(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023189
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】仕口部構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20230209BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/58 505L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128471
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六車 政宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 義弘
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC24
2E125AG03
2E125AG22
2E125AG23
2E125AG41
2E125BB02
2E125BB12
2E125BB13
2E125CA04
2E125CA13
(57)【要約】
【課題】木質梁勝ちの仕口部が許容可能な鉛直荷重を大きくする。
【解決手段】仕口部構造102は、下柱15Bと、下柱15Bの上端部15BCに設けられ横方向に貫通する貫通部202が形成された鋼製部材200と、鋼製部材200に下端部15ACが支持された上柱15Aと、貫通部202に通された第一木質梁100と、備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下柱と、
前記下柱の上端部に設けられ、横方向に貫通する貫通部が形成された鋼製部材と、
前記鋼製部材に下端部が支持された上柱と、
前記貫通部に通された木質梁と、
を備えた仕口部構造。
【請求項2】
前記木質梁は、前記鋼製部材を挟んで、一方側は片持ち梁とされている、
請求項1に記載の仕口部構造。
【請求項3】
前記木質梁は、前記鋼製部材を挟んで、他方側はゲルバー梁とされている、
請求項2の仕口部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集成材の柱と梁からラーメン構造を構成する集成材構造における柱・梁接合部構造及び柱・梁架構に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、木質梁を柱あるいは梁に接合する場合、簡易な構成でこの接合部分に必要な耐力を確保することができる木質梁接合構造及び木質梁接合方法に関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、木質の柱部材と木質の梁部材とを接合した柱梁接合構造に関する技術が開示されている。
【0005】
特許文献4には、木質柱と木質梁との柱梁接合構造に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-185115号公報
【特許文献2】特開2014-214497号公報
【特許文献3】特開2015-218463号公報
【特許文献4】特開2015-175119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
木質梁の梁端部を仕口部にピン接合とすると梁端部で曲げ応力を負担できないので、応力が単純梁となり、梁部材下端のみで引張応力を処理する。よって、例えば、両端固定の梁と比べ最大応力が大きくなり、スパンが小さくなる。
【0008】
木質梁の梁端部で曲げ応力を負担するため、仕口部で梁を勝たせ、梁の上に柱を載せると、梁端部で曲げ応力を負担できる。しかし、木質梁の繊維方向は横方向であるので、木質梁で構成する仕口部が許容できる鉛直荷重が小さい。よって、例えば、柱の面圧を小さくする必要が生じ柱の断面が過大になる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事実を鑑み、木質梁勝ちの仕口部の柱の断面を小さくすることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一態様は、下柱と、前記下柱の上端部に設けられ、横方向に貫通する貫通部が形成された鋼製部材と、前記鋼製部材に下端部が支持された上柱と、前記貫通部に通された木質梁と、を備えた仕口部構造である。
【0011】
