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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023144
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】スリッタの刃物位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/26 20060101AFI20230209BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20230209BHJP
   B26D 1/03 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B26D7/26
B26D1/02 A
B26D1/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128390
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000241186
【氏名又は名称】朋和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 善孝
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021JA01
3C021JA09
3C027BB03
3C027BB04
3C027BB05
3C027BB06
3C027BB09
(57)【要約】
【課題】複数の刃物をそれぞれスリット加工位置に位置決めする時間を短縮することができ、ひいては、準備時間を短縮して生産性を向上することができるスリッタの刃物位置決め装置を提供する。
【解決手段】刃物位置決め装置1は、ベース2と、ベース2上において連続シートの送り方向と直交する第1方向Xに移動可能である移動体3と、移動体3を駆動する駆動部5と、それぞれが刃物10を保持可能であり、それぞれがベース2上において第1方向Xに移動可能である複数の刃物ホルダ6,…と、各刃物ホルダ6に対して設けられ、それぞれが移動体3と刃物ホルダ6とを解除可能に係合する複数の第1係合部8,…と、駆動部5及び複数の第1係合部8,…を制御する制御部とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
ベース上において連続シートの送り方向と直交する第1方向に移動可能である移動体と、
移動体を駆動する駆動部と、
それぞれが刃物を保持可能であり、それぞれがベース上において第1方向に移動可能である複数の刃物ホルダと、
各刃物ホルダに対して設けられ、それぞれが移動体と刃物ホルダとを解除可能に係合する複数の第1係合部と、
駆動部及び複数の第1係合部を制御する制御部とを備える
スリッタの刃物位置決め装置。
【請求項2】
各刃物ホルダに対して設けられ、それぞれがベースと刃物ホルダとを解除可能に係合する複数の第2係合部であって、それぞれが制御部により制御される複数の第2係合部をさらに備える
請求項1に記載のスリッタの刃物位置決め装置。
【請求項3】
制御部は、一の刃物ホルダに対して第1係合部による係合解除の実行に先立って第2係合部による係合が実行されるよう、第1係合部及び第2係合部を制御する
請求項2に記載のスリッタの刃物位置決め装置。
【請求項4】
制御部は、一の刃物ホルダに対して第1係合部による係合の実行の後に第2係合部による係合解除が実行されるよう、第1係合部及び第2係合部を制御する
請求項2又は請求項3に記載のスリッタの刃物位置決め装置。
【請求項5】
一部の刃物ホルダをスリット加工に供するために使用し、残りの刃物ホルダをスリット加工に供しないために使用しない場合において、
制御部は、使用する刃物ホルダに対して第1係合部による係合解除又は係合が実行される際に、隣接する使用しない刃物ホルダに対しても第1係合部による係合解除又は係合が実行されるよう、該当する複数の第1係合部を同期的に制御する
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスリッタの刃物位置決め装置。
【請求項6】
使用する刃物ホルダを任意に設定する設定部をさらに備える
