(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023400
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】裁断機及び裁断機の刃幅測定方法
(51)【国際特許分類】
B26D 7/22 20060101AFI20230209BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20230209BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B26D7/22 A
B26D5/00 Z
B26D1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128909
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】▲宇▼田 涼佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭徳
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021HA07
3C027HH01
3C027HH11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】刃の向きを回転させる回転機構を利用し、光学的に刃幅を測定することができる裁断機を提供する。
【解決手段】裁断機2は、裁断用の刃17と、刃17の昇降機構13と、刃17の回転機構12とを有する裁断ヘッド10と、裁断ヘッド10をXYの2方向に移動させる移動機構4と、裁断ヘッド10及び移動機構4を制御するコントローラ6、とを備えている。裁断ヘッド10は、ヘッド内の所定位置を通る検出線上での刃16の有無を光学的に検出する。回転機構12により刃16の向きを回転させた際に、検出線上での刃の有無の変化を検出した際の、刃16の回転角から刃16の刃幅を算出し、裁断ヘッド10が備える回転機構12を用い、刃幅を光学的に測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断用の刃と、前記刃の昇降機構と、前記刃の向きを回転させる回転機構とを有する裁断ヘッドと、前記裁断ヘッドと被裁断物を相対的にXYの2方向に移動させる移動機構と、裁断ヘッド及び移動機構を制御するコントローラ、とを備える裁断機において、
前記裁断ヘッドは、裁断ヘッド内の所定位置を通る検出線上での、前記刃の有無を光学的に検出する検出手段を備え、
前記回転機構により前記刃の向きを回転させた際に、前記検出線上での刃の有無の変化を前記検出手段により検出した際の、前記刃の回転角θから前記刃の刃幅を算出するように構成されていることを特徴とする、裁断機。
【請求項2】
前記検出手段は、前記刃の一方の側面側で裁断ヘッドに取り付けたレーザ光源と、前記刃の他方の側面側で裁断ヘッドに取り付けた受光素子とから成る、ことを特徴とする、請求項1の裁断機。
【請求項3】
前記検出手段により前記刃が有る状態から無い状態への変化、あるいは刃が無い状態から有る状態への変化を1回検出すると、その際の前記刃の回転角から、前記刃の刃幅を算出するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2の裁断機。
【請求項4】
前記刃は刃先が真っ直ぐな直刀であり、
かつ前記昇降機構により刃を昇降させると共に、複数の高さで前記刃の向きを回転させて、前記刃の刃幅を複数の高さで測定することにより、刃の部分的な消耗も検出するように構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかの裁断機。
【請求項5】
裁断用の刃と、前記刃の昇降機構と、前記刃の向きを回転させる回転機構とを有する裁断ヘッドと、前記裁断ヘッドもしくは被裁断物をXYの2方向に移動させる移動機構と、裁断ヘッド及び移動機構を制御するコントローラ、とを備える裁断機での前記刃の刃幅を測定する方法において、
前記裁断ヘッドに、裁断ヘッド内の所定位置を通る検出線上での、前記刃の有無を光学的に検出する検出手段が設けられ、