第一態様の仕口部構造では、下柱の上端部に設けられた鋼製部材に上柱の下端部が支持されている。鋼製部材の貫通部に木質梁が通されている。よって、上柱の軸力は鋼製部材を介して下柱に伝達され、木質梁を介しては伝達されない又は殆ど伝達されてない。このように、仕口部における柱の軸力は鋼製部材が負担するので、柱の面圧を小さくする必要がない。したがって、木質梁勝ちの仕口部において、木質梁のみが柱の軸力を伝達する場合と比較し、柱の断面を小さくすることができる。
【0012】
第二態様は、前記木質梁は、前記鋼製部材を挟んで、一方側は片持ち梁とされている、第一態様に記載の仕口部構造である。
【0013】
第二態様の仕口部構造では、木質梁は、鋼製部材を挟んで、一方側は片持ち梁となっている。よって、例えば、木質梁で建物のコーナー部に柱がない跳出部を形成することが可能となる。
【0014】
第三態様は、前記木質梁は、前記鋼製部材を挟んで、他方側はゲルバー梁とされている、第二態様の仕口部構造である。
である。
【0015】
第三態様の仕口部構造では、鋼製部材を挟んで、他方側はゲルバー梁とされている。よって、木質梁に作用する鉛直荷重が低減される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、木質梁勝ちの仕口部の柱の断面を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の仕口部構造が適用された建物の
図7(A)の1-1線に沿った断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の仕口部構造が適用された建物の
図3及び
図7(A)の2-2線に沿った断面図である。
【
図4】第一木質梁を組み付けている状態の
図1に対応する断面図である。
【
図5】第一木質梁の梁端部同士のピン接合部位の分解斜視図である。
【
図6】(A)は木質柱を構成する集成材を示す一部断面で示す斜視図であり、(B)は木質梁を構成する集成材を示す一部断面で示す斜視図である。
【
図7】建物の柱梁架構を模式的に示すY方向から見た立面図である。
【
図8】(A)は第一木質梁の曲げ応力図であり、(B)は比較例の木質梁の曲げ応力図である。
【
図9】本発明の一実施形態の仕口部構造の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の一実施形態の仕口部構造及びこの仕口部構造が適用された建物について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0019】
[構造]
まず、本実施形態の建物の構造について説明する。
【0020】
図7に示すように、建物10は、木質柱15、第一木質梁100、図示されていない第二木質梁及び第三木質梁30で構成された柱梁架構12を有している。本実施形態における木質柱15、第一木質梁100、第二木質梁(図示略)及び第三木質梁30は、
図6に示す耐火集成材50、51で構成されている。
【0021】
図6に示す耐火集成材50、51は、荷重を支持する荷重支持部52と、荷重支持部52の周囲に設けられた耐火被覆層70と、を有して構成されている。また、耐火被覆層70は、モルタルバー60が埋設された燃止層54と燃代層56とで構成されている。
【0022】
荷重支持部52は耐火集成材50、51の中心部分に設けられ、燃止層54は荷重支持部52の外側に荷重支持部52を取り囲むように設けられ、燃代層56は燃止層54の外側に燃止層54を取り囲むように設けられている。
【0023】
なお、第一木質梁100、第二木質梁(図示略)及び第三木質梁30に用いる耐火集成材51は、燃代層56及び燃止層54で構成された耐火被覆層70が、上部側に設けられていない以外は、木質柱15に用いる耐火集成材50と同様の構成である。
【0024】
そして、このような三層構造の耐火集成材50、51は、火災時には、外側の燃代層56が燃焼し炭化して炭化層となることで断熱効果を発揮すると共に燃止層54を構成するモルタルバー60が熱を吸収しながら燃焼を停止させることで、中心部にある荷重を支持する荷重支持部52が火災から保護されるようになっている。
【0025】
なお、耐火集成材50、51の荷重支持部52を構成する木質の主な繊維方向は、軸方向に沿っている。つまり、木質柱15の荷重支持部52を構成する木質の主な繊維方向は鉛直方向に沿っており、第一木質梁100、第二木質梁(図示略)及び第三木質梁30の荷重支持部52を構成する木質の主な繊維方向は水平方向に沿っている。
【0026】
図7に示すように、本実施形態の仕口部構造102は、木質柱15が分断された上柱15A及び下柱15Bと、これら上柱15Aと下柱15Bとの間に設けられ仕口部104を構成する鋼製部材200(
