(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023210
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】床置用クリーンユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20230209BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20230209BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D25/16
F04D29/44 W
F04D29/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128512
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 寛展
(72)【発明者】
【氏名】小林 克年
(72)【発明者】
【氏名】安達 東彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB45
3H130AB62
3H130AB65
3H130AC11
3H130BA14B
3H130BA66B
3H130CA03
3H130EA08A
3H130EA08B
3H130EB04B
3H130EB05B
(57)【要約】
【課題】
シロッコファンによって吐出された空気を浄化する床置用クリーンユニットにおいて、本体の吸気口の位置によらず、ファン風量が適正化され、ファンの消費電力を抑制し、騒音増大を抑制する。
【解決手段】
ファンケーシング内に設けた羽根車を回転軸を中心に回転することでファン吸込口から空気を吸い込みファン吐出口から空気を吐出するシロッコファンと、吐出された空気を浄化するフィルタを備えた床置用クリーンユニットであって、ファン吸込口およびファン吐出口と垂直な面に外気を取り込む吸気口が設けられており、案内板がファンケーシングにファン吸込口の円周上に間隔を置いて複数配置されている構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンケーシング内に設けた羽根車を回転軸を中心に回転することでファン吸込口から空気を吸い込みファン吐出口から空気を吐出するシロッコファンと、前記吐出された空気を浄化するフィルタを備えた床置用クリーンユニットであって、
前記ファン吸込口および前記ファン吐出口と垂直な面に外気を取り込む吸気口が設けられており、
案内板が前記ファンケーシングに前記ファン吸込口の円周上に間隔を置いて複数配置されていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記吸気口は、前面に配置された前面吸気口と背面に配置された背面吸気口の何れかであって、
前記ファンケーシングはスクロール形状をしており、前記ファンケーシングの巻き終わり側が前記背面吸気口側に、巻き始め側が前記前面吸気口側に配置されており、
前記羽根車の回転方向は、前記ファンケーシングの巻き始めから巻き終わりの方向であって、
前記案内板は、前記円周上に配置されている間隔が前記シロッコファンの吐出口側で疎に配置されていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記回転軸を通り前記前面吸気口から前記背面吸気口へ延びる直線とそれと直交する2本の直線によって前記ファン吸込口を4分割した場合、前面上側を領域A、前面下側を領域B、背面下側を領域C、背面上側を領域Dとしたとき、前記ファンケーシングは、該ファンケーシングの巻き終わり側が前記領域Cと前記領域Dに、巻き始め側が前記領域Aと前記領域Bに配置されており、
前記案内板は、前記円周上に配置されている間隔が前記領域Dで疎に配置されていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記シロッコファンを、それぞれの前記ファンケーシングの底面が対向するように2個備えていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の床置用クリーンユニットであって、
2個の前記シロッコファンのそれぞれが有する前記案内板は、前記ファンケーシングの底面が対向する面に対して面対称ではなく、前記回転軸に対して回転してずらした位置に設けられていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記案内板は、前記回転軸方向に立てて前記ファンケーシングに設けられており、
前記案内板を立てた高さは、前記ファン吸込口の径の0.2倍から0.6倍の間であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
複数の前記案内板の内周側端部を結ぶ円の径は、前記ファン吸込口の径の0.3倍から1.2倍の間であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項8】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
