(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023293
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】軌道材料モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128667
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM01
5H161MM05
5H161MM12
5H161MM15
5H161NN10
(57)【要約】
【課題】駅構内の各番線を含めたすべての範囲の軌道材料の画像を取得できる軌道材料モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】軌道材料モニタリング装置および軌道に沿って設置された複数の地上子を備えたモニタリングシステムにおいて、複数の地上子には本線の駅構内の出口に設置された第1の地上子と、本線の駅構内の入口に設置された第2の地上子と駅構内の本線以外の側線に設置された第3の地上子とがあり、第1の地上子を検知すると本線のデータの取得を開始させて、第2の地上子を検知すると駅構内本線または側線のデータの取得を開始させ、第2の地上子および第3の地上子を順に検知すると取得したデータを、第1の条件の成立に伴い側線のデータとして記憶し、第2の地上子を検知した後所定距離移動するまでに第3の地上子を検知しなかった場合には、取得したデータを第2の条件の成立に伴い駅構内本線のデータとして記憶するようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されレールの近傍を検査する検査手段と、前記検査手段が取得したデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されているデータを転送するデータ転送手段と、制御手段とを有する軌道材料モニタリング装置および前記車両が走行する軌道に沿って設置され少なくとも自己の識別コードを記憶した複数の地上子を備えた軌道材料モニタリングシステムであって、
前記複数の地上子には、本線の駅構内の出口に設置された第1の地上子と、本線の駅構内の入口に設置された第2の地上子と、駅構内の本線以外の側線に設置された第3の地上子と、があり、
前記制御手段は、
前記第1の地上子を検知すると前記検査手段による本線のデータの取得を開始させ、
前記第2の地上子を検知すると前記検査手段による駅構内本線または側線のデータの取得を開始させ、
前記第2の地上子および前記第3の地上子を順に検知すると前記検査手段により取得したデータを第1の条件の成立に伴い側線のデータとして前記記憶手段に記憶させ、
前記第2の地上子を検知した後所定距離移動するまでに前記第3の地上子を検知しなかった場合には、前記検査手段により取得したデータを、第2の条件の成立に伴い駅構内本線のデータとして前記記憶手段に記憶させることを特徴とする軌道材料モニタリングシステム。
【請求項2】
前記検査手段によるデータの取得時間帯が予め設定され、前記取得時間帯が第1時間帯と第2時間帯とに分割されており、
前記第1の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の前記第1時間帯であり、前記第2の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の前記第2時間帯であることを特徴とする請求項1に記載の軌道材料モニタリングシステム。
【請求項3】
前記検査手段は撮像手段であり、
前記第1の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の昼の時間帯であり、前記第2の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の夜の時間帯であることを特徴とする請求項1に記載の軌道材料モニタリングシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の条件が成立した場合であっても、関連する範囲の本線のデータが取得されていない場合には、前記検査手段によるデータの取得を開始させないことを特徴とする請求項2又は3に記載の軌道材料モニタリングシステム。
【請求項5】
前記軌道材料モニタリング装置は車両の車輪もしくは車軸の回転数を検出する回転検出手段を備え、
前記記憶手段には、前記第1または第2の地上子と収録距離との関係を示すデータが記憶されており、
前記制御手段は、
前記回転検出手段により検出された回転数に基づいて当該車両の移動距離を算出する機能を備え、