図1~
図3も参照)と、鋼製部材200を通る第一木質梁100と、を有している。仕口部104は、上柱15Aと下柱15Bとの間を第一木質梁100が通る梁勝ちの仕口部である(
図1~
図3も参照)。
【0027】
第一木質梁100は、仕口部104を挟んだX方向の一方側は片持ち梁、すなわち仕口部104から跳ね出した跳出梁106になっている。また、第一木質梁100の仕口部104を挟んでX方向の他方側は、ピン接合されたゲルバー梁130となっている。なお、本実施形態では、
図7(A)に示すように、仕口部104には、Y方向に沿った第三木質梁30がピン接合されている(
図1も参照)。
【0028】
図7における左端の仕口部104から跳ね出した跳出梁106の梁端部100Aは、Y方向に沿って設けられた第二木質梁(図示略)の一方の梁端部とピン接合されている。なお、本実施形態では、第二木質梁(図示略)における図示されていない他方の梁端部は、図示されていない鉄骨柱にピン接合されているが、これに限定されるものではない。例えば、第二木質梁も仕口部から跳ね出す跳出梁であってもよい。
【0029】
図7における左端の第一木質梁100の梁端部100Aと第二木質梁(図示略)の梁端部との接合部位である建物10のコーナー部14には、柱が設けられていない跳出部16となっている。
【0030】
前述したように第一木質梁100の他方側の梁端部100Bは、右隣りの第一木質梁100の梁端部100Aとピン接合されており、ゲルバー梁130となっている(
図8(A)も参照)。なお、ピン接合部位を符号132で示している。
【0031】
ここで、第一木質梁100の梁端部100Aと梁端部100Bとのピン接合について
図5を用いて説明する。なお、
図5の接合構成は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0032】
図5に示すように、梁端部100Aと梁端部100Bとを接合する梁接合部材500は、梁幅方向(Y方向)を板厚方向として配置された矩形状の接合プレート510と、接合プレート510の上端部510Aの半分に設けられ梁成方向(Z方向)を板厚方向とした配置された上部プレート520と、を有する構造となっている。また、接合プレート510には、板厚方向に貫通する貫通孔512A、512Bが複数形成されている。
【0033】
梁端部100A及び梁端部100Bの荷重支持部52には、それぞれ梁接合部材500の接合プレート510が挿入されるスリット505A、505Bが形成されている。また、梁端部100Aの荷重支持部52の上端部には、梁接合部材500の上部プレート520が収まる凹状の座彫部530が形成されている。
【0034】
また、梁端部100A及び梁端部100Bには、梁接合部材500の接合プレート510の貫通孔512A、512Bに対応する位置に、梁幅方向に貫通する接合孔532A、532Bがそれぞれ削孔されている。
【0035】
そして、ドリフトピン700が、貫通孔512A、512B及び接合孔532A、532Bに圧入されることで、梁端部100Aと梁端部100Bとが接合されている。
【0036】
図1、
図2及び
図9に示すように、鋼製部材200は、底部210と本体部220とを有して構成されている。また、本実施形態の鋼製部材200には、底部210と本体部220とに跨ってY方向に延びるガセットプレート150が接合されている。
【0037】
底部210は、H形鋼で構成された支柱部212と、支柱部212の下端部に接合された底板プレート214と、を有して構成されている。底板プレート214には、X方向を板厚方向とした下側挿入プレート216が接合されている。
【0038】
本体部220は、Y方向に間隔をあけて配置された二枚の本体プレート222(
図3も参照)、天板プレート230及び中間板プレート232を有して構成されている。二枚の本体プレート222の下端部に中間板プレート232が接合されている。また、中間板プレート232は、底部210の支柱部212の上端部に接合されている。
【0039】
図3及び
図9に示すように、二枚の本体プレート222には、それぞれY方向に突出するリブ224が形成されている。本実施形態では、リブ224は、X方向に間隔をあけて複数箇所、本実施形態では二箇所に設けられている。
【0040】
図1、
図2及び
図9に示すように、本体プレート222の上端部におけるY方向外側の側部には、接続部226が接合されている。天板プレート230は、接続部226にボルト及びナットで締結されている。また、天板プレート230には、X方向を板厚方向として上側挿入プレート228が接合されている。
