(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023301
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】運動支援システム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20230209BHJP
F24F 11/33 20180101ALI20230209BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20230209BHJP
A63B 22/06 20060101ALI20230209BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A63B69/00 C
F24F11/33
F24F11/52
A63B22/06 H
A63B24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128689
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】須藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】末広 善文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA20
3L260BA25
3L260BA74
3L260CA04
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA15
3L260CB62
3L260EA07
3L260FA04
3L260FA06
3L260FA07
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】利用者の熱中症危険度に基づく機器制御により、利用者が熱中症になる可能性を低減可能な運動支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】運動支援システム1は、エルゴメータ200と、エルゴメータ200に向けて空調された空気を送出する空調装置100と、エルゴメータ200と空調装置100との間に設けられるディスプレイ20と、エルゴメータ200、空調装置100およびディスプレイ20を統括的に制御する制御部30と、を備える。エルゴメータ200は、温度センサ210と、湿度センサ220と、風速センサ230と、を有する。制御部30は、温度センサ210、湿度センサ220および風速センサ230により測定された情報に基づき熱中症危険度を推定する熱中症危険度推定部36を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴメータと、
前記エルゴメータに向けて空調された空気を送出する空調装置と、
前記エルゴメータと前記空調装置との間に設けられるディスプレイと、
前記エルゴメータ、前記空調装置および前記ディスプレイを統括的に制御する制御部と、を備え、
前記エルゴメータは、
温度センサと、
湿度センサと、
風速センサと、を有し、
前記制御部は、
少なくとも、前記温度センサ、前記湿度センサおよび前記風速センサにより測定された情報に基づき熱中症危険度を推定する熱中症危険度推定部を有する、
運動支援システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記熱中症危険度推定部により推定される前記熱中症危険度が所定値よりも大きいと判定した場合、前記熱中症危険度を前記所定値以下となるように、前記エルゴメータ、前記空調装置および前記ディスプレイのうち、少なくとも一つを制御する、
請求項1に記載の運動支援システム。
【請求項3】
前記熱中症危険度推定部は、
暑さ指数を用いて前記熱中症危険度を推定する、
請求項1または2に記載の運動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像装置に映し出される風景や状況に応じた環境内で、運動具を使用することができる運動支援システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、室内に設置された健康増進運動具と、健康増進運動具の設置面の傾斜角度を可変としている架台と、健康増進運動具の少なくとも前方壁面に設置された映像・音声装置と、を備えるとともに、送風手段と温湿度の調整用の空調装置(送風装置)と、室内の照度および色調を可変とした照明手段と、芳香を発する芳香手段と、で構成されて室内の環境を可変としている環境創造装置と、健康増進運動具や映像・音声装置や環境創造装置並びに架台を連動制御する制御装置と、を備えた健康増進用ルームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される健康増進用ルームは、利用者の熱中症危険度に応じた各機器の制御において改善の余地がある、という課題を有していた。