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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002350
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】増圧装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 3/00 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
F15B3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103543
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086BA02
3H086BA03
3H086BA12
3H086BA19
3H086BB03
3H086CA04
(57)【要約】
【課題】スプールの動作速度を大きくして切換弁が中立位置で停止することを抑制できる増圧装置を提供すること。
【解決手段】増圧装置は、第1増圧室22aと第1スプール室76aとを連通させる開位置P1と、第1増圧室22aと第1スプール室76aとを遮断する閉位置を取る開閉弁25aを備える。閉位置は、第1ロッドパッキン75aによる第1ピン71に対するシール状態によって形成される。開位置P1は、第1ロッドパッキン75aによる第1ピン71に対するシールが解除されることによって形成される。開閉弁25aが閉位置にある状態において、第1ピン71が第1ピストン15aにより押圧されて、給気ポート32が、連通している第1出力ポート33とは異なる第2出力ポート34に連通するまでに開閉弁25aが開位置P1を取る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ブロックと、
前記本体ブロックを挟む一対のシリンダ室と、
前記本体ブロックを貫通する軸部材と、
前記軸部材の両端に連結されるとともに各シリンダ室に配置されるピストンと、
各シリンダ室内において、前記ピストンを境として前記本体ブロック側に位置する増圧室、及び前記増圧室と反対側に位置する駆動室と、
前記各ピストンによるピンの押圧により駆動して、前記各駆動室を、給気ポートを介した出力ポート又は排気ポートに切り換えて連通させる切換弁と、を備え、
前記切換弁は、前記給気ポート、前記排気ポート及び前記出力ポートを備えるスリーブと、
前記スリーブ内で軸線方向に往復動するスプールと、
前記スリーブ内において前記スプールの軸線方向の両端よりも外側に区画されるスプール室と、
前記各スプール室内に一部が配置されるとともに前記スリーブを前記軸線方向に貫通する先端部を有する一対の前記ピンと、
前記軸線方向の一対の前記ピンの間に配置されるばね収容室に収容される復帰ばねと、
前記各ピンの先端部と前記スリーブとの間をシールするシール部材と、を有する増圧装置であって、
前記増圧室と前記スプール室とを連通させる開位置と、前記増圧室と前記スプール室とを遮断する閉位置を取る開閉弁を備え、
前記閉位置は、前記シール部材による前記ピンに対するシール状態によって形成され、
前記開位置は、前記シール部材による前記ピンに対するシールが解除されることによって形成され、
前記開閉弁が前記閉位置にある状態において、前記ピンが前記ピストンにより押圧されて、前記給気ポートが、連通している前記出力ポートと異なる出力ポートに連通するまでに前記開閉弁が前記開位置とされることを特徴とする増圧装置。
【請求項2】
前記ピンは、
前記スプール内に配置される基部と、
前記基部に設けられるとともに前記軸線方向に延びるスリットと、を有し、
前記スリットは、前記切換弁における前記スプールの位置に応じて、前記スプール室と前記ばね収容室とを連通させることを特徴とする請求項1に記載の増圧装置。
【請求項3】
前記スプールは、前記増圧室から前記スプール室へ導入されたエアを受ける受圧部を有し、
前記スリーブは、前記受圧部が着座して前記スプール室をシールする弁座を有し、
前記受圧部と前記弁座とはメタルシールされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の増圧装置。
【請求項4】
前記切換弁は、前記スプール室と前記排気ポートとを接続する絞り流路を有し、
前記開閉弁が閉位置を取るときに、前記絞り流路を通して前記スプール室のエアが排気されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の増圧装置。
【請求項5】
前記絞り流路は、前記スリーブと前記スプールとの間の嵌合隙間であることを特徴とする請求項4に記載の増圧装置。
