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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023118
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230209BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20230209BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230209BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20230209BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J175/04
C09J167/00
G09F3/10 B
C09J7/25
G09F3/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128350
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
(72)【発明者】
【氏名】森田 和明
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB02
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA04
4J004DB02
4J004FA01
4J040ED001
4J040EF111
4J040EF281
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA10
(57)【要約】
【課題】ポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理を可能とするとともに、ポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に、好適に貼付できる粘着ラベルを提供する。
【解決手段】ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有し、前記剥離ライナーの前記ポリエステル系粘着剤層側の表面粗さRaは0.5μm以下であり、前記剥離ライナーは、紙基材、コート層1、およびコート層2がこの順に配置され、前記コート層1が樹脂を含有し、前記コート層2がクレイおよびバインダー樹脂を含有する、粘着ラベル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、
ポリエステル系の樹脂基材と、
ポリエステル系粘着剤層と、
前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有し、
前記剥離ライナーは、紙基材、コート層1、およびコート層2がこの順に配置され、
前記コート層1が樹脂を含有し、
前記コート層2がクレイおよびバインダー樹脂を含有する、粘着ラベル。
【請求項2】
前記剥離ライナーは、
前記ポリエステル系粘着剤層に隣り合うように配置される剥離剤層を有する、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
前記紙基材に使用されるパルプにおける広葉樹パルプの含有質量割合が50質量%以上である、請求項1または2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
前記紙基材に使用されるパルプの叩解度が30°SR以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
前記コート層2に含まれる前記バインダー樹脂が、スチレン-ブタジエン共重合体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
前記コート層1に含まれる前記樹脂が、ポリビニルアルコールを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項7】
前記紙基材に使用されるパルプの叩解度が40°SR以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項8】
前記コート層2に含まれる前記クレイに対する前記バインダー樹脂の比率が25質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項9】
前記樹脂基材の厚みは、25~100μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項10】
前記ポリエステル系粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃、周波数1Hzにおいて、1×10~100×10Paである、請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着ラベル。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、石油資源の枯渇などの問題から、ポリエステル系容器のリサイクル化が強く望まれている。ポリエステル系容器の中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのリサイクル化が望まれている。
【0003】
ポリエステル系容器のマテリアルリサイクル化においては、通常容器をペレット状に破砕した後、加熱溶融して全体を均質化し、得られた再生樹脂をポリエステル系容器の素材として用いるものである。
【0004】
通常、PETボトルのようなポリエステル系容器には、その表面に様々な情報が記録された粘着ラベル(ラベルとも称する)が貼付されている。このようなラベル付PETボトルなどのポリエステル系容器をマテリアルリサイクル化する際に、ラベルの樹脂基材とポリエステル系容器を構成する樹脂とが相溶性を有しない場合には、ラベルを構成する樹脂基材および粘着剤が異物として作用し、再生樹脂の機械特性が低下するという問題が生じる。したがって、このような場合には、ポリエステル系容器に貼付されているラベルを剥離してから、ペレット状に破砕し、加熱溶融することが必要である。しかしながら、ポリエステル系容器からラベルを剥離する操作は、極めて煩雑で手間がかかるとともにリサイクル処理費が高くなり、作業上も経済上も不利になるという問題が生じている。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、被着体であるポリエステル系容器と相溶性を有するポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤と、を有する粘着ラベルが開示されている。