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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023143
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】おから混練樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/12 20060101AFI20230209BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B29B9/12
B29B7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128389
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】598036311
【氏名又は名称】相模屋食料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】江原 寛一
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 智香子
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 陽介
(72)【発明者】
【氏名】吉野 功
【テーマコード(参考)】
4F201
【Fターム(参考)】
4F201AA01
4F201AA04
4F201AA11
4F201AA24
4F201AR06
4F201AR12
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BK26
4F201BK40
4F201BL08
4F201BL43
(57)【要約】
【課題】豆腐製造時に副生するおからを乾燥、脱脂処理後に樹脂に混練する場合、樹脂表面で発生する静電気によりおからや樹脂が飛散しやすく、操作性が悪い。また脱脂処理により樹脂との親和性も低下するため、おからの混練量が多くなるほど樹脂と均一に混練するのが困難である。
【解決手段】おからに適度な水分を含有させ、また油分も保持することで混練時や成形時の静電気発生を抑制し、かつ、樹脂との親和性を上げる。これにより、おからと樹脂とを均一性良く混練された、吸湿性に優れた樹脂ペレットを作製できた。このように、相溶化剤などを添加することなく、おからと樹脂とを混練できたことで、本発明が循環型社会における樹脂やおからのリサイクルに十分貢献できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おからと樹脂とを含む混合物を加熱溶融混練し、おからと樹脂との混練物を得る工程と、
前記混練物を冷却する工程と、
を包含する、おから混練樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記混合物に占める前記おからおよび前記樹脂の合計重量割合が80重量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物に占める前記おからおよび前記樹脂の合計重量割合が90重量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートから選択された一種以上を主成分とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記おからが1重量%以上15重量%以下の油分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記おからが1重量%以上20重量%以下の水分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記おから混練樹脂に占めるおからの重量割合が10重量%以上70重量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記加熱溶融混練を、180℃以上230℃以下で行うことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記おから混練樹脂は、おからと樹脂とが剥離しないものである、請求項1~8のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記混練物を1mm以上10mm以下の長さに裁断してペレット状にする工程をさらに包含する、請求項1~9のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法。
【請求項11】
樹脂成型品の製造方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法によって、おから混練樹脂を提供する工程と、
前記おから混練樹脂を加工して、樹脂成型品を得る工程と、
を包含する、製造方法。
【請求項12】
おからと樹脂とを加熱溶融混練したおから混練樹脂であって、前記おから混練樹脂に占める前記おからおよび前記樹脂の合計重量割合が80重量%以上である、おから混練樹脂。
【請求項13】
前記混練樹脂に占める前記おからおよび前記樹脂の合計重量割合が90重量%以上である、請求項12に記載のおから混練樹脂。
【請求項14】
おからと樹脂とが剥離しないものである、請求項12または13に記載のおから混練樹脂。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載のおから混練樹脂の製造方法によって製造された、おから混練樹脂。
【請求項16】
測定温度25℃、相対湿度25%、50%および90%において測定した場合、前記おから混練樹脂1gあたり、それぞれ3.5mg、7.5mgおよび20mg以上の水蒸気吸着量を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のおから混練樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂に、豆腐製造時に発生するおからが混練されたおから混練樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐製造の工程で発生するおからは現状、一部は食品、飼料、肥料といった用途でリサイクルされるものの、その多くは廃棄処分されている。しかし、乾燥したおからは、図1に示すように25℃、相対湿度90%R.H.では自重の20重量%以上の水蒸気を吸湿することが可能である。
【0003】
このため、おからの吸湿性を利用し、特許文献1には乾燥したおからに糊剤を添加して圧縮成形により板状とし、吸湿性の優れたトレーや折箱としてリサイクルする方法が提案されている。
【0004】
また、抗菌性や強度向上といった機能性の付与を目的として、成形時に樹脂に食品バイオマスを混練することが提案されている。例えば、特許文献2には、熱硬化性あるいは熱可塑性樹脂と、おから、ふすま、コーヒー豆のかす、大豆かす、醤油かす、ビールかすといった食品バイオマスとを150℃前後で加熱しながら攪拌混合した後、任意の成形方法で成形する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-192904号
【特許文献2】特開平10-145055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1で示されている乾燥おからに糊剤を添加して圧縮成形する方法では、糊剤によっておからの吸湿性が阻害される懸念がある。また、おからを糊剤のみで接着するため、容易に崩壊しやすい。
【0007】
また特許文献2では樹脂と食品バイオマスの攪拌混合時に150℃前後で加熱するため、食品バイオマスが乾燥する。このため、樹脂と食品バイオマスの攪拌混合物を成形機ホッパーへ投入する際など、食品バイオマスが静電気によって飛散しやすく、取り扱い性が悪いという懸念がある。さらに、食品バイオマスと樹脂とは真比重が異なることも相まって、食品バイオマス混練量が多くなるほど、食品バイオマスと樹脂とが剥離しない状態にまで混練することが困難である。
【0008】
本発明は、上述のような先行技術の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、おからと樹脂とを含む混合物を加熱溶融混練することによるおから混練樹脂の新規製造方法を提供する。本発明はまた、おからと樹脂の合計重量割合が80重量%以上である、おからと樹脂とを加熱溶融混練した新規おから混練樹脂を提供する。代表的な実施形態においては、本発明の製造方法においては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートといった融点が220℃以下の樹脂および、豆腐製造時に発生する大豆の搾りかすであるおからを混合した混合物を180℃以上220℃以下で加熱溶融混練し、おからと樹脂との混練物を得る工程に続いて、混練物を冷却する工程によって、おから混練樹脂を製造する。そのように製造されたおから混練樹脂を、さらに1mm以上10mm以下の長さに裁断する工程によりおから混練樹脂ペレットとしてもよい。