【請求項6】
前記切換弁は、前記増圧室とのシール部を弁座とするとともに、前記ピンの推力で前記スプールが移動することにより切り換えられ、
前記増圧室から供給される流体による切換動作、及び前記ピンの推力による切換動作、のうち、いずれか速い切換動作によって開閉されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の増圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15及び図16に示すように、特許文献1に開示された増圧装置90は、図示しない給気ポート、排気ポート、及び出力ポートを有する本体ブロック91と、本体ブロック91を挟む一対のシリンダ92と、一対のシリンダ92内を往復動する一対のピストン93を有する。一対のピストン93は、本体ブロック91を貫通するロッド94により連結されている。それぞれのシリンダ92は、各ピストン93によりシリンダ92の軸線方向における外側に位置する駆動室95と、内側に位置する増圧室96と、に区画されている。また、本体ブロック91には、入口チェック弁97a、出口チェック弁97b、及び切換弁98が組み込まれている。ロッド94の両端には、ロッド94の軸線方向に延びる大気排出スリット101がそれぞれ設けられている。
【0003】
切換弁98には、各増圧室96内に突出する一対のピン99が設けられている。また、切換弁98には、一対のピン99に挟まれたスプール100が設けられている。各ピン99が往復動する各ピストン93に押圧されることによって、スプール100が移動し、切換弁98のポート間の連通を切り換えている。ポート間の連通を切り換えることにより、各駆動室95を給気ポートと排気ポートに交互に連通させる。また、ピストン93がピン99に接触する直前に大気排出スリット101を介して増圧室96と駆動室95とを連通させることによってピストン93の動作速度を大きくして切換弁98のスプール100をより速く切り換えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5-75501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の増圧装置90においては、切換弁98の切換を早めるために増圧室96内の圧力を駆動室95内の圧力と同じ圧力まで下げるが、増圧室96内の圧力が低下するまで時間を要する。これにより、増圧室96の圧力を下げ始めてからピストン93の動作速度が大きくなるまでの時間も余計にかかる。特に、増圧室96の圧力が、増圧装置90に設定された設定値の近くまで上昇した場合、大気排出スリット101を介して増圧室96と駆動室95とが連通する直前のピストン93の動作速度は、特に遅くなる。このため、スプール100を一気に移動させて切換弁98を切り換えることができなくなる。スプール100を一気に移動させることができないと、二つの駆動室95のうち両方が開放される中立位置で切換弁98が停止する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する増圧装置は、本体ブロックと、前記本体ブロックを挟む一対のシリンダ室と、前記本体ブロックを貫通する軸部材と、前記軸部材の両端に連結されるとともに各シリンダ室に配置されるピストンと、各シリンダ室内において、前記ピストンを境として前記本体ブロック側に位置する増圧室、及び前記増圧室と反対側に位置する駆動室と、前記各ピストンによるピンの押圧により駆動して、前記各駆動室を、給気ポートを介した出力ポート又は排気ポートに切り換えて連通させる切換弁と、を備え、前記切換弁は、前記給気ポート、前記排気ポート及び前記出力ポートを備えるスリーブと、前記スリーブ内で軸線方向に往復動するスプールと、前記スリーブ内において前記スプールの軸線方向の両端よりも外側に区画されるスプール室と、前記各スプール室内に一部が配置されるとともに前記スリーブを前記軸線方向に貫通する先端部を有する一対の前記ピンと、前記軸線方向の一対の前記ピンの間に配置されるばね収容室に収容される復帰ばねと、前記各ピンの先端部と前記スリーブとの間をシールするシール部材と、を有する増圧装置であって、前記増圧室と前記スプール室とを連通させる開位置と、前記増圧室と前記スプール室とを遮断する閉位置を取る開閉弁を備え、前記閉位置は、前記シール部材による前記ピンに対するシール状態によって形成され、前記開位置は、前記シール部材による前記ピンに対するシールが解除されることによって形成され、前記開閉弁が前記閉位置にある状態において、前記ピンが前記ピストンにより押圧されて、前記給気ポートが、連通している前記出力ポートと異なる出力ポートに連通するまでに前記開閉弁が前記開位置とされる。
