102とに分かれているが、分かれていなくてもよい。また、センサモジュール10のうち検出波及び反射波を送受波するアンテナ部20(
図3参照)のみが浴室80に配置され、アンテナ部20以外はセンサモジュール10の全体が浴室80から離れた位置に配置されていてもよい。さらに、センサモジュール10は、「浴室の1対の対向壁の一方の対向壁から他方の対向壁を含む前方物体に向けて検出波を送波し、一方の対向壁からの距離毎の反射波の受信強度を検出して出力する」ものであれば、FMCWの技術を使用していないセンサモジュールであってもよい。
【0028】
図3に示すように、浴室外ユニット102は、信号処理部30とメッセージ出力部50とを備えて浴室80外に配置されている。メッセージ出力部50は、例えば、スピーカー、ディスプレイ、警報器を備える。また、前述の浴室内ユニット101のメッセージ出力部40も同様の構成になっている。そして、信号処理部30が、浴室80内の人90の有無や人90の異常の有無を判定し、それらの判定結果に基づいて必要に応じてメッセージ出力部40,50にメッセージ等を出力する。また、メッセージ出力部50には、インターネット回線や電話回線等に対する通信接続器が備えられ、予め登録されている遠方の家族の携帯電話や、所定の監視センターに配置されるサーバ等に異常の発生を知らせることもできるようになっている。なお、浴室内ユニット101と浴室外ユニット102とメッセージ出力部40,50の間の接続は、有線又は無線の何れでもよい。
【0029】
信号処理部30は、CPU31Aと、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ31Bとを含んでなるマイコン31を主要部として備える。そして、センサモジュール10の出力に基づいて一方の対向壁81からの距離A毎の受信強度Rを時系列的に示す距離スペクトル強度データ(
図5参照)を生成して、その距離スペクトル強度データに基づいて異常の有無等に係る判定を行う。そのために、メモリ31Bには、後述する第1と第2の制御プログラムPG1,PG2(
図8~
図10参照)等が記憶されている。そして、CPU31Aは、第1と第2の制御プログラムPG1,PG2を実行することで
図4の作動頻度変更部33と、基準記憶部34と、基準更新部35と、有人判定手段36と、異常判定部37と、異常処理部38として機能する。
【0030】
作動頻度変更部33は、センサモジュール10を動作させて検出波を送受信させるか、センサモジュール10を休止させるかを制御すると共に、センサモジュール10の距離分解能D、検知領域、送信周期P等を制御する。本実施形態では、距離分解能Dを2[cm]とし、センサモジュール10は2[cm]間隔で一方の対向壁81からの距離A毎の反射波を受信する。また、検知領域は「1対の対向壁81,82間の距離+D」となっている。送信周期Pは、人90が浴槽83内にいない「無人状態」と、人90が浴槽83内にいる「有人状態」とによって変化させる。本実施形態では、「無人状態」では、送信周期P1(例えば、10[秒])とし、「有人状態」では、送信周期P2(例えば、1[秒])としてセンサモジュール10を動作させる。なお、本実施形態では、1対の対向壁81,82間の距離は、1.6[m]である。
【0031】
ここで、浴室監視装置100を浴室80で初めて動作させる場合やリセット操作された場合には、浴室80の大きさが不明であるため、作動頻度変更部33は、検知領域を、例えば、実際の大きさよりも大きく設定(例えば、4[m])して、センサモジュール10を動作させる。
【0032】
基準記憶部34は、基準距離As及び基準強度Rsを記憶する。具体的には、基準更新部35が、浴室80が無人状態にされたときの距離スペクトル強度データから受信強度Rが最も高くなる距離Aとその時の受信強度Rを抽出し、基準距離As及び基準強度Rsとして設定し、基準記憶部34に記憶させる(
図5(A)参照)。ここで、浴室80が無人状態で受信強度Rが最も高く検出される物体とは、後述する他方の対向壁82に蓋70が立てかけられた場合等(
図2参照)を除けば、他方の対向壁82であるので、基準距離As及び基準強度Rsとは、他方の対向壁82までの距離A及びその位置における反射波の受信強度Rを示している。
【0033】