【0010】
なお、おからの熱重量測定(空気雰囲気下、昇温速度10℃/分)を行ったところ、図2に示すように、220℃以上の温度域で急激な重量減少が確認された。このため、おからと樹脂との混練温度が220℃以下であれば、おからの熱分解はほとんど起こらないと考えられる。
【0011】
この時、おから混練樹脂に含有されるおからは1重量%以上20重量%以下の水分と、1重量%以上15重量%以下の油分を含む。また、おから混練樹脂に含有されるおからの重量割合は10重量%以上70重量%以下である。
【0012】
なお、おからと樹脂とを混練する際には図3に模式的に示される混練機を用いる。混練時にはおからに含まれる水分が水蒸気となり、おからと樹脂とが混練されるシリンダー1内の内圧が上昇することが懸念される。このような課題を解決するため、シリンダー1の任意個所に自動排気弁2を設けることにより、シリンダー1内で発生する水蒸気をシリンダー1外に放出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、おからと樹脂とを含む混合物を加熱溶融混練することによるおから混練樹脂の新規製造方法が提供される。本発明によってまた、おからと樹脂の合計重量割合が80重量%以上である、おからと樹脂とを加熱溶融混練した新規おから混練樹脂が提供される。本発明における新規おから混練樹脂は、おからと樹脂とが剥離せず、成形品の製造に適している。本発明における新規おから混練樹脂はまた、おからと樹脂以外の成分を少量しか含まないため、簡便に製造することができる。
【0014】
本発明の製造方法によれば、おからを樹脂に混練する際に、相溶化剤などを添加することなく、おからと樹脂とが剥離しないおから混練樹脂に混練できる。
【0015】
本発明は、食品バイオマスを混練し、成形物中の樹脂割合を低減することで原材料コストを削減できるだけでなく、樹脂使用量を削減できるため、持続可能な社会構築にも貢献できるものであり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】乾燥おからの水蒸気吸着等温線を示す図である。
図2】乾燥したおからの熱重量曲線を示す図である。
図3】おからと樹脂との混練に使用する混練機を模式的に表す図である。
図4】混練工程、空冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
図5】混練工程、冷却ブロック接触方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
図6】混練工程、水冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す図である。
図7】裁断工程で使用したペレタイザーを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、好ましい発明の実施態様の一例を記載するものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の構成要件を限定するものではない。必要に応じて、本明細書において記載される任意の重量割合は、水分を含む重量基準であってもよいし、乾燥重量基準であってもよい。
【0018】
(混練する樹脂やおからの性状)
(樹脂の材質)
おからと混練する樹脂の種類は、融点が220℃以下であるポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートのいずれかであることが好ましい。なお、これらの樹脂は複数種類混合されていても良い。特に溶解パラメーターが近い樹脂(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネート)は混合が容易であるため、好ましい。本発明における複数種類混合された樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とを含む樹脂またはポリプロピレンとポリエチレンとを含む樹脂などが挙げられ得る。複数種類混合された樹脂における各樹脂の重量割合は任意であり得るが、一つの実施形態では、本発明における複数種類混合された樹脂は、ポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とを、またはポリプロピレンとポリエチレンとを、99:1~1:99で含むものであり得る。比較的硬く、衝撃強度が低いポリ乳酸を、柔らかい樹脂であるポリブチレンサクシネートとブレンドして、得られた混練樹脂の生分解性を失わずに衝撃強度を改善することが想定される。一方、融点が220℃を超えるような樹脂の場合には溶融混練中におからの熱分解が顕著となるため適さない(図2参照)。本明細書中で、樹脂が、ある成分を「主成分とする」という場合、樹脂中の当該成分の重量割合が70重量%以上であることをいう。
【0019】
(おからの混練割合)
おからは、大豆から豆腐を製造する過程で、豆乳を絞った際に残る残渣物であり、豆腐製造の過程で大量に発生する。本発明のおから混練樹脂におけるおからの混練割合は以下の式1により算出される。なお、式1中のR、W1およびW2はそれぞれおからの混練割合(重量%)、混練したおからの絶乾重量(kg)および樹脂の絶乾重量(kg)をそれぞれ表す。
【0020】
【数1】
【0021】
また、おから混練樹脂におけるおからの混練割合は、10重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましく、30重量%以上が最も好ましい。おからの混練割合が10重量%未満の場合にはおからが樹脂中に埋没し、混練樹脂ペレットの吸湿性に有意な差が見られない懸念がある。おからの混練割合が増えると樹脂との加熱溶融混練後に樹脂とおからと樹脂とが剥離しやすく、また均一に混練されにくいが、本発明においては、以下に記載される種々の条件を検討した結果、おからが10重量%以上、25重量%以上または、30重量%以上おからが混練されていたとしても、おからと樹脂とが剥離せず、かつ/または成形品の製品化に適した程度の均一性の混練樹脂または混練樹脂ペレットを得ることができた。なお、本明細書中では、おからと樹脂の混合物を加熱溶融混練した後に得られるものを「混練物」といい、混練物を冷却して得られるものを「おから混練樹脂」または「混練樹脂」といい、おから混練樹脂または混練樹脂を裁断してペレット状にしたものを「おから混練樹脂ペレッ」トまたは「混練樹脂ペレット」という。
【0022】
おからの混練割合が70重量%よりも多い場合にはおから混練樹脂からおからが容易に剥落し、また混練樹脂ペレットの強度も低いためおから混練樹脂として実用的な使用が困難である。従って、おから混練樹脂におけるおからの混練割合は、70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは51重量%以下であり得る。本発明のおから混練樹脂におけるおからの混練割合は、上の段落の任意の1つの下限の数値と、本段落に記載の任意の1つの上限の数値との間の数値範囲であり得る。
【0023】
(おからと樹脂の合計重量割合)
本発明は、おからと樹脂との合計重量割合が高いにもかかわらず、おからと樹脂とが剥離しないようなおから混練樹脂およびその製造方法を提供するものである。本発明の製造方法における、加熱溶融混練前のおからと樹脂との混合物におけるおからと樹脂の合計重量割合は、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%である。なお、本明細書中で「おからと樹脂との合計重量割合」という場合、おからおよび樹脂それぞれの絶乾重量に基づいて計算した値であってもよいし、水分を含む重量に基づいて計算した値であってもよいが、代表的には絶乾重量に基づいて計算した値である。加熱溶融混練前のおからと樹脂との混合物におけるおからと樹脂の合計重量割合は、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0024】
本発明のおから混練樹脂におけるおからと樹脂の合計重量割合は、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%である。おから混練樹脂におけるおからと樹脂との合計重量割合は、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0025】
