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特開2023-23192浴室用床、浴室用床の製造方法及び浴室
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  • 特開-浴室用床、浴室用床の製造方法及び浴室 図1
  • 特開-浴室用床、浴室用床の製造方法及び浴室 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023192
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】浴室用床、浴室用床の製造方法及び浴室
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20230209BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E04F15/00 F
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128474
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牧野 祐介
(72)【発明者】
【氏名】正池 つづる
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA45
2E220AB03
2E220AB14
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GB13X
2E220GB32X
2E220GB34X
2E220GB37X
2E220GB38X
(57)【要約】
【課題】黄変を抑制することができる浴室用床を提供する。
【解決手段】本発明に係る浴室用床は、樹脂層と、前記樹脂層の第1の表面上に配置された被膜とを備え、前記樹脂層は、樹脂と酸化防止剤とを含み、前記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含み、前記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層の第1の表面上に配置された被膜とを備え、
前記樹脂層は、樹脂と酸化防止剤とを含み、
前記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含み、
前記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である、浴室用床。
【請求項2】
前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、アクリルウレタン樹脂である、請求項1に記載の浴室用床。
【請求項3】
前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、下記式(1)で表される構造単位を1個以上有する、請求項1又は2に記載の浴室用床。
【化1】

前記式(1)中、R1及びR3はそれぞれ、イソシアネート化合物に由来する骨格を表し、R2は、ポリオール化合物に由来する骨格を表す。
【請求項4】
前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、前記式(1)で表される構造単位を複数個有する、請求項3に記載の浴室用床。
【請求項5】
前記樹脂層中の前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の浴室用床。
【請求項6】
前記樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂である、請求項5に記載の浴室用床。
【請求項7】
前記樹脂層中の前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の浴室用床。
【請求項8】
樹脂と酸化防止剤とを含む樹脂層の第1の表面上に、熱硬化性樹脂を含む被膜の材料を配置する工程と、
前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記樹脂層の前記第1の表面上に配置されておりかつ前記熱硬化性樹脂の硬化物を含む被膜を形成する工程とを備え、
前記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である、浴室用床の製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の前記樹脂層の前記第1の表面の十点平均粗さRzが、8.0μm以上10.0μm以下である、請求項8に記載の浴室用床の製造方法。
【請求項10】
浴室を構成する浴室床として、請求項1~7のいずれか1項に記載の浴室用床を備え、
前記被膜が、前記樹脂層よりも、浴室の内部空間側に位置する、浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内の床面などに施工される浴室用床に関する。また、本発明は、上記浴室用床の製造方法及び上記浴室用床を用いた浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室内の床面には、耐久性や安全性のために塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられることが多い。
【0003】
下記の特許文献1には、シート本体と、上記シート本体の表面に設けられた表層とを有する浴室用内装シートが開示されている。上記表層は、塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、熱安定剤とを含む。
【0004】
下記の特許文献2には、アクリロニトリルスチレン系共重合体によって形成された基材層と、該基材層上に積層された弾性を有する中間層と、該中間層上に積層された硬質又は軟質の表面層とを備える浴室用床材が開示されている。特許文献2では、上記表面層の材料として、ポリ塩化ビニル等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-086891号公報
【特許文献2】特開2016-098548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床材の内部にフェノール系酸化防止剤が存在する場合に、洗浄剤を床に使用すると、浴室の床が黄変することがあり、外観が悪化することがある。これは、洗浄剤に含まれる次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等が、床材中に浸透し、フェノール系酸化防止剤と反応することにより、生成されたキノン誘導体により黄変するものと考えられる。
【0007】