複数の前記案内板の外周側端部を結ぶ円の径は、前記ファン吸込口の径の1.3倍から2倍の間であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項9】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
複数の前記案内板の枚数は8枚から16枚の間であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項10】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記案内板の内周側端部と前記回転軸を通る線と、前記案内板の外周側端部と前記回転軸を通る線とによってなす角度は、前記シロッコファンの回転方向の逆方向であり、3度以上20度以下であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項11】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記案内板の内周側端部と前記回転軸を通る線と、前記案内板の内周側端部がなす角度は、ゼロ度か前記シロッコファンの回転方向の逆方向であることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項12】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記案内板は、前記回転軸方向に立てて前記ファンケーシングに設けられており、
前記案内板の立てた高さは、前記回転軸に垂直な平面から傾斜しており、その傾斜は前記回転軸側が高くなっていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【請求項13】
請求項1に記載の床置用クリーンユニットであって、
前記案内板は、前記回転軸方向に立てて前記ファンケーシングに設けられており、
前記案内板の立てた高さ方向の角部はRが付いていることを特徴とする床置用クリーンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を清浄化する床置用クリーンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
床置用クリーンユニットは、半導体製造工場や、医薬品、化粧品、食品の製造所などでの部屋内の空気の清浄化に用いられる。床置用クリーンユニットは、集塵用フィルタ、送風機であるシロッコファン複数個をまとめたパッケージユニット型であり、室内に設置して空気を循環する。床置用クリーンユニットは、標準的には、床置用クリーンユニットの背面を壁際に設置して、外気を取り込む開口部と清浄化した空気を排気する排気口を前面としている。すなわち、標準的な床置用クリーンユニットは、前面から吸気して前面に吐き出す、全循環式で部屋内を清浄化する仕様となっている。
【0003】
しかし、ユーザによっては床置用クリーンユニットをダクト接続式として、外気を取り込む開口部にダクトを繋いで使用する場合などがある。例えば、床置用クリーンユニットの使用例として、ダクトによって室外から空気を送り込んで清浄化する場合がある。その場合、ダクトを背面に繋ぐことが多いため、前面からではなく背面から吸気することがある。この場合、ファンにとっての吸込方向が変わるためファン風量が増大する課題があった。この課題を解決するに際して、風量が変化する要因が明確でないため、回転数による調整も難しく、開口部に塞ぎ板を設けるなどして開口面積を減らすことで風量を調節していた。その結果、風量も完全に適正にすることは難しく、かつ、ファンの消費電力も増大する課題があった。
【0004】
ファン風量を調節する一般的な方法として、案内板(案内羽根、ガイドベーン)をファン入口に設ける手段がある。これは案内板に空気を緩やかに添わせてファン入口に気流を案内する流体機械の要素である。これにより、ファンが空気を吸込む際に、流れの方向及び大きさが急激に変化する際に生じる流体損失を減らして、ファンの消費電力増大や、騒音増大を防ぐことができる。
【0005】
このような案内板(固定翼)を設置した背景技術として特許文献1がある。特許文献1では、シロッコファンと、このシロッコファンを囲繞し、底部としての底板に吸気孔が形成されたファンケーシングとを具え、ファンケーシング内ヘ吸い込む風量を増加させるため、底板外面の吸気孔の周りより外方に向かう複数の固定翼としてのリブを形成する。そして、特許文献1には、このリブの吸気孔側端部とシロッコファンの軸心を結ぶ線に対して、リブの外方側端部をシロッコファンの回転方向と反対側に位置させる送風機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、固定翼によってファンに流入する流れを円滑に吸気孔に案内することができる。しかし、固定翼によって壁面から受ける流体抵抗が増えるため逆にファンの消費電力を増やす恐れがあるが、それについては考慮されていない。また、固定翼が吸気孔に入り込んで設けられる場合、ファンのブレードとの干渉が発生し、騒音源となる懸念がある。また、風量増大には効果があるものの、必要以上に増大することがあり、風量の適正化には効果が小さいという課題がある。
【0008】