【0007】
これによれば、増圧室のエアは、増圧されているためスプール室のエアの圧力より高い。このため、開閉弁を開位置に位置させると増圧室で増圧されたエアがスプール室に一気に流れ込み、切換弁のスプールを一気に押圧することができる。ピストンによるピンの押圧によってスプールを移動させる場合と比べて、スプールの動作速度を大きくできることにより、切換弁が中立位置で停止することを抑制できる。
【0008】
上記増圧装置において、前記ピンは、前記スプール内に配置される基部と、前記基部に設けられるとともに前記軸線方向に延びるスリットと、を有し、前記スリットは、前記切換弁における前記スプールの位置に応じて、前記スプール室と前記ばね収容室とを連通させるとよい。
【0009】
これによれば、増圧室からスプール室に導入されたエアでスプールが押圧された後、スリットを介してスプール室とばね収容室とが連通する。すると、スプール室とばね収容室とが同じ圧力になり、スプール室の圧力によるピンの推力を抑えることができるため、圧縮された復帰ばねが復帰しやすくなる。その結果、復帰ばねによってピンを、押圧される前の位置に復帰させやすい。
【0010】
上記増圧装置において、前記スプールは、前記増圧室から前記スプール室へ導入されたエアを受ける受圧部を有し、前記スリーブは、前記受圧部が着座して前記スプール室をシールする弁座を有し、前記受圧部と前記弁座とはメタルシールされているとよい。
【0011】
これによれば、メタルシールされていない場合と比較して、より速くスプールを移動させることができる。
上記増圧装置において、前記切換弁は、前記スプール室と前記排気ポートとを接続する絞り流路を有し、前記開閉弁が閉位置を取るときに、前記絞り流路を通して前記スプール室のエアが排気されるとよい。
【0012】
これによれば、切換弁は、開閉弁と、絞り流路とで三方弁としての機能を有する。
上記増圧装置において、前記絞り流路は、前記スリーブと前記スプールとの間の嵌合隙間であるとよい。
【0013】
これによれば、スリーブとスプールとの間の嵌合隙間とは別に絞り流路を設けることなく、切換弁を三方弁として機能させることができる。そのため、スリーブとスプールとの間の嵌合隙間とは別に絞り流路を設ける場合と比べて、切換弁の構成を簡素化できる。
【0014】
上記増圧装置において、前記切換弁は、前記増圧室とのシール部を弁座とするとともに、前記ピンの推力で前記スプールが移動することにより切り換えられ、前記増圧室から供給される流体による切換動作、及び前記ピンの推力による切換動作、のうち、いずれか速い切換動作によって開閉されるとよい。
【0015】
これによれば、流体による切換動作、及びピンの推力による切換動作、のいずれか速い切換動作によって、切換弁が切り換わる。その結果、増圧装置の信頼性が向上するとともに、切換弁の切換速度が向上する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、スプールの動作速度を大きくして切換弁が中立位置で停止することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における増圧装置を示す断面図。
図2】増圧装置を示す回路図。
図3】第1増圧室を増圧する際の切換機構を示す断面図。
図4】第1増圧室を増圧する際の切換機構を示す回路図。
図5】第1増圧室から第2増圧室の増圧に切り換わる際の切換機構を示す断面図。
図6】第1増圧室から第2増圧室の増圧に切り換わる際の切換機構を示す回路図。
図7】第2増圧室を増圧する際の切換機構を示す断面図。
図8】第2増圧室を増圧する際の切換機構を示す回路図。
図9】第2増圧室から第1増圧室の増圧に切り換わる際の切換機構を示す断面図。
図10】第2増圧室から第1増圧室の増圧に切り換わる際の切換機構を示す回路図。
図11】開閉弁と増圧室の関係を示す表。
図12】切換機構の開閉弁の弁座の一部分を拡大して示す部分断面図。
図13】別の実施形態における切換機構の開閉弁の弁座の一部分を拡大して示す部分断面図。
図14】別の実施形態における切換機構の開閉弁の弁座の一部分を拡大して示す部分断面図。
図15】特許文献1の増圧装置を示す断面図。
図16】特許文献1の増圧装置の切換弁を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、増圧装置を具体化した一実施形態を図1図12にしたがって説明する。
<増圧装置10の全体構成>
図1及び図2に示すように、増圧装置10は、本体ブロック13と、本体ブロック13を挟む一対の筒部材11と、を有する。各筒部材11の軸線の延びる方向の一端部は、本体ブロック13に連結され、各筒部材11の軸線の延びる方向の他端部は、各閉塞部材12a,12bにより閉塞されている。
