(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023335
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】異形中空粒子及び該異形中空粒子の用途
(51)【国際特許分類】
C01B 33/24 20060101AFI20230209BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230209BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230209BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230209BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230209BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230209BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230209BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230209BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20230209BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230209BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230209BHJP
C08K 7/26 20060101ALI20230209BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20230209BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230209BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C01B33/24
A61Q1/00
A61K8/25
A61K8/02
A61K47/02
A61K9/14
C09D201/00
C09D7/61
B01J20/10 A
B01J20/28 Z
C08L101/00
C08K7/26
B01J20/283
B01J20/281 G
B01J20/281 X
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128770
(22)【出願日】2021-08-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Span
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 健
【テーマコード(参考)】
2H042
4C076
4C083
4G066
4G073
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA15
2H042BA16
4C076AA30
4C076AA32
4C076BB31
4C076DD27
4C076DD27A
4C076FF02
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4C083DD17
4C083EE07
4G066AA30B
4G066BA09
4G066BA14
4G066BA20
4G066BA38
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4G066DA07
4G066EA01
4G073BA10
4G073BA11
4G073BA81
4G073BB71
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4G073BD30
4G073CC01
4G073CC08
4G073FA11
4G073FB05
4G073FB09
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4G073FC18
4G073GA11
4G073GA13
4G073GA20
4G073GA33
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4G073GB02
4G073GB09
4G073UB26
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4G073UB32
4G073UB39
4G073UB60
4J002BB241
4J002BG031
4J002CF001
4J002CF281
4J002CK021
4J002DJ006
4J002FA096
4J002FD016
4J002GC00
4J002GH00
4J038FA201
4J038HA456
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA21
4J038PA17
(57)【要約】
【課題】吸油性、皮膚への付着性及び光散乱性に優れる異形中空粒子を提供する。
【解決手段】シェルと、該シェルで囲まれた中空部とを有する異形中空粒子であって、該シェルが、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有し、該シェルが、平均孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔を有し、該マクロ孔の平均個数が、0.3個超5個未満である、異形中空粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、前記シェルで囲まれた中空部とを有する異形中空粒子であって、
前記シェルが、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有し、
前記シェルが、平均孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔を有し、
前記マクロ孔の平均個数が、0.3個超5個未満である、異形中空粒子。
【請求項2】
球換算体積平均粒子径が、0.5μm~200μmである、請求項1に記載の異形中空粒子。
【請求項3】
前記異形中空粒子の外表面が平滑である、請求項1又は2に記載の異形中空粒子。
【請求項4】
前記シェルの内部が多孔質構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
【請求項5】
平均円形度が、0.30~0.93である、請求項1~4のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
【請求項6】
光散乱指数が、0.35~0.80である、請求項1~5のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、外用剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、コーティング材料。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、ブロッキング防止剤。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、光拡散フィルム。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、薬物担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形中空粒子及び該異形中空粒子の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料、吸着材等の分野において、シリカ粒子又はケイ酸塩粒子は、油脂、石油、溶剤等の様々な物質を吸油保持する粒子として、幅広い用途に使用されている。
【0003】
シリカ粒子としては、粉砕方法によって製造された不定形シリカ粒子、シード重合法又はゾル-ゲル法によって製造された球状シリカ粒子等が知られている。
【0004】
ケイ酸塩粒子としては、水熱合成法又はメカノケミカル反応法によって製造された多孔質ケイ酸塩粒子等が知られている。
【0005】
しかし、これらのシリカ粒子又はケイ酸塩粒子は、何れも球状粒子又は球状に近い不定形形状の粒子であるため、表面積が小さく、吸着能力が低かった。それ故、これらのシリカ粒子やケイ酸塩粒子を化粧料等に配合した場合、吸着できなかった皮脂によって化粧崩れが生じるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、カルシウムを含むコア粒子の表面に、非晶質のシリカからなるコーティング層を有するコア-シェル粒子を形成する第1工程と、該コア-シェル粒子の該コーティング層を、水熱法により、主にケイ酸カルシウムで構成された殻とする第2工程と、該コア-シェル粒子の該殻の部分を残しつつ、該コア-シェル粒子の該コア粒子の部分を除去する第3工程とによって製造されるナノ中空粒子が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、W/O/Wエマルションの界面析出反応によって製造される複数のマクロ孔を有するケイ素系の殻から構成される中空粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/073475号
【特許文献2】特開2007-230794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、中空構造を形成するためにコア粒子の部分を除去する工程を要するために生産性に劣る。また、特許文献1に記載の中空粒子は殻に形成される細孔の平均径が1nm以下と極めて小さいため、吸着させた成分の保持能力に劣る。さらに、特許文献1の中空粒子は光散乱性が十分ではないため、しわ、しみ等の肌の欠点を補正するソフトフォーカス効果に劣り、且つ、吸油性が十分ではないため、改善の余地がある。
【0010】
特許文献2に記載の中空粒子は粒子自体の形状が球状であるため、皮膚への付着性及び光散乱性に劣る。また、特許文献2の中空粒子は、吸油性が十分ではなく、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、吸油性、皮膚への付着性及び光散乱性に優れた異形中空粒子及び該異形中空粒子の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、形状が非球状である異形の中空粒子を使用し、粒子の表面に特定の大きさのマクロ孔を有する異形中空粒子を開発することに成功し、該異形中空粒子が上記課題を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0013】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
シェルと、前記シェルで囲まれた中空部とを有する異形中空粒子であって、
前記シェルが、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有し、
前記シェルが、平均孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔を有し、
前記マクロ孔の平均個数が、0.3個超5個未満である、異形中空粒子。
項2.