また、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂では、表面に凹凸が多数形成されているため、従来の浴室用床では、コンディショナー等の頭髪用化粧品が床表面に残留しやすい。残留した頭髪用化粧品が乾燥し、床表面に付着したところに、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤を使用すると、頭髪用化粧品に含まれるフェノール系酸化防止剤と次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等とが反応して、浴室の床が黄変し、外観が悪化することがある。また、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤の場合でも、浴室の床が黄変し、外観が悪化することがある。
【0008】
このような床の黄変は、中性洗剤では除去することが困難である。また、黄変を除去するためにアセトン等の有機溶剤を塗布すると、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が溶融する可能性がある。したがって、浴室の床が黄変した場合には、床材自体を貼りかえることが一般的であり、コストや作業の手間が問題となっている。
【0009】
本発明の目的は、黄変を抑制することができる浴室用床を提供することである。また、本発明のもう一つの目的は、浴室用床の製造方法及び上記浴室用床を用いた浴室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、樹脂層と、前記樹脂層の第1の表面上に配置された被膜とを備え、前記樹脂層は、樹脂と酸化防止剤とを含み、前記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含み、前記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である、浴室用床が提供される。
【0011】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、アクリルウレタン樹脂である。
【0012】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、下記式(1)で表される構造単位を1個以上有する。
【化1】
【0013】
前記式(1)中、R1及びR3はそれぞれ、イソシアネート化合物に由来する骨格を表し、R2は、ポリオール化合物に由来する骨格を表す。
【0014】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記被膜中の前記熱硬化性樹脂の硬化物が、前記式(1)で表される構造単位を複数個有する。
【0015】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記樹脂層中の前記樹脂が、熱可塑性樹脂である。
【0016】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記樹脂層中の前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル系樹脂である。
【0017】
本発明に係る浴室用床のある特定の局面では、前記樹脂層中の前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である。
【0018】
本発明の広い局面によれば、樹脂と酸化防止剤とを含む樹脂層の第1の表面上に、熱硬化性樹脂を含む被膜の材料を配置する工程と、前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記樹脂層の前記第1の表面上に配置さておりかつ前記熱硬化性樹脂の硬化物を含む被膜を形成する工程とを備え、前記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である、浴室用床の製造方法が提供される。
【0019】
本発明に係る浴室用床の製造方法のある特定の局面では、前記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の前記樹脂層の前記第1の表面の十点平均粗さRzが、8.0μm以上10.0μm以下である。
【0020】
本発明の広い局面によれば、浴室を構成する浴室床として、上述した浴室用床を備え、前記被膜が、前記樹脂層よりも、浴室の内部空間側に位置する、浴室が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る浴室用床は、樹脂層と、上記樹脂層の第1の表面上に配置された被膜とを備え、上記樹脂層は、樹脂と酸化防止剤とを含み、上記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含み、上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下であるので、黄変を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る浴室用床を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る浴室用床を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
(浴室用床)
本発明に係る浴室用床は、樹脂層と、上記樹脂層の第1の表面上に配置された被膜とを備える。本発明に係る浴室用床では、上記樹脂層は、樹脂と酸化防止剤とを含む。上記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。本発明に係る浴室用床では、上記被膜の外側の表面(上記被膜の上記樹脂層側とは反対側の表面)の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である。
【0025】
浴室の床の清掃に、次亜塩素酸、又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤が用いられることがある。次亜塩素酸、及び次亜塩素酸ナトリウム等は、市販の漂白剤やカビ取り剤等の多くの洗浄剤に含まれている。
【0026】
床材の内部にフェノール系酸化防止剤が存在する場合に、洗浄剤を床に使用すると、浴室の床が黄変することがあり、外観が悪化することがある。これは、洗浄剤に含まれる次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等が床材中に浸透し、フェノール系酸化防止剤と反応することにより、生成されたキノン誘導体により黄変すると考えられる。その反応式の一例を挙げると、以下の反応式(11)が考えられる。化合物(A)及び化合物(B)は、キノン誘導体の例であり、化合物(C)は副生成物の例である。
【0027】
【化2】
【0028】
また、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂では、表面に凹凸が多数形成されているため、従来の浴室用床では、コンディショナー等の頭髪用化粧品が床表面に残留しやすい。残留した頭髪用化粧品が乾燥し、床表面に付着したところに、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤を使用すると、頭髪用化粧品に含まれるフェノール系酸化防止剤と次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等とが反応して、キノン誘導体が生成され、浴室の床が黄変し、外観が悪化することがある。また、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤の場合でも、浴室の床が黄変し、外観が悪化することがある。
