IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両のサスペンション装置 図1
  • 特開-車両のサスペンション装置 図2
  • 特開-車両のサスペンション装置 図3
  • 特開-車両のサスペンション装置 図4
  • 特開-車両のサスペンション装置 図5
  • 特開-車両のサスペンション装置 図6
  • 特開-車両のサスペンション装置 図7
  • 特開-車両のサスペンション装置 図8
  • 特開-車両のサスペンション装置 図9
  • 特開-車両のサスペンション装置 図10
  • 特開-車両のサスペンション装置 図11
  • 特開-車両のサスペンション装置 図12
  • 特開-車両のサスペンション装置 図13
  • 特開-車両のサスペンション装置 図14
  • 特開-車両のサスペンション装置 図15
  • 特開-車両のサスペンション装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023471
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】車両のサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 3/20 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
B60G3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129035
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】平松 大弥
(72)【発明者】
【氏名】豊島 由忠
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA26
3D301AA28
3D301AB03
3D301CA12
3D301CA46
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA90
3D301DB09
3D301DB20
3D301DB22
(57)【要約】
【課題】旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することによって、操舵力および実舵角に対して滑らかな車両姿勢変化が発生するようにし、それにより、効果的に、運転者に車両を上手く操れていると感じさせることができる車両のサスペンション装置を提供する。
【解決手段】本発明による車両のサスペンション装置1は、フロントサスペンション2が、キャスタ角τが+3°~+5°、キャスタトレールTが+20~+30mm、キングピン軸Kの地面Gとの交点GKがタイヤ接地中心GCより車幅方向内側にあり、ロアアーム8の下反角αが+2.8°~+7.2°であるジオメトリを有し、リアサスペンション3が、5本のリンク50、52、54、56、58を備え、仮想キングピン軸IKが後輪46のタイヤ接地中心GCの近傍で延びかつ-2°~0°で鉛直に延びるジオメトリを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を懸架するフロントサスペンションおよび後輪を懸架するリアサスペンションを備える車両のサスペンション装置であって、
上記フロントサスペンションは、
キングピン軸または仮想キングピン軸により形成されるキャスタ角が側面視で+3°~+5°の範囲であり、
上記キングピン軸または上記仮想キングピン軸とタイヤ接地中心とで形成されるキャスタトレールが側面視で+20~+30mmの範囲であり、
上記キングピン軸または上記仮想キングピン軸の延長線と地面との交点が正面視で上記タイヤ接地中心より車幅方向内側にあり、
車体と車輪支持部材とを連結するロアアームを備え、上記ロアアームの下反角が正面視で+2.8°~+7.2°の範囲である、ジオメトリを有し、
上記リアサスペンションは、
車体と車輪支持部材とを連結する5本のリンクを備え、仮想キングピン軸が、後輪のタイヤ接地中心の近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるジオメトリを有する、ことを特徴とする車両のサスペンション装置。
【請求項2】
上記フロントサスペンションは、
前輪を回転自在に支持する上記車輪支持部材と、
車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪のホイールセンタより車両上方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるアッパアームと、
上記ロアアームであって、車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪のホイールセンタより車両下方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームと、を備え、
上記アッパアームのピボット部と上記ロアアームのピボット部とを結んだ線により上記キングピン軸が形成されるダブルウィッシュボーン式サスペンションである、請求項1に記載の車両のサスペンション装置。
【請求項3】
上記フロントサスペンションは、前輪を回転自在に支持する上記車輪支持部材と、車体と上記車輪支持部材とを連結するダンパと、上記ロアアームであって、車体側の連結部から車幅方向に延び上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームとを備え、上記ダンパの車体への取付部と上記ロアアームのピボット部とを結んだ線により上記キングピン軸が形成されるストラット式サスペンション、または、前輪を回転自在に支持する上記車輪支持部材と、前輪と上記車輪支持部材とを連結する5本のリンクとを備え、上記5本のリンクのうち、アッパリンク、リーディングリンク、トレーリングリンク、上記ロアアームであるロアリンクにより上記仮想キングピン軸が形成されるマルチリンク式サスペンションである、請求項1に記載の車両のサスペンション装置。
【請求項4】
上記リアサスペンションは、
後輪を回転自在に支持する上記車輪支持部材と、
車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪のホイールセンタより車両上方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるアッパリンクと、
車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪のホイールセンタより車両上方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるリーディングリンクと、
車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪のホイールセンタより車両下方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるトレーリングリンクと、
車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪のホイールセンタより車両下方側で上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアリンクと、
車体側の連結部から車幅方向に延び、上記車輪支持部材にピボット部を介して連結されるトーコントロールリンクと、を備え、
上記アッパリンクおよび上記リーディングリンクのそれぞれの仮想延長線上の交点と、上記トレーリングリンクおよび上記ロアリンクのそれぞれの仮想延長線上の交点とを上下に結ぶことにより上記仮想キングピン軸が形成され、
