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特開2023-23258静電スイッチの制御方法、及び、制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023258
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】静電スイッチの制御方法、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230209BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128579
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 弘充
(72)【発明者】
【氏名】澤田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】山上 修凡
【テーマコード(参考)】
5B020
【Fターム(参考)】
5B020DD02
(57)【要約】
【課題】イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制することが可能な静電スイッチの制御方法等を提供する。
【解決手段】静電スイッチ1の制御方法である。静電スイッチ1は、基板10と、基板10に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、m個の導体部は、第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有する。そして、制御方法は、第n導体部に第1電位を印加させた状態で、第n+1導体部に第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御ステップ(S11)と、第n導体部に第1電位を印加させた状態で、第n+1導体部に第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御ステップ(S12)とを含み、第1の制御ステップ、及び、第2の制御ステップの一方が実行された後に、第1の制御ステップ、及び、第2の制御ステップの他方が連続して実行される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電スイッチの制御方法であって、
前記静電スイッチは、
基板と、
前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、
前記m個の導体部は、
第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、
前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、
前記制御方法は、
前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御ステップと、
前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御ステップとを含み、
前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後に、前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される、
静電スイッチの制御方法。
【請求項2】
前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、
前記第1の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に第4電位を印加させることを含み、
前記第2の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第3電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第4電位を印加させることを含み、
前記第4電位は、前記第2電位より低く、かつ、前記第3電位より高い電位である、
請求項1に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項3】
前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、
前記第1の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第2電位と同じ電位である、第5電位を印加させることを含み、
前記第2の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第3電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第3電位と同じ電位である、第6電位を印加させることを含む、
請求項1に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項4】
前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、
前記制御方法は、さらに、
前記他方の制御ステップが実行された後に、前記第3電位よりも大きい電位である第7電位を印加させる第3の制御ステップと、
前記第n+1導体部に前記第7電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第7電位よりも高い第8電位を印加させる第4の制御ステップと、
前記第n+1導体部に前記第7電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第7電位よりも低い第9電位を印加させる第5の制御ステップとを含み、
前記第4の制御ステップ、及び、前記第5の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後に、前記第4の制御ステップ、及び、前記第5の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される、
請求項1に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項5】
前記第1電位は、0電位である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項6】
前記第2電位は、2.5V以上5V以下であり、
前記第3電位は、-5V以上、-2.5V以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項7】
前記第3電位は、前記第2電位の極性を反転させた電位である、
請求項6に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項8】
前記第2電位の印加の開始から前記第3電位の印加の終了までの期間を1周期とすると、
前記1周期は、12.5μs以下である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項9】
前記第2電位が印加される期間と、前記第3電位が印加される期間とは、同一の期間である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項10】
前記第3電位は、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させたことにより発生する前記第n+1導体部を構成する金属のイオンが前記第n導体部に到達する前に印加される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項11】
前記第4電位は、前記第1電位と同電位である、
請求項2に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項12】
前記第n+2導体部は、前記第n導体部と前記第n+1導体部との間の寄生容量を低減するための電極である、
請求項3に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項13】
前記第n+2導体部は、前記第n導体部に付着した水滴を検出するための電極である、
請求項4に記載の静電スイッチの制御方法。
【請求項14】
静電スイッチを制御する制御装置であって、
前記静電スイッチは、
基板と、
前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、
前記m個の導体部は、
第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、
前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、
前記制御装置は、
前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御、及び、前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御のうち一方の制御を実行した後、前記第1の制御、及び、前記第2の制御のうち他方の制御を連続して実行する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電スイッチの制御方法、及び、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器又は家電機器において、静電スイッチによって操作するシステムが知られている。静電スイッチは、当該静電スイッチの持つ静電容量を利用してタッチ(入力)を検出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-77556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような静電スイッチは、高温高湿環境下で長時間使用すると、いわゆるイオンマイグレーションが発生することが知られている。このイオンマイグレーションを放置すると、導体間の短絡を発生させ、静電スイッチの製品寿命の低下につながるので、導体間の短絡の発生を抑制することが求められるが、上記の特許文献1には、導体間の短絡の抑制については開示されていない。
【0005】
そこで、本開示は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制することが可能な静電スイッチの制御方法、及び、制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る静電スイッチの制御方法は、静電スイッチの制御方法であって、前記静電スイッチは、基板と、前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、前記m個の導体部は、第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、前記制御方法は、前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御ステップと、前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御ステップとを含み、前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後に、前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される。
【0007】
本開示の一態様に係る制御装置は、静電スイッチを制御する制御装置であって、前記静電スイッチは、基板と、前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、前記m個の導体部は、第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、前記制御装置は、前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御、及び、前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御のうち一方の制御を実行した後、前記第1の制御、及び、前記第2の制御のうち他方の制御を連続して実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制することが可能な静電スイッチの制御方法等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る静電スイッチを示す平面図である。
図2図2は、実施の形態に係る静電スイッチを示す分解斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る静電スイッチの各配線の模式図及び制御部の機能構成を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る静電スイッチの制御方法を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る各配線に印加される電位を示す図である。
図6A図6Aは、イオンマイグレーションによる短絡の抑制の効果を検証するための実験結果を示す第1図である。
図6B図6Bは、イオンマイグレーションによる短絡の抑制の効果を検証するための実験結果を示す第2図である。
図7図7は、実施の形態の変形例1に係る静電スイッチの各配線の模式図及び制御部の機能構成を示す図である。
図8図8は、実施の形態の変形例1に係る静電スイッチの制御方法の第1例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態の変形例1に係る各配線に印加される電位の第1例を示す図である。
図10図10は、実施の形態の変形例1に係る静電スイッチの制御方法の第2例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施の形態の変形例1に係る各配線に印加される電位の第2例を示す図である。
図12図12は、実施の形態の変形例2に係る静電スイッチの各配線の模式図及び制御部の機能構成を示す図である。
図13図13は、実施の形態の変形例2に係る静電スイッチの制御方法を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態の変形例2に係る各配線に印加される電位を示す図である。
図15図15は、実施の形態の変形例3に係る静電スイッチの各配線の模式図及び制御部の機能構成を示す図である。
図16図16は、実施の形態の変形例3に係る静電スイッチの制御方法を示すフローチャートである。
図17図17は、実施の形態の変形例3に係る各配線に印加される電位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至った経緯)
上記の「発明が解決しようとする課題」に記載したように、静電スイッチ(静電容量スイッチ)は、85℃85%rhなどの高温高湿環境下で、導体部(例えば、配線パターン(配線))にバイアス電圧が印加されている状態で長時間使用されると、導体近傍の電界現象によって電流が流れる現象、いわゆるイオンマイグレーションが発生することが知られている。
【0011】