【0019】
筒部材11の軸線の延びる方向を増圧装置10の軸線方向Xとする。増圧装置10は、軸線方向Xにおける一方側にシリンダ室としての第1シリンダ室14aを有するとともに、軸線方向Xにおける他方側にシリンダ室としての第2シリンダ室14bを有する。したがって、増圧装置10は本体ブロック13を挟む一対のシリンダ室14a,14bを有する。第1シリンダ室14aは、本体ブロック13と一方の閉塞部材12aによって一方の筒部材11を閉塞することにより区画され、第2シリンダ室14bは、本体ブロック13と他方の閉塞部材12bによって他方の筒部材11を閉塞することにより区画されている。第1シリンダ室14aには、ピストンとしての第1ピストン15aが配置されている。第2シリンダ室14bには、ピストンとしての第2ピストン15bが配置されている。
【0020】
増圧装置10は、本体ブロック13を軸線方向Xに貫通する軸部材16を備える。軸部材16の軸線方向Xの一端には第1ピストン15aが連結され、軸部材16の軸線方向Xの他端には第2ピストン15bが連結されている。第1ピストン15a及び第2ピストン15bは、締結部材17により軸部材16に締結されている。
【0021】
第1ピストン15aは、第1シリンダ室14aを、増圧室としての第1増圧室22aと、駆動室としての第1駆動室21aとに区画する。第1増圧室22aは、軸線方向Xにおける本体ブロック13側に位置する。第1駆動室21aは、第1増圧室22aとは反対側に位置する。第1駆動室21aは、第1増圧室22aよりも閉塞部材12a寄りに位置する。第1駆動室21aに流体としてのエアが給排されることにより、第1増圧室22aは、エアを増圧する。
【0022】
第2ピストン15bは、第2シリンダ室14bを、増圧室としての第2増圧室22bと、駆動室としての第2駆動室21bとに区画する。第2駆動室21bは、軸線方向Xにおける第2増圧室22bとは反対側に位置する。第2駆動室21bは、第2増圧室22bよりも閉塞部材12b寄りに位置する。第2駆動室21bにエアが給排されることにより、第2増圧室22bは、エアを増圧する。
【0023】
第1増圧室22a及び第2増圧室22bは、それぞれ入口チェック弁18aを介してエア供給源1に接続されている。入口チェック弁18aは、エア供給源1から第1増圧室22a及び第2増圧室22bへのエアの流入のみを許容する。また、第1増圧室22a及び第2増圧室22bは、それぞれ出口チェック弁18bを介して吐出口2に接続されている。出口チェック弁18bは、第1増圧室22a及び第2増圧室22bから吐出口2へのエアの流出のみを許容する。
【0024】
増圧装置10は、調整弁19を有する。調整弁19は、ばね設定による図示しない圧力設定部を有する。図2に示すように、調整弁19には、吐出口2の出力圧力が帰還されている。調整弁19は、エア供給源1から供給されたエアを吐出圧力に応じて調節することにより、後述する切換機構20の切換弁24に供給する。
【0025】
第1駆動室21a及び第2駆動室21bは、切換機構20の切換弁24及び調整弁19を介してエア供給源1に接続されている。切換機構20は、5ポート2位置式の切換弁24と、切換弁24の両端の圧力室と第1増圧室22a又は第2増圧室22bとの間の流路を開閉する一対の開閉弁25a,25bと、を有する。切換弁24は、エアの流体圧により操作される流体圧操作弁である。各開閉弁25a,25bは、第1ピストン15a及び第2ピストン15bにより後述する第1ピン71及び第2ピン72が操作されて動作する機械操作弁である。切換機構20は、各開閉弁25a,25bによって切換弁24をパイロット操作するパイロット式切換弁として構成されている。このとき、第1ピン71及び第2ピン72は各開閉弁25a,25bの機械操作をするとともに、各開閉弁25a,25bの弁体として機能している。
【0026】
なお、第1ピストン15a及び第2ピストン15bは、各筒部材11の径方向内側に配置されている。第1ピストン15aの外周面150a及び第2ピストン15bの外周面150bには、ピストンパッキン23がそれぞれ装着されている。
【0027】
<切換機構20の構成>
次に、切換機構20について詳細に説明する。
図3に示すように、切換機構20は、切換弁24を有する。切換弁24は、スリーブ31と、スリーブ31内で往復動可能に配置されたスプール38と、を有する。本実施形態では、スプール38は、メタルスプールである。切換機構20は、ピンとしての第1ピン71及び第2ピン72と、復帰ばね79と、を有する。第1ピン71は、スプール38の軸線方向の一端側に配置されるとともに、第2ピン72は、スプール38の軸線方向の他端側に配置されている。第1ピン71及び第2ピン72の各々は、スプール38の内周側にシール可能な状態で配置されている。また、第1ピン71及び第2ピン72の各々は、スプール38の内周側で摺動可能な状態で配置されている。第1ピン71及び第2ピン72は、プッシュピンである。復帰ばね79は、第1ピン71と第2ピン72との間に配置されている。
