(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023107
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】動物用または植物用の自動給水器
(51)【国際特許分類】
A01K 7/02 20060101AFI20230209BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A01K7/02
A01G27/00 502S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128330
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】721003252
【氏名又は名称】森 喜佐子
(72)【発明者】
【氏名】森 寛
【テーマコード(参考)】
2B102
【Fターム(参考)】
2B102AA04
2B102AA15
2B102AB02
2B102CA03
(57)【要約】
【課題】
動物のケージ中に、貯水容器分の専有スペースを省く。
動物が、貯水容器にぶつかって倒すことをなくす。
受水容器を清掃する際、貯水容器に水が残っていれば、必ずしも給水不要とする。
水が減った分だけ自動で給水する。
動物ケージの扉を開けずに、給水可能とする。
【解決手段】
貯水容器と受水容器を分離設置し、貯水容器と受水容器を、細い2本のチューブまたは二連チューブで連結し、片方の管路を空気の流入側、他方の管路を水の流出側とし、自動給水器を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1のように、貯水容器1とキャップ2、キャップ2に気密性・水密性を充分に保って接続される両端が開口した2本のチューブ3、4、および動物等が水を飲む受水容器5を備え、2本のチューブ3および4の下端を、受水容器5に下向きに固定または着脱自在に取り付けてなる自動給水器。
【請求項2】
受水容器5に固定または着脱自在に取り付けられる2本のチューブ3および4の下端を、
図2のように少し高低差をつけて取り付けてなる自動給水器。
【請求項3】
実施例2において、請求項1の2本のチューブ3および4に替えて、二連チューブ6を備える自動給水器。
【請求項4】
実施例2において、受水容器5に固定または着脱自在に取り付けられる二連チューブ6の下端を、
図2のように階段状に切断するか、または
図3のように斜めカットした形状とする自動給水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用または植物用の自動給水機能を備えた給水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実用に供されている無動力の自動給水器は、例えば貯水容器に水を入れて受水容器へ逆さに返して立て、動物が水を飲んで受水容器中の水位が下がると、下がった分だけ水圧と大気圧のバランスにより自動給水される、というものがある。
【0003】
貯水容器と受水容器が一体として構成されているものは、飼育ケージ等の中に置いたとき、動物がぶつかったとき倒れやすいという欠点があった。倒れにくくするために底面の面積を大きくとったものもあるが、飼育ケージ中の専有面積と占有スペースが大きくなるという欠点があった。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
水を補給する際、飼育ケージの扉を開け中へ手を入れて作業しなければならず、動物に噛まれたり動物を逃がしてしまったりすることがあった。
【0005】
受水容器が汚れ拭き掃除をするとき、貯水容器に水が残っている場合でも、いったん空にして受水容器の汚れをふき取り、その後で貯水容器に水を満たして再度設置しなければならなかった。すなわち、給水の頻度は水が無くなったときのみでなく、受水容器中の水が汚れ拭き掃除するときにも給水しなければならなかった。このことは自動給水器としての効果を、大きく減じていた。
【0006】
また一方で、貯水容器と受水容器を離して設置し、その間を二重管でつなぎサイフォンの原理で給水する、という出願がある。(特許文献2参照)
【0007】
この方式の欠点は、貯水容器を逆さに返さずに正立して置くため、貯水容器に水を満たし給水を開始するとき、貯水容器の胴部を数回圧迫して、サイフォンの原理で給水を開始するきっかけを作らねばならない、という煩雑な作業があった。
