(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023324
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
E02F9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128742
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】粂内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲也
(57)【要約】
【課題】電源回路から発生するノイズの空気中への放射を抑制する。
【解決手段】本発明に係る車作業用車両1は、油圧駆動される作業装置12、13、電動モータによって駆動される油圧ポンプ、電動モータに電力を供給する電源31および電源回路30、並びにこれらを支持する本体10を備え、第1固定部品50を本体10に固定する第1固定機構48は、第1導通体58と、第1導通体58と本体10とを電気的に導通させる第1導通部材51と、第1導通体58と第1固定部品50とを電気的に導通させる第2導通部材52とを有して、本体10と第1固定部品50とが第1導通体58、第1導通部材51、および第2導通部材52を介して電気的に導通して同電位に構成されており、本体10は、電源回路30のグラウンド極33と電気的に導通して同電位に構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動される作業装置、電動モータによって駆動される油圧ポンプ、前記電動モータに電力を供給する電源および電源回路、並びにこれらを支持する本体を備える作業用車両であって、
前記本体に固定される複数の固定部品を備え、
前記固定部品のうちの第1固定部品を前記本体に固定する第1固定機構は、第1導通体と、前記第1導通体と前記本体とを電気的に導通させる第1導通部材と、前記第1導通体と前記第1固定部品とを電気的に導通させる第2導通部材とを有して、前記本体と前記第1固定部品とが前記第1導通体、前記第1導通部材、および前記第2導通部材を介して電気的に導通して同電位となるように構成されており、
前記本体は、前記電源回路のグラウンド極と電気的に導通して同電位となるように構成されていること
を特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記第1固定部品は、外面が塗装されており、
前記第1固定機構は、前記第1固定部品の所定部位に設けられた第1被固定部に対して前記第1導通体としての第1導通プレートを直接もしくは間に部材を介して当接させた状態で、前記第1導通プレートおよび前記第1被固定部に連通形成された第1挿通孔に挿通されて前記本体に螺合される前記第1導通部材としての第1ボルト、および前記第1導通プレートに形成された第2挿通孔に挿通されて前記第1被固定部に螺合される前記第2導通部材としての第2ボルトを有して、前記第1固定部品が前記本体に固定された構成を備えていること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記第1導通プレートは、全面がめっきされた構成を備えていること
を特徴とする請求項2に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記作業装置の操作を行う操縦室をさらに備え、
前記操縦室は、床部として構成される前記本体の前部に立設される一つもしくは複数のフロントポールを有し、
前記第1固定部品は、前記フロントポールであること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記固定部品のうちの第2固定部品を前記本体に固定する第2固定機構は、第2導通体と、前記第2導通体と前記本体とを電気的に導通させる第3導通部材と、前記第2導通体と前記第2固定部品とを電気的に導通させる第4導通部材とを有して、前記本体と前記第2固定部品とが前記第2導通体、前記第3導通部材、および前記第4導通部材を介して電気的に導通して同電位となるように構成されていること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の作業用車両。
【請求項6】
前記第2固定部品は、外面が塗装されており、