【0028】
切換弁24では、第1ピン71が第1ピストン15aに押圧されたとき、第1ピン71がスプール38に軸線方向Xで係合することによって、直接操作が可能となっている。つまり、増圧装置10は、第1ピン71の推力によってスプール38を移動させることができる。同様に、切換弁24では、第2ピン72が第2ピストン15bに押圧されたとき、第2ピン72がスプール38に軸線方向Xで係合することによって、直接操作が可能となっている。つまり、増圧装置10は、第2ピン72の推力によってスプール38を移動させることができる。この場合、第1ピン71及び第2ピン72は、切換弁24の機械操作を行う機械操作弁として機能している。したがって、切換機構20は、流体圧操作弁かつ、機械操作弁を構成している。
【0029】
例えば、エアの圧力が十分に高い場合、エアの圧力によってスプール38が移動する。一方、エアの圧力が低い場合のように、エアの圧力によってスプール38が安定的に移動できない場合、第1ピン71及び第2ピン72の推力によってスプール38が移動する。このように、増圧装置10は、エアの圧力に応じて、エアによる流体圧操作、又は、第1ピン71及び第2ピン72による機械的操作を行うことにより、スプール38を移動させる。エアによる流体圧操作と第1ピン71及び第2ピン72による機械的操作とは、動作速度の大きい方が優先される。なお、スリーブ31の軸線Lの延びる方向を切換弁24の軸線方向とする。切換弁24の軸線方向は、増圧装置10の軸線方向Xと一致するため、切換弁24の軸線方向を「軸線方向X」と記載する。
【0030】
スリーブ31には、給気ポート32、第1出力ポート33、第2出力ポート34、第1排気ポート35、及び第2排気ポート36が形成されている。給気ポート32、第1出力ポート33、第2出力ポート34、第1排気ポート35、及び第2排気ポート36は、スリーブ31の軸線方向Xの一端側から他端側にかけて第1排気ポート35、第1出力ポート33、給気ポート32、第2出力ポート34、及び第2排気ポート36の順に並んで配置されている。
【0031】
スリーブ31の内側には、軸線方向Xに延びる収容孔37が形成されている。収容孔37は、給気ポート32、第1出力ポート33、第2出力ポート34、第1排気ポート35、及び第2排気ポート36にそれぞれ連通している。
【0032】
スリーブ31の内周面のうち、軸線方向Xに沿った第1増圧室22a側には第1弁座41が形成されている。スリーブ31の内周面のうち、軸線方向Xに沿った第1排気ポート35と第1出力ポート33との間には第2弁座42が形成されている。また、スリーブの内周面のうち、軸線方向Xに沿った第1出力ポート33と給気ポート32との間には第3弁座43が形成されている。さらに、スリーブ31の内周面のうち、軸線方向Xに沿った給気ポート32と第2出力ポート34との間には第4弁座44が形成されている。また、スリーブ31の内周面のうち、軸線方向Xに沿った第2出力ポート34と第2排気ポート36の間には第5弁座45が形成されている。スリーブ31の内周面のうち、軸線方向Xに沿った第2増圧室22b側には第6弁座46が形成されている。
【0033】
収容孔37内には、エアの流路を切り換えるスプール38が軸線方向Xに往復動可能に収容されている。
スプール38には、軸線方向Xにおいて、互いに離間して第1弁部51、第2弁部52、第1受圧部61、及び第2受圧部62が形成されている。第1弁部51、第2弁部52、第1受圧部61、及び第2受圧部62は、軸線方向Xにおいて、一端から他端に向けて第1受圧部61、第1弁部51、第2弁部52、及び第2受圧部62の順に並んで配置されている。第1受圧部61、第1弁部51、第2弁部52、及び第2受圧部62でのスプール38の外径は、スリーブ31の内径より僅かに小さい。
【0034】
第1受圧部61は、スプール38の軸線方向Xの一端側に形成されている。第1受圧部61は、フランジ状である。第1受圧部61の外周面61aが第1弁座41の内周面410に軸線方向Xに重なり合っている。
【0035】
第1受圧部61と第1弁座41との間には、嵌合隙間である第1絞り流路80aが形成されている。第1絞り流路80aは、第1スプール室76aと第1排気ポート35とを接続する連通路として機能する。第1スプール室76aにエアが供給されると、エアが第1絞り流路80aから僅かに漏洩しつつも、エアのスプール38に対する操作圧力は維持される。第1スプール室76aにエアが供給されなくなると、エアが第1絞り流路80aから第1排気ポート35へ排出されるため、第1スプール室76aは、大気圧となる。このように、第1絞り流路80aは、スプール38の移動時のエアの漏洩を許容範囲に抑えるように形成されている。第1絞り流路80aは、メタルシールである。