具体的には、基準更新部35が実行されるのは、後述する有人判定手段により無人状態と判定されたときであって、作動頻度変更部33は、無人状態の仕様、つまり送信周期P1(例えば、10[秒])でセンサモジュール10を動作させている。そして、無人状態において、センサモジュール10が出力した情報から一定期間N1(例えば、3[分])分の距離スペクトル強度データが収集されたときに、各距離スペクトル強度データにおいて、距離Aの受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が基準判定用変動幅H1を超えない場合に、受信強度Rが最も高くなる距離Aとその時の受信強度Rを基準距離As及び基準強度Rsとして設定する。基準距離As及び基準強度Rsが設定されると、センサモジュール10の検知領域は「基準距離As+α(αは、分解能Dより大きい)」に設定される。基準更新部35は、無人状態と判定される度に実行され、基準距離As及び基準強度Rsを更新して基準記憶部34に記憶させる。
【0034】
なお、基準更新部35は、無人状態と判定されたときに実行されるが、監視装置100を浴室80で初めて動作させる場合やリセット操作された場合にも実行される。但し、この場合には、基準更新部35は、まず、検知領域を、前述したように、実際の大きさよりも大きく設定し、作動頻度を無人状態の仕様でセンサモジュール10を動作させる。そして、センサモジュール10の出力情報から距離スペクトル強度データを生成し、例えば、検知領域内の反射波の全体の受信強度Rが、予め定められた変動幅を超えて変化しなかったときに無人状態であるとして基準距離As及び基準強度Rsを設定する処理に移行する。一方、検知領域内の反射波の全体の受信強度Rが、変動幅を超えて変化した場合には、変動幅内となるまで、基準距離As及び基準強度Rsを設定する処理に移行しない。
【0035】
有人判定手段36は、基準記憶部34で記憶された基準距離Asにおける受信強度Rが、基準強度Rsから予め定められた有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かに基づいて浴室80が有人状態であるか無人状態であるかを判定する。
【0036】
ここで、浴室80内における一方の対向壁81からの距離A毎の受信強度Rを
図6に模式的に示す。距離1~10は、一方の対向壁81からの距離Aを簡略化して示したものであり、距離10は他方の対向壁82を示している。また、各距離Aにおいて、1対の対向壁81,82間の対向方向と交差する方向で5つの分割領域に分割し、各分割領域においての反射波の受信強度Rが示されている。
図6(A)には、無人状態における浴室80の受信強度Rが示されていて、他方の対向壁82(距離10)による反射波の受信強度10だけが検出される。前述したように、基準記憶部34は、この距離A(距離10)を基準距離Asとし、その受信強度10を基準強度Rsとして記憶する(つまり、基準距離As=10、基準強度Rs=10)。
【0037】
そして、浴室80が有人状態となった場合には、
図6(B)に示すように、人90がいる距離5,6に反射波の受信強度Rが検出され、これにより、基準距離As(距離10)のうち、人90に対してセンサモジュール10と反対側にある領域の受信強度Rが弱められ、基準距離As(距離10)における受信強度Rの平均値は7.6に低下する。本実施形態では、これを利用し、基準距離Asにおける基準強度Rsと、一定期間N1(例えば、3[分])分の受信強度Rの平均値との差から算出した変動幅ΔR2(
図6(B)では2.4)が有人判定用変動幅H2(
図6(B)においてH2を例えば、2.0とする)を超えたときに、有人状態と判定する。つまり、本実施形態では、人90の有無を人90の受信強度Rの変化に基づいて判定するのではなく、他方の対向壁82の受信強度Rの変化に基づいて判定する。
【0038】
具体的には、有人判定手段36は、無人状態のときに動作する。従って、作動頻度変更部33はセンサモジュール10に送信周期P1で送信波を送信させている。そして、有人判定手段36は、一定期間N1分の受信強度Rの平均値の基準強度Rsからの変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化しなかった場合に、1対の対向壁81,82間に人90がいない無人状態と判定する。無人状態と判定される限り、有人判定手段36の処理が繰り返し実行される。一方、一定期間N1分の受信強度Rの平均値の基準強度Rsからの変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化した場合には、有人状態と判定される(
図5(B)参照)。
【0039】
ここで、他方の対向壁82に蓋70が立てかけられた場合の浴室80内(
図2参照)における一方の対向壁81からの距離A毎の受信強度Rを
図7(A)に示す。蓋70がある距離8に最も高い受信強度Rが検出され、基準距離As(距離10)における受信強度Rの平均値は6に低下している。このとき、蓋70の前にいる人90が動いた場合に、その動きによる受信強度Rの変化が検出しにくくなるという問題がある。
