(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023292
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】容器姿勢制御装置及びそれを用いた充填装置
(51)【国際特許分類】
B67C 3/24 20060101AFI20230209BHJP
B67C 7/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B67C3/24
B67C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128665
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】503201922
【氏名又は名称】株式会社野村工電社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】野村 保夫
【テーマコード(参考)】
3E079
【Fターム(参考)】
3E079AB01
3E079BB05
3E079FF16
3E079FG10
3E079GG01
(57)【要約】
【課題】容器を所望の姿勢に制御しながら種々処理を短時間で行うことが可能であり、コンパクトで場所を選ばず設置可能な容器姿勢制御装置及びそれを用いた充填装置を提供する。
【解決手段】平板からなる回転盤3と、この回転盤3の外周寄りに配設され、容器を着脱自在に保持する複数の容器保持具4と、回転盤3の背面側の背面板6に回転盤3と対向して配設された案内路16と、を備え、容器保持具4は、その平面上に容器を保持する本体部4aと、この本体部4a上において容器を保持する保持部と、本体部4aを回転盤3に対し回動可能に軸支する第2の回動軸4bと、本体部4aに直接的又は間接的に突設され、案内路16に沿ってスライドするガイドピンと、を備えている容器姿勢制御装置1aによる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の姿勢を所望に制御するための容器姿勢制御装置であって、
平板からなり、第1の回動軸を中心として回動可能に設置される回転盤と、
この回転盤の外周寄りに配設され、前記容器を着脱自在に保持する複数の容器保持具と、
前記回転盤と平行に配置された背面板と、
この背面板に形成された案内路と、を備え、
前記容器保持具は、
その平面上に前記容器を保持する本体部と、
この本体部上において前記容器を保持する保持部と、
前記本体部を前記回転盤に対し回動可能に軸支する第2の回動軸と、
前記本体部に直接的又は間接的に突設され、前記案内路に沿ってスライドするガイドピンと、を備えていることを特徴とする容器姿勢制御装置。
【請求項2】
前記回転盤の回動方向に沿って所望の間隔をあけて配置された隣り合う2以上の前記容器保持具において、前記ガイドピンの中心線と前記第2の回動軸の中心線とを結ぶ線分の傾きが一定に保たれる姿勢制御済容器保持具となるように前記案内路の少なくとも一部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器姿勢制御装置。
【請求項3】
前記案内路の平面形状は、前記第1の回動軸の中心線に対しn個の同一の形状が環状に繋がってなるn回回転対称(ただし、nは2以上の整数)をなすとともに前記形状が個々の領域をなし、それぞれの前記領域内に配される2以上の前記容器保持具が前記姿勢制御済容器保持具であることを特徴とする請求項2に記載の容器姿勢制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の容器姿勢制御装置と、
前記姿勢制御済容器保持具の保持する前記容器に注入物を供給するノズル、及び又は前記注入物が供給された前記姿勢制御済容器保持具の保持する前記容器を封止する封止手段を備えていることを特徴とする充填装置。
【請求項5】
少なくとも第1及び第2の前記領域を有する請求項3に記載の容器姿勢制御装置と、
前記第1及び第2の領域に対応する位置に設けられ、前記姿勢制御済容器保持具の保持する前記容器に注入物を供給するノズルと、
前記第2の領域に対応する位置に設けられ、前記姿勢制御済容器保持具の保持する前記容器を封止する封止手段と、を備えていることを特徴とする充填装置。
【請求項6】
前記第1の領域に対応する位置において設けられた前記ノズルが、前記姿勢制御済容器保持具に保持される前記容器の中に洗浄液又は殺菌液を供給する第1のノズルとすすぎ液を供給する第2のノズルであり、
前記第2の領域に対応する位置において設けられた前記ノズルが前記姿勢制御済容器保持具に保持される前記容器の中に液体又はペースト体である食品を供給する第3のノズルであることを特徴とする請求項5に記載の充填装置。
【請求項7】
前記回転盤は鉛直平面と平行に設置されており、前記姿勢制御済容器保持具に保持される前記容器は円筒状の開口部を有し、この開口部の円筒軸が鉛直方向と平行をなし、かつ、前記開口部を前記回転盤の外側に向けていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の充填装置。
【請求項8】
前記封止手段として、前記姿勢制御済容器保持具に保持される前記容器に蓋を取着する蓋締機を備え、
前記蓋締機の対象となる前記容器を保持する前記姿勢制御済容器保持具の揺動を防止する揺動防止手段を備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模生産に適した、容器の姿勢を所望に制御する容器姿勢制御装置及びそれを用いた充填装置に係り、容器に対する洗浄、注入物の供給・充填、封止という一連の工程を短時間で行うのに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体、ペースト体、粉体といった様々なものが、持ち運んだり保存したりが容易な蓋付きの容器に供給・充填されて販売されている。例えば、ペットボトルに充填された飲料製品を挙げることができる。
ここで、このようなペットボトル等の容器に充填された飲料製品を製造する場合、まず容器を洗浄し、次いで洗浄された容器に飲料水を供給した後、その開口部に蓋を装着して封止するという、少なくとも3つの工程を経ながら製造される。なお、容器に充填され市販されている製品は、その多くが大手メーカーにより大量生産されている。そして、そのような大手メーカーでは、製品に対する市場の需要の大きさから、大型の洗浄装置、供給装置、そして蓋巻締機といった封止手段等を組み合わせて大規模な製造ラインを構築して製造を行い、日々製品を市場に投入しているのである。
【0003】
上述したように、飲料水等が容器に充填された製品の製造は、洗浄装置等が適切に配置された大規模な製造ラインを用いて行われている。そして、このような大規模な製造ライン用の洗浄装置等は、それぞれが大型であり、大量生産を目的とした処理能力の高いものがほとんどであった。このため、これらを購入して製造ラインを構築する場合には、その生産規模によらず広大な設置スペース並びに巨額の設備投資費用が必要となっていた。大手メーカーのように大量生産を目的とし、資力も十分にある場合には問題ないが、例えば地方の名水の産地において、観光客の求めに応じてペットボトルに名水を充填して販売するといった少量生産が主となる小規模メーカーにとっては適した製造方法とは言い難いものであった。このため、小規模メーカーから少量生産に適し、生産スピードも高く、かつコンパクトな飲料水用の充填装置を求める声が近年強くなってきている。
【0004】
また、衛生面での品質向上並びに製品不良率の低下のため、容器を確りと封止できる充填装置も求められるようになってきている。特に最近では、お茶や果実飲料等の原液が封入され、開封時に容器中の水とこの原液が混ざるような機構を有する特殊構造の蓋も用いられてきており、このような蓋を高精度に操作しながら容器を封止することができる高性能な充填装置を求める声も強くなっている。
以上のような背景から、最近では以下に示す飲料水用の充填装置に関する発明が開示されている。
【0005】
特許文献1では、「ボトル飲用水充填装置」という名称で、繰り返し使用可能な大型のボトルを供給し、このボトルに飲料水を充填した状態で販売するものであって、ボトルの洗浄殺菌、飲料水の供給、及び打栓を1台で行うことが可能な小型の充填装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、飲料水が充填されるボトルが載置されるとともに回動によりボトルの給水口の向きを変更可能に設置されるドラムと、ボトルに飲料水を供給する給水ノズル部と、キャップを供給する配栓機と、キャップをハンマによってボトルに打栓する打栓機と、洗浄ノズル部と、洗浄液・殺菌液等を排出するための配管と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の特許文献1に開示された発明によれば、給水ノズル部と打栓機をドラムの周囲にスペースを効率的に利用しながら配置することができる。また、ボトルを反転した状態で、ボトルの給水口に下方から洗浄ノズルによって洗浄液、殺菌液等を注入して洗浄殺菌される。そして、ボトル内部を洗浄した洗浄液、殺菌液等は特別な機構によらず自重によりそのままボトルの給水口を通って排出される。このように洗浄されるボトルに飲料水を供給し、容器にキャップをハンマにより打栓するという一連の工程を、シンプルかつコンパクトな装置で行うことができる。このため、特許文献1に開示された発明であれば、設置する場所の選択肢が広がるというメリットを有する。
