(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023133
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】通信システム及びロボット
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230209BHJP
G06F 13/14 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H04L12/28 400
G06F13/14 320F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128371
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 正吾
(72)【発明者】
【氏名】野口 直之
(72)【発明者】
【氏名】上甲 均
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033DA11
5K033DB25
5K033EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の下位制御部のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく、識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することができるロボットを提供する。
【解決手段】複数の下位制御部のそれぞれに対して互いに異なる固有の識別符号を所定の規則に従って付与して記憶させる識別符号付与処理を実行する制御システム70であって、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された主制御部50及び複数の下位制御部71~75の間で通信を行い、複数のそれら制御部のうち、並び順で最上位に位置する機器である主制御部50と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位制御部71~75機器とを備え、所定のタイミングで識別符号付与処理を開始し、識別符号付与処理において、複数の下位制御部のうち、並び順で上位に位置する下位制御部から順に、電源を供給した後に識別符号を付与して記憶させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備え、複数の下位機器のそれぞれに対して互いに異なる固有の識別符号を所定の規則に従って付与して記憶させる識別符号付与処理を実行する通信システムであって、
所定のタイミングで前記識別符号付与処理を開始し、前記識別符号付与処理において、複数の下位機器のうち、並び順で上位に位置する下位機器から順に、電源を供給した後に前記識別符号を付与して記憶させる、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1の通信システムであって、
前記識別符号付与処理にて、
前記最上位機器が、複数の下位機器のうち、最も上位に位置する下位機器に対して電源を供給する工程を実行し、
前記下位機器が、電源の供給を開始された後、初めに受信した識別符号を自己のものとして記憶する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項2の通信システムであって、
前記識別符号付与処理にて、
前記下位機器が、識別符号を記憶した後、記憶完了信号を上位側に向けて発信する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3の通信システムであって、
前記識別符号付与処理にて、
前記下位機器が、前記記憶完了信号を発信した後、自己に対して下流側で隣り合う下位機器に対して電源を供給する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行う通信システムを備えるロボットであって、
前記通信システムが、請求項1乃至4の何れか1項に記載の通信システムである、
ことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、及びこれを備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備える通信システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の通信システムとしてのインターホンシステムは、最上位機器たる親機と、下位機器たる複数の副親機とを備え、複数の副親機のそれぞれに対して互いに異なる固有のID番号を所定の規則に従って付与して記憶させる処理を実行する。この処理の具体的内容は、次の通りである。即ち、複数の副親機のそれぞれは、互いに固有の仮ID番号を記憶しており、親機に対してその仮ID番号の信号を送信する。仮ID番号の信号を受信した親機は、副親機から送信された仮ID番号の信号を受信すると、所定の規則に従ってその副親機に対して識別符号としてのID番号を付与し、仮IDと関連付けた信号としてその副親機に送信する。ID番号及び仮ID番号を受信した副親機は、その仮ID番号が自らの仮ID番号である場合に、ID番号を記憶する。