請求項5に記載のスリッタの刃物位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールから繰り出される連続シート(連続フィルム等)を複数の刃物を用いて幅方向に複数に分割するスリッタに搭載され、複数の刃物をそれぞれスリット加工位置に位置決めする刃物位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の刃物位置決め装置として、連続シートの送り方向と直交する第1方向に移動可能な移動体と、それぞれが刃物を保持し、それぞれが第1方向に移動可能な複数の刃物ホルダと、移動体に設けられ、1つの刃物ホルダを解除可能に係合する係合部とを備えるものが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-277986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の刃物位置決め装置は、移動体が往復移動を繰り返して1つ1つ刃物ホルダを定められた位置に搬送する構成となっている。このため、すべての刃物をスリット加工位置に位置決めしてスリット加工を開始できるようになるまでの準備時間が長くなり、生産性が阻害されるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、複数の刃物をそれぞれスリット加工位置に位置決めする時間を短縮することができ、ひいては、準備時間を短縮して生産性を向上することができるスリッタの刃物位置決め装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスリッタの刃物位置決め装置は、
ベースと、
ベース上において連続シートの送り方向と直交する第1方向に移動可能である移動体と、
移動体を駆動する駆動部と、
それぞれが刃物を保持可能であり、それぞれがベース上において第1方向に移動可能である複数の刃物ホルダと、
各刃物ホルダに対して設けられ、それぞれが移動体と刃物ホルダとを解除可能に係合する複数の第1係合部と、
駆動部及び複数の第1係合部を制御する制御部とを備える
スリッタの刃物位置決め装置である。
【0007】
ここで、本発明に係るスリッタの刃物位置決め装置の一態様として、
各刃物ホルダに対して設けられ、それぞれがベースと刃物ホルダとを解除可能に係合する複数の第2係合部であって、それぞれが制御部により制御される複数の第2係合部をさらに備える
との構成を採用することができる。
【0008】
また、この場合、
制御部は、一の刃物ホルダに対して第1係合部による係合解除の実行に先立って第2係合部による係合が実行されるよう、第1係合部及び第2係合部を制御する
との構成を採用することができる。
【0009】
また、この場合、
制御部は、一の刃物ホルダに対して第1係合部による係合の実行の後に第2係合部による係合解除が実行されるよう、第1係合部及び第2係合部を制御する
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係るスリッタの刃物位置決め装置の他態様として、
一部の刃物ホルダをスリット加工に供するために使用し、残りの刃物ホルダをスリット加工に供しないために使用しない場合において、
制御部は、使用する刃物ホルダに対して第1係合部による係合解除又は係合が実行される際に、隣接する使用しない刃物ホルダに対しても第1係合部による係合解除又は係合が実行されるよう、該当する複数の第1係合部を同期的に制御する
との構成を採用することができる。
【0011】
また、この場合、
使用する刃物ホルダを任意に設定する設定部をさらに備える
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の第1係合部が移動体と複数の刃物ホルダとを係合した状態で、移動体が移動することにより、複数の刃物ホルダが同時に搬送される。そして、その途中途中で、該当する第1係合部による係合解除が実行されることにより、該当する刃物ホルダが移動体から切り離され、定められた位置に配置されていく。このように、本発明によれば、移動体が1回の一方向移動をするだけで、複数の刃物をそれぞれスリット加工位置に位置決めしていくことができる。このため、本発明によれば、複数の刃物をそれぞれスリット加工位置に位置決めする時間を短縮することができ、ひいては、準備時間を短縮して生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態に係る刃物位置決め装置であって、各刃物ホルダが初期位置に集合した状態の正面図である。図1(b)は、各刃物ホルダが定められた位置に展開された状態の正面図である。