【0036】
第2受圧部62は、スプール38の軸線方向Xの他端側に形成されている。第2受圧部62は、フランジ状である。第2受圧部62の外周面62aが第6弁座46の内周面460に軸線方向Xに重なり合っている。
【0037】
第2受圧部62と第6弁座46との間には、嵌合隙間である第2絞り流路80bが形成されている。第2絞り流路80bは、第2スプール室76bと第2排気ポート36とを接続する連通路として機能する。第2スプール室76bにエアが供給されると、エアが第2絞り流路80bから僅かに漏洩しつつも、エアのスプール38に対する操作圧力は維持される。第2スプール室76bにエアが供給されなくなると、エアが第2絞り流路80bから第2排気ポート36へ排出されるため、第2スプール室76bは、大気圧となる。このように、第2絞り流路80bは、スプール38の移動時のエアの漏洩を許容範囲に抑えるように形成されている。第2絞り流路80bは、メタルシールである。
【0038】
このように機能するように、第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bは、シールの必要な箇所と、シールの不要な箇所とで、軸線方向Xの長さが異なるように設定されている。このため、第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bからのエアの排出流量は、異なる。
【0039】
したがって、増圧装置10では、第1受圧部61及び第2受圧部62への各開閉弁25a,25bからのエアの供給、及び第1絞り流路80aと第2絞り流路80bによるエアの排出により、流体圧操作が可能となっている。
【0040】
図2に示すように、第1駆動室21aは、第1流路3、切換弁24及び調整弁19を介してエア供給源1と排気口5に交互に連通するように構成されている。同様に、第2駆動室21bは、第2流路4、切換弁24及び調整弁19を介してエア供給源1と排気口5に交互に連通するように構成されている。
【0041】
切換弁24は、第1位置P1と、第2位置P2の2位置を取り得る。
図3及び図4は、切換弁24の第1位置P1での、第1増圧室22aを増圧している状態を示している。このとき各開閉弁25a,25bは共に閉じている。
【0042】
図7及び図8は、切換弁24の第2位置P2での、第2増圧室22bを増圧している状態を示している。このとき各開閉弁25a,25bは共に閉じている。
図5及び図6は、増圧される増圧室が第1増圧室22aから第2増圧室22bに切り換わる状態を示している。開閉弁25aが開位置P4となるとともに、開閉弁25bが閉位置P5となり、切換弁24は第2位置P2に切り換わっている。
【0043】
図9及び図10は、増圧される増圧室が第2増圧室22bから第1増圧室22aに切り換わる状態を示している。開閉弁25aが閉位置P3となるとともに、開閉弁25bが開位置P6となり、切換弁24は第1位置P1に切り換わっている。
【0044】
図11は、各開閉弁25a,25bと第1増圧室22aと第2増圧室22bとの関係について示している。以下、これらの図に示す状態について説明する。
図3又は図4に示すように、第1位置P1では、第1弁部51が第2弁座42に着座するとともに、第2弁部52が第4弁座44に着座している。また、第1位置P1では、第1受圧部61が第1弁座41に着座するとともに、第2受圧部62の一部が第6弁座46に着座している。
【0045】
なお、第1位置P1において、図3のようにスプール38の移動が停止した状態では、第2受圧部62の外周面62aの一部は、第6弁座46の内周面460から軸線方向Xで離間している。つまり、第6弁座46の内周面460から軸線方向Xで離間している分だけ第2受圧部62と第6弁座46との間の嵌合隙間の長さが短い。このため、スプール38の移動途中であって、第2受圧部62の外周面62aの全てが第6弁座46の内周面460に接触している場合と比べると、第1位置P1における第2受圧部62の外周面62aと第6弁座46の内周面460との接触面積が小さくなっている。これにより、第2絞り流路80bは、第2スプール室76bから第2排気ポート36へエアを排出しやすい。
【0046】
第2スプール室76bは、第2絞り流路80bを通して第2排気ポート36と連通している。開閉弁25bの弁体として機能する第2ピン72は、弁座として機能する第2ロッドパッキン75bによって閉じられている。したがって、エアが第2絞り流路80bを介して第2排気ポート36へ排出されることにより、第2スプール室76bの圧力は、大気圧となっている。