前記回転機構により前記刃の向きを回転させると共に、前記検出線上で刃の有無が変化したことを前記検出手段により検出した際の、前記刃の回転角から前記刃の刃幅を算出する、ことを特徴とする、裁断機の刃幅測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は裁断機の刃幅測定に関する。
【背景技術】
【0002】
裁断機では、ほぼ真っ直ぐな刃(直刀)をレシプロ機構により昇降させ、シート材を裁断する。あるいは直刀の代わりに丸刃を回転させ、シート材を裁断する。刃は裁断により摩耗するので、裁断機上で研磨する。裁断と研磨により刃幅が変化し、刃先(刃の先端)位置が変化すると、裁断ヘッドに対する裁断位置がその分変化する。このため刃幅を測定(刃先位置の測定)し、裁断位置を補正する必要がある。
【0003】
出願人は、検出ピンを刃先に向けて前進させると共に、ピンが刃先に接触する位置から刃先位置を測定することを提案した(特許文献1:特公平8-15718)。また特許文献1では、レーザビームを用い、非接触で刃先位置を検出することも提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出ピンを前進させるには、ステッピングモータなどの機構を追加する必要があり、スペースの点でもコストの点でも問題がある。
【0006】
この発明の課題は、裁断機が備える刃の向きを回転させる回転機構を利用し、光学的に刃幅を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の裁断機は、裁断用の刃と、前記刃の昇降機構と、前記刃の向きを回転させる回転機構とを有する裁断ヘッドと、前記裁断ヘッドと被裁断物を相対的にXYの2方向に移動させる移動機構と、裁断ヘッド及び移動機構を制御するコントローラ、とを備える裁断機において、
前記裁断ヘッドは、裁断ヘッド内の所定位置を通る検出線上での、前記刃の有無を光学的に検出する検出手段を備え、
前記回転機構により前記刃の向きを回転させた際に、前記検出線上での刃の有無の変化を前記検出手段により検出した際の、前記刃の回転角から前記刃の刃幅を算出するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明の裁断機の刃幅測定方法は、裁断用の刃と、前記刃の昇降機構と、前記刃の向きを回転させる回転機構とを有する裁断ヘッドと、前記裁断ヘッドと被裁断物を相対的にXYの2方向に移動させる移動機構と、裁断ヘッド及び移動機構を制御するコントローラ、とを備える裁断機での前記刃の刃幅を測定する方法において、
前記裁断ヘッドに、裁断ヘッド内の所定位置を通る検出線上での、前記刃の有無を光学的に検出する検出手段が設けられ、
前記回転機構により前記刃の向きを回転させると共に、前記検出線上で刃の有無が変化したことを前記検出手段により検出した際の、前記刃の回転角から前記刃の刃幅を算出する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、裁断ヘッドが備える回転機構を用いて刃の向きを回転させる。刃が回転すると、検出手段から見た刃幅が変化し、検出線上での刃の有無がある回転角で変化する。この回転角から刃幅を測定すると、簡単な構成でかつ正確に刃幅を測定できる。また特許文献1のステッピングモータなどを必要としないので、コンパクトかつ低コストである。
【0010】
好ましくは、前記検出手段は、前記刃の一方の側面側で裁断ヘッドに取り付けたレーザ光源と、前記刃の他方の側面側で裁断ヘッドに取り付けた受光素子とから成る。検出手段は、半導体レーザなどのレーザ光源と、フォトダイオード、焦電素子などの受光素子により簡単に構成でき、刃の有無を簡単に検出できる。
【0011】
好ましくは、前記検出手段により前記刃が有る状態から無い状態への変化、あるいは刃が無い状態から有る状態への変化を1回検出すると、その際の前記刃の回転角から、前記刃の刃幅を算出する。1回の回転で刃幅を測定できるので、短時間で刃幅を測定できる。
【0012】
