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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023336
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128773
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510128225
【氏名又は名称】松陽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】西井 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】渋川 和輝
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061BB02
5D061BB35
5D061DD01
(57)【要約】
【課題】取り扱い性及び吸音性能の維持が良好である吸音パネルを提供する。
【解決手段】吸音パネルは、対向する正面部11及び背面部12、対向する天部13及び底部14、対向する第1側面部15及び第2側面部16を有する中空形状であり、天部13と底部14との間に延伸し、中空形状を複数に区分する仕切り板30を有し、背面部12に開口を有する筐体10と、筐体10内部に保持される吸音材20とを備え、背面部12には、仕切り板30から第1側面部15又は第2側面部16に向かって延伸する補強部31を有し、既存壁に背面部12が正対して配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する正面部及び背面部、対向する天部及び底部、対向する第1側面部及び第2側面部を有する中空形状であり、前記天部と前記底部との間に延伸し、前記中空形状を複数に区分する仕切り板を有し、前記背面部に開口を有する筐体と、
前記筐体内部に保持される吸音材とを備え、
前記背面部には、前記仕切り板から前記第1側面部又は前記第2側面部に向かって延伸する補強部を有し、
既存壁に前記背面部が正対して配置される、吸音パネル。
【請求項2】
前記吸音材が乾式材料であり、前記乾式材料の密度は、16kg/m以上64kg/m以下である、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記吸音材が湿式材料であり、前記湿式材料の密度は、20kg/m以上100kg/m以下である、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項4】
前記吸音材は、前記背面部と少なくとも一部が面一となるように前記筐体内部に保持される、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項5】
前記吸音材は、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかにより覆われている、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項6】
前記補強部の延伸方向は、前記仕切り板の延伸方向と直交する、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項7】
前記補強部が複数である、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項8】
複数の前記補強部は、前記仕切り板に対して対称に設けられている、請求項7に記載の吸音パネル。
【請求項9】
前記筐体は、穴部を有する固定冶具を備え、
前記穴部を挿通可能な固定部材が、前記既存壁に設けられている被固定部材と嵌合することにより、前記既存壁に設置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項10】
前記筐体の厚みは、10mm以上100mm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音を低減するための防音壁として既存の壁体に吸音材を取り付けるもの等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-85920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の既存の壁体に吸音材を取り付けるものにおいては、吸音体がグラスウール等の剛性が低いものであると吸音体が変形して取り付けることが困難であり、取り扱い性が低下する。また、吸音体が露出していると吸音体が紫外線や風雨に晒され飛散し、吸音性能が低下してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、取り扱い性及び吸音性能の維持が良好である吸音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]対向する正面部及び背面部、対向する天部及び底部、対向する第1側面部及び第2側面部を有する中空形状であり、前記天部と前記底部との間に延伸し、前記中空形状を複数に区分する仕切り板を有し、前記背面部に開口を有する筐体と、前記筐体内部に保持される吸音材とを備え、前記背面部には、前記仕切り板から前記第1側面部又は前記第2側面部に向かって延伸する補強部を有し、既存壁に前記背面部が正対して配置される、吸音パネル。
[2]前記吸音材が乾式材料であり、前記乾式材料の密度は、16kg/m以上64kg/m以下である、[1]に記載の吸音パネル。
[3]前記吸音材が湿式材料であり、前記湿式材料の密度は、20kg/m以上100kg/m以下である、[1]に記載の吸音パネル。
[4]前記吸音材は、前記背面部と少なくとも一部が面一となるように前記筐体内部に保持される、[1]~[3]のいずれかに記載の吸音パネル。
[5]前記吸音材は、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかにより覆われている、[1]~[4]のいずれかに記載の吸音パネル。
[6]前記補強部の延伸方向は、前記仕切り板の延伸方向と直交する、[1]~[5]のいずれかに記載の吸音パネル。
[7]前記補強部が複数である、[1]~[6]のいずれかに記載の吸音パネル。