また、特許文献1では、ファンの吸込口である吸気孔は、外気を取り込む開口部である本体ケースの吸気口に対して並行に位置しているため、一様流が得やすいが、本体ケースの吸気口を変更した場合については考慮されておらず、吸気口が変わった場合に同じような効果が得られるか不明である。また、ファンを同時に2個使用するような場合、特に同軸モータによりファンを回転するような場合の固定翼設置方法も不明である。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、床置用クリーンユニット本体の吸気口の位置によらず、ファン風量が適正化され、ファンの消費電力を抑制し、騒音増大を抑制した、シロッコファンを用いた床置用クリーンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その一例を挙げるならば、ファンケーシング内に設けた羽根車を回転軸を中心に回転することでファン吸込口から空気を吸い込みファン吐出口から空気を吐出するシロッコファンと、吐出された空気を浄化するフィルタを備えた床置用クリーンユニットであって、ファン吸込口およびファン吐出口と垂直な面に外気を取り込む吸気口が設けられており、案内板がファンケーシングにファン吸込口の円周上に間隔を置いて複数配置されている構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床置用クリーンユニット本体の吸気口の位置によらず、ファン風量が適正化され、ファンの消費電力増大を抑制し、騒音増大を抑制した、シロッコファンを用いた床置式クリーンユニットが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における床置用クリーンユニットの中央断面の斜視図である。
【
図2】実施例における床置用クリーンユニットの内部の一部を示す斜視図である。
【
図3】従来の床置用クリーンユニットのファン吸込口側から見た側面図である。
【
図4】実施例における床置用クリーンユニットのファン吸込口側から見た側面図である。
【
図5】実施例における床置用クリーンユニットの背面吸気口側から見た部分背面図である。
【
図6】実施例における床置用クリーンユニットの効果を示す測定結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0014】
図1は本実施例における床置用クリーンユニットの中央断面の斜視図である。
図1に示すように、床置用クリーンユニット100では、シロッコファン110によって、ユニット前面101の下側の前面吸気口120から塵埃の含まれたユニット吸気130を吸引し、ファン室140に引き込む。そして、ファン排気150が、仕切り板141を通った後、フィルタ室142に入り、フィルタ143によって浄化されたユニット排気160がユニット排気口161から吐き出される。ここで、シロッコファンは多翼ファンとも呼ばれ、回転方向に対して細長い板状の羽根(ファンブレード)が筒状に取り付けられた羽根車を有しており、この羽根車を回転させることで空気を吸い込んで排気する。なお、ユニット背面102の下側は、背面パネル170がファン室140の背面を塞いでいる。
【0015】
図2は、本実施例における床置用クリーンユニットの内部の一部を示す斜視図である。
図2に示すように、床置用クリーンユニットのファン室140は処理する風量を増やせるようにシロッコファン110を2個、すなわち、シロッコファン110Aとシロッコファン110Bを有している。2つのシロッコファン110A、110Bは、それぞれのファンケーシング310A、310Bの底面が対向するように配置されており、中央の同軸のファンの回転軸200を持つファンモータ201で駆動される。床置用クリーンユニットのファン室140はユニット前面101側に設けた床置用クリーンユニットの前面吸気口120からユニット吸気130を吸気する。シロッコファン110A、110Bは、それぞれファン吸込口210A、210Bからファン吸込空気220A、220Bを吸い込み、ファン吐出口230A、230Bからファン排気150A、150Bとして吐出する。ファン排気150A、150Bはフィルタ室142へ吐出される。
【0016】
シロッコファン110A、110Bのファン吸込口210A、210B周囲には、ファンの回転軸200と略垂直な方向に立てられた複数の小板で構成される案内板240A、240Bが設けられており、ファン吸込空気220A、220Bは、その小板の間を通過してファン吸込口210A、210Bに吸い込まれる。
【0017】
図2に示すように、通常、床置用クリーンユニット100は部屋の壁の壁際に設置されて、壁にユニット背面102を付け、ユニット前面101を室内に向けることで前面吸気、および前面排気として室内空気を循環して空気を清浄化するが、ユーザの設定によりユニット背面102から吸気する背面吸気の場合もある。その場合は背面パネル170を外して床置用クリーンユニットの背面吸気口250とし、前面吸気口120は塞ぐ構成となる。なお、外気を取り込む開口部である床置用クリーンユニット100の本体の前面吸気口120および背面吸気口250は、ファン吸込口210A、210Bおよびファン吐出口230A、230Bと垂直な面となる。
【0018】
図3は、
図2においてシロッコファン110Aのファン吸込口210A側から見た側面図であり、案内板240Aが設けられていない従来の場合の構成図である。
図3においては、ファンケーシング310A内で回転するファンブレード320が透視されている。
図3において、