前記第2固定機構は、前記第2固定部品の所定部位に設けられた第2被固定部に対して前記第2導通体としての第2導通プレートを直接もしくは間に部材を介して当接させた状態で、前記第2導通プレートおよび前記第2被固定部に連通形成された第3挿通孔に挿通されて前記本体に螺合される前記第3導通部材としての第3ボルト、および前記第2導通プレートに形成された第4挿通孔に挿通されて前記第2被固定部に螺合される前記第4導通部材としての第4ボルトを有して、前記第2固定部品が前記本体に固定された構成を備えていること
を特徴とする請求項5に記載の作業用車両。
【請求項7】
前記第2導通プレートは、全面がめっきされると共にさらにそのめっきの上から塗装された構成を備えていること
を特徴とする請求項6に記載の作業用車両。
【請求項8】
前記作業装置の操作を行う操縦室をさらに備え、
前記操縦室は、前記本体の後部に立設される一つもしくは複数のリアポールを有し、
前記第2固定部品は、前記リアポールであること
を特徴とする請求項6または請求項7に記載の作業用車両。
【請求項9】
前記操縦室は、ランプが配設されており、少なくとも一つの前記フロントポールの内部に前記ランプに電力を供給する電源線が配線されていること
を特徴とする請求項4に記載の作業用車両。
【請求項10】
前記第1固定機構は、前記第1導通プレートが前記床部に敷設される樹脂マットによって露出しない状態で覆われた構成を備えていること
を特徴とする請求項4または請求項9に記載の作業用車両。
【請求項11】
前記本体は、外面が塗装されており、且つ、前記第1ボルトが螺合されるネジ部がリタップ処理による無塗装の状態に構成されていること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業用車両。
【請求項12】
前記第2導通プレートは、外面が塗装されており、且つ、前記第3挿通孔の開口部周縁領域および前記第4挿通孔の開口部周縁領域がマスキング処理による無塗装の状態に構成されていること
を特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の作業用車両。
【請求項13】
前記電源が搭載される機器室をさらに備え、
前記機器室は、開閉を行うカバーと、前記カバーに設けられるストライカーと、前記本体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックとを有すると共に、前記カバーと前記ストライカーとが電気的に導通しない構成もしくは前記本体と前記フックとが電気的に導通しない構成の一方または両方を備え、且つ、前記カバーと前記本体とが電気的に導通して同電位となるようにこれらを接続する導通ケーブルを有する構成であること
を特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって駆動される油圧ポンプおよび当該電動モータに電力を供給する電源を備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クローラ、タイヤ等を有する走行装置と、油圧駆動される作業装置とを備えて構成される作業用車両として、エクスカベータ、ローダ、キャリア等が知られている。
【0003】
昨今、作業装置等に圧油を供給する油圧ポンプを、電池を電源とする電動モータによって駆動する作業用車両が開発されている(特許文献1:特許第6463537号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に例示されるような電動モータで油圧ポンプが駆動される作業用車両には、電動モータに電力を供給する電源および電源回路が搭載されている。ここで、本願発明者が当該電動モータ駆動の作業用車両について研究を行ったところ、車両の構造によっては、電源回路を主たる発生源とするノイズ(特定周波数帯の電磁波)が空気中に大きく放射されてしまう場合があることを究明した。当該ノイズは、通信等に対する障害の原因となるため、その抑制が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、電動モータで油圧ポンプが駆動される構成を備え、電源回路を主たる発生源とするノイズの空気中への放射を抑制することが可能な作業用車両を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る作業用車両は、油圧駆動される作業装置、電動モータによって駆動される油圧ポンプ、前記電動モータに電力を供給する電源および電源回路、並びにこれらを支持する本体を備える作業用車両であって、前記本体に固定される複数の固定部品を備え、前記固定部品のうちの第1固定部品を前記本体に固定する第1固定機構は、第1導通体と、前記第1導通体と前記本体とを電気的に導通させる第1導通部材と、前記第1導通体と前記第1固定部品とを電気的に導通させる第2導通部材とを有して、前記本体と前記第1固定部品とが前記第1導通体、前記第1導通部材、および前記第2導通部材を介して電気的に導通して同電位となるように構成されており、前記本体は、前記電源回路のグラウンド極と電気的に導通して同電位となるように構成されていることを要件とする。