好ましくは、前記刃は刃先が真っ直ぐな直刀であり、かつ前記昇降機構により刃を昇降させると共に、複数の高さで前記刃の向きを回転させて、前記刃の刃幅を複数の高さで測定することにより、刃の部分的な消耗も検出する。裁断ヘッドは刃を昇降させる機構を備えているので、この機構で刃を昇降させながら刃幅を複数の高さで測定する。このようにすると、刃の一部が欠けている、特定の高さ範囲で刃が他よりも摩耗しているなどのことも検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】レーザビームと受光素子を用いる、実施例の刃幅測定方法を示す図
【
図3】カメラを用いる、変形例の刃幅測定方法を示す図
【
図4】実施例での、刃幅測定アルゴリズムを示すフローチャート
【
図6】丸刃での幅測定アルゴリズムを示す変形例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例0015】
図1~
図6に実施例を示す。
図1において、2は裁断機で、図示しない裁断ベッドを備え、裁断するシート材を1枚~複数枚載置する。移動機構4は、裁断ヘッド10を裁断ベッドに対しXYの2方向に移動させる。またコントローラ6は、移動機構4と裁断ヘッド10を制御する。特には刃16の刃幅の変化に応じて、刃16を研磨させ、かつ刃16でシート材を裁断する軌跡(刃16の中心などの軌跡)を変化させる。
【0016】
裁断ヘッド10は、回転機構12により、昇降機構13とレシプロ機構14及び刃16を回転させる。昇降機構13はレシプロ機構14及び刃16を昇降させ、刃16をシート材に突き刺しかつシート材から引き抜く。レシプロ機構14は刃16を上下に高速で往復させ、シート材を裁断する。刃16は例えば直刀で、刃先17が上下に真っ直ぐであるが、
図5の丸刃40などでも良い。大きなストロークでの刃16の昇降を昇降機構13により行い、高速での刃16の往復昇降をレシプロ機構14により行う。しかしこれらの運動を1つの機構により行っても良い。
【0017】
18はレーザ光源で、例えば半導体レーザであり、20は受光素子で、例えばフォトダイオード、焦電素子である。レーザ光源18と受光素子20は側面視で刃16の両側にあり、裁断ヘッド10に固定で昇降も回転もしない。またレーザ光源18と受光素子20は、裁断ベッド上のシート材よりも高い位置に配置する。受光素子20はレーザビームを受光すると、信号S1を例えばコントローラ6へ送出する。22は研磨装置で、回転機構12により刃16を回転させて研磨装置の砥石に接触させ、昇降機構13あるいはレシプロ機構14により刃16を研磨装置の砥石に対して摺動させ、刃先17を研磨する。
【0018】
実施例での刃幅の測定原理を
図2に示す。
図1の回転機構12は、刃16を回転中心24を中心に回転させる。レーザ光源18から受光素子20へのレーザビーム(検出線)を鎖線25で示す。刃16の向きがレーザビーム25に直角な状態が基準状態で、基準状態ではレーザビーム25は刃16に遮られ、受光素子20に届かない。刃16を、受光素子20へ向けて、あるいはレーザ光源18へ向けて、回転中心24を中心に回転させると、基準状態からのある回転角θで、レーザビームが受光素子20に届くようになる。受光素子20によりこの角度θを測定する。
【0019】
回転中心24から刃先17までの距離rが例えばr1の場合、回転角θ1でレーザビームが届くようになる。刃先が17’まで後退し、回転中心24と刃先17’の距離がr2の場合、回転角θ2でレーザビームが届くようになる。なおhはレーザビーム25から回転中心24までの距離である。いずれの場合も、
r・COSθ=h 1)
により、回転中心24から刃先17,17’までの距離(刃幅)を測定できる。レーザビームは細いので、1回の測定で刃幅を測定できる。勿論、刃16が無い状態から刃が有る状態へ変化する角度を測定しても良い。
【0020】
図3に示すように、レーザ光源18と受光素子20の代わりに、カメラ30を用いることもできる。カメラ30の所定の画素に、刃16が写っているかどうかを観察する。カメラ30からの検出線と回転中心24との距離をhとする。刃16を回転させ、回転角θで所定の画素に刃16が写らなくなったとする。この時、回転中心24から刃先17,17’までの距離rは1)式を充たす。またカメラ30を用いると、複数個所で刃幅を1回で測定できる。