上記アッパリンクのピボット部と上記リーディングリンクのピボット部が後輪のホイールセンタより車両前方側の位置で近接するよう配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両のサスペンション装置。
【請求項5】
上記リアサスペンションにおいて、上記アッパリンクのピボット部と上記リーディングリンクのピボット部とが平面視で車両前後方向に重複すると共に正面視で車両上下方向および車幅方向に重複するよう配置されている、請求項4に記載の車両のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置に係り、特に、前輪を懸架するフロントサスペンションおよび後輪を懸架するリアサスペンションを備える車両のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低速での旋回走行時に車体のロールを抑制するために、転舵時、車体に生じる遠心力によりショックアブソーバのピストンを押し付けて摺動抵抗を高めることにより、ロールを抑制するようにしたストラット式サスペンション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-90129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の旋回時、車体に横Gが加わると共に車体がロールすることは運転者も感じとることができる周知の事項である。
また、車輪(タイヤ)の転舵軸であるキングピン軸または仮想キングピン軸の延長線の地面との交点と、タイヤ接地中心との位置関係が車輪挙動に影響することも知られており、たとえばフロントサスペンションの設計時、直進安定性や操舵反力などを考慮しながら、キングピン軸で形成されるキャスタ角やキャスタトレールなどのジオメトリを適宜設定することも周知の事項である。
【0005】
これらの事項に対し、本発明者らは、運転者がステアリングを操舵し始める旋回初期に、車体の横Gに起因したものではなく、サスペンションのジオメトリに起因して機械的に車体のロール(以下、「転舵ロール」という。)が発生し、これにより、旋回初期の車両姿勢の変化が滑らかにならず、運転者が車両を上手く操れているという感覚を阻害してしまう、ということを見出した。
【0006】
すなわち、たとえば、
(1)運転者がステアリングを操舵すると、
(2)まず、「転舵ロール」が発生し、
(3)次に、ヨーが立ち上がり、
(4)その次に、旋回時の横Gによるロールが発生する、
というように、操舵に対して車両姿勢が複雑に変化して滑らかな車両姿勢変化とならず、運転者が上手く車両を操れているという感覚を阻害するのである。
ここで、「転舵ロール」とは、転舵時に変動しないタイヤ接地中心の位置、および、そのタイヤ接地中心からのキャスタトレール量などに起因して、転舵時に、キャスタ角が付いたキングピン軸(仮想キングピン軸)周りに左右の前輪が回動することにより、左右の前輪から左右それぞれのフロントサスアームを介して、車体の左右両側で上下方向に反対の力が加わることにより車体に機械的に生じるロールをいう。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することによって、操舵力および実舵角に対して滑らかな車両姿勢変化が発生するようにし、それにより、運転者に車両を上手く操れている感覚を得させるようにすることができる車両のサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、前輪を懸架するフロントサスペンションおよび後輪を懸架するリアサスペンションを備える車両のサスペンション装置であって、フロントサスペンションは、キングピン軸または仮想キングピン軸により形成されるキャスタ角が側面視で+3°~+5°の範囲であり、キングピン軸または仮想キングピン軸とタイヤ接地中心とで形成されるキャスタトレールが側面視で+20~+30mmの範囲であり、キングピン軸または仮想キングピン軸の延長線と地面との交点が正面視でタイヤ接地中心より車幅方向内側にあり、車体と車輪支持部材とを連結するロアアームを備え、ロアアームの下反角が正面視で+2.8°~+7.2°の範囲である、ジオメトリを有し、リアサスペンションは、車体と車輪支持部材とを連結する5本のリンクを備え、仮想キングピン軸が、後輪のタイヤ接地中心の近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるジオメトリを有する、ことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、フロントサスペンションが、キャスタ角が+3°~+5°の範囲であり、キャスタトレールが側面視で+20~+30mmの範囲であり、キングピン軸または仮想キングピン軸の延長線と地面との交点が正面視でタイヤ接地中心より車幅方向内側にあり、車体と車輪支持部材とを連結するロアアームの下反角が正面視で+2.8°~+7.2°の範囲であるジオメトリを有し、かつ、リアサスペンションが、車体と車輪支持部材とを連結する5本のリンクを備え、仮想キングピン軸が、後輪のタイヤ接地中心の近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるジオメトリを有するので、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑制しつつ、安定した旋回に入ったときに、遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。すなわち、これらのフロントサスペンションのジオメトリおよびリアサスペンションのジオメトリによって、たとえば、車両3軸周りの車両挙動のうち、タイヤ横力の発生およびそれに伴うヨー運動の発生の後、車両に加わる横Gと共にロール運動が発生するようにすることができる。ここで、本発明のリアサスペンションの仮想キングピン軸は、後輪のタイヤ接地中心の近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるので、リアのロールステア傾向を抑制し、それにより、車体全体のロールを抑制することで、フロントの「転舵ロール」も抑制することができる。
以上、本発明によれば、旋回初期、車体が機械的にロールしてしまう「転舵ロール」を最小限に抑制して旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに遠心力によるロール姿勢を発生させて、運転者にスムーズな旋回を感じさせることができる。その結果、運転者に、効果的に、車両を上手く操れているという感覚を得させることができる。
なお、特許請求の範囲の記載において、「A~Bの範囲」との数値範囲を規定する記載は、上限値および下限値としてAおよびBを含む。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、フロントサスペンションは、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪のホイールセンタより車両上方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるアッパアームと、ロアアームであって、車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪のホイールセンタより車両下方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームと、を備え、アッパアームのピボット部とロアアームのピボット部とを結んだ線によりキングピン軸が形成されるダブルウィッシュボーン式サスペンションである。