【0040】
また、センサモジュール10が劣化した場合の浴室80内における一方の対向壁81からの距離A毎の受信強度Rの例を
図7(B)に示す。基準距離As(距離10)における受信強度Rが基準強度Rsから変動し、平均値は7.6に低下している。この場合も、監視空間S内にいる人90の動きによる受信強度Rの変化が検出しにくくなるという問題が生じる。
【0041】
これらに対して、本実施形態では、前述したように、無人状態となったときに基準更新部35が実行されるので、基準距離As及び基準強度Rsを更新して前述した問題に対処することができる。即ち、蓋70が立てかけられた場合には、他方の対向壁82に立てかけられた蓋70までの距離Aが基準距離Asとして更新され、その受信強度Rが基準強度Rsとして更新される(
図7(A)参照)。また、センサモジュール10が劣化した場合には、基準強度Rsが更新される(
図7(B)参照)。
【0042】
異常判定部37は、有人判定手段36により有人状態と判定された場合に、基準距離Asにおける受信強度Rの変動幅ΔR1が、予め定められた異常判定用変動幅H3を超えて変化したか否かに基づいて浴室80内の人90の異常の有無を判定する。
【0043】
具体的には、異常判定部37は、有人状態のときに動作するので、作動頻度変更部33はセンサモジュール10に送信周期P2で送信波を送信させている。そして、異常判定部37は、センサモジュール10の出力情報から一定期間N1分の距離スペクトル強度データを生成し、各距離スペクトル強度データから基準距離Asにおける受信強度Rを抽出し、それらの受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が、異常判定用変動幅H3を超えた場合に、浴槽83内の人90は異常なく動作していると判定する。つまり、浴槽83内の人90が異常なく入浴している場合には、人90が反射する受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)は異常判定用変動幅H3を超えて変動すると定め、他方の対向壁82の受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が異常判定用変動幅H3を超えて変化したときに、人90が異常なく動いていると判定する。なお、本実施形態では、有人状態である限り、一定期間N1経過後は、送信周期P2毎に異常判定部37が浴槽83内の人90が異常なく動作しているかを判定する。つまり、一定期間N1経過後、送信周期P2毎に、最新の一定期間N1分の距離スペクトル強度データから生成した受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が異常判定用変動幅H3を超えて変化するか否かが判定される。
【0044】
一方、異常判定部37は、一定期間N1分の各距離スペクトル強度データの基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が、異常判定用変動幅H3を超えない場合には、人90の動きが停止したとして異常ありと判定する。
【0045】
なお、異常判定部37は、基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1が異常判定用変動幅H3を超えない場合には、さらに、基準距離Asにおける基準強度Rsと、一定期間N1分の受信強度Rの平均値との差から算出した変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2内か否かも判定し、有人判定用変動幅H2内であった場合には、人90は浴槽83からいなくなったとして無人状態と判定する。
【0046】
異常処理部38は、異常判定部37において異常有りと判定されたときに実行され、浴槽83内にいる人90に向かって実際に異常事態が発生しているか否かを確認する。具体的には、メッセージ出力部40から異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージ、例えば、「人の停止が3分間検知されました。意識はありますか。異常なければ、センサに向かって手をかざしてください」等のメッセージを音声で出力する。このとき、作動頻度変更部33は、有人状態であるので、センサモジュール10に送信周期P2で送信波を送信させているが、浴槽83にいる人90が音声に応答して手をかざした場合には、基準距離Asにおける受信強度Rが大きく変動すると考えられる。従って、異常処理部38は、メッセージ出力部40からメッセージを出力後、センサモジュール10の出力情報から一定期間N1(例えば、3[分])分の距離スペクトル強度データを生成し、各距離スペクトル強度データから基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が異常判定用変動幅H3を超えて変化した場合には、人90がメッセージに応答して手をかざしたとみなし、浴槽83内の人90に異常事態は発生していないと判定し、異常判定部37の処理に戻る。