【0004】
特許文献1によれば、かかる構成のインターホンシステムにおいては、複数の副親機のそれぞれに対して固有のID番号を自動で付与することで、施工性を向上させることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このインターホンシステムでは、製造工場から出荷される全ての副親機のそれぞれに、製造シリアル番号などの複雑な仮ID番号を記憶させておく工程を施すことで、生産性を低下させてしまうという課題がある。加えて、複数の副親機のそれぞれが、仮ID番号を親機に対して同時に発信すると、混信によるエラーが生じて、ID番号付与処理を正常に実行することができなくなるという課題もある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような通信システム、及びこれを備えるロボットを提供することである。即ち、複数の下位機器のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく固有の識別符号を付与し、且つ識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することができる通信システム等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器とを備え、複数の下位機器のそれぞれに対して互いに異なる固有の識別符号を所定の規則に従って付与して記憶させる識別符号付与処理を実行する通信システムであって、
所定のタイミングで前記識別符号付与処理を開始し、前記識別符号付与処理において、複数の下位機器のうち、並び順で上位に位置する下位機器から順に、電源を供給した後に前記識別符号を付与して記憶させる、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の下位機器のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく固有の識別符号を付与し、且つ識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るロボットの構成を示す図である。
【
図2】同ロボットに搭載される制御システム、監視用信号生成部、各駆動部、及び5つのA/D変換器を示す電気ブロック図である。
【
図3】同ロボットの制御システムにおける主制御部、第1下位制御部、第2下位制御部、第3下位制御部、第4下位制御部、及び第5下位制御部を示す電気ブロック図である。
【
図4】同制御システムによって実施される起動直後処理の各工程を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施例に係るロボットの制御システムによって実行される識別符号付与処理における主制御部による処理フローと、下位制御部による処理フローとを示すフローチャートである。
【
図6】第2実施例に係るロボットの制御システムによって実行される識別符号付与処理における主制御部による処理フローと、下位制御部による処理フローとを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る通信システムを搭載したロボットの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造、並びに、各構造における縮尺及び数、などを異ならせる場合がある。
【0012】
まず、実施形態に係るロボットの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るロボット1の構成を示す図である。このロボット1においては、本体部(基体)10に対して複数のアームが組み合わされて装着され、各アームの動きが制御されることによって所望の動作が行われる。共通アーム11は、本体部10の上に装着される。アーム14、及びアーム15のそれぞれは、共通アーム11に対して連結アーム12、連結アーム13を介して装着される。
【0013】
本体部10に保持される共通アーム11は、回動軸A1を中心にして回転駆動される。連結アーム12に保持されるアーム14は、回転軸A2を中心にして回転駆動される。連結アーム13に保持されるアーム15は、回動軸A3を中心にして回転駆動される。
【0014】
本体部10には、共通アーム11を駆動するための機械的機構が設けられる。回動軸A1は、ロボット1における全体の軸となる。これにより、アーム14、アーム15を含む共通アーム11に接続される全ての構成要素が駆動されるため、特に共通アーム11の駆動時の負荷は大きくなる。この負荷に耐え得るように、第1駆動部21、第2駆動部22が設けられている。共通アーム11の回動軸A1を中心とする駆動は、第1駆動部21による回動軸A11の駆動と、第2駆動部22による回動軸A12の駆動とによって行われる。回動軸A11の駆動、及び回動軸A12の駆動は、第3駆動部23によって回動軸A1の駆動に変換される。即ち、回動軸A1の駆動は、直接的には第3駆動部23によって行われる。
