(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023316
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
C10G1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128721
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】井原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝
(72)【発明者】
【氏名】向井 健
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA04
4H129BA08
4H129BB03
4H129BC12
4H129BC23
4H129BC26
4H129BC35
4H129BC36
4H129BC37
4H129BC38
4H129NA01
4H129NA08
4H129NA09
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックなどの有機物の熱分解により発生した熱分解ガスから回収された分解油の品質を向上させることができる処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置2は、熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離部15と、粒子が除去された熱分解ガスから分解油を回収する油回収部16を備える。物理的分離部15は、熱分解ガスに洗浄媒体を噴霧することにより熱分解ガスから粒子を除去する洗浄集塵装置25を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置であって、
前記熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離部と、
前記粒子が除去された前記熱分解ガスから分解油を回収する油回収部を備え、
前記物理的分離部は、前記熱分解ガスに洗浄媒体を噴霧することにより前記熱分解ガスから粒子を除去する洗浄集塵装置を備えている、処理装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記油回収部で回収された分解油を前記洗浄集塵装置に移送する油ポンプをさらに備えており、
前記洗浄集塵装置は、前記油ポンプにより移送された前記分解油を前記洗浄媒体として前記熱分解ガスに噴霧するように構成されている、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記洗浄集塵装置は、ベンチュリスクラバまたはサイクロンスクラバである、請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記物理的分離部は、前記洗浄集塵装置で回収された分解油を前記熱分解炉に送るための油通路構造体を備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記物理的分離部は、前記熱分解炉内で発生した前記熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置をさらに備えている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記固気分離装置は、前記熱分解炉内に配置されている、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、
前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、
前記物理的分離部は、前記熱分解ガスから除去した前記粒子を前記固気分離装置から前記媒体再生炉に送るための粒子通路構造体を備えている、請求項5または6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記処理装置は、前記油回収部によって回収された前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部をさらに備え、
前記化学的分離部は、
水を前記分解油に供給する水供給ラインと、
前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させる油水ミキサーと、
前記油水ミキサーに連結され、前記分解油と前記水とを分離させる油水分離装置を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項9】
熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置であって、
前記熱分解ガスから分解油を回収する油回収部と、
前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部を備え、
前記化学的分離部は、
水を前記分解油に供給する水供給ラインと、
前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させる油水ミキサーと、
前記油水ミキサーに連結され、前記分解油と前記水とを分離させる油水分離装置を有する、処理装置。
【請求項10】
熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理方法であって、
前記熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離を実行し、
前記粒子が除去された前記熱分解ガスから分解油を油回収部により回収し、