1つの実施形態において、本発明のおから混練樹脂およびその製造方法においては、おからと樹脂とを均一になじませるための糊剤や相溶化剤を使用しない。おからと樹脂とを均一になじませるための一般的な糊剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、またはでんぷんのりが挙げられる。おからと樹脂とを均一になじませるための一般的な相溶化剤としては、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、硫酸セルロースなどの、セルロースエステルが挙げられる。
【0026】
1つの実施形態において、本発明のおから混練樹脂は、おからと樹脂に加えて、追加成分も含み得る。典型的な実施形態において、この追加成分は、強度補強のためのフィラー、難燃剤(トリフェニルホスフェート、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄など)などを含み得る。強度補強のためのフィラーとしては、セルロース(例えば、木材廃材由来)などの有機フィラーや、タルクやセメント系廃材などの無機フィラーが挙げられる。本発明のおから混練樹脂における追加成分の、おから混練樹脂における重量割合は、30重量%以下であり、典型的には20重量%以下である。好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂における追加成分の、おから混練樹脂における重量割合は、10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは0重量%(すなわち、含まれない)である。
【0027】
おから混練樹脂において、樹脂は、一度溶融した後に固化するため、相互に連結したネットワーク構造を形成することで特徴付けられ得る。おから混練樹脂において、おからは、混練前後で形状を維持し得るため、粒子状で存在し得る。おから混練樹脂において、樹脂およびおからは均一に存在することが好ましく、例えば、おから混練樹脂から8mmの立方体を切り出した場合に、任意の立方体におけるおからまたは樹脂の重量割合が、おから混練樹脂全体におけるおからまたは樹脂の重量割合と同様、例えば、5%以内、3%以内または1%以内の差であり得る。
【0028】
本明細書において、おから混練樹脂において、おからと樹脂とが「剥離しない」とは、目視で観察できるおから混練樹脂表面の80%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されないことをいう。好ましい実施形態においては、本発明のおから混練樹脂において、目視で観察できるおから混練樹脂表面の90%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されず、より好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂表面の95%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されない。なお、この剥離痕については、混練樹脂を裁断後に得られるおから混練ペレットにも当てはまる。すなわち、本発明のおから混練樹脂ペレットにおいてはおからと樹脂とが剥離せず、好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂ペレット表面の90%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されず、より好ましい実施形態においては、目視で観察できるおから混練樹脂ペレット表面の95%以上の領域において、おからが樹脂から剥離した剥離痕が観察されない。例えば、剥離痕は、元々存在したおから粒子が剥離により樹脂から脱落したことにより生じ、樹脂に生じた穴や、樹脂に囲まれた空洞であり得る。また、剥離は、混練樹脂におけるおからの保持力の弱さによって特徴付けることもできる。一つの実施形態においては、混練樹脂を切断して新たに形成された断面を下に向けて100rpmの振幅1cmの水平方向の振動に1分間供した場合、断面1mにつき落下するおからの重量が、10g以下、1g以下、0.1g以下、または0.01g以下であるとき、剥離していないと判断することもできる。
【0029】
本発明のおから混練樹脂から得られるおから混練樹脂ペレット(例えば、直径20mmの吐出口から吐出した混練樹脂ロッドをペレタイザーにより4mm間隔で裁断したもの)は、多検体ガス吸着量測定装置(例えば、アントンパール製、Autosorb-iQ2-XR-VP)を用い、測定温度25℃、相対湿度25%、50%および90%において測定した場合、それぞれ混練樹脂ペレット1g当たり3.5mg、7.5mgおよび20mg以上の水蒸気吸着量を有するものであり得る。理論に拘束されることを意図しないが、これは、糊剤などを使用せずに、おからと樹脂のみで混練樹脂ペレットを製造したこと、およびおからの量が実質量存在すること等に起因すると考えられる。
【0030】
(樹脂の形状や大きさ)
おからと混練する樹脂の形状について、樹脂が元々包装フィルムや容器といったフィルムやシート状の場合には細かく裁断して混練機に供する。その際、大きさは0.1mm四方以上10mm四方以下が好ましく、3mm四方以上9mm四方以下がより好ましく、6mm四方以上8mm四方以下が最も好ましい。樹脂の大きさが0.1mm四方より小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また樹脂の大きさが10mm四方より大きい場合には、樹脂とおからの混合物を図3に記載のホッパー3に投入した場合、ホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、おからと樹脂の均一性が低下する懸念があるためである。
【0031】
また、厚みについては0.01mm以上10mm以下が好ましく、0.05mm以上2mm以下がより好ましく、0.09mm以上0.12mm以下が最も好ましい。樹脂の厚みが0.01mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また樹脂の厚みが10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0032】
おからと混練する樹脂の形状が繊維の場合、太さやフィラメント数は特に限定されないが、繊維長は1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、4mm以上6mm以下が最も好ましい。繊維長が1mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また繊維長が10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0033】
おからと混練する樹脂の形状が顆粒状の場合、顆粒の平均粒径は1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、4mm以上6mm以下が最も好ましい。平均粒径が1mmより小さい場合には静電気による飛散が著しく操作性が悪く、また平均粒径が10mmより大きい場合には、樹脂とおからの混合物を図3に記載の混練機ホッパー3に投入する際、おからがスクリュー4に入っていかず、結果的におからとの混合が不十分となり、混練時におからと樹脂の均一性が低下するためである。
【0034】
(おからの大きさ)
豆腐製造の工程で発生するおからは粉粒体の形状となっているが、この時点ではおからの大きさはバラつきがある。そこで、おからをボールミルなどで粉砕し、おからの平均粒径も制御する必要がある。この時、樹脂と混練するおからの平均粒径は10μm以上500μm未満が好ましく、50μm以上250μm未満がより好ましく、70μm以上100μm未満が最も好ましい。ただし、実施例1および2で実証されるように、おからの平均粒径が200μm程度であるなら、混練前の粉砕を省くことも可能である。おからの平均粒径が10μm未満の場合には混合時に飛散しやすくなり、操作性が低下する懸念があり、またおからの平均粒径が500μmよりも大きい場合には樹脂とおからの混合物を図3に記載のホッパー3とスクリュー4との間で樹脂が堆積し、結果的におから混練樹脂におけるおからと樹脂の均一性が低下するためである。なお、本明細書において「平均粒径」という場合、走査電子顕微鏡においてランダムに選択した20個のおから粒子において最長となる径を測定し、それを平均した値である。例えば、おから粒子の径はスケールを基に測定することができる。おからの大きさは、混練樹脂においても維持され得る。
【0035】
(おからに含まれる水分割合)
樹脂やおからが絶乾状態の場合、混練時における摩擦などにより静電気が発生しやすく、樹脂やおからが飛散しやすくなる。このため、おからに適度な水分を含有させることで静電気の発生を防止する。この時、おからの水分率は1重量%以上20重量%未満であることが好ましく、5重量%以上15重量%未満がより好ましく、9重量%以上12重量%未満が最も好ましい。おからの水分率が1重量%未満の場合には混合時に飛散し、混合割合のばらつきが大きくなる懸念があり、またおからの水分率が20重量%よりも大きい場合には加熱時の水分の気化熱によってシリンダー1内部が冷却され、樹脂が十分に溶融しない懸念や、特にエステル結合を有する樹脂の場合には加水分解による分子量低下が顕著となる懸念があるためである。
