(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023139
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】プローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128380
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雄規
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE09
4C601EE11
4C601FF04
4C601GC01
4C601GC04
4C601GC07
(57)【要約】
【課題】 プローブや平坦な体表との間で密着性が高く、測定精度の向上を図ることができる、超音波診断装置用のプローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 ケーシング11とプローブ12とを備える超音波診断装置2における、プローブ12に被せられるプローブカバー体22は、ケーシング11に装着されると共に、ケーシング11に装着された状態でプローブ12を臨む開口31aを有するブラケット23と、ブラケット23に支持されて開口31aを覆う可撓性のカバーフィルム24と、を備え、カバーフィルム24は、厚み寸法が60μm以下10μm以上であり、かつ、幅寸法が15mmで長さ寸法が40mmの試験片における長手方向の50%モジュラス値が10MPa以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシングの所定方向一端部に配置され且つ被検部にて反射された超音波を受信するセンサを有するプローブとを備える超音波診断装置における、前記プローブに被せられるプローブカバー体であって、
前記ケーシングに装着されると共に、前記ケーシングに装着された状態で前記プローブを臨む開口を有するブラケットと、
前記ブラケットに支持されて前記開口を覆う可撓性のカバーフィルムと、を備え、
前記カバーフィルムは、厚み寸法が60μm以下10μm以上であり、かつ、50%モジュラス値が10MPa以下である、
プローブカバー体。
【請求項2】
前記カバーフィルムの50%モジュラス値は、より好ましくは6MPa以下である、請求項1に記載のプローブカバー体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプローブカバー体と、前記超音波診断装置と、を備える、カバー付き超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置のプローブに被せられるプローブカバー体と、該プローブカバーが被せられたカバー付き超音波診断装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内を可視化するための装置として、例えば特許文献1のような超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、超音波を送受信することができるプローブとモニターとがケーシングに収容されている。この超音波診断装置は、可視化したい部分(即ち、被検部)の表皮にプローブを当てて使用され、プローブから超音波が発振される。発振された超音波は被検部で反射され、その反射波をプローブにおいて受信する。超音波診断装置は、受信した反射波に基づいて画像処理を行い、画像処理によって得られた画像、即ち被検部の断面がモニターに映し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の超音波診断装置では、プローブに弾性を有するゲル状のカバーが被せられている。このようなゲル状カバーは厚み寸法が比較的大きく、厚み方向にも可撓性を有するため、プローブとの密着性が良好であるだけでなく、凹凸のある体表との密着性も良好であるという利点がある。一方、平坦な体表を通じて被検部を撮影する場合には、測定中に超音波診断装置を体表に押し当てる力が一定でないとゲル状カバーの厚みが変化し、プローブと被検部との距離が変化してしまう。そのため、測定精度の向上にはいまだに余地がある。
【0005】
そこで本発明は、プローブや平坦な体表との間で密着性が高く、測定精度の向上を図ることができる、超音波診断装置用のプローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプローブカバー体は、ケーシングと、前記ケーシングの所定方向一端部に配置され且つ被検部にて反射された超音波を受信するセンサを有するプローブとを備える超音波診断装置における、前記プローブに被せられるプローブカバー体であって、前記ケーシングに装着されると共に、前記ケーシングに装着された状態で前記プローブを臨む開口を有するブラケットと、前記ブラケットに支持されて前記開口を覆う可撓性のカバーフィルムと、を備え、前記カバーフィルムは、厚み寸法が60μm以下10μm以上であり、かつ、50%モジュラス値が10MPa以下である。