このように構成された本発明によれば、ダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンションにおいて、サスペンション支持剛性を有効に確保しつつ、旋回初期の転舵ロールを最小限にすることができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、フロントサスペンションは、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、車体と車輪支持部材とを連結するダンパと、ロアアームであって、車体側の連結部から車幅方向に延び車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームとを備え、ダンパの車体への取付部とロアアームのピボット部とを結んだ線によりキングピン軸が形成されるストラット式サスペンション、または、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、前輪と車輪支持部材とを連結する5本のリンクとを備え、5本のリンクのうち、アッパリンク、リーディングリンク、トレーリングリンク、ロアアームであるロアリンクにより仮想キングピン軸が形成されるマルチリンク式サスペンションである。
このように構成された本発明によれば、ストラット式フロントサスペンションまたはマルチリンク式フロントサスペンションにおいて、サスペンション旋回初期の転舵ロールを最小限にすることができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、リアサスペンションは、後輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪のホイールセンタより車両上方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるアッパリンクと、車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪のホイールセンタより車両上方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるリーディングリンクと、車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪のホイールセンタより車両下方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるトレーリングリンクと、車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪のホイールセンタより車両下方側で車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアリンクと、車体側の連結部から車幅方向に延び、車輪支持部材にピボット部を介して連結されるトーコントロールリンクと、を備え、アッパリンクおよびリーディングリンクのそれぞれの仮想延長線上の交点と、トレーリングリンクおよびロアリンクのそれぞれの仮想延長線上の交点とを上下に結ぶことにより仮想キングピン軸が形成され、アッパリンクのピボット部とリーディングリンクのピボット部が後輪のホイールセンタより車両前方側の位置で近接するよう配置されている。
このように構成された本発明によれば、車輪支持部材におけるアッパリンクのピボット部とリーディングリンクのピボット部が後輪のホイールセンタより車両前方側の位置で近接するよう配置されているので、車両の旋回時、リアサスペンションにおける仮想キングピン軸の変位を抑制して、より確実に、旋回初期のフロントの転舵ロールを最小限に抑制することができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、リアサスペンションにおいて、アッパリンクのピボット部とリーディングリンクのピボット部とが平面視で車両前後方向に重複すると共に正面視で車両上下方向および車幅方向に重複するよう配置されている。
このように構成された本発明によれば、車輪支持部材におけるアッパリンクのピボット部とリーディングリンクのピボット部とを確実に近接させることができ、また、仮想キングピン軸の変位を抑制することができるので、より確実に、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のサスペンション装置によれば、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することによって、操舵力および実舵角に対して滑らかな車両姿勢変化が発生するようにし、それにより、運転者に車両を上手く操れている感覚を得させるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による車両のサスペンション装置が備えるフロントサスペンションアッセンブリの斜視図である。
図2図1に示すフロントサスペンションアッセンブリの上面図である。
図3図1に示すフロントサスペンションアッセンブリの正面図である。
図4】本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの上面図である。
図5】本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの側面図である。
図6】本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの正面図である。
図7図7Aは、本実施形態によるフロントサスペンションのジオメトリを説明するための右前輪を正面から見た模式図であり、図7Bは、本実施形態によるフロントサスペンションのジオメトリを説明するための右前輪を車幅方向内方から見た模式図である。
図8】本発明の実施形態による車両のサスペンション装置が備えるリアサスペンションアッセンブリの斜視図である。
図9図8に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図である。
図10図8に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
図11】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図である。
図12】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの側面図である。
図13】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの正面図である。
図14】本実施形態によるリアサスペンションのホイールサポートにおけるアッパリンクおよびトレーリングリンクの各ピボット部の位置関係を説明するための上面図である。
図15】本実施形態によるリアサスペンションのホイールサポートにおけるアッパリンクおよびトレーリングリンクの各ピボット部の位置関係を説明するための正面図であり、ホイールサポートの図示を省略した図である。
図16】本発明の実施形態による車両のサスペンション装置を搭載した車両の実験により得られた操舵初期の車両運動の一例を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置を説明する。
【0017】
先ず、図1乃至3により、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置のフロントサスペンションの全体構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置が備えるフロントサスペンションアッセンブリの斜視図であり、図2は、図1に示すフロントサスペンションアッセンブリの上面図であり、図3は、図1に示すフロントサスペンションアッセンブリの正面図である。