【0015】
連結アーム12は、第4駆動部24を保持する。第4駆動部24は、アーム14を駆動するための機械的機構を具備する。また、連結アーム13は、第5駆動部25を保持する。第5駆動部25は、アーム15を駆動するための機械的機構を具備する。第4駆動部24、第5駆動部25のそれぞれは、モータ、ギヤ、軸受等を具備する。第1駆動部21、第2駆動部22のそれぞれも、モータ、ギヤ、軸受等を具備する。第3駆動部23は、回動軸A11、回動軸A12のそれぞれの駆動を、回動軸A1の駆動に変換するためのギヤ、軸受等を具備する。
【0016】
ロボット1は、第1駆動部21、第2駆動部22、第3駆動部23、第4駆動部、第5駆動部25のそれぞれの駆動により、共通アーム11、アーム14、アーム15の動きを制御するための制御システム70を具備する。通信システムとしての制御システム70は、CPU等を具備する。
図1に示される例では、制御システム70が本体部(基体)10内に配置されるが、ロボット1とは別体で、例えばロボット1から離間した位置に配置されてもよい。
【0017】
ロボット1の稼働に伴って、摩耗や経年劣化等が発生するのは、主に第1駆動部21、第2駆動部22、第3駆動部23、第4駆動部24、及び第5駆動部25である。ロボット1は、それら駆動部における故障の予知に役立つ所定の特性を個別に検知する5つのセンサ30を具備する。それぞれのセンサ30は、例えば駆動部に発生した振動を検知するための加速度センサ等からなる。センサ30は、駆動部において振動を検知する部分に固定される。センサ30の大きさ、重量は、前述の部分に比べて無視できる程度の値になっているため、センサ30によって検知された振動(加速度)は、前述の部分に加わった加速度に相関する値になる。センサ30からは、振動の大きさに応じた値の直流電圧がアナログ信号として出力される。
【0018】
図2は、ロボット1に搭載される制御システム70、監視用信号生成部40、各駆動部(21~25)、及び5つのA/D変換器31を示す電気ブロック図である。同図においては、破線の領域内がロボット1の内部に相当する。
【0019】
制御システム70は、最上位機器たる主制御部50と、下位機器たる第1下位制御部71と、下位機器たる第2下位制御部72と、下位機器たる第3下位制御部73と、下位機器たる第4下位制御部74と、下位機器たる第5下位制御部75とを備える。以下、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を、まとめて各下位制御部という。
【0020】
主制御部50と、各下位制御部とは、ケーブルC1~C5によって互いデイジーチェーン接続されて通信を行う。主制御部50は、主制御部50及び各下位制御部のうち、並び順で最上位に位置する最上位機器である。以下、各下位制御部のそれぞれの位置関係について、より主制御部50に近い方の位置を上位、より主制御部50から遠い方の位置を下位という。各下位制御部においては、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、第5下位制御部75という順で、上位に位置する。
【0021】
ロボット1は、5つのA/D変換器31を具備する。それぞれのA/D変換器31は、互いに異なる下位制御部(71~75)に接続される。第1駆動部21のセンサ30から出力されたアナログ信号G1は、A/D変換器31を経由することで振動の大きさを示すデジタル信号からなる振動信号S1に変換された後、第1下位制御部71に入力される。第2駆動部22のセンサ30から出力されたアナログ信号G2は、A/D変換器31を経由することで振動信号S2に変換された後、第2下位制御部72に入力される。第3駆動部23のセンサ30から出力されたアナログ信号G3は、A/D変換器31を経由することで振動信号S3に変換された後、第3下位制御部73に入力される。第4駆動部24のセンサ30から出力されたアナログ信号G4は、A/D変換器31を経由することで振動信号S4に変換された後、第4下位制御部74に入力される。第5駆動部25のセンサ30から出力されたアナログ信号G5は、A/D変換器31を経由することで振動信号S5に変換された後、第5下位制御部75に入力される。
【0022】
センサ30とA/D変換器31との間の電気接続には、例えばノイズの混入を抑制しやすい同軸ケーブルを用いることができる。A/D変換器31を対応するセンサ30の近傍に設置すれば、同軸ケーブルの長さをロボット1の全長と比較して無視できる程度の長さに留めることが可能になる。
【0023】