【0029】
このようなキノン誘導体による床の黄変は、中性洗剤では除去することが困難である。また、黄変を除去するためにアセトンなどの有機溶剤を塗布すると、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融する可能性がある。したがって、キノン誘導体により浴室の床が黄変した場合には、床材自体を貼りかえることが一般的であり、コストや作業の手間が問題となっている。
【0030】
本発明に係る浴室用床では、上記の構成が備えられているので、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等が床材の内部に浸透しにくく、キノン誘導体が形成されにくい。結果として、浴室用床の黄変を抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る浴室用床では、上記の構成が備えられているので、床表面にコンディショナー等が残留しにくい。結果として、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、浴室用床の黄変を抑制することができる。
【0032】
上記浴室用床は、浴室内の床面に用いることができる。上記浴室用床は、浴室内の床面に好適に用いられる。なお、上記浴室用床は、浴室内の壁面に用いられてもよい。
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る浴室用床を示す断面図である。
【0035】
図1に示す浴室用床1は、樹脂層2と、樹脂層2の第1の表面2a上に配置された被膜3とを備える。浴室用床1では、樹脂層2は、樹脂と酸化防止剤とを含む。浴室用床1では、被膜3は、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。
【0036】
浴室用床1では、被膜3の外側の表面3aの十点平均粗さRzが、4.0μm以下である。具体的には、被膜3の外側の表面3aの十点平均粗さRzが、0μmを超え4.0μm以下である。
【0037】
浴室用床1では、樹脂層2と、被膜3とは、積層されている。上記浴室用床では、上記樹脂層と上記被膜とは、積層されていてもよく、積層されていなくてもよい。上記浴室用床では、上記樹脂層と上記被膜との間には、他の層が配置されていてもよい。上記樹脂層と上記被膜との間に、他の層が配置されている場合には、床表面にコンディショナー等がより一層残留しにくい。結果として、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、浴室用床の黄変をより一層効果的に抑制することができる。上記他の層は、特に限定されない。
【0038】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記他の層の厚みは、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上であり、好ましくは7.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下である。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る浴室用床を示す断面図である。
【0040】
図2に示す浴室用床1Aは、樹脂層2Aと、樹脂層2Aの第1の表面2a上に配置された被膜3Aとを備える。浴室用床1Aでは、樹脂層2Aは、樹脂と酸化防止剤とを含む。浴室用床1Aでは、被膜3Aは、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。
【0041】
浴室用床1と浴室用床1Aとでは、被膜3,3Aの外側の表面3aの十点平均粗さRzが異なる。浴室用床1Aでは、被膜3Aの外側の表面3aの十点平均粗さRzが、4.0μm以下である。具体的には、被膜3Aの外側の表面3aの十点平均粗さRzが、0μmであり、被膜3Aの外側の表面3aは、平坦面である。
【0042】
上記浴室用床は、2層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。上記浴室用床は、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよく、4層以上の構造を有していてもよい。
【0043】
以下、浴室用床についてさらに詳しく説明する。
【0044】
(樹脂層)
上記樹脂層は、上記樹脂と上記酸化防止剤とを含む。
【0045】
上記樹脂層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上であり、好ましくは7.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。上記樹脂層の厚みが上記下限以上であると、浴室用床にクッション性を付与することができる。上記樹脂層の厚みが上記上限以下であると、上記浴室用床又は上記浴室用床を設置する床本体が変形した場合に、変形に樹脂層が追従することができ、床本体と樹脂層との剥離を抑制することができる。
【0046】
上記樹脂層の厚みは、平均厚みである。
【0047】
濡れた浴室内において滑り止め効果を発揮する観点からは、上記樹脂層の上記第1の表面に、凹凸が存在することが好ましい。上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、特に限定されない。上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、6.0μm以上であってもよく、8.0μm以上であってもよい。上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、14.0μm以下であってもよく、10.0μm以下であってもよい。上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzが上記下限以上及び上記上限以下であると、濡れた浴室内において滑り止め効果を発揮することができる。上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、上記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の上記樹脂層の上記第1の表面にて測定可能である。
【0048】
上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0049】
以下、上記樹脂層の成分について詳しく説明する。
【0050】
<樹脂>
上記樹脂は、軟質樹脂及び硬質樹脂に分類することができる。上記軟質樹脂とは、比重が1.35以下の樹脂を意味し、上記硬質樹脂とは、比重が1.35を超える樹脂を意味する。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