球換算体積平均粒子径が、0.5μm~200μmである、項1に記載の異形中空粒子。
項3.
前記異形中空粒子の外表面が平滑である、項1又は2に記載の異形中空粒子。
項4.
前記シェルの内部が多孔質構造である、項1~3のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
項5.
平均円形度が、0.30~0.93である、項1~4のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
項6.
光散乱指数が、0.35~0.80である、項1~5のいずれか一項に記載の異形中空粒子。
項7.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、外用剤。
項8.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、クロマトグラフィー用充填剤。
項9.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、コーティング材料。
項10.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、樹脂組成物。
項11.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、ブロッキング防止剤。
項12.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、光拡散フィルム。
項13.
項1~6のいずれか一項に記載の異形中空粒子を含む、薬物担体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異形中空粒子は、吸油性、皮膚への付着性及び光散乱性に優れる。特に本発明の異形中空粒子は、優れた吸油性、皮膚への付着性及び光散乱性を有することから、化粧料等に配合した場合、良好な吸油性を付与することができ、且つ、ソフトフォーカス効果の発現が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0017】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0019】
1.異形中空粒子
本発明の異形中空粒子は、以下の構成(i)~(iv)を備えている:
(i)シェルと、該シェルで囲まれた中空部とを有する;
(ii)該シェルが、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有する;
(iii)該シェルが、平均孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔を有する;及び
(iv)該マクロ孔の平均個数が、0.3個超5個未満である。
【0020】
本発明の異形中空粒子は、上記構成(i)~(iv)を備えていることにより、高い吸油性、優れた皮膚への付着性、高い光散乱性等の特性を有する。本発明の異形中空粒子は、これらの特性を有することから、化粧料等に配合した場合、良好な吸油性を付与することができ、且つ、ソフトフォーカス効果の発現が期待できる。
【0021】
以下、本発明の異形中空粒子を、単に「本発明」、「本発明の粒子」又は「異形中空粒子」と記載することもある。
【0022】
本明細書において、異形とは球状ではないこと(即ち、非球状)を意味し、異形中空粒子とは非球状中空粒子を意味する。
【0023】
本明細書において、異形中空粒子の外表面とは、シェルの外表面を意味する。また、本明細書において、異形中空粒子の外表面とは、シェルが有するマクロ孔を含まない異形中空粒子の表面であることが好ましい。
【0024】
<シェル及び中空部>
本発明の粒子は、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有するシェルと、該シェルで囲まれた中空部とを有している。本発明の粒子は、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含有するシェルで中空部が包囲された構造を有する異形中空粒子である。本発明の粒子は、粒子内部が空洞構造を有している。
【0025】
本発明において、シェルの内部は多孔質構造であることが好ましい。本明細書において、多孔質構造とは、多数の微細な細孔(直径1nm~50nm)がシェルの内部に存在しており、当該細孔を通じて粒子の中空部と外部とが連結されている状態を意味する。
【0026】
<アルカリ土類金属ケイ酸塩>
本発明において、シェルはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含有する。異形中空粒子のシェルにおけるアルカリ土類金属ケイ酸塩の含有量は、異形中空粒子のシェル100質量部に対して、好ましくは90~100質量部、より好ましくは95~100質量部、より一層好ましくは99~100質量部、特に好ましくは100質量部である。本発明において、シェルはアルカリ土類金属ケイ酸塩のみから構成されることが特に好ましい。
【0027】
本発明において、アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸ベリリウム及びケイ酸バリウムからなる群より選択される少なくとも一種である好ましい。本発明において、アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0028】
<マクロ孔>
本発明において、シェルは平均孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔を有する。本発明において、マクロ孔はシェルの外表面(即ち、異形中空粒子の外表面)に存在している。
【0029】
マクロ孔の平均孔径は、0.3μm超10μm以下、好ましくは0.5μm以上9.5μm以下、より好ましくは1.0μm以上9.0μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上8.5μm以下、更に好ましくは2.0μm以上8.0μm以下、特に好ましくは2.5μm以上7.5μm以下、最も好ましくは2.75μm以上7.0μm以下である。
【0030】
マクロ孔の平均孔径とは、各異形中空粒子の外表面に存在するマクロ孔の孔径の算術平均値を意味する。本発明において、異形中空粒子(本段落において「粒子」と表記)の外表面に存在するマクロ孔の平均孔径は、例えば、下記の測定方法により得ることができる。
[マクロ孔の平均孔径の測定方法]
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、300~10,000倍に拡大して粒子が均一に分散している部分を選び、粒子のSEM写真を撮影する。
(2)撮影したSEM写真から、粒子同士が重なり合っていないものを、孔の有無にかかわらず無作為に100個選び出す。
(3)選んだ100個の粒子それぞれに対して、「SEM Data Manager」を用いて、粒子の最長径と最短径とを測定し、その平均値[(最長径+最短径)/2]を各粒子の粒子径とする。そして、100個の粒子の粒子径の平均値を、粒子の平均粒子径とする。
(4)100個の粒子の中から、該平均粒子径の0.8~1.2倍の粒子径を有する粒子を孔の有無にかかわらず10個選ぶ。
(5)選んだ10個の粒子それぞれに対して、マクロ孔の直径を測定し、算術平均して平均値を算出する。その算術平均値をマクロ孔の平均孔径とする。