【0009】
特に、前記作業用車両は、油圧駆動される作業装置、前記作業装置の操作を行う操縦室、電動モータによって駆動される油圧ポンプ、前記電動モータに電力を供給する電源および電源回路、並びにこれらを支持する本体を備える作業用車両であって、前記操縦室は、床部として構成される前記本体の前部に立設される一つもしくは複数のフロントポール(第1固定部品)と、前記本体の後部に立設される一つもしくは複数のリアポール(第2固定部品)と、前記フロントポールおよび前記リアポールに支持されるルーフ部と、を有する開放型キャノピーとして構成されており、前記フロントポールは、外面が塗装されており、且つ、下端部に設けられたフロントフランジ(第1被固定部)の上に全面がめっきされた第1導通プレート(第1導通体)を載置した状態で、前記第1導通プレートおよび前記フロントフランジに連通形成された第1挿通孔に挿通されて前記本体に螺合される第1ボルト(第1導通部材)、および前記第1導通プレートに形成された第2挿通孔に挿通されて前記フロントフランジに螺合される第2ボルト(第2導通部材)を備えて前記本体に固定されており、前記フロントポールが前記本体に固定される固定機構(第1固定機構)は、前記本体と前記フロントポールとが前記第1導通プレート、前記第1ボルト、および前記第2ボルトを介して電気的に導通して同電位となるように構成されており、且つ、少なくとも前記第1導通プレートが前記床部に敷設される樹脂マットによって露出しない状態で覆われており、前記リアポールは、外面が塗装されており、且つ、下端部に設けられたリアフランジ(第2被固定部)の上に全面がめっきされると共にさらにそのめっきの上から塗装された第2導通プレート(第2導通体)を載置した状態で、前記第2導通プレートおよび前記リアフランジに連通形成された第3挿通孔に挿通されて前記本体に螺合される第3ボルト(第3導通部材)、および前記第2導通プレートに形成された第4挿通孔に挿通されて前記リアフランジに螺合される第4ボルト(第4導通部材)を備えて前記本体に固定されており、前記リアポールが前記本体に固定される固定機構(第2固定機構)は、前記第2導通プレートにおける前記第3ボルトのヘッドが直接もしくは座金を介して当接する領域および前記第4ボルトのヘッドが直接もしくは座金を介して当接する領域がめっき面を露出させた状態に構成されることにより、前記本体と前記リアポールとが前記第2導通プレート、前記第3ボルト、および前記第4ボルトを介して電気的に導通して同電位となるように構成されており、前記本体は、前記電源回路のグラウンド極と電気的に導通して同電位となるように構成されていることが好適である。また、前記操縦室は、ランプが配設されており、少なくとも一つの前記フロントポールもしくは前記リアポールの内部に前記ランプに電力を供給する電源線が配線されていることが好適である。また、前記本体は、外面が塗装されており、且つ、前記第1ボルトが螺合されるネジ部および前記第3ボルトが螺合されるネジ部がリタップ処理による無塗装の状態に構成されていることが好適である。また、前記第2導通プレート第2導通プレートは、外面が塗装されており、且つ、前記第3挿通孔の開口部周縁領域および前記第4挿通孔の開口部周縁領域がマスキング処理による無塗装の状態に構成されていることが好適である。
【0010】
また、前記作業用車両は、前記電源が搭載される機器室をさらに備え、前記機器室は、開閉を行うカバーと、前記カバーに設けられるストライカーと、前記本体に設けられて前記ストライカーが係脱されるフックとを有すると共に、前記カバーと前記ストライカーとが電気的に導通しない構成もしくは前記本体と前記フックとが電気的に導通しない構成の一方または両方を備え、且つ、前記カバーと前記本体とが電気的に導通して同電位となるようにこれらを接続する導通ケーブルを有する構成であることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動モータで油圧ポンプが駆動される構成を備える作業用車両において、電源回路を主たる発生源とするノイズの空気中への放射を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る作業用車両の例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の作業用車両のカバーの開閉状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の作業用車両の本体、フロントポール、リアポールの例を示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図1の作業用車両の本体、フロントポール、リアポールの例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】