前記物理的分離は、前記熱分解ガスを洗浄集塵装置に導き、前記洗浄集塵装置内で前記熱分解ガスに洗浄媒体を噴霧することにより前記熱分解ガスから粒子を除去することを含む、処理方法。
【請求項11】
前記油回収部で回収された分解油は、前記洗浄集塵装置に移送され、
前記洗浄集塵装置は、前記油回収部から移送された前記分解油を前記洗浄媒体として前記熱分解ガスに噴霧する、請求項10に記載の処理方法。
【請求項12】
前記洗浄集塵装置は、ベンチュリスクラバまたはサイクロンスクラバである、請求項10または11に記載の処理方法。
【請求項13】
前記物理的分離は、前記洗浄集塵装置で回収した分解油を前記熱分解炉に送る工程をさらに含む、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項14】
前記物理的分離は、前記熱分解炉内で発生した前記熱分解ガスから粒子を固気分離装置により分離させる工程をさらに含む、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項15】
前記固気分離装置は、前記熱分解炉内に配置されている、請求項14に記載の処理方法。
【請求項16】
前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、
前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、
前記物理的分離は、前記固気分離装置により前記熱分解ガスから除去された前記粒子を前記媒体再生炉に送る工程をさらに含む、請求項14または15に記載の処理方法。
【請求項17】
前記処理方法は、前記油回収部によって回収された前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離をさらに含み、
前記化学的分離は、
水を前記分解油に供給し、
前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させ、その後、
前記分解油と前記水とを分離させる工程を含む、請求項10乃至16のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項18】
熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理方法であって、
前記熱分解ガスから分解油を回収し、
前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離を実行し、
前記化学的分離は、
水を前記分解油に供給し、
前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させ、その後、
前記分解油と前記水とを分離させる工程を含む、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック、バイオマス、廃棄物等の有機物の熱分解により発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置および処理方法に関し、特に熱分解ガスから高品質の分解油を回収するための処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックにはPS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などが含まれていることがある。このような様々な樹脂成分を含む廃プラスチックを処理して再利用するマテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクルの開発が進められている。特に、熱分解炉を使用して、廃プラスチックから油やガスなどを回収するケミカルリサイクルへの注目が高まっている。
【0003】
ケミカルリサイクルの一例として、例えば流動床炉は、炉の内部が仕切壁で熱分解室と媒体再生室に分けられた構造を有している。流動媒体は熱分解室と媒体再生室との間を循環しながら、廃プラスチックは熱分解室に投入される。廃プラスチックは熱分解室内で流動媒体により加熱され、熱分解後、ガス化される。廃プラスチックの残渣は、流動媒体によって媒体再生室に運ばれる。廃プラスチックの残渣は媒体再生室内で燃焼して、流動媒体を加熱する。加熱された流動媒体は、熱分解室内に移動し、熱分解室内で熱源として機能する。このように流動媒体が炉内で循環する流動床炉は、内部循環流動床ガス化システムと呼ばれる。
【0004】
廃プラスチックは熱分解により熱分解ガスを発生する。この熱分解ガス中に含まれるガス状の炭化水素を凝縮させることで、分解油を回収する。上述した内部循環流動床ガス化システムは、廃プラスチックを熱分解し、分解油および分解ガスを熱分解生成物として回収することができる技術として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、廃プラスチックの熱分解により回収された分解油には、石油精製・石油化学での使用に好ましくない不純物が混入することがある。例えば、熱分解に伴い副生する塩素、酸、固形物などが分解油に混入することがある。より具体的には、塩素は、廃プラスチック中のPVC由来のHClであり、酸は廃プラスチック中のPETおよびPVC可塑剤由来の昇華性の酸であり、固形物は熱分解時に生成される高分子重合物およびコーク残渣などである。
【0007】
熱分解炉として流動床炉を用いた場合には、熱分解により生成される上記不純物に加え、流動床炉由来の固形物である、流動媒体(例えば珪砂微粉)、および触媒微粉が分解油に混入することもある。これらの不純物は、分解油の品質を低下させ、分解油の再利用を阻害する要因ともなる。