【0036】
(おからに含まれる油分割合)
おからに含まれる油分は樹脂との相溶性を向上させ、均一な混練に不可欠である。このため、おからに含まれる油分の含有率は1重量%以上20重量%以下が好ましく、7重量%以上15重量%以下がより好ましく、11重量%以上13重量%以下が最も好ましい。おからに含まれる油分の含有率が1重量%未満の場合には樹脂との混練が不均一となり、おから混練樹脂からのおからの剥離が顕著になる懸念があり、またおからに含まれる油分含有率が20重量%より多い場合には、おから混練樹脂より油分がブリードし、混練機などの機械装置の腐食原因となる懸念があるためである。
【0037】
(おから混練樹脂ペレット製造の概要)
本発明におけるおから混練樹脂ペレットの製造方法は、混合した樹脂とおからとを加熱溶融混練し、混練物を製造する工程と、混練物を冷却し、固化する工程(以下、冷却工程)とを含む。代表的な実施形態においては、本発明におけるおから混練樹脂ペレットの製造方法は、樹脂とおからとを任意の割合で混合する工程(以下、混合工程)、混合工程にて混合した樹脂とおからとを混練押出機を用いて溶融混練し、おからと樹脂の混練物を製造する工程(以下、混練工程)、混練機から吐出された混練物を冷却し、固化する工程(以下、冷却工程)、さらに冷却された混練物を裁断し、ペレット状にする工程(以下、裁断工程)よりなる。
【0038】
(混合工程)
混合工程では、樹脂とおからとを任意の割合で混合する。典型的には、樹脂とおからとは、上記のおから混練樹脂におけるおからの混練割合、例えば、30重量%以上70重量%以下となるように混合される。混合の方法は特に限定されず、例えばおからと樹脂とを任意の割合でステンレス製寸胴などの容器内に投入した後、蓋をして手動で上下反転させても良いし、ロータリー式撹拌機を用いて樹脂とおからの混合物を回転しながら攪拌しても良い。この時、おからが適度に水分を含むため、樹脂表面での静電気発生が防止され、飛散しにくくなる。
【0039】
(撹拌容器へのおからおよび樹脂投入量)
おからと樹脂とを混合する際、おからの嵩体積、樹脂の嵩体積および撹拌容器の容積との間には以下の式2を満たすことが好ましい。なお、式2中のV1、V2およびVはそれぞれおからの嵩体積(L)、樹脂の嵩体積(L)および撹拌機の容積(L)をそれぞれ表す。
【0040】
【数2】
【0041】
撹拌容器へのおからおよび樹脂の投入量については、(V1+V2)/Vが0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましく、0.4以上0.5以下であることが最も好ましい。式2の数値が0.1未満の場合には撹拌容器の内壁などに付着する分の損失割合が多くなり、また0.8より大きい場合にはおからと樹脂が撹拌されず、混合が不十分となる懸念がある。実際に、(V1+V2)/Vが0.8を超えて1.0の場合と比較して、(V1+V2)/Vが0.1以上0.8以下に入る場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価(後述の表1を基にした外観評価)および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0042】
(ロータリー撹拌時の撹拌機の回転数)
ロータリー撹拌によっておからと樹脂とを混合する場合、撹拌機の回転数は、おからと樹脂とが適度に撹拌されるものであれば任意の数値であり得るが、1rpm以上30rpm以下が好ましく、5rpm以上20rpmがより好ましく、12rpm以上15rpm以下が最も好ましい。回転数が1rpm未満の場合にはおからと樹脂とが十分に攪拌されない懸念があり、また回転数が30rpmよりも高い場合は混合の程度に大きな違いが見られず技術上の意義が希薄になる。
【0043】
(混練工程)
混合工程で作製されたおからと樹脂の混合物は、加熱溶融混練される。本発明の例示的な実施形態においては、おからと樹脂の混合物は、図3に模式的に示された混練機ホッパー3より導入される。シリンダー1内ではらせん溝を有するスクリュー4が回転しており、溶融した樹脂とおからとが混ざり合った状態で吐出口5より排出される。このとき、おからに含まれる油分により樹脂とおからの相分離を防ぎ、均一に混練されることとなる。通常、樹脂と相溶性の低い食品バイオマスや無機フィラーを混練する場合には相溶化剤などを添加し、均一性を向上させるが、本発明で用いるおからは油分を含むため相溶化剤を添加しなくても均一な混練が可能となる。
【0044】
(混練温度)
例示的な実施形態では、本発明のおから混練樹脂製造のための混練機のシリンダー1内部にヒーター6が設置されており、温度制御部7で混練温度を任意に制御することが可能である。おからと樹脂を混練する際、混練温度は160℃以上220℃以下が好ましく、170℃以上200℃以下がより好ましく、180℃以上190℃以下が最も好ましい。なお、本明細書中における「混練温度」とは、シリンダー1内で最も高温の箇所の温度をいう。混練温度が160℃未満の場合、樹脂が十分に溶融せず、また混練温度が220℃より高い場合にはおからの熱分解が顕著となり、好ましいおから混練樹脂を得ることができない懸念がある。好ましい実施形態において、混練前の樹脂の分子量と比較して、混練後の樹脂の分子量が増加するように、混練工程を行い得る。
【0045】
(シリンダーの材質)
シリンダー1の材質についても特に限定されないが、スクリューと同様に水分を含んだ樹脂やおからが接触することから、ステンレスやサーメットの材質を用いることが好ましい。この他、クロムメッキなどの表面処理を施すことで耐食性に向上させることも好ましい。
【0046】
(スクリュー回転数)
混練工程において、スクリュー4の回転数は50rpm以上120rpm以下が好ましく、55rpm以上100rpm以下がより好ましく、60rpm以上80rpm以下が最も好ましい。スクリュー4の回転数が10rpm未満の場合には樹脂やおからが熱を受ける時間が長くなり熱分解や加水分解が起こりやすくなる懸念があり、また100rpmよりも大きい場合には樹脂の溶融が不十分となり、おからと混練できない懸念があるためである。実際に、スクリューの回転数を200rpmとした場合に比べて、回転数が50rpm以上120rpm以下の場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0047】
(スクリューの材質)
スクリュー4の材質は特に限定されないが、水分を含んだおからが導入されるため、スクリュー4の材質にステンレスやサーメットを用いることが好ましい。この他、クロムメッキなどの表面処理を施すことで耐食性に向上させることも好ましい。
【0048】
(自動排気弁)
好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂の製造における加熱溶融混練において使用する混練機においては、おからに含まれる水分の蒸発によりシリンダー内の内圧が上昇するのを防ぐため、シリンダーに自動排気弁2を設置する。この時、自動排気弁2は、シリンダー内が0.05MPa.G以上になると自動的に大気中へ水蒸気を放出できるように設定することが好ましい。
【0049】
(吐出口の口径)
吐出口5の形状は特に限定されないが、円形が最も好ましい。また、吐出口5の形状が円形の場合、吐出口5の直径は1mm以上10mm未満が好ましく、2mm以上6mm以下がより好ましく、4mm以上5mm未満が最も好ましい。吐出口5の直径が1mm未満の場合には吐出されたおから混練樹脂8が切断されやすく、また10mmより太い場合には、おから混練樹脂8が切断しやすく、その後の冷却工程や裁断工程の操作性が低下する懸念がある。
【0050】
(冷却工程)
混練工程でロッド状のおから混練樹脂8が吐出口5より吐出される。吐出直後のおから混練樹脂8はペレタイザーへ移送されるが、その前段でおから混練樹脂8を冷却し、固化させる工程(冷却工程)が必要となる。
【0051】
(冷却方法)
冷却工程におけるおから混練樹脂8の冷却方法は、おから混練樹脂8に送風機等を用いてで風を送る方式(以下、空冷方式)、おから混練樹脂8を水中に含浸する方式(以下、水冷方式)、冷却ブロックに接触させる方式(以下、冷却ブロック接触方式)が好ましく、空冷方式、冷却ブロック接触方式がより好ましく、空冷方式が最も好ましい。これは、空冷によりおから混練樹脂8を冷却できるだけでなく、おからに水分が付着しにくいためである。
【0052】
(冷却距離)