図9は、
図1の作業用車両のカバーの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す前部左側からの斜視図(概略図)であり、
図2は、後部右側からの斜視図(概略図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。ここでは、油圧モータ等により駆動されるクローラを備えて走行するエクスカベータを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0015】
作業用車両1は、
図1および
図2に示すように、左右一対のクローラ19を有する走行装置11と、油圧駆動される作業装置(一例として、ショベル装置12、ブレード装置13等)と、走行装置11および作業装置12、13の操作を行う操縦室14と、電動モータによって駆動されて圧油を供給する油圧ポンプ(いずれも不図示)と、電動モータに電力を供給する電源31および電源回路30が搭載される機器室20と、を備えて構成されている。ここで、ショベル装置12、操縦室14、機器室20等の構成は、本体10によって支持されている。一例として、本実施形態に係る本体10は、リブブロックおよびこれに連結されるフロアフレーム等を備えて構成されているが、これに限定されるものではない。
【0016】
ここで、電動モータに電力を供給する構成について説明する。具体的に、
図4の回路図(概略図)に示すように、電源31を一要素とする電源回路30として構成されている。本実施形態においては、電源31および当該電源31から出力される直流電流の電圧を変換するDC-DCコンバータ36、その他図示しない電気回路等を備える電源パック35として機器室20内に搭載されている。当該DC-DCコンバータ36から出力される直流電流によって、作業用車両1における24V系統の機器38や12V系統の機器39等が駆動される。なお、本実施形態に係る電源31には、一例としてリチウムイオン蓄電池が用いられており、充電用のインバータ37を介して、図示しない外部電源(例えば、交流100Vの商用電源等)に接続可能に構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、その他の蓄電池、あるいは燃料電池等を用いてもよい。なお、当該電源31とは別に、補助電源32として鉛蓄電池が搭載されており、起動時電力の供給等に用いられる。ただし、補助電源32に関しても、これに限定されるものではない。
【0017】
次に、操縦室14は、作業者Pが搭乗して着座するシート44や、走行装置11等の作動を操作するための各種の操作レバー25、操作スイッチおよび種々の車両情報を表示するディスプレイ装置29等を備えて構成されている。本実施形態に係る操縦室14は、開放型のキャノピーである。ただし、操縦室14を密閉型のキャビンとして構成することも可能である(不図示)。
【0018】
次に、作業装置について説明する。先ず、ショベル装置12は、本体10の前部にブームブラケット(不図示)を介して上下揺動可能に枢結されるブーム15およびアーム16を備えている(なお、ブームブラケットを備えない構成としてもよい)。さらに、アーム16の先端部に上下揺動可能に枢結されるアタッチメント(例えば、バケット等)17を備えている。これらのブーム15、アーム16、アタッチメント17は、それぞれ、油圧シリンダ21、22、23によって駆動される。
【0019】
一方、ブレード装置13は、走行装置11の前部に上下揺動可能に枢結されるブレード18を備えている。このブレード18は、油圧シリンダ24によって駆動される。
【0020】
上記の各油圧シリンダ21、22、23、24の駆動を行うための機構として、駆動源(具体的には、電動モータ)によって駆動される油圧ポンプ、コントロールバルブ等を備えている(不図示)。なお、作業用車両1における走行および作業のためのその他の機構(駆動機構、制御機構等)については、公知の作業用車両(ここでは、エクスカベータ)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0021】
