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特開2023-23386作業順序列生成装置および作業順序列生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023386
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】作業順序列生成装置および作業順序列生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230209BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128881
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相薗 敏子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 文也
(72)【発明者】
【氏名】岡留 有哉
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】作業時に順序変更があったとしても評価値の低下を許容範囲内に抑制可能な作業順序列を提供すること。
【解決手段】プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置は、第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値と、前記摂動処理によって生成された第2作業順序列での作業に関する第2評価値と、の差が許容範囲内になるように学習することにより、入力作業順序列の作業に関する評価値との差が前記許容範囲内となるような特定の作業順序列を作成する学習モデルを生成する学習処理と、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、
第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、
前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値と、前記摂動処理によって生成された第2作業順序列での作業に関する第2評価値と、の差が許容範囲内になるように学習することにより、入力作業順序列の作業に関する評価値との差が前記許容範囲内となるような特定の作業順序列を作成する学習モデルを生成する学習処理と、
を実行することを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業順序列生成装置であって、
前記摂動処理では、前記プロセッサは、複数の順番における複数の処理対象の組み合わせに関する生起確率を規定した摂動傾向データに基づいて、前記第1作業順序列内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせを変更することにより、前記第2作業順序列を生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、
作業前に計画した計画作業順序列内の複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせと、前記計画作業順序列で作業が行われた場合の実績作業順序列内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせと、の異同に基づいて、前記摂動傾向データを生成する第1生成処理を実行し、
前記摂動処理では、前記プロセッサは、前記第1生成処理によって生成された摂動傾向データに基づいて、前記第1作業順序列内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせを変更することにより、前記第2作業順序列を生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業順序列生成装置であって、
前記学習処理では、前記プロセッサは、前記入力作業順序列の作業に関する評価値を算出する評価値推定モデルを用いて、前記評価値推定モデルに前記第1作業順序列を入力することにより前記第1評価値を算出するとともに前記評価値推定モデルに前記第2作業順序列を入力することにより前記第2評価値を算出し、前記第1評価値と前記第2評価値との差が前記許容範囲内になるように学習することにより、前記学習モデルを生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、実績作業順序列内の前記処理対象群の各々の処理対象を所定数のカテゴリに分類したカテゴリ別の割合データを学習用データとし、前記実績作業順序での作業に関する評価値を正解データとして学習することにより、前記評価値推定モデルを生成する第2生成処理を実行し、
前記学習処理では、前記プロセッサは、前記第2生成処理によって生成された評価値推定モデルを用いて、前記学習モデルを生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項6】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、
第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、
前記第1作業順序列と前記第2作業順序列との順位相関係数を算出する算出処理と、
前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値に基づく下限評価値と前記第2作業順序列での作業に関する第2評価値との比較結果と、前記算出処理によって算出された順位相関係数となる第3作業順序列の数と、に基づいて、前記第2作業順序列を出力対象に決定する決定処理と、
を実行することを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の作業順序列生成装置であって、
前記決定処理では、前記プロセッサは、前記第2評価値が前記下限評価値以上である場合、前記第2作業順序列を出力対象に決定する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項8】
請求項6に記載の作業順序列生成装置であって、
前記決定処理では、前記プロセッサは、前記第3作業順序列の数が所定数以上である場合、前記第2作業順序列を出力対象に決定する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、
前記所定数を設定可能な画面を表示可能に出力する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項10】
請求項6に記載の作業順序列生成装置であって、
前記摂動処理では、前記プロセッサは、実績作業順序列に基づく前記処理対象群の各々の処理対象の順番が生起する確率分布群を用いて、前記第2作業順序列を生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の作業順序列生成装置であって、
