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特開2023-23299燃料電池用ガスケット及び燃料電池用ガスケットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023299
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】燃料電池用ガスケット及び燃料電池用ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0276 20160101AFI20230209BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20230209BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20230209BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230209BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0284
F16J15/14 C
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128686
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】吉本 規寿
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰弘
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126BB06
5H126DD02
5H126EE03
5H126FF07
5H126GG17
5H126GG19
(57)【要約】
【課題】本開示は、ガスケット材の表面でのボイドの形成を抑制する燃料電池用ガスケットを提供する。
【解決手段】本開示における燃料電池用ガスケットは、ゴム接着剤の第一層と、その外層にUV硬化剤を含んだ第二層とを有する二層接着剤であり、第二層で閉空間を形成し、第一層を加圧して粘度低下させ、発生した気泡を移動しやすくし、内圧で薄肉部が開裂することで気泡を排出し、ガスケット材の表面にボイドの形成し、燃料電池用ガスケットの接着性の低下を抑制することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系接着剤である第一層と、前記第一層の外周を覆うようにUV硬化剤を含んだゴム系接着剤である第二層を有し、
前記第二層は、一部に前記第二層の外周の他の部位よりも厚みが薄い薄肉部または前記第一層を覆っていない開口部を有する、
燃料電池用ガスケット。
【請求項2】
前記第一層が、フッ素系ゴム接着剤であることを特徴とする、
請求項1に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項3】
前記第二層が、シリコーン系ゴム接着剤であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項4】
電解質膜と前記電解質膜を挟んで一方の面に配置されるアノードと他方の面に配置されるカソードとで構成される電解質膜-電極接合体と、
前記電解質膜-電極接合体の前記アノードと前記カソードの両外側に配置される一対のセパレータと、
前記電解質膜-電極接合体と、前記セパレータとの間に介在し、前記薄肉部が前記セパレータに面している請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池用ガスケットと、
を備える燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池用ガスケットと燃料電池用ガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料電池に用いる接着剤層中の気泡を低減しつつ、気泡除去の程度のばらつきを低減する燃料電池を開示する。この燃料電池は、電解質膜と電極触媒層と、ガス拡散層とを含む電解質膜-電極接合体と、その周縁部上に形成された接着剤層と、それを囲む樹脂フレームと、この電解質膜-電極接合体の周縁部に突出する突出部を有したセパレータと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-73523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、表面でのボイドの形成を抑制する燃料電池用ガスケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に記載の燃料電池用ガスケットは、ゴム系接着剤である第一層と、第一層の外周を覆うようにUV硬化剤を含んだ第二層を備え、第二層は、一部に第二層の外周の他の部位よりも厚みが薄い薄肉部または第二層が第一層を覆っていない開口部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における燃料電池用ガスケットは、第二層で閉空間を形成し、第一層を加圧して粘度を低下させ、発生した気泡を移動しやすくすることができる。そのため、内圧で薄肉部が開裂することで、発生した気泡を排出し、ゴム接着剤内のボイドの形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における燃料電池用ガスケットの断面図
図2】実施の形態1における燃料電池用ガスケットを用いた燃料電池の断面図