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、利用者の熱中症危険度に基づく機器制御により、利用者が熱中症になる可能性を低減可能な運動支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の運動支援システムは、エルゴメータと、エルゴメータに向けて空調された空気を送出する空調装置と、エルゴメータと空調装置との間に設けられるディスプレイと、エルゴメータ、空調装置およびディスプレイを統括的に制御する制御部と、を備える。エルゴメータは、温度センサと、湿度センサと、風速センサと、を有する。制御部は、温度センサ、湿度センサおよび風速センサにより測定された情報に基づき熱中症危険度を推定する熱中症危険度推定部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利用者の熱中症危険度に基づく機器制御により、利用者が熱中症になる可能性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る運動支援システムを示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の運動支援システムを概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、制御部を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、WBGTに対する空調装置の動作制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、WBGTに対するエルゴメータの動作制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面も参照して説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1乃至3を参照して、運動支援システム1の構成について説明する。
【0012】
図1は、運動支援システム1を示す外観斜視図である。
図2は、運動支援システム1を概略的に示す機能ブロック図である。
図3は、制御部30を概略的に示す機能ブロック図である。
【0013】
(運動支援システム1)
運動支援システム1は、ディスプレイ20と、制御部30と、空調装置100と、エルゴメータ200と、運動空間Sと、を備える。運動支援システム1は、ディスプレイ20に表示される映像に応じて空調装置100により空調される空気を、エルゴメータ200に向けて吹き出す。エルゴメータ200を使用する利用者Uは、エルゴメータ200を使用しながらディスプレイ20に表示される映像に応じて空調された空気(気流)を浴びる(体感する)ことができる。
【0014】
運動空間Sは、利用者Uが滞在可能な空間である。ディスプレイ20およびエルゴメータ200は、運動空間Sに設置される。運動空間Sと空調装置100とは、図示しない仕切り部材によって別々に設けられる。
【0015】
(ディスプレイ20)
ディスプレイ20は、数値や機器の動作状態などの情報の表示や、映像(動画、静止画)などを表示する表示装置である。ディスプレイ20は、液晶ディスプレイや有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなど、公知の表示技術が採用可能である。ディスプレイ20は、空調装置100とエルゴメータ200との間に配置される。ディスプレイ20は、後述するノズル151とノズル152との間に配置される。利用者Uは、エルゴメータ200を使用しながら、ディスプレイ20に表示される情報や映像を見ることができる。
【0016】
(空調装置100)
空調装置100は、空調された空気をエルゴメータ200へ向けて吹き出す。空調装置100は、第一空調部110と、第二空調部120と、第一切替部130と、第二切替部140と、ノズル151と、ノズル152と、を有する。
【0017】
第一空調部110は、第一空調部110が有する図示しない空間の空気を所定の温度および湿度に調節する。第一空調部110は、第一空調装置111と、第一調湿装置112と、第一送風機113と、第三送風機114と、を有する。
【0018】
第一空調装置111は、第一空調部110が有する空間の空気を所定の温度に調節する。第一空調装置111は、エアコンディショナーなど公知の空気調和技術を搭載した機器を採用可能である。
【0019】
第一調湿装置112は、第一空調部110が有する空間の空気を所定の湿度に調節する。第一調湿装置112は、加湿方法として、気化式、加熱式、超音波式など、公知の加湿技術を採用可能である。第一調湿装置112は、除湿方法として、コンプレッサー式、デシカント式など、公知の除湿技術を採用可能である。