【0008】
そこで、本発明は、廃プラスチックなどの有機物の熱分解により発生した熱分解ガスから回収された分解油の品質を向上させることができる処理装置および処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置であって、前記熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離部と、前記粒子が除去された前記熱分解ガスから分解油を回収する油回収部を備え、前記物理的分離部は、前記熱分解ガスに洗浄媒体を噴霧することにより前記熱分解ガスから粒子を除去する洗浄集塵装置を備えている、処理装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記処理装置は、前記油回収部で回収された分解油を前記洗浄集塵装置に移送する油ポンプをさらに備えており、前記洗浄集塵装置は、前記油ポンプにより移送された前記分解油を前記洗浄媒体として前記熱分解ガスに噴霧するように構成されている。
一態様では、前記洗浄集塵装置は、ベンチュリスクラバまたはサイクロンスクラバである。
一態様では、前記物理的分離部は、前記洗浄集塵装置で回収された分解油を前記熱分解炉に送るための油通路構造体を備えている。
一態様では、前記物理的分離部は、前記熱分解炉内で発生した前記熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置をさらに備えている。
一態様では、前記固気分離装置は、前記熱分解炉内に配置されている。
一態様では、前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、前記物理的分離部は、前記熱分解ガスから除去した前記粒子を前記固気分離装置から前記媒体再生炉に送るための粒子通路構造体を備えている。
一態様では、前記処理装置は、前記油回収部によって回収された前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部をさらに備え、前記化学的分離部は、水を前記分解油に供給する水供給ラインと、前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させる油水ミキサーと、前記油水ミキサーに連結され、前記分解油と前記水とを分離させる油水分離装置を有する。
【0011】
一態様では、熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理装置であって、前記熱分解ガスから分解油を回収する油回収部と、前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部を備え、前記化学的分離部は、水を前記分解油に供給する水供給ラインと、前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させる油水ミキサーと、前記油水ミキサーに連結され、前記分解油と前記水とを分離させる油水分離装置を有する、処理装置が提供される。
【0012】
一態様では、熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理方法であって、前記熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離を実行し、前記粒子が除去された前記熱分解ガスから分解油を油回収部により回収し、前記物理的分離は、前記熱分解ガスを洗浄集塵装置に導き、前記洗浄集塵装置内で前記熱分解ガスに洗浄媒体を噴霧することにより前記熱分解ガスから粒子を除去することを含む、処理方法が提供される。
【0013】
一態様では、前記油回収部で回収された分解油は、前記洗浄集塵装置に移送され、前記洗浄集塵装置は、前記油回収部から移送された前記分解油を前記洗浄媒体として前記熱分解ガスに噴霧する。
一態様では、前記洗浄集塵装置は、ベンチュリスクラバまたはサイクロンスクラバである。
一態様では、前記物理的分離は、前記洗浄集塵装置で回収した分解油を前記熱分解炉に送る工程をさらに含む。
一態様では、前記物理的分離は、前記熱分解炉内で発生した前記熱分解ガスから粒子を固気分離装置により分離させる工程をさらに含む。
一態様では、前記固気分離装置は、前記熱分解炉内に配置されている。
一態様では、前記熱分解炉は、流動床炉の熱分解炉であり、前記流動床炉は、流動媒体が循環する前記熱分解炉と媒体再生炉を有し、前記物理的分離は、前記固気分離装置により前記熱分解ガスから除去された前記粒子を前記媒体再生炉に送る工程をさらに含む。
一態様では、前記処理方法は、前記油回収部によって回収された前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離をさらに含み、前記化学的分離は、水を前記分解油に供給し、前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させ、その後、前記分解油と前記水とを分離させる工程を含む。
【0014】
一態様では、熱分解炉内で有機物を熱分解することにより発生した熱分解ガスから分解油を回収するための処理方法であって、前記熱分解ガスから分解油を回収し、前記分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離を実行し、前記化学的分離は、水を前記分解油に供給し、前記分解油と前記水とを混合させて、前記分解油中の不純物を前記水に移動させ、その後、前記分解油と前記水とを分離させる工程を含む、処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