前記摂動処理では、前記プロセッサは、前記第1作業順序列と同一順番において前記処理対象が異なる数に基づいて、前記第2作業順序列を生成する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の作業順序列生成装置であって、
前記プロセッサは、
前記第2作業順序列において前記処理対象が異なる上限数を設定可能な画面を表示可能に出力する、
ことを特徴とする作業順序列生成装置。
【請求項13】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置が実行する作業順序列生成方法であって、
前記プロセッサは、
第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、
前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値と、前記摂動処理によって生成された第2作業順序列での作業に関する第2評価値と、の差が許容範囲内になるように学習することにより、入力作業順序列の作業に関する評価値との差が前記許容範囲内となるような特定の作業順序列を作成する学習モデルを生成する学習処理と、
を実行することを特徴とする作業順序列生成方法。
【請求項14】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置が実行する作業順序列生成方法であって、
前記プロセッサは、
第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、
前記第1作業順序列と前記第2作業順序列との順位相関係数を算出する算出処理と、
前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値に基づく下限評価値と前記第2作業順序列での作業に関する第2評価値との比較結果と、前記算出処理によって算出された順位相関係数となる第3作業順序列の数と、に基づいて、前記第2作業順序列を出力対象に決定する決定処理と、
を実行することを特徴とする作業順序列生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業順序列を生成する作業順序列生成装置および作業順序列生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫や製造工場(以下、現場)では、オーダーされた製品をどのような順序で作業するかが生産性やコストなどのKPI(Key Performance Indicators)に大きく影響する。そのため現場の管理者は、これまでの知見や実績データをベースに人手でまたは何らかのツールを用いて作業順序を作成してKPIの達成または向上を図っている。
【0003】
下記特許文献1は、実用可能な時間内において、ロバストな計画を作成する計画作成装置を開示する。この計画作成装置は、複数の作業要素の中から、特定の作業要素を複数選択してなる所要スケジュールを作成する計画作成装置1であって、複数の作業要素並びに該作業要素別の所要時間のばらつき具合を示す指標を取得する作業要素情報取得部と、前記所要時間のばらつき具合を示す指標に基づいて、前記作業要素毎に所要時間を特定したばらつきシナリオを作成するばらつきシナリオ作成部と、前記ばらつきシナリオに基づいて、異なる複数の所要スケジュールを特定する所要スケジュール特定部と、複数の前記所要スケジュールの中から特定の所要スケジュールを特定する判定部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
KPIを最大化する作業順序を変更すると、変更後の作業順序のKPIが劣化することがある。一方、現場では多くの作業員が多様な機器や設備を用いて作業しており、下記のような様々な状況において作業順序に変更が生じることがある。このような場合、KPIが劣化し問題となる。
【0006】
・作業員のスキルのバラつき(新人とベテラン作業員など)
・作業対象の製品数や作業員の突然の過不足、機器/設備の急な不調
・作業員または監督者による意図的な作業順序の変更(直面している状況下で都合のよい順序に変更したなど)
【0007】
また、数理最適技術で生成した最適解の近傍が必ずしもよい解であるとは限らない。そのため、実行時に作業順序が部分的に入れ替わるとKPIが達成できない、または低下する恐れがある。これを解決するには作業が計画通りに実行されない条件も含めて網羅的に制約として定式化する必要があるが、前述の通りその状況は多岐にわたり、対応が困難である。また、数理最適技術は最適解の生成に時間がかかることがある。高速な作業順序の決定が業務要件である場合、問題となる。
【0008】
本発明は、作業時に順序変更があったとしても評価値の低下を許容範囲内に抑制可能な作業順序列を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の一側面となる作業順序列生成装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置であって、前記プロセッサは、第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値と、前記摂動処理によって生成された第2作業順序列での作業に関する第2評価値と、の差が許容範囲内になるように学習することにより、入力作業順序列の作業に関する評価値との差が前記許容範囲内となるような特定の作業順序列を作成する学習モデルを生成する学習処理と、を実行することを特徴とする。
【0010】
本願において開示される発明の他の側面となる作業順序列生成装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する作業順序列生成装置であって、前記プロセッサは、第1作業順序列に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、前記第1作業順序列と前記第2作業順序列との順位相関係数を算出する算出処理と、前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値に基づく下限評価値と前記第2作業順序列での作業に関する第2評価値との比較結果と、前記算出処理によって算出された順位相関係数となる第3作業順序列の数と、に基づいて、前記第2作業順序列を出力対象に決定する決定処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態によれば、作業時に順序変更があったとしても評価値の低下を許容範囲内に抑制可能な作業順序列を提供することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、物流倉庫の仕分け作業例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、作業順序列生成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1にかかる作業順序列生成装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、注文リスト群の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