【0007】
このような構成によれば、厚み寸法が60μm以下10μm以上であるため、測定中のカバーフィルムの厚み寸法の可変幅が小さく、測定精度の向上を図ることができる。また、カバーフィルムの50%モジュラス値が10MPa以下であるため、相対的に小さい力で大きく伸長するので、プローブに対する高い密着性を実現することができる。更に、カバーフィルムがプローブに対してシワなどなく密着して被さることで、測定時においては体表に対する密着性も高くなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るプローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置によれば、プローブや平坦な体表との間で密着性が高く、測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るプローブカバー体を超音波診断装置に装着したカバー付き超音波診断装置を示す正面図である。
【
図2】プローブカバー体を超音波診断装置に装着するときの態様を示す正面図である。
【
図4】
図3のプローブカバー体をIV-IV線で切断したときの断面図である。
【
図6】
図3のプローブカバー体の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るプローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するプローブカバー体及びカバー付き超音波診断装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成の追加、削除、変更が可能である。
【0011】
図1に示すカバー付き超音波診断装置1は、皮下にある血管等を可視化しながら針等を穿刺する際に用いられるものであり、例えば透析治療においてカテーテルを血管に留置する際に用いられる。このような機能を有するカバー付き超音波診断装置1は、超音波診断装置2と、これに被せられる超音波診断装置用カバー3とを備えている。以下では、超音波診断装置2、及び超音波診断装置用カバー3の構成の一例について説明する。
【0012】
<超音波診断装置>
超音波診断装置2は、体表に当てられた状態で被検部(即ち、皮下組織)に超音波を発振すると共に被検部にて反射された超音波(即ち、反射波)を受信する。また、超音波診断装置2は、受信した反射波に基づいて画像処理を行い、被検部の断面を映し出すようになっている。このような機能を有する超音波診断装置2は、ケーシング11と、プローブ12と、モニター13とを有している。
【0013】
ケーシング11は、例えばポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、SAS(シリコン・アクリロニトリル・スチレン)樹脂、及びポリプロピレン等の合成樹脂から成り、
図2に示すように、正面視で大略矩形状且つ断面扁平状の箱体である。ケーシング11の下側部分11aは下方に向かって先細りの台形状に形成され、この下側部分11aの下端部(所定方向一端部)である先端部11bにはプローブ12が配置されている。また、ケーシング11は、上下方向の途中部分に湾曲部を有し、この湾曲部を境にして下側部分に対して上側部分が後側に反り返るように湾曲している。更に、ケーシング11の前面11cにはモニター13が配置され、モニター13は画像を映し出すようになっている。
【0014】
プローブ12は、超音波を送受信するように構成されており、センサ12aを有している。センサ12aは、例えば音響レンズ、音響整合層、振動子、及びバッキング材によって構成されている。このように構成されているセンサ12aは、
図2に示すようにケーシング11の下側部分11a内に、センサ12aの下端面とケーシング11の先端部11bとが面一になるようにして収容されている。また、センサ12aは、ケーシング11内に収容されている制御装置(図示せず)に接続され、制御装置からの指令に応じて超音波を発振する。センサ12aは、被検部で反射される反射波を受信し、受信した超音波に応じた信号を制御装置に出力する。即ち、センサ12aの振動子が被検部で反射される反射波によって振動して、その振動に応じた信号を制御装置に出力する。制御装置は、画像処理機能を有しており、受信した信号に基づいて画像処理を行って画像データをモニター13に出力する。
【0015】