浴室用床にクッション性を付与する観点からは、上記樹脂は、軟質樹脂であることが好ましい。
【0052】
上記軟質樹脂としては、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0053】
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド樹脂、及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記浴室用床を設置する床本体への貼り付け性、運搬時の取り扱い性を良好にする観点からは、上記軟質樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、塩化ビニル系樹脂であることがより好ましい。
【0056】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、並びに、塩化ビニル以外の重合体及び共重合体に塩化ビニルがグラフト重合されたグラフト重合体等が挙げられる。上記塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。加工性を高める観点からは、上記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーの単独重合体であることが好ましい。
【0057】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン化合物;塩化アリル、アクリロニトリル等のビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド化合物等;無水マレイン酸等のジカルボン酸化合物が挙げられる。上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
塩化ビニルをグラフト共重合する重合体及び共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、及び塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。塩化ビニルをグラフト共重合する重合体及び共重合体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
また、上記塩化ビニル系樹脂は、後塩素化塩化ビニル系樹脂であってもよい。
【0060】
上記塩化ビニル系樹脂100重量%中、塩化ビニルに由来する構造単位の含有率は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記塩化ビニルに由来する構造単位の含有率が上記下限以上であると、難燃性を高めることができる。上記塩化ビニルに由来する構造単位の含有率が上記上限以下であると、成形性を高めることができ、成形時に塩化ビニルの熱分解を抑えることができる。なお、上記塩化ビニル系樹脂100重量%中、塩化ビニルに由来する構造単位の含有率は、100重量%(全量)であってもよい。
【0061】
上記塩化ビニル系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の有機材料と併用されてもよい。上記塩化ビニル系樹脂は、機械的強度をより一層向上させるために、アクリル樹脂等と併用されてもよい。
【0062】
上記塩化ビニル系樹脂の重合度は、好ましくは800以上、より好ましくは1000以上、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1300以下である。上記塩化ビニル系樹脂の重合度が上記下限以上であると、浴室用床の機械的強度を高めることができる。上記塩化ビニル系樹脂の重合度が上記上限以下であると、成形時に高温下にする必要がなくなり、加工性がより一層良好になる。
【0063】
浴室用床にクッション性を付与する観点からは、上記樹脂層中の上記樹脂100重量%中、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。
【0064】
<酸化防止剤>
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤であることがより好ましい。
【0066】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
成形中、及び成形後の上記浴室用床の酸化劣化を防止する観点からは、上記樹脂層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であり、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下である。
【0069】
成形中、及び成形後の上記浴室用床の酸化劣化を防止する観点からは、上記樹脂層100重量%中、上記フェノール系酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であり、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下である。
【0070】
<他の成分>
上記樹脂層は、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、加工助剤、充填剤、滑剤、可塑剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、顔料、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、及び熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0071】
上記加工助剤としては特に限定されず、アクリル系加工助剤等が挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては、重量平均分子量が10万~200万であるアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体等が挙げられ、具体的には、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、及び2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記充填剤としては特に限定されず、炭酸カルシウム、及びタルク等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記滑剤としては、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤と