このように構成されたラベルによれば、ポリエステル系容器と同素材からなる樹脂基材および粘着剤を使用することにより、ポリエステル系容器からラベルを剥がすことなくリサイクルが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-10489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘着ラベルを容器に貼付する際、生産効率の点から、公知のラベリング装置を使用することがある。しかし、ポリエステル系粘着剤を用いたラベルの場合、ラベリング装置を用いて高速で貼付する際に、粘着力が低いことに起因して、ラベルの浮きが発生するなど好適に貼付できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、ポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理を可能とするとともに、ポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に、好適に貼付できる粘着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る粘着ラベルは、ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルであって、
ポリエステル系の樹脂基材と、
ポリエステル系粘着剤層と、
前記ポリエステル系粘着剤層の、前記樹脂基材が設けられる反対側の面に配置される剥離ライナーと、を有し、
前記剥離ライナーは、紙基材、コート層1、およびコート層2がこの順に配置され、
前記コート層1が樹脂を含有し、
前記コート層2がクレイおよびバインダー樹脂を含有する、粘着ラベルである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着ラベルによれば、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、を有するため、粘着ラベルをポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理が可能である。また、本発明の粘着ラベルによれば、公知のラベリング装置によって粘着ラベルをポリエステル系容器に対して高速で貼付する際に好適に貼付できる。また、剥離ライナーが紙基材であり、ポリオレフィン層の積層もされていないため、使用後の剥離ライナーの離解ができることから、剥離ライナーのリサイクルも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。
【0014】
粘着ラベルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのようなポリエステル系容器に貼付される。以下、粘着ラベルが貼付される被着体として、PETボトルを例に挙げて説明する。粘着ラベルの形状としては、特に限定されないが、積層方向から視て、長方形であることが一般的である。なお、粘着ラベルの形状は、三角形や円形状であってもよい。また、ポリエステル系粘着剤層は、例えば樹脂基材の全面に配置されている。
【0015】
粘着ラベルの粘着力は、PETボトルへの接着性を考慮すると、3.5N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、6.5N/25mm以上であることがさらにより好ましい。また、粘着ラベルの粘着力は、特に上限値の設定の必要はないが、30N/25mm以下であってもよく、20N/25mm以下であってもよい。なお、被着体への粘着力は、粘着ラベルのポリエステル系粘着剤層面をポリエチレンテレフタレート板に貼付し、24時間後にJIS Z0237:2009に従い、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分で測定する。より詳細には、被着体への粘着力は、以下の方法によって測定された値である;粘着ラベルを24時間標準環境下(23℃50%RH)に静置し、剥離ライナーを剥がしてポリエチレンテレフタレート板にポリエステル系粘着剤層面を貼付する。24時間標準環境下に静置後、JIS Z0237:2009にしたがい粘着力を測定する。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分で粘着ラベルを引き剥がし、粘着力を測定する。数値は、フィルム幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。以下、図1図2を参照して、粘着ラベルの構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る粘着ラベル10の断面概略図である。本発明の実施形態に係る粘着ラベル10は、図1に示すように、上から順に、樹脂基材16と、ポリエステル系粘着剤層15と、剥離ライナー30と、を有する。剥離ライナー30は、剥離剤層14、コート層2 13、コート層1 12、紙基材11がこの順に配置されてなる。図2に示されるように、コート層1は、紙基材11の両面に形成されていてもよい。図2における粘着ラベル10’は、上から順に、樹脂基材16と、ポリエステル系粘着剤層15と、剥離ライナー30’と、を有する。剥離ライナー30’は、剥離剤層14、コート層2 13、コート層1 12、紙基材11、コート層1 12がこの順に配置されてなる。なお、粘着ラベル10は、樹脂基材16上、または各層間に他の機能層を有していてもよい。他の機能層としては、印刷層、プライマー層などが挙げられる。
【0017】
「ラベル」の概念には、フィルム、シート、テープ等と称されるものが包含される。
【0018】
<樹脂基材16>
樹脂基材として、被着体のPETボトルと相溶性を有する同じ素材であるポリエステル系フィルムを使用することが必要である。すなわち、樹脂基材は、ポリエステル系の樹脂基材である。しかし、再生樹脂の機械特性などの品質の点から、ポリエステル系フィルムの樹脂基材としては、PETボトルに使用されている樹脂の組成に近いものを用いることが特に有利である。このポリエステル系フィルムに使用される樹脂基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を挙げることができ、これらの中から、被着体のPETボトルに使用されている樹脂の種類に応じて、それと相溶性のある樹脂基材が得られるように、一種又は二種以上を適宜選択して用いればよい。
【0019】
ここで、相溶性とは、PETボトルを加熱溶融する際の温度で溶融し、かつ溶融したPETボトルの樹脂基材と相溶性よく混和し、その再生品の特性を低下させないことを意味する。なお、PETボトルを構成する樹脂基材が、相溶性のある樹脂二種以上の混合物である場合、樹脂基材16の樹脂としては、PETボトルを構成する樹脂混合物の中の1つの樹脂を用いることができる。