前記第1の地上子または前記第2の地上子の検知によって前記検査手段による本線または側線のデータの取得を開始させ、検知した前記第1の地上子または前記第2の地上子に対応した収録距離を前記記憶手段より読み出して、読み出した収録距離だけ車両が移動した時点で前記検査手段によるデータの取得を終了させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の軌道材料モニタリングシステム。
【請求項6】
本線と並行して複数の側線が設けられている駅構内においては、前記第3の地上子が側線ごとに少なくともひとつ設置されており、
前記制御手段は、前記第2の地上子および前記第3の地上子の検知順序に基づいて車両が走行したルートを判定し、予め設定されたルートに合致している場合にルートごとに、前記検査手段が取得したデータを前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の軌道材料モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部に搭載されレール上を走行しながらレールや枕木、レール締結装置、軌道パッドなどの軌道材料を検査する軌道材料モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道においては、レールや枕木、レール締結装置、軌道パッドなどの軌道材料を定期的に検査することが実施されている。従来、このような軌道材料の検査は、レーザ式の変位センサや測距計を用いた変位量の測定、撮像装置を用いて画像を取得して目視あるいは画像処理によって距離を算出して異常を検出することが行われていた。また、レールの検査に特化した検測車も実用化されている。
なお、撮像装置を用いて撮影した画像による異常検出に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
一方、本出願人は、営業車両の車体下部に撮像装置を搭載してレール走行中にレール近傍の画像を連続して取得し、取得した画像に基づいて異常を検出する軌道材料モニタリングシステムを開発し実用化した。また、この軌道材料モニタリングシステムを営業路線に具体的に適用する際に、詳細に検討したところ、駅によっては列車が折返し運転をしたり、ダイヤ乱れの発生など異常時には通常とは異なる番線に進入したりすることがあるため、連続して撮像装置を動作させて画像を取得すると、レールのどの箇所を撮影した画像であるか分からなくなる。
【0004】
そこで、駅構内の進出点にデータデポ(登録商標)と呼ばれる無電源式の位置標定地上子を設置して、車上装置がこの位置標定地上子を検出した時点で画像の取得を開始し、走行距離から次駅の直前で画像の取得を終了することを繰り返して全線にわたる軌道材料の画像を取得することとした。つまり、駅構内の軌道の画像は取得しないこととした。
なお、従来、上記位置標定地上子は、識別番号やキロ程等の情報が記憶され、レール近傍の枕木上などに配設される。レール上を走行する車両には、この地上子が記憶している情報を非接触で読み取る受電器が搭載され、走行中に地上子から位置情報を読み取って車両の位置や所定地点までの距離等の情報を把握するのに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-214933号公報
【特許文献2】特開2016-133857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人が実用化した軌道材料モニタリングシステムは、駅構内の進出点から次駅直前までの画像の取得する構成であったため、駅構内の本線および番線の軌道材料の画像が得られないという課題があった。
そこで、駅構内の本線および番線の軌道材料の画像を取得できる軌道材料モニタリングシステムを開発するため検討を行なった。その結果、駅構内の各番線の入り口や出口に位置標定地上子をそれぞれ設置することで、折返し運転等があったとしても誤認を招くことなく軌道材料の画像を取得できることが分かった。
【0007】
しかし、各番線のすべての入り口と出口に位置標定地上子を設置すると、地上子の数が多くなりコストアップを招くという課題がある。また、撮像装置は動作させたいときに直ちに撮像を開始できるわけではなく、一定のスタンバイ時間が必要であるため、単に位置標定地上子の検出で撮像を開始したり終了したりすると、画像が取得できない箇所が生じてしまうという課題があることが明らかになった。
【0008】
なお、撮像装置を備えた保守用車において、地上子と走行距離(キロ程)を用いて自身の位置を高精度に認識する機能を設けるようにした発明が特許文献2に記載されているが、この文献には駅構内の番線の軌道材料の画像を取得することについての開示がない。
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、大幅なコストアップを招くことなく、駅構内の各番線を含めたほぼすべての範囲の軌道材料の画像を取得できるとともに、画像が取得できない箇所が生じてしまうのを回避することができる軌道材料モニタリングシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