【0047】
これに対して、異常処理部38は、メッセージ出力部40から浴槽83内の人90に向けてメッセージを出力後、一定期間N1(例えば、3[分])分の各距離スペクトル強度データの基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が異常判定用変動幅H3を超えない場合には、人90が手をかざすこともできない異常事態が発生したと判定し、メッセージ出力部50に異常の発生を知らせるメッセージを出力する。そして、人90が手をかざすこともできない異常事態が発生したと判定された後は、一定期間N2(例えば、30[秒])毎に、最新の一定期間N1(例えば、3[分])分の各距離スペクトル強度データの基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)を取得して、人90がメッセージに応答して手をかざしたか否かの監視を続ける。本実施形態では、センサモジュール10が特許請求の範囲の「応答入力部」を構成し、人90が手をかざすという動作が特許請求の範囲の「応答情報の入力」に相当する。
【0048】
以下、信号処理部30のCPU31Aが実行する第1と第2の制御プログラムPG1,PG2(
図8~
図10参照)について説明する。CPU31Aは、図示しない発振回路から出力される周期信号の1つとしての例えば0.1[秒]周期の割込信号を受ける度に、第1と第2の制御プログラムPG1,PG2を実行する。「T1~T3」は、時間をカウントするためのカウンタであり、「FLG1,FLG2」はフラグであって、これらは初期状態で「0」になっている。また、「L1,L2」は、上記した一定期間N1,N2の長さを決定するための設定値であり、本実施形態では、一定期間N1を3[分]にするためL1は1800(=3分×60秒/0.1秒)に、一定期間N2を30[秒]にするためL2は300(=30秒/0.1秒)に設定されている。また、MOD(T,Y)は、TをYで割った余りを出力する関数である。
【0049】
図8に示すように、第1制御プログラムPG1は、FLG1が「1」であるか否かを判別し(S11)、「1」であれば直ちに第1制御プログラムPG1から抜ける(S11でYES)。つまり、CPU31Aは、実質的には、第1制御プログラムPG1でFLG1が「1」ではない場合にのみ、第1制御プログラムPG1を実行する。FLG1が「1」にセットされるときとは、有人判定手段36により有人状態と判定された場合である。
【0050】
そして、CPU31Aは、FLG1が「1」でなければ(S11でNO)、カウンタT1を1つインクリメントし(S12)、割込信号のカウント数が100と一致したかを、ステップS13の関数MOD(T1,100)で判定する。そして、関数MOD(T1,100)の判定によりカウント数が100と一致しない場合は(S13でNO)、そのまま第1制御プログラムPG1から抜け、カウント数が100と一致すれば(S13でYES)、送受信処理が実行される(S14)。つまり10[秒]毎にセンサモジュール10から検出波が送波される。そして、CPU31Aは、距離スペクトル強度データから基準距離Asにおける基準強度Rsと、一定期間N1(例えば、3[分])分の受信強度Rの平均値との差から算出した変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かを判定し(S15)、変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化した場合には(S15でYES)、FLG1が「1」にセットされ(S16)、カウンタT1を「0」にリセットして第1制御プログラムPG1から抜ける(S20)。
【0051】