しては、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記可塑剤は、成形時の加工性を高める目的で添加されていてもよい。上記可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、及びジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記衝撃改質剤としては、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等が挙げられる。上記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記耐熱向上剤としては、α-メチルスチレン系、及びN-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。上記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。上記顔料は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記熱安定剤としては、熱安定剤、及び熱安定化助剤等が挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、及びバリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記熱可塑性エラストマーは、特に限定されない。上記熱可塑性エラストマーとして、従来公知の化合物を用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
(被膜)
上記被膜の厚みは、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上であり、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは15.0μm以下である。上記被膜の厚みが、上記下限以上であると、頭髪用化粧品が床表面に残留しにくいため、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、浴室用床の黄変を抑制することができる。上記被膜の厚みが、上記上限以下であると、上記浴室用床を設置する床本体が変形した場合に追従にすることができ、上記樹脂層からの剥離を抑制することができる。
【0083】
上記浴室用床では、上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzは、4.0μm以下である。上記被膜の上記樹脂層とは反対側の表面の十点平均粗さRzは、4.0μm以下である。上記浴室用床の上記被膜側の表面の十点平均粗さRzは、4.0μm以下である。
【0084】
上記被膜の外側(上記被膜の上記樹脂層とは反対側)の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは0μm以上、より好ましくは0μmを超え、さらに好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。上記被膜の外側(上記被膜の上記樹脂層とは反対側)の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは4.0μm未満、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.3μm以下である。上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが上記下限以上又は上記下限を超えると、濡れた浴室内において滑り止め効果を発揮する。上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、上記上限以下又は上記上限未満であると、コンディショナー等が床表面に残留しにくいため、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、浴室用床の黄変を抑制することができる。
【0085】
上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0086】
<熱硬化性樹脂の硬化物>
上記被膜は、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。
【0087】
上記被膜中の熱硬化性樹脂の硬化物としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の硬化物、フェノール樹脂の硬化物、及びメラミン樹脂の硬化物等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂の硬化物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
上記ウレタン樹脂としては、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
【0089】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記被膜中の上記熱硬化性樹脂の硬化物は、上記ウレタン樹脂であることが好ましく、上記アクリルウレタン樹脂であることがより好ましい。上記ウレタン樹脂は、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物の反応物である。上記アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオール化合物と、イソシアネート化合物との反応物である。
【0090】
上記被膜中の上記熱硬化性樹脂の硬化物が上記ウレタン樹脂である場合、柔軟性を高める観点からは、上記被膜中の上記熱硬化性樹脂の硬化物が、下記式(1)で表される構造単位を1個以上有することが好ましい。柔軟性を高める観点からは、上記被膜中の上記熱硬化性樹脂の硬化物が、下記式(1)で表される構造単位を複数個有することが好ましい。
【0091】
【化3】
【0092】
上記式(1)中、R1及びR3はそれぞれ、イソシアネート化合物に由来する骨格を表し、R2は、ポリオール化合物に由来する骨格を表す。
【0093】
上記式(1)で表される構造単位は、第1のイソシアネート化合物に由来する骨格(R1)と、ポリオール化合物に由来する骨格(R2)と、第2のイソシアネート化合物に由来する骨格(R3)とを有する。
【0094】
上記R1及び上記R3は、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記第1のイソシアネート化合物及び上記第2のイソシアネート化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0095】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記ポリオール化合物は、アクリルポリオール化合物であることが好ましい。上記R2は、アクリルポリオール化合物に由来する骨格であることが好ましい。上記ポリオール化合物がアクリルポリオール化合物である場合には、上記被膜中の上記熱硬化性樹脂の硬化物は、アクリルウレタン樹脂である。
【0096】
上記アクリルポリオール化合物としては、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合した化合物が挙げられる。ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。上記アクリルポリオール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