ところで、前述の通り、電源31を備えて構成される電源回路30から電気的なノイズが発生する場合があり、本願発明者は当該ノイズが空気中に放射される課題に関して、その現象と対策の研究を行った。その結果、特に電源回路30にDC-DCコンバータ36が組込まれている場合に、より大きなノイズが生じ得ることを究明した。
【0022】
ここで、作業用車両1が、本体10に固定される複数の固定部品を備える構成において、構造によって大きなノイズが生じ得る場合があることを究明した。より詳しくは、当該固定部品が本体10に対して電気的に導通しておらず、電位差のある状態となっている場合、さらには、本体10が電源回路30のグラウンド極33に対して電気的に導通しておらず、電位差のある状態となっている場合に、電源回路30から放射されたノイズが当該固定部品に近接配置される電源線等を伝搬しつつ、当該固定部品から空気中により大きく放射されることを究明した。なお、本実施形態に係る固定部品は、後述するフロントポール50、リアポール60、あるいは、本体10の前面、側面、後面、上面および底面等を覆う外装(カバー類)や、各種の操作レバー25、操作スイッチ、およびディスプレイ装置29等のケース等に例示される。
【0023】
特に、ルーフ部27に設けられるランプ43に電力を供給する電源線がフロントポール50の内部に配線されている場合(もしくは、リアポール60の内部に配線されている場合であっても同様)に、より大きなノイズが生じ得ることを究明した。その原因として、発生源である電源回路30から放射されたノイズが当該電源線等を伝搬しつつ、電気的に導通していない状態(電源回路30のグラウンド極33に対し、導通しておらず、電位差のある状態)の車両構成要素(この場合は、フロントポール50やリアポール60)から空気中に放射されていることを究明した。
【0024】
また、電源31から電動モータへ電力を供給する電源線が機器室20の内部に配線されている場合に、より大きなノイズが生じ得ることを究明した。その原因の一例として、発生源である電源回路30から放射されたノイズが当該電源線等を伝搬しつつ、電気的に導通していない状態(電源回路30のグラウンド極33に対し、導通しておらず、電位差のある状態)の車両構成要素(この場合は、機器室20の開口部開閉用のカバー40)から空気中に放射されていることを究明した。
【0025】
以下、これらの課題に対して解決を図る構成について説明する。前述の通り、本実施形態に係る作業用車両1は、本体10に固定される複数の固定部品を備えている。ここで、当該固定部品のうち、第1固定部品としてフロントポール50(後述)を例に挙げ、第2固定部品としてリアポール60(後述)を例に挙げる。ただし、これらの構成に限定されるものではない。
【0026】
先ず、本実施形態に係る操縦室14の概略構成から説明する。当該操縦室14は、本体10の前部上面が床部の主要部(点検蓋等を除く)を構成している。また、当該床部に立設される一本もしくは複数本(一例として、二本)のフロントポール50と、本体10の後部上面に立設される一本もしくは複数本(一例として、二本)のリアポール60と、フロントポール50およびリアポール60に支持されるルーフ部27と、を備えている。ここで、ルーフ部27には、ランプ(一例として、LEDランプ)43が配設されており、左右いずれか一方(もしくは両方)のフロントポール50に電力を供給する電源線が配線されている(なお、リアポール60に電源線が配線される構成としてもよい)。
【0027】
前述の通り、操縦室14は、開放型のキャノピーとして構成されている。そのため、外部に露出して雨水等にさらされる構成部材は、腐食等を防止するための塗装が必要となる。具体的に、フロントポール50およびリアポール60は、外面が塗装されている。塗装方法の一例として、下地処理を行った後、カチオン電着塗装を行い、さらに上塗り塗装を行っている。なお、このようにして外面に形成される塗膜は、電気的に導通しない性質を持つ。
【0028】
次に、フロントポール50が本体10に固定される固定機構(以下、「第1固定機構」と称する)48について説明する。
図5および
図6(
図5におけるVI-VI線断面図)に示すように、第1固定機構48において、フロントポール50は、所定部位(具体的には、下端部)に設けられた第1被固定部としてのフロントフランジ50aに対して導電性を有する第1導通体としての第1導通プレート58を直接(もしくは間に部材を介してもよい)、当接(この場合は、載置)させた状態で本体10に固定されている。ここで、第1導通プレート58およびフロントフランジ50aに連通形成された第1挿通孔53に挿通されて本体10(具体的には、本体10に溶接されたナット10aのネジ部55)に螺合される第1導通部材としての第1ボルト51、および第1導通プレート58に形成された第2挿通孔54に挿通されてフロントフランジ50a(具体的には、フロントフランジ50aに形成されたネジ部56)に螺合される第2導通部材としての第2ボルト52が設けられている。これにより、フロントポール50が本体10に固定される第1固定機構48は、本体10とフロントポール50とが第1導通プレート58、第1ボルト51、および第2ボルト52を介して電気的に導通して同電位となるように構成されている。なお、左右に二箇所設けられる第1固定機構48は、基本構成が同一であるが、周辺の機構の配置や形状等との関係によって、適宜、形状等の構成を変更し得る。