物理的分離部は、粒子を熱分解ガスから除去することができる。特に、固気分離装置と洗浄集塵装置を有する物理的分離部は、二段階で粒子を熱分解ガスから除去することができる。すなわち、固気分離装置は、粒径の比較的大きな粒子を熱分解ガスから除去し、次いで洗浄集塵装置は微粒子を熱分解ガスから除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる粒子の量を著しく低減できる。
【0016】
水供給ラインと油水ミキサーと油水分離装置を有する化学的分離部は、水溶性物質、塩素などの不純物を分解油から水に移動させることで、不純物を分解油から除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる不純物の量を著しく低減できる。
【0017】
さらに、物理的分離部と化学的分離部の両方を備えた処理装置は、粉体、水溶性物質、および塩素などの不純物を分解油から十分に除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる不純物の量を著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】有機物を処理するための熱分解型処理システムの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】有機物を処理するための熱分解型処理システムの他の実施形態を示す概略図である。
【
図3】有機物を処理するための熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図1を参照して説明した物理的分離部と、
図3を参照して説明した化学的分離部の両方を備えた処理装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図5】流動床炉を利用した熱分解型処理システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図6】流動床炉を利用した熱分解型処理システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図7】流動床炉を利用した熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、有機物を処理するための熱分解型処理システムの一実施形態を示す概略図である。以下に説明する実施形態において処理対象となる有機物は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)のうちの少なくとも1つを含む廃プラスチックである。
【0020】
図1に示すように、熱分解型処理システムは、有機物の一例である廃プラスチックを熱分解する熱分解炉6と、熱分解炉6から排出された熱分解ガスから分解油を回収する処理装置2を備えている。熱分解炉6のタイプは特に限定されず、例えば後述する流動床式熱分解炉であってもよいし、あるいはキルン式熱分解炉であってもよい。
【0021】
処理装置2は、熱分解炉6内で廃プラスチックを熱分解することにより発生した熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離部15と、粒子が除去された熱分解ガスから分解油を回収する油回収部16を備えている。物理的分離部15で除去される粒子の具体例としては、廃プラスチックの熱分解時に生成される高分子重合物およびコーク残渣、流動媒体(例えば珪砂微粉)、および触媒微粉などが挙げられる。
【0022】
物理的分離部15は、熱分解炉6内で発生した熱分解ガスから粒子を除去する洗浄集塵装置25を備えている。洗浄集塵装置25は、熱分解炉6に連結され、熱分解炉6の下流に配置されている。本実施形態の洗浄集塵装置25は、ベンチュリスクラバである。より具体的には、洗浄集塵装置25は、熱分解炉6のガス出口に連結されたベンチュリ管27と、ベンチュリ管27内に油出口を有する洗浄媒体吐出ノズル28と、ベンチュリ管27に連結されたサイクロン回収器29を備えている。洗浄媒体吐出ノズル28には、熱分解ガスから既に回収された分解油が供給される。すなわち、洗浄媒体吐出ノズル28は、油回収部16に連結されており、油回収部16によって既に回収された分解油が洗浄媒体として洗浄媒体吐出ノズル28に供給されるようになっている。
【0023】
油回収部16は、熱分解ガスから分解油を回収する油スクラバ35と、油スクラバ35から排出された分解油を貯留する分解油貯留槽38を備えている。分解油貯留槽38内の分解油は、油ポンプ40によって洗浄集塵装置25に移送される。分解油貯留槽38には油ポンプ40が設置されており、分解油を洗浄媒体吐出ノズル28に移送する。洗浄集塵装置25は、油ポンプ40により昇圧された分解油を、洗浄媒体吐出ノズル28からベンチュリ管27を流れる熱分解ガスに噴霧する。
【0024】
熱分解ガスがベンチュリ管27を流れるときに、熱分解ガスの流速は上昇し、洗浄媒体吐出ノズル28から噴霧された分解油はミスト状となって熱分解ガス中に広がる。ミスト状の分解油は熱分解ガス中に存在する粒子を捕捉し、これら粒子を熱分解ガスから除去する。洗浄集塵装置25によって除去される粒子は、例えば直径が1μm以上の粒子である。
【0025】
洗浄媒体吐出ノズル28から噴霧された分解油は、微粒子を捕捉するのみならず、熱分解ガスを冷却し、噴霧した分解油が気化する一方で熱分解ガスの一部を凝縮させる。凝縮した分解油と、捕捉された粒子は、サイクロン回収器29内で回収される。このように、本実施形態によれば、熱分解ガス中の粒子は、洗浄集塵装置25によって除去され、結果として、後段の油スクラバ35で回収される分解油の品質を向上させることができる。
【0026】