【0018】
まず、図1乃至図3に示すように、車両のサスペンション装置1は、左右一対のフロントサスペンション2を備え、これらのフロントサスペンション2は、車体(図示せず)に固定されたフロントサブフレーム(サスペンションサブフレーム)4に取り付けられている。
【0019】
このフロントサブフレーム4は、主に、左右一対のサイドクロスメンバ4aと、これらのサイドクロスメンバ4aの前端部を車幅方向に連結するように延びるフロントクロスメンバ4bと、このフロントクロスメンバ4bの車両後方側において平面視でコの字状に延び、各サイドクロスメンバ4aの中央部から後部の範囲を車幅方向に連結するように延びるリアクロスメンバ4cとを備えている。なお、図3では、フロントサスペンション2を示すために、フロントクロスメンバ4bの図示を省略している。図中符号CLは、車体左右の中央面を示す。
【0020】
本実施形態のフロントサスペンション2は、ダブルウィッシュボーン型であり、前輪6より上方側で車体に取り付けられたアッパアーム8、その下方でサイドクロスメンバ4aに取り付けられたロアアーム10、および、これらのアッパアーム8及びロアアーム10に取り付けられたホイールサポート(車輪支持部材)12を備える。
アッパアーム8およびロアアーム10は、それぞれ後述する車体側の揺動軸24、30を中心に上下に揺動することによって、ホイールサポート12及び前輪6が所定の軌跡に沿って上下にストロークするようになっている。ホイールサポート12は、前輪6のホイール(図示せず)を取り付けるハブ14を支えるハブキャリアである。
【0021】
また、フロントサスペンション2には、そのような前輪6のストロークを許容しながら、同時に所定の付勢力及び減衰力を付与するための、コイルバネ16およびダンパ18を備えた緩衝装置20が設けられている。この緩衝装置20は、コイルバネ16とダンパ18とがほぼ同軸に配置された上下方向に長い円筒形状を有し、その上端部が車体に取り付けられ、その下端部(ダンパ18の下端部)が、ロアアーム10に回転自在に取り付けられている。
なお、図示を省略するが、フロントサスペンション2は、ステアリングギアユニットと、このステアリングギアユニットから車幅方向外方に延びてホイールサポート12に取り付けられ、前輪6を操舵するタイロッドなどを有している。また、左右のロアアーム10を連結するように車幅方向に延びるアンチロールバー(図示せず)がロアアーム10およびフロントクロスメンバ4bに回動可能に取り付けられている。
【0022】
次に、図4乃至図6により、フロントサスペンション2の構成を具体的に説明する。図4は、本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの上面図であり、図5は、本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの側面図であり、図6は、本実施形態による車両左側のフロントサスペンションの正面図である。ここで、フロントサスペンション2は、右前輪側及び左前輪側とも基本構造は同じであるので、ここでは、左前輪側のフロントサスペンションを中心に説明する。
【0023】
まず、図4乃至図6に示すように、アッパアーム8は、車幅方向外方に斜め後方に延びる前方アーム部8aおよび車幅方向外方に斜め前方に延びる後方アーム部8bが一体で形成されたA型アームである。このアッパアーム8は、その車幅方向内方の2箇所の端部が、車体前後方向に中心軸線を有する円筒状の各弾性ブッシュ22を介してそれぞれ車体に連結されている。これらの弾性ブッシュ22により車両前後方向に延びるアッパアーム8の揺動軸24が形成される。なお、弾性ブッシュ22の軸線および揺動軸24は、側面視で車両後方に数度傾斜している。
【0024】
ロアアーム10は、ほぼ車幅方向に延びる前方アーム部10aおよび車幅方向外方に斜め前方に延びる後方アーム部10bを有するA型アームである。このロアアーム10は、前方アーム部10aの車幅方向内方の端部が、車体前後方向に中心軸線を有する円筒状の弾性ブッシュ26を介してサイドクロスメンバ4aに連結され、後方アーム部10bの車幅方向内方かつ車両後方の端部が、車体前後方向に中心軸線を有する円筒状の弾性ブッシュ28を介してサイドクロスメンバ4aに連結されている。これらの弾性ブッシュ26、28により車両前後方向に延びるロアアーム10の揺動軸30が形成される。なお、後方アーム部10bは、いわゆるΓ型の形状を有しており、その車幅方向外方の端部が、前方アーム部10aにおいて、ダンパ18の下端部の連結部32より車幅方向内方の中央部分34で、2箇所で締結されている(図1図6参照)。
【0025】
アッパアーム8およびロアアーム10のそれぞれの車幅方向外方端部は、それぞれ、ピボット部36、38を介してホイールサポート12に連結されている。具体的には、図5および図6に示すように、ホイールサポート12は、上方に延びるアッパアーム連結用の延長部12aおよび下方に延びるロアアーム連結用の延長部12bを有し、各アーム8、10は、それぞれ、これらの延長部12a、12bの上端部及び下端部に、ピボット部36、38を形成するボールジョイント(ピロボールジョイント)40、42を介して連結されている。
また、図4および図5に示すように、ホイールサポート12は、車体前方に延びるタイロッド連結用の延長部(ナックルアーム)12cを備え、この延長部12cの先端部にタイロッド(図示せず)が取り付けられる。
【0026】
次に、図5および図6に示すように、フロントサスペンション2には、上述したアッパアーム8の前輪6側のピボット部36の中心と、ロアアーム10の前輪6側のピボット部38の中心とを結んだ直線上(図中、一点鎖線で示す)に、前輪6の転舵軸であるキングピン軸Kが形成される。
また、図4乃至図6に示す符号WCは、前輪6のホイールセンタであり、図4では、ホイールセンタWCを通る前輪6の車幅方向中央軸線と前輪6の縦中央面を示す線をそれぞれ一点鎖線で示し、図5および図6では、ホイールセンタWCを通り、前輪6を前後および上下に二分する垂直軸線および水平軸線をそれぞれ一点鎖線で示す。
【0027】
次に、図5乃至図7により、本発明の実施形態によるフロントサスペンション2の主なジオメトリを説明する。図7Aは、本実施形態によるフロントサスペンションのジオメトリを説明するための右前輪を正面から見た模式図であり、図7Bは、本実施形態によるフロントサスペンションのジオメトリを説明するための右前輪を車幅方向内方から見た模式図である。
まず、図7Aおよび図7Bに示す「タイヤ(車輪)」は前輪6であり、図7Aに示すように、正面視で、キングピン軸Kと地面Gとの交点GKと、タイヤ接地中心(タイヤ接地圧中心)GCとの間の距離が、いわゆるキングピンオフセットKOである。本実施形態では、図6に示すように、このキングピンオフセットKOの値が、13mm~22mmの範囲で正(+)となるように、すなわち、キングピン軸Kの延長線と地面Gとの交点GKが、正面視で、タイヤ接地中心GCより車幅方向内側になるように、各アーム8、10やダンパ18などのジオメトリ、および、前輪6のキャンバ角などが設定されている。
なお、本実施形態の記載において、「A~Bの範囲」との数値範囲を規定する記載は、上限値および下限値としてAおよびBを含むことを意味する。たとえば、上述した「13mm~22mmの範囲」とは、13mm以上かつ22mm以下である。以下も同様である。
【0028】
次に、図7Bに示すように、側面視で、キングピン軸Kが鉛直線となす角度がキャスタ角τであり、図5に示す本実施形態では、キャスタ角τが約4°となるように、各アーム8、10やダンパ18などのジオメトリが設定されている。本実施形態において、この前輪6のキャスタ角τの値は、3°~5°の範囲にあればよい。なお、キャスタ角τは、側面視でキングピン軸Kの上方が後方に傾く方向が正(+)である。