【0031】
上記[マクロ孔の平均孔径の測定方法]において、SEMの倍率は1,000倍が好ましい。
【0032】
マクロ孔の平均孔径の詳細な測定方法は、後述する実施例の項で説明する。
【0033】
本発明において、マクロ孔の平均個数は0.3個超5個未満である。本発明において、マクロ孔の平均個数は、0.35個、0.4個、0.45個、0.5個、0.55個、0.6個、0.65個、0.7個、0.75個、0.8個、0.85個、0.9個、0.95個、1.0個、1.1個、1.2個、1.5個、2.0個、2.5個、3.0個、4.0個、4.5個、4.8個の値をとり得る。本発明において、マクロ孔の平均個数は、より一層良好な光散乱性及びより一層優れた吸油性の観点から、好ましくは0.35個以上4個以下、より好ましくは0.4個以上3個以下、より一層好ましくは0.45個以上2個以下、更に好ましくは0.5個以上1.2個以下、特に好ましくは0.55個以上1.0個以下、最も好ましくは0.6個以上0.9個以下である。
【0034】
本発明において、異形中空粒子(本段落において「粒子」と表記)の外表面に存在するマクロ孔の平均個数は、例えば、下記の測定方法により得ることができる。
[マクロ孔の平均個数の測定方法]
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、300~10,000倍に拡大して粒子が均一に分散している部分を選び、粒子のSEM写真を撮影する。
(2)撮影したSEM写真から、粒子同士が重なり合っていないものを、孔の有無にかかわらず無作為に100個選び出す。
(3)選んだ100個の粒子それぞれに対して、最長径と最短径とを測定し、その平均値[(最長径+最短径)/2]を各粒子の粒子径とする。そして、100個の粒子の粒子径の平均値を、粒子の平均粒子径とする。
(4)100個の粒子の中から、該平均粒子径の0.8~1.2倍の粒子径を有する粒子を孔の有無にかかわらず10個選ぶ。
(5)選んだ10個の粒子それぞれに対して、外表面に存在する孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔の個数を数え、マクロ孔の総数を算出する。
(6)算出したマクロ孔の総数を10で割った値を、マクロ孔の平均個数とする。
【0035】
上記[マクロ孔の平均個数の測定方法]において、SEMの倍率は1,000倍が好ましい。
【0036】
マクロ孔の平均個数の詳細な測定方法は、後述する実施例の項で説明する。
【0037】
本発明の異形中空粒子は、外表面が平滑であることが好ましい。本発明の異形中空粒子の外表面が平滑である場合、粒子表面の摩擦抵抗が少なく、該異形中空粒子を化粧料等に配合した際に、触感がより一層向上する。
【0038】
本発明において、異形中空粒子の外表面が平滑であるとは、粒子の外表面に存在する凸部(例えば、高さ50nm~300nmの凸部)の個数の平均値を算出することによって評価する。本発明において、平滑度とは、当該個数の平均値を意味する。本発明において、平滑度は、好ましくは0個以上5個未満、より好ましくは0個以上3個以下、より一層好ましくは0個以上2個以下、特に好ましくは0個以上1個以下、最も好ましくは0個以上0.5個以下である。粒子の外表面の平滑度の詳細な測定方法は、後述する実施例の項で説明する。
【0039】
本発明において、異形中空粒子1個当たりのマクロ孔の個数は、好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より一層好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個である。本明細書において、マクロ孔の平均個数と上記異形中空粒子当たりのマクロ孔の個数とは、意味合いが異なるものである。
【0040】
<球換算体積平均粒子径>
異形中空粒子の球換算体積平均粒子径は、肌への高い付着性の観点から、好ましくは0.5μm~200μm、より好ましくは2.0μm~150μm、より一層好ましくは3.0μm~100μm、更に好ましくは4.0μm~50μm、特に好ましくは5.0μm~30μm、最も好ましくは6.0μm~20μmである。異形中空粒子の球換算体積平均粒子径とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる球換算体積平均粒子径を意味する。
【0041】
<平均円形度>
本発明において、均一性の高い反射光強度を有する観点から、平均円形度は、好ましくは0.30~0.93、より好ましくは0.40~0.90、より一層好ましくは0.50~0.85、特に好ましくは0.60~0.80である。本明細書において、平均円形度とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる平均円形度を意味する。
【0042】
<光散乱指数>
本発明において、均一性の高い反射光強度を有する観点から、光散乱指数は0.35~0.80であることが好ましい。光散乱指数をこの範囲内とすることにより、光散乱性がより一層向上し、且つ、化粧料等の外用剤に本発明の粒子を配合した場合にソフトフォーカス特性がより一層向上する。本発明において、光散乱指数は、より好ましくは0.40~0.75、より一層好ましくは0.45~0.70、特に好ましくは0.50~0.65である。本明細書において、光散乱指数とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる光散乱指数を意味する。
【0043】
2.異形中空粒子の製造方法
本発明の異形中空粒子は、水溶性ケイ酸塩及びマクロ孔形成用水溶性化合物を含む第1水相粒子を油相中に分散してなるW/Oエマルションに、沈殿剤水溶液を作用させることにより製造することができる。
【0044】
具体的には、まず、水溶性ケイ酸塩及びマクロ孔形成用水溶性化合物を含む第1水相(W)と、油相(O)とのW/Oエマルションを作製する。当該W/Oエマルションは、水溶性ケイ酸塩及びマクロ孔形成用水溶性化合物を含む第1水相に、界面活性剤(乳化剤)を有機溶媒に溶かした油相を添加し、ホモジナイザー等を用いて機械攪拌することにより作成することができる。次いで、作製したW/Oエマルションを、沈殿剤を含む第2水相(沈殿剤水溶液)に加えることにより、本発明の異形中空粒子を製造することができる。
【0045】
第1水相において、水溶性ケイ酸塩は、好ましくはケイ酸ナトリウムであり、より好ましくは水ガラスである。水溶性ケイ酸塩としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、JIS規格の1号から3号の水ガラス、4号水ガラス、メタ珪酸ナトリウム等が挙げられる。これらの市販品の中でも、水溶性ケイ酸塩としては、JIS規格の3号の水ガラスが好ましい。
【0046】
第1水相中の水溶性ケイ酸塩の濃度は、第1水相の全体積に対して、通常0.1~5g/mL、好ましくは0.3~1g/mLである。
【0047】
第1水相において、マクロ孔形成用水溶性化合物としては、例えば、中性の無機塩、有機ポリマーの塩等が挙げられる。これらの中でも、シェルに所定の大きさのマクロ孔を良好に形成させる観点から、中性の無機塩が好ましい。該中性の無機塩は、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム及び臭化カリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0048】