【0020】
第一送風機113は、第一空調装置111および第一調湿装置112により温度と湿度を調節された空気を第一切替部130へ送出する。第一送風機113は、公知の遠心送風機または軸流送風機を採用可能である。第一送風機113は、図示しないダクトを介して第一切替部130と連通する。
【0021】
第三送風機114は、第一空調装置111および第一調湿装置112により温度と湿度を調節された空気を第二切替部140へ送出する。第三送風機114は、公知の遠心送風機または軸流送風機を採用可能である。第三送風機114は、図示しないダクトを介して第二切替部140と連通する。
【0022】
第二空調部120は、第二空調部120が有する図示しない空間の空気を所定の温度および湿度に調節する。第二空調部120は、第二空調装置121と、第二調湿装置122と、第二送風機123と、第四送風機124と、を有する。
【0023】
第二空調装置121は、第二空調部120が有する空間の空気を所定の温度に調節する。第二空調装置121は、エアコンディショナーなど公知の空気調和技術を搭載した機器を採用可能である。
【0024】
第二調湿装置122は、第二空調部120が有する空間の空気を所定の湿度に調節する。第二調湿装置122は、加湿方法として、気化式、加熱式、超音波式など、公知の加湿技術を採用可能である。第二調湿装置122は、除湿方法として、コンプレッサー式、デシカント式など、公知の除湿技術を採用可能である。
【0025】
第二送風機123は、第二空調装置121および第二調湿装置122により温度と湿度を調節された空気を第一切替部130へ送出する。第二送風機123は、公知の遠心送風機または軸流送風機を採用可能である。第二送風機123は、図示しないダクトを介して第一切替部130と連通する。
【0026】
第四送風機124は、第二空調装置121および第二調湿装置122により温度と湿度を調節された空気を第二切替部140へ送出する。第四送風機124は、公知の遠心送風機または軸流送風機を採用可能である。第四送風機124は、図示しないダクトを介して第二切替部140と連通する。
【0027】
第一切替部130は、ノズル151に搬送される空気のうち、第一空調部110により空調された空気と第二空調部120により空調された空気との混合比率を調整する。第一切替部130は、第一ダンパ131と、第二ダンパ132と、を有する。
【0028】
第一ダンパ131は、第一送風機113からノズル151へ至る風路の開閉により圧力損失P1を調整するための風量調整板である。圧力損失P1が大きいほど、ノズル151へ搬送される第一空調部110の空気の量は小さくなり、圧力損失P1が小さいほど、ノズル151へ搬送される第一空調部110の空気の量は大きくなる。
【0029】
第二ダンパ132は、第二送風機123からノズル151へ至る風路の開閉により圧力損失P2を調整するための風量調整板である。圧力損失P2が大きいほど、ノズル151へ搬送される第二空調部120の空気の量は小さくなり、圧力損失P2が小さいほど、ノズル151へ搬送される第二空調部120の空気の量は大きくなる。
【0030】
第二切替部140は、ノズル152に搬送される空気のうち、第一空調部110により空調された空気と第二空調部120により空調された空気との混合比率を調整する。第二切替部140は、第三ダンパ141と、第四ダンパ142と、を有する。
【0031】
第三ダンパ141は、第三送風機114からノズル152へ至る風路の開閉により圧力損失P3を調整するための風量調整板である。圧力損失P3が大きいほど、ノズル152へ搬送される第一空調部110の空気の量は小さくなり、圧力損失P3が小さいほど、ノズル152へ搬送される第一空調部110の空気の量は大きくなる。
【0032】
第四ダンパ142は、第四送風機124からノズル152へ至る風路の開閉により圧力損失P4を調整するための風量調整板である。圧力損失P4が大きいほど、ノズル152へ搬送される第二空調部120の空気の量は小さくなり、圧力損失P4が小さいほど、ノズル152へ搬送される第二空調部120の空気の量は大きくなる。
【0033】
ノズル151は、第一送風機113により生成された気流と第二送風機123により生成された気流のうち、少なくとも一方を含む気流をエルゴメータ200へ向けて吹き出す。言い換えると、ノズル151は、第一空調部110により温度と湿度を調整された空気と第二空調部120により温度と湿度を調整された空気のうち、少なくとも一方を含む空気をエルゴメータ200へ向けて吹き出す。ノズル151は、開口の形状が短辺と長辺を含む方形状に形成される。ノズル151は、ディスプレイ20の一端側に配置される。
【0034】