【0029】
また、図7Bに示すように、側面視で、キングピン軸Kの延長線と地面Gとの交点GKと、タイヤ接地中心GCとの距離がキャスタトレールTであり、図5に示す本実施形態では、キャスタトレールTの値が約21mmとなるように、各アーム8、10やダンパ18などのジオメトリが設定されている。本実施形態において、このキャスタトレールTの値は、+20mm~+30mmの範囲にあればよい。なお、キャスタトレールTは、側面視で、交点GKがタイヤ接地中心GCより前方にあるとき正(+)である。
【0030】
ここで、図7Bに示すように、キャスタトレールTとキャスタ角τとは、いわゆるハブトレール(ホイールセンタのキャスタトレール)Thとタイヤ半径rとを用い、三角関数で概略的に表すと以下の式(1)で表されるような関係を有する。
T=r×sin(τ)+Th ・・・式(1)
ここで、
Tは、キャスタトレール、
rは、タイヤ半径
τは、キャスタ角
Thは、ハブトレール、
である。
たとえば、前輪6に18インチサイズのタイヤを装着し、ハブトレールが5mmである場合、本実施形態では、キャスタトレールTの値は、式(1)により、
20.9mm=25.4mm(18インチ)÷2×sin(τ)(4°)+5mm
と計算され、約21mmとなる。なお、本実施形態では、前輪6のタイヤサイズとして16インチ~19インチを想定しており、キャスタ角τ、タイヤ径(半径r)、ハブトレールThなどの値に応じて、キャスタトレールTの値が+20mm~+30mmの範囲に設定される。
【0031】
次に、図6に示すように、本実施形態では、ロアアーム10は、下反角αが約5°となるように配置されている。本実施形態では、このロアアーム10の下反角αは、本実施形態の車両のサスペンション装置1を搭載する車両のホイールベース、タイヤ幅、車両重量(主に、異なる仕様のエンジンを想定)などのバリエーションに応じて+2.8°~+7.2°の範囲に設定される。
ロアアーム10の下反角αは、本実施形態において、正面視で、ロアアーム10の前方アーム部10aにおいて、前輪6側のピボット部38の中心と、車体側の弾性ブッシュ26の中心軸とを結んだ線Lが、水平線HLに対してなす角度である車輪側から車体に向かう上向きのアーム角度として設定される。本実施形態では、ロアアーム10の車体側の弾性ブッシュ26および弾性ブッシュ28は車両前後方向にほぼ同一高さに設定されているので、下反角αを、前輪6側のピボット部38の中心と、ロアアーム10の揺動軸30とを結んだ線の角度として設定してもよい。このようなロアアーム10の下反角αに起因するジャッキアップ力が、転舵ロール自体を抑制するような抵抗力となる。
【0032】
ここで、本実施形態のフロントサスペンション2の変形例として、図示を省略するが、上述したダブルウィッシュボーン式に代えて、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、車体と車輪支持部材とを連結するダンパと、車体側の連結部から車幅方向に延び車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームとを備え、ダンパの車体への取付部とロアアームのピボット部とを結んだ線によりキングピン軸Kが形成されるストラット式フロントサスペンションでも良い。
この変形例においては、上述した実施形態と同様に、図7に示すように、キングピン軸Kにより形成されるキャスタ角τが+3°~+5°の範囲であり、キングピン軸Kとタイヤ接地中心GCとで形成されるキャスタトレールTが+20~+30mmの範囲であり、キングピン軸Kの延長線と地面Gとの交点GKが正面視でタイヤ接地中心GCより車幅方向内側にあり、車体と車輪支持部材とを連結するロアアームの下反角αが正面視で+2.8°~+7.2°の範囲であるジオメトリを有していればよい。
【0033】
また、本実施形態のフロントサスペンション2のさらなる変形例として、図示を省略するが、上述したダブルウィッシュボーン式に代えて、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、車輪と車輪支持部材とを連結する5本のリンクとを備え、5本のリンクのうち、アッパリンク、リーディングリンク、トレーリングリンク、ロアリンクの各リンクの配置により仮想キングピン軸が形成されるマルチリンク式フロントサスペンションでも良い。
この変形例においては、上述した実施形態と同様に、図7に示すように、仮想キングピン軸IKにより形成されるキャスタ角τが+3°~+5°の範囲であり、仮想キングピン軸IKとタイヤ接地中心GCとで形成されるキャスタトレールTが+20~+30mmの範囲であり、仮想キングピン軸IKの延長線と地面Gとの交点GKがタイヤ接地中心GCより車幅方向内側にあり、車体と車輪支持部材とを連結するロアリンクの下反角αが正面視で+2.8°~+7.2°の範囲であるジオメトリを有していればよい。
【0034】
次に、図8乃至10により、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置のリアサスペンション3の全体構成を説明する。図8は、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置が備えるリアサスペンションアッセンブリの斜視図であり、図9は、図8に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図であり、図10は、図8に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
まず、図8乃至図10に示すように、車両のサスペンション装置1は、左右一対のリアサスペンション3を備え、これらのリアサスペンション3は、車体(図示せず)に固定されたリアサブフレーム(サスペンションサブフレーム)44に取り付けられている。
【0035】
このリアサブフレーム44は、主に、左右一対のサイドクロスメンバ44aと、これらのサイドクロスメンバ44aの前端部を車幅方向に連結するように延びるフロントクロスメンバ44bと、各サイドクロスメンバ40aの後端部を車幅方向に連結するように延びるリアクロスメンバ44cとを備えている。図中符号CLは、車体左右の中央面を示す。
【0036】
本実施形態のリアサスペンション3は、独立した5本のIリンク50、52、54、56、58によって後輪46のホイールサポート(車輪支持部材)48を車体に対しストローク可能に連結したマルチリンク式のものである。
具体的には、リアサスペンション3は、仮想的に上方のアームを構成する、前側のアッパリンク(アッパアーム)50、および、後側のリーディングリンク(リーディングアーム)52と、仮想的に下方のアームを構成する、前側のトレーリングリンク(トレーリングアーム)54、および、後側のロアリンク(ロアアーム)56と、後述する仮想キングピン軸IK(図12図13参照)周りの後輪46の回動変位を規制するトーコントロールリンク(トーコントロールアーム)58とを備えている。
【0037】
アッパリンク50、リーディングリンク52、トレーリングリンク54およびロアリンク56は、それぞれ後述する車体側の連結部(弾性ブッシュ70、74、82、86)を中心に上下に揺動することによって、ホイールサポート48及び後輪46が所定の軌跡に沿って上下にストロークするようになっている。ホイールサポート48は、後輪46のホイール(図示せず)を取り付けるハブ60を支えるハブキャリアである。
【0038】
また、そのような後輪46のストロークを許容しながら、同時に所定の付勢力及び減衰力を付与するための、コイルバネ62およびダンパ64を備えた緩衝装置66が設けられている。この緩衝装置66は、コイルバネ62とダンパ64とがほぼ同軸に配置された上下方向に長い円筒形状を有し、その上端部が車体に取り付けられ、その下端部(ダンパ64の下端部)が、ロアリンク56に回転自在に連結されている。また、リアサスペンション3には、左右のロアリンク56を連結するように延びるアンチロールバー68が回動可能に取り付けられている。