【0008】
また、貯水容器の底までチューブの端が届かなければならないため、キャップに接続したチューブが長く垂れさがり、キャップを貯水容器に装着する際に、長く垂れ下がったチューブを貯水容器中に取り込んでからキャップを閉める、という煩雑な作業があった。
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3021286号
【特許文献2】特開2005-6665(P2005-6665A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
動物がぶつかって倒すことがなく、飼育ケージ等の中で場所をとらず、飼育ケージの外側に貯水容器を設置することで、扉を開けずに給水を行うことが出来、受水容器の清掃時、貯水容器に水が残っていれば給水不要で、水が減った分だけ自動で給水する、動物用または植物用の自動給水器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、実験と考察を重ねた。先ず、貯水容器のキャップに1本のみチューブを装着し、他端を受水容器に固定し、貯水容器を受水容器の上方に逆さに返して保持して給水することを試みた。しかし、これは予想された通り、水が連続して流れ出ないことが判った。この理由は、内径数ミリ程度の細いチューブ1本を装着したときは、水の表面張力が細いチューブの中へ空気が流入することを妨害し、よって貯水容器中の負圧が解消されないため、水が流れ出ることができない、と考えられる。
【0012】
最終的に、貯水容器のキャップに2本のチューブを装着し、受水容器の上方に貯水容器を逆さに設置し、2本のチューブの下端を受水容器に取り付け、2本のチューブの片方を空気の流入側、他方を水の流出側として、役割を分担させることで極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0013】
貯水容器と受水容器を離して設置し、2本のチューブで連結し、自動給水器を構成する。両端が開口した2本のチューブの一端を貯水容器のキャップに、気密性・水密性を充分に保って接続し、他端を動物等が水を飲む受水容器に、固定または着脱自在に取り付ける。
【0014】
なお、本発明の実施に当たっては、2本のチューブに替えて2本の管が連接した二連チューブを用いても差し支えない。
【0015】
受水容器に取り付ける2本のチューブの下端高さは、同位でも機能する。しかし、動作するまでに若干時間を要し、時間のバラツキが大きいので、すこし高低差を設けることが好ましい。すなわち、高低差を設けることで、一方が空気の流入側、他方が水の流出側という役割が明確になり、動作の応答性が良くなる。
【0016】
以上のことを特徴とする動物用または植物用自動給水器により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0017】
貯水容器を飼育ケージの外側に設置することが可能なので、飼育ケージ中に貯水容器が占める分の面積とスペースを減ずることができる。
【0018】
貯水容器を飼育ケージの外側に設置すれば、給水作業を飼育ケージの扉を開けずに行うことが出来、動物に噛まれたり動物を逃がしてしまったりすることを避けられる。
【0019】
受水容器が汚れて拭き掃除をするとき、必ずしも給水作業を伴わない。すなわち、細いチューブを通じて極少量ずつ水が供給されるので、受水容器に残った汚れた水を空け手早く拭き掃除して元通りに置けば、貯水容器の水を殆ど無駄にすることなく掃除が出来る。このことは、給水頻度を減らすことにつながる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】実施例1において、2本のチューブ3および4の下端を、高低差を付けて受水容器5へ取り付けた状態の部分図である。
【
図3】本発明の実施例1を示す概略切断端面図であり、貯水容器1に水を満たして逆さに返し、受水容器5に水が流出し始めた時点の状態を示す。
【
図4】実施例1において、水位が空気流入側チューブ3の下端を超え、給水が停止した時点の状態を示す概略切断端面図である。
【
図5】実施例1において、動物等が水を消費し、受水容器5中の水位が下がり、空気流入側チューブ3の下端が大気解放された時点の状態を示す概略切断端面図である。空気流入側チューブ3の下端から空気が流入し、再び水流出側チューブ4の下端から水が受水容器5へ流出し始める。
【