本実施形態の洗浄集塵装置25はベンチュリスクラバであるが、洗浄集塵装置25が直径が1μm以上の微粒子を熱分解ガスから除去できる限りにおいて、洗浄集塵装置25のタイプは特に限定されない。例えば、洗浄集塵装置25はサイクロンスクラバであってもよい。
【0027】
熱分解ガスは、洗浄集塵装置25により、例えば450℃から350℃に冷却される。このとき、沸点が350℃よりも低い油成分はそのままガス状態を維持し、後段の油スクラバ35に流れる。一方、沸点が350℃から450℃の範囲内にある油成分は、洗浄集塵装置25によって冷却され、凝縮する。したがって、洗浄集塵装置25で回収される分解油は、重油相当の油(すなわち重質油)である。上記運転温度は一例であり、分解油の噴霧量を変更することで冷却温度を変更し、回収される分解油の留分を調整してもよい。
【0028】
洗浄集塵装置25の洗浄媒体は分解油に限定されるものではなく、例えば外部から購入した洗浄媒体を噴霧してもよい。洗浄媒体の具体例としては、外部から導入した軽油や高沸点の油(例えば沸点が450℃以上の潤滑油)、水が挙げられる。また、熱分解ガスを必ずしも冷却する必要はなく、例えば、熱分解ガスの温度で気化しない洗浄媒体を熱分解ガスの温度で噴霧することで、熱分解ガスを凝縮させることなく粒子を除去することができる。
【0029】
物理的分離部15は、洗浄集塵装置25で回収された分解油を熱分解炉6に送るための油通路構造体43を備えている。この油通路構造体43は、サイクロン回収器29の底部に連結された重質油槽45から熱分解炉6まで延びている。油通路構造体43の具体的構造および形状は、分解油を通過させることができる油通路を有していれば、特に限定されない。回収された分解油には微粒子が含まれているので、これら微粒子を分解油から除去するための分離装置を油通路構造体43に設けてもよい。
【0030】
洗浄集塵装置25の底部に集められた分解油(重質油)は、一旦重質油槽45内に貯留され、さらに重質油槽45から油通路構造体43を通って熱分解炉6内に送られる。物理的分離部15は、重質油槽45内に溜まった分解油の液面を検出する液面センサ46と、液面センサ46から出力された液面位置に基づいて開閉する開閉弁47を有している。開閉弁47は、油通路構造体43に取り付けられている。
【0031】
開閉弁47は、重質油槽45内の分解油の液面位置が所定の位置よりも高いときに開くように構成されている。開閉弁47は、電動弁、電磁弁などのアクチュエータ駆動型弁である。開閉弁47が開いているとき、分解油は、重質油槽45から油通路構造体43を通って熱分解炉6内に送られる。熱分解炉6に戻された分解油(重質油)は、熱分解炉6内で再度熱分解される。熱分解された分解油の大部分はガス状態を維持して洗浄集塵装置25を通過し、残りは再度凝縮されて分解油(重質油)を形成する。このようにして、廃プラスチックから生成された分解油のうち、重質油は洗浄集塵装置25で回収されるので、油スクラバ35では、重質油よりも沸点の低い油成分(軽油、灯油、ガソリンなど)が回収できる。
【0032】
油スクラバ35は、洗浄集塵装置25の下流に配置されている。油スクラバ35は、洗浄集塵装置25に連結されており、洗浄集塵装置25によって粒子が除去された熱分解ガスは油スクラバ35に導かれる。本実施形態では、油スクラバ35は、洗浄集塵装置25のサイクロン回収器29の下流に連結されている。
【0033】
油スクラバ35は、熱分解ガスから既に回収された分解油を熱分解ガスに噴霧することで、熱分解ガスを冷却しつつ、熱分解ガス中のガス状の分解油(炭化水素)を凝縮させる。凝縮された分解油と、噴霧された分解油は、ともに油スクラバ35から排出され、分解油貯留槽38内に溜められる。使用される油スクラバ35の具体的構成は特に限定されず、公知の油スクラバを使用することができる。例えば、気体の通路が内部に形成された塔と、通路を流れる気体に油を噴霧するスプレーノズルを備えた洗浄塔を油スクラバ35として用いることができる。
【0034】
油スクラバ35は、洗浄集塵装置25によって冷却された熱分解ガスに、分解油を噴霧することによって熱分解ガスを更に冷却する。例えば、熱分解ガスは、洗浄集塵装置25により450℃から350℃に冷却され、油スクラバ35により350℃から100℃にまで冷却される。したがって、油スクラバ35では、沸点が350℃から100℃の範囲内にある油成分が凝縮され、回収される。
【0035】
油回収部16は、油スクラバ35の下流に配置された水スクラバ50と、水スクラバ50から排出された分解油と水との混合物から分解油を分離する油水分離器51をさらに備えている。水スクラバ50は、その内部を通過する熱分解ガスに水を噴霧し、熱分解ガスをさらに冷却する。本実施形態では、水スクラバ50は、アルカリ水を熱分解ガスに噴霧する。熱分解ガスは、水(本実施形態ではアルカリ水)との接触によって冷却される。例えば、熱分解ガスは、水スクラバ50により100℃から40℃にまで冷却される。したがって、水スクラバ50では、沸点が100℃から40℃の範囲内にある油成分および水蒸気が凝縮され、回収される。
【0036】
分解油と水との混合物は、水スクラバ50から排出され、油水分離器51に送られる。油水分離器51は、分解油を水から分離するように構成されている。油水分離器51の具体的構成は特に限定されないが、例えばコアレッサーや沈降分離槽を油水分離器51に使用することができる。油水分離器51により分離された分解油は分解油貯留槽38に送られ、分解油貯留槽38内に溜められる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、油スクラバ35および水スクラバ50によって熱分解ガスに含まれる分解油が回収されるので、分解油の全体の収率が向上する。使用される水スクラバ50の具体的構成は特に限定されず、公知の水スクラバを使用することができる。例えば、気体の通路が内部に形成された塔と、通路を流れる気体に水を噴霧するスプレーノズルを備えた洗浄塔を水スクラバ50として用いることができる。