【0029】
また、本実施形態に係る第1導通プレート58は、床部に敷設される樹脂マット28によって覆われ、露出しない状態となるように構成されている。したがって、第1導通プレート58は直接、雨水等にさらされることのない非露出状態とすることができるため、外面の塗装を省略することができる。一例として、第1導通プレート58は、板状やブロック状等の金属材料(なお、強度的に許容される場合には樹脂材料も採用し得る)を用いて全面にめっき(例えば、亜鉛めっき、クロムめっき、ニッケルめっき、錫めっき、銀めっき、金めっき等の導電性を有するめっき)がされた構成を備えている。この構成によれば、製造工程の簡素化および塗料のコスト削減を図ることが可能となる。
【0030】
次に、リアポール60が本体10に固定される固定機構(以下、「第2固定機構」と称する)49について説明する。
図7および
図8(
図7におけるVIII-VIII線断面図)に示すように、第2固定機構49において、リアポール60は、所定部位(具体的には、下端部)に設けられた第2被固定部としてのリアフランジ60aに対して導電性を有する第2導通体としての第2導通プレート68を直接(もしくは間に部材を介してもよい)、当接(この場合は、載置)させた状態で本体10に固定されている。ここで、第2導通プレート68およびリアフランジ60aに連通形成された第3挿通孔63に挿通されて本体10(具体的には、本体10に形成されたネジ部65)に螺合される第3導通部材としての第3ボルト61、および第2導通プレート68に形成された第4挿通孔64に挿通されてリアフランジ60a(具体的には、リアフランジ60aに形成されたネジ部66)に螺合される第4導通部材としての第4ボルト62が設けられている。これにより、リアポール60が本体10に固定される第2固定機構49は、本体10とリアポール60とが第2導通プレート68、第3ボルト61、および第4ボルト62を介して電気的に導通して同電位となるように構成されている。なお、左右に二箇所設けられる第2固定機構49は、基本構成が同一であるが、周辺の機構の配置や形状等との関係によって、適宜、形状等の構成を変更し得る。
【0031】
また、本実施形態に係る第2導通プレート68は、一部が外部に露出する状態に構成されている。すなわち、当該露出部が、直接、雨水等にさらされる状態となるため、外面の塗装が必要となる。一例として、第2導通プレート68は、板状やブロック状等の金属材料(なお、強度的に許容される場合には樹脂材料も採用し得る)を用いて全面にめっき(例えば、亜鉛めっき、クロムめっき、ニッケルめっき、錫めっき、銀めっき、金めっき等の導電性を有するめっき)がされると共にさらにそのめっきの上から塗装がされた構成を備えている。具体的に、第2導通プレート68の外面全体に対して、下地処理を行った後、めっき処理を行い、上塗り塗装を行っている。ここで、外面に形成される塗膜は、電気的に導通しない性質を持つ。
【0032】
しかしながら、第2導通プレート68において、外面全体が塗装された状態のままでは、上記で説明した電気的導通がとれない状態となる。そこで、本実施形態に係る第2導通プレート68は、第3ボルト61のヘッドが直接もしくは座金を介して当接する領域および第4ボルト62のヘッドが直接もしくは座金を介して当接する領域がめっき面を露出させた状態に構成されている。具体的には、第3挿通孔63の開口部周縁領域および第4挿通孔64の開口部周縁領域がマスキング処理による無塗装状態とすることによって、当該領域においてめっき面が露出する状態となるようにして、上記の電気的導通を確保している。
【0033】
次に、本体10について説明する。本体10は、一部が外部に露出する状態に構成されている。すなわち、当該露出部が、直接、雨水等にさらされる状態となるため、外面の塗装が必要となる。なお、塗装工程の効率化のために、露出する一部のみではなく外面全体が塗装されている。具体的に、前述のフロントポール50およびリアポール60と同様に、本体10の外面全体に対して、下地処理を行った後、カチオン電着塗装を行い、さらに上塗り塗装を行っている。ここで、外面に形成される塗膜は、電気的に導通しない性質を持つ。