図6】実施例2として、2本のチューブ3、4を二連チューブ6に置き換えた場合の全体構成図である。
【
図7】実施例2において、二連チューブ6の下端を階段状にカットして、受水容器5へ取り付けた場合の部分図である。
【
図8】実施例2において、二連チューブ6の下端を斜めにカットして、受水容器5へ取り付けた場合の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を、
図1から
図8と実験結果を踏まえながら示す。
なお、本発明の主体は、貯水容器1に蓄えられた水を、螺合等の方法で着脱自在なキャップ2と、これに装着された2本のチューブにより、受水容器5へ供給し、空気流入側チューブ3の下端高さ位置と動物(図示せず)または植物(図示せず)が水を消費することに伴う水位の低下、および大気圧とのバランス関係によって、水を間歇自動給水する方法にあるので、貯水容器1を逆さに保持する方法、貯水容器1に装着されるキャップ2に2本のチューブを装着する方法、2本のチューブの下端を受水容器5に固定または着脱自在に取り付ける方法に関する説明は省略する。
【実施例0022】
図1に示すように、貯水容器1と、これに気密性・水密性を充分に保って、螺合等の方法で装着されるキャップ2、キャップ2に気密性・水密性を充分に保って装着される2本のチューブ3、4、および受水容器5を備える。
【0023】
2本のチューブ3、4の受水容器5への取り付けは、下端を下向きにして固定または着脱自在に取り付ける。
【0024】
なお2本のチューブ3、4の内径寸法は、少なくとも水や空気が通過しうる寸法とする。あくまでも1例であるが、それぞれ内径1.5mm程度、長さ0.7m程度とする。2本のチューブの内径は同径である必要はない。ゴム、樹脂等、材質を問わないが、柔軟性があることが好ましい。さらに、透明であることが水や空気の動きが判る点で好ましい。
【0025】
受水容器5に取り付ける2本のチューブ3、4の下端高さ位置は、同位であっても若干の時間を要して機能することが実験で判る。しかし、動作するまでの時間にバラツキが大きい。
よって
図2に示す例のように、高さに差異を設けることが、動作の応答性を良くする点で好ましい。
【0026】
空気流入側チューブ3と水流出側チューブ4の高さ位置が同位の場合、片方のチューブから空気が流入し、他方のチューブから水が流出するまでに数分を要する場合があり、また動作するまでの時間にバラツキがあることが実験で確認される。この場合、空気流入側と水流出側という役割分担は、微妙な圧力差によって都度決定されるものと考えられる。
【0027】
さて、動作について、実際の給水手順に従って説明する。
(以降の動作説明は、2本のチューブ3、4の下端を、
図2の形状とした場合で説明する。)
貯水容器1に水を満たし、2本のチューブ3、4を装着したキャップ2を螺合等の方法で装着し、受水容器5よりも上方に逆さに返して保持する。貯水容器1中の水1wが、2本のチューブ3、4の両下端から瞬間的に流出する。その直後、空気流入側チューブ3の下端からの水流出は止まり、代わって空気が連続的に流入する。そして、水流出側チューブ4の下端から水が連続的に出る。Aiは、貯水容器内へ流入する空気、Woは、貯水容器内から流出する水を示す。(
図3参照)
【0028】
空気流入側チューブ3は、貯水容器1中の空気1aが大気圧に対して負圧であることを解消するために空気が流入する管路、水流出側チューブ4は、貯水容器1中の水1wが流出するための管路として機能する。1bは、貯水容器1中の水1w中を上昇する気泡を示す。(
図3参照)
【0029】
受水容器5中に水5wが溜まり続け、空気流入側チューブ3の下端を超えると、空気の流入が止まり水流出側チューブ4からの水の流出も止まる。そして、その直後に空気流入側チューブ3の下端から水が吸い上げられ、中にあった空気が水で置き換えられる。このとき、貯水容器中の空気圧P1と貯水容器中の水1wおよび2本のチューブ3、4内の水圧P2の和が大気圧PAと平衡した状態である。(
図4参照)
【0030】
動物(図示せず)などが水を消費し、空気流入側チューブ3の下端よりも水面が下がると、下端から空気が吸入され水流出側チューブ4から再び水が流出し始める。(
図5参照)
【0031】
以降、動物などが水を消費するに伴い、貯水容器1中の水1wが無くなるまで、
図5から
図4の状態が繰り返される。
【0032】
実施例1において備える2本のチューブ3および4を、二連チューブ6に置き換えても差し支えない。これを実施例2とする。