【0020】
樹脂基材16の厚さは特に制限はなく、用途などに応じて適宜選定されるが、一般には25~100μmの範囲であることが好ましい。樹脂基材16の厚みを25μm以上とすることで、ラベリング工程での剥離ライナー30からの粘着ラベルの剥離性に優れる。また、樹脂基材16の厚みを100μm以下とすることで、ラベリング装置に設置するロールの巻き長を十分に長くでき、ロールの交換頻度を下げて、作業効率を高めることができる。この樹脂基材16としては、従来公知の方法、例えば押出し法、カレンダー法、溶液コーティング法、キャスティング法など、いずれの製膜方法により得られたものであってもよい。
【0021】
本発明においては、この樹脂基材16には、その上に設けられるコート層や、反対面に設けられるポリエステル系粘着剤層15との密着性を向上させる目的で、所望により、片面あるいは両面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などが挙げられる。本発明においては、樹脂基材16の片面に、印刷適性を有するコート層(印刷受理層)が設けられてもよい。この結果、樹脂基材16の片面に印刷適性が付与されることとなる。このコート層は、樹脂基材16の製膜時に混入した樹脂の未溶解部分による突起(フィッシュアイ)に起因する印刷時の抜けの発生を防止するとともに、印刷インキの密着性を向上させる効果を有している。
【0022】
<ポリエステル系粘着剤層15>
次に、ポリエステル系粘着剤層15について説明する。ポリエステル系粘着剤層15は、ポリエステル系樹脂(A)を主成分とするポリエステル系粘着剤組成物から形成される。
【0023】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸成分(A1)及びポリオール成分(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0024】
〔多価カルボン酸成分(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸成分(A1)としては、例えば、
テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4,4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;
等の二価カルボン酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
これらの中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0026】
かかる芳香族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が多すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0027】
また、タック感を付与する点からは、脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、特には炭素数が4~12の脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0028】
かかる脂肪族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、20モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは50モル%~95モル%、更には70~90モル%である。かかる含有割合が低すぎるとガラス転移温度が高くなり充分な粘着力が得られなくなる傾向があり、かかる含有割合が高すぎると密着成分が少なくなることにより、極性被着体への粘着力が低下する傾向がある。
【0029】
本発明においては、粘着物性のバランスの点から、多価カルボン酸成分(A1)として、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を併用することが好ましく、含有比率(モル比)としては、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=1/99~90/10であることが好ましく、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=5/95~49/51、更に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=10/90~30/70である。
【0030】
なお、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸を用いることもでき、かかる三価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等があげられる。中でも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸を用いることが好ましい。かかる三価以上の多価カルボン酸の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0031】
〔ポリオール成分(A2)〕
本発明で用いられるポリオール成分(A2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2、4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1、3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-、m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;等の二価アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂(A)中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることもでき、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1、3、6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等があげられる。かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、ポリオール成分(A2)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の製造が困難となる傾向がある。
【0034】