【0006】
また、特許文献2では、「飲料販売装置」という名称で、飲料をボトルに注入充填し販売する小型の充填装置に関する発明が開示されている。
この特許文献2に開示された発明は、ボトルを収容する飲料注入ボックスと、この飲料注入ボックス内でボトルへ洗浄液と飲料をそれぞれ供給可能に設置される洗浄ノズル及び飲料ノズルと、ボトルを把持する把持装置と、この把持装置を飲料注入ボックスと交差する略水平な回転軸の周りで回転自在に支持する回転支持部材と、把持装置を回転軸の周りに回転させる駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の特許文献2に開示された発明によれば、ボトルの上下を反転させる機構を用いながら、ボトルの洗浄とボトルへの飲料水の供給という工程を1つの飲料注入ボックス内で行うことができる。この結果、洗浄と飲料水の充填のために個別のボックスを設置する必要がなくなり、装置全体をコンパクトにすることができる。このため、特許文献2に開示された発明であれば、設置する場所の選択肢が広がるというメリットを有する。
【0007】
さらに、特許文献3では、「ボトルの洗浄方法及び、これを利用した飲料水の自動販売機」という名称で、顧客が持参してきたボトルへ飲料水を充填して販売する小型の充填装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、ボトルが載置されるボトル載置板やボトルの首部が保持される保持部等からなり、ボトルの注ぎ口部が下側に位置するように反転する反転装置と、飲料水や殺菌剤入り飲料水をボトルの内部に供給するノズルと、を備えていることを特徴とする。
上記構成の特許文献3に開示された発明によれば、ボトルを反転装置により反転させて、ボトル内部に洗浄水等を供給することで、ボトルを洗浄することができる。また、ボトルの上記洗浄機能に加えて飲料水の供給機能も備えているため、洗浄装置、供給装置を別々に準備する必要がなくなる。加えて装置全体がコンパクトになる。このため、特許文献3に開示された発明であれば、設置する場所の選択肢が広がるというメリットを有する。
【0008】
さらに、特許文献4では、「ボトル飲用水充填装置」という名称で、ボトルの洗浄、飲料水等の供給、キャップの装着という一連の工程をバッチ処理で行うことが可能な装置に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示された発明は、中心部に回動軸が設けられた円盤からなるドラムと、このドラムの前面側に円周方向へ環状に配列されボトルを円盤に対して放射状に、かつ、その給水口を外側に向けて着脱自在に保持する複数のボトル保持具と、回動軸を回動可能に水平に支持する枠体と、ドラムの上方において鉛直方向と平行に配置されたボトルの給水口の真上に設置されボトル内へ飲料水を供給する給水ノズルと、この給水ノズルの配置と切替え可能であり給水口にキャップを螺着することができるキャップ巻締機と、ドラムの下方において給水口の真下に設置されボトル内へ洗浄水を供給する洗浄ノズルと、ドラムを所望の角度で回動させる回動機構と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の特許文献4に開示された発明によれば、ドラムの回動に伴い、ドラムの前面側に装着され回動軸を中心として円運動するボトルに対し、洗浄、飲料水の供給、封止の各処理が順次行われる。この結果、洗浄装置、飲用水の供給装置、キャップ巻締機を別々に準備せずとも、1台の装置により飲料水が充填された容器を製造することができる。また、装置が全体としてコンパクトになるため、特許文献4に開示された発明であれば、設置する場所の選択肢が広がるというメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4837358号公報
【特許文献2】特開2007-323374号公報
【特許文献3】特開2003-317144号公報
【特許文献4】特許第6173779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1に開示される発明の場合、確かに飲料水の充填されたボトルを製造するための一連の工程を、コンパクトな装置により簡単に行うことができると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示される発明は、その構造から一度に処理可能なボトルの本数は1本である。すなわち、複数本以上の製造が必要な場合には、単純に必要本数と1本当たりの製造時間の積に等しい時間が必要となるのみであり、製造時間の短縮が難しいという課題があった。
【0011】
そして、特許文献2に開示される発明の場合、確かに充填装置のコンパクト化を達成することができる。しかしながら、特許文献1と同様に1本ずつ製造するバッチ方式のため、飲料水を充填したボトルを複数本、短時間で製造したい場合には対応が困難であるという課題があった。
また、特許文献2に開示される発明の場合、ボトルを洗浄するための洗浄液を供給するノズルと、ボトル内に飲料水を供給するノズルを共用する場合もあるとの記載から、飲料水に洗浄液が混ざる可能性もある。このため、両者が混ざり、消費者が摂取した場合でも、害のない洗浄液を選択しておく必要がある。この結果、使用可能な洗浄液の種類が限定されてしまい、消費者の要望に応じた製品開発の自由度が低下してしまうという課題もあると考えられる。
【0012】
また、特許文献3に開示される発明の場合も、確かに充填装置のコンパクト化は可能であるが、1本ずつ製造するバッチ方式であるため、特許文献1及び特許文献2に開示されている発明と同様に複数本を短時間で製造する場合に対応が困難であるという課題があった。
【0013】
次に、特許文献4に開示される発明の場合も、確かに装置全体としてはコンパクトであり、ドラムに複数本のボトルを装着しておけばドラムの回動に伴って洗浄、飲料水の供給、封止といった一連の処理を同時並行的に行うことができる。すなわち、特許文献1乃至3に比べ、1本の容器に対する一連の処理が完了する間に他の容器に対しても処理が行えるため、複数本の容器の処理を全て完了させるのに要する時間を短縮することができる。しかしながら、特許文献4に開示された発明の場合、飲料水を供給するための給水ノズルと、ボトルにキャップを装着するキャップ巻締機は同時に使用することができない。なぜなら、特許文献4に開示されている発明において、給水ノズルとキャップ巻締機は何れも同じ姿勢のボトルに対してしか処理ができないからである。そのため、ボトルへの給水を行った後、給水ノズルをキャップ巻締装置に切り替える必要があった。したがって、複数本のボトルに対して洗浄から封止までの処理の一部を同時並行的に行えるものの、給水ノズルからキャップ巻締機への切り替えにおいて律速となり、製造時間を十分に短縮できないという課題があった。
【0014】
本発明者は上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、回転盤に設置されて円運動する複数の容器の姿勢を所望に制御すること等により、上記課題の解決が可能であるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は上述した従来の課題に対処してなされたものであり、その目的は、簡単に容器の姿勢を所望に制御することができる容器姿勢制御装置を提供することにある。
そして、この容器姿勢制御装置を用い、コンパクトで設置場所の自由度が高く、洗浄から封止までの一連の工程を高精度かつスピーディに実施することができる飲料水等の食品を充填する充填装置を提供することも目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための第1の発明は、容器の姿勢を所望に制御するための容器姿勢制御装置であって、平板からなり、第1の回動軸を中心として回動可能に設置される回転盤と、この回転盤の外周寄りに配設され、容器を着脱自在に保持する複数の容器保持具と、回転盤と平行に配置された背面板と、この背面板に形成された案内路と、を備え、容器保持具は、その平面上に容器を保持する本体部と、この本体部上において容器を保持する保持部と、本体部を回転盤に対し回動可能に軸支する第2の回動軸と、本体部に直接的又は間接的に突設され、案内路に沿ってスライドするガイドピンと、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明であれば、回転盤の回動に伴い外周寄りに配設された複数の容器保持具も円運動するという作用を有する。そして、容器保持具はその保持部により容器を保持するという作用を有する。また、容器保持具は本体部に直接又は間接的に設置され、背面板に配設された案内路に沿ってスライドするガイドピンを備えている。このため、容器保持具が回転盤とともに回動する際に、このガイドピンが案内路に沿ってスライドするという作用を有する。そして、ガイドピンの中心線と第2の回動軸の中心線とを結び、回転盤と平行をなす線分の向きがガイドピンの移動に伴って変化し、容器保持具に保持された容器の姿勢が変化するという作用を有する。