これに対して、変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化しなかった場合には(S15でNO)、浴室80は無人状態と判定されたことに相当し、続いて、割込信号のカウント数がL1と一致したとき、つまり、無人状態でセンサモジュール10が出力した情報から一定期間N1(例えば、3[分])分の距離スペクトル強度データが収集されたときに(S17でYES)、各距離スペクトル強度データにおいて距離Aの受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が基準判定用変動幅H1を超えない場合に(S18でYES)、受信強度Rが最も高くなる距離Aとその時の受信強度Rを基準距離As及び基準強度Rsとして設定する(S19)。一方、変動幅ΔR1が基準判定用変動幅H1を超える場合は(S18でNO)、カウンタT1を「0」にリセットして第1制御プログラムPG1から抜け(S20)、変動幅ΔR1が基準判定用変動幅H1内となるまで繰り返し実行する。
【0052】
ここで、ステップS16でFLG1を「0」から「1」に切り替えることが、浴室80を有人状態と判定したことに相当し、ステップS15を実行しているときのCPU31Aが前述した有人判定手段36に相当し、ステップS17~S19を実行しているときのCPU31Aが前述した基準更新部35に相当する。
【0053】
図9に示すように、CPU31Aは、第2制御プログラムPG2を実行すると、FLG1が「1」であるか否かを判別し(S21)、「1」でなければ直ちに第2制御プログラムPG2から抜ける(S21でNO)。つまり、CPU31Aは、実質的には、第1制御プログラムPG1でFLG1が「1」にセットされたときに(有人状態であるとき(S16)にのみ)、第2制御プログラムPG2を実行する。そして、CPU31Aは、カウンタT2を1つインクリメントして(S22)、割込信号のカウント数が10と一致したかを、ステップS23の関数MOD(T2,10)で判定する。そして、関数MOD(T2,10)の判定によりカウント数が10と一致しない場合は(S23でNO)、第2制御プログラムPG2から抜け、カウント数が10と一致すれば(S23でYES)、送受信処理が実行される(S24)。つまり1[秒]毎にセンサモジュール10から検出波が送波される。そして、割込信号のカウント数がL1と一致した後、つまり、1[秒]毎の送波が3[分]以上実行されると(S25でYES)、センサモジュール10が出力した情報から最新の一定期間N1分の基準距離Asにおける受信強度Rを抽出し、それらの受信強度変動幅ΔR1(MAX-MIN値)が、異常判定用変動幅H3を超えて変化した場合に(S26でYES)、浴槽83内の人90は異常なく動作していると判定し、第2制御プログラムPG2から抜ける。なお、本実施形態では、有人状態である限り、一定期間N1経過後は、1[秒]毎に受信強度変動幅ΔR1が、異常判定用変動幅H3を超えて変化するか否かの判定が継続される(S25,26)。
【0054】
これに対して、変動幅ΔR1が、異常判定用変動幅H3を超えて変化しなかった場合は(S26でNO)、さらに、一定期間N1分の受信強度Rの平均値の基準強度Rsからの変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2内であるか否かを判定し(S27)、有人判定用変動幅H2を超えて変化した場合には(S27でNO)、浴槽83内の人90に異常有りと判定し、異常対応処理が実行される(S28)。一方、変動幅ΔR2が、有人判定用変動幅H2を超えて変化しなかった場合には(S27でYES)、人90は浴槽83からいなくなったと判定し、FLG1が「0」にリセットされる(S29)。ここで、ステップS29でFLG1を「0」にリセットすることが、浴室80は無人状態と判定されたことに相当し、ステップS26~S29を実行しているときのCPU31Aが前述した異常判定部37に相当する。
【0055】
図10には、異常対応処理(S28)が示されている。異常対応処理は、浴槽83内の人90に向かって情報の入力を求めるメッセージを出力し、応答があるか否かを判定する。具体的には、CPU31Aは、FLG2が「1」であるか否かを判別し(S32)、「1」でなければ(S32でNO)、メッセージ出力部40から、異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージを出力する安否確認処理を実行した後(S33)、カウンタT3を「0」にリセットして(S34)、FLG2を「0」から「1」に切り替える(S35)。
【0056】