第5下位制御部75は、第4下位制御部74、第3下位制御部73、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S5を主制御部50に送信する。第4下位制御部74は、第3下位制御部73、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S4を主制御部50に送信する。第3下位制御部73は、第2下位制御部72、及び第1下位制御部71を介して、振動信号S3を主制御部50に送信する。第2下位制御部72は、第1下位制御部71を介して、振動信号S2を主制御部50に送信する。第1下位制御部71は、振動信号S1を主制御部50に送信する。主制御部50は、各振動信号(S1~S5)を、監視用信号生成部40に送信する。監視用信号生成部40は、各振動信号(S1~S5)を時系列的に分割してシリアルデータに変換し、監視用信号S0としてロボット1の外部に出力する。
【0024】
監視装置100は、ロボット1側のコネクタCN1(CN11、CN12)と、単一の外部ケーブル線Cと、監視装置100側のコネクタCN2(CN21、CN22)とを介して、監視用信号S0を受信する。監視装置100は、前述の受信によってそれぞれのセンサ30からの出力値を認識して記憶することが可能である。
【0025】
図3は、制御システム70の主制御部50、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を示す電気ブロック図である。主制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、下位電源スイッチ52、通信ドライバ53、下位電源54等を具備する。下位電源54は、各下位制御部に供給するための電源を出力するものであり、下位電源スイッチ52に接続されている。下位電源スイッチ52は、第1下位制御部71に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU51から出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU51は、通電命令信号を下位電源スイッチ52に出力することで、下位電源スイッチ52を「入」の状態にして、第1下位制御部71に電源を供給することが可能である。また、主制御部50のCPU51は、通信ドライバ53と、ケーブル(
図2のC1)と、後述の第1下位制御部71の上位側通信ドライバ71cとを介して、第1下位制御部71のCPU71aと通信することが可能である。
【0026】
第1下位制御部71は、CPU71a、下位電源スイッチ71b、上位側通信ドライバ71c、下位側通信ドライバ71d等を具備する。下位電源スイッチ71bは、第2下位制御部72に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU71aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU71aは、通電命令信号を下位電源スイッチ71bに出力することで、下位電源スイッチ71bを「入」の状態にして、第2下位制御部72に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71を介して、第1駆動部(
図2の21)の駆動を制御する。また、第1下位制御部71のCPU71aは、下位側通信ドライバ71dと、ケーブル(
図2のC2)と、後述の第2下位制御部72の上位側通信ドライバ72cとを介して、第2下位制御部72のCPU72aと通信することが可能である。
【0027】
第2下位制御部72は、CPU72a、下位電源スイッチ72b、上位側通信ドライバ72c、下位側通信ドライバ72d等を具備する。下位電源スイッチ72bは、第3下位制御部73に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU72aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU72aは、通電命令信号を下位電源スイッチ72bに出力することで、下位電源スイッチ72bを「入」の状態にして、第3下位制御部73に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71及び第2下位制御部72を介して、第2駆動部(
図2の22)の駆動を制御する。また、第2下位制御部72のCPU72aは、下位側通信ドライバ72dと、ケーブル(
図2のC3)と、後述の第3下位制御部73の上位側通信ドライバ73cとを介して、第3下位制御部73のCPU73aと通信することが可能である。
【0028】
第3下位制御部73は、CPU73a、下位電源スイッチ73b、上位側通信ドライバ73c、下位側通信ドライバ73d等を具備する。下位電源スイッチ73bは、第4下位制御部74に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU73aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU73aは、通電命令信号を下位電源スイッチ73bに出力することで、下位電源スイッチ73bを「入」の状態にして、第4下位制御部74に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、及び第3下位制御部73を介して、第3駆動部(
図2の23)の駆動を制御する。また、第3下位制御部73のCPU73aは、下位側通信ドライバ73dと、ケーブル(