【0016】
次に、第2の発明は、第1の発明において、回転盤の回動方向に沿って所望の間隔をあけて配置された隣り合う2以上の容器保持具において、ガイドピンの中心線と第2の回動軸の中心線とを結ぶ線分の傾きが一定に保たれる姿勢制御済容器保持具となるように案内路の少なくとも一部が形成されていることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明であれば、上述する第1の発明の作用に加えて、隣り合う2以上の容器保持具において、回転盤を平面視した際のガイドピンの中心線と第2の回動軸の中心線とを結ぶ線分の傾きが一定に保たれる姿勢制御済容器保持具となるように、案内路がガイドピンを案内する。この結果、隣り合う2以上の容器保持具の姿勢が変化せず、それらによって保持される2以上の容器の姿勢が同じになるという作用を有する。
なお、本願では、回転盤を平面視した際のガイドピンの中心線と第2の回動軸の中心線とを結ぶ線分の傾きが一定に保たれる容器保持具を姿勢制御済容器保持具と定義する。
【0017】
そして、第3の発明は、第2の発明において、案内路の平面形状は、第1の回動軸の中心線に対しn個の同一の形状が環状に繋がってなるn回回転対称(ただし、nは2以上の整数)をなすとともに形状が個々の領域をなし、それぞれの領域内に配される2以上の容器保持具が姿勢制御済容器保持具であることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明であれば、上述する第2の発明の作用に加えて、案内路の形状が第1の回動軸の中心線に対してn回回転対称となることで、平面形状の案内路はn個の同一形状の領域から形成される。この場合、n個のそれぞれの領域において、ガイドピンの中心線と第2の回動軸の中心線とを結び、回転盤に平行な線分の傾きが同様に変化する。その結果、回転盤の回動に伴って容器が第1の回動軸の周りを一周する間に、容器の姿勢は同じ変化をn回繰り返す。すなわち、各領域において2以上の容器保持具が同じ姿勢に保たれる(姿勢制御済容器保持具となる)という作用を有する。
【0018】
次に、第4の発明に係る充填装置は、第2の発明に記載の容器姿勢制御装置と、姿勢制御済容器保持具の保持する容器に注入物を供給するノズル、及び又は注入物が供給された姿勢制御済容器保持具の保持する容器を封止する封止手段を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明であれば、上述する第2の発明の容器姿勢制御装置の作用に加えて、案内路に案内されるガイドピンにより姿勢制御済容器保持具とともに姿勢が制御される容器に対して、ノズルにより注入物が供給されるという作用を有する。ここで、本願明細書において、ノズルにより供給される注入物は、特に指定のない限り、姿勢制御済容器保持具の保持する容器内に供給して充填される飲料水といった製品に限定されず、洗浄液のように容器内に充填されずに供給後排出されるものも含まれる。また、ノズルから供給できるものであればその性状にも限定はなく、液体の他にペースト体、粉体でもよい。
また、封止手段により姿勢制御済容器保持具の保持する容器が封止されるという作用も有する。なお、ここでの封止手段として、例えば蓋巻締機を用いて蓋を容器に螺着する方法、打栓機により容器の開口部に蓋を押し込み装着する方法、そして容器の開口部に蓋を載置し蓋の周縁と容器の開口部周縁とを加熱挟圧して接合する方法等が挙げられる。
加えて、上述するノズルを容器姿勢制御装置に設置することで、注入物が洗浄液であれば容器内を洗浄し、注入物が飲料水であれば容器内に飲料水等の食品を供給して充填すること等も可能となる。さらに、ノズルと封止手段を一緒に設置すれば洗浄と充填も可能となり、容器内に食品を充填して封止することもできる。すなわち、上記充填装置を活用すれば、注入物の充填された製品を簡単に製造できるようになる。そして、容器保持具の姿勢を制御することで、上記ノズル及び封止手段等の配置の自由度も高くなるという作用も有する。
【0019】
また、第5の発明に係る充填装置は、少なくとも第1及び第2の領域を有する第3の発明に記載の容器姿勢制御装置と、第1及び第2の領域に対応する位置に設けられ、姿勢制御済容器保持具の保持する容器に注入物を供給するノズルと、第2の領域に対応する位置に設けられ、姿勢制御済容器保持具の保持する容器を封止する封止手段と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明であれば、上述する第3の発明の容器姿勢制御装置の作用に加えて、任意に選択される第1及び第2の領域に配される姿勢制御済容器保持具の保持する容器に対して、ノズルにより注入物が容器内に供給されるという作用を有する。
【0020】
また、任意に選択される第2の領域に配される姿勢制御済容器保持具の保持する容器が封止手段により封止されるという作用も有する。なお、ここでの封止手段は既に例示しているため、ここでの説明は省略する。
さらに、上述するノズル及び封止手段を容器姿勢制御装置に設置することで、注入物が洗浄液であれば容器内を洗浄し、注入物が飲料水であれば容器内に飲料水等の食品を供給して充填すること等も可能となる。さらに、これらを一緒に設置すれば洗浄と充填も可能となり、容器内に食品を充填して封止することもできる。すなわち、上記容器姿勢制御装置を活用すれば、注入物の充填された製品を簡単に製造できるのである。そして、任意の領域における2以上の姿勢制御済容器保持具の姿勢の制御もできるため、上記ノズル及び封止手段等の配置の自由度も高くなるという作用も有する。
【0021】
そして、第6の発明は、第5の発明において、第1の領域に対応する位置において設けられたノズルが、姿勢制御済容器保持具に保持される容器の中に洗浄液又は殺菌液を供給する第1のノズルとすすぎ液を供給する第2のノズルであり、第2の領域に対応する位置において設けられたノズルが姿勢制御済容器保持具に保持される容器の中に液体又はペースト体である食品を供給する第3のノズルであることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明であれば、上述する第5の発明の作用に加えて、第1のノズル及び第2のノズルが第1の領域に対応する位置に設置されることで、第1の領域において姿勢制御済容器保持具に保持された2以上の容器のうちの1つに第1のノズルによる洗浄液又は殺菌液の供給を行い、他の容器の1つに対して第2のノズルによる容器内部へのすすぎ液の供給を同時に行うという作用を有する。そして、第3のノズルが第2の領域に対応する位置に設置されることで、第2の領域において姿勢制御済容器保持具に保持された容器の内部へ、液体又はペースト体である食品の供給を行うという作用を有する。
【0022】
さらに、第7の発明は、第4の発明乃至第6の発明のいずれか1の発明において、回転盤が鉛直平面と平行に設置されており、姿勢制御済容器保持具に保持される容器は円筒状の開口部を有し、この開口部の円筒軸が鉛直方向と平行をなし、かつ、開口部を回転盤の外側に向けていることを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明であれば、上述する第4の発明乃至第6の発明のいずれか1の発明の作用に加えて、姿勢制御済容器保持具に保持された2以上の容器に供給された注入物は容器の開口部の円筒軸に平行となる重力を受けるという作用を有する。
【0023】
加えて、第8の発明は、第4の発明乃至第7の発明のいずれか1の発明において、封止手段として、姿勢制御済容器保持具に保持される容器に蓋を取着する蓋締機を備え、蓋締機の対象となる容器を保持する姿勢制御済容器保持具の揺動を防止する揺動防止手段を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第8の発明であれば、上述する第4の発明乃至第7の発明のいずれか1の発明の作用に加えて、封止手段として蓋締機を用いることで、容器が蓋の取着により封止されるという作用を有する。そして、姿勢制御済容器保持具の揺動を防止する揺動防止手段により、蓋が取着される容器を保持する姿勢制御済容器保持具の揺動を防止するという作用を有する。なお、このような揺動防止手段として特に指定はないが、例えば、封止手段の対象とする姿勢制御済容器保持具を挟持し固定する挟持装置、ストッパーとなり容器保持具に挿抜可能な棒状体を有するシリンダ装置等を枠体に設けたりするものでもよい。
なお、本願における蓋締機は、蓋を螺着する蓋巻締機及び蓋を押し込み装着する打栓機を含む概念である。
【発明の効果】
【0024】
上述する第1の発明によれば、回転盤の回動とともにそれに配設された複数の容器保持具、並びにこれら容器保持具に保持された容器を円運動させることができ、さらにこれらの容器保持具(及び容器)の姿勢制御も可能となる。この結果、容器保持具に保持された容器に対して所望の処理(洗浄、食品供給等)を行う処理装置を回転盤の周囲に設置しておけば、回転盤を回動させながら容器に対し所望の処理を同時並行的に行うことができる。さらに、上記処理装置を本発明に設置する場合であっても、容器が処理され易い姿勢となるように簡単に調整できるため、処理装置の姿勢、配置の自由度を高めることができる。すなわち、容器の姿勢が固定され複数ある処理装置の姿勢・配置の自由度が低いことで、給水と蓋の装着を同時並行的に行うことが困難であった特許文献4の発明等とは異なり、本発明であれば複数の処理を同時並行的に行うことも可能となる。そして、処理装置を無駄な空きスペースを排除しながら設置することも可能となるため、装置のコンパクト化も容易となる。また、本発明は案内路に沿って容器保持具のガイドピンをスライドさせるという簡単な機構により容器の姿勢を制御するものであり、故障し難く装置の価格を抑えることもできる。