多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0035】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0036】
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は、凝集力、耐熱性、機械的強度、粘着性などの観点から、5000~100000であることが好ましく、特に好ましくは10000~100000、更に好ましくは15000~80000である。
【0037】
なお、上記の数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8220 GPC」)に、カラム:TSK gel GMHXLの2本直列を用いることにより測定されるものである。
【0038】
通常はポリエステル系樹脂(A)を架橋剤を用いて架橋させることにより凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を発揮する。かかる架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)、ポリエポキシ化合物など、ポリエステル系樹脂(A)に含まれる水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物があげられる。これらの中でも初期粘着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特に好ましくはポリイソシアネート化合物である。
【0039】
かかるポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートがあげられ、また、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート付加物やイソホロンジイソシアネート付加物などのイソシアネート付加物などがあげられる。なお、上記ポリイソシアネート化合物は、フェノール、ラクタムなどでイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらの架橋剤は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0040】
かかる架橋剤の配合量は、ポリエステル系樹脂(A)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、粘着性等を考慮すると、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、0.5~5質量部とすることが好ましい。
【0041】
ポリエステル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の、加水分解抑制剤、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤などの添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状などの添加剤を配合することができる。
【0042】
ポリエステル系粘着剤層15の貯蔵弾性率は、23℃、周波数1Hzにおいて、好ましくは1×10~100×10Pa、より好ましくは5×10~50×10Paの範囲である。ポリエステル系粘着剤層15の貯蔵弾性率G’が100×10Pa以下であれば、粘着力が担保されやすい。一方、粘着剤層の貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上であれば、凝集力が担保されやすい。粘着剤層の貯蔵弾性率G’は、粘着剤層に含まれる重合体(粘着剤)を構成するモノマーの種類、分子量及び配合比、並びに重合体の重合度、さらに架橋剤を含む場合には、架橋剤量(重合体の架橋密度)などを適宜変更することによって調整することができる。
【0043】
粘着剤層の貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性測定装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて決定する。2枚の剥離ライナー間に500μm~1mmの厚み(例えば、800μm)の粘着剤層を形成した積層体を直径8mmの円盤状に打抜き、剥離ライナーを除去した後のものを、粘着剤層試料とする。-50℃~150℃の温度範囲において5℃/分の昇温速度及び周波数1Hzの剪断モードで測定を行ったときの、23℃における貯蔵弾性率G’(Pa)を記録する。
【0044】
<剥離ライナー30>
剥離ライナー30は、図1に示すように、紙基材11、コート層1 12、コート層2 13、剥離剤層14がこの順に配置されてなる。以下、紙基材11、コート層1 12、およびコート層2 13の積層体を剥離紙原紙とも称する。コート層2は、剥離剤との密着性を考慮すると、剥離紙原紙の最表層となることが好ましい。
【0045】
本発明者らは、ポリエステル系粘着剤を用いたラベルを、ラベリング装置を用いて高速で貼付する際に、好適に貼付できないことから、その原因を鋭意検討した。その結果、剥離ライナーの粘着剤層面の表面粗さがポリエステル系粘着剤の粘着力に影響を及ぼし、表面が粗いと高い粘着力が発現せず、それがラベリング時の不具合につながることを見出したのである。ポリエステル系粘着剤は、剥離ライナーの凹凸が粘着剤層に転写された場合に、被着体に貼付した後も転写された凹凸形状が維持され、ポリエステル系容器への接触面積が下がることとなり、粘着力の低下へとつながるものと考えられる。通常の粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤では、凹凸形状が粘着剤層に転写されたとしても、被着体に貼付された後に濡れ広がりやすいために、粘着力の低下にはつながらない。ゆえに、上記課題は、ポリエステル系粘着剤に特有の課題とも言える。剥離ライナーを上記構成とすることで、紙基材の表面平滑性が向上し、剥離ライナーと接触したポリエステル系粘着剤のポリエステル系容器への粘着力が向上し、良好なラベリング適性が得られる。
【0046】
剥離紙原紙の坪量は、35~120g/mであることが好ましく、50~100g/mであることが好ましい。
【0047】
剥離紙原紙のコート層2側の表面粗さは、その好適な態様として、JIS B 0601:2013に準拠した算術平均粗さ(Ra)で好ましくは0.70μm以下、より好ましくは0.50μm未満とすることができる。コート層2の算術平均粗さ(Ra)の下限は、小さければ小さいほど好ましいが、通常0.10μm以上となる。なお、本願の形態においては、剥離原紙の平滑性が非常に高いにもかかわらず、本願の層構成とすることで、剥離剤層との密着性は担保される。
【0048】