そして、CPU31Aは、カウンタT3を1つインクリメントして(S36)、割込信号のカウント数がL2と一致したかを、ステップS37の関数MOD(T3,L2)で判定する。そして、関数MOD(T3,L2)の判定によりカウント数がL2と一致しない場合(S37でNO)は、異常対応処理のプログラムから抜け、カウント数がL2と一致すれば(S37でYES)、異常報知処理が実行される(S38)。つまり、安否確認処理を実行してから異常判定状態で、一定期間N2(例えば、30[秒])経過すれば(S37でYES)、人90が安否確認処理に応答できない異常事態が発生したと判定され、その判定結果をメッセージ出力部50に出力する異常報知処理が実行されて(S38)、第3制御プログラムPG3から抜ける。なお、本実施形態では、人90が安否確認処理に応答できない異常事態が発生したと判定された後は、30秒毎に人90がメッセージに応答して手をかざしたか否かの監視が継続される。ここで、ステップS31でFLG2を「0」から「1」に切り替えることが、メッセージ出力部40から、異常なしを意味する情報の入力を求めるメッセージを出力したことに相当する。また、ステップS33,S38を実行しているときのCPU31Aが前述した異常処理部38に相当する。
【0057】
本実施形態の浴室監視装置100の構成に関する説明は以上である。本実施形態の浴室監視装置100によれば、浴室80が無人状態にされたときに、センサモジュール10が一方の対向壁81から他方の対向壁82に向かって送波する検出波に対する反射波のうち受信強度Rが最も高くなる一方の対向壁81からの距離Aとその時の受信強度Rを、基準距離As及び基準強度Rsとして記憶する。ここで、浴室80が無人状態で受信強度Rが最も高くなる距離Aは、センサモジュール10と対向する他方の対向壁82であるが、浴室80が有人状態となると、センサモジュール10が送波する検出波の一部が人90により反射されて、他方の対向壁82における受信強度Rが弱められる。本実施形態では、これを利用して、基準距離Asにおける受信強度Rが、基準強度Rsから有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かにより有人状態であるか無人状態であるかを判定し、有人状態と判定されたときには、基準距離Asにおける受信強度変動幅ΔR1が、異常判定用変動幅H3を超えて変化したか否かにより人90の異常の有無を判定する。
【0058】
つまり、本実施形態の浴室監視装置100では、センサモジュール10が検出波を送波する一方の対向壁81からその前方の他方の対向壁82との間の監視空間Sにおける前方物体の有無や動きによって、他方の対向壁82からの反射波の受信強度Rが変化することに着目し、従来のように監視空間Sの全ての位置からの反射波を利用せずに、他方の対向壁82又はそれに相当する物体(例えば、蓋70)が位置する基準距離Asからの反射波に基づいて監視空間S全体を監視している。これにより、従来よりもセンサモジュール10の出力に対する演算処理が簡素になり、異常の有無の判定の処理速度が速くなる。しかも、本実施形態では予め定めた基準距離Asにおける受信強度Rを監視するので、検出した受信強度Rが示す一方の対向壁81からの距離Aすべての受信強度Rを演算する必要がなく、より一層異常の有無の判定の処理速度を速くすることが可能になる。また、基準距離Asを定めてセンサモジュール10の検知範囲を基準距離As近傍までに限定するので、1回の計測にかけるサンプリング数を減らすことが出来る為、消費電力の低減が可能になる。
【0059】
また、従来のように、監視空間S内の物体までの距離を演算して距離の変動に基づいて監視する構成では、その物体の向きや位置が変動することにより距離を正確に把握できない虞があるが、本実施形態では、不変不動の他方の対向壁82を監視するのでそのような問題も生じない。
【0060】
また、本実施形態では、基準更新部34を備えて、無人状態と判定された条件の下、受信強度Rが最も高くなる一方の対向壁からの距離Aと受信強度Rを、基準距離As及び基準強度Rsとして更新するので、他方の対向壁82に蓋70が立てかけられたりした場合やセンサモジュール10が劣化した場合等に、基準距離Asにおける受信強度Rが変化して、人90の動きによる受信強度Rの変化が検出しにくくなるという問題を解決することができる。
【0061】
また、本実施形態では、作動頻度変更部33を備えて、無人状態では送信周期P1でセンサモジュール10を作動し、有人状態では送信周期P1よりも短い送信周期P2でセンサモジュール10を作動するので、消費電力を抑えることができる。
【0062】
さらに、本実施形態の浴室監視装置100は、異常処理部38を備えて、異常判定部37が異常と判定した場合に、メッセージ出力部40から浴室80内の人90にメッセージを出力し、人90がそれに応答しない場合にのみ、外部(メッセージ出力部50)に異常を通知するので、例えば、異常ありと判定された人90が、実際には、異常なく入浴していた場合や、軽い意識障害を起こしてはいるが自分の意思で動ける場合であればそのメッセージに気づいて応答することができるため、頻繁に外部(メッセージ出力部50)に異常を報知する事態を招くことなく、人90に実際に異常が発生したときに適切な対処をすることができる。また、浴室80内の人90が入浴中に眠ってしまった場合にも、前記メッセージにより、その人90が起きるきっかけが出来る事になる為、未然に意識障害等の異常状態を防ぐことができる。