図3】実施の形態1における開口部を有する燃料電池用ガスケットの断面図
図4】実施の形態1における開口部を有する燃料電池用ガスケットを用いた燃料電池の断面図
図5】実施の形態1における燃料電池用ガスケットの塗布および硬化工程を示した概略図
図6A】実施の形態1における燃料電池用ガスケットを用いた燃料電池のセパレータへの塗布を示した断面図
図6B】実施の形態1における燃料電池用ガスケットを用いた燃料電池のセパレータと電解質膜-電極接合体とを当接した状態を示した断面図
図6C】実施の形態1における燃料電池用ガスケットを用いた燃料電池のセパレータと電解質膜-電極接合体と当接し、第一層からのガス抜きする状態を示した断面図
図7】他の実施の形態における開口部を有する燃料電池用ガスケットを示した燃料電池の断面図
図8】他の実施の形態における燃料電池用ガスケットを塗布されるセパレータの断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料電池用ガスケットとしてゴム接着剤をセパレータへ塗布する技術はあったが、ガス抜き孔のある閉空間に充填し、硬化架橋を行うため、加熱加圧条件下で可塑化し、粘度が低下していた。この時、架橋反応ガスや溶剤の揮発ガスが気泡となり、発生した気泡は、圧力の低いガス抜き孔へ素早く移動して外部に排出されていた。
【0009】
一方、加圧が十分ではない場合、反応ガスや揮発ガスは、ゴム接着剤層内に留まり、ボイドが形成された結果、ガスシール性が低下していた。
【0010】
これを防ぐため、従来は、閉空間内にゴム接着剤を充填して密閉し加圧させるか、薄く均一に塗布することで発生した気泡を排出していた。
【0011】
しかしながら、燃料電池のアノードセパレータと、カソードセパレータとの間に挟まれた電解質膜-電極接合体との空間にゴム接着剤を充填して閉空間を構成するのは技術的に難しく、またゴム系接着剤は肉厚で寸法バラツキもある。このことから、燃料電池用ガスケット内にボイドを発生させずにゴム接着剤を適用することが難しいという課題があった。
【0012】
こうした状況において、発明者らは、ガス発生のメカニズムの探索と二層接着剤からなる燃料電池用ガスケットの構造設計とを行った。
【0013】
そして、ゴム接着剤の外層にUV硬化接着剤を塗布し同時に硬化することで、ゴム接着剤を封じ込めれば閉空間を構成できることの知見を得た。さらにUV硬化接着剤と電解質膜-電極接合体との当接面およびセパレータとの当接面の一部において他の部位よりも厚みが薄い薄肉部を設けることで、ゴム接着剤で発生した気泡を外部へ放出しやすくできるという着想を得た。
【0014】
そこで、本開示は、ゴム接着剤の第一層と、その外層にUV硬化剤を含んだ第二層と、から構成される燃料電池用ガスケットを提供する。この燃料電池用ガスケットは、電解質膜-電極接合体との当接面およびセパレータとの当接面の一部において第二層が他の部位よりも厚みが薄い薄肉部を有する二層接着剤としている。これにより第二層で閉空間を形成し、第一層を加圧して粘度低下させることで、第一層で発生した気泡が移動しやすくなり、内圧で第二層の薄肉部が開裂することで、第一層から発生した気泡が排出され、ボイドの形成が抑制できる。
【0015】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0016】
なお、添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0018】
[1-1.構成]
図1において、燃料電池用ガスケット110は、ゴム系接着剤層111と、ゴム系接着剤層111の外周を覆うように構成されたUV硬化接着剤層112と、UV硬化接着剤層112の一部に薄肉部113とを、備える。
【0019】
ゴム系接着剤層111は、耐久性に優れたフッ素系接着剤を用いる。
【0020】
UV硬化接着剤層112は、パーフルオロポリエーテル系のUV硬化接着剤を用いる。
【0021】
図2において、燃料電池100は、電解質膜-電極接合体104と、セパレータ106と、燃料電池用ガスケット110と、を備える。
【0022】
電解質膜-電極接合体104は、電解質膜101と、電解質膜101を挟んで一方の面に配置されるアノード触媒層102と、他方の面に配置されるカソード触媒層103と、アノード触媒層102とカソード触媒層103の外側に配置されるガス拡散層105とから構成される。
【0023】
電解質膜101は、アノード触媒層102で生成する水素イオンをカソード触媒層103に輸送する機能を果たし、水素イオン伝導性を有する高分子材料で構成され、具体的には、水素イオン交換基としてスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸系の高分子材料で構成されている。
【0024】
アノード触媒層102は、アノード側のセパレータ106のガス流路107からアノード触媒層102に供給される水素含有ガスに含まれる水素を水素イオンに解離する電気化学反応を促進する機能を果たし、白金(Pt)を担持したカーボン粒子と高分子電解質樹脂とを含んでいる。
【0025】
カソード触媒層103は、アノード触媒層102から電解質膜101を通ってカソード触媒層103に移動する水素イオンと、カソード側のセパレータ106のガス流路107からカソード触媒層103に供給される空気に含まれる酸素から水を生成する電気化学反応を促進する機能を果たし、白金(Pt)を担持したカーボン粒子と高分子電解質樹脂とを含んでいる。
【0026】