ノズル152は、第三送風機114により生成された気流と第四送風機124により生成された気流のうち、少なくとも一方を含む気流をエルゴメータ200へ向けて吹き出す。言い換えると、ノズル152は、第一空調部110により温度と湿度を調整された空気と第二空調部120により温度と湿度を調整された空気のうち、少なくとも一方を含む空気をエルゴメータ200へ向けて吹き出す。ノズル152は、開口の形状が短辺と長辺を含む方形状に形成される。ノズル152は、ディスプレイ20を挟んでノズル151と対向して配置される。
【0035】
第一空調部110により空調された空気の温度は、第二空調部120により空調された空気の温度と同じ値であってもよいし、異なる値であっても良い。第一空調部110により空調された空気の湿度は、第二空調部120により空調された空気の湿度と同じ値であってもよいし、異なる値であっても良い。
【0036】
ノズル151から吹き出す空気の温度と湿度は、第一空調部110により空調された温度および湿度と、第二空調部120により空調された温度および湿度と、第一ダンパ131による圧力損失P1と、第二ダンパ132による圧力損失P2と、により調整することができる。
【0037】
ノズル152から吹き出す空気の温度と湿度は、第一空調部110により空調された温度および湿度と、第二空調部120により空調された温度および湿度と、第三ダンパ141による圧力損失P3と、第四ダンパ142による圧力損失P4と、により調整することができる。
【0038】
(エルゴメータ200)
エルゴメータ200は、固定された自転車のような装置に抵抗をつけ、定量的な負荷をかけて運動を行う器具である。エルゴメータ200は、ディスプレイ20に正対して設けられる。利用者Uは、エルゴメータ200を用いた運動を行いながら、ディスプレイ20を見ることができる。エルゴメータ200は、温度センサ210と、湿度センサ220と、風速センサ230と、操作パネル270と、を有する。
【0039】
温度センサ210は、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所の空気の温度を測定する。温度センサ210は、エルゴメータ200のハンドルなど、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所に設置することが好ましい。温度センサ210は、公知の温度測定技術を採用可能である。
【0040】
湿度センサ220は、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所の空気の湿度を測定する。湿度センサ220は、エルゴメータ200のハンドルなど、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所に設置することが好ましい。湿度センサ220は、公知の湿度測定技術を採用可能である。
【0041】
風速センサ230は、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所の気流(空気の速度)を測定する。風速センサ230は、エルゴメータ200のハンドルなど、エルゴメータ200を使用する利用者Uの上半身に近い場所に設置することが好ましい。風速センサ230は、公知の風速測定技術を採用可能である。
【0042】
操作パネル270は、エルゴメータ200の運転種別の選択と、ディスプレイ20に表示する情報(または映像、または情報と映像の両方)の選択と、利用者Uに係る情報を制御部30へ登録するための操作と、を行うための操作盤である。操作パネル270による操作は、機械式の物理ボタン、または静電容量式のタッチパネル、またはその両方の組み合わせが採用可能である。エルゴメータ200の運転種別は、エルゴメータ200の運転ON/OFFおよび利用者Uが運動の際に回すペダル部分に発生させる負荷(抵抗)の大きさである。制御部30へ登録する利用者Uに係る情報は、登録者名、年齢、性別、運動シーンなどのユーザ設定情報である。
【0043】
(制御部30)
制御部30は、ディスプレイ20、空調装置100、エルゴメータ200と電気的に通信可能に接続し、運動支援システム1を統括的に制御する。
【0044】
図3に示す各機能ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0045】
本実施の形態において、制御部30は、ディスプレイ20、空調装置100およびエルゴメータ200と別体として設けているが、これに限定されない。制御部30は、ディスプレイ20、空調装置100およびエルゴメータ200のいずれかに組み込んで配置してもよい。
【0046】
制御部30は、入力部31と、処理部32と、出力部33と、記憶部34と、熱中症危険度推定部36と、を有する。
【0047】
入力部31は、温度センサ210により測定された温度に係る情報と、湿度センサ220により測定された湿度に係る情報と、風速センサ230により測定された風速に係る情報と、操作パネル270で選択された情報と、を受け取る。
【0048】