図2図2(a)は、スリッタが備えるモニタであって、スリット加工条件を設定するための画面である。図2(b)は、スリット加工条件の設定が行われた状態の画面である。
図3図3は、図1(a)の要部の拡大正面図である。
図4図4は、図3のA-A線断面図である。
図5図5は、刃物位置決め装置の要部の拡大斜視図である。
図6図6(a)ないし(c)は、各刃物ホルダが定められた位置に展開されていく状態を示す刃物位置決め装置の動作の説明図である。
図7図7(a)ないし(d)は、図6の続きの説明図である。
図8図8(a)及び(b)は、刃物位置決め装置の第1係合部及び第2係合部の動作のタイミングチャートである。
図9図9(a)ないし(c)は、各刃物ホルダが別の異なるスリット加工条件の設定に基づいて定められた位置に展開された状態の刃物位置決め装置の概略正面図である。
図10図10(a)及び(b)は、連続シートに対する刃物の接刃箇所が変更されていく状態を示す刃物位置決め装置の動作の説明図である。
図11図11(a)ないし(c)は、刃物位置決め装置の別の動作例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るスリッタの刃物位置決め装置の一実施形態として、レザーカット方式のスリッタに搭載される刃物位置決め装置について説明する。なお、スリット加工の対象となる連続シートの送り方向と直交する方向、すなわち、作業者が装置に正対した状態における左右方向を第1方向Xといい、第1方向Xと直交する方向(本実施形態においては、作業者が装置に正対した状態における上下方向に対して前側に傾いた方向)を第2方向Yといい、作業者が装置に正対した状態における前後方向を第3方向Zという。
【0015】
図1に示すように、刃物位置決め装置1は、ベース2と、移動体3と、駆動部5と、複数の刃物ホルダ6,…と、複数の第1係合部8,…と、複数の第2係合部9,…と、制御部とを備える。ベース2は、スリッタ(図示しない)のフレームに取り付けられる。移動体3は、ベース2上において直動機構4を介して第1方向Xに移動可能である。駆動部5は、移動体3を駆動する。複数の刃物ホルダ6,…は、それぞれが刃物10を保持可能であり、それぞれがベース2上において直動機構7を介して第1方向Xに移動可能である。複数の第1係合部8,…は、各刃物ホルダ6に対して設けられ、それぞれが移動体3と刃物ホルダ6とを解除可能に係合する。複数の第2係合部9,…は、各刃物ホルダ6に対して設けられ、それぞれがベース2と刃物ホルダ6とを解除可能に係合する。制御部は、駆動部5、複数の第1係合部8,…及び複数の第2係合部9,…を制御する。
【0016】
図1(a)は、移動体3が初期位置(機械座標の原点)に停止している状態を表す。初期位置では、移動体3は、すべての第1係合部8,…を介してすべての刃物ホルダ6,…を係合、保持している。この状態で、移動体3が第1方向Xの一端から他端に向かって一方向移動することにより、すべての刃物ホルダ6,…が同時に搬送される。そして、その途中途中で、該当する第1係合部8による係合解除が実行されることにより、該当する刃物ホルダ6が移動体3から切り離され、定められた位置に配置されていく。切り離された刃物ホルダ6は、不用意にその定められた位置から動かないよう、該当する第2係合部9を介してベース2に固定される。図1(b)は、各刃物ホルダ6が定められた位置に展開されるとともに、移動体3が第1方向Xの他端に到達して停止している状態を表す。ここで、符号Eは、連続シートの左右の側縁を表し、符号S(S1~S5)は、スリット加工位置を表す。
【0017】
ところで、スリッタは、連続シートをn分割する場合、n-1個の刃物(ホルダ6,…)を使用し、そして、連続シートの左右の側部を切り捨てるために2個の刃物(ホルダ6,6)を使用する。したがって、スリッタは、連続シートをn分割する場合、合計n+1個の刃物(ホルダ6,…)を使用する。本実施形態においては、刃物ホルダ6の総数は8個であり、スリッタは、連続シートを最大で7分割することができる。
【0018】
言い換えると、最大の分割数よりも少ない分割数が設定される場合、複数の刃物(ホルダ6,…)の中には、スリット加工に使用されるものと、使用されないものとが生じる。制御部は、最大の分割数よりも少ない分割数が設定される場合、使用する刃物ホルダ(以下、「使用刃物ホルダ」という)と、使用しない刃物ホルダ(以下、「不使用刃物ホルダ」という)とを決定する。そして、制御部は、連続シートの分割幅、分割数、及び、刃物ホルダ6の使用、不使用の各設定(スリット加工条件の設定)に基づき、使用刃物ホルダ6及び不使用刃物ホルダ6の配置を決定する。