、商品マスタの一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、計画データ群の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実績データ群の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、摂動生成部による摂動生成例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、評価部による評価例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、作業順序列作成モデル学習部による作業順序列モデル学習例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施例2にかかる作業順序列生成装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施例2にかかる作業順序列生成装置による作業順序列生成手順例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、統計作業順序モデル生成および摂動生成例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、妥当性評価による順位相関算出例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、妥当性評価による妥当性評価例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、作業順序列生成装置の表示画面例1を示す説明図である。
【
図17】
図17は、作業順序列生成装置の表示画面例2を示す説明図である。
【
図18】
図18は、作業順序列生成装置の進捗画面例1を示す説明図である。
【
図19】
図19は、作業順序列生成装置の進捗画面例2を示す説明図である。
【
図20】
図20は、作業順序列生成装置の進捗画面例3を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
<物流倉庫の仕分け作業例>
図1は、物流倉庫の仕分け作業例を示す説明図である。物流倉庫の仕分け作業は、トータルピッキング工程、値付け工程、仕分け工程、検品工程の順に実施される。トータルピッキング工程では、作業順序列100にしたがって、作業員101は、倉庫から処理対象となる商品をピッキングする。値付け工程では、作業員101は、トータルピッキングでピッキングされた商品に値札シールを貼付する。仕分け工程では、作業員101は、順立て機103を用いて、値付けされた商品を出荷先ごとに仕分ける。検品工程では、作業員101は、出荷先ごとに仕分された商品を検品して出荷する。
【0014】
トータルピッキング工程および値付け工程では作業順序列100が入れ替わることがあり、仕分け工程が想定作業時間で完了しないことがある。たとえば、商品B、A、C、Dの順で作業順序列100を指示したが、トータルピッキング工程で作業員101のスキルの差でピッキングする商品の順序が入れ替わったり、値付け工程では商品Bの次は商品Cを値付けするのがやりやすいので現場の判断でC→Bに入れ替えたりすることがある。実施例1の作業順序列生成装置は、このように作業順序列100の入れ替えが発生しても、入替後の作業順序のKPIの劣化を低減する。
【0015】
<作業順序列生成装置のハードウェア構成例>
図2は、作業順序列生成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。作業順序列生成装置200は、プロセッサ201と、記憶デバイス202と、入力デバイス203と、出力デバイス204と、通信インターフェース(通信IF)205と、を有する。プロセッサ201、記憶デバイス202、入力デバイス203、出力デバイス204、および通信IF205は、バス206により接続される。プロセッサ201は、作業順序列生成装置200を制御する。記憶デバイス202は、プロセッサ201の作業エリアとなる。また、記憶デバイス202は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス202としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス203は、データを入力する。入力デバイス203としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイク、センサがある。出力デバイス204は、データを出力する。出力デバイス204としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF205は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0016】
<作業順序列生成装置の機能的構成例>
図3は、実施例1にかかる作業順序列生成装置の機能的構成例を示すブロック図である。作業順序列生成装置200は、データベース(DB)301と、学習部302と、作成部305と、表示部306と、を有する。DB301は、具体的には、たとえば、
図2に示した記憶デバイス202、または、通信IF205を介して作業順序列生成装置200と通信可能な他のコンピュータによって実現される。学習部302および作成部305は、具体的には、たとえば、
図2に示した記憶デバイス202に記憶されたプログラムをプロセッサ201に実行させることにより実現される。表示部306は、具体的には、たとえば、
図2に示した出力デバイス204、または、通信IF205を介して作業順序列生成装置200と通信可能な他のコンピュータにより実現される。
【0017】
DB301は、注文リスト群310と、商品マスタ311と、計画データ群312と、実績データ群313と、を記憶する。注文リスト群310は、日々の注文リスト352の集合であり、
図4で後述する。商品マスタ311は、商品ごとに商品の属性情報を保持するマスタテーブルであり、
図5で後述する。
【0018】
計画データ群312は、ある日の注文リスト352に対して、
図1に示した全工程の処理が完了するまでの予定作業時間および各工程の予定作業時間、および各工程に何名の作業員101を配置して、どの商品をどの順序で処理するのかを計画した計画データの集合であり、
図6で後述する。
【0019】
実績データ群313は、ある日の注文リスト352に対して、
図1に示した全工程の処理が完了した実際の作業時間および各工程の実際の作業時間、および各工程に何名の作業員を配置して、どの商品をどの順序で処理したかを記録した実績データの集合であり、
図7で後述する。
【0020】
学習部302は、実績データに含まれる作業順序を解空間に写像し、その解空間上で最適解を探索することにより、実行可能な作業順序列を生成する。順序には制約がある場合(たとえば、商品Aの次に商品Dは来ないなど)があり、自動的に探索して生成した解が必ずしも実行可能とは限らないので、学習部302は、制約ごと実績データを解空間に写像して最適解を探索する。
【0021】