【0097】
上記第1のイソシアネート化合物及び上記第2のイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、及びそれらの変性体等が挙げられる。上記第1のイソシアネート化合物及び上記第2のイソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物であってもよく、ポリイソシアネート化合物であってもよい。上記第1のイソシアネート化合物及び上記第2のイソシアネート化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記脂肪族イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0099】
上記脂環族イソシアネート化合物としては、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)等が挙げられる。
【0100】
芳香族ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンイソシアネート(MDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。
【0101】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、クルードトリレンイソシアネート(クルードTDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリス(フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等が挙げられる。
【0102】
上記ジイソシアネート化合物の変性体としては、イソシアヌレート変性体、ビューレット変性体、及びカルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0103】
被膜の透明性を高める観点からは、上記第1のイソシアネート化合物、及び上記第2のイソシアネート化合物は、上記脂肪族イソシアネート化合物であることが好ましく、無黄変脂肪族イソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0104】
上記第1のイソシアネート化合物、及び上記第2のイソシアネート化合物の数平均分子量は、特に限定されない。
【0105】
上記第2のイソシアネート化合物は、2量体又は3量体であることが好ましい。上記第2のイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個又は3個有することが好ましい。この場合、3次元網目構造を構成することができ、樹脂層と被膜との接着性を高めることができる。
【0106】
アクリルウレタン樹脂において、用いられたイソシアネート化合物の分子構造は、H-NMR、13C-NMR、及びIR測定等により分析することができる。また、アクリルウレタン樹脂に含まれる未反応イソシアネート化合物を熱分解GCMSで分析することにより、イソシアネート化合物の分子構造及び数平均分子量を分析することもできる。
【0107】
上記熱硬化性樹脂において、上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記イソシアネート化合物の合計の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下である。上記イソシアネート化合物の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、被膜の耐衝撃性、耐光性、及び耐水性を高めることができ、外観を良好にすることができる。
【0108】
<他の成分>
上記被膜は、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、熱硬化剤、酸化防止剤、加工助剤、充填剤、滑剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、顔料、熱安定剤、光安定剤、及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0109】
上記熱硬化剤としては、ウレタン化触媒等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂の硬化物がウレタン樹脂である場合に、上記被膜は、上記ウレタン化触媒を含むことが好ましい。
【0110】
上記ウレタン化触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、塩化錫、及びテトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。
【0111】
反応性を高める観点からは、上記ウレタン化触媒は、ジブチル錫ジラウレートであることが好ましい。
【0112】
上記被膜の材料において、上記アクリルポリオール化合物100重量部に対して、上記ウレタン化触媒の含有量は、好ましくは0.01重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以下である。上記ウレタン化触媒の含有量が上記下限以上であると、上記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料を上記樹脂層の上記第1の表面に配置した後の硬化時間を短くすることができる。上記ウレタン化触媒の含有量が上記上限以下であると、浴室用床の製造コストを抑えることができる。
【0113】
上記酸化防止剤、上記加工助剤、上記充填剤、上記滑剤、上記衝撃改質剤、上記耐熱向上剤、上記顔料、上記熱安定剤、上記光安定剤、及び上記紫外線吸収剤は、上述した材料を用いることができる。
【0114】
(浴室用床の製造方法)
本発明に係る浴室用床の製造方法では、樹脂と酸化防止剤とを含む樹脂層の第1の表面上に、熱硬化性樹脂を含む被膜の材料を配置する工程(配置工程)と、上記熱硬化性樹脂を硬化させて、上記樹脂層の上記第1の表面上に配置されておりかつ上記熱硬化性樹脂の硬化物を含む被膜を形成する工程(被膜形成工程)とを備える。
【0115】
上記被膜の材料を配置する方法としては、スプレー塗布、及び刷毛等による塗布等が挙げられる。上記樹脂層の第1の表面に上記被膜を容易にかつ均一に配置する観点、及び施工時間を短くし、かつ施工費用を低くする観点からは、上記被膜の材料を配置する方法は、スプレー塗布であることが好ましい。
【0116】
上記熱硬化性樹脂を硬化させる方法としては、自然乾燥させる方法、熱風乾燥炉で乾燥させる方法等が挙げられる。製造効率を良好にする観点からは、上記熱硬化性樹脂を硬化させる方法は、熱風乾燥炉で乾燥させる方法であることが好ましい。
【0117】
本発明に係る浴室用床の製造方法では、上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、4.0μm以下である。