【0034】
しかしながら、本体10において、外面全体が塗装された状態のままでは、上記で説明した電気的導通がとれない状態となる。そこで、本実施形態に係る本体10は、第1ボルト51が螺合されるネジ部55および第3ボルト61が螺合されるネジ部65をリタップ処理(塗装後に、当該ネジ部にタップ加工を行い、塗装を削除して金属面を露出させる処理)による無塗装の状態にして、上記の電気的導通を確保している。
【0035】
また、
図4に示すように、本体10は、電源回路30のグラウンド極33と電気的に導通して同電位となるように構成されている。本実施形態においては、補助電源(具体的には、鉛蓄電池)32のマイナス極が、電源回路30のグラウンド極33として設定されている。さらに、本体10と補助電源32のマイナス極とが導通部材(導通ケーブルもしくは導通ボルト等)34を介して電気的に接続されている。ただし、これらに限定されるものではない。
【0036】
本実施形態に係る作業用車両1は、以上の構成を備えることによって、フロントポール50およびリアポール60と、本体10と、電源回路30のグラウンド極33とが電気的に導通する構成を実現することができる。その結果、電源回路30から発生したノイズが電源線等を伝搬しつつ、電気的に導通していない状態(電源回路30のグラウンド極33に対し、導通しておらず、電位差のある状態)の車両構成要素(この場合は、フロントポール50やリアポール60)から空気中に多大なノイズとして放射される現象の抑制(すなわち、放射量の低減)を図ることができる。
【0037】
続いて、本実施形態に係る機器室20について説明する。本実施形態において、油圧ポンプ駆動用の電動モータに電力を供給する電源31(前述の電源パック35内に配設されている)および電源回路30は、作業用車両1の後部に設けられる機器室20内に配置されている。
図3、
図9に示すように、機器室20には、当該機器のメンテナンス作業等を行うための開口部41、および開口部41を開閉するカバー40が設けられている。一例として、機器室20(具体的には、壁部や梁等の構造部材)およびカバー40は、金属材料を用いて構成されている。ただし、この構成に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料を用いてカバー40を構成してもよい。
【0038】
ここで、カバー40の開閉機構26は、その具体的な構成として、
図10に示すように、カバー40の上部40aを本体10に係止する係止部70と、カバー40の下部40bを本体10にロックするロック部80とを備えて構成されている。
【0039】
ロック部80の構成例として、ストライカー84がカバー40に設けられており、ストライカー84が係脱されるフック86およびストライカー84がフック86に係合されてロックされた状態を解除するロック解除部88が機器室20(具体的には、開口部41近傍)に設けられている。なお、フック86およびストライカー84には公知の機構を用いることができ、ストライカー84がフック86内の所定位置に係合されたときにロック状態となる。一方、当該フック86の解除部に連結されるロック解除部88を作動(本実施形態においては、引動)することによってロックの解除が行われる機構となっている。
【0040】
一方、係止部70の構成例として、
図11(
図10におけるXI部拡大図)に示すように、カバー40の上部40aに設けられて上向きに開口する断面U字状、断面V字状もしくは断面円弧状の係止溝72と、対応する本体10の所定位置(本実施形態においては、開口部41の上縁部)に設けられて下向きに突起して係止溝72と係止される係止突起74と、を有している。
【0041】
具体的に、係止溝72は本体10の左右方向に連続する溝状に形成されている。一方、係止突起74は本体10の左右方向に連続する板状に形成されている。ただし、係止突起74は、連続的な形状に限定されるものではなく、断続的な形状(板状、円錐状等)としてもよい(不図示)。
【0042】
上記の構成によれば、ロック解除状態(ストライカー84がフック86から外れた状態)において、係止溝72に係止突起74を係止させた状態で、カバー40が本体10に対して回動(すなわち、開閉)を行うことができる。さらに、カバー40を所定角度、上方へ回動させた状態で後方(角度によっては後部上方もしくは後部下方の場合もある)へ引くことによって、カバー40を本体10(具体的には、機器室20)から分離(すなわち、取外し)を行うことができる。なお、本実施形態においては、いずれも金属材料等からなる係止溝72と係止突起74とが直接、摺接して摩耗することを防止するため、ゴムもしくはエラストマー等の材料からなり弾性変形可能な保護キャップ76が係止突起74の先端部等に取付けられている。