【0047】
このとき、第2スリット74bは、スプール38によって閉じられていないため、ばね収容室78と第2スプール室76bとが連通している。したがって、ばね収容室78も同様に大気圧である。一方、第1スリット74aは、スプール38によって閉じられているため、ばね収容室78と第1スプール室76aとは、隔離されている。
【0048】
第1位置P1では、給気ポート32と第1出力ポート33とが連通し、かつ第2出力ポート34と第2排気ポート36とが連通する。また、給気ポート32と第1出力ポート33とが第1排気ポート35から遮断され、かつ第2出力ポート34と第2排気ポート36とが第2スプール室76bと連通する。
【0049】
よって、切換弁24が第1位置P1を取ると、エア供給源1から調整弁19を介して供給されるエアが第1出力ポート33から第1流路3を介して第1駆動室21aに供給される。同時に、第2駆動室21bのエアが第2流路4を介して第2排気ポート36から排出される。図3に示す状態においては、第2スプール室76bのエアが第2絞り流路80bを通して第2排気ポート36から排出されている。
【0050】
図7又は図8に示すように、第2位置P2では、第1弁部51が第3弁座43に着座するとともに、第2弁部52が第5弁座45に着座している。また、第2位置P2では、第1受圧部61が第1弁座41から離間するとともに、第2受圧部62が第6弁座46に着座している。
【0051】
なお、第2位置P2において、図7又は図8のようにスプール38の移動が停止した状態では、第1受圧部61の外周面61aの一部は、第1弁座41の内周面410から軸線方向Xで離間している。つまり、第1弁座41の内周面410から軸線方向Xで離間している分だけ第1受圧部61と第1弁座41との間の嵌合隙間の長さが短い。このため、スプール38の移動途中であって、第1受圧部61の外周面61aの全てが第1弁座41の内周面410に接触している場合と比べると、第2位置P2における第1受圧部61の外周面61aと第1弁座41の内周面410との接触面積が小さくなっている。これにより、第1絞り流路80aは、第1スプール室76aから第1排気ポート35へエアを排出しやすい。
【0052】
第1スプール室76aは、第1絞り流路80aを通して第1排気ポート35と連通している。開閉弁25aの弁体として機能する第1ピン71は、弁座として機能する第1ロッドパッキン75aによって閉じられている。したがって、エアが第1絞り流路80aを介して第1排気ポート35へ排出されることにより、第1スプール室76aの圧力は、大気圧となっている。
【0053】
このとき、第1スリット74aは、スプール38によって閉じられていないため、ばね収容室78と第1スプール室76aとが連通している。したがって、ばね収容室78も大気圧である。一方、第2スリット74bは、スプール38によって閉じられているため、ばね収容室78と第2スプール室76bとは、隔離されている。したがって、第1スリット74a及び第2スリット74bは、スプール38によって開閉される。
【0054】
第2位置P2では、給気ポート32と第2出力ポート34とが連通し、かつ第1出力ポート33と第1排気ポート35とが連通する。また、給気ポート32と第2出力ポート34とが第2排気ポート36から遮断され、かつ第1出力ポート33と第1排気ポート35とが第1スプール室76aと連通する。
【0055】
よって、切換弁24が第2位置P2を取ると、エア供給源1から調整弁19を介して供給されるエアが第2出力ポート34から第2流路4を介して第2駆動室21bに供給される。同時に、第1駆動室21aのエアが第1流路3を介して第1排気ポート35から排出される。図7又は図8に示す状態においては、第1スプール室76aのエアが第1絞り流路80aを通して第1排気ポート35から排出されている。
【0056】
切換弁24が第1位置P1と第2位置P2とに切り換わることにより、エアの供給先が第1駆動室21a又は第2駆動室21bに切り換えられるとともに、エアを圧縮する増圧室が第1増圧室22a又は第2増圧室22bに切り換えられる。つまり、切換弁24は、第1駆動室21aを、給気ポート32を介した第1出力ポート33又は第1排気ポート35に切り換えて連通させる。また、切換弁24は、第2駆動室21bを、給気ポート32を介した第2出力ポート34又は第2排気ポート36に切り換えて連通させる。
【0057】
スリーブ31は、軸線方向Xにおける一端部に第1ロッドカバー63aを備え、軸線方向Xにおける他端部に第2ロッドカバー63bを備える。