学習部302は、具体的には、たとえば、摂動生成部320と、評価部330と、作業順序列作成モデル学習部340と、を有する。
【0022】
摂動生成部320は、計画データと実績データとを比較して、摂動傾向学習221を実行し、摂動傾向データ322を生成する。具体的には、たとえば、摂動生成部320は、計画した作業順序列に対して実際の作業順序列がどのように変更されたかを検出し、検出した変更を摂動傾向データ322として学習する。摂動生成部320の詳細については、
図8で後述する。
【0023】
評価部330は、注文リスト群310と商品マスタ311と実績データ群313とを用いて、KPI学習231を実行し、KPIを推定するモデル(KPI推定モデル232)を生成する。KPIは、たとえば、作業時間に応じた評価値(作業時間そのものでもよく作業時間の逆数でもよい)または作業員数に応じた評価値(作業員数そのものでもよく作業員数の逆数でもよい)である。評価部330の詳細については、
図9で後述する。
【0024】
作業順序列作成モデル学習部340は、計画データ群312を入力とし、ロバストな作業順序列を作成するモデル(作業順序列作成モデル341)を学習する。具体的には、たとえば、作業順序列作成モデル学習部340は、作業順序列を探索し、探索した作業順序列に摂動傾向データ322を用いて摂動を与え、摂動が与えられた作業順序列のKPIを、KPI推定モデル232を用いて算出する。
【0025】
そして、作業順序列作成モデル学習部340は、算出したKPIと目標KPIとの差に基づいてニューラルネットワークの重みパラメータを更新して、作業順序列作成モデル341を生成する。作業順序列作成モデル学習部340の詳細については、
図10で後述する。
【0026】
作成部305は、監督者300から注文リスト352が受け付けられると入力されると注文リスト352を作業順序列作成モデル341に入力し、作業順序列を生成し、表示部306に出力する。なお、入力される注文リスト352は、注文リスト群310に含まれていてもよく、注文リスト群310外のものでもよい。
【0027】
<注文リスト群310>
図4は、注文リスト群310の一例を示す説明図である。注文リスト群310は、日々の注文リスト352の集合である。注文リスト352の各々は、注文ID401と、店名402と、商品コード403と、を含む。同一行における注文ID401、店名402、および商品コード403の値が1つの注文となる。
【0028】
注文ID401は、注文リスト352内の注文を特定する識別情報である。店名402は、その注文をした店舗の名称、すなわち、発注者を特定する情報である。商品コード403は、その注文での商品を特定する識別情報である。なお、商品コード403には、その注文での商品の個数を含めてもよい。
【0029】
<商品マスタ311>
図5は、商品マスタ311の一例を示す説明図である。商品マスタ311は、商品の属性情報として、たとえば、商品コード403と、商品名501と、カテゴリ502と、サイズ503と、を有する。商品名501は、その商品コード403で特定される商品の名称である。カテゴリ502は、その商品の区分を示す分類情報である。サイズ503は、その商品の大きさである。
【0030】
<計画データ群312>
図6は、計画データ群312の一例を示す説明図である。計画データ群312は、日々の計画データ600の集合である。計画データ600は、当日または前日以前の注文リスト352に基づいて生成される。
【0031】
計画データ600は、作業時間計画データ610と、人員配置計画データ620と、作業順序列計画データ630と、を含む。作業時間計画データ610は、
図1に示した工程ごとの作業時間に関する計画データである。具体的には、たとえば、作業時間計画データ610は、工程ID611と、工程名612と、作業時間613と、を有する。工程ID611は、
図1に示した工程を一意に特定する識別情報である。工程名612は、
図1に示した工程の名称である。作業時間613は、工程IDおよび工程名で特定された工程の作業にかかる時間である。
【0032】
人員配置計画データ620は、
図1に示した工程ごとの作業員101の人数配置に関する計画データである。具体的には、たとえば、人員配置計画データ620は、工程ID611と、工程名612と、時間毎作業員数623と、を有する。時間毎作業員数623は、時間毎(たとえば、1時間)の各工程に必要な作業員の計画人数である。
【0033】
作業順序列計画データ630は、商品の作業順序列を計画したデータである。具体的には、たとえば、作業順序列計画データ630は、順番631と、商品コード403と、個数632と、を有する。順番631は、その商品の作業順序の昇順番号である。個数632は、その商品コード403の商品を順番631で処理する計画数量である。
【0034】
<実績データ群313>
図7は、実績データ群313の一例を示す説明図である。実績データ群313は、日々の実績データ700の集合である。実績データ700は、過去の仕分け作業で得られた実測値である。
【0035】
実績データ700は、作業時間実績データ710と、人員配置実績データ720と、作業順序列実績データ730と、を含む。作業時間実績データ710は、
図1に示した工程ごとの作業時間に関する実績データである。具体的には、たとえば、作業時間実績データ710は、工程ID611と、工程名612と、作業時間713と、を有する。作業時間713は、工程ID611および工程名612で特定された工程の作業にかかった時間である。
【0036】
人員配置実績データ720は、
図1に示した工程ごとの作業員101の人数配置に関する計画データである。具体的には、たとえば、人員配置計画データ620は、工程ID611と、工程名612と、時間毎作業員数723と、を有する。時間毎作業員数723は、時間毎(たとえば、1時間)の各工程で作業した作業員の人数である。
【0037】
作業順序列実績データ730は、実際に行われた商品の作業順序列である。具体的には、たとえば、作業順序列実績データ730は、順番731と、商品コード403と、個数732と、を有する。順番731は、その商品の作業順序の昇順番号である。個数732は、その商品コード403の商品を順番631で処理した数量である。作業順序列実績データ730は、たとえば、各工程について、日付ごとに存在する。
【0038】
<摂動生成例>
図8は、摂動生成部320による摂動生成例を示す説明図である。摂動生成部320は、作業順序列計画データ630と、作業順序列実績データ730と、を取得し、工程ごとに摂動傾向学習221を実行する。具体的には、たとえば、摂動生成部320は、作業順序列計画データ630における作業順序列と作業順序列実績データ730における作業順序列とを、複数の同一順番の商品ペアで比較する。複数の同一順番は、作業順序列計画データ630および作業順序列実績データ730で同一順番であれば、連続する順番(N番目とN+1番目)でもよく、離散的な順番(たとえば、N番目とN+2番目)でもよい。
図8では、例として、連続する順番(N番目とN+1番目)とする。
【0039】
注目箇所801では、4番目と5番目の商品ペアが比較されている。作業順序列計画データ630および作業順序列実績データ730ともに、4番目と5番目の商品ペアは「B,C」であるため、4番目と5番目については、作業順序列計画データ630通りの順序で処理されたことを示す。