モニター13は画像表示部の一例であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどを採用でき、画像データに応じた画像を表示する。従って、モニター13には、センサ12aで受信した反射波に基づいて作成される画像、例えば被検部の断面を映し出せるようになっている。このモニター13は、前述の通りケーシング11の前面11cに配置され、より詳細にはケーシング11において湾曲部より上側部分の前面11cに配置されている。
【0016】
このような超音波診断装置2は、被検部の体表上においてプローブ12を走査するようにして使用される。そのため、超音波診断装置2に関して滅菌処理を行わない場合には、超音波診断装置2に超音波診断装置用カバー3が被せられる。
【0017】
<超音波診断装置用カバー>
超音波診断装置用カバー3は、超音波診断装置2に血液等が付着しないようにするべく、超音波診断装置2全体を覆っている。このような超音波診断装置用カバー3は、筒状体21とプローブカバー体22とを備えており、プローブカバー体22は更にガイド付きブラケット(ブラケット)23とカバーフィルム24とを有している。
【0018】
筒状体21は、滅菌処理が施された無菌の軟質体であり、低弾性のフィルムで構成されている。筒状体21は断面が扁平状であり、下側部分21aが下方へ向かって先細りの台形状に形成され、上側部分21bは上方へ向かって広がる台形状に形成されている。筒状体21は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリ塩化ビニル等の材料から成る透明性が高い軟質体である。このように筒状体21は軟質体であるため、超音波診断装置2を内部に収容しやすく、また、透明性が高いため、内部に収容された超音波診断装置2のモニター13を外部から視認しやすくなっている。
【0019】
このような筒状体21は、
図2に示すようにその上側部分21bが折り畳まれた状態で超音波診断装置2が挿入される。これにより、挿入時に超音波診断装置2が筒状体21の外面に接触して当該外面が汚染されるのを防止できる。また、挿入後においても、超音波診断装置2が筒状体21の外面に接触することなく、上側部分21bの開口を閉止することができる。
【0020】
プローブカバー体22が有するガイド付きブラケット23は、ブラケット本体31とガイド部32とを有している。ブラケット本体31は、比較的硬質の材料、例えばポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、SAS(シリコン・アクリロニトリル・スチレン)樹脂、及びポリプロピレン等の合成樹脂から成る。ブラケット本体31は、
図1に示すように正面視で大略板状に形成され、また
図3に示すように平面視では左右横長の偏平状且つ環状に形成されている。なお、
図3では説明の便宜上、ガイド部32を図示していない。後述する
図5についても同様である。
【0021】
ブラケット本体31は開口31aを有し、この開口31aを規定する内周面31bは、
図4に示すように、下方へ向かうに従って開口径が小さくなるようにテーパ状に形成されている。また、開口31aは、ケーシング11の下側部分11aの水平断面形状と同じく左右横長であり、開口31aには先細り形状となっているこの下側部分11aのうち先端側の一部(先端部11bを含む)が挿通できるようになっている。上述した内周面31bは、ブラケット本体31にケーシング11の下側部分11aを挿通した状態で、下側部分11aの外周面とほぼ平行を成す(正対する)形状となっている。このように、ブラケット本体31にケーシング11の下側部分11aが挿通された状態を保持すべく、ブラケット本体31には一対の係止片33が設けられている。
【0022】
一対の係止片33は、
図4及び
図5に示すように上下方向に延びる板状の部材であり、ブラケット本体31の上面に一体的に夫々設けられている。一対の係止片33は、その主面を互いに対向させるように左右に離して配置されている。また、一対の係止片33は、ケーシング11の下側部分11aの側面形状に合わせて上方に向かって互いに離れるように外側に傾斜するように延在しており、それらの間にケーシング11の下側部分11aが入れられるようになっている。一対の係止片33の各々の主面には係止孔33aが形成されており、これら係止孔33aに対応して、ケーシング11の下側部分の左右の側面には嵌合凸部11d(
図2参照)が形成されている。従って、ブラケット本体31にケーシング11を所定位置まで挿通させると、各嵌合突起11dに各係止孔33aが嵌合する。これにより、ブラケット本体31はケーシング11に保持され固定される。このとき、ケーシング11の下側部分11aは、ブラケット本体31の下面から所定寸法だけ下方へ突出する。
【0023】
このようなブラケット本体31は、
図1及び
図2に示すように、筒状体21の下側部分21aの下端開口部21cに設けられている。より詳しくは、筒状体21の下端開口21cの内周面は、ブラケット本体31の外周面に溶着されることにより、全周にわたって液密的に接続されている。更に、このブラケット本体31にはカバーフィルム24が支持され、カバーフィルム24により開口31aが覆われている。