【0025】
次に、上述する第2の発明であれば、第1の発明の効果に加えて、隣り合う2以上の姿勢制御済容器保持具の保持する容器の姿勢が一定に保たれる。このため、処理対象となる容器が所定の姿勢であることが好適な処理装置が複数ある場合には、これらの処理装置を並べて設置することで、隣り合う2以上の上記容器に対して、処理を同時並行的に行うことが可能となる。この結果、容器の処理速度を一層向上させることが可能となる。例えば、容器内部を洗浄する処理とすすぐ処理は、どちらも洗浄液やすすぎ液が容器外に排出され易くするために、容器の開口部を下方に向け、かつ容器の中心軸(円筒状をなす飲み口の円筒軸)を鉛直方向と平行にする必要がある。すなわち、これらの処理のように容器を処理する際の容器の姿勢が限定され、かつ同じである場合であれば、それぞれの処理装置を並べて設置し、同時並行的に処理を行うことができると考えられる。
【0026】
また、上述する第3の発明であれば、第2の発明の効果に加えて、回転盤を平面視した際に案内路の平面形状が第1の回動軸の中心線に対してn回回転対称であるため、回転盤の回動に伴って容器が第1の回動軸の周りを一周する間に、容器の姿勢は同じ変化をn回繰り返す。このため、処理対象となる容器が所定の姿勢であることが好適な処理装置が多数ある場合に、第3の発明であれば領域の数に合わせて多数の処理装置を配置することができるため、多数の処理を同時並行的に行うことが可能となる。これにより、種類の異なる多くの処理を同時並行的に行うことができるようになる。また、案内路は1つの形状の単位をn個連結させた構造となるため、案内路の作製が容易となるばかりか、破損時に修復を簡単に行うことができるようになる。
【0027】
加えて、上述する第4の発明であれば、第2の発明の容器姿勢制御装置の効果に加えて、姿勢制御済容器保持具の保持する容器に対し、ノズルにより注入物が容器内に供給されることや、封止手段により封止されることが可能となる。このため、本発明であれば、ボトルに飲料水が充填された飲料製品のように、注入物が容器に充填された製品を製造することが可能となる。そして、ノズル、封止手段等の処理装置の配置等の自由度が高いため、充填装置のコンパクト化も容易となる。
【0028】
そして、上述する第5の発明であれば、第3の発明の容器姿勢制御装置の効果に加えて、任意に選択される第1及び第2の領域に配される姿勢制御済容器保持具の保持する容器に対し、ノズルにより注入物が容器内に供給され、任意に選択される第2の領域に配される姿勢制御済容器保持具の保持する容器が封止手段により封止される。このため、本発明であれば、例えば洗浄液により容器内を洗浄し、この容器に飲料水といった食品を充填した後に封止できるようになるため、容器に注入物の充填された製品の製造が可能となる。そして、ノズル、封止手段等の処理装置の配置等を高い自由度により設定できるようになるため、充填装置のコンパクト化に繋げることができる。
【0029】
加えて、上述する第6の発明であれば、第5の発明の効果に加えて、第1の領域に配される姿勢制御済容器保持具に保持された容器に対し、第1のノズルによる洗浄液又は殺菌液の供給及び排出する処理と、第2のノズルによるすすぎ液の供給及び排出する処理を、同時並行的に行うことが可能となる。特に、従来では困難であった容器内へのすすぎ液の供給と排出が可能となるため、洗浄又は殺菌後の容器に残留していた洗浄液等は可能な限り除去され、製品の品質を一層向上させることが可能となる。そして、第2の領域に配される姿勢制御済容器保持具に保持された容器に対し、第3のノズルにより液体又はペースト体の食品が供給・充填され、次いで容器を封止することができる。
以上から、回転盤を回転させながら、第1の領域に配された姿勢制御済容器保持具の保持する複数の容器に対して洗浄又は殺菌を効率的に行い、第2の領域において食品を充填して封止するという一連の製品製造工程を、コンパクトな充填装置を用いてスピーディに行うことが可能となる。
【0030】
さらに、上述する第7の発明であれば、第4の発明乃至第6の発明のいずれか1の発明の効果に加えて、姿勢制御済容器保持具に保持される容器の開口部が鉛直下方に向いている場合には、姿勢制御済容器保持具の保持する容器に供給された注入物は、自重により容器の開口部側に流れ、容器の外に自然に排出されるようになる。このため、洗浄液等の廃液を容器から排出するための手段を別途設ける必要がなく、充填装置の構造を一層シンプルにすることができる。この結果、充填装置が故障し難くなり、価格を抑えることも容易となる。
また、姿勢制御済容器保持具に保持される容器の開口部が鉛直上方に向いている場合には、姿勢制御済容器保持具の保持する容器の内部に供給される注入物は、その容器の開口部を上限とする高さまで供給されることができ、容器内に注入物を可能な限り多量に充填することも可能となる。
【0031】
また、上述する第8の発明であれば、第4の発明乃至第7の発明のいずれか1の発明の効果に加えて、容器の封止手段として蓋締機を用いることができる。さらに、揺動防止手段により、容器へ蓋を取着させる際に姿勢制御済容器保持具の揺動を抑えることができるため、特殊構造の蓋であっても不良なく容器を封止することができるようになる。その結果、特殊構造の蓋を用いた新製品の製造に対応できるとともに、製品不良率を低下させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態に係る充填装置の内部構造を示す立面図である。
【
図2】本実施の形態に係る充填装置の外観を示す立面図である。
【
図3】
図1に示す充填装置の構成要素の一部を省略して示した図である。
【
図4】容器保持具の構造を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)におけるI方向矢視図であり、(c)は(a)におけるJ方向矢視図である。
【
図5】回転盤及び案内路の構造を説明するための図であり、(a)は
図3において容器保持具の第2の回動軸以外を省略した図であり、(b)は同図(a)から回転盤を取り外した図である。
【
図6】本実施の形態に係る充填装置の操作手順を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る充填装置における容器姿勢制御装置の制御機構を説明するための図である。
【
図8】本実施の形態に係る充填装置における容器姿勢制御装置の案内路を設定する方法を説明するための図である。
【
図9】(a)は揺動防止手段が作動した状態を示す容器保持具の平面図であり、(b)は同図(a)の揺動防止手段が解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の容器姿勢制御装置及びそれを用いた充填装置について説明するため、飲料水を充填するための充填装置を例として用いながら説明する。
なお、説明を行うにあたって
図1乃至
図9を参照するが、何れの図も本発明の実施の形態の例として挙げたものであり、後述する本発明の作用・効果を奏する範囲内であれば、構成要素の形状、数、配置等については使用者が任意に設定することが可能である。
【実施例0034】
「1;実施例の基本構成」
「1-1;基本構成の構造」
まず、本発明の実施形態に係る充填装置1について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施の形態に係る充填装置の内部構造及び外観を示す立面図である。ここで、
図1は、
図2において内部の状態を把握し易くするため前面のパネル2bを取り外した状態のものである。また、多数ある同一の構成要素については、図が煩雑とならないように一部にのみ符号付けを行った。加えて、
図1には回転盤3に配設された容器保持具4の位置を特定し易くするため、位置を区別するA乃至Hの符号が付されており、円弧状の太線の矢印は回転盤3の回転方向である。なお、
図1及び
図2の高さ方向を紙面上方側とし、充填装置の動作に必要な電源設備、駆動装置(例えば、パルスモータ)については図が煩雑とならないよう省略している。また、位置A-Hは回転盤3が何度回転しても固定される概念であり、
図1を平面視して最上部の容器保持具4の左側がGの位置であり、右側がHの位置となる。
【0035】
図1及び
図2に示すように、充填装置1に用いられる容器姿勢制御装置1aは、枠体2を基礎として形成され、下方の四隅には移動を容易にするためのキャスター2aが取り付けられている。そして、
図1に示すように、容器姿勢制御装置1aの外面に取り付けられたパネル2b(
図2参照)を取り外すと、枠体2により回動可能に支持された第1の回動軸3aがその中心に設けられ、かつ、鉛直平面と平行に配設された回転盤3が、注入物の飛散防止のための回転盤カバー5で囲まれながら設置されている。