[8]複数の前記補強部は、前記仕切り板に対して対称に設けられている、[7]に記載の吸音パネル。
[9]前記筐体は、穴部を有する固定冶具を備え、前記穴部を挿通可能な固定部材が、前記既存壁に設けられている被固定部材と嵌合することにより、前記既存壁に設置される、[1]~[8]のいずれかに記載の吸音パネル。
[10]前記筐体の厚みは、10mm以上100mm以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の吸音パネル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取り扱い性及び吸音性能の維持が良好である吸音パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係る吸音パネルの正面部から見た斜視図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に係る吸音パネルの背面部から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る吸音パネルを既存壁に設置する一例を示す模式的図である。
図3】本発明の実施形態に係る吸音パネルの正面部から見た平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る吸音パネルの背面部から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る吸音パネル1は、図1に示すように、対向する正面部11及び背面部12、対向する天部13及び底部14、対向する第1側面部15及び第2側面部16を有する中空形状であり、天部13と底部14との間に延伸し、中空形状を複数に区分する仕切り板30を有し、背面部12に開口を有する筐体10と、筐体10内部に保持される吸音材20とを備え、背面部12には、仕切り板30から第1側面部15又は第2側面部16に向かって延伸する補強部31を有する。そして、本発明の実施形態に係る吸音パネル1は、図2に示すように、既存壁50に背面部12が正対して配置される
【0010】
(筐体)
筐体10の形状は、対向する正面部11及び背面部12、対向する天部13及び底部14、対向する第1側面部15及び第2側面部16を有する中空形状であり、図1においては、直方体であるが特に限定されず、立方体、円柱、正四面体であってもよく、これら以外の他の形状であってもよい。
【0011】
筐体10は、穴部41を有する固定冶具40を備え、図2に示すように、穴部41を挿通可能な固定部材60が、既存壁50に設けられている被固定部材51と嵌合することにより、吸音パネル1が既存壁50に設置される。穴部41の形状は、固定部材60が挿通可能な形状であればよく、例えば、丸孔、角孔及び長孔等のいずれであってもよい。固定部材60は、穴部41を挿通し、被固定部材51と嵌合することで吸音パネル1を既存壁50に固定することが可能な部材であればよく、例えば、ボルト等が挙げられる。被固定部材51は、固定部材60と嵌合することで吸音パネル1を既存壁50に固定することが可能な部材であればよく、例えば、ナット及び袋ナット等が挙げられ、中でも袋ナットが好ましい。
【0012】
筐体10を構成する面のうち、正面部11を構成する面(XY平面)は、多数の貫通孔が設けられていることが好ましく、例えば、金網及びパンチングメタル等が挙げられる。正面部11を構成する面としては、吸音性能を向上させ、かつ、剛性及び耐久性を得る観点から、多数の貫通孔が設けられているパンチングメタル等の多孔板であることが好ましい。貫通孔の形状は、丸孔、角孔及び長孔等のいずれであってもよい。正面部11を構成する面に多数の貫通孔が設けられていることによって、貫通孔を介して吸音材20へ到達する音源からの音が多くなり、騒音に対する吸音性能を高めることができる。
正面部11を構成する面の貫通孔による開口率は、20%以上70%以下であることが好ましく、35%以上65%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。正面部11を構成する面の貫通孔による開口率が上記範囲内であることで、筐体10の剛性及び耐久性を維持しつつ、音源からの騒音に対する吸収効果を効率よく奏することができる。
なお、正面部11を構成する面の貫通孔による開口率とは、正面部11を構成する面を平面視したときに、貫通孔を含む面全体の面積に対する貫通孔の面積の割合である。
【0013】
正面部11を構成する面のうち、貫通孔を設けられている貫通孔領域は、1領域に限られず、複数領域であってもよい。貫通孔領域が複数である場合、例えば、図3に示すように、貫通孔領域A,Aのように、2領域としてもよく、3領域以上としてもよい。複数の貫通孔領域は、仕切り板30によって区分される筐体10の複数の中空形状と併せて設けるとよい。また、複数の貫通孔領域は、それぞれ同一の面積であってもよく、それぞれ異なる面積であってもよい。
【0014】
筐体10を構成する面のうち、背面部12を構成する面(XY平面)は、開口を有する。背面部12を構成する面は、開口を有することで、吸音材20が露出した形態となり、軽量化を図ることができ、かつ、コストを低減することができる。また、背面部12において吸音材20は露出しているが、既存壁50に設置する施工後は背面部12が隠されるために吸音材20が紫外線及び風雨にさらされることなく、吸音材20の劣化を抑制することができる。背面部12の開口の形状は、矩形及び円形等のいずれであってもよい。
【0015】
背面部12には、図1(b)及び図4に示すように、仕切り板30から第1側面部15又は第2側面部16に向かって延伸する補強部31を有する。背面部12に補強部31を有することで、開口を有する背面部12の強度を補強することができ、吸音パネル1を運搬及び設置する際の変形を抑制し、取り扱い性を良好とすることができる。また、背面部12に補強部31が設けられていることで、吸音材20を抑圧して保持することができ、吸音材20が背面部12からはみ出さないようにすることもできる。
補強材31は、筐体10の補強機能を満たすものであればよく、補強材31の形状、筐体10への配置箇所は種々あり得るが、例えば、背面部12(開放面)の一端部から他端部に渡って棒状のものを複数配置し、補強材31と正面部11との間に空間を有する形で形成し、かかる空間に吸音材20を充填することが、吸音材20を抑圧して保持できるととともに、吸音材20の面方向(XY平面)の設置面積が補強材31により狭くなることがないので吸音性能との関係では好ましい。