【0024】
カバーフィルム24は、平面視で横長の大略矩形状を成し、ブラケット本体31の開口31aより若干大きい寸法を有すると共に、可撓性を有している(カバーフィルム24については更に後記する)。ブラケット本体31は、このようなカバーフィルム24を支持するべく、
図6に示すように上下2つの部材、即ち、第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35によって構成されている。
【0025】
第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35は、共に平面視で左右横長の扁平状且つ環状であり、互いに略同形状にて形成されている。また、第1ブラケット部34の上面には、上述した一対の係止片33が形成されており、第1ブラケット部34は、その下面を第2ブラケット部35の上面に突き合わせるようにして第2ブラケット部35に重ね合わせられている。第1ブラケット部35の外周面には、周方向に間隔をあけて複数の係合部が設けられ、各係合部には係合孔34aが形成されている。また、第2ブラケット部35の外周面には、各係合孔34aに対応して複数の係合突起35aが形成されている。従って、第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35が上下に重ね合わされると、係合孔34aに係合突起35aが嵌まり込み、2つのブラケット部34,35は互いに係止される(
図4参照)。
【0026】
第2ブラケット部35の上面には、その内周縁に凹部35bが形成されている。凹部35bは、第2ブラケット部35の内周縁において周方向の全周にわたって形成されており、残余部より下方に凹んでいる。それ故、第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35を重ね合わせたときに、凹部35bは、ブラケット本体31の内周面31bに周方向全周にわたる収容空間31dを形成する。収容空間31dは、内周面31bから外側に凹む空間であり、その中にカバーフィルム24の外周縁を全周にわたって収めることができる。即ち、カバーフィルム24の外周縁を凹部35bに載せ、第2ブラケット部35に第1ブラケット部34を重ねて装着することにより、カバーフィルム24の外周縁が2つのブラケット部34,35によって挟持される。このようにしてカバーフィルム24は、ブラケット本体31に固定され、また固定された状態において開口31aを塞いでいる。その結果、カバーフィルム24は、筒状体21の下側開口部21cを塞ぐようにブラケット本体31を介して筒状体21に設けられている。
【0027】
また、凹部35bには、周方向全周にわたって下側突起部35cが形成されている。下側突起部35cは、凹部35bの形状に合わせて平面視で開口31aを取り囲む環状に形成されており、第1ブラケット部34の下面に向かって上方へ突出している。また、第1ブラケット部34の下面にも、下側突起部35cに対応させて上側突起部34cが形成されている。上側突起部34cは、下側突起部35cの形状に合わせて平面視で環状に形成されており、第2ブラケット部35の上面に向かって下方へ突出している。これら2つの突起部34c、35cは、互いの先端部が実質的に当接するように形成されており、突起部34c,35cの間にカバーフィルム24の外周縁を挟み込み、強固に挟持して保持できるようになっている。
【0028】
ブラケット本体31には、
図1に示すようにガイド部32が設けられている。ガイド部32は、留置針等の針組立体の針41(
図1の二点鎖線参照)を皮下組織に穿刺する際に、その針41を案内して穿刺方向を決定づけるものであり、側面視で大略台形のブロック状に形成されている。ガイド部32は筒状体21の前面側(即ち、筒状体21内に超音波診断装置2を収容した状態におけるモニター13側)に設けられている。このため、超音波診断装置2のモニター13を見ながら穿刺することができる。また、ガイド部32からセンサ12aまでの距離が近いため、穿刺長を短くすることができ、穿刺操作の安定性の向上と患者にかかる負担の低減とを図ることができる。
【0029】
ガイド部32は前傾した前端面32aを有し、この前端面32aには、その左右方向中心部分にガイド孔形成部分32bが形成されている。ガイド孔形成部分32bは、前端面32aからそれに直交する方向に突出し且つ前端面32aに沿って上下方向に延在している。また、ガイド孔形成部分32bの断面(即ち、前端面32aに直交する断面)は大略半円状に形成され、ガイド孔形成部分32bには、その軸線に沿ってガイド孔32cが形成されている。これによりガイド部32には、前斜め上方に延びるガイド孔32cが形成されている。即ち、ガイド孔32cは、ガイド部32を前斜め上方に貫通しており、その上側から針41を入れて下側から針先41aを出すことができる。なお、ガイド孔形成部分32bの前面には、ガイド孔32cの軸線方向に沿って延びる取出し口32dが形成されており、そこから針41を前側に倒して抜くことができる。