車両に搭載されレールの近傍を検査する検査手段と、前記検査手段が取得したデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されているデータを転送するデータ転送手段と、制御手段とを有する軌道材料モニタリング装置および前記車両が走行する軌道に沿って設置され少なくとも自己の識別コードを記憶した複数の地上子を備えた軌道材料モニタリングシステムであって、
前記複数の地上子には、本線の駅構内の出口に設置された第1の地上子と、本線の駅構内の入口に設置された第2の地上子と、駅構内の本線以外の側線に設置された第3の地上子と、があり、
前記制御手段は、
前記第1の地上子を検知すると前記検査手段による本線のデータの取得を開始させ、
前記第2の地上子を検知すると前記検査手段による駅構内本線または側線のデータの取得を開始させ、
前記第2の地上子および前記第3の地上子を順に検知すると前記検査手段により取得したデータを第1の条件の成立に伴い側線のデータとして前記記憶手段に記憶させ、
前記第2の地上子を検知した後所定距離移動するまでに前記第3の地上子を検知しなかった場合には、前記検査手段により取得したデータを、第2の条件の成立に伴い駅構内本線のデータとして前記記憶手段に記憶させるように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する軌道材料モニタリングシステムによれば、本線の駅構内出口点に設置された第1の地上子と、本線の駅構内入口点に設置された第2の地上子と、駅構内の本線以外の側線に設置された第3の地上子を備えているため、大幅なコストアップを招くことなく、駅構内の側線(各番線)を含めたほぼすべての範囲の軌道材料の画像を取得できるとともに、画像が取得できない箇所が生じてしまうのを回避することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、
前記検査手段によるデータの取得時間帯が予め設定され、前記取得時間帯が第1時間帯と第2時間帯とに分割されており、
前記第1の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の前記第1時間帯であり、前記第2の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の前記第2時間帯であるようにする。
かかる構成によれば、データの取得時間帯を例えば夜間に設定した場合には、本線の軌道材料の検査データ(画像)と駅構内の軌道材料の検査データ(画像)を、照明装置による撮像条件の安定した夜間に取得して記憶することができるため、収録したデータに基づいて軌道材料の状態を正確に判定することができる。
【0012】
さらに、前記検査手段は撮像手段であり、
前記第1の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の昼の時間帯であり、前記第2の条件は前記データ転送手段による取得データの転送時以外の夜の時間帯であるようにする。
かかる構成によれば、重要な本線の軌道材料の検査データ(画像)は照明装置による撮像条件の安定した夜間に取得したものを記憶するため、収録したデータに基づいて軌道材料の状態を正確に判定することができるとともに、駅構内の側線(各番線)は夜間に比べて走行頻度の多い昼の時間帯に軌道材料の検査データ(画像)の取得を行うため、検査データ(画像)が得られない範囲が生じるのを回避することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記制御手段は、前記第1の条件が成立した場合であっても、関連する範囲の本線のデータが取得されていない場合には、前記検査手段によるデータの取得を開始させないようにする。
かかる構成によれば、撮像装置がスタンバイ時間を有している場合に、側線(各番線)の軌道材料の検査データ(画像)の取得を開始することによって重要な本線の軌道材料の検査データ(画像)が取得されなくなる事態が発生するのを回避ことができる。
【0014】
また、望ましくは、前記軌道材料モニタリング装置は車両の車輪もしくは車軸の回転数を検出する回転検出手段を備え、
前記記憶手段には、前記第1または第2の地上子と収録距離との関係を示すデータが記憶されており、
前記制御手段は、
前記回転検出手段により検出された回転数に基づいて当該車両の移動距離を算出する機能を備え、
前記第1の地上子または前記第2の地上子の検知によって前記検査手段による本線または側線のデータの取得を開始させ、検知した前記第1の地上子または前記第2の地上子に対応した収録距離を前記記憶手段より読み出して、読み出した収録距離だけ車両が移動した時点で前記検査手段によるデータの取得を終了させるようにする。
【0015】