補強部31の延伸方向は、吸音パネル1の強度を良好に補強する観点から、仕切り板30の延伸方向と直交することが好ましい。また、吸音パネル1の強度を良好に補強する観点から、補強部31が複数であることが好ましい。複数の補強部31は、吸音パネル1に加えられる力を均等に分散し、吸音パネル1の強度を良好に補強する観点から、仕切り板30に対して対称に設けられていることが好ましい。
【0016】
筐体10の厚みT(Z軸方向)は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、15mm以上80mm以下であることがより好ましく、20mm以上70mm以下であることがさらに好ましい。筐体10の厚みTが上記範囲内であることで、剛性及び耐久性を有する筐体10とすることができる。
【0017】
筐体10の高さH(Y軸方向)は、100mm以上3,000mm以下であることが好ましく、150mm以上2,500mm以下であることがより好ましく、200mm以上2,000mm以下であることがさらに好ましい。筐体10の高さHが上記範囲内であることで、吸音パネル1を運搬及び設置する際の取り扱い性を良好とすることができる。
【0018】
筐体10の幅W(X軸方向)は、100mm以上3,000mm以下であることが好ましく、150mm以上2,500mm以下であることがより好ましく、200mm以上2,000mm以下であることがさらに好ましい。筐体10の幅Wが上記範囲内であることで、吸音パネル1を運搬及び設置する際の取り扱い性を良好とすることができる。
【0019】
筐体10の材質としては、剛性及び耐久性を有する材質を採用することができ、例えば、鉄、鋼鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル等の樹脂などが挙げられる。筐体10の材料として、具体的には、耐久性の面からは、スーパーダイマ鋼板(商品名)、ZAM鋼板(商品名)等の高耐食性メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板等のメッキ鋼板が挙げられ、重量の面からは、アルミニウム板が挙げられる。
【0020】
(吸音材)
吸音材20は、筐体10内部に保持される。吸音材20によって、筺体10の内部が充填されると、既存壁50と音源との間で発生する多重反射を吸音することで防音効果が大きくなる。
【0021】
吸音材20は、背面部12と少なくとも一部が面一となるように筐体10の内部に保持される。吸音材20の少なくとも一部が背面部12と面一であることで、吸音パネル1を既存壁50に設置する施工後は、吸音材20が既存壁50と直接接することとなり、吸収効果を良好にすることができる。
【0022】
吸音材20の材質は、特に限定されるものではないが、例えばグラスウール、ロックウール、合成繊維及び金属繊維等の繊維系材料である乾式材料、並びに、ウレタンフォーム及びパテ等の湿式材料が挙げられる。吸音材20の材質は、乾式材料又は湿式材料を単体で用いてもよく、乾式材料及び湿式材料を組み合わせて用いてもよい。乾式材料のうち、グラスウール等の水分を含むと変形するものは、撥水性のものを用いることが好ましい。
【0023】
吸音材20の乾式材料の密度は、16kg/m以上64kg/m以下であることが好ましく、20kg/m以上48kg/m以下であることがより好ましく、24kg/m以上40kg/m以下であることがさらに好ましい。吸音材20の乾式材料の密度が上記範囲内であることで、吸音性能と吸音パネルの軽量化とを両立させることができる。
【0024】
吸音材20の湿式材料の密度は、20kg/m以上100kg/m以下であることが好ましく、25kg/m以上80kg/m以下であることがより好ましく、30kg/m以上60kg/m以下であることがさらに好ましい。吸音材20の湿式材料の密度が上記範囲内であることで、吸音性能と吸音パネルの軽量化とを両立させることができる。
【0025】
吸音材20は、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかにより覆われていることが好ましい。吸音材20が、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかにより覆われていることで、吸音材20に撥水性又は防水性を付与することができ、水分を含むことによる変形を防止し、耐久性を向上させることができる。また、吸音材20を覆うことで、吸音材20の飛散を防止することができ、吸音材20の密度及び厚み等を制御することが容易となる。
なお、ガラスクロスは、特に限定されるものではないが、性能と飛散防止性能とのバランスから目の密度及び厚みがEP12D相当からEP18B相当(JIS R 3414:2012)の範囲にあるものであることが好ましい。
【0026】
本発明の吸音パネルによれば、吸音材による吸音性能の維持が良好とすることができ、かつ、運搬及び設置する際の変形を抑制することで取り扱い性を良好とすることができる。
【0027】
(その他の実施の形態)
上記の実施形態では、固定冶具40及び被固定部材51を用いて吸音パネル1を既存壁50に固定して設置する態様を示したが、これに限られず、接着剤等のその他の固定手段を採用することで、固定冶具40及び被固定部材51を省略してもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、固定冶具40及び被固定部材51を用いて吸音パネル1を既存壁50に固定して設置する形態として、固定部材60が固定冶具40の穴部41を挿通し、被固定部材51と嵌合すると示したが、これに限られず、被固定部材51が固定冶具40の穴部41を挿通し、固定部材60と嵌合する形態であってもよい。この形態において、被固定部材51としてはアンカーボルト等が挙げられ、固定部材60としてはナット等が挙げられる。
【符号の説明】
【0029】
1 吸音パネル
10 筐体
11 正面部
12 背面部
13 天部
14 底部
15 第1側面部
16 第2側面部
20 吸音材
30 仕切り板
31 補強部
40 固定冶具
41 穴部
50 既存壁
51 被固定部材
60 固定部材
図1
図2
図3
図4