また、剥離ライナーの剥離剤層側の表面粗さは、その好適な態様として、JIS B 0601:2013に準拠した算術平均粗さ(Ra)で好ましくは0.70μm以下、より好ましくは0.65μm以下、さらにより好ましくは0.50μm以下、特に好ましくは0.50μm未満とすることができる。剥離剤層の算術平均粗さ(Ra)の下限は、小さければ小さいほど好ましいが、通常0.10μm以上となる。
【0049】
(剥離剤層)
剥離剤層を形成する剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの中では、シリコーン系剥離剤が好ましい。剥離剤層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0050】
シリコーン系剥離剤の樹脂としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらは単独又は任意の2種以上を混合して用いることができる。また、シリコーン系剥離剤は、溶剤型、無溶剤型、エマルション型のいずれの形態でも用いることができるが、環境面の観点から、エマルション型又は無溶剤型が好ましい。
【0051】
剥離剤層13は、0.01μm以上10μm以下の厚みを有することが好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0052】
(紙基材)
紙基材に使用されるパルプにおける広葉樹パルプの含有質量割合は50質量%以上であることが好ましい。広葉樹パルプの含有質量割合が50質量%以上であることで、剥離紙原紙表面の平滑性が向上する。広葉樹パルプの含有質量割合は、50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましく、80質量%を超えることが特に好ましく、最も好ましくは100質量%である。
【0053】
また、紙基材における、広葉樹パルプと針葉樹パルプとの合計量に対する広葉樹パルプの含有質量割合は、平滑性の観点から、50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましく、80質量%を超えることが特に好ましく、最も好ましくは100質量%である。
【0054】
紙基材に使用される広葉樹パルプとしては、特に限定されるものではなく、バージンパルプ及び古紙パルプを使用することができる。バージンパルプとしては、木材パルプを用いることが好ましい。広葉樹パルプのバージンパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプや、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。これらの中でも、表面平滑性の点で、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプであることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)であることがより好ましい。
【0055】
紙基材に使用されうる針葉樹パルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプや、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。
【0056】
好適な一形態は、針葉樹晒クラフトパルプの含有率をXN[質量%]、広葉樹晒クラフトパルプの含有率をXL[質量%]としたとき、0≦XN/XL≦1の関係を満足することが好ましく、0≦XN/XL<1の関係を満足することがより好ましく、0≦XN/XL≦3/7の関係を満足することがより好ましく、0≦XN/XL<2/8の関係を満足することがさらにより好ましく、XN/XL=0/100であることが特に好ましい。
【0057】
紙基材のパルプ含有率は、特に限定されないが、60質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この含有量の下限は、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、この含有量の上限は、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
紙基材に使用されるパルプの叩解度は30°SR以上であることが好ましい。紙基材にコート層1を形成する際のウエット塗工において、パルプの叩解度が30°SR以上であることで塗工液が基材に沈みにくくなり、ゆえに塗工後の表面平滑性が一層担保される。また、基材に使用されるパルプの叩解度が30°SR以上であると、剥離紙の透明性が高くなる。透明性が高いことで、例えば、ラベルを機械で貼付する際に、ラベルを検出しやすいという利点がある。
【0059】
叩解度は、40°SR以上であることが好ましい。また、叩解度の上限は特に限定されるものではないが、抄造速度を速くできる点から、90°SR以下であることが好ましく、70°SR以下であることがより好ましい。パルプの叩解度は、叩解時のダブルディスクリファイナーのギャップ厚みによって制御することができる。
【0060】
紙基材の厚みは、40μm以上300μm以下であることが好ましい。厚みを40μm以上とすることにより、剥離ライナー(剥離紙)の製造時におけるしわの発生を抑制でき、ラベル製造時におけるラベル加工の抜き加工適性が向上させることができる。また、この厚みを300μm以下とすることにより、剛性が高くなりすぎることがなく、取り扱い性が低下しない。なお、この厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定することができる。基材の坪量は、35~120g/mであることが好ましく、50~100g/mであることがより好ましい。坪量をこのような範囲に制御することにより、抄造適性が一層向上する。
【0061】
紙基材は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、酸化澱粉;ロジン系サイズ剤、AKD(アルキルケテンダイマー)系サイズ剤等のサイズ剤;湿潤増強剤;ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリビニルアルコール等の樹脂材料;染料、顔料等の着色剤;硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉、カチオン性高分子電解質等の定着剤;抄紙助剤;凝集剤等が挙げられる。これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記樹脂材料は、サイズ剤として機能するものを用いてもよい。
【0062】
(コート層1)