【0040】
注目箇所802では、10番目と11番目の商品ペアが比較されている。作業順序列計画データ630における10番目と11番目の商品ペアは「E,F」であるが、作業順序列実績データ730における10番目と11番目の商品ペアは「F,E」である。したがって、10番目と11番目については、作業順序列計画データ630から順序が変更されて処理されたことを示す。
【0041】
摂動生成部320は、工程ごとに、作業順序列実績データ730を変えながら作業順序列計画データ630および作業順序列実績データ730を比較し、N番目と1+1番目の商品ペアごとにその順序が期待通りに生起する確率(作業順序列計画データ630通りに処理された確率)を算出する。この生起確率が摂動傾向データ322である。
【0042】
ここでは、生起確率を、作業順序列計画データ630の通りに処理された確率としたが、N番目と1+1番目の商品ペアごとにその順序が期待通りに生起しない確率(作業順序列計画データ630通りに処理されなかった確率)としてもよい。摂動傾向データ322は、工程ごとに生成される。また、摂動傾向データ322は、2つの順番(
図8では、N番とN+1番)の商品の組み合わせの生起確率としたが、3つ以上の順番(たとえば、N番とN+1番とN+2番)の商品の組み合わせの生起確率としてもよい。
【0043】
<評価例>
図9は、評価部330による評価例を示す説明図である。まず、学習データセット900が用意される。学習データセット900は、評価部330によって生成されてもよく、外部から用意されてもよい。
【0044】
学習データセット900は、注文リスト群310と、商品マスタ311と、実績データ群と、に基づいて生成される。学習データセット900は、年月日901と、作業時間902と、作業員数903と、個数904と、M個(Mは1以上の整数)のカテゴリ別注文割合CR1~CRMと、を有する。カテゴリ別注文割合CR1~CRMを区別しない場合は、単にカテゴリ別注文割合CRと表記する。
【0045】
年月日901は、注文リスト群310の注文リスト352および実績データ群313の実績データ700における年、月および日である。
【0046】
作業時間902は、その年月日901の実績データ700における各工程の作業時間713の総和である。作業員数903は、その年月日901の実績データ700における各工程の時間毎作業員数723の総和である。個数904は、その年月日901の実績データ700における各工程の個数732である。
【0047】
カテゴリ別注文割合CR1~CRMは、たとえば、1日の作業順序列をM分割した部分的な作業順序列ごとに生成される。カテゴリ別注文割合CRは、商品コード403および商品名501で特定される商品のカテゴリ502の数をnとすると、注文割合c1~cn(nは1以上の整数)の集合である。
【0048】
注文割合c1~cnの総和は1である。注文割合ci(iは1≦i≦nを満たす整数)は、全カテゴリ502のうち、その年月日901の1日の作業順序列をM分割した部分的な作業順序列においてi番目のカテゴリ502が注文された確率である。これにより、作業順序列をM分割された固定長の特徴量に変換することができる。
【0049】
学習データセットのうち、カテゴリ別注文割合CR1~CRMがニューラルネットワークに入力される学習用データである。正解データは、作業時間に応じた評価値(作業時間そのものでもよく作業時間の逆数でもよい)または作業員数に応じた評価値(作業員数そのものでもよく作業員数の逆数でもよい)である。評価部330は、この学習用データと正解データとを用いてKPI学習231を実行し、カテゴリ別注文割合CR1~CRMに対応する作業順序列を全工程で作業した場合のKPI推定モデル232を生成する。
【0050】
<作業順序列作成モデル学習例>
図10は、作業順序列作成モデル学習部340による作業順序列モデル学習例を示す説明図である。作業順序列作成モデル学習部340は、作業順序列計画データ630を入力とし、以下のステップでロバストな作業順序列作成モデル341を生成する。
【0051】
作業順序列作成モデル学習部340は、作業順序列計画データ630内の作業順序列をニューラルネットワークの解空間1000から実行可能解空間1001に写像する(ステップS1001)。ステップS1001では、既存技術であるAttentionメカニズムが適用される。
【0052】
つぎに、作業順序列作成モデル学習部340は、遺伝子アルゴリズムなどの既存技術を適用して作業順序列計画データ630内の作業順序列の最適解を探索する(ステップS1002)。作業順序列作成モデル学習部340は、具体的には、たとえば、摂動傾向データ322を用いて作業順序列計画データ630内の作業順序列に摂動を与え、摂動が与えられた作業順序列のKPIを、KPI推定モデル232を用いて算出する。
【0053】
そして、作業順序列作成モデル学習部340は、算出したKPIと作業順序列計画データ630に関する目標KPIとの差に基づいてニューラルネットワークの重みパラメータを更新して、作業順序列作成モデル341を生成する(ステップS1003)。作業順序列作成モデル学習部340は、たとえば、算出したKPIと目標KPIとの差が許容範囲内となるまで、ステップS1002およびS1003を繰り返し実行する。
【0054】
このように実施例1によれば、各工程での作業時に順序変更があったとしてもKPIの低下を許容範囲内に抑制可能な作業順序列353を提供することができる。
【実施例0055】
つぎに、実施例2について説明する。実施例1にかかる作業順序列生成装置は、作業順序列作成モデルを用いて作業順序列に摂動を与えつつ、かつ、KPIの低下が抑制された作業順序列を生成した。これに対し、実施例2にかかる作業順序列生成装置は、作業順序列作成モデルではなく、シミュレーションにより作業順序列に摂動を与えつつ、かつ、KPIの低下が抑制された作業順序列を生成する。なお、実施例2では、実施例1との相違点を中心に説明するため、実施例1と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
<作業順序列生成装置の機能的構成例>
図11は、実施例2にかかる作業順序列生成装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図12は、実施例2にかかる作業順序列生成装置による作業順序列生成手順例を示すフローチャートである。作業順序列生成装置1100は、学習部302と、作成部305105と、を有する。
【0057】
学習部302は、作業順序列実績データ730を取得する(ステップS1201)と、統計作業順序モデル生成1101により統計作業順序モデル1110を生成する(ステップS1202)。統計作業順序モデル生成1101および統計作業順序モデル1110については、
図13で後述する。なお、作業順序列生成装置1100は、学習部302の替わりに、生成済みの統計作業順序モデル1110を有してもよい。
【0058】