【0038】
上述した油スクラバ35および水スクラバ50は、熱分解ガス中のガス状の分解油(炭化水素)を凝縮させる凝縮器の一例である。凝縮器は、本実施形態のように多段の凝縮器であってもよく、あるいは単段の凝縮器であってもよい。また、凝縮器の冷却形態は直接冷却でもよく、あるいは間接冷却であってもよい。
【0039】
次に、熱分解型処理システムの他の実施形態について、
図2を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0040】
物理的分離部15は、熱分解炉6内で発生した熱分解ガスから粒子を分離させる固気分離装置18と、粒子が分離された熱分解ガスに分解油を噴霧することにより熱分解ガスから粒子をさらに除去する洗浄集塵装置25を備えている。洗浄集塵装置25の構成は
図1を参照して説明した実施形態の洗浄集塵装置25と同じ構成を有する。固気分離装置18は、放熱による温度低下を抑えるため熱分解炉6内に配置することが好ましいが、熱分解炉6の外部に配置してもよい。本実施形態では、固気分離装置18は、遠心力により粒子を熱分解ガスから分離させるサイクロン型固気分離装置である。
【0041】
熱分解炉6内での廃プラスチックの熱分解により発生した熱分解ガスは、上部入口18aから固気分離装置18の内部に入り、固気分離装置18内で旋回流を形成する。熱分解ガスに含まれる粒子は、遠心力により熱分解ガスから分離される。固気分離装置18によって除去される粒子は、例えば直径が10μm以上の粒子である。熱分解ガスから分離した粒子は、固気分離装置18の底部に集められる。
【0042】
物理的分離部15は、熱分解ガスから除去した粒子を固気分離装置18から熱分解炉6の外部に送るための粒子通路構造体19を備えている。この粒子通路構造体19は、固気分離装置18の底部から熱分解炉6の外部まで延びている。固気分離装置18の底部に集められた粒子は、その自重により粒子通路構造体19を通って固気分離装置18から排出される。粒子通路構造体19の具体的構造および形状は、粒子を通過させることができる粒子通路を有していれば、特に限定されない。
【0043】
一実施形態では、粒子通路構造体19は、固気分離装置18の底部から熱分解炉6の内部に延びてもよい。すなわち、固気分離装置18の底部に集められた粒子は、粒子通路構造体19を通って熱分解炉6内に戻してもよい。
【0044】
洗浄集塵装置25は、固気分離装置18の下流に配置されている。洗浄集塵装置25は、固気分離装置18に連結されており、固気分離装置18によって粒子が除去された熱分解ガスは、洗浄集塵装置25に導かれる。より具体的には、洗浄集塵装置25のベンチュリ管27は、固気分離装置18のガス出口に連結されている。特に説明しない洗浄集塵装置25の構成および配置は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0045】
本実施形態の洗浄集塵装置25はベンチュリスクラバであるが、洗浄集塵装置25が固気分離装置18で除去される粒子よりもサイズの小さい粒子を熱分解ガスから除去できる限りにおいて、洗浄集塵装置25のタイプは特に限定されない。例えば、洗浄集塵装置25はサイクロンスクラバであってもよい。
【0046】
本実施形態によれば、熱分解ガス中の粒子は、固気分離装置18と洗浄集塵装置25によって二段階で除去される。すなわち、固気分離装置18は、粒径の比較的大きな粒子を熱分解ガスから除去し、次いで洗浄集塵装置25は微粒子を熱分解ガスから除去することができる。結果として、後段の油スクラバ35で回収される分解油の品質を向上させることができる。特に、固気分離装置18と洗浄集塵装置25の両方を備えた物理的分離部15は、熱分解ガス中の粒子濃度が高い場合に好適である。
【0047】
次に、熱分解型処理システムの他の実施形態について、
図3を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0048】
処理対象となる廃プラスチックは、PVC(ポリ塩化ビニル)およびPET(ポリエチレンテレフタレート)の両方を含むことがある。PVCは、熱分解炉6で熱分解されるときに、HCl(塩化水素)を発生し、これが下流機器の腐食や、廃プラスチックから回収された分解油の品質を悪化させてしまう。PETは、熱分解炉6で熱分解されるときに、安息香酸やテレフタル酸を発生する。これらの酸は、いずれも昇華性があり、下流側で堆積して、下流機器のファウリングおよび腐食、分解油への酸混入(結晶析出)による品質の悪化を引き起こす。
【0049】
そこで、本実施形態では、PVC由来のHClや、PET由来の昇華性の酸などの不純物を化学的に分解油から除去する。
図3に示すように、熱分解炉6から排出された熱分解ガスから分解油を回収する処理装置2は、熱分解ガスから分解油を回収する油回収部16と、油回収部16によって回収された分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部60を備えている。本実施形態では、物理的分離部15(固気分離装置18および洗浄集塵装置25)は設けられていない。油回収部16は、
図1に示す実施形態における油回収部16と同じ構成を有しているので、その重複する説明を省略する。
【0050】
化学的分離部60は、水を分解油に供給する水供給ライン61と、分解油と水とを混合させて、分解油中の不純物を水に移動させる油水ミキサー64と、油水ミキサー64に連結され、分解油と水とを分離させる油水分離装置66を有する。化学的分離部60で除去される不純物の具体例としては、廃プラスチックの熱分解時に生成された、PVC由来のHCl、PET由来の昇華性の酸の結晶などが挙げられる。水供給ライン61から供給される水の具体例としては、蒸気凝縮水、純水、アルカリ水などが挙げられる。本実施形態では、水供給ライン61から供給される水としてアルカリ水が使用されている。