コート層1は必須に配置される。コート層1が存在せず、コート層2のみであると、平滑性が低下する。これは、コート層1が存在しない場合、コート層2の樹脂が紙基材に染み込むため、コート層2が適切な役割を果たせないためであると考えられる。
【0063】
コート層1は樹脂を有する。樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の共重合体;カゼイン、デキストリン、澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、剥離剤との密着性の点で、樹脂は、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコールのみであることが特に好ましい。
【0064】
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコールが挙げられる。中でもポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0065】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、80~100モル%であることが好ましく、85~100モル%であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコールの分子量は、通常5,000~150,000であり、10,000~100,000であることが好ましい。
【0066】
コート層1は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラー、分散剤、増粘剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、潤滑剤、耐水化剤、保水剤、色材等が挙げられる。なお、コート層1がフィラーを含有しない形態は好適な一実施形態である。
【0067】
コート層1を塗布した塗布面にはスーパーカレンダー処理を行って、表面を平滑にしてもよい。スーパーカレンダー処理を行うことにより目止めの効果や剛性化の効果が向上する。
【0068】
(コート層2)
本願においては、コート層1に加えて、コート層2を配置する。
【0069】
コート層2はクレイおよびバインダー樹脂を有する。コート層1でも十分に平滑にできなかった凹み部分をクレイによって埋めることができ、表面の平滑性が向上する。
【0070】
コート層2に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の共重合体;カゼイン、デキストリン、澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、造膜性の点で、樹脂は、スチレン-ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。また、スチレン-ブタジエン樹脂(スチレン-ブタジエン共重合体)は、高固形分濃度、低粘度であり生産性に優れる点から、ラテックス型(スチレンブタジエンゴムラテックス)であることが好ましい。スチレン-ブタジエン樹脂のガラス転移温度は、スーパーカレンダー工程での加圧による平滑化の容易性の点で、-50℃以上50℃以下であるのが好ましく、-20℃以上20℃以下であるのがより好ましい。ラテックス型(スチレンブタジエンゴムラテックス)の最低造膜温度は、10~150℃の範囲であることが好ましい。最低造膜温度は、スチレンブタジエンゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度であり、温度勾配板法により得られるものである。スチレン-ブタジエン共重合体のラテックス型としては、市販品を用いてもよく、例えば、スマーテックス(登録商標)SN-309R(スチレンブタジエンゴムラテックス、日本エイアンドエル社製、ガラス転移温度4℃)、スマーテックス(登録商標)SN-307R(スチレンブタジエンゴムラテックス、日本エイアンドエル社製、ガラス転移温度10℃)、JSR0693(スチレンブタジエンゴムラテックス、JSR社製、ガラス転移温度20℃)などが挙げられる。
【0071】
さらには、バインダー樹脂として、スチレン-ブタジエン共重合体に加えて、澱粉およびポリビニルアルコールを組み合わせて用いることが好ましい。このような組み合わせとすることで、造膜性と剥離剤層との密着性を向上させることができ、また、加工性も良好となる。
【0072】
澱粉の添加量は、造膜性と剥離剤層との密着性の観点から、スチレン-ブタジエン共重合体に対して、40~70質量%であることがより好ましく、50~60質量%であることがさらにより好ましい。使用される澱粉は、とうもろこし、馬鈴薯、タピオカ、米などを原料とすることができる。澱粉としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸素変性澱粉などの加工澱粉を用いることができる。
【0073】
ポリビニルアルコールの添加量は、造膜性と剥離剤層との密着性の観点から、スチレン-ブタジエン共重合体に対して、5~40質量%であることが好ましく、10~25質量%であることが好ましく、13~20質量%であることがより好ましい。ポリビニルアルコールとしては、コート層1の欄で記載したものと同様のものを用いることができる。
【0074】
クレイとしては、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、木節粘土、ガイロメ粘土、ハロイサイト、マイカ等を用いることができる。中でも、クレイとしては、カオリンを含むことが好ましい。クレイの形状は、特に限定されないが、平滑性の観点から、扁平板状であるのが好ましい。クレイの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下である。平均粒径は、体積基準であり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0075】
クレイが扁平板状をなすものである場合、その平均厚さに対する平均粒径の比率、すなわち、アスペクト比は、3.0以上であるのが好ましく、5.0以上であるのがより好ましく、7.0以上であるのがさらに好ましい。なお、クレイのアスペクト比の上限は、10.0以下であってもよい。
【0076】
クレイのコート層2における含有量は、平滑性や結着性の観点からは、60~85質量%であることが好ましく、70~80質量%であることがより好ましい。
【0077】
コート層2において、クレイに対するバインダー樹脂の含有質量割合は、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。クレイに対するバインダー樹脂の含有質量割合が上記下限以上であることで、クレイで形成される隙間を樹脂が適度に埋めることができ、上に塗工される剥離剤層の染み込みが抑制され、平滑性が一層向上する。クレイに対するバインダー樹脂の含有質量割合の上限は、クレイの効果を考慮すると、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