【0039】
次に、図11乃至図13により、リアサスペンション3の構成を具体的に説明する。図11は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図であり、図12は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの側面図であり、図13は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの正面図である。ここで、リアサスペンション3は、右後輪側及び左後輪側とも基本構造は同じであるので、ここでは、左後輪側のリアサスペンションを中心に説明する。
【0040】
まず、図11乃至図14に示すように、アッパリンク50は、その車幅方向内方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ70を介してサイドクロスメンバ44aに連結されている。アッパリンク50は、車両上方から見て、車体側の連結部から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延び、その車幅方向外方端部が、ピボット部72を介してホイールサポート48に連結されている。
【0041】
次に、リーディングリンク52は、その車幅方向内方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ74を介してサイドクロスメンバ44aに連結されている。リーディングリンク52は、車両上方から見て、車体側の連結部から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延び、その車幅方向外方端部が、ピボット部76を介してホイールサポート48に連結されている。
【0042】
このように、2本の上方のリンク50、52は、車両上方から見て、車体外方側に向かって互いに接近するように配置され、仮想的に上方のアームを形成している。
本実施形態では、各リンク50、52のホイールサポート48における各ピボット部72、76には、後述するボールジョイント(ピロボールジョイント)78、80が採用されている。
【0043】
次に、トレーリングリンク54は、その車幅方向内方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ82を介してサイドクロスメンバ44aに連結されている。トレーリングリンク54は、車両上方から見て、車体側の連結部から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延び、その車幅方向外方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ84を介してホイールサポート48に連結されている。
【0044】
次に、ロアリンク56は、その車幅方向内方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ86を介してサイドクロスメンバ4aに連結されている。ロアリンク56は、車両上方から見て、車体側の連結部から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延び、その車幅方向外方の端部が、車両前後方向(平面視で数度傾斜して配置されている)に延びる弾性ブッシュ88を介してホイールサポート48に連結されている。
【0045】
このように、2本の下方のリンク54、56は、車両上方から見て、車幅方向外方に向かって互いに接近するように配置され、仮想的に下方のアームを形成している。
【0046】
次に、トーコントロールリンク58は、その車体側の端部がリアクロスメンバ44cの後面の軸支部90に上下に揺動自在に連結されている。トーコントロールリンク58は、車両上方から見て、車体側の連結部から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延び、その車幅方向外方の端部が弾性ブッシュ92を介してホイールサポート48に連結されている。
【0047】
次に、図11乃至図13により、本発明の実施形態によるフロントサスペンション2の主なジオメトリを説明する。
まず、図11乃至図13に示すように、リアサスペンション3には、アッパリンク50の仮想延長線とリーディングリンク52の仮想延長線との交点P1と、トレーリングリンク54の仮想延長線とロアリンク56の仮想延長線との交点P2とを上下に結ぶ仮想キングピン軸IKが形成される。この仮想キングピン軸IKは、後輪46の操向方向(トー方向)への回動の瞬間回転中心である。ここで、図11乃至図13に示す符号WCは、後輪46のホイールセンタであり、図11では、ホイールセンタWCを通る後輪46の車幅方向軸線と後輪46の縦中央面を示す線をそれぞれ一点鎖線で示し、図12および図13では、ホイールセンタWCを通り、後輪46を前後および上下に二分する垂直軸線および水平軸線をそれぞれ一点鎖線で示す。
【0048】
次に、図12に示すように、本実施形態のリアサスペンション3では、仮想キングピン軸IKが、側面視で、後輪46のタイヤ接地中心GCの近傍かつ車両前方側でほぼ鉛直に延びるよう、各リンク50、52、54、56のジオメトリが設定されている。本実施形態では、仮想キングピン軸IKは、仮想キングピン軸IKの地面Gとの交点GKが、タイヤ接地中心GCに対して-120mm~+120mmの範囲の距離内に位置するよう延びる。仮想キングピン軸IKの傾斜角度は、-2°~0°の範囲の角度である。なお、この傾斜角度は、側面視で仮想キングピン軸IKの上方が後方に傾く方向が正(+)であり、本実施形態では、仮想キングピン軸IKが0°の角度で鉛直に延びる位置から、仮想キングピン軸IKの上方が前方に-2°傾いた位置までにあればよい。
【0049】
次に、図12に示すように、本実施形態では、コイルバネ62とダンパ64とを同軸として緩衝装置66が受け止める荷重を集中させている。さらに、本実施形態では、後輪46からの荷重入力点であるホイールセンタWCと、主に後輪46からの横力を受け止めるロアリンク(ロアアーム)56の荷重支持点であるピボット部(弾性ブッシュ)88とが鉛直線上に並ぶように、すなわち、後輪46からの荷重入力点と、荷重を受け止めるロアリンク56の荷重支持点との車両前後方向のオフセットを0(ゼロ)とすることで内力を0(ゼロ)とし、これにより、後輪46から入力される外力に対して、リアサスペンション3のアライメント変化を抑制するようにしている。
【0050】
次に、図11乃至図15により、本発明の実施形態によるアッパリンク50およびリーディングリンク52の各ピボット部72、76の構成を説明する。図14は、本実施形態によるリアサスペンションのホイールサポートにおけるアッパリンクおよびトレーリングリンクの各ピボット部の位置関係を説明するための上面図であり、図15は、本実施形態によるリアサスペンションのホイールサポートにおけるアッパリンクおよびトレーリングリンクの各ピボット部の位置関係を説明するための正面図であり、ホイールサポートの図示を省略した図である。
【0051】
まず、図11乃至図14に示すように、アッパリンク50およびリーディングリンク52の車幅方向外方のそれぞれの端部には、その端部内で3軸周り(X、Y、Z)に回転自在に配置されるボール部(図示せず)と、このボール部を保持するピロボールハウジング94、96と、ボール部から車両前方側に延びる軸部(図示せず)とを有するピロボールジョイント78、80が設けられている。
【0052】