イオンマイグレーションは、並んで設けられた配線(2つの配線)がある場合に、水分(湿度)が多い環境条件下で2つの配線に電位差が発生するような電位を印加すると、配線の陽極の金属がイオン化して対向する陰極へ移動し、再び陰極で金属として生成される現象である。陽極においてイオン化した金属は、基板表面又は基板内部に含まれる水分などに溶け出し、電界によるクーロン力により引き寄せられることによって、陰極へ移動する。陰極で生成された金属が成長すると、絶縁不良となり、最終的には配線間が短絡(ショート)する。これにより、製品寿命の低下及びシステムの信頼性の低下などの製品の欠陥を招く。
【0012】
そのため、静電スイッチにおいて、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することが望まれているが、特許文献1には、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することは開示されていない。
【0013】
そこで、本願発明者らは、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することについて鋭意検討を行い、タッチ検出用の電位を2つの配線のうちの一方の配線に印加した後に、当該電位と逆極性の電位を当該一方の配線に印加する、つまり、2つの配線に印加される電位の大小関係を反転させることで、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することが可能であることを見いだした。そして、以下に示す静電スイッチの制御方法及び制御装置を創案した。
【0014】
本開示の一態様に係る静電スイッチの制御方法は、静電スイッチの制御方法であって、前記静電スイッチは、基板と、前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、前記m個の導体部は、第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、前記制御方法は、前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御ステップと、前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御ステップとを含み、前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後に、前記第1の制御ステップ、及び、前記第2の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される。
【0015】
これにより、第n導体部に第1電位を印加させた状態で、第n+1導体部に対して第2電位が印加された後に第3電位が印加されるので、第n+1導体部に第2電位が印加されている状態のときに第n+1導体部から第n導体部へ放出された金属イオンを、第n+1導体部へ引き込む(戻す)ことができる。よって、本開示の一態様に係る静電スイッチの制御方法によれば、イオンマイグレーションによる、第n導体部と第n+1導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0016】
また、例えば、前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、前記第1の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に第4電位を印加させることを含み、前記第2の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第3電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第4電位を印加させることを含み、前記第4電位は、前記第2電位より低く、かつ、前記第3電位より高い電位であってもよい。
【0017】
これにより、第n+1導体部に第2電位が印加されている状態のときに第n+1導体部から第n+2導体部へ放出された金属イオンを、第n+1導体部に第3電位が印加されている状態のときに第n+1導体部へ引き込む(戻す)ことができる。よって、さらに、イオンマイグレーションによる、第n+1導体部と第n+2導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0018】
また、例えば、前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、前記第1の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させた状態で、前記n+2導体部に前記第2電位と同じ電位である、第5電位を印加させることを含み、前記第2の制御ステップは、さらに、前記第n+1導体部に前記第3電位を印加させた状態で、前記n+2導体部に前記第3電位と同じ電位である、第6電位を印加させることを含んでもよい。
【0019】
これにより、第n+1導体部と第n+2導体部とに同じタイミングで同じ電位が印加されるので、第n+1導体部と第n+2導体部との間に電位差が発生しにくい。また、イオンマイグレーションは、電位差が小さい導体間では発生しにくい。よって、第n+1導体部と第n+2導体部とに同じタイミングで電位が印加される場合であっても、第n+1導体部と第n+2導体部との間に電位差が発生しにくいので、さらに、イオンマイグレーションによる、第n+1導体部と第n+2導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0020】
また、例えば、前記m個の導体部は、さらに、前記第n+1導体部に対して、前記第n導体部が位置する側と反対側の側に配置された第n+2導体部を備え、前記制御方法は、さらに、前記他方の制御ステップが実行された後に、前記第3電位よりも大きい電位である第7電位を印加させる第3の制御ステップと、前記第n+1導体部に前記第7電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第7電位よりも高い第8電位を印加させる第4の制御ステップと、前記第n+1導体部に前記第7電位を印加させた状態で、前記第n+2導体部に前記第7電位よりも低い第9電位を印加させる第5の制御ステップとを含み、前記第4の制御ステップ、及び、前記第5の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後に、前記第4の制御ステップ、及び、前記第5の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行されてもよい。
【0021】
これにより、第n+1導体部と第n+2導体部とに互いに異なるタイミングで電位が印加される場合であっても、イオンマイグレーションによる、第n+1導体部と第n+2導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0022】
また、例えば、前記第1電位は、0電位であってもよい。
【0023】
これにより、第1電位が0電位である場合に、イオンマイグレーションによる第n導体部と第n+1導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0024】
また、例えば、前記第2電位は、2.5V以上5V以下であり、前記第3電位は、-5V以上、-2.5V以下であってもよい。
【0025】
これにより、第1電位が0電位である場合、第2電位から第1電位を差し引いた電位差と、第1電位から第3電位を差し引いた電位差とを近づけることができるので、イオンマイグレーションによる第n導体部と第n+1導体部との間の短絡の発生をより抑制することができる。
【0026】
また、例えば、前記第3電位は、前記第2電位の極性を反転させた電位であってもよい。
【0027】
これにより、第2電位から第1電位を差し引いた電位差と、第1電位から第3電位を差し引いた電位差とを等しくすることができる。つまり、第2電位が印加される単位時間当りに第n+1導体部から放出される金属イオンの量と、第3電位が印加される単位時間当りに第n+1導体部へ引き込まれる金属イオンの量とを同程度の量とすることができる。よって、長期間使用された場合であっても、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生をより確実に抑制することができる。
【0028】
また、例えば、前記第2電位の印加の開始から前記第3電位の印加の終了までの期間を1周期とすると、前記1周期は、12.5μs以下であってもよい。
【0029】
これにより、第n+1導体部に第2電位を印加させたことにより発生する第n+1導体部を構成する金属のイオンが第n導体部に到達する前に、当該イオンを第n+1導体部へ引き込ませるための第3電位を印加することができる。つまり、第n+1導体部を構成する金属のイオンが第n導体部に到達し、第n導体部で結晶化することを抑制することができる。よって、長期間使用された場合であっても、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0030】
また、例えば、前記第2電位が印加される期間と、前記第3電位が印加される期間とは、同一の期間であってもよい。
【0031】
これにより、第2電位が印加される期間に第n+1導体部から放出される金属イオンの量と、第3電位が印加される期間に第n+1導体部へ引き込まれる金属イオンの量とを同程度の量とすることができる。よって、長期間使用された場合であっても、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生をより一層確実に抑制することができる。
【0032】
また、例えば、前記第3電位は、前記第n+1導体部に前記第2電位を印加させたことにより発生する前記第n+1導体部を構成する金属のイオンが前記第n導体部に到達する前に印加されてもよい。
【0033】
これにより、第n+1導体部を構成する金属のイオンが第n導体部に到達し、第n導体部で結晶化することを抑制することができる。よって、長期間使用された場合であっても、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生をより一層確実に抑制することができる。
【0034】
また、例えば、前記第4電位は、前記第1電位と同電位であってもよい。
【0035】
これにより、静電スイッチが第n+1導体部を挟むように配置された2つの導体部(第n導体部及び第n+2導体部)を有する構成であり、かつ、当該2つの導体部に同電位が印加される場合であっても、イオンマイグレーションによる、第n+1導体部と当該2つの導体部との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0036】
また、例えば、前記第n+2導体部は、前記第n導体部と前記n+1導体部との間の寄生容量を低減するための電極であってもよい。
【0037】
これにより、寄生容量を低減するための電極と第n+1導体部との間のイオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することができる。
【0038】
また、例えば、前記第n+2導体部は、前記第n導体部に付着した水滴を検出するための電極であってもよい。
【0039】
これにより、水滴を検出するための電極と第n+1導体部との間のイオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制することができる。
【0040】
また、本開示の一態様に係る制御装置は、静電スイッチを制御する制御装置であって、前記静電スイッチは、基板と、前記基板に配置されたm(mは2以上の整数)個の導体部と、を備え、前記m個の導体部は、第n(nはm-1以上の整数)番目の第n導体部と、前記第n導体部の隣に配置された第n+1番目の第n+1導体部とを有し、前記制御装置は、前記第n導体部に第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも高い第2電位を印加させる第1の制御、及び、前記第n導体部に前記第1電位を印加させた状態で、前記第n+1導体部に前記第1電位よりも低い第3電位を印加させる第2の制御のうち一方の制御を実行した後、前記第1の制御、及び、前記第2の制御のうち他方の制御を連続して実行する。
【0041】
これにより、上記の静電スイッチの制御方法と同様の効果を奏する。
【0042】
なお、これらの全般的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の非一時的記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め記憶されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0043】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0044】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0045】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0046】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。実施の形態では、Z軸方向を静電スイッチの厚み方向としている。また、本明細書において、「平面視」とは、静電スイッチの各構成要素の積層方向(厚み方向)に沿って静電スイッチを見ることを意味する。
【0047】
また、本明細書において、等しい、平行などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、5%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0048】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る静電スイッチの制御方法及び制御装置について、図1図6Bを参照しながら説明する。
【0049】
[1.静電スイッチの構成]
まず、本実施の形態に係る静電スイッチの構成について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る静電スイッチを示す平面図である。図2は、本実施の形態に係る静電スイッチを示す分解斜視図である。なお、静電スイッチ1の構成は、既知の静電スイッチと同じであってもよく、本開示は、後述する制御部(図3に示す制御部90を参照)の制御方法に特徴を有する。
【0050】
本実施の形態に係る静電スイッチ1は、静電容量方式のスイッチであり、ユーザの指等の接触を検出する。静電スイッチ1は、例えば、光源(図示しない)、又は、表示装置(図示しない)などと組み合わされて、タッチ(例えば、タッチ位置)を検出する機能を有する入力装置として用いられる。光源としては、LED(Light Emitting Diode)が例示されるがこれに限定されない。また、表示装置としては、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が例示されるがこれに限定されない。
【0051】
静電スイッチ1は、例えば、車載機器又は電子機器に設けられる。車載機器としては、例えば、エアコン、オーディオ機器、センターインフォメーションディスプレイ、クラスター等の自動車内に設けられる車載ディスプレイが例示される。また、電子機器としては、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機、パソコン、冷蔵庫、洗濯機等の家電機器が例示される。
【0052】
静電スイッチ1は、タッチパネル、タッチスイッチ、タッチセンサ、タッチキーとも称される。また、静電スイッチ1は、静電容量式センサの一例である。