コート層2は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、顔料、顔料分散剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、潤滑剤、耐水化剤、保水剤、色材等が挙げられる。
【0079】
また、コート層2を塗布した塗布面にはスーパーカレンダー処理を行い、表面を平滑にすることが好ましい。スーパーカレンダー処理を行うことにより目止めの効果や剛性化の効果が向上する。
【0080】
(製造方法)
剥離ライナーの製造方法としては、例えば、紙基材上に、樹脂を含むコート層1形成用組成物を塗布してコート層1を形成し、前記コート層1上に、クレイおよびバインダー樹脂を含むコート層2形成用組成物を塗布してコート層2を形成し、前記コート層2上に剥離剤を塗布して剥離剤層を形成することを有する、製造方法が挙げられる。以下、各工程を説明する。
【0081】
1.紙基材の製造
まず、パルプ原料を水中で叩解処理してパルプスラリーを生成する。そのパルプスラリーに、必要に応じて、内添剤も添加する。
【0082】
次に、上記のようにして得られたパルプおよび場合により添加剤を含むスラリーを抄紙することにより紙基材を得る。また、必要に応じて、抄紙時に、サイズ剤を付与してもよい。サイズ剤としては、例えば、酸化澱粉、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアマイド樹脂等を用いることができる。サイズ剤を付与する場合、通常は、紙の両面に付与するが、一方の面のみに付与してもよい。
【0083】
2.コート層1形成用組成物の基材への塗布
樹脂、必要に応じて添加剤、さらに溶媒を混合してコート層1形成用組成物を準備する。溶媒は、樹脂の形態によって適宜選択され、樹脂がポリビニルアルコールである場合には、溶媒は、例えば、水である。
【0084】
その後、上記のようにして得られた紙基材に対して、コート層1形成用組成物を塗布してコート層1を形成する。塗布の方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、紙基材上に樹脂成分を含むコート層1形成用組成物を塗布し、乾燥させて、コート層1を形成する方法等を採用することができる。塗布方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、多段ロールコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、サイズプレスコーター、シムサイザー等の各種塗工装置を適宜選択して塗布する方法を採用することができる。コート層1形成用組成物の塗布量(固形分)(紙基材の両面塗布の場合は、片面の塗布量)は、効果の観点から、好ましくは0.2~4.0g/m、より好ましくは0.5~3.0g/mである。
【0085】
コート層1形成用組成物を塗布した後、乾燥工程に供してもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、例えば、80~160℃で10~60秒である。
【0086】
3.コート層2形成用組成物の基材への塗布
バインダー樹脂、およびクレイ、必要に応じて添加剤、さらに溶媒を混合してコート層2形成用組成物を準備する。溶媒は、バインダー樹脂の形態によって適宜選択され、バインダー樹脂がラテックス型樹脂や水溶性高分子である場合には、溶媒は、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール等)が好ましく、水がより好ましい。溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
その後、上記のようにして得られたコート層1が形成された紙基材のコート層1の形成面に対して、コート層2形成用組成物を塗布して、コート層2を形成する。塗布方法としては、上記コート層1形成用組成物の塗布方法と同様のものが例示される。
【0088】
コート層2形成用組成物の塗布量(固形分)は、効果の観点から、好ましくは2~30g/m、より好ましくは3~20g/mである。コート層2形成用組成物を塗布した後、乾燥工程に供してもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、例えば、80~160℃で10~60秒である。
【0089】
4.剥離剤の塗布
剥離剤のコート層2への塗布方法としては、特に限定はなく、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、多段ロールコーター等の各種塗工装置を適宜選択して使用することができる。
【0090】
剥離剤の塗布量(固形分)は、塗布後の平滑性の観点から、0.1g/m以上であることが好ましく、0.4g/mを超えることがより好ましく、1.0g/mを超えることがさらにより好ましい。また、剥離剤の塗布量は、巻き取り時のブロッキングの発生を抑える観点から、2.5g/m以下であることが好ましく、2.0g/m以下であることがより好ましい。
【0091】
5.粘着ラベルの製造
粘着ラベルの製造方法は、特に限定されるものではないが、粘着ロールまたはシートを作製した後、必要に応じ印刷、半抜き加工、カス上げを行い、粘着ラベルを製造する方法が挙げられる。粘着ロールまたはシートの製造方法は、(1)剥離ライナー上にポリエステル系粘着剤組成物を塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後、これを樹脂基材に貼り合わせる方法、(2)樹脂基材上にポリエステル系粘着剤組成物を直接塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後に剥離ライナーを貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0092】
<ポリエステル系容器>
本発明は、上記粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器をも提供する。ポリエステル系容器とは、ポリエステル系樹脂から構成される容器を指す。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。容器は、ポリエステル系樹脂を射出成形、真空成形、圧空成形等することにより製造することができる。
【0093】
<ラベリング方法>
次に、ラベリング方法について説明する。粘着ラベル10のポリエステル系容器に対するラベリングは、例えば特許第5956220号に開示されているようなラベリング装置を用いて行われる。
【0094】