冷却工程において、混練機より吐出されたロッド状のおから混練樹脂8を冷却する場合、吐出口5からペレタイザー9までの距離(以下、冷却距離)は1m以上10m以下が好ましく、2m以上6m以下がより好ましく、3m以上5m以下が最も好ましい。冷却距離が1m未満の場合にはおから混練樹脂の冷却が不十分となり、その後の裁断が困難になる懸念があり、また冷却距離が10mより長い場合にはいずれの冷却方法でもおから混練樹脂は十分に固化し、技術上の意義が希薄になるためである。実際に、冷却距離を0.3mとした場合に比べて、冷却距離が1m以上の場合には、得られるおから混練樹脂ペレットの外観評価および水蒸気吸着量のいずれも優れていた(データ示さず)。
【0053】
(空冷方式によるおから混練樹脂の冷却)
図4に混練工程、空冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。空冷方式によりおから混練樹脂8を冷却する場合、おから混練樹脂8は混練機とペレタイザー9との間に設置された送り台10上を移動する。この時、送風機11よりおから混練樹脂8表面に風を送るが、おから混練樹脂8表面への風速は1.5m/s以上10m/s以下が好ましく、3m/s以上7m/s以下がより好ましく、4m/s以上5m/s以下が最も好ましい。おから混練樹脂8表面の風速が1.5m/s未満の場合には混練物の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となり、また10m/sより大きい場合には風圧によりロッド状のおから混練樹脂8が切断する懸念があるためである。
【0054】
(冷却ブロック接触方式によるおから混練樹脂の冷却)
図5に混練工程、冷却ブロック接触方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。冷却ブロック接触方式によりおから混練樹脂8を冷却する場合、冷却ブロック12の温度は-20℃以上10℃以下が好ましく、-5℃以上5℃以下がより好ましく、0℃以上3℃以下が最も好ましい。冷却ブロック12の温度は-20℃未満にしても混練物の冷却程度に違いがなく、技術上の意義が希薄となり、また10℃より高い場合には混練物の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となる懸念があるためである。
【0055】
(水冷方式によるおから混練樹脂の冷却)
図6に混練工程、水冷方式による冷却工程および裁断工程の流れを模式的に示す。水冷方式の場合、おから混練樹脂8は水槽13中を通過することで冷却される。この時、水槽13中の水温は0℃以上10℃以下が好ましく、2℃以上7℃以下がより好ましく、4℃以上6℃以下が最も好ましい。水槽13中の水温が0℃未満の場合には水槽13中の水が氷になり、おから混練樹脂8を浸漬できず、また10℃より高い場合にはおから混練樹脂8の冷却が不十分のため、その後の裁断が困難となる懸念があるためである。なお、水冷方式により冷却した場合には裁断工程後に再度乾燥処理を行い、水分を除去する必要がある。
【0056】
(裁断工程)
冷却されたロッド状のおから混練樹脂8はペレタイザー9を用いた裁断工程で任意の大きさに裁断される。この時、裁断の方法は特に限定されないが、ペレタイザーは回転刃と固定刃でカットするストランドカット方式が実用上好ましい。好ましい実施形態において、本発明のおから混練樹脂、または本発明の製造方法によって製造されたおから混練樹脂は、裁断後にもおからと樹脂とが剥離していない。
【0057】
(おから混練樹脂の裁断間隔)
混練機から送られてきたロッド状のおから混練樹脂8をペレタイザー9にて裁断する際、裁断の間隔は1mm以上10mm以下が好ましく、3mm以上8mm以下がより好ましく、4mm以上5mm以下が最も好ましい。裁断の間隔が1mm未満の場合にはおから混練樹脂8に混練されたおからが剥離しやすく、また10mmより長い場合には吸湿材料として取り扱うには大きすぎる懸念があるためである。
【0058】
(ペレタイザー回転刃および固定刃の材質)
図7にペレタイザー9内の構造を模式的に示す。ペレタイザー9の内部は回転刃14および固定刃15が設置されている。なお、回転刃14および固定刃15の材質については特に限定されないが、おからが油分を含むため、ステンレスやサーメットを用いる、あるいはクロムメッキなどの表面処理を施すといった耐食性に優れた材質を使用することが望ましい。
【0059】
(おから混練樹脂ペレットの回収およびその後の成型)
ペレタイザー9内の回転刃14および固定刃15によりおから混練樹脂8は、裁断され、おから混練樹脂ペレット16がペレタイザーの下部が設置された容器17へ蓄積される。このようにして得られたおから混練樹脂材料ペレットは吸湿性材料としての用途の他、射出成形、押出成形といった成形方法によって任意の形状の成形品に成形することが可能である。本明細書において、混練樹脂または混練樹脂ペレットを材料または材料の一部として使用して加工することで得られる物品を成形品という。
【0060】
以下に、好ましいおから混練樹脂ペレットを得るための実施例を示し、より詳細に説明する。なお、実施例は発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を限定的に解釈するものではない。
【実施例0061】
〔実施例1〕
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、豆腐の包装に用いられる厚み0.1mmのポリプロピレン製フィルムを5mm四方の大きさに裁断したものを使用した。また、豆腐の製造工程で発生するおからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を5重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は13重量%だった。さらにおからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は202μmだった。
【0062】
(混合工程)
本実施例の樹脂とおからとを、おから混練割合が51重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を15rpm、(V1+V2)/Vを0.6として10分間混合工程を行った。
【0063】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は二軸混練機(井元製作所製、IMC-1ADA型)を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ175℃、180℃、180℃および170℃、スクリュー回転数は60rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0064】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速4m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は5mとした。
【0065】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂はペレタイザー(井元製作所製、IMC-1113型)により4mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0066】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行った。なお、外観指標が4以上で「適」と評価した。
【0067】
【表1】
【0068】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて、多検体ガス吸着量測定装置(アントンパール製、Autosorb-iQ2-XR-VP)を用い、測定温度25℃、相対湿度25%、50%および90%における水蒸気吸着量を測定した。また、相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ3.5mg、7.5mgおよび20mgを基準値とし、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量が当該基準値よりも多い場合に吸湿性材料として利用できると判断し、「適」と評価した。
【0069】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0070】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ7.1mg、16.7mgおよび93.3mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0071】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔実施例2〕