図2と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。シロッコファン110Aのファン吸込口210Aに吸い込まれる気流の流れ場は、前面吸気と背面吸気の場合で異なる。すなわち、前面吸気口120から吸気する場合の前面気流330と、背面吸気口250から吸気する場合の背面気流340がある。
図3では、前面気流330を太い実線、背面気流340を太い破線の矢印で示し、矢印の大きさは気流の速さ、矢印の向きは気流の向きを示す。
図3において、ファンの回転軸200を通り前面吸気口120から背面吸気口250へ延びる直線とそれと直交する2本の一点鎖線で示した直線350によってファン吸込口210Aを4分割し、前面上側を領域A、前面下側を領域B、背面下側を領域C、背面上側を領域Dとする。ファンケーシング310Aはスクロール形状をしており、ファン回転方向360はファンケーシングの巻き始めから巻き終わりの方向であって、ファンケーシング巻き終わり側が領域C、D、巻き始め側が領域A、Bとなっている。
【0019】
図3において、ファン吸込口210AのAからDの全領域で、ファン回転方向360に対し、前面気流330は順方向、背面気流340は逆方向を、各々の速度成分として向いている。そのため、ファンブレード320にかかる負荷は大きくなり、ファンの消費電力は背面吸気の方が大きくなる。前面吸気口120から近い位置にある領域Bでは前面気流330Bが背面気流340Bに対して大きいが、背面吸気口250に近い領域Cでは逆になる。ここで、ファンブレード320によってファンケーシング310A内に生じている流れは、領域Bでの、巻き始め流れ370より、領域Cでの、巻き終わり流れ371の方が高速である。ファンケーシング310Aの巻き始めに近い領域Bから排気されるまでに、ファンケーシング310Aの壁面からの抵抗や混合損失など、流体的な損失を受けるため、巻き終わり領域のCで高速に流入したほうが損失を受けにくくなり、風量は増大しやすい。そのため、領域Cにおいて高速に流入する背面吸気のときに風量が増大する。なお、領域Dでは、ファンブレード320から流れは剥がれてしまっていて、前面気流330A、背面気流340Aの、風量に対する寄与は小さい。領域Aはスクロールの巻き始めであるため風量に影響する。ただし、領域A、Dでは、前面気流330と背面気流340の流速は大きくはなく、かつ、ほぼ変わらない。
【0020】
図4は、本実施例における、
図2においてシロッコファン110Aのファン吸込口210A側から見た側面図である。
図4において、
図3と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図4において、
図3と異なる点は、案内板240Aを有している点である。
【0021】
図5は、本実施例における、
図4において背面吸気口250側から見た部分背面図である。
図5においては、2個のシロッコファンのうちのシロッコファン110A側の半分のみを示した部分背面図であって、案内板240A、ファンケーシング310A等を透過している。
【0022】
図4、5に示すように、ファンケーシング310Aに案内板240Aを設けることで、ファンに吸い込まれる流れ場を、前面吸気と背面吸気の場合で同じ様になるように整流し、前面吸気と背面吸気の場合で風量とファンの消費電力を同等とする効果を得る。案内板240Aは、ファン吸込口210Aの円周上に間隔を置いて複数配置されるようにファンケーシング310Aに設けられている。また、案内板240Aは、ファンケーシング310Aにおいてファンの回転軸200方向に立てて設けられる。案内板の設計値は、ファンの風量や寸法に依存するが、本実施例における案内板の構成について以下に示す。
【0023】
図5に示す、案内板240Aの立てた高さ520は、ファン吸込口径410の0.2倍より低いと整流効果は生じず好ましくない。
【0024】
また、案内板240Aの立てた高さ520は、ファン吸込口径410の0.6倍より高いと流体抵抗を生じる影響が大きくなる。また、その場合、吸込気流である、前面気流330あるいは背面気流340が案内板240Aに衝突して流体損失を生じやすい。また、案内板240Aによって乱された流れが騒音源になるため、望ましくない。また、板高さが高い場合はコスト増となり、また、案内板240Aとユニット側板510との干渉も無視できなくなり、ユニットが大きくなる恐れがある。
【0025】
図4に示す、複数の案内板240Aの内周側端部を結ぶ円である内周430の径は、ファン吸込口径410の0.3倍より小さいとファンブレード320との流れの干渉を生じて騒音源となりうる。また、内周430の径がファン吸込口径410の1.2倍より大きいとファン吸込口210Aから離れすぎるため整流効果が小さくなり好ましくない。また、複数の案内板240Aの外周側端部を結ぶ円である外周431の径は、ファン吸込口径410の1.3倍より小さいと整流効果を生じないため好ましくない。また、外周431の径がファン吸込口径410の2倍より大きいと抵抗の影響が大きくなるため好ましくない。
【0026】
案内板240Aの枚数は8枚より少ないと整流効果が低いため望ましくない。また、案内板240Aの枚数が16枚より多いと壁面からの摩擦損失が大きくなり望ましくない。
【0027】
また、ファン吸込の領域Dは風量への寄与は小さく、案内板240Aがあると壁面からの摩擦損失が大きくなるため、この領域には設けないか、または、他の領域に比べて疎に配置することが望ましい。