図2のC4)と、後述の第4下位制御部74の上位側通信ドライバ74cとを介して、第4下位制御部74のCPU74aと通信することが可能である。
【0029】
第4下位制御部74は、CPU74a、下位電源スイッチ74b、上位側通信ドライバ74c、下位側通信ドライバ74d等を具備する。下位電源スイッチ74bは、第5下位制御部75に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU74aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU74aは、通電命令信号を下位電源スイッチ74bに出力することで、下位電源スイッチ74bを「入」の状態にして、第5下位制御部75に電源を供給することが可能である。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、及び第4下位制御部74を介して、第4駆動部(
図2の24)の駆動を制御する。また、第4下位制御部74のCPU74aは、下位側通信ドライバ74dと、ケーブル(
図2のC4)と、後述の第5下位制御部75の上位側通信ドライバ75cとを介して、第5下位制御部75のCPU75aと通信することが可能である。
【0030】
第5下位制御部75は、CPU75a、下位電源スイッチ75b、上位側通信ドライバ75c、下位側通信ドライバ75d等を具備する。下位電源スイッチ75bは、第5下位制御部75よりも下位にある下位制御部に対する電源供給を入切するためのスイッチであり、CPU75aから出力される通電命令信号を受信していないときには、「切」の状態になる。CPU75aは、通電命令信号を下位電源スイッチ75bに出力することで、下位電源スイッチ75bを「入」の状態にして、第5下位制御部75よりも下位にある下位制御部に電源を供給することが可能である。但し、図示の例では、第5下位制御部75よりも下位に下位制御部が配置されていない。主制御部50は、第1下位制御部71、第2下位制御部72、第3下位制御部73、第4下位制御部74、及び第5下位制御部75を介して、第5駆動部(
図2の25)の駆動を制御する。
【0031】
次に、実施形態に係るロボット1の特徴的な構成について説明する。
図4は、通信システムとしての制御システム70によって実施される起動直後処理の各工程を示すフローチャートである。この起動直後処理は、制御システム70の主制御部50に対する電源供給が開始された直後に実施される。
【0032】
制御システム70は、起動直後処理を開始すると、識別符号付与処理を実行した後、起動直後処理を終了する。つまり、制御システム70は、所定のタイミングとして、主制御部50に対する電源供給が開始されたタイミングをトリガーにして、識別符号付与処理を実行する。
【0033】
識別符号付与処理において、制御システム70は、複数の下位制御部(71~75)のうち、並び順で上位に位置する下位制御部から順に、電源を供給した後に識別符号を付与して記憶させる。識別符号は、大文字アルファベット、小文字アルファベット、及び数字のうち、少なくとも1種類を複数並べたものである。識別符号には、スラッシュ、ハイフンなどを含めてもよい。識別符号は、下2桁の数字を初期値のゼロから順に「1」ずつ加算していくなど、所定の規則に従って付与される。
【0034】
ロボット1においては、上述のように、並び順で上位に位置する下位制御部から順に、電源の供給と識別符号の付与とが行われる。かかる構成において、下位制御部(71~75)は、電源供給を受けた直後に受信した識別符号を自己のものであると判定することが可能である。このため、下位制御部(71~75)に対し、仮ID番号と識別符号との組み合わせを受信させなくても、単独で受信させた識別符号について、自己のものであるか否かを判定させることが可能である。加えて、複数の下位制御部(71~75)のそれぞれが、仮ID番号を主制御部50に対して同時に発信することがない。従って、複数の下位制御部(71~75)のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく固有の識別符号を付与し、且つ識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することができる。
【0035】
なお、所定のタイミングとして、主制御部50に対する電源供給が開始されたタイミングを採用した例について説明したが、主制御部50に設けられた付与開始ボタンが押下されたタイミングなど、他のタイミングを採用してもよい。
【0036】
次に、実施形態に係るロボット1に、より特徴的な構成を付加した各実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るロボット1の構成は、実施形態と同様である。
【0037】
〔第1実施例〕
図5は、第1実施例に係るロボット1の制御システム70によって実行される識別符号付与処理における主制御部50による処理フローと、下位制御部(71~75)による処理フローとを示すフローチャートである。
【0038】