【0072】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、実施例1で使用したものと同様のものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を1重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は10重量%だった。さらにおからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は198μmだった。
【0073】
(混合工程)
本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が70重量%となるように20L容量のステンレス製寸胴内に入れて蓋をしたのち、手動で寸胴を10分間上下反転させた。なおこの時、(V1+V2)/Vは0.7とした。
【0074】
(混練工程)
樹脂とおからの混練には実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ215℃、220℃、220℃および210℃、スクリュー回転数は120rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0075】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速1.5m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は1mとした。
【0076】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより1mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0077】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0078】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0079】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は4だった。
【0080】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ8.9mg、21.5mgおよび129.6mgだった。このように水蒸気吸着量は基準値より多かった。
【0081】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔実施例3〕
【0082】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、ポリブチレンサクシネート(PTT MCC Biochem社製、BioPBS FZ71)ペレットを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を20重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は9重量%だった。さらにおからはボールミルにより平均粒径75μmに粉砕したものを使用した。
【0083】
(混合工程)
本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が30重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を1rpm、(V1+V2)/Vを0.8として10分間混合工程を行った。
【0084】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ165℃、170℃、170℃および160℃、スクリュー回転数は50rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0085】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例では、ロッド状のおから混練樹脂を-5℃に冷却した冷却ブロックに接触させることで冷却し、また冷却距離は10mとした。
【0086】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより10mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0087】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0088】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0089】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0090】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ5.2mg、10.4mgおよび40.6mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0091】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、おから混練樹脂として本実施例の総合評価は適であった。
〔実施例4〕
【0092】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、実施例1と同様のものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を4重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は14重量%だった。さらにおからはボールミルにより平均粒径75μmに粉砕したものを使用した。
【0093】
(混合工程)
本実本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が20重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を30rpm、(V1+V2)/Vを0.2として10分間混合工程を行った。
【0094】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ185℃、190℃、190℃および180℃、スクリュー回転数は55rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0095】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速3m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は2mとした。
【0096】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより3mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0097】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0098】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0099】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0100】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ1.9mg、5.9mgおよび18.7mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0101】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔実施例5〕
【0102】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、厚み1mmのポリエチレンフィルムを裁断機により5mm四方に裁断したものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を6重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は6重量%だった。さらにおからの平均粒径は200μmだった。
【0103】
(混合工程)
本実本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が51重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を30rpm、(V1+V2)/Vを0.3として10分間混合工程を行った。
【0104】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ155℃、160℃、160℃および150℃、スクリュー回転数は100rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0105】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例では、ロッド状のおから混練樹脂を0℃に冷却した冷却ブロックに接触させることで冷却し、また冷却距離は6mとした。