そして、この回転盤3の背面側にある枠体2に取り付けられた背面板6には、回転盤3と対向して配設され一対の線路からなるガイドピン用の案内路16を備え、ガイドピンは一対の上記線路の間に形成された閉経路(案内路16)内を通過する(例えば
図5(b)参照)。なお、案内路16は必ずしも一対の線路である必要はなく、同じ作用及び効果を有するものであれば、使用者が任意に設定することができる。例えば、案内路16を1本の線路とし、スライダが当該線路を挟みながら線路に沿ってスライドするものであってもよい。
一方、回転盤3には、容器20を着脱自在に保持する8つの容器保持具4が、回転盤3上において第2の回動軸4b(
図3参照)を中心として回動可能な状態で、回転盤3の回動方向に沿って等間隔にその外周寄りに配置されている。さらに、詳細は後述するが、これら8つの容器保持具4のうち、回転盤3における位置C,D,G,H(
図1参照)に配される容器保持具4は、開口部20a(飲み口)が所望の方向へ向くように容器20の姿勢が案内路16によって制御されている。例えば、後述する回転盤3の周囲に配置された給水装置7や洗浄殺菌装置(図示せず)等の箇所に容器20が移動した際には、処理に適した状態となるようにその姿勢が調整される。
【0036】
次に、上述する容器姿勢制御装置1aが充填装置1として動作するように、容器姿勢制御装置1aの回転盤3の位置Gの上方には、位置Gに配された容器保持具4の保持する容器20(開口部20a(飲み口)を上にし、その円筒軸が鉛直方向と平行となる)に対し、飲料水を供給するための給水装置7の第3のノズル7aが設置されている。そして、回転盤3の位置Hの上方には、位置Hに配される容器保持具4が保持する容器20(開口部20a(飲み口)を上にし、その円筒軸が鉛直方向と平行)に蓋供給部8aより供給される蓋20bを螺着する蓋巻締機8が設置されている。また、符号8bは蓋巻締機8に設けられて門形に形成される固定部である。この固定部8bは
図4に示す容器保持具4の上部に設けられた一対の挟持板4c2の上面に突設された一対のバネ固定板4c5に、両外側から付勢して挟持版4c2を容器20に強く押し付けることで供回りを防止すべく固定するものであり、また、容器保持具4の揺動も防止することができる。
【0037】
さらに、回転盤3の位置Cの下方には、位置Cに配される容器保持具4の保持する容器20(開口部20a(飲み口)を下にし、その円筒軸が鉛直方向と平行)に対し、洗浄液又は殺菌液を供給する洗浄殺菌装置(図示せず)の第1のノズル9が設置されている。加えて、回転盤3の位置Dの下方には、位置Dに配される容器保持具4の保持する容器20(開口部20a(飲み口)を下にし、その円筒軸が鉛直方向と平行)に対し、すすぎ液を供給するすすぎ液供給装置(図示せず)の第2のノズル18が設置されている。
ここで、上記位置G,H,C,Dに配置される容器保持具4は、洗浄等の処理をし易くするために容器20を所望の姿勢に維持することから、それらの容器保持部4を特に「姿勢制御済容器保持具」と呼ぶことにする。
なお、
図1の充填装置1のように、回転盤3の位置Bの側方において、位置Bに配される容器保持具4の保持する容器20に対し、高圧の空気を供給してエアブローを行う給気ノズル10が設置されていてもよい。この場合の当該容器保持具4は、その保持する容器20の開口部20aを給気ノズル10に向けるように姿勢が制御されていてもよく、給気ノズル10の向きが開口部20aに向けられるように設置されていてもよい。この給気ノズル10の作用及び効果については後述する。
【0038】
その他に、充填装置1は、第1の回動軸3aを中心として回転盤3を回動させる駆動装置(図示せず)の動作、第1のノズル9、第2のノズル18、第3のノズル7aからの注入物の供給、蓋巻締機8の動作等を制御する制御装置11が設置されている。この制御装置11は、詳細については後述するが、蓋巻締機8が蓋20bを容器20に螺着させる際の締め付けトルクを調整するためのトルク設定つまみ11aと、設定トルク、充填装置1の運転状態等を設定・確認する際に用いる表示パネル11bを備えている。
さらに、この制御装置11は、位置C,D,G,Hにある容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)に容器20が保持されているか否かを予め確認して注入物を供給したり蓋を螺着したりするように、各位置の近傍の回転盤カバー5に容器20の有無を検知可能なセンサ12が配設されている。これにより、注入物を誤って容器20の外部へ撒き散らしたり、蓋巻締機8が蓋20bを容器20への螺着に失敗して落下させたりすることがなくなり、注入物及び蓋20bの無駄な消費を確実に防ぐことができるようになる。
【0039】
加えて、容器姿勢制御装置1aは、
図2に示すように、回転盤3を所望の角度で回動させる際に押すスタートボタン13と、充填装置1の稼働中に不具合が生じた場合に装置を緊急停止させるための非常停止ボタン14と、回転盤3の位置A(例えば、
図1参照)における容器保持具4に容器20を装填する際に用いる開閉扉15が取り付けられている。
ここで、スタートボタン13は、一回押される毎に回転盤3が45°回転し、その結果、位置Aに配されていた容器保持具4は位置Bに移動するようになる。そして、位置C,D,G,Hのそれぞれにおいて、容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)に保持された容器20は、その近傍に設置された複数のノズル及び蓋巻締機8により処理される。なお、充填装置1の具体的な使用方法については後述するため、ここではその説明は省略する。また、スタートボタン13を一回押す毎に回転盤3が回転する角度を45°に設定しているが、この角度は回転盤3の周囲に設置されている第1のノズル9等の配置、回転盤3に設置された容器保持具4の数に合わせて使用者が任意に設定できることは言うまでもない。
【0040】
次に、
図3乃至
図5を用いながら、容器姿勢制御装置1aの構造について詳細に説明する。
図3は、
図1に示す本実施の形態に係る充填装置の構成要素の一部を省略して示した図である。ここで、既に説明した同じ構成要素については同一の符号を付して説明は省略する。また、図が煩雑にならないように複数ある構成要素については一部にのみ符号付けを行うとともに、説明に不要な構成要素についても一部にのみ符号付けを行うこととした。そして、容器保持具4の保持する容器20も、図が煩雑とならないよう記載を省略した。
図3に示すように、容器姿勢制御装置1aにおいて、回転盤3は図示されない枠体2により支持され、その外周寄りには容器20を着脱自在に保持できる8つの容器保持具4が等間隔に配設されている。そして、これら容器保持具4は、水平に設置され一端が回転盤3に固定された第2の回動軸4bにより回動可能に支持されている。
加えて、容器保持具4は、回転盤3の前面側に配置され、その平面部分が回転盤3と平行な本体部4aと、回転盤3の背面側に配置され、その平面部分が回転盤3と平行なガイドピン支持板4dが、回転盤3に設けられた円弧状の孔3bに挿通された連結軸4eを介して連結されることにより一体化された構造となっている。すなわち、容器保持具4は連結軸4eが孔3bの内部を移動できる範囲内において第2の回動軸4bを中心として回動可能となっている。
そして、回転盤3の背面側には、図示されない枠体2に、回転盤3と対向するように設けられた案内路16を有する背面板6が回転盤3と平行に設置されている(
図5参照)。詳細は後述するが、上述したように案内路16は一対の線路16a,16a(
図1参照)によって形成されており、ガイドピン4f(
図4参照)は一対の線路16a,16aの間に形成される閉経路(案内路16)内を移動する。そして、この案内路16に沿って、ガイドピン支持板4dに設置されているガイドピン4fが移動することで、容器保持具4の姿勢が変化する。なお、この姿勢制御の詳細については後述するため、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、上述した容器保持具4の構造について、
図4を参照しながら詳細を説明する。
図4は容器保持具の構造を示す図であり、
図4(a)はその平面図であり、
図4(b)は
図4(a)におけるI方向矢視図であり、
図4(c)は
図4(a)におけるJ方向矢視図である。ここで、
図1乃至
図3において既に説明した同じ構成要素については同一の符号を付した。また、
図4(b)において、本体部4aにより一部隠れたガイドピン支持板4d及びこれに設置されたガイドピン4fについては破線で示している。
図4(a)乃至
図4(c)より、容器保持具4は、図示しない回転盤3と平行に配された本体部4aと、この本体部4aと平行をなし、かつ、連結軸4eを介して本体部4aに連結されたガイドピン支持板4dと、を備え、本体部4aの前面側には容器20(図示せず)を保持するための挟持部4cが設置され、連結軸4eの設置された本体部4aの背面側には本体部4aを回転盤3に対し回動可能に軸支する第2の回動軸4bが設置されている。さらに、ガイドピン支持板4dには案内路16の内部に配置されるガイドピン4fが第2の回動軸4bと平行に背面板6へ向かって突設されている。なお、本体部4aに設けられた貫通孔4gについては後述する。
【0042】