【0030】
<装着作業>
超音波診断装置用カバー3は、無菌状態を保つべく図示しない無菌パック等の袋の中に入れられており、使用時にこの無菌パックから取り出される。取り出された超音波診断装置用カバー3は、
図2に示すように筒状体21の上側部分21bが予め折り畳まれており、使用者は、折り畳まれた上側部分21bの谷部分に下方から指を入れて筒状体21を開口させる。この開口に、超音波診断装置2を先端部から挿入する。
【0031】
次に、超音波診断装置2を筒状体21内へ押し込むと、超音波診断装置2の先端がブラケット本体31の開口31aに入り、更にその先端がカバーフィルム24に当接する。この状態から更に超音波診断装置2を押し込むと、カバーフィルム24が超音波診断装置2の先端形状に合わせて伸長し、超音波診断装置2の先端部がブラケット本体31から下方へ突出する。そのまま押し続けていくと、一対の嵌合凸部11dが対応する係止片33に当たって係止孔33aに嵌まり込み、超音波診断装置2がブラケット本体31に装着される(
図1参照)。
【0032】
<カバーフィルム>
ところで、超音波診断装置2による被検部の測定のためには、体表に対するプローブ12の高い密着性が求められる。また、上述したように超音波診断装置2は超音波診断装置用カバー3に収容して使用されるため、カバー3とプローブ12との間においても同様に高い密着性が求められる。更に、使用時の超音波の減衰を抑制して測定精度を高めるために、プローブ12から被検部までの距離は小さい方が好ましい。
【0033】
このような観点から、本実施の形態においてプローブ12を被覆するカバーフィルム24は、その厚み寸法が60μm以下10μm以上であり、且つ、50%モジュラス値が10MPa以下になっている。
【0034】
ここで、カバーフィルム24の厚み寸法が60μm以下10μm以上であることにより、プローブ12から被検部までの距離を小さくでき、測定精度の向上を図ることができる。また、使用時に超音波診断装置2を体表に押し付けた場合であっても、カバーフィルム24の厚みの可変幅が小さいため、測定精度の更なる向上を図ることができる。また、カバーフィルム24の50%モジュラス値が10MPa以下であることにより、相対的に小さい力で大きく伸長するので、プローブ12に対する高い密着性を実現することができる。更に、カバーフィルム24がプローブ12に対してシワなどなく密着して被さることで、測定時においては体表に対する密着性も高くなる。
【0035】
また、カバーフィルム24の50%モジュラス値は、より好ましくは6MPa以下である。これにより、プローブ12の外面形状に追従して好適にフィットし、高い密着性を実現することができる。なお、上記「50%モジュラス値」とは、試験片のフィルムを長手方向に50%引き伸ばす(即ち、元の長さの1.5倍の長さまで引き伸ばす)のに必要な、試験片の単位幅寸法当たりの応力を測定したときの測定値(最大値)である。
【0036】
このようなカバーフィルム24を成すものとして、例えば、株式会社武田産業製のポリオレフィンベースのフィルムである、POLYGRACE NEO(商品名「PG-NEO」)、あるいは、POLYGRACE-V(商品名「PG-V」)(「POLYGRACE\ポリグレイス」は登録商標)を採用することができる。
【0037】
なお、カバーフィルム24の材料はポリオレフィンベースのものに限定されない。上述した厚み寸法及び50%モジュラス値を実現することができるのであれば、他の材料によるフィルムも採用することができる。一方、超音波診断装置2を超音波診断装置用カバー3に装着するときの作業性や、装着時にカバーフィルム24にシワが生じないようにすることを考えると、カバーフィルム24は、その表面のタック性(粘着性)が低い方がより好ましい。この観点から、より具体的にはカバーフィルム24の表面の粘着性は0.02N/25mm以下であることが好ましい。
【0038】
また、以上では筒状体21とカバーフィルム24とを別材料で構成したものを説明したが、両者を同一材料で構成してもよい。更に、カバーフィルム24を、ブラケット本体31に挟持して支持させる構成に限定されず、他の支持態様でもよく、例えばブラケット本体31の外周面あるいは内周面に溶着して接続させてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 カバー付き超音波診断装置
2 超音波診断装置
3 超音波診断装置用カバー
11 ケーシング
12 プローブ
12a センサ
21 筒状体
22 プローブカバー体
23 ガイド付きブラケット
24 カバーフィルム
31 ブラケット本体
31a 開口