【0053】
図1及び図2に示すように、静電スイッチ1は、基板10と、透明電極20と、配線(配線層)30と、第1絶縁層40と、第2絶縁層50と、粘着層60と、補強板70と、端子80とを備える。
【0054】
基板10は、板状又はフィルム状の部材であり、基板10上に各種配線及び各種樹脂層が形成される。基板10は、ガラス、樹脂などの透光性を有する材料を含んで構成される。透光性を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂などが例示されるが、これに限定されない。また、基板10は、例えば、可撓性を有していてもよい。
【0055】
基板10の平面視形状は、例えば、矩形状であるが、これに限定されず、台形状、円形状等であってもよい。
【0056】
基板10には、FPC(Flexible Printed Circuits)11が実装されている。FPC11の一端は、例えば、制御部90が設けられている制御基板(図示せず)に接続される。FPC11のX軸プラス側の端部には、例えば、補強板70が設けられる。なお、可撓性を有する基板10を用いる場合、基板10に一体で湾曲可能なテール部を形成し、テール部をFPC11として機能させる部位に構成してもよい。このように、基板10は、FPC11が実装されておらず、テール部により制御基板と接続される構成であってもよい。
【0057】
透明電極20は、配線30と電気的に接続されており、タッチを検出するための電極である。透明電極20は、指等で触れて操作を行うスイッチに対応する機能を有するセンサ電極である。透明電極20は、電界を発生させるための送信電極であるとも言える。静電スイッチ1が表示装置に取り付けられた場合、例えば、透明電極20の少なくとも一部は、視認可能な領域に設けられる。
【0058】
透明電極20は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明金属酸化物によって構成された電極である。本実施の形態において、透明電極20は、ITO膜である。なお、透明電極20は、例えば、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物により構成されてもよい。また、透明電極20は、例えば、銀ナノワイヤーインクにより構成されてもよい。また、透明電極20は、例えば、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)と呼ばれる導電性ポリマーにより形成されてもよい。つまり、透明電極20は、例えば、PEDOT製であってもよい。
【0059】
透明電極20の形成方法は、基板10の全面に上記で例示した電極材料からなる導電膜を形成してから不要部分をエッチング除去する方法が例示される。導電膜の形成は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、及び、ロールコーター法等によって行うことができる。
【0060】
透明電極20の平面視形状は、例えば、矩形状であるが、これに限定されず、円形状、菱形状、多角形状等であってもよい。
【0061】
配線30は、透明電極20からFPC11の先端の端子部まで形成されており、制御基板の制御部90と透明電極20とを電気的に接続するための配線、及び、GND配線等を含む。平面視において、配線30は、一部が透明電極20と重なるように設けられる。
【0062】
配線30は、例えば、静電スイッチ1が表示装置に取り付けられた場合、視認不可能な領域に設けられ、透明電極20とは異なる材料により構成される。配線30は、静電スイッチ1において配線抵抗が上昇すること抑制するために、透明電極20より抵抗値が低い材料により構成される。また、配線30は、例えば、不透明な材料により構成されてもよい。これにより、静電スイッチ1における配線抵抗が低減され、タッチの検出感度を高めることができる。
【0063】
配線30は、例えば、配線パターンに応じた開口を有するスクリーン版を用いたスクリーン印刷等により、透明電極20が形成された基板10上に導電性ペーストを塗布して硬化させることで形成される。また、配線30は、例えば、スクリーン印刷等により透明電極20が形成された基板10上の全面に導電性ペーストを塗布して硬化させた後、レーザカットすることにより形成されてもよい。導電性ペーストは、複数の金属粒子、金属粒子同士を結着するバインダ樹脂、溶剤等を含む。金属粒子を構成する材料の具体例としては、銀、銅、ニッケル、スズ、ビスマス、亜鉛、インジウム、又は、パラジウム等が例示される。この中でも、特に、電気抵抗率がより小さく、かつ、安価な銀を用いることが好ましい。本実施の形態では、配線30は、銀配線である。また、バインダ樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が例示される。
【0064】
第1絶縁層40は、透光性を有し、透明電極20及び配線30を覆うように基板10上に設けられる保護層である。第1絶縁層40は、基板10のZ軸プラス側の面の全体を覆ってもよい。第1絶縁層40は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料をスクリーン印刷等により塗布して硬化させることで形成される。また、樹脂材料は、既知のいかなる材料が用いられてもよい。
【0065】
第2絶縁層50は、透光性を有し、第1絶縁層40上に当該第1絶縁層40を覆うように設けられる保護層である。第2絶縁層50は、第1絶縁層40のピンホールなどの欠陥を低減するために設けられる。第2絶縁層50は、例えば、第1絶縁層40のピンホールを埋めることで、ピンホールの発生を抑制する。第2絶縁層50に用いられる材料は、第1絶縁層40と同じであってもよい。なお、第2絶縁層50は、設けられなくてもよい。
【0066】
粘着層60は、静電スイッチ1とカバーパネル(例えば、強化ガラス又は樹脂板)とを貼り合わせるためのフィルム状の粘着シートである。粘着層60は、透光性を有する。粘着層60は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)により実現されるが、これに限定されない。粘着層60は、例えば、透光性及び接着性を有する樹脂により実現されてもよい。粘着層60は、例えば、OCR(Optical Clear Resin)により実現されてもよい。
【0067】
なお、カバーパネルには、所望の意匠を表示するためのパターンが形成されていてもよい。例えば、カバーパネルには、透明電極20の少なくとも一部を視認させる透過部と、配線30を覆う遮光部とが形成されていてもよい。カバーパネルは透光性を有しており、黒色のインクを塗布することにより遮光部が形成されてもよい。
【0068】
なお、粘着層60の厚みは、例えば、基板10のZ軸プラス側の面に形成された段差を吸収可能な厚みであるとよい。また、粘着層60のZ軸プラス側の面には、カバーパネルが貼り合わされていない状態で、保護フィルムが設けられていてもよい。
【0069】
なお、透光性を有する表示装置が静電スイッチ1の前面(Z軸プラス側の面)に配置される場合、粘着層60は、静電スイッチ1と表示装置とを貼り合わせてもよい。
【0070】
補強板70は、FPC11のX軸プラス側の端部を補強する部材であり、FPC11より剛性が高い部材である。補強板70は、例えば、FPC11を制御基板のコネクタに差し込む際の作業性の向上のために設けられる。補強板70は、PET、ポリプロピレン(PP)等を含んで構成されるプラスチック板である。
【0071】
補強板70は、平面視において、FPC11の端子80が形成される面と反対側の面(Z軸マイナス側の面)に設けられており、当該端子80を覆うように設けられる。
【0072】
端子80は、制御基板のコネクタに接続される接続端子である。端子80は、例えば、配線30上にカーボン印刷を行うことにより、当該配線30にカーボンインクを塗布することで形成される。
【0073】
ここで、静電スイッチ1の配線30及び制御基板に設けられる制御部90について、さらに図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る静電スイッチ1の各配線30の模式図及び制御部90の機能構成を示す図である。図3では、静電スイッチ1の各配線30を主に図示しており、基板10等の他の構成の図示を省略している。なお、図3に示す透明電極20は、視認される部分である「1」のみを図示している。
【0074】
図3に示すように、配線30は、第1配線W1(SW_1)と、GND配線(第2配線W2(GND)及び第3配線W3(GND))とを有する。また、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3とは、制御基板に設けられた制御部90に電気的に接続されている。また、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3とは、同じ金属粒子を含んで構成される。本実施の形態では、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3とは、銀配線である。第1配線W1、第2配線W2及び第3配線W3は、m個の導体部の一例である。本実施の形態では、mは3である。
【0075】
第1配線W1は、制御部90及び透明電極20のそれぞれと接続されており、第1配線W1には、所定の電位が印加される。第1配線W1は、透明電極20の周囲を囲む枠状部分(透明電極20と接続される部分)と、透明電極20と制御部90とを接続するための配線部分(例えば、図3に示す制御部90と透明電極20とを接続する直線部分)とを有する。
【0076】
第2配線W2及び第3配線W3は、制御部90及び透明電極20のうち制御部90のみと接続されており、第2配線W2及び第3配線W3にはGND電位が印加される。例えば、第2配線W2及び第3配線W3には、常にGND電位が印加されている。第2配線W2及び第3配線W3は、電界を発生させるための受信電極であるとも言える。
【0077】
第2配線W2及び第3配線W3は、1本の配線であり、第1配線W1を囲むように形成される。第2配線W2及び第3配線W3は、一部が第1配線W1の直線部分を挟むように形成される。便宜上、1本のGND配線のうち、第1配線W1の一方側に配置された部分を第2配線W2と記載し、第1配線W1の他方側に配置された部分を第3配線W3と記載する。第2配線W2は、例えば、第1配線W1の直線部分を延長した延長線とGND配線との交点より、第1配線W1の一方側に配置された部分であり、第3配線W3は、例えば、当該交点より、第1配線W1の他方側に配置された部分であるとも言える。第2配線W2及び第3配線W3は、同電位である。
【0078】
なお、第2配線W2及び第3配線W3は、少なくとも一方が設けられていればよい。また、第2配線W2及び第3配線W3は、物理的に分離されていてもよい。
【0079】
なお、図3では、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれとは、互いに平行となる部分を有する例について図示しているが、これに限定されない。
【0080】
このように、静電スイッチ1は、基板10と、基板10に配置されたm個の配線30(導体部の一例)とを備える。そして、m個の配線30は、第1配線W1(第n+1番目の第n+1導体部の一例)と、第1配線W1の隣に配置された第2配線W2及び第3配線W3の一方(第n番目の第n導体部の一例)とを有する。また、静電スイッチ1は、さらに、第1配線W1に対して、第2配線W2及び第3配線W3の一方が位置する側と反対側に配置された第2配線W2及び第3配線W3の他方(第n+2番目の第n+2導体部の一例)を有していてもよい。m個の導体部は、n番目の導体部(例えば、第2配線W2及び第3配線W3の一方)と、n+1番目の導体部(例えば、第1配線W1)とを含んで構成される。なお、mは、2以上の整数である。また、nは、m-1以上の整数であり、例えば、1以上の整数である。
【0081】
また、静電スイッチ1は、基板10と、基板10に隣り合って配置された第1配線W1及び第2配線W2とを備えるとも言える。また、静電スイッチ1は、さらに、第1配線W1に対して第2配線W2と反対側に配置された第3配線W3を備えていてもよい。この場合、第1配線W1と第3配線W3とは、隣り合って配置される。
【0082】
なお、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれとの配線間隔(スペース)は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第1配線W1と第2配線W2との間の間隔、及び、第1配線W1と第3配線W3との間の配線間隔の少なくとも一方は、250μm以上1000μm以下であってもよい。つまり、ラインアンドスペース(L/S)のスペースは、250μm以上1000μm以下であってもよい。
【0083】
例えば、スペースが250μm未満となると、各配線30に用いられている金属粒子、印加電位等にもよるが、イオンマイグレーションによる短絡の発生を効果的に抑制できない場合がある。また、スペースが1000μmより大きくなると、各配線30に用いられている金属粒子、印加電位等にもよるが、イオンマイグレーションによる短絡の発生が問題とならない場合がある。なお、スペースは、250μm以上1000μm以下であることに限定されず、250μm未満、又は、1000μmより大きくてもよい。
【0084】
制御部90は、FPC11及び配線30(例えば、第1配線W1)を介して、透明電極20に接続されており、静電スイッチ1においてタッチを検出するための制御を行う。また、制御部90は、さらに、静電スイッチ1においてイオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御を行う。本開示は、制御部90がイオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御を行う点に特徴を有する。制御部90の制御方法については、後述する。制御部90は、静電スイッチ1を制御する制御装置の一例である。
【0085】
制御部90は、電圧駆動部91と、タッチ検出部92とを有する。制御部90は、例えば、プロセッサにより実現される。例えば、プロセッサが記憶部(図示しない)に記憶されているプログラム(コンピュータプログラム)に従って動作することにより、制御部90の各種機能が実現される。また、制御部90は、例えば、静電スイッチ1が搭載される機器に内蔵されている。
【0086】
電圧駆動部91は、第1配線W1と、第2配線W2及び第3配線W3とに、所定のタイミングに所定の電位(例えば、パルス電位)を供給する。電圧駆動部91は、第1配線W1に、タッチ検出時と、イオンマイグレーションによる短絡の抑制時とにおいて、互いに異なる電位を供給する。電圧駆動部91は、例えば、第1配線W1に、タッチ検出時と、イオンマイグレーションによる短絡の抑制時とにおいて、互いに極性が異なる電位を供給する。また、電圧駆動部91は、第2配線W2及び第3配線W3に、タッチ検出時と、イオンマイグレーションによる短絡の抑制時とにおいて、同じ電位を供給する。電圧駆動部91は、タッチ検出時に第1配線W1に供給する電位と、イオンマイグレーションによる短絡の抑制時に第1配線W1に供給する電位との間の電位を、第2配線W2及び第3配線W3に常に供給する。
【0087】
電圧駆動部91は、例えば、正電位(例えば、後述する電位v1)及び負電位(後述する電位v2)、及び、GND電位を出力可能に構成される。電圧駆動部91は、例えば、交流電力を整流して正電位及び負電位を生成可能な整流回路を有していてもよい。また、電圧駆動部91は、GND電位に接続されてもよい。GND電位は、0電位又は接地電位とも称される。