作成部305は、統計作業順序モデル生成1101を実行しつつ、摂動生成1104、KPI取得1105、および妥当性評価1106を実行する。具体的には、たとえば、作成部305は、初期作業順序列1102を取得すると(ステップS1203)、摂動生成1104を実行して、初期作業順序列1102に摂動を与えた1以上の作業順序列候補を生成する(ステップS1204)。初期作業順序列1102は、たとえば、作業順序列計画データ630でもよく、作業順序列実績データ730でもよい。摂動生成1104の詳細については、
図13で後述する。
【0059】
つぎに、作成部305は、KPI取得1105により、作業順序列候補の各々についてKPIを取得する(ステップS1205)。KPI取得1105は、たとえば、既知の手法によりKPIを算出する処理でもよい。また、KPI取得1105は、実施例1の
図9で示したように、評価部330により生成されたKPI推定モデルを用いて、KPIを算出する処理でもよい。また、KPI取得1105は、作業順序列生成装置1100と通信可能な外部のコンピュータに作業順序列候補を送信した結果、当該外部のコンピュータによって計算されたKPIを受信してもよい。
【0060】
つぎに、作成部305は、作業順序列候補の各々について妥当性評価1106を実行する(ステップS1206)。妥当性評価1106は、たとえば、初期作業順序列1102と作業順序列候補の各々との順位相関係数を求めて、作業順序列候補ごとに作業順序列候補の妥当性を評価する処理である。妥当性評価1106の詳細については、
図14および
図15で後述する。
【0061】
そして、作成部305は、妥当性評価1106による評価結果を出力する(ステップS1207)。出力された評価結果は、たとえば、表示部306に表示される。
【0062】
<統計作業順序モデル生成および摂動生成例>
図13は、統計作業順序モデル生成および摂動生成例を示す説明図である。学習部302は、作業順序列実績データ730に含まれる商品の作業順序の確率分布群1300を生成する。商品の作業順序の確率分布群1300は、商品の作業順序の確率分布P(A)、P(B)、P(C)、…の集合である。商品の作業順序の確率分布P(A)、P(B)、P(C)、…を区別しない場合は、単に商品の作業順序の確率分布Pと表記する。商品の作業順序の確率分布Pは、その商品が統計的にどの作業順になりやすいかを示す確率分布である。
【0063】
確率分布は正規分布を初めとして様々な分布を想定することが可能であり、パラメータを設定することで複雑な統計作業順序モデル1110を表現することも可能である。ユーザは、データを用いた教師あり学習をせずとも、知見に基づきパラメータを設定するだけで尤もらしい摂動の生成を実現することができる。
【0064】
学習部302は、記憶デバイスに保存されている作成済みの商品の作業順序の確率分布群1300を読み出してもよい。また、学習部302は、作業順序列生成装置1100と通信可能な外部のコンピュータから商品の作業順序の確率分布群1300を取得してもよい。学習部302は、商品の作業順序の確率分布群1300を作業順に配列した統計作業順序モデル1110を生成する。
【0065】
作成部305は、統計作業順序モデル1110から初期作業順序列1102を生成する。なお、初期作業順序列1102では、説明を単純化するため、商品A~Zがそれぞれ1回ずつ出現する作業順序列であるが、複数回出現する商品があってもよい。
【0066】
つぎに、作成部305は、摂動生成1104により初期作業順序列1102に摂動を与え、作業順序列候補1301を生成する。具体的には、たとえば、作成部305は、初期作業順序列1102と異なるように、統計作業順序モデル1110から商品ごとに順番を抽出する。すなわち、商品A~Zの順序が入れ替わる可能性がある。このように、作成部305は、摂動生成1104により初期作業順序列1102を意図的に変更することができる。
【0067】
なお、
図13では、摂動の一例としてサーストン型について説明したが、サーストン型に限らず、一対比較型、距離ベース型、多段階型でもよい。
【0068】
<妥当性評価例>
つぎに、妥当性評価1106については、
図14および
図15を用いて説明する。
【0069】
図14は、妥当性評価1106による順位相関算出例を示す説明図である。作業現場での作業順序列の類似性が表現できていれば、2つの作業順序列間で近しい順番がより入れ替わりやすく、遠い順番どうしの入れ替わりは相対的に起きにくい。作業順序列の類似性を評価する尺度として、作業順序列を順位ベクトル(対象商品を固定し、要素に作業順を並べたベクトル)を用い、通常のベクトルとみなして距離を定義する。この場合、スピアマンの順位相関係数(スピエアマン距離を要素数で正規化した値)が適用される。順位相関係数は、-1.0から1.0の範囲の値をとり、値が大きいほど2つの作業順序列は類似していることを示す。
【0070】
図14において、商品A~Eの作業順を示す初期作業順序列1400と摂動が与えられた作業順序列候補1401との順位相関係数は0.8となり、初期作業順序列1400と摂動が与えられた作業順序列候補1402との順位相関係数は0.3となり、初期作業順序列1400と摂動が与えられた作業順序列候補1403との順位相関係数は-1.0となったとする。
【0071】
図15は、妥当性評価1106による妥当性評価例を示す説明図である。評価結果グラフ150において横軸を順位相関係数、縦軸をKPI取得1105で取得されたKPIとする。縦軸のKPIは、初期作業順序列1102との比較対象となる作業順序列候補のKPIである。KPIは高いほど評価が高い(たとえば、作業時間が短い、または、作業員数が少ない)ものとする。
【0072】
点1500は、初期作業順序列1400どうしの順位相関係数と、初期作業順序列1400のKPIと、の交点を評価結果グラフ150にプロットした点である。初期作業順序列1400どうしの順位相関であるため、その順位相関係数は1.0になる。また、このKPI(符号1510で表記)からしきい値THeまでの範囲がKPI許容範囲となる。しきい値THeは、初期作業順序列1400のKPIを基準とするKPIの下限値である。すなわち、KPIがしきい値THe以上の作業順序列候補であれば、初期作業順序列1400に対しロバストな作業順序列となり、表示部306に出力される。
【0073】
点1501は、初期作業順序列1400と作業順序列候補1401との順位相関係数(=0.8)と、しきい値THe以上となる作業順序列候補1401のKPIと、の交点を評価結果グラフ150にプロットした点である。点1501の縦軸方向の振幅1511は、同一順位相関係数となる他の作業順序列候補の分布を示す。同一順位相関係数となる他の作業順序列候補の数が多いほどロバスト性が向上する。
【0074】
振幅1511内の他の作業順序列候補のKPIは、しきい値THeとなるため、作業順序列候補1401が作業現場に与えられた場合に、当該他の作業順序列候補に変更されても、いずれのKPIはしきい値THe未満にならないため、作業順序列候補1401はロバストであると評価される。ただし、振幅1511内の他の作業順序列候補の数が所定数未満である場合、作業順序列候補1401はロバストでないと評価される。
【0075】
点1502は、初期作業順序列1400と作業順序列候補1402との順位相関係数(=0.3)と、しきい値THe未満となる作業順序列候補1402のKPIと、の交点を評価結果グラフ150にプロットした点である。点1502の縦軸方向の振幅1521は、同一順位相関係数となる他の作業順序列候補の分布を示す。