上記構成要素のうち挟持部4cは、本体部4aの前面側に突設された台4c1と、この台4c1に係合し本体部4aの平面と平行にスライド可能な一対の挟持板4c2,4c2を備えている。この挟持板4c2は本体部4aの平面に対して平行なスリット4c3を備え、台4c1に設置されたガイド材4c4がこのスリット4c3内をスライド可能にしながら挟持板4c2を台4c1に係合している。さらに、スリット4c3の一方の端部には、挟持板4c2に設置されたバネ固定板4c5を有し、一対の挟持板4c2,4c2にある一対のバネ固定板4c5,4c5によりバネ4c6の両端が固定される。したがって、一対の挟持板4c2,4c2をそれぞれスライドさせ互いを離隔させた場合、伸びたバネ4c6の復元力により一対の挟持板4c2,4c2は閉じようとする。すなわち、一対の挟持板4c2,4c2に挟まれた容器20は、容器保持具4に保持されるようになる。なお、一対の挟持板4c2,4c2の間で挟まれた容器20の中心軸(開口部20aの円筒軸)は、本体部4aの平面と平行であり、かつ
図4(b)における第2の回動軸4bの中心線と連結軸4eの中心とを結んだ線分に対しても平行となるように保持される。
また、詳細は後述するが、容器保持具4が一層強固に容器20を保持するため、
図1に示す固定部8bのように一対の挟持板4c2,4c2のそれぞれに直接的に力を付勢するものであってもよい。なお、この固定部8bの固定機構については特に指定はなく、例えばシリンダ装置を挙げることができる。すなわち、シリンダ装置のシリンダが挟持板4c2を押さえることで容器20の揺動が一層生じ難くなり、容器20が処理中に容器保持具4から外れて落下したり、容器20の姿勢が変化したりして、処理が不完全になってしまうのを防ぐことができる。
【0043】
次に、容器保持具4が設置される回転盤3、並びに容器保持具4の姿勢を制御するための案内路16の構造について、
図5を用いながら説明する。
図5は回転盤及び案内路の構造を説明するための図であり、
図5(a)は
図3において容器保持具の第2の回動軸以外が省略された状態を示しており、
図5(b)は
図5(a)からさらに回転盤を取り外した状態を示している。なお、
図1乃至
図4において既に説明した同じ構成要素については、同一の符号を付して説明は省略する。また、図が煩雑にならないように複数ある構成要素については一部にのみ符号付けを行った。
図5(a)に示すように、容器姿勢制御装置1aにおいて、中心に第1の回動軸3aが設置された回転盤3の背面側には、図示しない枠体2に固定された背面板6が設置されており、その背面板6の回転盤3側の面上には、図示しない複数のボルトによって固定された一対の線路16a,16aと、それらの間に形成される閉経路16bからなる案内路16(
図5(b)参照)が設けられている。そして、上述したように、回転盤3には、
図4を参照して説明した容器保持具4の第2の回動軸4bが回動方向に沿って、その外周寄りに等間隔で配設されるとともに、容器保持具4の連結軸4e(
図3、
図4参照)が挿通される円弧状の孔3bが形成されている。
さらに、固定ピン用孔3cが各第2の回動軸4bの近傍に形成されている。この固定ピン用孔3cは、容器保持具4の揺動を防止するために穿設されているものであり、詳細は後述するが、回転盤3を平面視した際に、位置Hに配置された容器保持具4(姿勢制御済容器保護具)の貫通孔4g(
図4(b)参照)と一致する位置に形成されている。
【0044】
次に、
図5(b)に示すように、案内路16は、孔6aに挿通される第1の回動軸3aの中心線に対して2回回転対称の形状であり、図中に示す破線を境界とし、同じ形状となる第1の領域21、第2の領域22が連結された形状となる。そして、第1の領域21内にある回転盤3の位置C,Dに容器保持具4が配置された際と、第2の領域22内にある回転盤3の位置G,Hに容器保持具4が配置された際に、各々が保持する容器20が開口部20aを回転盤3の外側に向け、また容器20の中心軸(開口部20aの円筒軸)が鉛直方向と平行になるよう姿勢制御されるように、案内路16が形成されている。
【0045】
「1-2;実施例の使用方法」
次に、
図1、
図2を参照しながら、
図6を用いて充填装置1の操作手順を説明する。
図6は、本実施の形態に係る充填装置の操作手順を示すフローチャートである。なお、本操作手順は回転盤3にある1つの容器保持具4に保持された1つの容器20に、注入物としての飲料水を充填して封止する場合を想定したものである。しかし、回転盤3の複数の容器保持具4にそれぞれ容器20が保持されている場合であっても、その操作方法は基本的に同じである。また、以降の説明に記載されている回転盤3の回転方向を示す「正方向」とは、
図1に示す矢印の方向を意味する。
図6に示すように、充填装置1では、まず、ステップS1として、充填装置1の電源を投入する。次いでステップS2では、開閉扉15を開けて容器20を回転盤3の位置Aに配された容器保持具4に装填し、開閉扉15を閉める(
図1、
図2参照)。次に、ステップS3において、スタートボタン13(
図2参照)を一回押すことで、制御装置11からの指令に従い回転盤3が正方向に45°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Bに移動する。
そして、次のステップS4において、回転盤3が停止した後、制御装置11からの指令に従って、給気ノズル10(
図1参照)から位置Bにある容器保持具4の保持する容器20に対しエアブローが行われる。このエアブローの実施は任意であるが、容器20を洗浄する前にエアブローを行うことで、容器20の内部に埃等の不要物があれば吹き飛ばされ排除されるようになるので好適である。すなわち、商品中に混入してしまう可能性のある埃等を洗浄前にも効率よく排除することができ、埃等のコンタミによる製品の不良率を一層低減させることができる。
【0046】
次いで、ステップS5において、スタートボタン13を一回押すと、制御装置11からの指令に従って、回転盤3が正方向に45°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Cに移動する(
図1参照)。そして、ステップS6において、回転盤3が停止した後、位置Cの近傍にあるセンサ12によって容器保持具4に保持された容器20が検出されれば、次のステップS7において、制御装置11からの指令に従って第1のノズル9から洗浄液又は殺菌液が容器20内に供給され、「第1の洗浄」が行われる。この結果、容器20の内面が洗浄又は殺菌される。なお、ステップS6において容器20が検出されなかった場合には、ステップS7の工程は省略される。
【0047】
そして、ステップS8において、スタートボタン13を一回押すと、制御装置11からの指令に従って、回転盤3が正方向に45°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Dに移動する(
図1参照)。そして、ステップS9において、回転盤3が停止した後、位置Dの近傍にあるセンサ12によって容器保持具4に保持された容器20が検出されれば、次のステップS10において、制御装置11からの指令に従って第2のノズル18からすすぎ液が容器20内に供給され、「第2の洗浄」が行われる。この結果、容器20の内面がすすぎ液によりすすがれて、洗浄液又は殺菌液の一層の除去を行うことができる。なお、ステップS9において容器20が検出されない場合は、ステップS10の工程は省略される。
【0048】
次に、ステップS11では、スタートボタン13を三回押すことで、回転盤3が制御装置11からの指令に従って正方向に135°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Gに移動する(
図1参照)。そしてステップS12では、回転盤3が停止した後、位置Gの近傍にあるセンサ12によって容器保持具4に保持された容器20が検出されれば、ステップS13において、制御装置11からの指令に従って、第3のノズル7aから飲料水が容器20内へ供給され、「飲料水供給」が行われる。この結果、飲料水が容器20内に規定量充填されることになる。なお、ステップS12において容器20が検出されない場合は、ステップS13の工程は省略される。
【0049】
そして、ステップS14では、スタートボタン13を一回押すことで、回転盤3が制御装置11からの指令に従って正方向に45°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Hに移動する(
図1参照)。さらに、ステップS15では、回転盤3が停止した後、位置Hの近傍にあるセンサ12によって容器保持具4に保持された容器20が検出されれば、ステップS16において制御装置11からの指令に従って蓋巻締機8が作動して「蓋装着」が行われ、容器20は封止される。なお、ステップS15において容器20が検出されない場合は、ステップS16の工程は省略される。
【0050】
次に、ステップS17では、スタートボタン13を一回押すことで、回転盤3が制御装置11からの指令に従って正方向に45°回転し、容器20を保持する容器保持具4は位置Aに再び戻ってくる(
図1参照)。そして、ステップS18では、回転盤3が停止した後、開閉扉15を開けて容器保持具4から容器20を取り外し、充填装置1から容器20を取り出す。そして、開閉扉15を閉めた後、ステップS19において充填装置1の電源を切断する。これにより、1つの容器20に飲料水を充填して封止するという一連の工程が完了する。