【0088】
タッチ検出部92は、静電スイッチ1の静電容量値の変化を検知して押圧の有無、及び、押圧位置を検出する。電圧駆動部91によりタッチ検出用の電位が供給されると、隣接する透明電極20と第2配線W2及び第3配線W3との間に電界が形成される。指が透明電極20と第2配線W2及び第3配線W3とに近づくと、電界の一部が指に移り、第2配線W2及び第3配線W3で検知する電界が減少し、その結果、隣接する透明電極20と第2配線W2及び第3配線W3との間の静電容量(相互容量)も減少する。タッチ検出部92は、この静電容量の減少を捉え、指の接近を検出する。なお、投影型の静電容量方式(例えば、相互容量方式)におけるタッチの検出方法は、公知の技術であり、既知のいかなる検出方法が用いられてもよい。
【0089】
[2.静電スイッチの動作]
続いて、上記のように構成される静電スイッチ1の動作について、図4及び図5を参照しながら説明する。以下では、静電スイッチ1における、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御方法について説明する。
【0090】
図4は、本実施の形態に係る静電スイッチ1の制御方法を示すフローチャートである。図4は、静電スイッチ1を制御する制御部90の制御方法を示す。図5は、本実施の形態に係る各配線30に印加される電位を示す図である。図5では、第1配線W1、第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれにおいて、印加される電位の時間変化を示す。図5の縦軸は、各配線30に印加される電位(V)を示しており、横軸は時間(t)を示している。また、図5では、銀イオン(Agイオン)の移動を矢印で示している。なお、本明細書において、図5に示す電位v1の印加の開始タイミングである時刻t1から、電位v2の印加の終了タイミングである時刻t3までの期間p3を1周期とする。
【0091】
図4に示すように、電圧駆動部91は、時刻t1に、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S11)。ステップS11は、タッチ検出のためのステップである。GND電位は、第1配線W1とGND配線との間の容量を計測するための基準電位であり、第1電位の一例である。本実施の形態では、第1電位は、0電位であるが、これに限定されない。また、検出電位は、第2電位の一例であり、本実施の形態では電位v1である。なお、ステップS11は、第1の制御ステップの一例である。
【0092】
このとき、例えば、第1配線W1は、陽極であり、GND配線は、陰極である。陽極は相対的に電位が高い配線を指し、陰極は相対的に電位が低い配線を指す。
【0093】
図5に示すように、電圧駆動部91は、時刻t1から時刻t2までの期間p1で、第1配線W1に電位v1を印加し、かつ、GND配線(第2配線W2及び第3配線W3)にGND電位(<電位v1)を印加する。電位v1は、第1配線W1に接続された透明電極20をスイッチとして機能させるための電位である。
【0094】
この時刻t1から時刻t2までの期間p1では、第1配線W1及びGND配線のうち第1配線W1の方が電位が高いので、高温高湿環境下において、第1配線W1からAgイオン(Ag)が放出され、放出されたAgイオンが第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれへ引き込まれる。つまり、第1配線W1の銀がイオン化して第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれに向けて移動する。
【0095】
なお、電位v1は、タッチ検出可能な電位であればよく、例えば、2.5V以上5V以下の電位である。
【0096】
従来の静電スイッチであれば、期間p1のみが繰り返し実行されるので、第1配線W1の銀がイオン化してGND配線へ移動することのみが繰り返されるので、絶縁不良となり、最終的には配線間が短絡(ショート)することが起こり得る。そこで、本開示では、さらにステップS12の動作が実行される。
【0097】
図4を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、時刻t2に、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S12)。電圧駆動部91は、例えば、GND配線へのGND電位の印加を継続したまま、第1配線W1に印加する電位を、検出電位から復元電位に切り替える。ステップS12は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS12は、例えば、ステップS11の後に行われる。ステップS11とステップS12とは、例えば、連続して行われる。復元電位は、第3電位の一例であり、本実施の形態では電位v2である。なお、ステップS12は、第2の制御ステップの一例である。
【0098】
このとき、例えば、第1配線W1は、陰極であり、GND配線は、陽極である。つまり、電圧駆動部91は、時刻t2において、第1配線W1及びGND配線の陽極と陰極との関係(電位の大小関係)を反転させる。
【0099】
図5に示すように、電圧駆動部91は、時刻t2から時刻t3までの期間p2で、第1配線W1に電位v2を印加し、かつ、GND配線(第2配線W2及び第3配線W3)にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t2から時刻t3までの期間p2では、第1配線W1及びGND配線のうちGND配線の方が電位が高いので、高温高湿環境下において、第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれからAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第1配線W1へ引き込まれる。つまり、第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれの銀がイオン化して第1配線W1に向けて移動する。
【0100】
このとき、期間p1で第1配線W1から第2配線W2及び第3配線W3のそれぞれへ移動したAgイオンが、第1配線W1へ引き込まれる。つまり、第1配線W1の状態(例えば、金属粒子の量)が、期間p1の前の第1配線W1の状態に戻りうる(復元しうる)。これにより、期間p1で移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第1配線W1とGND配線とが短絡することを抑制することができる。
【0101】
なお、電位v2は、GND電位より低い電位であればよく、例えば、-5.0V以上、-2.5V以下の電位である。電位v2は、電位v1によるAgイオンの移動距離と同程度の移動距離を反対方向へ移動可能な電位であるとよい。
【0102】
電圧駆動部91は、期間p2において第1配線W1に、期間p1のときに第1配線W1に印加した電位v1と逆極性の電位v2を印加する。電位v1及びv2は、例えば、絶対値が等しく、極性が反対である電位である。電位v2は、電位v1の極性を反転させた電位であるとも言える。
【0103】
そして、時刻t3において、第1配線W1には、GND電位が印加される。つまり、時刻t3において、第1配線W1とGND配線とは、同電位となる。
【0104】
上記のように、電圧駆動部91は、第2配線W2及び第3配線W3の一方にGND電位を印加させた状態で、つまり当該一方にGND電位を印加している間に、第1配線W1にGND電位よりも高い電位v1を印加させる。そして、電圧駆動部91は、その後、第2配線W2及び第3配線W3の一方にGND電位を印加させた状態で、つまり当該一方にGND電位を印加している間に、第1配線W1にGND電位よりも低い電位v2を印加させる。
【0105】
また、電圧駆動部91は、第1配線W1に電位v1を印加させた状態で、第2配線W2及び第3配線W3の他方にGND電位(第4電位の一例)を印加させ、第1配線W1に電位v2を印加させた状態で、第2配線W2及び第3配線W3の他方にGND電位(第4電位の一例)を印加させてもよい。第2配線W2及び第3配線W3の他方に印加されるGND電位(0電位)は、電位v1より低く、かつ、電位v2より高い電位である。なお、第4電位は、電位v1より低く、かつ、電位v2より高い電位であれば、GND電位であることに限定されない。また、第4電位は、例えば、第1電位と同電位であるが、これに限定されない。このように、第1の制御ステップ(S11)は、さらに、第1配線W1に電位v1を印加させた状態で、第2配線W2及び第3配線W3の他方に第4電位を印加させることを含み、第2の制御ステップ(S12)は、さらに、第1配線W1に電位v2を印加させた状態で、第2配線W2及び第3配線W3の他方に第4電位を印加させることを含んでいてもよい。
【0106】
なお、図5の例では、電位v1が印加される期間p1と、電位v2が印加される期間p2とは、同一の長さの期間であるが、これに限定されず、電位v2の値等に応じて適宜決定されればよい。また、電位v2は、第1配線W1に電位v1を印加させたことにより発生する第1配線W1を構成する銀(金属の一例)のイオンがGND配線に到達する前に印加されるとよい。時刻t2は、第1配線W1を構成する銀のイオンがGND配線に到達する前のタイミングであってもよい。当該タイミングは、例えば、第1配線W1とGND配線との配線間隔、印加電位等に応じて変化しうる。当該タイミングは、事前の実験等により取得されうる。
【0107】
なお、ステップS11とステップS12とは順番が入れ替えられてもよい。つまり、静電スイッチ1の制御方法は、第1の制御ステップ及び第2の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後、第1の制御ステップ及び第2の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される。一方の制御ステップが実行された直後に他方の制御ステップが実行されるとも言える。なお、直後とは、一方の制御ステップと他方の制御ステップとの間に、他の制御ステップが含まれないことを意味する。
【0108】
なお、図5では、期間p1の直後に期間p2が実行される(第1の制御ステップの後に第2の制御ステップが実行される)例を示しているが、期間p1と期間p2との間に他の期間が含まれてもよい。例えば、期間p1と期間p2との間に、第1配線W1及びGND配線が同電位(例えば、GND電位)となる期間が設けられてもよい。また、例えば、期間p2は、時刻t2以降において、第1配線W1に再度電位v1が印加される前に、行われてもよい。しかしながら、イオンマイグレーションによる短絡の発生を効果的に抑制する観点から、期間p1の直後に期間p2が実行されるとよい。
【0109】
なお、時刻t1以前から時刻t3以降にわたり、GND配線にはGND電位が印加されている。また、時刻t1以前、及び、時刻t3以降において、第1配線W1にもGND電位が印加されている。つまり、時刻t1以前、及び、時刻t3以降において、第1配線W1とGND配線とには電位差は生じておらず、第1配線W1とGND配線との間でイオンマイグレーションは発生しない。
【0110】
なお、第1電位、第2電位及び第3電位の相対関係(例えば、大小関係)を維持していれば、第1電位は0電位であることに限定されず、かつ、第3電位は第2電位と逆極性の電位であることに限定されない。例えば、第1電位が5Vであり、第2電位が10Vであり、第3電位が0Vであってもよい。つまり、静電スイッチ1における基準電位が0電位ではなく、5V等であってもよい。
【0111】
なお、タッチ検出部92は、期間p1におけるタッチを検出し、かつ、期間p2におけるタッチを検出しないように構成される。
【0112】
[3.実験結果]
上記のように構成された静電スイッチ1におけるイオンマイグレーションによる短絡の抑制の効果を検証するための実験結果について、図6A及び図6Bを参照しながら説明する。図6Aは、イオンマイグレーションによる短絡の抑制の効果を検証するための実験結果を示す第1図である。図6Bは、イオンマイグレーションによる短絡の抑制の効果を検証するための実験結果を示す第2図である。図6Aでは、周波数が60kHz以上の場合の実験結果を示しており、図6Bでは、周波数が50kHz以下の場合の実験結果を示している。ここでの周波数は、図5に示す期間p3を1周期とした場合の周波数である。また、期間p1及びp2は、等しいとする。
【0113】
図6A及び図6Bにおける実験に用いた静電スイッチ1は、第1配線W1とGND配線との配線間隔(配線クリアランス)が0.25mmであり、第1配線W1及びGND配線は銀配線である。実験において印加された電位は、電位v1が5Vであり、電位v2が-5Vである。図6A及び図6Bでは、この条件のときに、周波数を変更していき、第1配線W1とGND配線との間の絶縁抵抗を計測した結果を示している。実験では、6000sの間、電位v1及びv2を連続して繰り返し印加している。つまり、実験では、6000sの間、図5に示す期間p3を繰り返し実行している。なお、図6Bに示す周波数0.01kHzの結果は、60sの間、電位v1及びv2を連続して繰り返し印加したときの結果を示す。
【0114】
図6A及び図6Bに示すように、周波数が低くなるほど、試験後の絶縁抵抗が低下していることがわかる。周波数が30kHz以下では目視でわかるレベルのイオンマイグレーションによる絶縁不良(例えば、周波数が30kHzにおける矢印箇所)が発生しており、絶縁抵抗が試験前と比べて大幅に低下している。一方、周波数が50kHz以上70kHz以下である場合、目視でわかるレベルのイオンマイグレーションによる絶縁不良の発生はないが、周波数が30kHz以下に比べて絶縁抵抗の低下幅が大幅に少ない。また、周波数が80kHz以上である場合、絶縁抵抗は試験の前後で同じ(変化無し)である。このことから、イオンマイグレーションによる短絡を発生させないためには、周波数が80kHz以上であるとよい。言い換えると、1周期(期間p3)は、12.5μs以下であるとよい。
【0115】
また、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制する観点から、周波数は高いとよい。周波数の上限値は、例えば、静電スイッチ1用のICのMax周波数、例えば、タッチを検出可能な上限の周波数であってもよい。例えば、周波数の上限値は、400kHzであってもよい。言い換えると、1周期(期間p3)は、2.5μs以上であってもよい。
【0116】
また、周波数が50kHz以上と50kHz未満とで試験前後での絶縁抵抗変化率が大きく異なる。例えば、周波数が50kHz以上の場合の絶縁抵抗変化率を用いた近似関数(例えば、一次近似関数)と、50kHz未満の場合の絶縁抵抗変化率を用いた近似関数(例えば、一次近似関数)とは、大きく傾きが異なる。このことから、周波数が50kHz以上(1周期が20μm以下)であれば、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制する効果が期待できる。
【0117】
なお、上記の数値は、第1配線W1及びGND配線が銀配線である場合の例であり、他の金属粒子を含む配線が形成される場合には当該数値は変化しうる。実験等により金属粒子に応じた周波数が設定されるとよい。
【0118】
なお、周波数が30kHz以下において絶縁抵抗が大幅に低下している理由は、周波数が低いと第1配線W1でイオン化した銀が、電位v2が印加されるときには既にGND配線において結晶化している、つまり電位v2の印加タイミングが遅いことが考えられる。
【0119】