上記のような構成によれば、地上子の検知によって開始した検査データ(画像)の取得を、車両が予め設定された収録距離を移動したことによって終了させるため、終了指示用の地上子を別途設ける場合に比べて、設置する地上子の数を減らし、大幅なコストアップを招くのを回避することができる。
【0016】
また、望ましくは、本線と並行して複数の側線が設けられている駅構内においては、前記第3の地上子が側線ごとに少なくともひとつ設置されており、
前記制御手段は、前記第2の地上子および前記第3の地上子の検知順序に基づいて車両が走行したルートを判定し、予め設定されたルートに合致している場合にルートごとに、前記検査手段が取得したデータを前記記憶手段に記憶するようにする。
かかる構成によれば、地上子の検知順序に基づいて車両が走行したルートを判定し、予め設定されたルートに合致している場合にルートごとに、取得したデータを記憶手段に記憶するため、車両が折返し運転をしたような場合に、記憶したデータの取得箇所が分からなくなるのを回避することができ、収録したデータに基づいて軌道材料の状態を正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る軌道材料モニタリングシステムによれば、大幅なコストアップを招くことなく、駅構内の各番線を含めたほぼすべての範囲の軌道材料の画像を取得できるとともに、画像が取得できない箇所が生じてしまうのを回避することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る軌道材料モニタリングシステムを構成する軌道材料モニタリング装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおける位置標定地上子に関する情報を格納した参照テーブルの例を示す図である。
【
図3】実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおける位置標定地上子の設置例を示すレイアウト図である。
【
図4】実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおける本線開始地上子を検知した際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおける構内開始地上子を検知した際の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る軌道材料モニタリングシステムの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、本実施形態のシステムを構成する軌道材料モニタリング装置の構成例が機能ブロック図として示されている。
【0020】
本実施形態の軌道材料モニタリング装置10は、車両に搭載される装置であり、車両下部に設置されレール近傍の画像を撮影する撮像装置11と、測定対象物の形状を測定するレーザ式変位センサ12、枕木上に設置されている位置標定地上子から非接触方式で情報を読み取る受電器13、位置標定地上子の情報(機器識別コード)と当該地上子の設置位置の情報(キロ程)を予め記憶するとともに撮像装置11により撮影された画像データを記憶する記憶装置14、車両速度を検出するための速度発電機15、受電器13や速度発電機15からの入力に基づいて情報処理を行う制御装置16、記憶装置14に記憶した画像データを保存する大容量の記憶装置であるNAS(ネットワークアタッチトストレージ)17と、地上側の装置と無線通信を行う無線通信装置18などから構成されている。また、図示しないが、撮像装置11が夜間に軌道材料の画像を撮影する場合に点灯される照明装置を備えている。NAS17は、ハードディスクなどで構成されており、データがある程度蓄積されるとシステムから取り外して記憶装置を読み出しデータ解析処理に回される。なお、NAS17を地上側に設けて、無線通信装置18によって、記憶装置14に記憶されている画像データを無線通信で送信して保存するように構成しても良い。
【0021】
記憶装置14には、位置標定地上子の情報(機器識別コード)と種別の情報、当該地上子が設置されている位置の情報(キロ程)、収録距離(撮影、計測をする区間の長さ)および設置駅における番線情報が、
図2に示すように、テーブル形式で予め記憶されている。制御装置16は、速度発電器15からの入力に基づいて走行距離を算出し出発位置と走行距離とから自車両の位置(キロ程)を算出するとともに、受電器13により位置標定地上子から読み取った位置標定地上子の機器識別コードに基づいて記憶装置14内のテーブル(
図2)を参照して、位置標定地上子の位置を把握するとともに、地上子の種別情報に基づいて撮像装置11の撮影開始や終了、撮影画像の記憶などを指示する制御信号を生成し出力する機能を備える。なお、
図2に示すテーブルは一例であって、制御や演算処理において必要な情報が記憶されていればその様式は問わない。
【0022】