【0063】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態の浴室監視装置100では、有人判定手段36は、基準距離Asにおける基準強度Rsと、一定期間N1分の受信強度Rの平均値との差から算出した変動幅ΔR2が有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かに基づいて有人状態であるか否かを判定していたが、一定期間N1分の受信強度Rの平均値との差ではなく、一度でも基準距離Asにおける受信強度Rが有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かに基づいて、有人状態であるか否かを判定しても良い。
【0064】
また、基準記憶部34が基準強度Rsを記憶しない構成とし、有人判定手段36は、基準距離Asにおける受信強度Rの現状からの変動幅が、有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かに基づいて有人状態であるか否かを判定してもよい。
【0065】
また、有人判定手段36は、監視空間Sの反射波の全体の受信強度Rが、現状から有人判定用変動幅H2を超えて変化したか否かに基づいて有人状態であるか否かを判定してもよい。
【0066】
(2)上記実施形態の浴室監視装置100では、センサモジュール10の距離分解能Dは、常に一定であったが、無人状態と判定された場合には、距離分解能Dを低くしてもよく、例えば6[cm]としてもよい。これにより、チャープ信号内のサンプリング回数を減らすことが出来、さらに消費電力を低減することができる。
【0067】
(3)上記実施形態の浴室監視装置100では、センサモジュール10は、浴槽83の上方を挟む1対の対向壁81,82間を経路として検出波を送受信し、浴槽83内の人90を監視する構成であったが、センサモジュール10の送受信の経路を1対の対向壁81,82と交差する1対の対向壁間にして、浴槽83及び洗い場にいる人90を監視できるようにしてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態の浴室監視装置100では、変動幅ΔR2は、基準距離Asにおける基準強度Rsと、一定期間N1分の受信強度Rの平均値との差を用いて算出していたが、平均値ではなく中央値を採用してもよい。
【0069】
(5)上記実施形態の浴室監視装置100では、異常処理部38は、異常判定部37において異常有りと判定されたときにメッセージを音声で出力していたが、表示部を備えて表示部にメッセージを表示してもよい。
【0070】
また、異常処理部38が浴槽83内の人90は異常なく動作していると判定したときに、メッセージ出力部40を介して「人の意識的な動作を検知しました。3分間人の停止検知をキャンセルします。」との音声を出力して、異常事態ではないと判定したことを浴室80内の人90に認識させてもよい。
【0071】
(6)上記実施形態の浴室監視装置100では、異常処理部38は、メッセージ出力部40からセンサモジュール10に手をかざすよう求めるメッセージを出力させ、センサモジュール10にその動作を検出させることで異常事態ではないと判定する構成となっていたが、例えば、防水ケース11にボタンを備えて、人90がそのボタンを押下することで異常事態ではないと判定する構成であってもよい。
【0072】
(7)上記実施形態の浴室監視装置100では、メッセージ出力部40から浴室80内の人90にメッセージを出力し、人90がそれに応答しない場合にのみ、メッセージ出力部50にその異常を出力していたが、異常判定部37が異常有りと判定した場合に、その判定結果をメッセージ出力部50に出力してもよいし、有人判定手段36が有人状態と判定した場合にも、その判定結果をメッセージ出力部50に出力してもよい。
【0073】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0074】
10 センサモジュール
33 作動頻度変更部
34 基準記憶部
35 基準更新部
36 有人判定手段
37 異常判定部
40 メッセージ出力部
80 浴室
81 一方の対向壁
82 他方の対向壁
90 人
A 一方の対向壁からの距離
As 基準距離
H2 有人判定用変動幅
H3 異常判定用変動幅
R 受信強度
Rs 基準強度