【0041】
図1、
図3及び
図9に示す鋼製部材200における二枚の本体プレート222、中間板プレート232及び天板プレート230で囲まれたX方向に貫通する筒状の部位が、貫通部202である。
【0042】
図9に示すように、下柱15Bの上端部15BCに形成された凹部17に、鋼製部材200の底部210の下部が嵌め込まれている。そして、
図1、
図2及び
図9に示すように、下柱15Bの上端部15BCの荷重支持部52に形成されたスリットに鋼製部材200の下側挿入プレート216が挿入されている。下側挿入プレート216には貫通孔が形成され、下柱15Bの上端部15BCには接合孔が形成されている。ドリフトピン180が、これら貫通孔及び接合孔に圧入されることで、下柱15Bの上端部15BCと鋼製部材200とが接合されている。
【0043】
同様に上柱15Aの下端部15AC(
図1及び
図2参照)の荷重支持部52に形成されたスリットに鋼製部材200の上側挿入プレート228が挿入されている。上側挿入プレート228には貫通孔が形成され、上柱15Aの下端部15AC(
図1及び
図2参照)には接合孔が形成されている。ドリフトピン180が、これら貫通孔及び接合孔に圧入されることで、上柱15Aの下端部15ACと鋼製部材200とが接合されている。
【0044】
図1、
図3に示すように、第三木質梁30の梁端部31の荷重支持部52に形成されたスリットに鋼製部材200のガセットプレート150(
図9も参照)が挿入されている。ガセットプレート150には貫通孔が形成され、第三木質梁30の梁端部31には接合孔が形成されている。ドリフトピン180が、これら貫通孔及び接合孔に圧入されることで、第三木質梁30の梁端部31と鋼製部材200とが接合されている。
【0045】
また、
図1及び
図3に示すように、第一木質梁100は、中心部、本実施形態では荷重支持部52の中心部110が鋼製部材200の貫通部202に通されている。別の観点から説明すると、
図3に示すように、第一木質梁100のY方向の両側に凹部120が形成され、この凹部120の間が中心部110であり、この凹部120に本体プレート222が配置されている。
【0046】
図1及び
図3に示すように、鋼製部材200の本体プレート222には貫通孔が形成され、第一木質梁100の中心部110には接合孔が形成さている(
図9も参照)。これら貫通孔及び接合孔に全ネジボルト190が挿通されて締結されている。
【0047】
このように、仕口部104は、上柱15Aと下柱15Bとの間に第一木質梁100が通された梁勝ちの仕口部構造102となっている。
【0048】
図1及び
図2に示すように、第一木質梁100及び第三木質梁30の上には、鉄筋コンクリート造のスラブ90が設けられている。なお、本実施形態では、第一木質梁100は、第三木質梁30よりも上方に位置している。よって、スラブ90には段差が形成されている。
【0049】
また、
図1に示すように、仕口部104のY方向の外側(第三木質梁30が非接合側)には、鉄筋コンクリート造の外周部92が形成されている、
【0050】
ここで、本実施形態における前述した各ドリフトピン180、700の長さは、梁幅又は柱幅と同じ又は略同じである。しかし、各ドリフトピン180、700Bの長さを、燃代層56にかからないようにし、図示してない木質栓等を埋めて、穴を塞いでもよい。
【0051】
(仕口部104の施工方法)
次に仕口部104の施工方法の一例について説明する。
【0052】
図4に示すように、下柱15Bの上端部15BCのスリットに鋼製部材200の下側挿入プレート216を挿入し、ドリフトピン180を圧入する。なお、鋼製部材200の天板プレート230は取り外されている(
図9も参照)。
【0053】
第一木質梁100の中心部110を上方から鋼製部材200の貫通部202に挿入し、天板プレート230を接続部226にボルト締結する(
図9も参照)。
【0054】
図1に示すように、上柱15Aの下端部15ACのスリットに鋼製部材200の上側挿入プレート228を挿入し、ドリフトピン180を圧入する。
【0055】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
仕口部構造102では、下柱15Bの上端部15BCに設けられた鋼製部材200に上柱15Aの下端部15ACが支持されている。また、鋼製部材200の貫通部202に第一木質梁100の中心部110が通されている。よって、上柱15Aの軸力は鋼製部材200を介して下柱15Bに伝達され、第一木質梁100を介しては伝達されない又は殆ど伝達されない。このように、仕口部104における木質柱15の軸力は鋼製部材200が負担するので、木質梁勝ちの仕口部104であっても、木質梁のみが木質柱15の軸力を負担する場合と比較し、木質柱15の断面を小さくすることができる。