処理部32は、入力部31に入力された情報に基づき、出力部33に出力すべき情報の処理を実行する。処理部32は、記憶部34の情報と、熱中症危険度推定部36の情報と、を参照する。
【0049】
出力部33は、処理部32において処理された情報に基づき、第一空調装置111、第一調湿装置112、第一送風機113、第三送風機114、第二空調装置121、第二調湿装置122、第二送風機123、第四送風機124、第一ダンパ131、第二ダンパ132、第三ダンパ141、第四ダンパ142、ディスプレイ20、エルゴメータ200のいずれか、または複数に対して、指示を出力する。
【0050】
記憶部34は、第一空調装置111、第一調湿装置112、第一送風機113、第三送風機114、第二空調装置121、第二調湿装置122、第二送風機123、第四送風機124、第一ダンパ131、第二ダンパ132、第三ダンパ141、第四ダンパ142、ディスプレイ20およびエルゴメータ200の動作制御に係る情報を記憶する。また、記憶部34は、熱中症危険度推定部36により推定された暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を記憶する。
【0051】
暑さ指数(WBGT)は、熱中症を予防することを目的として提案された指標である。暑さ指数(WBGT)は、気温(℃)、相対湿度(%または%RH)、全天日射量(kW/m2)、平均風速(m/s)を用いた計算により推定される(小野雅司ら(2014):通常観測気象要素を用いたWBGTの推定.日生気誌,50(4),147-157)。暑さ指数(WBGT)の単位は、摂氏度(℃)で表される。WBGTが高くなるほど、利用者Uが熱中症になる危険度は上昇する。例えば、WBGT=25[℃]の場合は、WBGT=21[℃]の場合と比べて、利用者Uが熱中症になる確率が高いことを示している。全天日射量は、季節や時間帯によって運動空間Sで得られるであろう推定値を記憶部34に記憶させてもよいし、運動空間Sに設置した図示しない日射量計測器により計測された値を記憶部34に記憶させてもよい。なお、日射量計測器は、運動支援システム1に必須の構成要素ではない。
【0052】
熱中症危険度推定部36は、温度センサ210により測定された温度に係る情報と、湿度センサ220により測定された湿度に係る情報と、風速センサ230により測定された風速に係る情報と、に基づき、暑さ指数(WBGT)を推定する。
【0053】
以上が、運動支援システム1の構成である。
【0054】
(運動支援システム1の動作例1)
次に、運動支援システム1の動作例1を説明する。以下に示す動作は、操作パネル270を介して利用者Uにより運動支援システム1に対する運転開始の操作がされたタイミング、または予め設定されたタイミングで開始される。
【0055】
図4を参照して、暑さ指数(WBGT)に対する空調装置100の動作制御について説明する。
図4は、暑さ指数(WBGT)に対する空調装置100の動作制御を示すフローチャートである。
【0056】
制御部30は、運動支援システム1の運転開始の指示を受信すると、ディスプレイ20、空調装置100およびエルゴメータ200の動作制御を開始する。運動支援システム1の運転を開始するとき、制御部30は、記憶部34が記憶するディスプレイ20、空調装置100およびエルゴメータ200の動作制御に係る情報を参照し、参照した情報を基に、出力部33を介して各機器の動作を制御する。
【0057】
また、運動支援システム1の運転が開始されると、制御部30は、入力部31を介して、温度センサ210による温度に係る情報と、湿度センサ220による湿度に係る情報と、風速センサ230による風速に係る情報と、心拍センサ240による利用者Uの心拍に係る情報と、体温センサ250による利用者Uの体表面温度に係る情報と、発汗量センサ260による利用者Uの発汗量に係る情報と、を受信する。各センサから受信する情報は、測定値そのものであってもよいし、測定値を別の値へ変換したもの(例えば電圧値)であってもよい。制御部30は、運動支援システム1の運転中、各センサからの情報を継続して受信する。
【0058】
(空調装置100の制御:ステップS1)
運動支援システム1の運転が開始されると、制御部30は、記憶部34を参照して、第一空調部110の有する空間の空気を予め設定された温度T1および湿度H1となるように、第一空調装置111および第一調湿装置112の動作制御を行う。また、制御部30は、記憶部34を参照して、第一送風機113を運転出力W1、第三送風機114を運転出力W3、となるように動作制御を行う。
【0059】