識別符号付与処理においては、まず、主制御部50が、自己の下位電源スイッチ(
図3の52)をオン(入)にする(ステップ1:以下、ステップをsと記す)。これにより、第1下位制御部(
図3の71)に電源が供給される。次に、主制御部50は、識別符号を所定の規則に従って更新した後、更新後の識別符号を下位側に発信する(s2)。この識別符号は、初回の発行時には、第1下位制御部(
図3の71)のためのものであり、2回目、3回目、4回目、5回目の発行時には、第2、第3、第4、第5下位制御部(72、73、74、75)のためのものである。また、識別符号を更新するための所定の規則としては、例えば、識別符号の下3桁が数字になっており、その3桁の数字がデフォルトの「000」から順に、1ずつ加算されていく規則が挙げられる。
【0039】
電源が供給された下位制御部(例えば主制御部50の下位電源スイッチがONされた場合には第1下位制御部71)は、主制御部50から発信された識別符号を受信すると(s5にてY)、その識別符号を自己の記憶回路に記憶した後(s6)、記憶完了信号を発信する(s7)。この記憶完了信号は、下位制御部に付された識別符号と組み合わせて発信される。
【0040】
主制御部50は、下位制御部から発信された記憶完了信号を受信すると(s3にてY)、処理フローを上述のs2にループさせて、識別符号を新たに更新及び発信する。これにより、例えば、直前において第1下位制御部71だけに識別符号が付与されていた場合には、新たに第2下位制御部72のための識別符号が発信される。
【0041】
一方、識別符号の記憶完了信号を発信した下位制御部は(s7)、自己の下位電源スイッチをONにする(s8)。これにより、その下位制御部に対して下流側で隣り合う下位制御部に対して新たに電源が供給される。例えば、第1下位制御部71の下位電源スイッチがONされた場合には、新たに第2下位制御部72に対して電源が供給される。電源が供給された直後の下位制御部は、上述のs5~s8の工程を実行することで、自己のために発行された識別符号を記憶して記憶完了信号を発信する。
【0042】
一方、主制御部50は、識別符号を発信したにもかかわらず(s2)、下位制御部から発信される記憶完了信号を受信しない場合には(s3にてN)、全ての下位制御部に対して識別符号を付与した状態であるとして、終了信号を発信して一連の工程を終了する(s4)。この終了信号を受信した下位制御部も(s9にてY)、一連の工程を終了する。
【0043】
図5に示されるs5~s9の工程は、全ての下位制御部(71~75)に共通するものである。それぞれの下位制御部は、電源供給直後に受信した識別符号を自己のものであると判定して記憶する(s5にてY、S6)。その後、自己よりも下位側の下位制御部に対しても識別符号が発信されるが、このとき、既に識別符号を記憶済みの下位制御部は、終了信号の受信を待機している状態であるので、その識別符号を自己のものであるとして誤って記憶することはない。
【0044】
〔第2実施例〕
第2実施例に係るロボット1においては、主制御部(
図3の50)が全ての下位制御部に対してそれぞれ固有の識別符号を付与するのではなく、主制御部によって識別符号が付与されるのは、第1下位制御部(
図3の71)だけになっている。その他の下位制御部については、それぞれ1つ上位に位置する下位制御部によって識別符号が付与される。
【0045】
図6は、第2実施例に係るロボット1の制御システム70によって実行される識別符号付与処理における主制御部50による処理フローと、下位制御部による処理フローとを示すフローチャートである。
【0046】
第2実施例に係るロボット1における識別符号付与処理では、まず、主制御部(
図3の50)が、自己の下位電源スイッチ(
図3の52)をオン(入)にした後(s1)、所定の識別符号を下位側に発信する(s2)。この識別符号は、第1下位制御部71のための専用の識別符号である。その後、主制御部50は、下位側から送られてくる記憶完了信号の受信を待機する(s3)。
【0047】
一方、下位制御部は、電源供給を受けた直後に、識別符号を受信すると(s5にてY)、その識別符号を自己のものであるとして自己の記憶回路に記憶する(s6)。次に、下位制御部は、記憶完了信号を発信した後(s7)、下位電源スイッチをONにして、自己に対して下流側で隣り合っている下位制御部に対して電源を供給する(s8)。更に、下位制御部は、自己の一時送信スイッチをONにする(s9)。この一時送信スイッチは、自己の送信端子Txと受信端子Rxとを短絡、接断するためのスイッチであり、ONによって送信端子Txと受信端子Rxとが短絡される。この状態で、下位制御部は、自己の識別符号に基づいて、新たな識別符号を所定の規則に従って発行して発信する(s10)。例えば、自己の識別符号の末尾3桁の数値に対して「1」を加算したものを新たな識別符号として発信する。発信された識別符号は、受信用のラインを介して下位側の下位制御部に向けて送られる。
【0048】