マクロ孔形成用水溶性化合物として中性の無機塩を使用する場合は、第1水相中の中性の無機塩の濃度は、シェルに所定の大きさのマクロ孔を良好に形成させる観点から、第1水相の全体積に対して、好ましくは50g/L~180g/L、より好ましくは60g/L~150g/L、特に好ましくは80g/L~120g/Lである。
【0049】
シェルに形成されるマクロ孔は、第1水相で使用する水溶性ケイ酸塩及びマクロ孔形成用水溶性化合物のみならず、油相の構成成分にも依存する。有機溶媒としては、水とほとんど混ざることなく、アルカリとほとんど反応しないものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記有機ポリマーの塩としては、水に溶かした場合に酸性にならないものであれば特に限定されないが、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ポリスチレンスルフォン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0054】
ポリアクリル酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ポリアクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ポリメタクリル酸のナトリウム塩等が挙げられる。ポリスチレンスルフォン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ポリスチレンスルフォン酸のナトリウム塩等が挙げられる。
【0055】
マクロ孔形成用水溶性化合物として有機ポリマーの塩を使用する場合は、第1水相中の中性の有機ポリマーの塩の濃度は、第1水相の全体積に対して、好ましくは50g/L~180g/Lである。有機ポリマー塩の平均分子量は、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩を使用する場合は、好ましくは5,000~15,000であり、ポリスチレンスルフォン酸のアルカリ金属塩を使用する場合は、好ましくは500,000~3,000,000である。
【0056】
油相に加える界面活性剤としては、W/Oエマルションを安定化させる効果を持つものであれば特に限定されず、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、通称Tween又はSpanと呼ばれる界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の粒子を製造する際には、Tween及びSpanを組み合わせて使用することがより好ましい。
【0057】
油相中の界面活性剤の濃度は、W/Oエマルションを安定化させる観点から、油相の全体積に対して、通常5~50g/mL、好ましくは15~30g/mLである。
【0058】
W/Oエマルションを形成させる際のホモジナイザーの回転数は、通常3000~20000回転、好ましくは5000~15000回転である。ホモジナイザーを使用する際の攪拌時間は、通常30秒~10分、好ましくは1分~6分である。
【0059】
作製したW/Oエマルションをすばやく沈殿剤を含む第2水相(沈殿剤水溶液)に加える。加える方法は特に限定されず、例えば、十分に撹拌された第2水相に、そのまま一度に加えればよい。第2水相を撹拌する際の速度は、通常100~1000回転、より好ましくは200~600回転である。W/Oエマルジョンを第2水相に加えた後の溶液は、引き続き撹拌する。その際の攪拌時間は、通常10分~5時間、好ましくは30分~3時間である。また、W/Oエマルジョンを第2水相に加えた後、溶液を攪拌する際の温度は、通常10~50℃、好ましくは15~40℃である。溶液を攪拌して懸濁液を得た後、生成した白色の粉末(固形分)を当該懸濁液から分離する。分離方法は、特に限定されず、例えば吸引ろ過法により行うことができる。分離した固形分は水で十分に洗浄し、その後、真空乾燥することにより溶剤を除去する。真空乾燥は、通常70~100℃で20時間~30時間行う。
【0060】
第2水相において、沈殿剤としては、アルカリ土類金属のハロゲン化物及びその水和物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等を用いることができる。これらの沈殿剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明における所望のマクロ孔を効率よく形成する観点から、沈殿剤として、アルカリ土類金属のハロゲン化物及びその水和物を用いることが好ましい。
【0061】
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、カルシウムのハロゲン化物及びその水和物、マグネシウムのハロゲン化物及びその水和物、ストロンチウムのハロゲン化物及びその水和物、バリウムのハロゲン化物及びその水和物等が挙げられる。
【0062】
カルシウムのハロゲン化物としては、例えば、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、Ca(ClO4)2、Ca(ClO)2、これらの水和物(CaCl2・2H2O等)等が挙げられる。これらの中でも、CaCl2及びCaCl2・2H2Oが好ましい。
【0063】
マグネシウムのハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(ClO4)2、これらの水和物(MgCl2・6H2O等)等が挙げられる。これらの中でも、MgCl2及びMgCl2・6H2Oが好ましい。
【0064】
ストロンチウムのハロゲン化物としては、例えば、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、Sr(ClO4)2、これらの水和物(SrCl2・6H2O等)等が挙げられる。これらの中でも、SrCl2及びSrCl2・6H2Oが好ましい。
【0065】
バリウムのハロゲン化物としては、例えば、BaCl2、BaBr2、BaI2、Ba(ClO4)2、Ba(ClO3)2、これらの水和物(BaCl2・2H2O等)等が挙げられる。これらの中でも、BaCl2及びBaCl2・2H2Oが好ましい。
【0066】
沈殿剤の絶対量としては、本発明における所望のマクロ孔を形成する観点から、沈殿剤のモル数が、第1水相のケイ素のモル数の0.25倍~3.8倍であることが好ましい。沈殿剤の絶対量が上記範囲内である場合、浸透圧を調製することで中空粒子の形状を異形化することが可能となる。
【0067】
3.異形中空粒子の用途
本発明の異形中空粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤;塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料の添加剤;自動車材料、建築材料等の樹脂組成物の添加剤;ブロッキング防止剤の添加剤;光拡散フィルムの添加剤;クロマトグラフィー用充填剤;薬物担体等として好適に使用することができる。
【0068】
本発明の異形中空粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤としてより好適に使用することができる。本発明の異形中空粒子は、化粧料の添加剤として特に好適に使用することができる。