【0076】
作業順序列候補1402のKPIはしきい値THe未満であるため、採用されない。仮に、しきい値THeが0.28であったとしても、作業順序列候補1402の振幅1521内の他の作業順序列候補には、しきい値THe未満のKPIを有する作業順序列候補が含まれている。したがって、しきい値THeが0.28である場合であっても、作業順序列候補1402はロバストでないと評価される。
【0077】
また、
図15において、作成部305は、順位相関係数がしきい値THr未満の作業順序列候補1402を除外してもよい。順位相関係数がしきい値THr未満の作業順序列候補1402は、実際の作業での順序変更で発生しにくいからである。しきい値THe,THrは、ユーザによって設定可能なパラメータである。
【0078】
<画面例>
図16は、作業順序列生成装置の表示画面例1を示す説明図である。表示画面1600は、表示部306に表示される。第1表示領域1601には、注文リスト352と、初期作業順序列1102となる作業順序列計画データ630に対応する人員配置計画データ620と、が表示されている。
【0079】
第2表示領域1602には、作業順序に関する情報が表示される。摂動タイプは、摂動の種類を示す。第2表示領域1602のグラフィカルユーザインタフェースにより、ユーザは、サーストン型、一対比較型、距離ベース型および多段階型の中からいずれか1つを選択可能である。
図16では、サーストン型が選択された状態を示している。
【0080】
摂動の大きさとは、初期作業順序列1102と作業順序列候補1301との間で順序が入れ替わる回数である。カーソル1603でスライダ1621を操作することにより、ユーザは、摂動の大きさを調整可能である。カーソル1603の位置に対応する回数が、同一順番において初期作業順序列1102と作業順序列候補1301との商品が異なる数である。これにより、順序の過度な変更を抑制することができ現実的な作業順序列候補1301を出力することができる。
【0081】
予想作業時間とは、生成した作業順序列253で予測される作業時間である。たとえば、作業順序列生成装置1100は、作成した作業順序列253からカテゴリ別注文割合CR1~CRMを算出し、カテゴリ別注文割合CR1~CRMをKPI推定モデル232に入力することにより、作業時間に関するKPIを算出する。作業順序列生成装置1100は、作業時間に関するKPIが作業時間であれば、予想作業時間として出力し、作業時間に関するKPIが作業時間の逆数であれば、作業時間に関するKPIの逆数を予想作業時間として算出する。
【0082】
また、図示はしないが、表示画面1600では、同一順位相関係数となる他の作業順序列候補の下限値もユーザ操作で設定可能としてもよい。
【0083】
作成ボタン1622は、押下により、作成部305が摂動タイプおよび摂動の大きさに基づいて処理を開始するためのグラフィカルユーザインタフェースである。決定ボタン1623は、押下により、作成した作業順序列253を作業現場に指示するためのグラフィカルユーザインタフェースである。
【0084】
図17は、作業順序列生成装置の表示画面例2を示す説明図である。
図17は、
図16において作成ボタン1622が押下され、作成部305により作業順序列253が作成された場合の表示画面例である。第2表示領域には、作成部305により作成された作業順序列253が表示される。この状態で決定ボタン1623が押下されると、作業順序列253が作業現場のコンピュータに送信される。したがって、作業現場は、作業順序列253に従って作業することになる。
【0085】
図18は、作業順序列生成装置の進捗画面例1を示す説明図である。
図18は、作業開始時における進捗画面1800の表示例を示す。進捗画面1800は、作業の進捗情報を表示する画面であり、表示部306に表示される。進捗画面1800は、全体進捗状況表示領域1801と、トータルピッキング進捗状況表示領域1810と、値付け進捗状況表示領域1820と、仕分け進捗状況表示領域1830と、検品進捗状況表示領域1840と、を有する。
【0086】
全体進捗状況表示領域1801は、全工程の進捗状況を表示する。具体的には、たとえば、作業開始からの経過時間、予想作業時間、作業が完了した注文数が表示される。また、アイコン1802は、表情により進捗状況を示す。
【0087】
トータルピッキング進捗状況表示領域1810、値付け進捗状況表示領域1820、仕分け進捗状況表示領域1830および検品進捗状況表示領域1840は、総作業時間、総作業員数、注文数、作業順序状況を表示する。総作業時間は、その工程に要した作業時間である。総作業員数は、その工程に要した作業員の人数である。注文数は、その工程で捌いた注文の数である。作業順序状況は、その工程での作業順序の状況を示す。総作業時間、総作業員数、および注文数は、各工程が行われる作業現場を管理するシステムから得られる。
【0088】
なお、トータルピッキング進捗状況表示領域1810には、作業順序状況として、作業順序列1811とアイコン1812が表示される。作業順序列1811は、作業順序列生成装置によって生成されたトータルピッキングに関する作業順序列253である。アイコン1812は、表情によりトータルピッキングの進捗状況を示す。
【0089】
図19は、作業順序列生成装置の進捗画面例2を示す説明図である。
図19は、作業中における進捗画面1800の表示例を示す。値付け、仕分け、および検品についても作業が開始されたため、それぞれアイコン1822、1832、1842が表示されている。
【0090】
図20は、作業順序列生成装置の進捗画面例3を示す説明図である。
図20は、作業終了時における進捗画面1800の表示例を示す。検品進捗状況表示領域1840には、作業順序列2000が表示されている。作業順序列2000は、作業順序列生成装置によって生成された検品に関する作業順序列253である。
【0091】
なお、
図18~
図20において、各アイコン1802、1812、1822、1832、1842の各々について、表情がスマイルであれば作業が進んでいることを示し、表情が不満げであれば作業が遅延していることを示す。また、
図16~
図20に示した画面例は、実施例1においても同様である。ただし、実施例1に適用した場合、摂動タイプの選択は存在しない。
【0092】
このように実施例2によれば、各工程での作業時に順序変更があったとしてもKPIの低下を許容範囲内に抑制可能な作業順序列252を提供することができる。
【0093】
また、上述した実施例1および実施例2にかかる作業順序列生成装置200,1100は、下記(1)~(12)のように構成することもできる。
【0094】
(1)作業順序列生成装置200は、プログラムを実行するプロセッサ201と、前記プログラムを記憶する記憶デバイス202と、を有し、処理対象群(たとえば、商品群)について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する。前記プロセッサ201は、第1作業順序列(たとえば、作業順序列実績データ730)に摂動を与えて第2作業順序列を生成する摂動処理と、前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値と、前記摂動処理によって生成された第2作業順序列での作業に関する第2評価値と、の差が許容範囲内になるように学習することにより、入力作業順序列(たとえば、作業順序列計画データ630)の作業に関する評価値との差が前記許容範囲内となるような特定の作業順序列を作成する学習モデル(作業順序列作成モデル341)を生成する学習処理と、を実行する。