運動支援システム1の運転が開始されると、制御部30は、記憶部34を参照して、第二空調部120の有する空間の空気を予め設定された温度T2および湿度H2となるように、第二空調装置121および第二調湿装置122の動作制御を行う。また、制御部30は、記憶部34を参照して、第二送風機123を運転出力W2、第四送風機124を運転出力W4、となるように動作制御を行う。さらに、制御部30は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じて、第一ダンパ131、第二ダンパ132、第三ダンパ141および第四ダンパ142の動作を制御し、各風路の圧力損失を調整する。各ダンパの動作制御により、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じた温度、湿度、風速に調整された気流がノズル151およびノズル152から送出される。
【0060】
本実施の形態において、温度T1と温度T2の大小関係は、T1>T2とするが、この限りではない。また、湿度H1と湿度H2の大小関係は、H1>H2とするが、この限りではない。また、運転出力W1、運転出力W2、運転出力W3および運転出力W4の大小関係は、W1=W2=W3=W4とするが、この限りではない。
【0061】
(エルゴメータ200の制御:ステップS2)
運動支援システム1の運転が開始されると、制御部30は、エルゴメータ200のペダルの回転に対して抵抗(負荷)を与える動作制御を実行する。また、制御部30は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じて、ペダルの回転に対する抵抗(負荷)を変更する。例えば、ディスプレイ20に表示する映像がツーリングなどを行うための道である場合、上り坂であれば平地よりも抵抗(負荷)を大きくし、下り坂であれば平地よりも抵抗(負荷)を小さくする。
【0062】
(ディスプレイ20の制御:ステップS3)
運動支援システム1の運転が開始されると、制御部30は、記憶部34に記憶するディスプレイ20に表示する映像(情報)を、出力部33を介してディスプレイ20へ表示する動作制御を実行する。また、制御部30は、エルゴメータ200のペダルの回転によって積算される距離に応じて、ディスプレイ20に表示する映像(情報)を変更する。なお、制御部30は、操作パネル270における操作情報をディスプレイ20に表示するように制御してもよい。
【0063】
(暑さ指数の推定および推定した暑さ指数に対する熱中症危険度の判定:ステップS4)
制御部30は、熱中症危険度推定部36を用いて、利用者Uの暑さ指数(WBGT)の推定を行う。制御部30は、暑さ指数(WBGT)の推定を所定の時間間隔(例えば、10分間隔)で実施する。制御部30は、所定のサンプリングタイム(例えば、1分間隔)で得られた温度、湿度および風速の平均値に基づき、暑さ指数(WBGT)の推定を行う。制御部30は、推定した暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいか否かの判定を行う。暑さ指数(WBGT)が所定値以下であると判定した場合(ステップS4のN)、制御部30は、ステップS4を繰り返す。暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合(ステップS4のY)、制御部30は、ステップS5へ進む。暑さ指数(WBGT)の所定値は、利用者Uが熱中症になる確率が高いと推定される値であり、計算上もしくは過去の実験等で求められた値でる。
【0064】
(各ダンパの制御:ステップS5)
ステップS4において、暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合、即ち利用者Uが熱中症になる確率が高い場合、制御部30は、暑さ指数(WBGT)が所定値以下となるように第一ダンパ131、第二ダンパ132、第三ダンパ141および第四ダンパ142の動作を制御する。一例として、制御部30は、温度センサ210により測定される温度を、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合の値に比べて小さくなるように、各ダンパの動作を制御する。別の例として、制御部30は、湿度センサ220により測定される湿度を、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合の値に比べて小さくなるように、各ダンパの動作を制御する。別の例として、制御部30は、風速センサ230により測定される風速を、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合の値に比べて大きくなるように、各ダンパの動作を制御する。ステップS6の動作制御は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じた各ダンパの動作制御に対して優先される。
【0065】
(暑さ指数の推定および推定した暑さ指数に対する熱中症危険度の判定:ステップS6)