【0069】
(外用剤)
本発明の異形中空粒子を含む外用剤の態様について、以下に例示する。本態様において、外用剤は、本発明の異形中空粒子を含む。本発明の外用剤は、肌に塗布されることで、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができる。
【0070】
本態様において、外用剤における本発明の異形中空粒子の含有割合は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より一層好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より一層好ましくは40質量%以下である。
【0071】
本態様において、外用剤は、例えば、外用医薬品、化粧料として使用できる。外用医薬品としては、例えば、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤;制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0072】
本態様において、上記化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0073】
上記油脂及びロウ類としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0074】
上記炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0075】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0076】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0077】
上記ステロールとしては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0078】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0079】
上記金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0080】
上記保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0081】
上記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0082】
上記高分子化合物としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0083】
上記色材原料としては、例えば、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0084】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0085】
上記粘土鉱物類としては、例えば、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0086】
上記香料としては、例えば、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。
【0087】
上記防腐・殺菌剤としては、例えば、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0088】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0089】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸、パラアミノ安息香酸、アントラニリック酸、サルチル酸、桂皮酸、ベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0090】
上記特殊配合添加物としては、例えば、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等
が挙げられる。
【0091】
(コーティング剤)
本発明の異形中空粒子を含むコーティング剤の態様について、以下に例示する。本態様において、コーティング剤は、本発明の異形中空粒子を含む。本態様において、コーティング剤における本発明の異形中空粒子の含有割合は、コーティング剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0092】
本態様において、コーティング材料は、必要に応じてバインダー樹脂、紫外線硬化樹脂、溶剤を含むことができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
上記紫外線硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とする。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
上記溶剤としては、例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水系塗料であれば、水、アルコール類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
本態様において、コーティング材料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0097】
本態様において、コーティング材料を使用した塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の公知の塗膜形成方法が挙げられる。コーティング材料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤で希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
また、基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、架塗膜を形成することができる。なお、コーティング材料を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等の透明基材にコーティングして用いる
こともできる。
【0099】
(樹脂組成物)
本発明の異形中空粒子を含む樹脂組成物の態様について、以下に例示する。本態様において、樹脂組成物は、基材樹脂及び本発明の異形中空粒子を含む。基材樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルサルファイド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA樹脂)、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
本態様において、樹脂組成物における本発明の異形中空粒子の含有量は、基材樹脂と本発明の異形中空粒子との総質量を基準にして、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは0.5~50質量%であり、より一層好ましくは1~30質量%である。
【0101】