【0095】
これにより、機械学習により、作業順序の探索時に摂動を与えて評価し、ロバストかつ最適な作業順序を探索することができる。
【0096】
(2)上記(1)の作業順序列生成装置200において、前記摂動処理では、前記プロセッサ201は、複数の順番における複数の処理対象の組み合わせに関する生起確率を規定した摂動傾向データ322に基づいて、前記第1作業順序列内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせを変更することにより、前記第2作業順序列を生成する。
【0097】
これにより、順序が入れ替わる確率により摂動を与えることができる。
【0098】
(3)上記(2)の作業順序列生成装置200において、前記プロセッサ201は、作業前に計画した計画作業順序列(たとえば、作業順序列計画データ630)内の複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせと、前記計画作業順序列で作業が行われた場合の実績作業順序列(たとえば、作業順序列実績データ730)内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせと、の異同に基づいて、前記摂動傾向データ322を生成する第1生成処理を実行し、前記摂動処理では、前記プロセッサ201は、前記第1生成処理によって生成された摂動傾向データ322に基づいて、前記第1作業順序列内の前記複数の順番における前記複数の処理対象の組み合わせを変更することにより、前記第2作業順序列を生成する。
【0099】
これにより、作業順序列計画データ630と、作業順序列計画データ630から実際に変更された作業順序列実績データ730と、の異同の実績から得られた順序が入れ替わる確率により、摂動を与えることができる。
【0100】
(4)上記(1)の作業順序列生成装置200において、前記学習処理では、前記プロセッサ201は、前記入力作業順序列の作業に関する評価値を算出する評価値推定モデルを用いて、前記評価値推定モデルに前記第1作業順序列を入力することにより前記第1評価値を算出するとともに前記評価値推定モデルに前記第2作業順序列を入力することにより前記第2評価値を算出し、前記第1評価値と前記第2評価値との差が前記許容範囲内になるように学習することにより、前記学習モデルを生成する。
【0101】
これにより、評価値の低減を許容範囲内に抑制した第2作業順序列を生成することができる。
【0102】
(5)上記(4)の作業順序列生成装置200において、前記プロセッサ201は、実績作業順序列(作業順序列実績データ730)内の前記処理対象群の各々の処理対象を所定数のカテゴリ502に分類したカテゴリ別の割合データ(カテゴリ別注文割合CR)を学習用データとし、前記実績作業順序での作業に関する評価値を正解データとして学習することにより、前記評価値推定モデル(KPI推定モデル332)を生成する第2生成処理を実行し、前記学習処理では、前記プロセッサ201は、前記第2生成処理によって生成された評価値推定モデルを用いて、前記学習モデルを生成する。
【0103】
これにより、評価値を高精度に推定して、学習モデル(作業順序列作成モデル341)を生成することができる。
【0104】
(6)作業順序列生成装置1100は、プログラムを実行するプロセッサ201と、前記プログラムを記憶する記憶デバイス202と、を有し、処理対象群について作業をする順番を規定した作業順序列を生成する。前記プロセッサ201は、第1作業順序列(初期作業順序列1102)に摂動を与えて第2作業順序列(作業順序列候補1301)を生成する摂動処理(ステップS1204)と、前記第1作業順序列と前記第2作業順序列との順位相関係数を算出する算出処理(ステップS1206)と、前記第1作業順序列での作業に関する第1評価値に基づく下限評価値THeと前記第2作業順序列での作業に関する第2評価値との比較結果と、前記算出処理によって算出された順位相関係数となる第3作業順序列の数と、に基づいて、前記第2作業順序列を出力対象に決定する決定処理(ステップS1207)と、を実行する。
【0105】
これにより、シミュレーションにより、作業順序の探索時に摂動を与えて評価し、ロバストかつ最適な作業順序を探索することができる。
【0106】
(7)上記(6)の作業順序列生成装置1100において、前記決定処理では、前記プロセッサ201は、前記第2評価値が前記下限評価値THe以上である場合、前記第2作業順序列を出力対象に決定する。
【0107】
(8)上記(6)の作業順序列生成装置1100において、前記決定処理では、前記プロセッサ201は、前記第3作業順序列の数が所定数以上である場合、前記第2作業順序列を出力対象に決定する。
【0108】
これにより、順序変更された作業順序列を所定数以上網羅することができる。
【0109】
(9)上記(8)の作業順序列生成装置1100において、前記プロセッサ201は、前記所定数を設定可能な画面を表示可能に出力する。
【0110】
これにより、ユーザが所定数を自由に設定することができる。
【0111】
(10)上記(6)の作業順序列生成装置1100において、前記摂動処理では、前記プロセッサ201は、実績作業順序列に基づく前記処理対象群の各々の処理対象の順番が生起する確率分布群1300を用いて、前記第2作業順序列を生成する。
【0112】
これにより、統計的に出現しやすい作業順序列を生成することができる。
【0113】
(11)上記(10)の作業順序列生成装置1100において、前記摂動処理では、前記プロセッサ201は、前記第1作業順序列と同一順番において前記処理対象が異なる数に基づいて、前記第2作業順序列を生成する。
【0114】
これにより、第2作業順序列(作業順序列候補1301)のバリエーションの増加を図ることができる。
【0115】
(12)上記(11)の作業順序列生成装置1100において、前記プロセッサ201は、前記第2作業順序列において前記処理対象が異なる上限数を設定可能な画面を表示可能に出力する。
【0116】
これにより、処理対象が異なる上限数をユーザが自由に設定することができる。
【0117】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0118】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサ201がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0119】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0120】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。