【0043】
このように、係止部70は、ヒンジ、蝶番等が無く、カバー40を本体10から容易に分離させる(取外す)ことができる。これにより、カバー40を分離させた(取外した)状態で機器室20の開口部41を露出させることができる。したがって、カバー40によって遮られない広い作業スペースが確保できるため、機器室20の内部に配置された機器に対するメンテナンス作業を行う際に、作業性を格段に向上させることが可能となる。なお、係止部70における係止溝72は、本体10の左右方向に連続する溝状に形成されているため、本発明によれば、雨樋として雨水を係止溝72の左右方向の端部へ通流させて、雨水を排出させる効果をも得られる。
【0044】
なお、係止部70の変形例として、上記の構成とは逆に、カバー40の上部40aに下向きに突起する係止突起を備え、対応する機器室20の所定位置(開口部41の上縁部)に上向きに開口する断面U字状、断面V字状もしくは断面円弧状の係止溝を備え、係止突起を係止溝に係止させて回動させる構成としてもよい(不図示)。
【0045】
ここで、本実施形態に特徴的な構成として、カバー40と本体10とが電気的に導通して同電位となるように両者を接続する導通ケーブル42が設けられている。本願発明者は、この構成を備えることにより、前述のフロントポール50およびリアポール60からノイズが空気中に放射される課題と同様にして、カバー40からノイズが空気中に放射される課題の解決を図ることができると考えた。しかしながら、実際に試験を行った結果、カバー40の場合には、フロントポール50およびリアポール60の場合と異なり、ノイズ放射が抑制されていないことが判明した。
【0046】
この結果に対して、本願発明者がさらに研究を行ったところ、カバー40をロックするロック部80が導通状態にある場合、すなわち、ストライカー84およびフック86を介して電気的に導通可能な状態にある場合に、上記の導通ケーブル42を追加的に設けると、カバー40と本体10との導通箇所が二箇所となって電気的なループ回路が形成されてしまい、カバー40からのノイズ放射を抑制する効果が得られない原因となることを究明した。
【0047】
そこで、本実施形態に係る作業用車両1においては、カバー40とストライカー84とが電気的に導通しない構成としている。具体的に、カバー40に取付けられてストライカー84を支持するストライカーブラケット82に樹脂塗料等を用いた絶縁塗装を施すことによって、カバー40とストライカー84とが電気的に導通しない状態となるように構成している。ただし、これに限定されるものではなく、変形例として、カバー40とストライカー84とが電気的に導通しない状態となる構成に代えて、もしくは当該構成と共に、本体10とフック86とが電気的に導通しない状態となる構成を備えていてもよい(不図示)。
【0048】
上記の構成によれば、電気的なループ回路が生じることを防ぎつつ、導通ケーブル42によりカバー40と本体10とが電気的に導通して同電位となる構成によって得られるノイズ放射抑制効果を実効性あるものとしている。
【0049】
以上説明した通り、本発明によれば、電動モータで油圧ポンプが駆動される構成を備える作業用車両において、電源回路を主たる発生源とするノイズの空気中への放射を抑制することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、作業用車両としてエクスカベータを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、ローダ、キャリア等の他の作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 作業用車両
10 本体
14 操縦室
20 機器室
27 ルーフ部
28 樹脂マット
30 電源回路
31 電源
32 補助電源
33 グラウンド極
40 カバー
42 導通ケーブル
43 ランプ
48 第1固定機構
49 第2固定機構
50 第1固定部品(フロントポール)
50a 第1被固定部(フロントフランジ)
51 第1導通部材(第1ボルト)
52 第2導通部材(第2ボルト)
53 第1挿通孔
54 第2挿通孔
58 第1導通体(第1導通プレート)
60 第2固定部品(リアポール)
60a 第2被固定部(リアフランジ)
61 第3導通部材(第3ボルト)
62 第4導通部材(第4ボルト)
63 第3挿通孔
64 第4挿通孔
68 第2導通体(第2導通プレート)
84 ストライカー
86 フック