ガス拡散層105は、アノード触媒層102またはカソード触媒層103へのガスの供給と、アノード触媒層102またはカソード触媒層103との間で電子の授受を行う機能を果たし、ガス透過性と電子伝導性を併せ持つ導電性カーボンペーパーを主な構成部材として構成されている。
【0027】
セパレータ106は、ガス透過性のない導電性部材である圧縮カーボンによって構成されている。セパレータ106のガス拡散層105側の表面には、水素含有ガスまたは空気をガス拡散層105に供給するガス流路107が形成されている。
【0028】
燃料電池用ガスケット110は、水素含有ガスの外部への漏出を遮断又は抑制するため、セパレータ106と電解質膜-電極接合体104との間に配置され、第一層であるゴム系接着剤層111と閉鎖空間になるよう構成されるゴム系接着剤であるUV硬化接着剤層112とから構成される。
【0029】
UV硬化接着剤層112は、紫外線照射により硬化するゴム系接着剤であり、電解質膜-電極接合体104との当接面(図示せず)およびセパレータとの当接面(図示せず)において、UV硬化接着剤層112の一部に薄肉部113を備える。
【0030】
[1-2.製造方法]
本実施の形態1における、製造方法について、図5図6A図6B図6Cを用いて説明する。
【0031】
まず、図5に示す、二層接着剤塗布装置121は、第一層のゴム系接着剤層111を覆うように第二層のUV硬化接着剤層112が構成された燃料電池用ガスケット110を、セパレータ106の上に0.5g/Cm2以上になるように線状に塗布する。二層接着剤塗布装置121の例としてディスペンサーなどがある。
【0032】
そして、UV照射装置122から、外部より透過して照射できる透光容器120に紫外線を照射する。透光容器120を透過する紫外線は燃料電池用ガスケット110のUV硬化接着剤層112に照射される。これによってUV硬化接着剤層112の硬化反応が開始される。
【0033】
透光容器120の先端は、先端の形状が、薄肉部113になるよう押し込み部(図示せず)を備えており、UV照射時に、この押し込み部によって第二層の上面および下面に凹みが形成される。具体的には、透光容器120の先端の口径に対して、三角形の一つの頂点が互いに向き合うように口径の内径側に突き出した絞り口とすることで、塗布時にUV硬化接着剤が絞り口を通るときに、凹み形状に加工され、この凹みがUV硬化接着剤層112の薄肉部113となる。
【0034】
図6Aは上記のように形成された燃料電池用ガスケット110とセパレータ106を断面図で示したものである。
【0035】
次に、図6Bに示すように、セパレータ106上に電解質膜-電極接合体104を配置するが、このとき燃料電池用ガスケット110はセパレータ106と電解質膜-電極接合体104との外縁部を覆うように配置される。
また、UV硬化接着剤層112の一部に設けた薄肉部113が、電解質膜-電極接合体104およびセパレータ106と当接する。
【0036】
図6Cでは、加熱及び加圧を電解質膜-電極接合体104、セパレータ106及び燃料電池用ガスケット110に行う。
【0037】
このときゴム系接着剤層111の架橋反応によって第一層のゴム系接着剤層111の内圧が上昇すると共に粘性が低下し、ゴム系接着剤層111内で気泡108が生じる。
【0038】
また、ゴム系接着剤層111を覆うように構成されたUV硬化接着剤層112の薄肉部113が、圧力でUV硬化接着剤層112が変形することにより開裂する。
【0039】
これにより、ゴム系接着剤層111内で生じた気泡108は、開裂した薄肉部113を通って燃料電池用ガスケット110外へ排出され、更に電解質膜-電極接合体104とセパレータ106との当接の隙間109を経て、外部に放出される。
【0040】
また加熱と加圧によってゴム系接着剤層111内で架橋反応が進行し、燃料電池用ガスケット110が硬化した後は、ゴム系接着剤層111が弾性体となるため、隙間109は締結圧力によって閉ざされ、反力を発生することによって、接着剤と同時にゴムシール材としての機能を発現する。
【0041】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、燃料電池100は、電解質膜-電極接合体104と、セパレータ106と、燃料電池用ガスケット110と、を備える。
【0042】
電解質膜-電極接合体104は、電解質膜101と、電解質膜101を挟んで一方の面に配置されるアノード触媒層102と、他方の面に配置されるカソード触媒層103と、アノード触媒層102とカソード触媒層103の外側に配置されるガス拡散層105と、を備える。
【0043】
燃料電池用ガスケット110は、ゴム系接着剤層111と、ゴム系接着剤層111を覆うように構成されるUV硬化接着剤層112と、UV硬化接着剤層112の一部に設けられる薄肉部113とから構成される。
【0044】
これにより、UV硬化接着剤層112の一部に設けた薄肉部113が、加熱及び加圧を行った際に開裂し、ゴム系接着剤層111の架橋反応によって生じたガスを、気泡108として移動させ、薄肉部113を通じて外部へ放出することができる。
【0045】
そのため、ゴム系接着剤層111の内部でのボイドの形成を抑制することができ、燃料電池用ガスケット110の表面にボイドが残って燃料電池用ガスケット110の接着力が低下することを抑制することができる。
【0046】
本実施では、燃料電池用ガスケット110は、UV硬化接着剤層112の薄肉部113を備えていたが、薄肉部113に予め開口部(図示せず)を備えるようにしてもよい。これにより、ゴム系接着剤層111で生じた気泡108は、薄肉部113の開口部を通じて排出される。
【0047】
