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  • 特開-カテーテルの製造方法 図1
  • 特開-カテーテルの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023431
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A61M25/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128973
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 亮
(72)【発明者】
【氏名】外所 厚史
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB05
4C267BB43
4C267FF01
4C267GG03
(57)【要約】
【課題】アクリル系サージカルテープを用いて良好に粘着固定することが可能なカテーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明のカテーテルの製造方法は、シリコーンチューブ11を有するカテーテル10の製造方法であって、シリコーンチューブ11を形成する第1の工程と、シリコーンチューブ11の少なくとも固定部20に、表面改質処理を行う第2の工程と、を有するカテーテルの製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンチューブを有するカテーテルの製造方法であって、
前記シリコーンチューブを形成する第1の工程と、
前記シリコーンチューブの、少なくとも固定部に、表面改質処理を行う第2の工程と、を有するカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記表面改質処理が、UV照射、エキシマUV照射又はプラズマ照射である請求項1記載のカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、体内へ水分、栄養剤等を導入、又は体内の物質を対外に排出するために、シリコーンゴムからなるカテーテルが使用されている。また、カテーテルの先端(患者側)に膨張収縮するバルーンが配置されたバルーンカテーテルも広く使用されている。これらのカテーテルは、体内に挿入後、カテーテルが抜けたり動いたりしないように、対外に出ている部分を上からサージカルテープで体表面に固定する必要がある。医療現場では、このようなサージカルテープとしては、アクリル系サージカルテープが主に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、アクリル系サージカルテープは、シリコーンカテーテルへの粘着性がそれほど高くないという問題がある。そこで、アクリル系サージカルテープの代わりにシリコーン系サージカルテープを用いることが考えられる。しかしながら、シリコーン系サージカルテープは、シリコーンカテーテルに対して、アクリル系サージカルテープより粘着力はあるものの、高価であり、流通量も少ない。また、シリコーン系サージカルテープを導入しても、アクリル系サージカルテープが医療現場で主に用いられていることから、シリコーン系サージカルテープとアクリル系サージカルテープとを使い分けることは、管理又は確認作業などに手間がかかるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アクリル系サージカルテープを用いて良好に粘着固定することが可能なカテーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のカテーテルの製造方法は、シリコーンチューブを有するカテーテルの製造方法であって、シリコーンチューブを形成する第1の工程と、シリコーンチューブの少なくとも固定部に、表面改質処理を行う第2の工程と、を有するカテーテルの製造方法である。
【0005】
表面改質処理は、UV照射、エキシマUV照射又はプラズマ照射であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカテーテルの製造方法によれば、アクリル系サージカルテープで、カテーテルを良好に粘着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態のカテーテルを示す側面図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のカテーテルの一実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0009】
[カテーテルの製造方法]
【0010】
(第1の工程)
第1の工程は、図1(a)に示すように、シリコーンチューブ11を形成する工程である。
-シリコーンチューブ-
シリコーンチューブ11は、シリコーンゴムからなるものである。シリコーンチューブ11のゴム硬度(JIS K 6253-3)は、体内挿入時の痛みを軽減する観点から、A30以上A80以下であることが好ましく、A40以上A70以下であることがより好ましい。
【0011】
シリコーンチューブ11は、シリコーンゴム組成物を、一次押出成形及び加硫処理により作製することができる。一次押出成形は、公知の水平型押出成形機及び垂直型押出成形機で行うことができる。押出成形工程及び加硫処理では、チューブの表面に微細な接触痕跡が残らないようにする観点から、垂直型押出機と加硫機を使用することが好ましい。
【0012】
シリコーンゴム組成物としては、例えば、オルガノポリシロキサン及び充填材を含有する付加硬化型ミラブル型シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0013】
-付加硬化型ミラブル型シリコーンゴム組成物-
付加硬化型ミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン及び(B)充填材を含有するものが挙げられる。
SiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、Rは、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0014】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、Rは、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0015】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0016】
(A)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンは、Rのうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(A)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0017】
(A)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(A)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(A)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0018】
(A)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0019】
(B)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0020】
シリカ系充填材としては、RSi(ORで示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、Rは、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。Rはアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0021】
シリカ系充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0022】
付加硬化型ミラブル型シリコーンゴム組成物は、添加剤としては、例えば、抗菌剤、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が添加されていてもよい。
【0023】
カテーテル10の先端には、側孔13が形成される。側孔13は内腔12(図2参照)と連通している。内腔12を通して、体内へ水分、栄養等の導入、体内の物質の対外への排出が行われる。
【0024】
シリコーンチューブ11の側面には、長手方向に沿って線状に造影剤が配合された造影部分が設けられていてもよい。
【0025】
(第2の工程)
第2の工程は、図1(b)に示すように、シリコーンチューブ11、少なくとも固定部20の表面11aに、表面改質処理を行う工程である。
ここで、「固定部」とは、カテーテル10を、体の表面又は他の装置又は部品等に、サージカルテープで固定する領域を示す。
また、第2の工程における表面改質処理は、少なくとも固定部20に行うものであり、シリコーンゴムチューブ11全体に行われてもよい。
【0026】
-表面改質処理-
表面改質処理は、UV照射、エキシマUV照射又はプラズマ照射であることが好ましい。
UV照射、エキシマUV照射又はプラズマ照射を行うことによって、シリコーンゴムの置換基であるメチル基が水酸基に置換される。シリコーンチューブ11の任意の固定部20の表面11aに水酸基が生成されることにより、表面11aが親水性となり、アクリル系サージカルテープとの粘着性が向上するため、カテーテル10を良好に粘着固定することが可能となる。
【0027】
UV照射をする方法としては、公知の低圧水銀ランプを備えた照射装置を用いて照射する方法が挙げられる。このとき、照射対象のシリコーンチューブ11と、低圧水銀ランプとの間の雰囲気をドライエアー又は窒素ガスで満たして、低圧水銀UVを照射してもよい。
【0028】
低圧水銀UVランプとシリコーンチューブ11の表面11aとの間の照射距離は限定されず、例えば、1mm~100mm程度に設定することができる。低圧水銀UVランプの照度(単位:W/cm)としては、例えば、1mW/cm~100W/cm程度が挙げられ、3~30mW/cmが好ましい。
低圧水銀ランプの主波長は、254nmであることが好ましい。
また、エキシマUV照射装置の主波長は、126nm、146nm、172nm、222nm、308nmが挙げられる。なかでも、172mmが好ましい。
UV照射及びエキシマUV照射において、上記波長を用いることにより、シリコーンゴムチューブ11の表面のSi-CH結合及び空気中の酸素(O)の結合を切断して、水酸基の生成を短時間で良好に行うことができる。
【0029】
シリコーンチューブ11の表面11aに対する低圧水銀UVの照射積算光量(単位:J/m)としては、例えば、10~100,000mJ/cm程度が挙げられ、25~10,000mJ/cmが好ましく、50~5,000mJ/cmがより好ましい。
上記範囲であることにより、耐久性をより向上させることができる。
【0030】
プラズマ照射において、プラズマ化するプロセスガスとして、酸素を用いることが好ましい。酸素を用いることにより、シリコーンゴムのメチル基を良好に水酸基に置換することができる。
【0031】
本発明のカテーテルの製造方法は、シリコーンチューブを有するカテーテルであれば、他の構成を有するカテーテルにも適用することができる。本発明は、例えば、先端にバルーンを備えたフォーリーカテーテルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 カテーテル
11 シリコーンチューブ
11a 表面
12 中空
13 側孔
20 固定部
図1
図2