なお、イオンマイグレーションによる導体間の短絡は、配線間隔が狭いほど発生しやすい。そのため、配線間隔が0.25mmより大きい場合にも、上記で示した周波数を用いることが可能である。
【0120】
(実施の形態の変形例1)
以下では、本変形例に係る静電スイッチの制御方法及び制御装置について、図7図11を参照しながら説明する。なお、以下では、実施の形態との相違点を中心に説明し、実施の形態と同一又は類似の内容については説明を省略又は簡略化する。
【0121】
まず、本変形例に係る静電スイッチの構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、本変形例に係る静電スイッチの各配線30の模式図及び制御部90の機能構成を示す図である。本変形例に係る静電スイッチ1は、タッチ検出用の配線が複数形成されている点において、実施の形態に係る静電スイッチ1と相違する。
【0122】
図7に示すように、本変形例に係る静電スイッチ1は、実施の形態の静電スイッチ1に加えて、タッチ検出用の配線である第4配線W4(SW_N)と、第5配線W5(SW_N+1)とを有する。第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5は、並んで配置される。また、GND配線(第2配線W2及び第3配線W3)は、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5を一括して囲むように設けられる。第1配線W1~第5配線W5のそれぞれは、同一の金属粒子を含んで構成されており、本変形例では、銀配線である。また、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5は、互いに異なる透明電極20と接続されている。第4配線W4は、第n+2番目の第n+2導体部の一例である。また、第1配線W1~第5配線W5は、m個の導体部の一例である。本変形例では、mは5である。
【0123】
続いて、上記のように構成される静電スイッチ1における、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御方法について、図8図11を参照しながら説明する。制御方法としては、2つあり、まずは図8及び図9を参照しながら1つ目の制御方法を説明する。図8及び図9は、3つの透明電極20へのタッチの検出を、時分割で行う場合の制御方法の一例を示す。具体的には、図8は、本変形例に係る静電スイッチの制御方法の第1例を示すフローチャートであり、図9は、本変形例に係る各配線30に印加される電位の第1例を示す図である。図9では、第1配線W1~第5配線W5のそれぞれにおいて、印加される電位の時間変化を示す。図9の縦軸は、各配線30に印加される電位(V)を示しており、横軸は時間(t)を示している。
【0124】
図8に示すように、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S21)。ステップS21は、図7に示す「1」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20に対するタッチ検出のためのステップである。ステップS21では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第1配線W1のみに電位(例えば、電位v1)が印加され、第4配線W4及び第5配線W5にはGND配線と同様にGND電位が印加される。なお、ステップS21は、第1の制御ステップの一例である。
【0125】
このとき、例えば、第1配線W1は、陽極であり、当該第1配線W1を挟むように配置される第3配線W3及び第4配線W4は、陰極である。
【0126】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t11から時刻t12までの期間、第1配線W1に電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、第3配線W3及び第4配線W4にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t11から時刻t12までの期間では、高温高湿環境下において、第1配線W1からAgイオン(Ag)が放出され、放出されたAgイオンが第3配線W3及び第4配線W4のそれぞれへ引き込まれる。つまり、第1配線W1の銀がイオン化して第3配線W3及び第4配線W4のそれぞれへ移動する。
【0127】
なお、時刻t11から時刻t12までの期間において、第4配線W4、第5配線W5及び第2配線W2はそれぞれ同電位であるので、第4配線W4、第5配線W5及び第2配線W2の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0128】
図8を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S22)。ステップS22は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS22では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第1配線W1のみに逆極性の電位(例えば、電位v2)が印加され、第4配線W4及び第5配線W5にはGND配線と同様にGND電位が印加される。ステップS22は、例えば、ステップS21とステップS23との間に行われる。ステップS22は、例えば、ステップS23が実行される前、つまり第1配線W1の隣の配線に電位v1が印加される前に行われる。なお、ステップS22は、第2の制御ステップの一例である。
【0129】
このとき、例えば、第1配線W1は、陰極であり、当該第1配線W1を挟むように配置される第3配線W3及び第4配線W4は、陽極である。
【0130】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t12から時刻t13までの期間、第1配線W1にステップS21で印加された電位と逆極性の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、第3配線W3及び第4配線W4にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t12から時刻t13までの期間では、高温高湿環境下において、第3配線W3及び第4配線W4のそれぞれからAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第1配線W1へ引き込まれる。つまり、第3配線W3及び第4配線W4のそれぞれの銀がイオン化して第1配線W1に向けて移動する。
【0131】
このとき、時刻t11から時刻t12までの期間に第1配線W1から第3配線W3及び第4配線W4のそれぞれへ移動したAgイオンが、第1配線W1へ引き込まれる。これにより、時刻t11から時刻t12までの期間で移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第1配線W1と第3配線W3又は第4配線W4とが短絡することを抑制することができる。
【0132】
そして、時刻t13において、第1配線W1には、GND電位(第7電位の一例)が印加される。つまり、時刻t13において、第1配線W1~第5配線W5は、同電位となる。なお、第1配線W1にGND電位が印加されるステップは、第3の制御ステップの一例である。第3の制御ステップは、第1の制御ステップ(S21)、及び、第2の制御ステップ(S22)のうち他方の制御ステップが実行された後に実行される。
【0133】
図8を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第4配線W4にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S23)。ステップS23は、図7に示す「N」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20に対するタッチ検出のためのステップである。ステップS23では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第4配線W4のみに電位(例えば、電位v1)が印加され、第1配線W1及び第5配線W5にはGND配線と同様にGND電位が印加される。なお、ステップS23は、第4の制御ステップの一例である。
【0134】
このとき、例えば、第4配線W4は、陽極であり、当該第4配線W4を挟むように配置される第1配線W1及び第5配線W5は、陰極である。
【0135】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t14から時刻t15までの期間、第4配線W4に電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、第2配線W2及び第5配線W5にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t14から時刻t15までの期間では、高温高湿環境下において、第4配線W4からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第1配線W1及び第5配線W5のそれぞれへ引き込まれる。つまり、第4配線W4の銀がイオン化して第1配線W1及び第5配線W5のそれぞれに向けて移動する。
【0136】
なお、時刻t14から時刻t15までの期間において、第1配線W1及び第3配線W3、並びに、第2配線W2及び第5配線W5はそれぞれ同電位であるので、第1配線W1及び第3配線W3の間、並びに、第2配線W2及び第5配線W5の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0137】
図8を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第4配線W4にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S24)。ステップS24は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS24では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第4配線W4のみに逆極性の電位(例えば、電位v2)が印加され、第1配線W1及び第5配線W5にはGND配線と同様にGND電位が印加されている。ステップS24は、例えば、ステップS23とステップS25との間に行われる。ステップS24は、例えば、ステップS25が実行される前、つまり第4配線W4の隣の配線に電位v1が印加される前に行われる。なお、ステップS24は、第5の制御ステップの一例である。
【0138】
このとき、例えば、第4配線W4は、陰極であり、当該第4配線W4を挟むように配置される第1配線W1及び第5配線W5は、陽極である。
【0139】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t15から時刻t16までの期間、第4配線W4にステップS23で印加された電位と逆極性の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、第1配線W1及び第5配線W5にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t15から時刻t16までの期間では、高温高湿環境下において、第1配線W1及び第5配線W5のそれぞれからAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第4配線W4へ引き込まれる。つまり、第1配線W1及び第5配線W5のそれぞれの銀がイオン化して第4配線W4に向けて移動する。
【0140】
このとき、時刻t14から時刻t15までの期間に第4配線W4から第1配線W1及び第5配線W5のそれぞれへ移動したAgイオンが、第4配線W4へ引き込まれる。これにより、時刻t14から時刻t15までの期間で移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第4配線W4と第1配線W1又は第5配線W5とが短絡することを抑制することができる。
【0141】
そして、時刻t16において、第4配線W4には、GND電位(第7電位の一例)が印加される。つまり、時刻t16において、第1配線W1~第5配線W5は、同電位となる。
【0142】
図8を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第5配線W5にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S25)。ステップS25は、図7に示す「N+1」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20に対するタッチ検出のためのステップである。ステップS25では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第5配線W5のみに電位(例えば、電位v1)が印加され、第1配線W1及び第4配線W4にはGND配線と同様にGND電位が印加される。
【0143】
このとき、例えば、第5配線W5は、陽極であり、当該第5配線W5を挟むように配置される第2配線W2及び第4配線W4は、陰極である。
【0144】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t17から時刻t18までの期間、第5配線W5に電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、第1配線W1及び第4配線W4にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t17から時刻t18までの期間では、高温高湿環境下において、第5配線W5からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第2配線W2及び第4配線W4のそれぞれへ引き込まれる。つまり、第5配線W5の銀がイオン化して第2配線W2及び第4配線W4のそれぞれに向けて移動する。
【0145】
なお、時刻t17から時刻t18までの期間において、第1配線W1、第3配線W3及び第4配線W4はそれぞれ同電位であるので、第1配線W1、第3配線W3及び第4配線W4の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0146】
図8を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第5配線W5にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S26)。ステップS26は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS26では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のうち第5配線W5のみに逆極性の電位(例えば、電位v2)が印加され、第1配線W1及び第4配線W4にはGND配線と同様にGND電位が印加されている。ステップS26は、例えば、次の配線(例えば、第1配線W1)に電位v1が印加される前に行われる。
【0147】
このとき、例えば、第5配線W5は、陰極であり、当該第5配線W5を挟むように配置される第2配線W2及び第4配線W4は、陽極である。
【0148】