そのため、気泡108の排出経路を電解質膜-電極接合体104との当接面(図示せず)およびセパレータとの当接面(図示せず)から確実に排出させることができるため、第一層のゴム系接着剤層111の架橋反応で生じたガスが第二層のUV硬化接着剤層112の開口部以外から漏れ出ることを抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態において、燃料電池用ガスケット110は、第二層のUV硬化接着剤層112が、ゴム系接着剤である。これにより、第一層のゴム系接着剤層111との線膨張係数や伸縮性と合致させることができる。そのため、締結するための荷重を加えたとき、第一層と第二層とがそれぞれ追従して変形するため、第一層のゴム系接着剤が第二層のUV硬化接着剤層112から漏れ出ることを抑制できる。
【0049】
[1-4.変形例]
本実施の形態において、燃料電池用ガスケット110は、第一層のゴム系接着剤層111に、フッ素系ゴム接着剤を用いた。これにより、ゴム系接着剤層111は耐薬品性や圧縮永久歪みなどの耐機械的特性に優れる。そのため、シール性能として優れた長期耐久性を保持することができる。
【0050】
第一層であるゴム系接着剤層111の接着剤は、電解質膜-電極接合体104のアノード触媒層102やカソード触媒層103に対して被毒作用の無いものであれば、特に限定されない。フッ素ゴム系、シリコーンゴム、天然ゴム、EPDM、ブチルゴム等の熱硬化性エラストマー、あるいはイソプレンゴム及びブタジエンゴム等のラテックスを用いた接着剤、液状のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム等を用いた接着剤等を挙げることができ、またこれらの化合物に限定されないが、耐薬品性や耐機械的特性から、フッ素系ゴム材が望ましい。
【0051】
第二層であるUV硬化接着剤層112の接着剤は、シリコーンゴムであることが好ましい。これにより、シリコーンゴムの主成分のシリコーンポリマー材の表面は疎水性のメチル基で覆われていることから撥水性を付与でき、また低極性であることから低吸湿性を付与できるため、燃料電池内部の高温高湿環境でシール機能を保持できる。
【0052】
ただし、第二層であるUV硬化接着剤層112の接着剤は、UV硬化のための光重合開始剤含むものであれば、特に限定されない。紫外線の存在下で反応させ、硬化反応を進行させ、架橋させ、または重合させることができる任意のものであってよい。適した紫外線硬化性の例としては、マレイミド類、アクリレート類、ビニルエーテル類およびスチレン類が少なくとも一部に構成されたものを含む。
【0053】
UV硬化接着剤層112へUV照射する一例を説明したが、光重合開始剤で架橋させる方法であれば、特に制限されない。加圧、加湿などの条件を伴う加熱処理や、光(活性エネルギー線)を照射する照射法があり、それぞれ単独でも組み合わせで用いても良い。ここで活性エネルギー線とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長が100~400nm程度の紫外線、波長が400~800nm程度の可視光線等の広義の光全てを含むものであり、好ましくは紫外線である。
【0054】
また、燃料電池用ガスケット110を塗布する装置として、ディスペンサー装置を用いて説明したが、燃料電池用ガスケット110を塗布する手法であれば、特に限定されない。スクリーン印刷、ディップ印刷、グラビア塗布およびダイ塗工などの塗布方法について、単独やそれら組み合わせて用いてもよいが、ディスペンサー装置が好適に用いられる。ディスペンサー装置は、複雑な基材への塗布を簡便に行うことができる。
【0055】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
(他の実施の形態)
次に、図7及び図8では、薄肉部113、開口部114の構成が実施の形態1と異なる他の実施の形態について説明する。
【0056】
燃料電池用ガスケット110の開口部114は、薄肉部113の一部に設けられ、電解質膜-電極接合体104およびセパレータ106と当接するように配置されることが望ましいが、図7に示すように複数箇所配置されていても良い。複数箇所あれば、外部へのガスの排出がしやすくなり、ボイドの形成が抑制される。
【0057】
また、燃料電池用ガスケット110のセパレータ106への塗布は、図8に示すように燃料電池用ガスケット110がセパレータ106に設けられたシール溝130に設置されるように行ってもよい。シール溝130を有したセパレータ106を用いれば、塗布時の燃料電池用ガスケット110の濡れ広がりを規制できるため、曲率の大きなコーナー部分に塗布する場合であってもシールラインを維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、燃料電池のシール材として適用可能である。具体的には、高圧タンク、燃料電池車および定置型燃料電池等の固体高分子型燃料電池などに本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 燃料電池
101 電解質膜
102 アノード触媒層
103 カソード触媒層
104 電解質膜-電極接合体
105 ガス拡散層
106 セパレータ
107 ガス流路
108 気泡
109 隙間
110 燃料電池用ガスケット
111 ゴム系接着剤層
112 UV硬化接着剤層
113 薄肉部
114 開口部
120 透光容器
121 二層接着剤塗布装置
122 UV照射装置
130 シール溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8