本実施形態では、ピロボールハウジング94、96は、各ボール部を取り囲むような断面円形状(円環状)の所定厚さ(本実施形態では15mm)の部分であり、本実施形態では、アッパリンク50およびリーディングリンク52のそれぞれの車幅方向外方の端部で形成される。また、ボール部から延びる軸部(図示せず)の先端部は、ホイールサポート12のホイールセンタWCより前方に形成された前壁部48aに締結されている。
本実施形態では、このような構成のピロボールジョイント78、80によりピボット部72、76が形成される。
【0053】
次に、本実施形態では、図11乃至図15に示すように、後輪46のホイールセンタWCより車両前方側の位置で、アッパリンク50のピボット部72とリーディングリンク52のピボット部76とが、近接して配置されている。
より詳細には、たとえば、図14に示すように、各ピボット部72、76(ピロボールジョイント78、80)は、車両前後方向に所定の長さ(符号L1、L2で示す)を有する。本実施形態では、ピボット部72、76は、上面視および側面視で、車両前後方向に重複しており、図中では、この重複範囲を符号L3で示す。
【0054】
また、たとえば、図15に、車両前方から見たアッパリンク50のピボット部72の形成範囲A1を仮想線で示し、リーディングリンク52のピボット部76の形成範囲A2を仮想線で示す。本実施形態では、アッパリンク50のピボット部72(ピロボールジョイント78)とリーディングリンク52のピボット部76(ピロボールジョイント80)とが、正面視において、車両上下方向および車幅方向に重複するよう配置されている。より詳細には、図15中、ピボット部72の形成範囲A1とピボット部76の形成範囲A2とが、重複範囲A3で示すように、車両上下方向および車幅方向に重複している。
また、本実施形態では、図13に示すように、ピボット部72がピボット部76に対して、正面視および後面視で車両上下方向の下方側かつ車幅方向の内方側にほぼ45度の角度位置に近接して配置されている。
【0055】
次に、図16により、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置1を搭載した試験用車両における、走行実験により得られた車両挙動の作用を説明する。図16は、本発明の実施形態による車両のサスペンション装置を搭載した車両の実験により得られた操舵初期の車両運動の一例を説明するための線図である。図16の縦軸は、操舵角度などの値を示し、横軸は、走行時に運転者が操舵を開始してからの時間を示す。
図16に示すタイムチャートでは、操舵開始(0秒)の後、まず操舵角(実舵角)が立ち上がった後、車両のヨー運動が早期に発生している。その後、所定のタイミングで、ほぼ同時に、横Gが立ち上がると共に車体のロール角が立ち上がっている。図16の時間スケールでは示していないが、所定のタイミングで立ち上がったロール角は、その後、リニアに増大していくことも実験で得られている。
そして、図16に示すように、「転舵ロール」によるロール発生は抑えられている。すなわち、ロール角は、操舵開始から車体のロール角が立ち上がるタイミングまでの間において、車両挙動や運転者の運転感覚に影響がない程度の最小限の値にまで抑制されている。
【0056】
ここで、従来は、上述したように運転者がステアリングを操舵すると、まず「転舵ロール」が発生し、次にヨーが立ち上がり、さらにその次に旋回時の横Gによるロールが発生するというように、操舵に対して車両姿勢が複雑に変化して滑らかな車両姿勢変化が得られないものであった。しかしながら、本実施形態による上述したジオメトリを有する車両のサスペンション装置1を搭載した車両では、図16に一例を示すように、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制し、これにより、操舵力および実舵角に対して滑らかな車両姿勢変化が発生することが確認できている。
【0057】
次に、本実施形態の車両のサスペンション装置の設計方法として、キャスタ角τを+3°~+5°の範囲に設定する段階と、キャスタトレールTを+20~+30mmの範囲に設定する段階と、キングピン軸Kまたは仮想キングピン軸IKの延長線と地面Gとの交点GKをタイヤ接地中心GCより車幅方向内側に設定する段階と、車体とホイールサポート12とを連結するロアアームの下反角αを+2.8°~+7.2°の範囲に設定する段階と、これらの各段階で設定された数値、配置およびキングピン軸Kまたは仮想キングピン軸IKが得られるようにフロントサスペンションの各アーム、各リンク、各ピボット部および/またはダンパの配置を決定する段階と、仮想キングピン軸IKを後輪のタイヤ接地中心GCの近傍で延びるように設定する段階と、仮想キングピン軸IKを-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるように設定する段階と、これらの各段階で設定された仮想キングピン軸IKが得られるようにリアサスペンションの5本のリンクの配置および各ピボット部の配置を決定する段階と、を有していてもよい。
また、上述した式「T=r×sin(τ)+Th ・・・式(1)」をこのような設計方法に利用してもよい。
【0058】
なお、本実施形態の自動車(車両)は、図示を省略するが、前輪6をステアリング装置により操舵し、車体前部のエンジンルームにエンジンを搭載し、車体後部にディファレンシャルを配置して車軸により後輪46を駆動するようにした後輪駆動車である。なお、本実施形態を前輪駆動車に適用するようにしてもよい。
【0059】
また、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されず、その他の種々の構成を包含するものである。たとえば操安性を高めるために、リーディングリンク52やロアリンク56などをボールジョイントを介してホイールサポート48に連結するようにしてもよい。また、弾性ブッシュはゴム製のブッシュに限らず、所要の弾性を備える樹脂製のものであってもよい。
【0060】
次に、本実施形態およびその変形例による車両のサスペンション装置の作用効果を説明する。
本実施形態および変形例による車両のサスペンション装置1は、前輪6を懸架するフロントサスペンション2および後輪46を懸架するリアサスペンション3を備え、フロントサスペンション2は、キングピン軸Kまたは仮想キングピン軸IKにより形成されるキャスタ角τが側面視で+3°~+5°の範囲であり、キングピン軸Kまたは仮想キングピン軸IKとタイヤ接地中心GCとで形成されるキャスタトレールTが側面視で+20~+30mmの範囲であり、キングピン軸Kまたは仮想キングピン軸IKの延長線と地面Gとの交点GKが正面視でタイヤ接地中心GCより車幅方向内側にあり、車体とホイールサポート12とを連結するロアアーム10の下反角αが正面視で+2.8°~+7.2°の範囲であるジオメトリを有し、リアサスペンション3は、車体とホイールサポート48とを連結する5本のリンク50、52、54、56、58を備え、仮想キングピン軸IKが後輪46のタイヤ接地中心GCの近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるジオメトリを有する。
【0061】
このように構成された本実施形態および変形例によれば、フロントサスペンション2およびリアサスペンション3の各ジオメトリにより、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに、遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。すなわち、たとえば、車両3軸周りの車両挙動のうち、タイヤ横力の発生およびそれに伴うピッチの発生の後、車両に加わる横Gと共にロール運動が発生するようにすることができる。