枕木上に設置される位置標定地上子は、データを記憶するメモリと、データ送受信用のアンテナ(コイル)、送信回路(コイル駆動回路)、AC-DCコンバータのような電源回路などを内蔵し無電源方式で記憶している情報を送信するRFID(Radio Frequency Identification)タグの1種である。鉄道の分野ではデータデポ(登録商標)と呼ばれるRFIDデバイスが知られており、本実施形態のシステムにおいてもそのようなデバイスを位置標定地上子として使用することができる。
【0023】
本実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおいては、撮影開始指示用の位置標定地上子を検知したら画像撮影を開始して、ブロックと称する領域ごとに予め設定された距離(積算キロ程)に到達したら撮影を終了するような仕組みとなっているとともに、「駅構内モード」を備え、「駅構内モード」では駅構内の軌道材料を撮影するタイミングとして、時間を監視している。なお、変位センサ12による形状計測は、撮像装置11による撮影と同一タイミングで実行しても良いし、異なるタイミングで実行しても良い。以下の説明では、本発明の特徴である撮像装置11による撮影タイミングについてのみ説明し、変位センサ12による形状計測のタイミングについては説明を省略する。
【0024】
また、本実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおいては、位置標定地上子として、本線開始指示用の地上子と、本線終了指示用の地上子と、番線識別用の地上子と、構内開始指示用の地上子と、構内番線用の地上子の5種類が用意されている。5種類の地上子は、内部のメモリに種別コードが記憶されることで識別可能とされる。なお、車載の軌道材料モニタリング装置を構成する記憶装置14内に、地上子の識別コードごとにいずれかの種別コードを記載した参照テーブルを格納しておいて、地上子のメモリには識別コードのみ記憶しておくようにしても良い。
【0025】
図3には、本実施形態の軌道材料モニタリングシステムを適用した路線図および位置標定地上子の配置の一例が示されている。
図3においては、実線が本線レールを表わし、破線が各駅の番線レール(側線)を表わしている。また、○印が本線開始指示用の地上子を、●印が本線終了指示用の地上子、△印が番線認識用の地上子、□印が構内開始指示用の地上子、■印が構内番線用の地上子を表わしている。
また、
図3において、ST1,ST2,ST3はそれぞれ駅であり、このうちST1は例えば快速列車の通過時に待機する番線のある駅、ST2は待機番線および留置線のある主要駅、ST3は上下共通番線を有し折り返し運転が可能な駅である。なお、以下の説明では、ST2よりも左側の駅ST1を含む領域をエリアA、ST2よりも右側の駅ST3を含む領域をエリアB、駅ST2をエリア境界駅と称する。
【0026】
なお、本線終了指示用の地上子●は、何かしらの要因で本線の軌道の撮影を継続したまま番線に車両が進入した場合に、本線の画像として収録されてしまうのを回避するために設置されるもので、構内開始指示用の地上子□を検知した後に本線終了指示用の地上子●を検知すると車両が番線(♯)に進入したと判断し、収録を中止して記憶した画像を破棄する。
一方、構内開始指示用の地上子□を検知した後に本線終了指示用の地上子●を検知せずに構内番線用の地上子■を検知した場合にはそれまでに撮影した画像を本線の軌道の撮影画像とし、収録距離に達するまで撮影を継続して、取得した画像を記憶する。なお、番線識別用の地上子△と構内番線用の地上子■は同じ種別の地上子として設置することも可能である。
【0027】
また、構内開始指示用の地上子□を検知した後に番線識別用の地上子△を検知した場合は、撮影した画像を番線の軌道の撮影画像として記憶する。このとき、番線認識用の地上子△から受信した識別コードに基づいて、当該駅に番線が複数ある場合にも通過した番線(ルート)を判別して軌道の撮影画像を記憶する。
なお、駅構内の出口に本線開始指示用の地上子○が設置されている駅(
図3のエリア境界駅ST2)においては、本線も番線として扱われる。
【0028】
次に、本実施形態の軌道材料モニタリングシステムにおける軌道材料の撮影手順の特徴を、
図3に示されている区間(エリアA~B)を通過する際を例にとって説明する。
車両が
図3のエリアAに進入しようとした際、NAS17から画像データを取り出してNAS17が空になった後にエリアAに進入するのが最初である場合は、本線開始指示用の地上子○の検知をトリガーに本線軌道材料画像の収録(撮影と記憶)を開始する。
【0029】
一方、車両がエリアAに進入しようとした際、進入が2回目で昼時間帯の場合は本線画像の収録を中止する。本線画像の収録が終了になり、収録した画像データの転送時間帯でなければ、構内開始指示用の地上子□を検知したら「駅構内モード」に移行して駅構内の軌道材料画像の収録を開始する。つまり、昼時間帯においては、駅構内の軌道材料画像の収録を優先する。