【0019】
使用刃物ホルダ6は、保持する刃物10がスリット加工位置Sに位置決めされるように配置される。不使用刃物ホルダ6は、隣接する使用刃物ホルダ6に並ぶように配置される。すなわち、使用刃物ホルダ6が移動体3から切り離される際に、次の使用刃物ホルダ6までの間にある不使用刃物ホルダ6も移動体3から切り離される。
【0020】
連続シートの分割幅、分割数、及び、刃物ホルダ6の使用、不使用の各設定は、装置のユーザインターフェイス(図2(a)に示す装置のモニタC)を介して作業者が行うことができる。具体的には次のとおりである。分割幅は、所望の数値を入力することにより、「現製品幅寸法」(次回予約の場合は「次製品幅寸法」)に表示され、設定される。分割数は、所望の数値を入力することにより、「現丁取数」(次回予約の場合は「次丁取数」)に表示され、設定される。使用刃物ホルダ6は、「使用刃物」の番号を選択することにより、設定される。図2(b)は、各設定が行われた状態を表す。使用刃物ホルダ6は、該当番号又はその枠内の色が変化、反転等することにより、不使用刃物ホルダ6との視覚差が設けられる。
【0021】
なお、刃物ホルダ6の配置は、加工座標で管理される。加工座標は、第1方向Xの中心を原点とする座標である。図2(b)の「使用刃物」の各番号の下に表示される設定値は、加工座標の値を表したものである。連続シートは、幅方向の中心が加工座標の原点を通るようにセットされる。
【0022】
図3及び図4に示すように、ベース2は、側板20と、第1横材21と、第2横材22とを備える。側板20は、第1方向Xの一端及び他端の両端に一対設けられ、互いに平行となるように配置される。第1横材21は、第1方向Xに沿った長尺な帯板状の部材であり、一対の側板20,20間に配置され、一対の側板20,20を連結する。第2横材22も、第1方向Xに沿った長尺な帯板状の部材であり、一対の側板20,20間であって第1横材21と間隔を有して第1横材21の下方に配置され、一対の側板20,20を連結する。第1横材21及び第2横材22は、各板面が第2方向Yと直交するようにかつ互いに平行となるように配置される。
【0023】
移動体3は、基台30を備える。基台30は、第1方向Xに沿った矩形状の板状の部材であり、第1横材21及び第2横材22間に配置される。
【0024】
直動機構4は、リニアガイドであり、レール40と、ブロック41とを備える。レール40は、第1方向Xに沿った長尺な部材であり、第1横材21の基台30との対向面に取り付けられる。ブロック41は、レール40上をスライドするスライダである。ブロック41は、基台30の第1横材21との対向面に取り付けられる。これにより、移動体3は、第1横材21上において直動機構4を介して第1方向Xに移動可能である。
【0025】
駆動部5は、サーボモータ50と、ボールネジ51と、ナットブラケット52と、ブラケット53とを備える。駆動部5は、基台30及び第2横材22間に配置される。サーボモータ50は、第2横材22の基台30との対向面に取り付けられる。ボールネジ51は、第1方向Xに沿った長尺なネジであり、一端がカップリングを介してサーボモータ50の出力軸に連結される。ナットブラケット52は、ボールネジ51に螺合するナットを保持し、基台30の第2横材22との対向面に取り付けられる。ブラケット53は、1つ又は複数設けられ、それぞれボールネジ51を回転可能に支持し、第2横材22の基台30との対向面に取り付けられる。これにより、サーボモータ50が制御部の制御信号に基づいて駆動すると、ボールネジ51が回転し、移動体3が第1方向Xに移動する。
【0026】
刃物ホルダ6は、基台60を備える。基台60は、ブロック状の部材であり、一端部側が基台30及び第2横材22間に位置し、他端部側が第2横材22の基台30とは反対側に位置するように配置される。
【0027】
直動機構7は、リニアガイドであり、レール70と、ブロック71とを備える。レール70は、第1方向Xに沿った長尺な部材であり、第2横材22の基台30との対向面と反対の面に取り付けられる。ブロック71は、レール70上をスライドするスライダである。ブロック71は、基台60の第2横材22との対向面に取り付けられる。これにより、各刃物ホルダ6は、第2横材22上において直動機構7を介して第1方向Xに移動可能である。
【0028】