【0051】
「1-3;本実施の形態に係る充填装置の作用及び効果」
上述する充填装置1は、容器姿勢制御装置1aにより、以下の作用を有すると考えられる。
まず、容器姿勢制御装置1aは、回転盤3の回動により、外周寄りに配設された8つの容器保持具4(又は保持する容器20)が第1の回動軸3aを中心として円運動するという作用を有する。そして、容器保持具4の本体部4aに間接的に設置され、案内路16に沿ってスライドするガイドピン4fを有することで、各容器保持具4は回転盤3とともに回動しながら、ガイドピン4fが案内路16の形状に沿ってスライドする。
ここで、ガイドピン4fは案内路16に沿ってスライドしながら、第2の回動軸4bを中心として容器保持具4を回動させる。すなわち、案内路16の形状により容器保持具4の姿勢が制御され、ひいては容器保持具4の保持する容器20の姿勢が制御されるという作用を有する。充填装置1の場合、より具体的には、案内路16の第1の領域21における位置C,Dにある2つの容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)と、第2の領域22における位置G,Hにある2つの容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する4つの容器20は、回転盤3の外側に開口部20aが向くとともに、その中心軸(開口部20aの円筒軸)が鉛直方向と平行をなすという作用を有する。
このため、上記4つの位置に配される容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する容器20に対し、供給された注入物は容器20の中心軸に平行な重力を受けるという作用も有する。ここで、上記姿勢制御について
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0052】
図7は、本実施の形態に係る充填装置における容器姿勢制御装置の制御機構を説明するための図であり、回転盤における位置Gに配された容器保持具が位置H、位置Aの順に移動する様子を示したものである。ここで、既に説明した同じ構成要素については同一の符号を付して説明は省略するとともに、図が煩雑とならないように一部の構成要素に対する符号付けも省略した。また、図中の太線の矢印は、容器姿勢制御装置1aが容器保持具4を次の位置へ移動させる際の、第2の回動軸4b回りに回動させる方向と回動させる角度の大きさを簡易的に表現したものであり、長いものほど回動させる角度が大きいことを示している。なお、ガイドピン4fは視認できないが、ガイドピン4fの動きが明瞭となるように、その位置を実線により図示している。また、紙面左側に向かう方向を容器姿勢制御装置1aの高さ方向とした。
図7に示すように、回転盤3の位置Gに配された容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)は、回転盤3の回動により位置Hを経て位置Aに移動する。ここで、仮に位置Gに配された容器保持具4が第2の回転軸4b回りに回動不可能な場合には、回転盤3を平面視した際に、位置Gにおいて第2の回動軸4bの中心と連結軸4eの中心とを結んだ線分と、位置Hにおいて第2の回動軸4bの中心と連結軸4eの中心とを結んだ線分とのなす角は45°となる。しかしながら、実際には容器姿勢制御装置1aでは、第1の回動軸3aを中心とする回転盤3の回転とともに、容器保持具4は第2の回動軸4b回りに矢印方向へ大きく45°回転する。この結果、位置Hにおいても上記線分は鉛直方向に対し平行となる。そして、位置Hに移動した容器保持具4が位置Aに移動する場合には、第2の回動軸4bの中心と連結軸4eの中心とを結んだ線分が、位置Aにおいて所望の姿勢となるように、容器保持具4を第2の回動軸4bの回りに回動させればよい。すなわち、案内路16の平面形状を決定する場合には、回転盤3の各位置において、回転盤3を平面視した際に、第2の回動軸4bの中心と連結軸4eの中心とを結んだ線分が所望の傾きを持つようにガイドピン4fの位置を決めればよいのである。
【0053】
次に、案内路16の平面形状を具体的に設定する方法について、
図8を参照しながら説明する。
図8は本実施の形態に係る充填装置における容器姿勢制御装置の案内路を設定する方法を説明するための図であり、平面視して水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とする2次元直交座標系を表している。また、図中の円は、XY平面と平行に設置された回転盤3が原点Oを中心として回動した場合に、容器保持具4の第2の回動軸4bの中心線とXY平面の交点Pが描く軌跡を表している。なお、点Qはガイドピン4fの中心線とXY平面の交点である。
回転盤3の回動中心(第1の回動軸3aの中心線)から第2の回動軸4bの中心線までの距離をR、第2の回動軸4bの中心線からガイドピン4fの中心線までの距離をrとすると、
図8に示すように、線分OP及び線分PQの長さはそれぞれR及びrとなる。
いま、回転盤3が角速度ωで時計回りに回動しており、Y軸上にあった点Pが時間tの経過とともに、
図8に示す位置に移動し、この時点において線分PQがX軸の正方向となす角度をαとする。この場合、時間tが経過した時点における点PのX座標及びY座標は、それぞれRsinωt及びRcosωtで表され、時間tが経過した時点における点QのX座標及びY座標は、それぞれ(Rsinωt+rcosα)及び(Rcosωt+rsinα)で表される。
このとき、点Qが描く軌跡が次の式(1)で表される場合、線分PQがX軸の正方向となす角度は常にαとなる。
(X-rcosα)
2+(Y-rsinα)
2=R
2 ・・・(1)
これは、回転盤3の回動に伴ってガイドピン4fの中心線がXY平面上に描く軌跡が式(1)を満たす場合、線分PQの傾きが変化しないことを意味している。したがって、充填装置1において、上述の軌跡が式(1)を満たすように、案内路16を形成することにより、回転盤3上の位置に関わりなく、容器保持具4の姿勢を一定に保つことが可能である。
【0054】
次に、上述する容器姿勢保持装置1aを備えた充填装置1は、以下に示す作用を有する。
まず、第1のノズル9と第2のノズル18が第1の領域21における回転盤3の位置C,Dの下方に順に設置されることで、第1の領域21に配される容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)に保持された2つの容器20のうち、一方は第1のノズル9により洗浄液又は殺菌液が供給され、他方は第2のノズル18によりすすぎ液が供給されるという作用を有する。そして、これらの処理は同時並行的に行われるという作用も有する。そして、第3のノズル7aと蓋巻締機8が第2の領域22における回転盤3の位置G,Hの上方に順に設置されることで、第2の領域22に配される容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)に保持された2つの容器20のうち、一方は飲料水が供給されて充填が行われ、他方は蓋20bの螺着が行われ封止されるという作用を有する。さらに、上記作用により、充填装置1によって飲料水の充填された製品が製造されるという作用を有する。
【0055】
以上の作用により、充填装置1では回転盤3の回動とともに、その回転盤3に配設された8つの容器保持具4を円運動させながら、容器保持具4(及び容器20)の姿勢制御が行われる。この結果、従来では困難であった、第1乃至第3のノズルによる洗浄液又は殺菌液、すすぎ液、飲料水の供給、及び蓋巻締機8による封止を同時並行的に行うことができ、飲料水の充填された商品を短時間で製造することができるようになる。さらに、上記姿勢制御が可能になり、処理装置等を枠体2内に空きスペースを作ることなく設置できるため、充填装置1のコンパクト化が容易となり、設置場所の選択肢を広げることもできる。また、案内路16に沿って容器保持具4の有するガイドピン4fをスライドさせるという簡単な機構により容器20の姿勢を制御するため、故障し難い。したがって、装置の価格を抑えることも容易となる。
【0056】
さらに、案内路16における第1の領域21では、2つの容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する容器20が開口部20aを回転盤3の外側に向けるとともに、その姿勢が鉛直方向に対して平行をなしていることで、第1のノズル9及び第2のノズル18より容器20内部に供給された洗浄液又は殺菌液、及びすすぎ液は、自重により開口部20aから容器20の外に自然に排出されるようになる。このため、注入物を排出するための排出手段を別途設ける必要がなく、充填装置1の構造を一層シンプルにすることができる。この結果、充填装置1が故障し難くなり、価格を抑えることも容易となる。
同様に、案内路16における第2の領域22では、2つの容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する容器20が開口部20aを回転盤3の外側に向けるとともに、その姿勢が鉛直方向に対して平行をなしている。このため、容器20に対し、第3のノズル7aから飲料水を供給されることにより開口部20aを上限とする所望の高さまで飲料水を充填することができる。