図9に示すように、電圧駆動部91は、時刻t18から時刻t19までの期間、第5配線W5にステップS25で印加された電位と逆極性の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、第1配線W1及び第4配線W4にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t18から時刻t19までの期間では、高温高湿環境下において、第2配線W2及び第4配線W4のそれぞれからAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第5配線W5へ引き込まれる。つまり、第2配線W2及び第4配線W4のそれぞれの銀がイオン化して第5配線W5へ移動する。
【0149】
このとき、時刻t17から時刻t18までの期間に第5配線W5から第2配線W2及び第4配線W4のそれぞれへ移動したAgイオンが、第5配線W5へ引き込まれる。これにより、時刻t17から時刻t18までの期間で移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第5配線W5と第2配線W2又は第4配線W4とが短絡することを抑制することができる。
【0150】
そして、時刻t19において、第5配線W5には、GND電位(第7電位の一例)が印加される。つまり、時刻t19において、第1配線W1~第5配線W5は、同電位となる。
【0151】
このように、電圧駆動部91は、第1配線W1に電位v2を印加させた後に、電位v2よりも大きい電位(本変形例ではGND電位であり、第7電位の一例)を印加させ、第1配線W1に第7電位を印加させた状態で、第4配線W4に第7電位よりも高い電位(例えば、電位v1であり、第8電位の一例)を印加させ、その後、第1配線W1に第7電位を印加させた状態で、第4配線W4に第7電位よりも低い電位(例えば、電位v2であり、第9電位の一例)を印加させてもよい。
【0152】
なお、ステップS21とステップS22、ステップS23とステップS24、及び、ステップS25とステップS26のそれぞれは順番が入れ替えられてもよい。例えば、静電スイッチ1の制御方法は、第4の制御ステップ及び第5の制御ステップのうち一方の制御ステップが実行された後、第4の制御ステップ及び第5の制御ステップのうち他方の制御ステップが連続して実行される。一方の制御ステップが実行された直後に他方の制御ステップが実行されるとも言える。なお、直後とは、一方の制御ステップと他方の制御ステップとの間に、他の制御ステップが含まれないことを意味する。
【0153】
なお、例えば、時刻t11から時刻t12までの期間に第1配線W1に印加される電位、時刻t14から時刻t15までの期間に第4配線W4に印加される電位、及び、時刻t17から時刻t18までの期間に第5配線W5に印加される電位のそれぞれは、例えば、等しい電位(例えば電位v1)である。また、例えば、時刻t12から時刻t13までの期間に第1配線W1に印加される電位、時刻t15から時刻t16までの期間に第4配線W4に印加される電位、及び、時刻t18から時刻t19までの期間に第5配線W5に印加される電位のそれぞれは、例えば、等しい電位(例えば電位v2)である。
【0154】
なお、例えば、時刻t11と時刻t12との間の期間、及び、時刻t12と時刻t13との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。また、例えば、時刻t14と時刻t15との間の期間、及び、時刻t15と時刻t16との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。また、例えば、時刻t17と時刻t18との間の期間、及び、時刻t18と時刻t19との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。
【0155】
なお、時刻t13から時刻t14までの期間、及び、時刻t16から時刻t17までの期間は、設けられなくてもよい。
【0156】
続いて、図10及び図11を参照しながら2つ目の制御方法を説明する。図10及び図11は、3つの透明電極20へのタッチの検出を、同時に行う場合の制御方法の一例を示す。具体的には、図10は、本変形例に係る静電スイッチ1の制御方法の第2例を示すフローチャートであり、図11は、本変形例に係る各配線30に印加される電位の第2例を示す図である。図11では、第1配線W1~第5配線W5のそれぞれにおいて、印加される電位の時間変化を示す。図11の縦軸は、電位(V)を示しており、横軸は時間(t)を示している。
【0157】
図10に示すように、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれにGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S31)。ステップS31は、図7に示す「1」、「N」及び「N+1」のいずれをタッチしたかを検出するためのステップである。ステップS31では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに、同時に共通の電位(例えば、電位v1)が印加される。なお、ステップS31は、第1制御ステップの一例である。
【0158】
このとき、例えば、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5は、陽極であり、GND配線は、陰極である。
【0159】
図11に示すように、電圧駆動部91は、時刻t21から時刻t22までの期間、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、GND配線にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t21から時刻t22までの期間では、高温高湿環境下において、第1配線W1からAgイオン(Ag)が放出され、放出されたAgイオンが第3配線W3へ引き込まれ、かつ、第5配線W5からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第2配線W2へ引き込まれる。つまり、第1配線W1の銀がイオン化して第3配線W3に向けて移動し、かつ、第5配線W5の銀がイオン化して第2配線W2に向けて移動する。
【0160】
ここで、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5は同電位であり、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5の間に電位差はないので、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0161】
図10を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S32)。ステップS32は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS32では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに、ステップS31で印加された電位と逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)が印加される。ステップS32では、第1配線W1、及び、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに印加される電位が、電位v1から電位v2に同時に切り替えられる。なお、ステップS32は、第2制御ステップの一例である。
【0162】
このとき、例えば、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5は、陰極であり、GND配線は、陽極である。
【0163】
図11に示すように、電圧駆動部91は、時刻t22から時刻t23までの期間、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれにステップS31で印加された電位と逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、GND配線にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t22から時刻t23までの期間では、高温高湿環境下において、第2配線W2からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第5配線W5へ引き込まれ、かつ、第3配線W3からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第1配線W1へ引き込まれる。つまり、第2配線W2の銀がイオン化して第5配線W5へ移動し、かつ、第3配線W3の銀がイオン化して第1配線W1へ移動する。
【0164】
このとき、時刻t21から時刻t22までの期間に第1配線W1から第3配線W3へ移動したAgイオンが、第1配線W1へ引き込まれ、時刻t21から時刻t22までの期間に第5配線W5から第2配線W2へ移動したAgイオンが、第5配線W5へ引き込まれる。これにより、時刻t21から時刻t22までの期間で移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第1配線W1及び第3配線W3、又は、第2配線W2及び第5配線W5が短絡することを抑制することができる。
【0165】
そして、時刻t23では、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに印加される電位が、電位v2からGND電位に同時に切り替えられる。つまり、時刻t23において、第1配線W1~第5配線W5は、同電位となる。
【0166】
なお、時刻t22から時刻t23までの期間において、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれは同電位であり、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5の間に電位差はないので、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0167】
このように、本変形例に係る電圧駆動部91は、第1配線W1に電位v1(第2電位の一例)を印加している間に、第4配線W4に電位v1と同じ電位(第5電位の一例)を印加し、第1配線W1に電位v2(第3電位の一例)を印加している間に、第4配線W4に電位v2と同じ電位(第6電位の一例)を印加させてもよい。
【0168】
なお、例えば、時刻t21から時刻t22までの期間に、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに印加される電位は等しく、時刻t22から時刻t23までの期間に、第1配線W1、第4配線W4及び第5配線W5のそれぞれに印加される電位は等しい。また、時刻t21と時刻t22との間の期間、及び、時刻t22と時刻t23との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。
【0169】
上記のように、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御方法として、上記の図8及び図9に示す制御方法と、図10及び図11に示す制御方法との2通りが存在する。例えば、静電スイッチ1を制御する制御部90の仕様(ICの仕様)に応じて、いずれかの制御方法が採用される。
【0170】
(実施の形態の変形例2)
以下では、本変形例に係る静電スイッチの制御方法及び制御装置について、図12図14を参照しながら説明する。なお、以下では、実施の形態との相違点を中心に説明し、実施の形態と同一又は類似の内容については説明を省略又は簡略化する。
【0171】
まず、本変形例に係る静電スイッチの構成について、図12を参照しながら説明する。図12は、本変形例に係る静電スイッチの各配線30の模式図及び制御部90の機能構成を示す図である。本変形例に係る静電スイッチ1は、第1配線W1とGND配線(第2配線W2及び第3配線W3)との間に、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)が配置されている点において、実施の形態に係る静電スイッチ1と相違する。
【0172】
図12に示すように、本変形例に係る静電スイッチ1は、実施の形態の静電スイッチ1に加えて、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)を有する。シールド配線は、第1配線W1とGND配線との間の寄生容量を削減するための配線であり、第1配線W1とGND配線との間において、第1配線W1を一括して囲むように設けられる。シールド配線は、制御部90と接続されており、シールド配線には、第1配線W1と同じ電位が印加される。
【0173】
第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれは、同一の金属粒子を含んで構成されており、本変形例では、銀配線である。また、第1配線W1と、シールド配線と、GND配線とは、少なくとも一部において並んで配置される。シールド配線は、第n+2番目の第n+2導体部の一例である。第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6及び第7配線W7は、m個の導体部の一例である。本変形例では、mは5である。
【0174】
便宜上、1本のシールド配線のうち、第1配線W1の一方側に配置された部分を第6配線W6と記載し、第1配線W1の他方側に配置された部分を第7配線W7と記載する。第6配線W6は、例えば、第1配線W1の直線部分を延長した延長線とシールド配線との交点より、第1配線W1の一方側に配置された部分であり、第7配線W7は、例えば、当該交点より、第1配線W1の他方側に配置された部分であるとも言える。第6配線W6及び第7配線W7は、同電位である。
【0175】
なお、シールド配線の形成方法は、実施の形態における第1配線W1及びGND配線と同じであってもよい。また、シールド配線は、実施の形態における配線30に含まれる。
【0176】
続いて、上記のように構成される静電スイッチ1における、イオンマイグレーションによる短絡の発生を抑制するための制御方法について、図13及び図14を参照しながら説明する。図13は、本変形例に係る静電スイッチ1の制御方法を示すフローチャートである。図14は、本変形例に係る各配線30に印加される電位を示す図である。図14の縦軸は、各配線30に印加される電位(V)を示しており、横軸は時間(t)を示している。図14では、第1配線W1、第2配線W2、第3配線W3、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれにおいて、印加される電位の時間変化を示す。なお、図14において、シールド配線を、「Shield」と記載する。
【0177】
図13に示すように、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1及びシールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S41)。つまり、電圧駆動部91は、第1配線W1及びシールド配線に同じ電位を印加する。ステップS41は、図12に示す「1」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20に対するタッチ検出のためのステップである。ステップS41では、第1配線W1及びシールド配線に共通の電位(例えば、電位v1)が同時に印加され、GND配線にGND電位が印加される。なお、ステップS41は、第1の制御ステップの一例である。