制御部30は、ステップ4と同様に、熱中症危険度推定部36を用いて、利用者Uの暑さ指数(WBGT)の推定を行う。暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合(ステップS6のY)、制御部30は、ステップS6を繰り返す。このとき、制御部30は、ステップS5の各ダンパの動作制御を継続する。暑さ指数(WBGT)が所定値以下であると判定した場合(ステップS6のN)、制御部30は、ステップS7へ進む。
【0066】
(各ダンパの制御:ステップS7)
暑さ指数(WBGT)が所定値以下と判定した場合、制御部30は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じた各ダンパの動作制御に復帰する。
【0067】
なお、温度、湿度および風速のうち、いずれかのパラメータに着目して各ダンパの動作を制御するかは、各パラメータに重みづけをするなどして、予め優先順位を記憶部34に記憶させてもよい。各パラメータの重みづけは、実験、または暑さ指数(WBGT)を推定する計算式に基づき設定する。
【0068】
なお、2つ以上のパラメータに着目して、各ダンパの動作制御を実行してもよい。一例として、温度および湿度のパラメータに着目する場合、制御部30は、温度および湿度を、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合の値に比べて小さくなるように、各ダンパの動作を制御する。別の例として、温度および風速のパラメータに着目する場合、制御部30は、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合に比べて、温度の値を小さくし、風速の値を大きくするように、各ダンパの動作を制御する。各パラメータの組み合わせ方は、予め記憶部34に記憶させてもよい。
【0069】
以上が、WBGTに対する空調装置100の動作制御である。
【0070】
(運動支援システム1の動作例2)
次に、運動支援システム1の動作例2を説明する。以下に示す動作は、操作パネル270を介して利用者Uにより運動支援システム1に対する運転開始の操作がされたタイミング、または予め設定されたタイミングで開始される。
【0071】
図5を参照して、暑さ指数(WBGT)に対するエルゴメータ200の動作制御について説明する。
図5は、暑さ指数(WBGT)に対するエルゴメータ200の動作制御を示すフローチャートである。
【0072】
なお、ステップS1からステップS4は、動作例1と重複するため、説明は省略する。
【0073】
(エルゴメータ200の制御:ステップS8)
ステップS4において暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合(ステップS4のY)、制御部30は、エルゴメータ200のペダルの回転に対する負荷(抵抗)を、暑さ指数(WBGT)が所定値より大きいと判定した場合の値に比べて小さくなるように制御する。ステップS7の動作制御は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じたエルゴメータ200のペダルの回転に対する抵抗(負荷)に対して優先される。
【0074】
(暑さ指数の推定および推定した暑さ指数に対する熱中症危険度の判定:ステップS9)
制御部30は、ステップ4と同様に、熱中症危険度推定部36を用いて、利用者Uの暑さ指数(WBGT)の推定を行う。暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合(ステップS9のY)、制御部30は、ステップS9を繰り返す。このとき、制御部30は、ステップS8のエルゴメータ200の動作制御を継続する。暑さ指数(WBGT)が所定値以下であると判定した場合(ステップS9のN)、制御部30は、ステップS10へ進む。
【0075】
(エルゴメータ200の制御:ステップS10)
暑さ指数(WBGT)が所定値以下と判定した場合、制御部30は、ディスプレイ20に表示する映像(情報)に応じたエルゴメータ200のペダルの回転に対する抵抗(負荷)となる制御へ復帰する。
【0076】
なお、ステップS7において、エルゴメータ200を用いた利用者Uの運動を中止させるため、制御部30は、エルゴメータ200のペダルの回転を停止させてもよい。エルゴメータ200のペダルの回転を停止させる場合、制御部30は、瞬間的にペダルの回転を停止させても良いし、徐々にペダルの回転に対する負荷(抵抗)を上げながら停止させても良い。
【0077】
以上が、暑さ指数(WBGT)に対するエルゴメータ200の動作制御である。
【0078】
(運動支援システム1の特徴)
動作例1および動作例2に示すように、運動支援システム1は、暑さ指数(WBGT)を用いた熱中症危険度の判定に基づく運動支援システム1を構成する機器の動作制御により、利用者Uが熱中症になる可能性を低減することが可能となる。
【0079】
[変形例]
以下、実施の形態の変形例について説明する。変形例の説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施例と相違する構成について重点的に説明する。