【0051】
油水ミキサー64は、油回収部16の分解油貯留槽38に連結されている。分解油貯留槽38には油ポンプ40が設置されており、分解油は分解油貯留槽38から油水ミキサー64に移送される。水供給ライン61は、油水ミキサー64の上流側に連結されており、水は水供給ライン61を通って油水ミキサー64に送られる。本実施形態では、水は、水スクラバ50から排出されたアルカリ水である。すなわち、水供給ライン61は、水スクラバ50に連結された油水分離器51に連結されており、油水分離器51によって分解油から分離されたアルカリ水が水供給ライン61を通って油水ミキサー64に送られる。一実施形態では、水供給ライン61は、図示しないアルカリ水供給源に連結されてもよい。他の実施形態では、水供給ライン61は、図示しない純水供給源または蒸気凝縮水供給源に連結されてもよい。
【0052】
油回収部16、より具体的には油スクラバ35および水スクラバ50によって回収された分解油は、油水ミキサー64によってアルカリ水と混合される。分解油中に含まれる水溶性の粉体(例えば、PET由来の昇華性の酸の結晶)、およびHClは、アルカリ水側に移動し、アルカリ水内に溶存する。
【0053】
油水ミキサー64から出た分解油およびアルカリ水の混合物は、油水分離装置66に送られ、ここで分解油とアルカリ水(不純物含む)とが分離される。上述したように、分解油中に含まれる水溶性の粉体およびHClなどの不純物はアルカリ水内に溶存しているので、これらの不純物は、アルカリ水とともに、分解油から分離される。したがって、油水分離装置66から取り出される分解油は、品質の高い油である。油水分離装置66は、分解油とアルカリ水を分離できる構造を有していれば特に限定されないが、例えば、コアレッサーや沈降分離槽を油水分離装置66に用いることができる。
【0054】
本実施形態によれば、水供給ライン61と油水ミキサー64と油水分離装置66を有する化学的分離部60は、水溶性物質、塩素などの不純物を分解油から水(本実施形態ではアルカリ水)に移動させることで、不純物を分解油から除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる不純物の量を著しく低減できる。
【0055】
上述したように、廃プラスチックに含まれるPVCおよびPETは、熱分解されるとき塩素、昇華性の酸を発生し、回収された分解油の品質を低下させる。この問題を解消するために、熱分解炉6に投入される前の廃プラスチックに消石灰を投入してもよい。廃プラスチックと消石灰とを混ぜながら、廃プラスチックと消石灰を加熱することにより、PVCの脱塩処理およびPETの加水分解が行われる。すなわち、PVCを加熱することで、PVCに含まれる塩素はHCl(塩化水素)として熱的に分離する。発生したHClは消石灰によって乾式処理され、HCl中の塩素はCa塩(CaCl2)として消石灰に固定される。さらに、PETを消石灰とともに加熱することで、テレフタル酸カルシウムが生成される。このテレフタル酸カルシウムは、熱分解炉6内で熱分解されるので、昇華性のある安息香酸およびテレフタル酸の生成が抑制され、分解油(特にベンゼン)の収率が向上される。
【0056】
その一方で、消石灰を用いた処理に伴い、消石灰の微粉(Ca(OH)2)や、副生成物であるCa塩(CaCl2,CaCO3)の粒子が、熱分解ガスから回収された分解油に混入することがある。また、消石灰に固定されなかったPVC由来のHClも分解油に混入することがある。さらに、PVCの可塑剤およびPETに含まれるエステル化合物の一部は、加水分解されずに昇華性のある安息香酸およびテレフタル酸を生成し、これら昇華性のある酸は、熱分解ガスから分解油を回収するときに粉体(結晶)として分解油に混入することがある。
【0057】
このような場合でも、
図3に示す化学的分離部60は、消石灰の微粉(Ca(OH)
2)や、Ca塩(CaCl
2,CaCO
3)の粉体、PVC由来のHCl、PET由来の昇華性のある酸からなる粉体を、水(例えばアルカリ水)と混合させることで、分解油から分離させることができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油の品質を向上することができる。
【0058】
図4は、
図2を参照して説明した物理的分離部15と、
図3を参照して説明した化学的分離部60の両方を備えた処理装置2の一実施形態を示す模式図である。
図4に示すように、化学的分離部60は、物理的分離部15の下流側に配置される。物理的分離部15は、熱分解ガスから粒子などの不純物を除去し、その後、化学的分離部60は、熱分解ガスから回収された分解油から水溶性粉体、塩素などの不純物を除去する。物理的分離部15および化学的分離部60の両方を備えた処理装置2は、粒子、水溶性物質、および塩素などの不純物を分解油から十分に除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる不純物の量を著しく低減できる。
【0059】
一実施形態では、処理装置2は、
図1を参照して説明した物理的分離部15と、
図3を参照して説明した化学的分離部60を備えてもよい。
【0060】
図5は、流動床炉を利用した熱分解型処理システムの一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、熱分解型処理システムは、有機物の一例である廃プラスチックを熱分解し、さらに燃焼させる流動床炉1と、流動床炉1から排出された熱分解ガスから分解油を回収する処理装置2を備えている。流動床炉1は、廃プラスチックを熱分解し、炭化水素などの熱分解生成物を含む熱分解ガスを生成する熱分解炉6と、熱分解された廃プラスチックの残渣を燃焼する媒体再生炉7を備えている。