【0028】
また、案内板240Aは内周側端部と回転軸200とを通る線に対して傾斜することが望ましい。傾斜方向は、案内板240Aの内周側端部と回転軸200を通る線と、案内板240Aの外周側端部と回転軸200を通る線とによってなす角度440に関して、前面気流330が案内板240Aに沿うようにファン回転方向360の逆方向であることが望ましい。角度440は3度未満および20度より大きいと、流入方向にマッチングしなくなるので好ましくない。
【0029】
案内板240Aの内周側端部と回転軸200とを通る線に対して、案内板240Aの内周側端部がなす角度450、すなわち、案内板240aの付け根からの角度450は、キャンバーラインが451のように傾斜する場合に、案内板240Aの内周側端部と回転軸200とを通る線に対してライン451のなす角である。角度450は、ゼロ度か、あるいは、ファン回転方向360の逆方向でさえあれば整流効果を有するので好ましい。ファン単体試験のときのように、シロッコファン吸込面側に水平に全体の開口領域がある場合、ファンには自然に吸い込む気流が生じる。この場合、気流は吸込口に対して放射状に流入するので、流入する角度はゼロ度になる。したがって、角度のマッチングが生じて望ましい。逆方向であれば、前面吸気の場合の角度にマッチングするため好ましい。
【0030】
図5において、案内板240Aの高さ520は、破線530のように回転軸200に垂直な直線状でよいが、破線531のように回転軸200に垂直な平面から傾斜していてもよい。ファンブレード320のファンモータ201側まで深く流入して吐き出される気流541は矢印のように案内板240Aの高さの高い位置から吸引され、浅く流入して吐き出される気流540は矢印のように案内板240Aの低いところを通過する。そのため傾斜は回転軸200側が高くなっているほうが好ましい。このとき気流541には適切に気流の方向を案内でき、気流540は流体抵抗が小さくて済み、吸い込まれる気流にとって過大な流体損失の増加を抑制することができる。また、角部は532のようにRが付いていてもよい。Rがない直角状の時は案内板240Aの面積が大きくなるため気流を案内しやすく好ましい。Rが付いているときは案内板240Aに気流が衝突する損失を抑制することができて好ましい。
【0031】
シロッコファンを複数含む場合として、例えば2個のシロッコファンを
図2に示すように同軸モータで回転する場合は、シロッコファンはユニットの中心面に関して対称に設置されている。案内板も中心面に対称に設ければ良い。このとき、整流効果は最も上がるためファンの消費電力低減が大きいことが期待できる。ただし、対称性が上がることによって調和的な騒音増大や、異音を生じることがある。その場合は、案内板はユニット中心面に対称ではなく、ファン回転軸に関して、ずらした角度に設置することにより調和性が低下し、騒音への影響は抑えることができて望ましい。ただしアンバランスに気流が流入するため、大きくはないがファンの消費電力が悪化する場合がある。その場合、ずらす角度は案内板設置角度の半分程度までにすればファンの消費電力悪化への影響はほとんど抑えられるため、好ましい。
【0032】
図6は、本実施例における床置用クリーンユニットの効果を示す測定結果の一例である。
図6において、横軸はファンの出力風量、縦軸はファンの消費電力である。
図6において、前面吸引で案内板なしの場合を×印で示し、基準値としている。ファン回転数は同一である。&印は案内板なしのときの背面吸気の場合であり、×印に比べ風量、ファンの消費電力とも大きい。♯印、*印は案内板を設置した背面吸気場合で、傾斜角度がゼロ度である等、上述した望ましい範囲とは異なる設計値となっている。それでも、風量、入力とも低減している。しかし、前面吸引とは異なる値となっている。〇印が上述した望ましい範囲で設計した案内板を設置した背面吸気の場合であり、×印とほぼ同等の、適正な風量、ファンの消費電力が得られた。なお、∇印は、案内板を設置せずファン回転数を低減して適正風量を得ようとした背面吸気の場合であるが、〇印に比べファンの消費電力が大きく、本実施例に比べ望ましくない。また、△印は〇印と同じ案内板のもとでの前面吸気の場合であり、×印とほぼ同じ値が得られており、案内板を付けた状態を標準仕様としてユニットを設計してもよいことがわかり、設計にとってもユーザにとっても案内板の付与の是非を考えずに済むので好ましい。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、案内板をファンケーシングにファン吸込口の円周上に間隔を置いて複数設ける。これにより、床置用クリーンユニット本体の吸気口の位置によらず、同じように吸込気流が案内板に沿ってシロッコファンに流入するため、ファン風量が適正化され、ファンの消費電力増加を抑制し、騒音増大を抑制することができる。
【0034】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
100:床置用クリーンユニット、143:フィルタ、110、110A、110B:シロッコファン、120:前面吸気口、200:回転軸、201:ファンモータ、210A、210B:ファン吸込口、230A、230B:ファン吐出口、240A、240B:案内板、250:背面吸気口、310A、310B:ファンケーシング、320:ファンブレード、330:前面気流、340:背面気流