【0080】
制御部30は、熱中症危険度推定部36を用いて推定した暑さ指数(WBGT)をディスプレイ20に表示するように制御してもよい。これにより、利用者Uは、視覚を通して熱中症になる確率が高いか否かを確認することができるので、熱中症になる可能性を低減する効果が期待できる。
【0081】
制御部30は、推定した暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合に、熱中症になる確率が高い状態であることを、ディスプレイ20に表示して、利用者Uに報知するよう制御しても良い。これにより、利用者Uは、視覚を通して熱中症になる確率が高いか否かを把握することができるので、熱中症になる可能性を低減する効果が期待できる。
【0082】
運動支援システム1は、利用者Uの聴覚を介して熱中症になる確率が高いことを報知するための報知部をさらに備えてもよい。制御部30は、推定した暑さ指数(WBGT)が所定値よりも大きいと判定した場合に、熱中症になりやすい状態であることを、報知部を介して利用者Uに報知するよう制御しても良い。これにより、利用者Uは、聴覚を通して熱中症になりやすい状態であるか否かを把握することができるので、熱中症になる可能性を低減する効果が期待できる。
【0083】
エルゴメータ200は、さらに、心拍センサと、体温センサと、発汗量センサと、のうち、少なくとも一つのセンサを備えてもよい。推定した暑さ指数(WBGT)に、こられのセンサにより測定される情報を関連付けることで、利用者Uが熱中症になる可能性を、精度よく判定する効果が期待できる。
【0084】
心拍センサは、エルゴメータ200を使用する利用者Uの心拍を測定する。心拍センサは、エルゴメータ200から着脱して使用可能である。心拍センサは、公知の心拍測定技術を採用可能である。
【0085】
体温センサは、エルゴメータ200を使用する利用者Uの体表面温度を測定する。体温センサは、エルゴメータ200から着脱して使用可能である。体温センサは、公知の体温測定技術を採用可能である。なお、体温センサは、接触式または非接触式のいずれであってもよい。非接触式の体温センサは、例えばサーモカメラが挙げられる。
【0086】
発汗量センサは、エルゴメータ200を使用する利用者Uの体表面の発汗量を測定する。発汗量センサは、エルゴメータ200から着脱して使用可能である。発汗量センサは、公知の発汗量測定技術を採用可能である。
【0087】
本実施の形態において、運動支援システム1は、風速センサ230を備えたが、これに限定されない。運動支援システム1は、第一送風機113から第四送風機124のファンの回転数を測定するタコメータを備えてもよい。タコメータから得られるファンの回転数に係る情報と、第一ダンパ131から第四送風機124の動作制御の情報と、に基づく風速センサ230が配置される位置の風速の関係をテーブル化して、記憶部34に記憶させる。制御部30は、記憶部34を用いて、タコメータから得られる情報と、第一ダンパ131から第四送風機124の動作制御の情報と、に基づき風速を推定することができる。これにより、運動支援システム1は、風速センサ230を備えた場合と同様の効果が期待できる。
【0088】
動作例1および動作例2において、ステップS1からステップS3は、この順に限らない。また、ステップS1からステップS3は、並行して実施してもよい。
【0089】
本実施の形態において、エルゴメータ200を用いて説明したが、この限りではなく、ルームランナーなどの運動機器に置き換えた場合であっても、同様の効果を奏する。
【0090】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施の形態の」「実施の形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る運動支援システムは、運動機器の使用中に熱中症になる可能性を低減する効果が期待できることから、運動機器を用いて利用者の健康維持、向上などを目的とした健康増進システムなどとして有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 運動支援システム
20 ディスプレイ
30 制御部
31 入力部
32 処理部
33 出力部
34 記憶部
36 熱中症危険度推定部
100 空調装置
110 第一空調部
111 第一空調装置
112 第一調湿装置
113 第一送風機
114 第三送風機
120 第二空調部
121 第二空調装置
122 第二調湿装置
123 第二送風機
124 第四送風機
130 第一切替部
131 第一ダンパ
132 第二ダンパ
140 第二切替部
141 第三ダンパ
142 第四ダンパ
151 ノズル
152 ノズル
200 エルゴメータ
210 温度センサ
220 湿度センサ
230 風速センサ
270 操作パネル