図5に示す実施形態における熱分解炉6は、
図1乃至
図4に示す実施形態における熱分解炉6に相当する。
【0062】
熱分解炉6および媒体再生炉7は、1つの流動床炉1内に形成されている。すなわち、流動床炉1の内部は、仕切壁10によって熱分解炉6と媒体再生炉7に仕切られている。流動床炉1の全体の形状は特に限定されないが、例えば円筒形または矩形を有している。熱分解炉6および媒体再生炉7内には、流動媒体(例えば珪砂)が収容されている。流動媒体を流動させるために、熱分解炉6および媒体再生炉7には流動化ガスGが供給される。原料である廃プラスチックは、図示しない原料供給装置によって熱分解炉6内に供給される。
【0063】
流動媒体は熱分解炉6と媒体再生炉7との間を循環しながら、廃プラスチックは熱分解炉6に投入される。廃プラスチックは熱分解炉6内で流動媒体により加熱され、熱分解後、ガス化される。廃プラスチックの残渣は、流動媒体によって媒体再生炉7に運ばれる。廃プラスチックの残渣は媒体再生炉7内で燃焼して、流動媒体を加熱する。加熱された流動媒体は、熱分解炉6内に移動し、熱分解炉6内で熱源として機能する。このように流動媒体が炉内で循環する流動床炉1は、内部循環流動床ガス化システムと呼ばれる。
【0064】
処理装置2は、
図2を参照して説明した物理的分離部15と油回収部16を備えている。すなわち、物理的分離部15は、固気分離装置18と洗浄集塵装置25の両方を備えている。これは、流動床炉1を構成する熱分解炉6から排出された熱分解ガスは、高い濃度の粒子を含むからである。
【0065】
物理的分離部15は、熱分解ガスから除去した粒子を固気分離装置18から流動床炉1の媒体再生炉7に送るための粒子通路構造体19を備えている。この粒子通路構造体19は、固気分離装置18の底部から媒体再生炉7まで延びている。固気分離装置18の底部に集められた粒子は、その自重により粒子通路構造体19を通って媒体再生炉7内に送られ、媒体再生炉7内で燃焼される。粒子通路構造体19の具体的構造および形状は、粒子を通過させることができる粒子通路を有していれば、特に限定されない。
【0066】
一実施形態では、粒子通路構造体19は、固気分離装置18の底部から熱分解炉6の内部に延びてもよい。すなわち、固気分離装置18の底部に集められた粒子は、粒子通路構造体19を通って熱分解炉6内に戻してもよい。
【0067】
図6は、流動床炉を利用した熱分解型処理システムの他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図6に示す実施形態の熱分解型処理システムは、
図5を参照して説明した流動床炉1と、流動床炉1から排出された熱分解ガスから分解油を回収する処理装置2を備えている。
【0068】
処理装置2は、熱分解ガスから分解油を回収する油回収部16と、油回収部16によって回収された分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部60を備えている。本実施形態では、
図5に示す物理的分離部15(固気分離装置18および洗浄集塵装置25)は設けられていない。油回収部16および化学的分離部60は、
図3に示す実施形態における油回収部16および化学的分離部60と同じ構成を有しているので、その重複する説明を省略する。
【0069】
図7は、流動床炉を利用した熱分解型処理システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図5および
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図7に示すように、熱分解型処理システムは、
図5を参照して説明した流動床炉1と、流動床炉1から排出された熱分解ガスから分解油を回収する処理装置2を備えている。
【0070】
処理装置2は、
図2を参照して説明した物理的分離部15と、
図3を参照して説明した化学的分離部60の両方を備えている。すなわち、処理装置2は、熱分解炉6内で廃プラスチックを熱分解することにより発生した熱分解ガスから粒子を物理的に除去する物理的分離部15と、粒子が除去された熱分解ガスから分解油を回収する油回収部16と、油回収部16によって回収された分解油から不純物を化学的に除去する化学的分離部60を備えている。
【0071】
化学的分離部60は、物理的分離部15の下流側に配置される。物理的分離部15は、熱分解ガスから粒子などの不純物を除去し、その後、化学的分離部60は、熱分解ガスから回収された分解油から水溶性粉体、塩素などの不純物を除去する。物理的分離部15および化学的分離部60の両方を備えた処理装置2は、粒子、水溶性物質、および塩素などの不純物を分解油から十分に除去することができる。結果として、熱分解ガスから回収された分解油に含まれる不純物の量を著しく低減できる。
【0072】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 流動床炉
2 処理装置
6 熱分解炉
7 媒体再生炉
10 仕切壁
15 物理的分離部
16 油回収部
18 固気分離装置
19 粒子通路構造体
25 洗浄集塵装置
27 ベンチュリ管
28 洗浄媒体吐出ノズル
29 サイクロン回収器
35 油スクラバ
38 分解油貯留槽
40 油ポンプ
43 油通路構造体
45 重質油槽
46 液面センサ
47 開閉弁
50 水スクラバ
51 油水分離器
60 化学的分離部
61 水供給ライン
64 油水ミキサー
66 油水分離装置