図4に示すように、刃物位置決め装置1は、スリッタのフレーム上において直動機構Aを介して第3方向Zに移動可能である。また、スリッタは、駆動部Bを備える。駆動部Bは、刃物位置決め装置1を駆動する。駆動部Bは、アクチュエータB1を備える。アクチュエータB1は、たとえば位置検出器付きシリンダである。アクチュエータB1は、ベース2の側板20又はスリッタのフレームのいずれか一方に取り付けられる。アクチュエータB1のロッドB2に取り付けられるヘッドB3は、ベース2の側板20又はスリッタのフレームのいずれか他方に取り付けられる。これにより、駆動部Bが駆動すると、刃物位置決め装置1が第3方向Zに移動する。
【0029】
図4及び図5に示すように、刃物ホルダ6は、基台60と、刃物台61と、押え部材62と、磁石63と、回転ハンドル64と、目盛り65とを備える。刃物台61は、押え部材62と協働して刃物10を挟持する。刃物台61は、回転ハンドル64の回転操作により、第1方向Xに移動可能である。これにより、第1方向Xにおける刃物10の位置を微調整することができる。磁石63は、刃物台61又は押え部材62のいずれか一方の対向面に埋設され、刃物10を磁着する。これにより、刃物10を挟持する作業中において、刃物10が不用意に脱落するのを防止することができる。目盛り65は、基台60に対する刃物台61の位置を把握するために用いられる。これにより、刃物10の位置の微調整を円滑かつ容易に行うことができる。
【0030】
第1係合部8は、アクチュエータ80を備える。アクチュエータ80は、たとえばエアシリンダである。複数の第1係合部8,…は、基台30上に第1方向Xに並んで配置される。本実施形態においては、アクチュエータ80のロッド81は、第2方向Yに沿って進出し、基台30及び第2横材22間に進出する。ロッド81が進出すると、ロッド81が刃物ホルダ6の被係合部60aと係合し、移動体3と刃物ホルダ6とが係合される。他方、ロッド81が退避すると、ロッド81が被係合部60aから離間し、移動体3と刃物ホルダ6との係合が解除される。被係合部60aは、基台60のうち、基台30及び第2横材22間に位置する部分(一端部)に設けられる。被係合部60aは、たとえばロッド81が挿入可能な孔である。
【0031】
第2係合部9は、アクチュエータ90を備える。アクチュエータ90は、たとえばエアシリンダである。複数の第2係合部9,…は、基台60上に配置される。本実施形態においては、アクチュエータ90のロッド91は、第2方向Yと直交する方向に沿って進出し、第2横材22に向かって進出する。ロッド91が進出すると、ロッド91がベース2の被係合部22aと係合し、ベース2と刃物ホルダ6とが係合される。他方、ロッド91が退避すると、ロッド91が被係合部22aから離間し、ベース2と刃物ホルダ6との係合が解除される。被係合部22aは、たとえばロッド91の先端が当接する第2横材22の端面である。
【0032】
本実施形態に係る刃物位置決め装置1は、以上の構成からなる。次に、各刃物10の位置決め方法(各刃物ホルダ6の展開方法)について説明する。なお、スリット加工条件の設定は、図2(b)に示す例のとおりとする。
【0033】
図6(a)に示すように、移動体3は、最初は、初期位置(機械座標の原点)に停止している。この状態で、移動体3は、第1方向Xの一端から他端に向かって一方向移動を開始する。
【0034】
図6(b)に示すように、まず、移動体3は、使用刃物ホルダ6のうち、初期位置に最も近い使用刃物ホルダ6Aが初期位置に最も近いスリット加工位置S1に対応した位置に到達すると、一旦停止する。この状態で、移動体3は、使用刃物ホルダ6A(移動体3の移動方向における後側の刃物ホルダ6A)及びその隣の不使用刃物ホルダ6B(移動体3の移動方向における前側の刃物ホルダ6B)を切り離す。切り離す際の第1係合部8A,8B及び第2係合部9,9の制御タイミングは、図8(a)に示すとおりである。第1係合部8による係合解除の実行に先立って第2係合部9による係合を実行するのは、刃物ホルダ6が不用意にその定められた位置から動かないようにするためである。また、前側の刃物ホルダ6と後側の刃物ホルダ6とで動作タイミングをずらすのは、係合部8,9のアクチュエータ80,90がエアシリンダである場合の、エアの使用量を均一化し、エアシリンダの動作を安定化させるためである。これらの工程を経て、使用刃物ホルダ6Aが保持する刃物10がスリット加工位置S1に位置決めされる。
【0035】