【0057】
ここで、鋼製部材200が設けられておらず第一木質梁100が仕口部で軸力を伝達する比較例の仕口部構造について説明する。
【0058】
木質柱15の荷重支持部52を構成する木質の主な繊維方向は縦方向に沿っており、第一木質梁100の荷重支持部52を構成する木質の主な繊維方向は横方向に沿っている。よって、木質の繊維方向の関係から同じ断面積であれば、木質柱15の方が第一木質梁100よりも許容できる鉛直荷重が大きくなる。よって、木質柱15の面圧を小さくする必要があり、木質柱15の荷重支持部52の水平断面を必要以上に大きくする必要がある。
【0059】
これに対して、本実施形態の仕口部構造102では、前述したように、上柱15Aの軸力は鋼製部材200を介して下柱15Bに伝達され、第一木質梁100を介しては伝達されない又は殆ど伝達されないので、仕口部104が許容可能な鉛直荷重が大きくなる。よって、木質柱15の面圧を小さくする必要がなく、木質柱15の荷重支持部52の水平断面を軸力の負担に必要な大きさにできる。
【0060】
また、第一木質梁100は、仕口部104の鋼製部材200を通る中心部110が曲げ応力を負担する片持ち梁が可能となる。よって、仕口部104から跳ね出す第一木質梁100の梁端部100Aと、第一木質梁100に直交して配置された第二木質梁(図示略)の梁端部と、を接合し、建物10のコーナー部14に柱がない跳出部16を形成することができる。
【0061】
また、第一木質梁100は、仕口部104を挟んだX方向の一方側は仕口部104から跳ね出した跳出梁106となり、X方向の他方側は、ピン接合されたゲルバー梁130となっている。よって、木質梁の両端が柱にピン接合した場合と比較し、スパンを大きくすることができる。
【0062】
ここで、
図8(A)は、本実施形態の第一木質梁100に作用する曲げ応力を模式的に示す応力図である。また、
図8(B)は、両端が木質柱15にピン接合されている比較例の木質梁101に作用する曲げ応力を模式的に示す応力図である。
【0063】
図8(A)に示す本実施形態の第一木質梁100における鋼製部材200を通る中心部110に作用する曲げ応力M1及び柱間の中央部に作用する曲げ応力M2は、
M1=WL
2/12
M2=WL
2/24
である。
また、
図8(B)に比較例の木質梁101の柱間の中央部に作用する曲げ応力M3は、
M3=WL
2/8
である。
なお、Wは梁に作用する鉛直荷重であり、Lは柱間の長さである。
【0064】
M1とM3とを比較すると判るように、梁に作用する最大応力は、本実施形態の第一木質梁100の方が比較例の木質梁101よりも小さい。
【0065】
また、M2とM3とを比較するとわかるように、梁の柱間に作用する最大応力は、本実施形態の第一木質梁100の方が比較例の木質梁101よりも小さい。
【0066】
したがって、両者の梁断面が同じであれば、本実施形態の第一木質梁100の方が比較例の木質梁101よりもスパンを大きくできる。
【0067】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0068】
例えば、上記実施形態では、木質柱15、第一木質梁100、第二木質梁(図示略)及び第三木質梁30は、
図6に示す構造の耐火集成材50、51であったが、これに限定されるものではない。
図6に示す構造以外の耐火木材であってもよい。また、耐火木材以外の木質の柱及び梁であってもよい。なお、木質柱15、第二木質梁(図示略)及び第三木質梁30は、木質以外、例えば、鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の柱又は梁であってもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施形態で説明した鋼製部材200の構造は、一例であってこれに限定されるものではない。鋼製部材は、下柱の上端部に設けられて上柱の上端部を支持し、横方向に貫通すると共に木質梁が通る貫通部が形成されていればよい。
【0070】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0071】
10 建物
15 木質柱
15A 上柱
15AC 下端部
15B 下柱
15BC 上端部
16 跳出部
100 第一木質梁
100A 梁端部
100B 梁端部
102 仕口部構造
104 仕口部
106 跳出梁
200 鋼製部材
202 貫通部