【0106】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより8mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0107】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0108】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0109】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0110】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ7.8mg、17.6mgおよび95.4mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0111】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔実施例6〕
【0112】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、厚み1mmのポリエチレンフィルムを裁断機により5mm四方に裁断したものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を6重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は6重量%だった。さらにおからの平均粒径は200μmだった。
【0113】
(混合工程)
本実本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が30重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を30rpm、(V1+V2)/Vを0.3として10分間混合工程を行った。
【0114】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ195℃、200℃、200℃および190℃、スクリュー回転数は80rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0115】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例ではロッド状のおから混練樹脂を水温5℃の水中に含浸することで冷却し、また冷却距離は4mとした。
【0116】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより5mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0117】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0118】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0119】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0120】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ4.9mg、10.6mgおよび42.1mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0121】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔実施例7〕
【0122】
(樹脂とおから)
本実施例における樹脂には、太さ75デニール、フィラメント数30本のポリ乳酸糸(ユニチカ製 テラマック)を長さ5mmに裁断したものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を10重量%としたものを使用した。なお、本実施例で用いたおからの油分含有率は13重量%だった。さらにおからの平均粒径は200μmだった。
【0123】
(混合工程)
本実本実施例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が25重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を20rpm、(V1+V2)/Vを0.7として10分間混合工程を行った。
【0124】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ175℃、180℃、180℃および170℃、スクリュー回転数は60rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0125】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速4m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は4mとした。
【0126】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより4mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0127】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0128】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0129】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は5だった。
【0130】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本実施例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ4.4mg、9.4mgおよび27.9mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より多かった。
【0131】
(総合評価)
以上の結果から、本実施例で得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合したため、その総合評価は適であった。
〔比較例1〕
【0132】
(樹脂とおから)
本比較例における樹脂には、実施例1で使用したものと同様のものを使用した。また、おからについては、豆腐の製造工程で生産された直後のものを使用したため、水分率は81重量%だった。なお、本比較例で用いたおからの油分含有率は13重量%だった。さらに本比較例で用いたおからを乾燥後、光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は201μmだった。
【0133】
(混合工程)
本比較例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が30重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を12rpm、(V1+V2)/Vを0.5として10分間混合工程を行った。
【0134】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ175℃、180℃、180℃および170℃、スクリュー回転数は60rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0135】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速4m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は3mとした。
【0136】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより5mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0137】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0138】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法と同様の方法で評価した。
【0139】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は1だった。