図6(c)に示すように、次に、移動体3は、移動を再開した後、初期位置に二番目に近い使用刃物ホルダ6Cが初期位置に二番目に近いスリット加工位置S2に対応した位置に到達すると、一旦停止する。この状態で、移動体3は、使用刃物ホルダ6Cを切り離す。切り離す際の第1係合部8C及び第2係合部9の制御タイミングは、図8(a)の「前側の刃物ホルダ」に示すとおりである。これらの工程を経て、使用刃物ホルダ6Cが保持する刃物10がスリット加工位置S2に位置決めされる。
【0036】
図7(a)に示すように、次に、移動体3は、移動を再開した後、初期位置に三番目に近い使用刃物ホルダ6Dが初期位置に三番目に近いスリット加工位置S3に対応した位置に到達すると、一旦停止する。この状態で、移動体3は、使用刃物ホルダ6D及びその隣の不使用刃物ホルダ6Eを切り離す。切り離す際の第1係合部8D,8E及び第2係合部9,9の制御タイミングは、図8(a)に示すとおりである。これらの工程を経て、使用刃物ホルダ6Dが保持する刃物10がスリット加工位置S3に位置決めされる。
【0037】
図7(b)に示すように、次に、移動体3は、移動を再開した後、初期位置に四番目に近い使用刃物ホルダ6Fが初期位置に四番目に近いスリット加工位置S4に対応した位置に到達すると、一旦停止する。この状態で、移動体3は、使用刃物ホルダ6F及びその隣の不使用刃物ホルダ6Gを切り離す。切り離す際の第1係合部8F,8G及び第2係合部9,9の制御タイミングは、図8(a)に示すとおりである。これらの工程を経て、使用刃物ホルダ6Fが保持する刃物10がスリット加工位置S4に位置決めされる。
【0038】
図7(c)に示すように、次に、移動体3は、移動を再開した後、初期位置に五番目に近い使用刃物ホルダ6Hが初期位置に五番目に近いスリット加工位置S5に対応した位置に到達すると、一旦停止する。この状態で、移動体3は、使用刃物ホルダ6Hを切り離す。切り離す際の第1係合部8H及び第2係合部9の制御タイミングは、図8(a)の「前側の刃物ホルダ」に示すとおりである。これらの工程を経て、使用刃物ホルダ6Hが保持する刃物10がスリット加工位置S5に位置決めされる。
【0039】
図7(d)に示すように、すべての刃物ホルダ6A~6Hを切り離した移動体3は、最後に、第1方向Xの他端まで移動し、一方向移動を完了して停止する。以上の工程を経て、すべての刃物10,…がスリット加工位置S1~S5に位置決めされると、スリット加工を開始できるようになる。
【0040】
スリット加工を完了し、刃物位置決め装置1を初期状態に戻す場合、上記の工程とは逆の工程が実行される。このとき、移動体3が1つの刃物ホルダ6を保持する(再係合する)工程は、図8(b)の「前側の刃物ホルダ」に示すとおりである。また、移動体3が2つの刃物ホルダ6,6(使用刃物ホルダ6(移動体3の移動方向における前側の刃物ホルダ6)及びその隣の不使用刃物ホルダ6(移動体3の移動方向における後側の刃物ホルダ6))を保持する(再係合する)工程は、図8(b)に示すとおりである。第1係合部8による係合の実行の後に第2係合部9による係合解除を実行するのは、刃物ホルダ6が不用意にその定められた位置から動かないようにするためである。また、前側の刃物ホルダ6と後側の刃物ホルダ6とで動作タイミングをずらすのは、係合部8,9のアクチュエータ80,90がエアシリンダである場合の、エアの使用量を均一化し、エアシリンダの動作を安定化させるためである。
【0041】
スリット加工条件の設定は、いろいろなパターンで行うことができる。図9(a)に示す例は、1番目、3番目、4番目、7番目、8番目の刃物ホルダ6,…を使用刃物ホルダと設定したパターンである。この場合、4番目の刃物ホルダ6と7番目の刃物ホルダ6との間に2つの不使用刃物ホルダ6,6が介在する。したがって、3番目のスリット加工位置S3に対応した位置は、2つの不使用刃物ホルダ6,6が配置されることとなる。
【0042】
図9(b)に示す例は、1番目、2番目、3番目、5番目、6番目の刃物ホルダ6,…を使用刃物ホルダと設定したパターンである。この場合、7番目及び8番目の不使用刃物ホルダ6,6は、初期位置から最も遠い使用刃物ホルダ6よりもさらに初期位置から遠く、移動体3の移動に伴う他の刃物ホルダ6との干渉の問題は生じない。したがって、2つの不使用刃物ホルダ6,6は、移動体3から切り離されず、移動体3に保持されたままとなる。
【0043】
図9(c)に示す例は、すべての刃物ホルダ6,…を使用刃物ホルダと設定したパターンである。これは、最大の分割数でスリット加工を行う場合である。
【0044】