【0118】
上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは0μm以上、より好ましくは0μmを超え、さらに好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは4.0μm未満、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.3μm以下である。上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが、上記下限以上又は上記下限を超えると、濡れた浴室内において滑り止め効果を発揮する。上記被膜の外側の表面の十点平均粗さRzが上記上限以下又は上記上限未満であると、コンディショナー等が床表面により一層残留しにくいため、次亜塩素酸又は次亜塩素酸ナトリウム等を含む洗浄剤等を使用した場合にも、浴室用床の黄変をより一層抑制することができる。
【0119】
上記被膜の外側の表面の十点平均粗さは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0120】
上記浴室用床の製造方法では、上記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは8.0μm以上、好ましくは10.0μm以下である。上記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さRzは、14.0μm以下であってもよく、10.0μm以下であってもよい。
【0121】
上記熱硬化性樹脂を含む被膜の材料が配置される前の上記樹脂層の上記第1の表面の十点平均粗さは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0122】
(浴室)
本発明に係る浴室は、浴室を構成する浴室床として、上述した浴室用床を備える。
【0123】
上記被膜は、上記樹脂層よりも、上記浴室の内部空間側に位置する。上記浴室における上記浴室用床では、上記樹脂層は、上記被膜の内側に位置する。上記浴室では、上記被膜は、上記樹脂層の外側に位置する。上記浴室において、上記被膜は、露出していてもよい。
【0124】
本発明に係る浴室は、上記の構成が備えられているので、浴室用床の黄変を抑制することができる。
【0125】
本発明に係る浴室は、介護施設などの大型浴室、戸建て住宅、集合住宅等の浴室に好適である。
【0126】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0127】
以下の材料を用意した。
【0128】
(樹脂層の材料)
樹脂:塩化ビニル系樹脂(塩化ビニルに由来する構造単位の含有率:65重量%~75重量%)
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤
【0129】
(被膜の材料)
アクリルポリオール化合物
イソシアネート化合物
【0130】
(実施例1)
(樹脂層の形成)
塩化ビニル系樹脂100重量部と、フェノール系酸化防止剤1重量部とを混合して、樹脂層の材料を得た。得られた樹脂層の材料を金型(縦100mm×横100mm)に注入した後、圧力39MPaに加圧しながら200℃で1.5分間加熱した後、20℃で3分間冷却することによりプレス成形し、縦100mm×横100mm×厚み2.8mmの樹脂層を形成した。
【0131】
(被膜の形成)
アクリルポリオール化合物100重量部と、イソシアネート化合物1重量部とを混合して、被膜の材料を得た。得られた被膜の材料を、上記樹脂層の第1の表面全体に、スプレーイングシステムジャパン合同会社製「TPU-65-0025-SS」を用いて、スプレー圧力0.2MPa及び23℃の条件でスプレー塗布した。スプレー塗布後、60℃で30分間乾燥し、かつアクリルポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させて、下記式(1)で表される構造単位を有するアクリルウレタン樹脂を含む被膜を形成した。なお、被膜の厚みは5.0μmであった。このようにして、樹脂層と被膜とを備える浴室用床の試験サンプルを得た。
【0132】
【化4】
【0133】
(実施例2)
被膜の厚みを10μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0134】
(実施例3)
被膜の厚みを20μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0135】
(比較例1)
被膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、試験サンプルを得た。
【0136】
(評価)
(1)十点平均粗さ
JIS B0601:1994に準拠して、被膜の材料が配置される前の樹脂層の第1の表面の十点平均粗さRzと、被膜の外側の表面の十点平均粗さRzとを測定した。
【0137】
(2)黄変
(2-1)洗浄剤の浸透抑制性
作製した各試験サンプルの被膜側の表面に、次亜塩素酸を含む洗浄剤(花王社製「強力カビハイター」)をスプレーで1回吹き付けた。次いで、各試験サンプルを40℃の恒温槽で加熱し、乾燥させた。その後、各試験サンプルを50℃の恒温槽で加熱した。50℃での加熱を開始してから、80時間後に色差計を用いてLab値を計測し、50℃での加熱開始時のLab値との色差ΔEを算出した。洗浄剤の浸透抑制性を、以下の基準で判定した。
【0138】
[洗浄剤の浸透抑制性の判定基準]
○○:ΔEが0.5未満
○:ΔEが0.5以上1.0未満
×:ΔEが1.0以上
【0139】
(2-2)頭髪用化粧品の残留抑制性
作製した各試験サンプルの被膜側の表面に、頭髪用化粧品(ストーリア社製「ダイアンコンディショナー」)3gを均一に塗布した。各試験サンプルを60℃の恒温槽で加熱した。加熱を開始してから、80時間後に、水道水の流水によって洗浄し、表面の固形付着物を除去した後に、色差計を用いてLab値を計測し、50℃での加熱開始時のLab値との色差ΔEを算出した。頭髪用化粧品の残留抑制性を、以下の基準で判定した。
【0140】
[頭髪用化粧品の残留抑制性の判定基準]
○○:ΔEが1.0未満
○:ΔEが1.0以上1.5未満
×:ΔEが1.5以上
【0141】
(3)耐曲げ性
作製した各試験サンプルを、床本体の表面に貼り付けた。その後、曲げR20まで変化させて、曲げ試験を行った。浴室用床の耐曲げ性を、以下の基準で判定した。
【0142】
[耐曲げ性の判定基準]
○:樹脂層が割れない
×:樹脂層が割れる
【0143】
(4)耐剥離性
作製した各試験サンプルの被膜側の表面に、カッターで長さ2mmの切り込みを入れた。切り込み上にテープ(ニチバン社製「CT-18」)を貼り、1分後に、テープを除去した。被膜の耐剥離性を、以下の基準で判定した。
【0144】
[耐剥離性の判定基準]
○:被膜が樹脂層から剥離しない
×:被膜が樹脂層から剥離する
【0145】
浴室用床の構成及び結果を、下記の表1に示す。
【0146】
【表1】
【符号の説明】
【0147】
1,1A…浴室用床
2,2A…樹脂層
2a…第1の表面
3,3A…被膜
3a…外側の表面
図1
図2