本態様において、樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維、難燃剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料などを挙げることができる。
【0102】
本態様において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、基材樹脂と本発明の異形中空粒子とを機械式粉砕混合方法等のような従来広く知られている方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて、基材樹脂と本発明の異形中空粒子とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0103】
本態様において、樹脂組成物を使用した成形体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、基材樹脂と本発明の異形中空粒子とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出、射出、ブロー等で成形することにより、自動車材料、建築材料、包装材料等に適した任意の形状の成形体を得ることができる。
【0104】
(ブロッキング防止剤)
本発明の異形中空粒子を含むブロッキング防止剤の態様について、以下に例示する。本発明の異形中空粒子は、樹脂フィルムを巻き取ったときなどに、互いに接した樹脂フィルム表面同士が密着して剥がれなくなること(ブロッキング)を防止するために、樹脂フィルムの表面に凹凸を付与するブロッキング防止剤として使用できる。
【0105】
本態様において、ブロッキング防止剤は、本発明の異形中空粒子の他、必要に応じて、公知の酸化防止剤、流動性調整剤、光安定剤、着色顔料等が含まれていてもよい。
【0106】
本態様において、ブロッキング防止剤における本発明の異形中空粒子の含有量は、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、より一層好ましくは90~100質量%である。
【0107】
本態様において、ブロッキング防止剤を使用できる樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
本態様において、樹脂フィルムにおける本発明の異形中空粒子の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、より一層好ましくは0.01~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0109】
(光拡散フィルム)
本発明の異形中空粒子を含む光拡散フィルムの態様について、以下に例示する。本態様において、光拡散フィルムは、本発明の異形中空粒子を含む。本態様において、光拡散フィルムにおける本発明の異形中空粒子の含有量は、光拡散フィルムの種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0110】
本態様において、光拡散フィルムは、例えば、本発明の異形中空粒子、バインダー樹脂、希釈剤などを公知の方法により混合して分散液を調製し、これを公知の方法により基材となるフィルム上に塗布・乾燥することにより製造することができる。
【0111】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する基材としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等が挙げられる。
【0112】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する希釈剤としては、希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
(クロマトグラフィー用充填剤)
本発明の異形中空粒子は、タンパク質を分離又は精製するためのクロマトグラフィー用充填剤として好適に使用することができる。本発明の異形中空粒子を含むクロマトグラフィー用充填剤は、薄層クロマトグラフィーの担体若しくは吸着材として使用してもよく、濾過補助剤又はフィルターのような形態で使用してもよい。本発明の異形中空粒子は、カラムクロマトグラフィー用の充填剤としてより好適に使用することができ、高速液体クロマトグラフィー用の充填剤としてより一層好適に使用することができる。
【0115】
(薬物担体)
本発明の異形中空粒子は、薬物担体として好適に使用することができる。本明細書において、薬物担体とは、薬物と結合させて薬物の生体内動態を変化させるための物質を意味する。本明細書において、薬物とは、生体内で生物活性を示す化合物を意味する。
【0116】
本発明の異形中空粒子からなる薬物担体とは、疾患の治療又は診断のために用いられる異形中空粒子の薬物担体を意味する。異形中空粒子に担持される薬物としては、例えば、分子量1万以下の低分子化合物、タンパク質、ペプチド、核酸等が挙げられる。異形中空粒子に薬物を担持させる方法としては、例えば、薬物を異形中空粒子のマクロ孔内に充填又は封入すること等が挙げられる。
【実施例0117】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0118】
まず、実施例の項における測定方法及び評価方法について説明する。なお、以下の測定方法及び評価方法において、各実施例で得られた異形中空粒子及び各比較例で得られた中空粒子を、単に「中空粒子」と称する。
【0119】
(マクロ孔の平均孔径の測定方法)
中空粒子(以下、本段落において「粒子」と表記)の外表面に存在するマクロ孔の平均孔径は、次の方法にて測定した。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテク株式会社製の「SU-3800」)を用いて、1,000倍に拡大して粒子が均一に分散している部分を選び、粒子のSEM写真を撮影した。
(2)撮影したSEM写真から、粒子同士が重なり合っていないものを、孔の有無にかかわらず無作為に100個選び出した。
(3)選んだ100個の粒子それぞれに対して、「SEM Data Manager」を用いて、粒子の最長径と最短径とを測定し、その平均値[(最長径+最短径)/2]を各粒子の粒子径とした。そして、100個の粒子の粒子径の平均値を、粒子の平均粒子径とした。
(4)100個の粒子の中から、該平均粒子径の0.8~1.2倍の粒子径を有する粒子を孔の有無にかかわらず10個選んだ。
(5)選んだ10個の粒子それぞれに対して、マクロ孔の直径を測定し、算術平均して平均値を算出した。その算術平均値をマクロ孔の平均孔径とした。
【0120】
(中空粒子の外表面の平滑度の測定方法)
まず、上記「マクロ孔の平均孔径の測定方法」の(1)~(4)と同一の手順により、粒子を10個選んだ。次いで、選んだ10個の粒子をSEMで25,000倍に拡大して、各粒子の外表面に高さ50nm~300nmの凸部が存在するかを観察した。選んだ10個の粒子それぞれに対して、該凸部の個数を計測し、算術平均して平均値を算出した。その算術平均値を中空粒子の外表面の平滑度とした。
【0121】
(マクロ孔の平均個数の測定方法)
中空粒子(以下、本段落において「粒子」と表記)の外表面に存在するマクロ孔の平均個数は、次の方法にて測定した。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテク株式会社製の「SU-3800」)を用いて、1,000倍に拡大して粒子が均一に分散している部分を選び、粒子のSEM写真を撮影した。