【0178】
このとき、例えば、第1配線W1及びシールド配線は、陽極であり、GND配線は、陰極である。
【0179】
図14に示すように、電圧駆動部91は、時刻t31から時刻t32までの期間、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに共通の電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、GND配線にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t31から時刻t32までの期間では、高温高湿環境下において、第6配線W6からAgイオン(Ag)が放出され、放出されたAgイオンが第2配線W2へ引き込まれ、かつ、第7配線W7からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第3配線W3へ引き込まれる。つまり、シールド配線の銀がイオン化してGND配線に向けて移動する。
【0180】
ここで、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7は同電位であり、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間に電位差はないので、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0181】
図13を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S42)。ステップS42は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS42では、第1配線W1及びシールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)のそれぞれに、同時に逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)が印加される。ステップS42では、第1配線W1、及び、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)のそれぞれに印加される電位が、電位v1から電位v2に同時に切り替えられるとも言える。なお、ステップS42は、第2の制御ステップの一例である。
【0182】
このとき、例えば、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7は、陰極であり、GND配線は、陽極である。
【0183】
図14に示すように、電圧駆動部91は、時刻t32から時刻t33までの期間、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれにステップS31で印加された電位と逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、GND配線にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t32から時刻t33までの期間では、高温高湿環境下において、第2配線W2からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第6配線W6へ引き込まれ、かつ、第3配線W3からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第7配線W7へ引き込まれる。つまり、GND配線の銀がイオン化してシールド配線に向けて移動する。
【0184】
このとき、時刻t31から時刻t32までの期間に第6配線W6から第2配線W2へ移動したAgイオンが、第6配線W6へ引き込まれ、時刻t31から時刻t32までの期間に第7配線W7から第3配線W3へ移動したAgイオンが、第7配線W7へ引き込まれる。これにより、時刻t31から時刻t32までの期間に移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第6配線W6及び第2配線W2、又は、第7配線W7及び第3配線W3が短絡することを抑制することができる。
【0185】
そして、時刻t33では、第1配線W1、及び、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)のそれぞれに印加される電位が、電位v2からGND電位に同時に切り替えられる。つまり、時刻t33において、第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6及び第7配線W7は、同電位となる。
【0186】
なお、時刻t32から時刻t33までの期間において、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれは同電位であり、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間に電位差はないので、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0187】
このように、本変形例に係る電圧駆動部91は、第1配線W1に電位v1(第2電位の一例)を印加している間に、第6配線W6及び第7配線W7に電位v1と同じ電位(第5電位の一例)を印加し、第1配線W1に電位v2(第3電位の一例)を印加している間に、第6配線W6及び第7配線W7に電位v2と同じ電位(第6電位の一例)を印加させる。
【0188】
なお、例えば、時刻t31から時刻t32までの期間に、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに印加される電位は等しく、時刻t32から時刻t33までの期間に、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに印加される電位は等しい。また、時刻t31と時刻t32との間の期間、及び、時刻t32と時刻t33との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。
【0189】
(実施の形態の変形例3)
以下では、本変形例に係る静電スイッチの制御方法及び制御装置について、図15図17を参照しながら説明する。なお、以下では、実施の形態の変形例2との相違点を中心に説明し、実施の形態の変形例2と同一又は類似の内容については説明を省略又は簡略化する。
【0190】
まず、本変形例に係る静電スイッチの構成について、図15を参照しながら説明する。図15は、本変形例に係る静電スイッチの各配線30の模式図及び制御部90の機能構成を示す図である。本変形例に係る静電スイッチ1は、シールド配線とGND配線との間に、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)が配置されている点において、実施の形態の変形例2に係る静電スイッチ1と相違する。
【0191】
図15に示すように、本変形例に係る静電スイッチ1は、実施の形態の変形例2の静電スイッチ1に加えて、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)を有する。ガード配線は、第1配線W1と接続された透明電極20に水滴が付着していることを検知するための配線であり、シールド配線とGND配線との間において、シールド配線を一括して囲むように設けられる。ガード配線は、制御部90と接続されており、ガード配線には、第1配線W1にGND電位が印加されているときのシールド配線と同じ電位が印加される。
【0192】
第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれは、同一の金属粒子を含んで構成されており、本変形例では、銀配線である。また、第1配線W1と、シールド配線と、ガード配線と、GND配線とは、少なくとも一部において並んで配置される。ガード配線は、第n+2番目の第n+2導体部の一例である。また、第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6~第9配線W9は、m個の導体部の一例である。本変形例では、mは7である。
【0193】
便宜上、1本のガード配線のうち、第1配線W1の一方側に配置された部分を第8配線W8と記載し、第1配線W1の他方側に配置された部分を第9配線W9と記載する。第8配線W8は、例えば、第1配線W1の直線部分を延長した延長線とガード配線との交点より、第1配線W1の一方側に配置された部分であり、第9配線W9は、例えば、当該交点より、第1配線W1の他方側に配置された部分であるとも言える。第8配線W8及び第9配線W9は、同電位である。
【0194】
なお、ガード配線の形成方法は、実施の形態における第1配線W1及びGND配線と同じであってもよい。また、ガード配線は、実施の形態における配線30に含まれる。
【0195】
なお、本変形例において、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)は、設けられなくてもよい。
【0196】
続いて、上記のように構成される静電スイッチ1における、イオンマイグレーションの発生を抑制するための制御方法について、図16及び図17を参照しながら説明する。図16は、本変形例に係る静電スイッチ1の制御方法を示すフローチャートである。図17は、本変形例に係る各配線30に印加される電位を示す図である。図17の縦軸は、各配線30に印加される電位(V)を示しており、横軸は時間(t)を示している。図17では、第1配線W1、第2配線W2、第3配線W3、及び、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれにおいて、印加される電位の時間変化を示す。なお、図17において、ガード配線を、「Guard」と記載する。
【0197】
図16に示すように、電圧駆動部91は、GND配線(第2配線W2及び第3配線W3)、及び、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1及びシールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S51)。つまり、電圧駆動部91は、第1配線W1及びシールド配線に同じ電位を印加する。ステップS51は、図15に示す「1」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20に対するタッチ検出のためのステップである。ステップS51では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、及び、シールド配線に共通の電位(例えば、電位v1)が印加され、GND配線及びガード配線にGND電位が印加される。
【0198】
このとき、例えば、第1配線W1及びシールド配線は、陽極であり、ガード配線は、陰極である。
【0199】
図17に示すように、電圧駆動部91は、時刻t41から時刻t42までの期間、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに共通の電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、GND配線及びガード配線にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t41から時刻t42までの期間では、高温高湿環境下において、第6配線W6からAgイオン(Ag)が放出され、放出されたAgイオンが第8配線W8へ引き込まれ、かつ、第7配線W7からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第9配線W9へ引き込まれる。つまり、シールド配線の銀がイオン化してガード配線へ移動する。
【0200】
ここで、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7は同電位であり、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間に電位差はないので、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0201】
図16を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線及びガード配線にGND電位を印加させた状態で、第1配線W1及びシールド配線にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S52)。ステップS52は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS52では、タッチ検出用の配線である第1配線W1、及び、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)のそれぞれに、同時に逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)が印加される。
【0202】
このとき、例えば、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7は、陰極であり、ガード配線は、陽極である。
【0203】
図17に示すように、電圧駆動部91は、時刻t42から時刻t43までの期間、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれにステップS51で印加された電位と逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、GND配線及びガード配線にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t42から時刻t43までの期間では、高温高湿環境下において、第8配線W8からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第6配線W6へ引き込まれ、かつ、第9配線W9からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第7配線W7へ引き込まれる。つまり、ガード配線の銀がイオン化してシールド配線に向けて移動する。
【0204】
このとき、時刻t41から時刻t42までの期間に第6配線W6から第8配線W8へ移動したAgイオンが、第6配線W6へ引き込まれ、時刻t41から時刻t42までの期間に第7配線W7から第9配線W9へ移動したAgイオンが、第7配線W7へ引き込まれる。これにより、時刻t41から時刻t42までの期間に移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第6配線W6及び第8配線W8、又は、第7配線W7及び第9配線W9が短絡することを抑制することができる。
【0205】
なお、時刻t42から時刻t43までの期間において、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれは同電位であり、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間に電位差はないので、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0206】