ラベリングの際、剥離ライナー30に貼られた状態の粘着ラベル10が搬送されていき、粘着ラベルを剥離ライナーから剥離する際に、剥離ライナーが折り返される。このとき、粘着剤層が露出し、露出した粘着剤層をポリエステル系容器に対して貼付する。ここで、樹脂基材16の厚みが薄すぎる、または剥離ライナー30の厚みが厚すぎる場合には、剥離ライナー30が折り返されても、ポリエステル系粘着剤層15が露出しにくく、粘着ラベルをポリエステル系容器に貼付できない場合がある。なお、ラベリング装置の粘着ラベル1の搬送速度(ラベリング速度)は、特に限定されないが、20~150m/分である。
【実施例0095】
次に実施例について説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0096】
(実施例1)
1.紙基材の作製
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を水中でショッパーリグラー法による叩解度が42°SRとなるように叩解処理し、これを水に分散して濃度約1.0質量%のパルプ分散液を得た。このパルプ分散液中のパルプ100質量部に対して、サイズ剤としてロジンサイズ剤0.4質量部および定着剤として硫酸アルミニウム0.2質量部をそれぞれ添加し、パルプスラリーを得た。次いで、このパルプスラリーを長網多筒式抄紙機を用いて抄紙し坪量59g/mの紙基材を得た。紙基材の厚さは49μmであった。
【0097】
2.剥離紙原紙の作製
1.で得られた紙基材の一方の面に、ポリビニルアルコール(鹸化度98モル%、分子量75,000)および水を、それぞれ、所定の割合で含む組成物を塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、乾燥することにより、コート層1を形成した。形成されたコート層1の厚さは1μmであった。
【0098】
続いて、扁平板状のカオリン(平均粒径4.3μm)、酸化澱粉、ポリビニルアルコール(鹸化度98モル%、分子量75,000)、スチレン-ブタジエン樹脂(スチレンブタジエンゴムラテックス、ガラス転移温度-3℃、最低造膜温度100℃)を下記表1に記載の割合(固形分)で含み、溶媒として水を所定割合で含む塗工液を作製した。次に、前記塗工液を、塗布量が5.2g/mとなるようにコート層1上に塗布し、乾燥させ、更にスーパーカレンダーロールを通すことにより、コート層2を形成し、剥離紙原紙を得た。形成されたコート層2の厚さは、5μmであった。
【0099】
3.剥離ライナーの作製
2.で得られた剥離紙原紙のコート層2上に、シリコーン系剥離剤(信越化学工業社製KNS-3051)を、塗布量が1.7g/mとなるように塗布し、150℃、30秒で硬化させることにより、剥離剤層を形成し、剥離ライナーを得た。
【0100】
4.粘着ラベルの作製
ポリエステル系樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「NP-110S50EO」)100質量部(固形分)に対し、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2質量部(固形分)、酢酸エチル40質量部を添加・混合して粘着剤組成物を調製した。
【0101】
得られた粘着剤組成物を、剥離ライナーの剥離剤層上にナイフコーターにより乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗布した後、90℃下で1分間乾燥させ粘着剤層を形成した。
【0102】
粘着剤層上に50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、巻きとり、23℃下で7日間静置し、実施例1の粘着ラベルに対応する粘着ロールを得た。
【0103】
(実施例2)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100質量部から、針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして剥離紙原紙、剥離紙および粘着ロールを得た。
【0104】
(比較例1)
コート層2を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして剥離紙原紙、剥離紙および粘着ロールを得た。
【0105】
(測定方法1:算術平均粗さRa)
算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に準じて接触式表面粗さ計(ミツトヨ社製、SV-3000)で測定した。結果を下記表1に示す。
【0106】
(測定方法2:粘着力)
実施例および比較例で得た粘着ロールから必要量を切り出し、シート形状にした。粘着シートを24時間標準環境下に静置した後、剥離ライナーを剥がしてポリエチレンテレフタレート板に粘着剤層面を貼付した。貼付した直後、および貼付して24時間標準環境下に静置した後に、粘着力を測定した。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分でシートを引き剥がし、粘着力を測定した。数値は、シート幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。結果を表1に示す。
【0107】
(測定方法3:接触面積率)
実施例および比較例で得た粘着ロールから必要量を切り出し、シート形状にした。剥離ライナーを剥がしてポリエチレンテレフタレート板に粘着剤層面を貼付した。ポリエチレンテレフタレート板側からデジタル顕微鏡でデジタル画像を撮影し、得られたデジタル画像をデジタル顕微鏡に付随するデータ解析装置に取り込み、粘着剤の接触面と非接触面とのデジタル画像の輝度の差から解析ソフトにより2値化処理して粘着剤の接触面積率を算出した。結果を表1に示す。
【0108】
(測定方法4:ラベリング)
さらに、実施例および比較例で得た粘着ロールを、長さ300m、幅60mmに裁断し、ラベルサイズ35mm×35mm、ラベル間隔が3mmとなるように抜き加工を行った。これらの粘着ロールを用いてラベリング装置によって、ラベリング速度100m/分で、PETボトルに対して貼付した。貼付後、PETボトル上のラベルの端部浮きの有無を確認した。
【0109】
〇:ラベルの端部に浮きが生じなかった。
【0110】
△:ラベルの端部に僅かに浮きが生じた。
【0111】
×:ラベルの端部に浮きが生じた。
【0112】
【表1】

【0113】
上記で示されるように、実施例の粘着ラベルは、接触面積率及び粘着力が高く、また、ラベリング適性も良好であった。
【符号の説明】
【0114】
10、10’ 粘着ラベル、
11 紙基材、
12 コート層1、
13 コート層2、
14 剥離剤層、
15 ポリエステル系粘着剤層、
16 樹脂基材、
30、30’ 剥離ライナー。
図1
図2