r・COSθ=h 1)
【0021】
図4に実施例の刃幅測定アルゴリズムを示す。直刃16では数分毎に刃幅の測定を行う。コントローラ6は、例えば所定時間刃16を使用すると、刃幅の測定が必要とする(ステップS1)。頻繁に刃幅を測定するので、刃幅測定が裁断を遅らせないように、裁断ヘッド10が次の裁断のために空走中でかつ刃先を回転させている際に、刃幅を測定する(ステップS2)。あるいは、シート材の交換などのため、裁断ヘッド10がアイドル(実行中の処理がないこと)の際に、刃先を回転させて刃幅を測定する(ステップS2)。
【0022】
回転機構12により、刃16を目標角度の手前へ高速で回転させる(ステップS3)。ここで目標角度は刃先17の位置を検出する予想角度のことである。これと同時に、昇降機構13あるいはレシプロ機構14により刃16を上昇させ、裁断に用いている高さの刃先17がレーザビームによる監視位置に来るようにする。目標角度は、例えば前回測定した時の角度をメモリに記憶し、これに基づいて定める。
【0023】
次いで低速で刃16を回転させ、受光素子20から見てレーザビームがオフからオンに変化する角度を測定する(ステップS4)。ここでさらに刃16を逆向きに回転させ、レーザビームがオンからオフに変化する角度を測定し、2つの角度の平均角を用いても良い。なお刃幅の測定後は高速で刃の向きを回転させる。
【0024】
高さ方向に沿って刃幅が一様かどうか確認する場合(ステップS5)、目標角度の付近で刃を昇降させ、高さを変えてから刃を低速で回転させ、複数の高さで刃幅を測定する(ステップS6,S7)。この測定では刃16を大きなストロークで昇降させるので、昇降機構13とレシプロ機構14を共に用いても良く、昇降機構13のみで昇降させても良い。
【0025】
なおステップS4で測定した角度より僅かに小さな角度に刃先の向きを固定して、刃を昇降させ、レーザビームが受光素子20から見てオンする高さがあるかどうかを観察しても良い。そしてこの場合、ステップS4で測定した角度より僅かに大きな角度に刃先の向きを固定し、再度刃を昇降させ、レーザビームが受光素子20から見てオフする高さがあるかどうかを観察する。すると刃先位置の分布が許容範囲内かどうかを観察でき、許容範囲から外れている場合その高さを測定できる。
【0026】
実施例では直刀状の刃16を示したが、
図5に示す丸刃40の刃幅を測定しても良い。41は円形の刃先で、42は刃40の回転軸である。刃40と回転軸42を回転中心24回りに回転させ、刃40の中心(回転軸42の中心)から刃先41までの距離rを測定する。回転軸42の中心からレーザビーム25までの距離をhとし、受光素子20から見てレーザビーム25がオンする際の角度をθとすると、刃幅を表す距離rは1)式で与えられる。
r・COSθ=h 1)
【0027】
図6に丸刃の場合の測定アルゴリズムを示す。レーザービームは例えば回転軸42と同じ高さに配置する。ステップS11で刃幅測定の要否を確認し、刃幅を測定する場合、空走中でかつ回転軸42を回転させている場合、あるいは裁断ヘッド10がアイドル(実行中の処理がないこと)の際に、丸刃の向きを回転させて刃幅を測定する(ステップS12)。
【0028】
回転軸42の方向を目標角度の手前へ高速で回転させ(ステップS13)、次いで低速で目標角度を通過するように回転軸42の方向を回転させる(ステップS14)。この時に、受光素子20から見てレーザビームがオフからオンに変化する角度θを求め、1)式により刃幅を測定する。
【0029】
刃先41の位置が円周方向に沿って均一かどうかを確認する場合、ステップS15,S16を実行し、確認が不要であればステップS15,S16は省略する。角度θよりも僅かに大きい角度と小さい角度とに、回転軸42の向きを固定し、刃40を各々1回転させる。刃先41の位置が均一であれば、1回転の間にレーザビームのオン/オフは変化しない。許容範囲以上に刃先41の位置が変化している場合、1回転の間にレーザビームのオン/オフが変化する。
【0030】
実施例では目標角度の手前まで高速回転させるが、高速回転させなくても良い。