識別符号を発信した下位制御部は、一時送信スイッチをOFFにした後、終了信号の受信を待機する(S12)。一方、主制御部50は、所定の時間が経過しても記憶完了信号を受信しない場合に(s3にてN)、全ての下位制御部に対して識別符号を付与した状態であるとして、終了信号を発信して一連の工程を終了する(s4)。この終了信号を受信した下位制御部も(s12にてY)、一連の工程を終了する。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態及び各実施例について説明したが、本発明は、実施形態及び各実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。実施形態及び各実施例は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
本発明は、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
〔第1態様〕
第1態様は、ケーブル(例えばケーブルC1~C5)によって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行い、複数の機器のうち、並び順で最上位に位置する機器である最上位機器(例えば主制御部50)と、並び順で最上位に位置しない機器である複数の下位機器(例えば第1下位制御部71~第5下位制御部75)とを備え、複数の下位機器のそれぞれに対して互いに異なる固有の識別符号を所定の規則に従って付与して記憶させる識別符号付与処理を実行する通信システム(例えば制御システム70)であって、所定のタイミングで前記識別符号付与処理を開始し、前記識別符号付与処理において、複数の下位機器のうち、並び順で上位に位置する下位機器から順に、電源を供給した後に前記識別符号を付与して記憶させる、ことを特徴とするものである。
【0051】
第1態様において、複数の下位機器は、電源の供給を受けた後に識別符号を受信した場合に、その識別符号を自己のものであると判定することが可能である。このため、下位機器に対し、仮ID番号と識別符号との組み合わせを受信させなくても、単独で受信させた識別符号について、自己のものであるか否かを判定させることが可能である。加えて、複数の下位機器のそれぞれが、仮ID番号を最上位機器に対して同時に発信することがない。従って、複数の下位機器のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく固有の識別符号を付与し、且つ識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することができる。
【0052】
〔第2態様〕
第2態様は、第1態様の構成を備え、前記識別符号付与処理にて、前記最上位機器が、複数の下位機器のうち、最も上位に位置する下位機器に対して電源を供給する工程を実行し(例えば
図5のs1)、前記下位機器が、電源の供給を開始された後、初めに受信した識別符号(例えば
図5のs5にてY)を自己のものとして記憶する(例えば
図5のs6)ことを特徴とする通信システムである。
【0053】
第2態様によれば、複数の下位機器のそれぞれに対し、電源供給後に初めに受信した識別符号を自己のものとして記憶させることで、他の下位機器のために発行された識別符号を誤って自己のものであると記憶させることを防止することができる。
【0054】
〔第3態様〕
第3態様は、第2態様の構成を備え、且つ、前記識別符号付与処理にて、前記下位機器が、識別符号を記憶した後、記憶完了信号を上位側に向けて発信する(例えば
図5のs7)、ことを特徴とする通信システムである。
【0055】
第3態様によれば、複数の下位機器のそれぞれが、記憶完了信号を発信することで、自己の存在を最上位機器に知らせることができる。
【0056】
〔第4態様〕
第4態様は、第3態様の構成を備え、且つ、前記識別符号付与処理にて、前記下位機器が、前記記憶完了信号を発信した後、自己に対して下流側で隣り合う下位機器に対して電源を供給する、ことを特徴とする通信システムである。
【0057】
第4態様によれば、複数の下位機器のそれぞれが、自己の識別符号を記憶した後に、自己に対して下流側で隣り合う下位機器に対して電源を供給することで、その下位機器に対して識別符号の記憶を開始させることができる。
【0058】
〔第5態様〕
第5態様は、ケーブルによって互いにデイジーチェーン接続された複数の機器の間で通信を行う通信システムを備えるロボットであって、前記通信システムが、第1態様~第4態様のうち、何れか1つの通信システムである、ことを特徴とするものである。
【0059】
第5態様によれば、複数の下位機器のそれぞれに複雑な仮ID番号を記憶させることなく固有の識別符号を付与し、且つ識別符号付与処理において混信に起因するエラーの発生を回避することが可能な通信システムを用いて通信を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
50・・・主制御部(最上位機器)、 71・・・第1下位制御部(下位機器)、 72・・・第2下位制御部(下位機器)、 73・・・第3下位制御部(下位機器)、 74・・・第4下位制御部、 75・・・第5下位制御部(下位機器)、 C1~C5・・・ケーブル