これにより、本線軌道画像の収録は、その日の最初の走行が昼の時間帯の場合には最初の走行時に取得した画像はとりあえず記憶し、その後夜間に取得された本線軌道画像は毎回収録されることとなる。これは、夜間撮影では照明装置を使用するため、夜間の方が安定した条件で良好な画像を取得できるためである。
【0030】
なお、車両がエリア境界駅ST2を通過した後は、本線開始指示用の地上子○の検知によって再度「本線モード」に切り替わり、本線軌道材料画像の収録を開始する。また、上記「駅構内モード」では、時間帯でモードを切り替える機能と、エリア境界駅内において通過番線(ルート)ごとに軌道材料画像を区別して収録する機能を有している。
また、本実施形態の軌道材料モニタリング装置は、早朝の所定の時間帯に、収録した軌道材料の画像データを記憶装置14からNAS17へ一括で転送する機能を有している。
さらに、夜間撮影で同一箇所を複数回走行して軌道材料の画像を取得した場合には、制御装置16はいわゆるトーナメントロジックによる優劣判断によって鮮明度の高い画像を記憶装置14に上書き保存する。一方、駅構内の同一か所の軌道材料の画像については、トーナメントロジックによらず最新の画像データを記憶装置14に上書き保存する。
【0031】
次に、車両に搭載された軌道材料モニタリング装置の制御装置16によって実行される画像収録手順について、
図4および
図5のフローチャートを用いて説明する。このうち、
図4は本線開始指示用の地上子○を検知した場合の手順、
図5は構内開始指示用の地上子□を検知した場合の手順である。
制御装置16が受電器13により地上子から取得した情報に基づいていて本線開始指示用の地上子○を検知したと判断すると、
図4に示すように、先ず、現在時刻が収録済みの軌道材料の画像データの転送中または転送時間帯(例えばAM7:00~AM9:00)か否か判定する(ステップS1)。
【0032】
ステップS1で、転送中または転送時間帯である(YES)と判定すると、軌道画像の収録を開始せずに終了する。また、ステップS1で、転送中でも転送時間帯でもない(NO)と判定すると、ステップS2へ進み、本線の当該ブロックについて軌道画像の収録が済んでいるか否か判定する。そして、軌道画像の収録が済んでいる(YES)と判定すると、軌道画像の収録を開始せずに終了する。
【0033】
さらに、上記ステップS2で、本線の当該ブロックについて軌道画像の収録が済んでいない(NO)と判定すると、ステップS3へ進み、夜時間帯(例えば19時以降)であるか否か判定する。そして、ステップS3で、夜時間帯でない(NO)と判定すると、軌道画像の収録を開始せずに終了する。また、ステップS3で、夜時間帯である(YES)と判定すると、本線の軌道画像の収録を開始する。
【0034】
軌道画像の収録を開始すると、先ず撮像装置11が撮影した画像の取り込みを開始するとともに、検知した地上子の識別コード(地上子ID)を用いて参照テーブルより収録距離情報を読み込む(ステップS4)。続いて、速度発電機15からの信号に基づいて車両の走行距離を算出し(ステップS5)、走行距離が収録距離に達したか否か判定する(ステップS6)。ここで、走行距離が収録距離に達していない(NO)と判定すると、ステップS5へ戻る。また、ステップS6で、走行距離が収録距離に達した(YES)と判定すると、ステップS7へ進み、取得した画像に対してトーナメントロジック処理を実行する。
【0035】
そして、今回取得した画像と既に記憶されている同一ブロックの画像との優劣、すなわちどちらの画像が鮮明であるかを判定する(ステップS8)。
上記ステップS8で今回取得した画像の方が既に記憶されている同一ブロックの画像よりも鮮明である(優)と判定するとステップS9へ進んで、今回取得した画像を当該ブロックのデータ格納領域に上書きして収録を終了する。また、上記ステップS8で今回取得した画像の方が既に記憶されている同一ブロックの画像よりも鮮明でない(劣)と判定すると、ステップS10へ進んで今回取得した画像を廃棄して収録を終了する。
【0036】
制御装置16が受電器13により地上子から取得した情報に基づいて、構内開始指示用の地上子□を検知したと判断すると、
図5に示すように、先ず、現在時刻が収録済みの軌道材料の画像データの転送中または転送時間帯か否か判定する(ステップS11)。
ステップS11で、転送中または転送時間帯である(YES)と判定すると、軌道画像の収録を開始せずに終了する。また、ステップS11で、転送中でも転送時間帯でもない(NO)と判定すると、ステップS12へ進み、昼時間帯であるか否か判定する。そして、昼時間帯でない(NO)と判定すると、軌道画像の収録を開始せずに終了する。
【0037】
また、ステップS12で、昼時間帯である(YES)と判定すると、ステップS13へ進み、関連する本線ブロックについて軌道画像の収録が済んでいるか否か判定する。そして、ステップS13で、関連ブロックの軌道画像の収録が済んでいない(NO)と判定すると、駅構内の軌道画像の収録を開始せずに終了する。また、ステップS13で、本線の関連ブロックについて軌道画像の収録が済んでいる(YES)と判定すると、駅構内の軌道画像の収録を開始する。