ここで、車体は基本的に剛体であるので、仮に、リアの仮想キングピン軸IKが、本実施形態のようにほぼ鉛直かつタイヤ接地中心GC近傍で延びていない場合、リアサスペンション3には、車体全体のロールに引きずられるようにロールステア傾向が生じてしまう。これに対し、本実施形態のリアサスペンション3では、仮想キングピン軸IKが後輪46のタイヤ接地中心GCの近傍で延び、かつ、-2°~0°の範囲の角度で鉛直に延びるジオメトリを有しているので、このようなロールステア傾向を抑制し、それにより、車体全体のロールを抑制することで、フロントの「転舵ロール」も抑制される。
以上、本実施形態によれば、旋回初期、ステアリングを操舵した時に車体がロールしてしまう「転舵ロール」を最小限に抑制して旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに、遠心力によるロール姿勢を発生させて、運転者にスムーズな旋回を感じさせることができる。その結果、運転者に、効果的に、車両を上手く操れているという感覚を得させることができる。
なお、運転者にとっては、操舵力が発生したとき(「手応え」を感じさせたとき)に「実舵角」が発生することが理想であり、これにより、車両の挙動と運転者の操舵感覚とが一致するようになる。これは、ステアリングの「不感帯」を適宜調整することで得られ、より効果的に、本実施形態の上述した作用効果を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、フロントサスペンション2は、前輪6を回転自在に支持するホイールサポート12と、車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪6のホイールセンタWCより車両上方側でホイールサポート12にピボット部36を介して連結されるアッパアーム8と、車体側の連結部から車幅方向に延び、前輪6のホイールセンタWCより車両下方側でホイールサポート12にピボット部38を介して連結されるロアアーム10と、を備え、アッパアーム8のピボット部36とロアアーム10のピボット部38とを結んだ線によりキングピン軸Kが形成されるダブルウィッシュボーン式サスペンションである。
このように構成された本発明によれば、ダブルウィッシュボーン式のフロントサスペンション2において、サスペンション支持剛性を有効に確保しつつ、旋回初期の転舵ロールを最小限にすることができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに、遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。
【0063】
また、本実施形態の変形例によれば、フロントサスペンションは、前輪を回転自在に支持するホイールサポート12と、車体と車輪支持部材とを連結するダンパと、車体側の連結部から車幅方向に延び車輪支持部材にピボット部を介して連結されるロアアームとを備え、ダンパの車体への取付部とロアアームのピボット部とを結んだ線によりキングピン軸Kが形成されるストラット式サスペンション、または、前輪を回転自在に支持する車輪支持部材と、前輪と車輪支持部材とを連結する5本のリンクとを備え、5本のリンクのうち、アッパリンク、リーディングリンク、トレーリングリンク、ロアリンク(ロアアーム)により仮想キングピン軸IKが形成されるマルチリンク式サスペンションである。
このように構成された本実施形態の変形例によれば、ストラット式フロントサスペンションまたはマルチリンク式フロントサスペンションにおいて、サスペンション旋回初期の転舵ロールを最小限にすることができ、これにより、操舵力および実舵角に対して、旋回初期のロールを抑えつつ、安定した旋回に入ったときに、遠心力によるロール姿勢を発生させて、滑らかな車両姿勢変化を実現することができる。
【0064】
また、本実施形態および変形例によれば、リアサスペンション3は、後輪46を回転自在に支持するホイールサポート48と、車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪46のホイールセンタWCより車両上方側でホイールサポート48にピボット部72を介して連結されるアッパリンク50と、車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪46のホイールセンタWCより車両上方側でホイールサポート48にピボット部76を介して連結されるリーディングリンク52と、車体側の連結部から車両後方側に延び、後輪46のホイールセンタWCより車両下方側でホイールサポート48にピボット部(弾性ブッシュ84)を介して連結されるトレーリングリンク54と、車体側の連結部から車両前方側に延び、後輪46のホイールセンタWCより車両下方側でホイールサポート48にピボット部(弾性ブッシュ88)を介して連結されるロアリンク(ロアアーム)56と、車体側の連結部から車幅方向に延び、ホイールサポート48にピボット部(弾性ブッシュ92)を介して連結されるトーコントロールリンク58と、を備え、アッパリンク50およびリーディングリンク52のそれぞれの仮想延長線上の交点P1と、トレーリングリンク54およびロアリンク56のそれぞれの仮想延長線上の交点P2とを上下に結ぶことにより仮想キングピン軸IKが形成され、アッパリンク50のピボット部72(ピロボールジョイント78)とリーディングリンク52のピボット部76(ピロボールジョイント80)が後輪46のホイールセンタWCより車両前方側の位置で近接するよう配置されている。
このように構成された本実施形態および変形例によれば、車両の旋回時、リアサスペンション3における仮想キングピン軸IKの変位を抑制して、より確実に、旋回初期の転舵ロールを最小限に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態および変形例によれば、リアサスペンション3において、アッパリンク50のピボット部72(ボールジョイント78)とリーディングリンク52のピボット部76(ピロボールジョイント80)とが平面視で車両前後方向に重複すると共に正面視で車両上下方向および車幅方向に重複するよう配置されているので、アッパリンク50のピボット部72(ピロボールジョイント78)とリーディングリンク52のピボット部76(ボールジョイント80)とを、より確実に近接させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 車両のサスペンション装置
2 フロントサスペンション
3 リアサスペンション
4 フロントサブフレーム(サスペンションサブフレーム)
6 前輪
8 アッパアーム
10 ロアアーム
12 ホイールサポート(車輪支持部材、ハブキャリア)
22、26 弾性ブッシュ
28 ピボット部
24、30 揺動軸
36、38 ピボット部
40、42 ボールジョイント
44 リアサブフレーム(サスペンションサブフレーム)
46 後輪
48 ホイールサポート(車輪支持部材、ハブキャリア)
50 アッパリンク(アッパアーム)
52 リーディングリンク(リーディングアーム)
54 トレーリングリンク(トレーリングアーム)
56 ロアリンク(ロアアーム)
58 トーコントロールリンク(トーコントロールアーム)
70、74 弾性ブッシュ
72、76 ピボット部
78、80 ボールジョイント(ピロボールジョイント)
82、84、86、88、92 弾性ブッシュ
K キングピン軸
IK 仮想キングピン軸
GK キングピン軸Kと地面Gとの交点
GC タイヤ接地中心(タイヤ接地圧中心)
KO キングピンオフセット
τ キャスタ角
T キャスタトレール
α 下反角
P1、P2 リア各リンクの仮想延長線の交点
A3 ピボット部(ピロボールジョイント)の形成範囲の重複部分
L3 ピボット部(ピロボールジョイント)の車両前後方向の重複長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16