(2)撮影したSEM写真から、粒子同士が重なり合っていないものを、孔の有無にかかわらず無作為に100個選び出した。
(3)選んだ100個の粒子それぞれに対して、「SEM Data Manager」を用いて、粒子の最長径と最短径とを測定し、その平均値[(最長径+最短径)/2]を各粒子の粒子径とした。そして、100個の粒子の粒子径の平均値を、粒子の平均粒子径とした。
(4)100個の粒子の中から、該平均粒子径の0.8~1.2倍の粒子径を有する粒子を孔の有無にかかわらず10個選んだ。
(5)選んだ10個の粒子それぞれに対して、粒子の外表面に存在する孔径0.3μm超10μm以下のマクロ孔の個数を数え、マクロ孔の総数を算出した。
(6)算出したマクロ孔の総数を10で割った値を、マクロ孔の平均個数とした。
【0122】
(中空粒子の球換算体積平均粒子径の測定方法)
中空粒子の球換算体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製の測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。なお、測定に用いるアパチャーは、測定する中空粒子の大きさによって、適宜選択した。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定した。
【0123】
具体的には、中空粒子0.1gを0.1重量%ノニオン系界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製の「TOUCHMIXERMT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製の「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、中空粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。中空粒子の球換算体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0124】
(円形度の測定方法及び平均円形度の算出方法)
中空粒子の円形度は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製の「FPIA(登録商標)-3000S」)を用いて測定した。具体的な測定方法としては、イオン交換水20mLに、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05gを加えて界面活性剤水溶液を得た。次いで、得られた界面活性剤水溶液に、測定対象の中空粒子0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSON SONIFIER 450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射し、測定対象の中空粒子を界面活性剤水溶液中に分散させる分散処理を行い、測定用の分散液を調製した。
【0125】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用いた。上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(シスメックス株式会社製の「PSE-900A」)を使用した。
【0126】
上記手順に従い調製した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記<円形度の測定条件>にて測定した。測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子群の懸濁液(例えば、Thermo Fisher Scientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行った。
【0127】
円形度とは、中空粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、中空粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。平均円形度とは、個々の中空粒子の円形度の合計を、個数基準の頻度の合計で除した値である。平均円形度が0.90以下の中空粒子の個数の割合については、上記測定により測定された0.010の間隔(例えば0.200以上0.990未満)における個数基準の頻度のデータから算出した。
<円形度の測定条件>
・測定モード:LPF測定モード又はHPF測定モード
(球換算体積平均粒子径により適宜選択した。目安として、8μm以下の球換算体積平均粒子径の場合はHPF測定モード、8μm以上の球換算体積平均粒子径の場合はLPF測定モードを選択した。)
・中空粒子の測定個数:1000個
・球換算体積平均粒子径の測定範囲:0.5μm~200μm
・中空粒子の円形度の測定範囲:0.2~1.0
【0128】
(吸油量の測定方法及び計算方法)
JIS K 5101に準じた方法を用いてで吸油量の測定を行った。詳細は以下の通りである。
<装置及び器具>
・測定板・・・300mm×400mm×5mmより大きい平滑なガラス板を使用
・ヘラ・・・鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのものを使用
・計量器・・・10mgオーダーまで計れるものを使用
・ビュレット・・・JIS R 3505に規定するもので、10mlまでのものを使用
<材料>
・アマニ油・・・JIS K 5421に規定するもので、具体的には、特級アマニ油(和光純薬社製)を使用
【0129】
<測定方法>
(1)以下の操作を行う前に、予備試験により予め吸油量の概略値を確認した。
(2)中空粒子1gを測定板上の中央部に取り、アマニ油をビュレットから一回に4,5滴ずつ、徐々に粒子の中央に滴下し、その都度全体をヘラで充分練り合わせた。
(3)滴下及び練り合わせを繰り返し、全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴で、ヘラを用いてらせん状に巻くことのできる状態になったときを終点とした(但し、らせん状に巻くことができない場合は、アマニ油の1滴で急激に軟らかくなる直前を終点とした)。
(4)終点までの操作時間が7~15分間になるように、上記(1)及び(2)の操作を調節した。
(5)終点に達したときの、ビュレットのアマニ油の滴下量を読み取った。
【0130】
<計算方法>
吸油量は、次の式(1)により算出した。
O=(V/m)×100・・・式(1)
O:吸油量(ml/100g)
m:中空粒子の質量(g)
V:滴下したアマニ油の容量(ml)
【0131】
(光散乱指数の測定方法)
(i)反射光度分布の測定
以下に示す方法により、中空粒子の表面で反射した光の拡散性を評価した。
まず、白黒隠蔽性試験紙(東洋精機社製)に、空気が入らないように両面テープを貼り付けた。次いで、両面テープの粘着面側に、化粧用パフで、中空粒子を均一に伸ばしながら塗布した。余分な中空粒子については、筆を使用して十分に掃き落とした。このようにして得られた試験片を、反射光度分布用の試験片とした。反射光度分布の測定は、三次元光度計(村上色彩研究所社製の「ゴニオフォトメーター GP-200」)を用いて実施した。
【0132】