ここで、ステップS13における「関連する本線ブロック」とは、例えば
図3において、エリア境界駅ST2において、矢印Dの方向へ走行する車両が駅構内入り口の構内開始指示用の地上子□を検知して画像の収録を開始しようとする範囲BL1をプロック1とすると、BL2,BL3で示されている範囲が関連するブロック2,3に相当する。
【0038】
ステップS13で、関連ブロックについて軌道画像の収録が済んでいる(YES)と判定すると、駅構内の軌道画像の収録を開始し、関連ブロックの軌道画像の収録が済んでいない(NO)と判定すると、駅構内の軌道画像の収録を開始しないようにすることによって、当該駅を通過して駅構内の出口の本線開始指示用の地上子○を検知した際に、本線の関連ブロックの軌道画像の収録を開始することができる。
本実施形態で使用している撮像装置11は前述したようにスタンバイ時間を有しているため、仮にステップS13を設けないで駅構内の画像の収録を開始してしまうと、駅構内の出口で収録を終了して本線の軌道画像の収録を開始しようとしても間に合わなくなってしまうが、ステップS13を設けていることで、本線の軌道画像の収録ができなくなる事態が発生するのを回避することができる。
【0039】
また、ステップS13の後、軌道画像の収録を開始すると、先ず撮像装置11が撮影した画像の取り込みを開始するとともに、検知した地上子の識別コード(地上子ID)を用いて参照テーブルより収録距離を読み込む(ステップS14)。続いて、速度発電機15からの信号に基づいて車両の走行距離を算出し(ステップS15)、走行距離が予め設定されている規定距離を超えたか否か判定する(ステップS16)。
ここで、走行距離が規定距離を超えていない(NO)と判定すると、ステップS17へ進み、新たな番線認識用地上子△を検知したか否か判定する。そして、検知していない(NO)と判定すると、ステップS15へ戻る。また、ステップS17で、新たな番線認識用地上子△を検知した(YES)と判定すると、ステップS18へ進み、番線認識用地上子のID(識別コード)を記録してステップS19へ進む。
【0040】
ステップS19では、記憶装置14内の駅構内レイアウト情報を参照して、番線認識用地上子の記録と一致する構内ルートが存在するか否か判定する。そして、記録と一致する構内ルートが存在しない(NO)と判定すると、ステップS15へ戻る。また、ステップS19で、記録と一致する構内ルートが存在する(YES)と判定すると、ステップS20へ進んで撮影した軌道画像データを記憶装置14に保存する。
一方、ステップS16で、規定距離を超えた(YES)と判定すると、ステップS21へ進んで、今回撮影した軌道画像データを廃棄する。折返し運転が行われることがある駅で、車両の走行方向が反転すると、同一レール上を往復してしまうため撮影した軌道画像の位置が不明になってしまうが、上記した手順によればそのような軌道画像データが破棄されるため、収録した画像に基づいて誤判定が行われるのを回避することができる。
【0041】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、5種類の地上子を備えた軌道材料モニタリングシステムについて説明したが、少なくとも本線開始指示用の地上子と構内開始指示用の地上子と番線認識用または構内番線用の地上子を備えていれば良く、他の地上子を省略したシステムも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、軌道材料の検査装置として撮像装置11の他にレーザ式変位センサ12を搭載しているが、レーザ式変位センサ12は搭載しなくても良いし、撮像装置11で撮影した画像データの他にレーザ式変位センサ12で計測したデータも記憶装置14へ一旦記憶してからNAS17へ転送するように構成しても良い。
さらに、上記実施形態では、夜間の方が安定した条件で良好な画像を取得できるため、より重要である本線の軌道材料を撮影、計測する本線モードを夜間に設定し、重要性が低い駅構内の軌道材料を撮影、計測する駅構内モードを昼間に設定しているが、例えば路線距離が短く本線の軌道材料を撮影、計測するのに要する時間が少なくて済む路線においては、夜間の走行時間帯を所定の割合で第1時間帯と第2時間帯に2分割して、本線モードと駅構内モードを第1時間帯と第2時間帯にそれぞれ割り当て、共に夜間に軌道材料の撮影や計測を行うように設定することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 軌道材料モニタリング装置
11 撮像装置
12 レーザ式変位センサ
13 受電器
14 記憶装置
15 速度発電機(回転検出手段)
16 制御装置
17 NAS(記憶装置)
18 無線通信装置