ところで、図10に示すように、刃物位置決め装置1が第3方向Zに直線移動することにより、刃物10も直線移動して連続シートDにアプローチし、スリット加工が行われるが、スリット加工が続くと、刃物10の刃先は次第に摩耗し、切れ味が悪くなる。そこで、所定のタイミングで、刃物位置決め装置1を第3方向Zに僅かに移動することにより、刃物10の接刃箇所がずれていくようにする。これにより、切れ味を持続させ、スリット加工を安定的に行うことができる。なお、タイミングとしては、作業者が都度操作するようにしてもよいし、処理量に応じて制御部が自動的に設定するものであってもよい。また、ずれ量は、たとえば0.5mm程度/回とされる。
【0045】
以上のとおり、本実施形態に係る刃物位置決め装置1によれば、複数の第1係合部8,…が移動体3と複数の刃物ホルダ6,…とを係合した状態で、移動体3が移動することにより、複数の刃物ホルダ6,…が同時に搬送される。そして、その途中途中で、該当する第1係合部8による係合解除が実行されることにより、該当する刃物ホルダ6が移動体3から切り離され、定められた位置に配置されていく。このように、本実施形態に係る刃物位置決め装置1によれば、移動体3が1回の一方向移動をするだけで、複数の刃物10,…をそれぞれスリット加工位置Sに位置決めしていくことができる。このため、本実施形態に係る刃物位置決め装置1によれば、複数の刃物10,…をそれぞれスリット加工位置Sに位置決めする時間を短縮することができ、ひいては、準備時間を短縮して生産性を向上することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
上記実施形態においては、第1係合部8は、移動体3上に設けられ、第2係合部9は、刃物ホルダ6上に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、第1係合部は、刃物ホルダ上に設けられるようにしてもよいし、あるいは、移動体と刃物ホルダとに跨って設けられるようにしてもよい。第2係合部は、ベース上に設けられるようにしてもよいし、あるいは、ベースと刃物ホルダとに跨って設けられるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、使用刃物ホルダは、作業者が設定する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、使用刃物ホルダは、制御部が所定のルールに基づいて自動的に設定するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、不使用刃物ホルダ6は、これを挟む両側の使用刃物ホルダ6,6のうち、初期位置に近い側の使用刃物ホルダ6に付随して移動体3から切り離されるようになっている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図11(a)に示すように、不使用刃物ホルダ6は、初期位置に遠い側の使用刃物ホルダ6に付随して移動体3から切り離されるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、刃物10は、連続シートの左右の側部を切り捨てるためにも2つ使用される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図11(b)及び(c)に示すように、連続シートの左右の側部を切り捨てることなくスリット加工した製品を製造するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
A…直動機構、B…駆動部、B1…アクチュエータ、B2…ロッド、B3…ヘッド、C…モニタ、1…刃物位置決め装置、10…刃物、2…ベース、20…側板、21…第1横材、22…第2横材、22a…被係合部、3…移動体、30…基台、4…直動機構、40…レール、41…ブロック、5…駆動部、50…サーボモータ、51…ボールネジ、52…ナットブラケット、53…ブラケット、6,6A~6H…刃物ホルダ、60…基台、60a…被係合部、61…刃物台、62…押え部材、63…磁石、64…回転ハンドル、65…目盛り、7…直動機構、70…レール、71…ブロック、8,8A~8H…第1係合部、80…アクチュエータ、81…ロッド、9…第2係合部、90…アクチュエータ、91…ロッド、D…連続シート、E…側縁、S,S1~S8…スリット加工位置、X…第1方向、Y…第2方向、Z…第3方向
図1
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図11