上記試験片の法線(0°)に対して-45°角度で、光源から光を該試験片に入射させ、反射した反射光の反射角0°~90°における反射光度分布を三次元光度計により測定した。測定に際しては、全ての入射光が試験片の黒色部分に入射するように試験片の位置を調整した。
【0133】
(ii)+45°の反射光強度100に対する反射角0°における反射光強度の算出
測定した反射光度分布に基づき、反射角+45°(正反射方向)における反射光強度(ピーク光度)を100としたときの、反射角0°における反射光強度(ピーク光度)を算出した。反射角+45°(正反射方向)の反射光強度を100としたとき、反射角0°の反射光強度が100に近づくほど、化粧料に中空粒子を配合したときのソフトフォーカス効果が大きくなる。
【0134】
光散乱指数は下記式により算出した。
光散乱指数=(0°の散乱光強度)/(45°の散乱光強度)
より1に近い値を示すほど、角度依存性のない高い光散乱特性を示すといえる。
【0135】
(実施例1)
水溶性ケイ酸塩として水ガラス3号(50g、ケイ素含有量241mmol;大阪硅曹社製)とマクロ孔形成用水溶性化合物として塩化ナトリウム6gとを加えて全体積を72mLとした水溶液(第1水相)に、界面活性剤としてTween80(2.02g:モル数は混合物につき不明)とSpan80(1.00g:モル数は混合物につき不明)とをシクロヘキサンに溶かして全体積を144mLとした溶液(油相)を添加した。次いで、TKホモミキサー(プライミクス社製)を用いて回転数8300rpmで1分間攪拌することにより、W/Oエマルションを得た。さらに、沈殿剤として塩化カルシウム2水和物(111g、755mmol)を水に溶解させて全体積を500mLとした水溶液(第2水相)に、得られたW/Oエマルションを添加し、30℃で30分間攪拌(回転数:250rpm)し、析出反応を完結させた。得られた懸濁液をろ過により脱水して固形分を分離し、分離した固形分を水で十分に洗浄した。その後、70℃で24時間真空乾燥することで溶剤を除去し、ケイ酸カルシウム粒子を得た。
【0136】
得られたケイ酸カルシウム粒子をSEMで観察することにより、当該粒子は、ケイ酸カルシウムからなるシェルと該シェルで囲まれた中空部とを有する異形(非球状)の中空粒子であり、当該シェルの内部が多孔質構造であることが確認された。さらに、SEM観察により、当該粒子の表面(上記ケイ酸カルシウムからなるシェルの表面に該当)にピンホール(マクロ孔)が1つ存在することが確認された。
【0137】
(実施例2)
沈殿剤として塩化マグネシウム6水和物(180g、885mmol)を水に溶解させて全体積を500mLとした水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、ケイ酸マグネシウム粒子を得た。
【0138】
得られたケイ酸マグネシウム粒子をSEMで観察することにより、当該粒子は、ケイ酸マグネシウムからなるシェルと該シェルで囲まれた中空部とを有する異形(非球状)の中空粒子であり、当該シェルの内部が多孔質構造であることが確認された。さらに、SEM観察により、当該粒子の表面(上記ケイ酸マグネシウムからなるシェルの表面に該当)にピンホール(マクロ孔)が1つ存在することが確認された。
【0139】
(比較例1)
沈殿剤として炭酸水素アンモニウム(79.6g、1007mmol)を水に溶解させて全体積を500mLとした水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、無水ケイ酸粒子を得た。
【0140】
得られた無水ケイ酸粒子をSEMで観察することにより、当該粒子は、無水ケイ酸からなるシェルと該シェルで囲まれた中空部とを有する球状の中空粒子であり、当該シェルの内部が多孔質構造であることが確認された。さらに、SEM観察により、当該粒子の表面(上記無水ケイ酸粒子からなるシェルの表面に該当)にはピンホール(マクロ孔)が極めて多数存在することが確認された。
【0141】
(比較例2)
沈殿剤として炭酸水素ナトリウム(45g、536mmol)を水に溶解させて全体積を500mLとした水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、無水ケイ酸粒子を得た。
【0142】
得られた無水ケイ酸粒子をSEMで観察することにより、当該粒子は、無水ケイ酸からなるシェルと該シェルで囲まれた中空部とを有する球状の中空粒子であり、当該シェルの内部が多孔質構造であることが確認された。さらに、SEM観察により、当該粒子の表面(上記無水ケイ酸粒子からなるシェルの表面に該当)にはピンホール(マクロ孔)が極めて多数存在することが確認された。
【0143】
実施例1及び2で得られた異形中空粒子並びに比較例1及び2で得られた球状の中空粒子それぞれについて、上述した測定方法に基づき、マクロ孔の平均孔径、マクロ孔の平均個数、球換算体積平均粒子径、平均円形度、吸油量、平滑度及び光散乱指数を測定した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0144】
【0145】
(考察)
実施例1~2のマクロ孔の平均孔径は、比較例1~2のマクロ孔の平均孔径の約10倍であり、且つ、実施例1~2のマクロ孔の平均個数は、比較例1のマクロ孔の平均個数の約50分の1以下、比較例2のマクロ孔の平均個数の約30分の1以下であった。SEM写真では粒子の表面概観しか観察できず、粒子の裏側を観察することができないことを考慮すると、これらの結果から、実施例1~2では、異形中空粒子1個当たりに、孔径が約3μmのマクロ孔が粒子表面に約1個形成されたであろうことが推測できる。一方、比較例1及び2では、1つの中空粒子当たりに、孔径が約0.3μmのマクロ孔が粒子表面に極めて多数形成されたことが確認できた。このようにマクロ孔の平均孔径及び平均個数に大きく差が生じたのは、実施例1~2では沈殿剤としてアルカリ土類金属塩を使用することによって金属架橋が生じ、浸透圧と圧力のつり合いが生じたためであると推測される。
【0146】
SEM観察及び平均円形度の結果から、実施例1~2で得られた中空粒子は異形(非球状)の形状を有するため皮膚への付着性に優れるのに対して、比較例1~2で得られた中空粒子は球状であるため皮膚への付着性に劣ることが示された。
【0147】
平滑度の結果から、比較例1~2で得られた球状の中空粒子は表面に極めて多数の凸部が存在しているため、粒子表面が平滑ではないのに対して、実施例1~2で得られた異形中空粒子は表面に凸部が皆無であるため、粒子表面が平滑であることが示された。よって、実施例1~2で得られた異形中空粒子は、粒子表面の摩擦抵抗が極めて少なく、化粧料等に配合した場合に、触感に優れると考えられる。
【0148】
吸油量の結果から、比較例1~2で得られた球状の中空粒子とは異なり、実施例1~2で得られた異形中空粒子は、高い吸油性を有するため、長時間継続して皮脂を吸収することができ、化粧料等の外用剤に配合した場合、化粧崩れが起こりにくく、化粧持続性が向上することが示された。
【0149】
光散乱指数の結果から、比較例1~2で得られた球状の中空粒子とは異なり、実施例1~2で得られた異形中空粒子は、優れた光散乱性(光拡散性)を有することが示された。それ故、例えば、本発明の異形中空粒子を化粧料等に配合した場合、正反射方向の光の反射を抑えるだけでなく、より幅広い方向に光が拡散されるため、従来の形状の粒子では得られないソフトフォーカス効果に優れることが示された。