図16を再び参照して、電圧駆動部91は、GND配線及び第1配線W1にGND電位を印加させた状態で、ガード配線及びシールド配線にGND電位よりも高い検出電位を印加させる(S53)。つまり、電圧駆動部91は、ガード配線及びシールド配線に同じ電位を印加する。ステップS53は、図15に示す「1」に対するタッチ(操作)を受け付ける透明電極20又は透明電極20の周辺に水滴が付着しているか否かの検出のためのステップである。ステップS53では、水滴検出用の配線であるガード配線、及び、シールド配線に共通の電位(例えば、電位v1)が印加され、第1配線W1及びGND配線にGND電位が印加される。
【0207】
このとき、例えば、ガード配線及びシールド配線は、陽極であり、第1配線W1及びGND配線は、陰極である。
【0208】
図17に示すように、電圧駆動部91は、時刻t44から時刻t45までの期間、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれに共通の電位(例えば、電位v1)を印加し、かつ、第1配線W1及びGND配線にGND電位(<電位v1)を印加する。この時刻t44から時刻t45までの期間では、高温高湿環境下において、第6配線W6及び第7配線W7からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第1配線W1へ引き込まれ、かつ、第8配線W8からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第2配線W2へ引き込まれ、かつ、第9配線W9からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第3配線W3へ引き込まれる。つまり、シールド配線の銀がイオン化して第1配線W1へ移動し、ガード配線の銀がイオン化してGND配線へ移動する。
【0209】
ここで、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれは同電位であり、第6配線W6及び第8配線W8の間、並びに、第7配線W7及び第9配線W9の間に電位差はないので、第6配線W6及び第8配線W8の間、並びに、第7配線W7及び第9配線W9の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0210】
図16を再び参照して、次に、電圧駆動部91は、GND配線及び第1配線W1にGND電位を印加させた状態で、ガード配線及びシールド配線にGND電位よりも低い復元電位を印加させる(S54)。ステップS54は、イオンマイグレーションによる導体間の短絡の発生を抑制するためのステップである。ステップS54では、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)、及び、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)のそれぞれに、同時にステップS53で印加された電位と逆極性の電位(例えば、電位v2)が印加される。ステップS54では、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)、及び、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)のそれぞれに印加される電位が、電位v1から電位v2に同時に切り替えられるとも言える。
【0211】
このとき、例えば、第1配線W1及びGND配線は、陽極であり、シールド配線及びガード配線は、陰極である。
【0212】
図17に示すように、電圧駆動部91は、時刻t45から時刻t46までの期間、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれにステップS53で印加された電位と逆極性の共通の電位(例えば、電位v2)を印加し、かつ、GND配線及び第1配線W1にGND電位(>電位v2)を印加する。この時刻t45から時刻t46までの期間では、高温高湿環境下において、第1配線W1からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第6配線W6及び第7配線W7へ引き込まれ、かつ、第2配線W2からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第8配線W8へ引き込まれ、かつ、第3配線W3からAgイオンが放出され、放出されたAgイオンが第9配線W9へ引き込まれる。つまり、第1配線W1の銀がイオン化してシールド配線へ移動し、かつ、GND配線の銀がイオン化してガード配線へ移動する。
【0213】
このとき、時刻t44から時刻t45までの期間に第6配線W6及び第7配線W7から第1配線W1へ移動したAgイオンが、第6配線W6及び第7配線W7へ引き込まれ、時刻t44から時刻t45までの期間に第8配線W8から第2配線W2へ移動したAgイオンが、第8配線W8へ引き込まれ、時刻t44から時刻t45までの期間に第9配線W9から第3配線W3へ移動したAgイオンが、第9配線W9へ引き込まれる。これにより、時刻t44から時刻t45までの期間に移動したAgイオンによりデンドライトが発生し、第1配線W1及びシールド配線、又は、GND配線及びガード配線が短絡することを抑制することができる。
【0214】
そして、時刻t46では、シールド配線(第6配線W6及び第7配線W7)、及び、ガード配線(第8配線W8及び第9配線W9)のそれぞれに印加される電位が、電位v2からGND電位に同時に切り替えられる。つまり、時刻t46において、第1配線W1~第3配線W3、第6配線W6~第9配線W9は、同電位となる。
【0215】
なお、時刻t45から時刻t46までの期間において、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれは同電位であり、第6配線W6及び第8配線W8の間、並びに、第7配線W7及び第9配線W9の間に電位差はないので、第6配線W6及び第8配線W8の間、並びに、第7配線W7及び第9配線W9の間でのイオンマイグレーションは発生しない。
【0216】
このように、本変形例に係る電圧駆動部91は、第1配線W1に電位v2を印加させた後に、電位v2よりも大きい電位(例えば、GND電位であり、第7電位の一例)を印加させ、第1配線W1に第7電位を印加させた状態で、ガード配線に第7電位よりも高い電位(例えば、電位v1であり、第8電位の一例)を印加させ、その後、第1配線W1に第7電位を印加させた状態で、ガード配線に第7電位よりも低い電位(例えば、電位v2であり、第9電位の一例)を印加させる。
【0217】
なお、例えば、時刻t41から時刻t42までの期間に、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに印加される電位は等しく、時刻t42から時刻t43までの期間に、第1配線W1、第6配線W6及び第7配線W7のそれぞれに印加される電位は等しい。また、時刻t41と時刻t42との間の期間、及び、時刻t42と時刻t43との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。
【0218】
なお、例えば、時刻t44から時刻t45までの期間に、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれに印加される電位は等しく、時刻t45から時刻t46までの期間に、第6配線W6~第9配線W9のそれぞれに印加される電位は等しい。また、時刻t44と時刻t45との間の期間、及び、時刻t45と時刻t46との間の期間は、例えば、同じ長さの期間である。
【0219】
なお、時刻t43から時刻t44までの期間は、設けられなくてもよい。
【0220】
(その他の実施の形態)
以上、一つ又は複数の態様に係る静電スイッチの制御方法等について、実施の形態及び各変形例(以降において、実施の形態等とも記載する)に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態等に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態等に施したものや、異なる実施の形態等における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示に含まれてもよい。
【0221】
例えば、上記実施の形態等では、タッチ検出用の配線(第1配線、第4配線及び第5配線)、GND配線、シールド配線及びガード配線のそれぞれは、同じ金属粒子を含む例について説明したが、これに限定されず、少なくとも1つの配線は他と異なる金属粒子を含んでいてもよい。
【0222】
また、上記実施の形態等で説明した制御方法は、例えば、静電スイッチが所定の環境条件下におかれた状態で動作するときのみ実行されてもよい。例えば、上記の制御方法は、静電スイッチが所定の高温高湿条件下におかれた状態で動作するときに実行されてもよい。例えば、所定の高温高湿条件下以外の状態で動作するときは、逆極性の電位は印加されなくてもよい。この場合、制御部は、静電スイッチの周囲の温湿度の計測結果を温湿度センサ等から取得し、取得した計測結果に基づいて、上記の制御方法を実行するか否か(逆極性の電位を印加するか否か)を判定してもよい。
【0223】
また、上記実施の形態等では、電圧駆動部が整流回路を有する構成であることを例示したが、電圧駆動部の構成はこれに限定されない。電圧駆動部は、静電スイッチを制御するための電位を生成する電源回路(例えば、図5に示す電位v1を生成する電源回路、及び、図5に示す電位v2を生成する電源回路)と接続されており、配線ごとにいずれかの電位を印加するためのスイッチを有する構成であってもよい。また、電圧駆動部は、電圧変換を行うためのコンバータ回路を有する構成であってもよい。
【0224】
また、上記実施の形態等における図7に示す配線パターンに、さらに、シールド配線、及び、ガード配線の少なくとも1つが設けられてもよい。例えば、図7に示す配線パターンにシールド配線が設けられる場合、第1配線、第4配線及び第5配線のいずれかに電位v1が又はv2が印加される場合、シールド電極にも当該いずれかと同じ電位が印加される。また、例えば、図7に示す配線パターンにシールド配線及びガード配線が設けられる場合、第1配線、第4配線及び第5配線の全てにGND電位が印加され、かつ、シールド配線に電位v1又はv2が印加されている場合、ガード配線にもシールド配線と同じ電位が印加される。
【0225】
また、上記実施の形態等における図7に示す配線パターンに、さらに、シールド配線、及び、ガード配線の少なくとも1つが設けられ、かつ、図10及び図11に示す動作が行われてもよい。例えば、図7に示す配線パターンにシールド配線が設けられる場合、第1配線、第4配線、第5配線及びシールド配線のそれぞれに同時に電位v1又はv2が印加される。また、例えば、図7に示す配線パターンにシールド配線及びガード配線が設けられる場合、第1配線、第4配線、第5配線、シールド配線及びガード配線のそれぞれに同時に電位v1又はv2が印加される。
【0226】
また、上記実施の形態等では、第n導体部がGND配線である例について説明したが、これに限定されず、第n導体部は、第1配線、第4配線、第5配線、シールド配線及びガード配線のいずれかの配線であってもよい。第n導体部及び第n+1導体部は、隣り合う配線、例えば、少なくとも一部が対向して配置される配線であればよい。例えば、第1配線及び第4配線の一方が第n導体部であり、第1配線及び第4配線の他方が第n+1導体部であってもよい。
【0227】
また、上記実施の形態等では、静電スイッチは、車載機器又は電子機器に設けられる例について説明したが、これに限定されず、ATM(Automatic Teller Machine)、券売機、工場の設備機器など様々な機器に設けられてもよい。
【0228】
また、上記実施の形態等では、静電スイッチは、指によるタッチ入力(指入力)における位置を検出する例について説明したが、スタイラスと呼ばれるペンによるタッチ入力(ペン入力)を検出可能であることはいうまでもない。
【0229】
また、上記実施の形態等における各層の形成方法は、上記に限定されず、既知のいかなる方法により形成されてもよい。例えば、配線及び絶縁層の形成方法としてスクリーン印刷を例示したが、形成方法は、スクリーン印刷に限定されない。
【0230】
また、上記実施の形態等における静電スイッチの制御方法は、通常のスイッチをマトリクス状に配置した構成の静電スイッチに対しても適用可能である。このような静電スイッチは、平面視において、基板上に第1方向に延在し1以上の電極PADを有する複数の第1透明電極と、当該基板上に第1方向と交差する第2方向に延在し1以上の電極PADを有する複数の第2透明電極とを備え、タッチ位置を検出する。複数の第1透明電極のそれぞれと、及び、複数の第2透明電極のそれぞれと、制御部とを電気的に接続するために、銀配線等が用いられる。
【0231】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0232】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0233】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0234】
また、上記実施の形態等に係る制御装置は、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置(例えば、複数のIC)により実現されてもよい。制御装置が複数の装置によって実現される場合、当該制御装置が有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。制御装置が複数の装置で実現される場合、当該複数の装置間の通信方法は、特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。
【0235】
また、上記実施の形態等で説明した制御装置の各構成要素は、ソフトウェアとして実現されても良いし、典型的には、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、専用のプログラムを実行する汎用回路、又は、汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて構成要素の集積化を行ってもよい。
【0236】
システムLSIは、複数の処理部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0237】
また、本開示の一態様は、図4図8図10図13及び図16のいずれかに示される静電スイッチの制御方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。例えば、そのようなプログラムを記録媒体に記録して頒布又は流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0238】
本開示は、特に高温高湿下での使用が想定される静電スイッチ等に有用である。
【符号の説明】
【0239】
1 静電スイッチ
10 基板
11 FPC
20 透明電極
30 配線
40 第1絶縁層
50 第2絶縁層
60 粘着層
70 補強板
80 端子
90 制御部(制御装置)
91 電圧駆動部
92 タッチ検出部
p1、p2、p3 期間
t1、t2、t3、t11、t12、t13、t14、t15、t16、t17、t18、t19、t21、t22、t23、t31、t32、t33、t41、t42、t43、t44、t45、t46 時刻
v1 電位(第2電位)
v2 電位(第3電位)
W1 第1配線
W2 第2配線
W3 第3配線
W4 第4配線
W5 第5配線
W6 第6配線
W7 第7配線
W8 第8配線
W9 第9配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17