【0140】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ0.5mg、0.9mgおよび1.2mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より少なかった。
【0141】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合しないため、おから混練樹脂として本比較例の総合評価は不適であった。これは、おからの水分率が高すぎるために樹脂との混練が不十分となったためと考えられた。なお、本比較例では自動排気弁2が作動することはなかったが、おからの混練割合が多くなるにつれ内圧が高くなる傾向があると推測される。
〔比較例2〕
【0142】
(樹脂とおから)
本比較例における樹脂には、実施例1で使用したものと同様のものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を5重量%としたものを使用した。さらに、本比較例では乾燥後のおからをアセトンに浸漬し、油分含有率を0重量%とした。さらに本比較例で使用したおからを光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は198μmだった。
【0143】
(混合工程)
本比較例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が51重量%となるように混合し、ロータリー撹拌機を用いて回転速度を15rpm、(V1+V2)/Vを0.5として10分間混合工程を行った。
【0144】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ175℃、180℃、180℃および170℃、スクリュー回転数は60rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0145】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速4m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は3mとした。
【0146】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより5mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0147】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0148】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0149】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は1だった。
【0150】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ0.3mg、1.0mgおよび1.4mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より少なかった。
【0151】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合しないため、おから混練樹脂として本比較例の総合評価は不適であった。これは、おからの脱脂処理により油分が除去され、樹脂との親和性が低下したためと考えられた。
〔比較例3〕
【0152】
(樹脂とおから)
本比較例における樹脂には、実施例5で使用したものと同様のものを使用した。また、おからについては、80℃に設定した乾燥機内に設置し、水分率を10重量%としたものを使用した。なお、本比較例で用いたおからの油分含有率は13重量%だった。さらに本比較例で用いたおからを乾燥後、光学顕微鏡により観察したところ、平均粒径は199μmだった。
【0153】
(混合工程)
本比較例の樹脂とおからとを、おからの混練割合が30重量%となるように20L容量のステンレス製寸胴内に入れて蓋をしたのち、手動で寸胴を10分間上下反転させた。なおこの時、(V1+V2)/Vは0.6とした。
【0154】
(混練工程)
樹脂とおからの混練は実施例1と同様の混練機を用いた。本実施例ではヒーター6a、6b、6cおよび6nの設定温度はそれぞれ295℃、300℃、300℃および300℃、スクリュー回転数は60rpmとした。なお、吐出口の直径は20mmとした。
【0155】
(冷却工程)
混練工程において混練機吐出口より出てきたロッド状のおから混練樹脂は冷却工程で冷却し、固化した。本実施例における冷却方法は扇風機を用いた空冷とし、風速5m/sの風をロッド状のおから混練樹脂に吹きあてた。また冷却距離は4mとした。
【0156】
(裁断工程)
冷却工程で固化したロッド状のおから混練樹脂は実施例1と同様のペレタイザーにより4mm間隔で裁断し、おから混練樹脂ペレットを得た。
【0157】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価)
得られたおから混練樹脂ペレットの外観については実施例1と同様に表1に示す5段階評価を基準として評価した。
【0158】
(おから混練樹脂ペレットの吸湿性評価)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットの吸湿性評価は実施例1に記載の方法で評価した。
【0159】
(おから混練樹脂ペレットの外観評価結果)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレットについて外観評価を行ったところ、その評価は2だった。
【0160】
(おから混練樹脂ペレットの水蒸気吸着量)
本比較例で得られたおから混練樹脂ペレット1g当たりの相対湿度25%、50%および90%の時の水蒸気吸着量はそれぞれ3.1mg、5.3mgおよび18.1mgだった。このように水蒸気吸着量は、基準値より少なかった。
【0161】
(総合評価)
以上の結果から、外観評価、水蒸気吸着量いずれも基準に適合しないため、おから混練樹脂として本比較例の総合評価は不適であった。これは、混練温度が高く、おからが熱分解したことで吸湿量の低下や樹脂との親和性の低下が引き起こされたことが原因と考えられた。
【0162】
実施例1~7および比較例1~3で行ったおから混練樹脂ペレット作製条件を表2に、また得られたおから混練樹脂ペレットの外観評価、水蒸気吸着量評価および総合評価を表3にまとめて示した。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】
【0165】
[実施例8]
おからの混練割合を30重量%の他に20重量%としたことを除いて実施例3と同様に、おからとPBSとを混練して、おから混練樹脂を製造した。おから混練樹脂10mgをクロロホルム(関東化学(株)製)10mLに溶解し、メンブランフィルター(PTFE製、0.50um)でろ過したものについて、PBSの分子量を分析した。サンプルの分子量分布測定結果はポリスチレン換算で算出した。
(分析条件)
分析装置:ゲル浸透クロマトグラフ分析装置
(DGU-20A3 / LC-20AD / CBM-20A / SIL-20AHT / CTO-20AC / SPD-M20A / RID-10A / FRC-10A, (株)島津製作所製)
標準物質:Shodex STANDARD
(Type:SM-105, ピークトップ分子量:1150, 2970, 6320, 19500, 45100, 139000, 270000, 730000, 1390000, 2380000, 昭和電工(株)製)
試料導入量:20 uL
移動相:クロロホルム
流量:1 mL / min
カラム:Shodex GPC K-806M(300 mm×8.0 mmI.D.)
カラム温度:40 ℃
検出器:示差屈折率検出器(RID)
結果を以下に示す。
【表4】
【0166】
以上の表2および表3に示した結果から、完全に脱脂せず、また水分を適度に含むおからと樹脂とから、おからと樹脂とが剥離せず、吸湿性を有するおからと樹脂の混練ペレットを作製できることを確認した。このことから、相溶化剤などを添加することがないので、熱分解による弊害をなくした吸湿材料とすることもできる。また、本発明は非常にシンプルであり、循環社会のリサイクル化に十分貢献できるものであり、サステナビリティの高い手法である。
【符号の説明】
【0167】
1 混練機シリンダー
2 自動排気弁
3 ホッパー
4 スクリュー
5 吐出口
6a、6b、6c、6n ヒーター
7 制御部
8 ロッド状のおから混練樹脂
9 ペレタイザー
10 送り台
11 送風機
12 冷却ブロック
13 水槽
14 回転刃
15 固定刃
16 おから混練樹脂ペレット
17 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7