【0057】
加えて、充填装置1では、従来同時並行的に行うことができなかった、容器20に対するすすぎ液の供給及び排出を行うことが可能となるため、飲料水を充填する前に容器20内に残留する洗浄液及び殺菌液を可能な限り除去することができる。この結果、洗浄液等が製品に混ざり難くなるため、製品の品質が一層向上する。
【0058】
「2;実施例の細部構造について」
「2-1;案内路の形状の回転対称性について」
ここでは図示しないが、容器姿勢制御装置1aのように回転盤3を平面視した際の案内路16の形状は、例えば
図5(b)のように2回回転対称ではなくn回回転対称(n=3以上)であってもよい。
案内路16の形状が、第1の回動軸3aの中心線に対して上記n回回転対称となることで、平面形状の案内路16はn個の同一形状の領域からなるように形成される。この結果、n個のうちの1つの領域においてガイドピン4fの中心線と第2の回動軸4bの中心線とを結び、回転盤3に平行な線分の傾きは他の領域においても同様に変化する。すなわち、回転盤3の回動に伴って容器20が第1の回動軸3aの周りを一周する間に、容器20の姿勢は同じ変化をn回繰り返すという作用を有する。
上記作用により、上述した洗浄殺菌処理及びすすぎ処理のように、処理対象となる容器20が所定の姿勢であることが好適な処理装置が多数ある場合に、領域の数に合わせて多数の処理装置を配置することができるため、多数の処理を同時並行的に行うことが可能となる。これにより、容器20の処理速度を向上させるだけでなく、種類の異なるより多くの処理を同時並行的に行うことも可能となる。また、上述したように、案内路16が1つの形状単位をn個連結させた構造であるため、作製が容易となるばかりか、破損時の修復も簡単に行うことができる。
【0059】
「2-2;容器保持具の揺動防止手段について」
充填装置1において、蓋巻締機8が蓋20bを容器20に螺着する際に、容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の揺動を抑えるための揺動防止手段を備えていてもよい。
ここでの揺動防止手段は、
図5(b)に示すような固定ピン17aを備えたシリンダ装置17が考えられる。このシリンダ装置17は例えば背面板6の裏側や図示しない枠体2に設置され、
図5(a)に示される回転盤3の位置Hの固定ピン用孔3cから棒状の固定ピン17aを、制御装置11の指令により出し入れすることが可能なシリンダ装置17である。そして、この棒状の固定ピンの進行方向上には、上述した回転盤3の固定ピン用孔3cと位置Hに配された容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の貫通孔4gが挿通可能に並ぶようになる。このシリンダ装置17による揺動防止手段の動作に関して、
図9を参照しながら説明する。
図9は本実施の形態に係る充填装置の揺動防止手段を説明するための概略図であり、
図9(a)は容器を保持した容器保持具に対して揺動防止手段が作動した状態を示しており、
図9(b)は
図9(a)の揺動防止手段が解除された状態を示している。ここで、既に説明した同じ構成要素については同一の符号を付して説明は省略するとともに、その作用及び効果の説明は省略する。さらに、ここでの説明に無関係な構成要素に対する符号付けとその説明も省略した。
図9(b)に示すように、充填装置1の背面板6の裏側に設置されたシリンダ装置17は作動していない場合、その棒状の固定ピン17aを回転盤3側に突出させないようにし、固定ピン17aは回転盤3及び容器保持具4の何れに対してもその移動を阻害することはない。
【0060】
一方、位置Hに配される容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する容器20に対し蓋巻締機8が蓋20b(図示せず)を螺着させる際には、
図9(a)に示すようにシリンダ装置17は、棒状の固定ピン17aを突出させ、固定ピン用孔3cを貫通しながら容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の貫通孔4gに挿入する。この結果、回転盤3の回動が確実に防止されるとともに、案内路16内に係止されていないガイドピン4fの揺動による容器保持具4の第2の回動軸4b回りの揺動も確実に防止できる。
この結果、回転盤3の位置Hにおける容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)の保持する容器20へ蓋20bを不良なく螺着させることができ、お茶や果実飲料等の原液が封入され、開封時に容器中の水とこの原液が混ざるような機構を有する前述の特殊構造の蓋であっても精度良く螺着することができる。このような効果により、製品不良率を低下させることも可能になると考えられる。なお、シリンダ装置17の設置場所は充填装置1内であって、固定ピン17aを突出させて固定ピン用孔3cと貫通孔4gに挿入可能であればどこに設置されてもよい。
【0061】
「2-3;締め付けトルク調整機構について」
蓋巻締機8が蓋20bを容器20に螺着させる際の締め付けトルクを調整できるように、制御装置11が締め付けトルク調整機構を備えていてもよい。
図1に示す充填装置1であれば、トルク設定つまみ11aを回動させながら表示パネル11bに表示される締め付けトルクを予め所望の値となるよう設定しておくことで、制御装置11は蓋巻締機8が蓋20bを容器20に螺着させる際に締め付けトルクを所望の値となるように調整するという作用を有する。
上記作用により、容器、蓋の材質及び形状、さらには充填される飲料水の性状に合わせて最適な締め付けトルクで蓋20bを容器20に螺着させることができるようになる。この結果、飲料水が常に同じ条件で安定して確実に封止されるようになり、封止状態のバラつきによる飲料水の漏れも抑制されるという効果も有する。
【0062】
「2-4;供回り防止機構について」
充填装置1において、蓋巻締機8が蓋20bを容器20に螺着させる際の容器20の供回りを防止するための供回り防止機構を備えていてもよい。
図1において、詳細な構造は図示していなものの蓋巻締機8に記載された固定部8bが供回り防止機構に当たる。この固定部8bは、
図1の位置Hに容器保持具4(姿勢制御済容器保持具)が配された際に、保持する容器20に対し両側から棒状体(図示せず)で押さえることが可能なシリンダ装置を想定したものである。特にシリンダ装置に限定するものではなく、他の機構により容器20の供回りを防止するものであってもよい。
このような供回り防止機構により、上述する締め付けトルク調整機構の精度を一層向上させることができ、上述した締め付けトルク調整機構による効果を一層高めることができると考えられる。
【0063】
「2-5;挟持板の形状について」
一対の挟持板4c2,4c2には、例えば
図4に示すように、対向する端部に一対の凹部4c7が対向するように形成されていてもよい。このような一対の凹部4c7,4c7の間に容器20を挟むことで、凹部4c7と容器20との密着性が向上し、容器20を確りと挟持することができる。なお、この凹部4c7の形状は使用する容器20の形状に合わせて任意に変更可能であることは言うまでもない。また、凹部4c7において、少なくとも容器20と接触する面にゴム等の皮膜層を設け、容器20が滑り難くなるよう処理されていてもよい。これにより、一層確りと容器20は挟持部4cに挟持されるようになる。
【0064】
本明細書では、容器姿勢制御装置1aを容器20に飲料水を充填するための充填装置1に使用した例について説明した。この充填装置1は飲料水以外の液体、ペースト体、さらには流動する粉体を充填する場合にも使用することができ、上記説明はこれらペースト体、粉体であっても同様に成り立つと考えられる。
一方で、容器姿勢制御装置1aは上述する注入物の充填以外の用途にも使用可能である。例えば、容器保持具4の代わりに物品を収容可能な籠状の容器等を設置すれば、上記注入物とは異なり流動し難い物品であっても、容器の姿勢を制御しながら洗浄したり、品質検査したりといった処理を同時並行的に行うことが可能と考えられる。
本発明はコンパクトであり、かつ所望の姿勢に容器を制御することが可能な容器姿勢制御装置及びそれを用いた充填装置であり、容器の姿勢制御及び液体、ペースト体、粉体といった注入物の充填に関する技術分野において利用可能である。
1…充填装置 1a…容器姿勢制御装置 2…枠体 2a…キャスター 2b…パネル 3…回転盤 3a…第1の回動軸 3b…孔 3c…固定ピン用孔 4…容器保持具 4a…本体部 4b…第2の回動軸 4c…挟持部 4c1…台 4c2…挟持板 4c3…スリット 4c4…ガイド材 4c5…バネ固定板 4c6…バネ 4c7…凹部 4d…ガイドピン支持板 4e…連結軸 4f…ガイドピン 4g…貫通孔 5…回転盤カバー 6…背面板 6a…孔 7…給水装置 7a…第3のノズル 8…蓋巻締機 8a…蓋供給部 8b…固定部 9…第1のノズル 10…給気ノズル 11…制御装置 11a…トルク設定つまみ 11b…表示パネル 12…センサ 13…スタートボタン 14…非常停止ボタン 15…開閉扉 16…案内路 16a…線路 16b…閉経路 17…シリンダ装置 17a…固定ピン 18…第2のノズル 20…容器 20a… 開口部 20b…蓋 21…第1の領域 22…第2の領域 A,B,C,D,E,F,G,H…位置