切換弁24は、第1ロッドカバー63aの軸線方向Xの内面630aと、第1弁座41の内周面410と、第1受圧部61の軸線方向Xの外側面610とで囲まれた第1スプール室76aを有する。
【0058】
切換弁24は、第2ロッドカバー63bの軸線方向Xの内側の端面630bと、第6弁座46の内周面460と、第2受圧部62の軸線方向Xの外側面620とで囲まれた第2スプール室76bを有する。
【0059】
したがって、切換弁24は、スリーブ31内において、スプール38の軸線方向Xの両端よりも外側に区画される第1スプール室76a及び第2スプール室76bを備える。
第1ロッドカバー63aの径方向内側には、環状溝を介して樹脂製のシール部材としての第1ロッドパッキン75aが配置されている。第2ロッドカバー63bの径方向内側には、環状溝を介して樹脂製のシール部材としての第2ロッドパッキン75bが配置されている。
【0060】
切換機構20は、軸線方向Xにおけるスリーブ31の両端部に配置された第1ピン71及び第2ピン72を有する。
第1ピン71は、第1先端部71aと、第1基部71bと、第1接続部71cと、を有する。第1先端部71aは、第1ロッドパッキン75aを貫通して第1ピストン15aに向けて突出する棒状の先端部である。第1基部71bは、スリーブ31内に配置されている。第1基部71bは、スプール38の径方向内側に位置する円柱状である。第1接続部71cは、第1先端部71aと第1基部71bとを軸線方向Xに接続する円盤状である。
【0061】
第1ピン71の第1先端部71aは、円柱状の第1小径部711と、第1テーパ部712と、円柱状の第1大径部713と、を有する。第1テーパ部712は、軸線方向Xに沿って第1小径部711から第1接続部71cに向かうほど直径が大きい。第1大径部713は、軸線方向Xに沿って第1テーパ部712に連続する。第1大径部713の直径は、第1小径部711の直径より大きい。また、第1小径部711、及び第1テーパ部712の直径は第1ロッドパッキン75aの内径より小さい。このため、第1小径部711の周面711a及び第1テーパ部712の周面712aは、第1ロッドパッキン75aの内周縁に接触しない。そのため、第1小径部711の周面711a及び第1テーパ部712の周面712aと、第1ロッドパッキン75aの内周縁との間には流路が形成される。
【0062】
したがって、第1ピン71は、開位置P4を取る。開位置P4では、第1小径部711の周面711a又は第1テーパ部712の周面712aが第1ロッドパッキン75aの内周縁に接触しておらず、第1ロッドパッキン75aによる第1ピン71に対するシールが解除された状態で、第1スプール室76aと第1増圧室22aとの間の流路を開く。つまり、第1ピン71が開位置P4に位置すると、第1スプール室76aと第1増圧室22aとは連通する。
【0063】
一方、第1大径部713の直径は、第1ロッドパッキン75aの内径より大きい。このため、第1大径部713の周面713aは、第1ロッドパッキン75aの内周縁に接触し、第1ロッドパッキン75aの内周縁との間には流路が形成されない。
【0064】
したがって、第1ピン71は、閉位置P3を取る。閉位置P3では、第1大径部713の周面713aが第1ロッドパッキン75aの内周縁に接触し、第1ロッドパッキン75aによる第1ピン71に対するシール状態で、第1スプール室76aと第1増圧室22aとの間の流路を閉じる。つまり、第1ピン71が閉位置P3に位置すると、第1スプール室76aと第1増圧室22aとは、第1ロッドパッキン75aによって遮断される。したがって、第1ピン71は、閉位置P3及び開位置P4の2位置を取り得る。
【0065】
第1ロッドパッキン75aの内周縁が第1ピン71の第1テーパ部712の周面712aに対向する状態では、第1テーパ部712が小径になるに従い、第1ロッドパッキン75aによる第1増圧室22aと第1スプール室76aとの遮断が徐々に解除されていく。このように、第1テーパ部712による開閉によって第1ロッドパッキン75aの摩耗が低減される。
【0066】
第2ピン72は、第2先端部72aと、第2基部72bと、第2接続部72cと、を有する。第2先端部72aは、第2ロッドパッキン75bを貫通して第2ピストン15bに向けて突出する棒状の先端部である。第2基部72bは、スリーブ31内に配置されている。第2基部72bは、スプール38の径方向内側に位置する円柱状である。第2接続部72cは、第2先端部72aと第2基部72bとを軸線方向Xに接続する円盤状である。
【0067】
第2ピン72の第2先端部72aは、円柱状の第2小径部721と、第2テーパ部722と、円柱状の第2大径部723と、を有する。第2テーパ部722は、軸線方向Xに沿って第2小径部721から第2接続部72cに向かうほど直径が大きい。第2大径部723は、軸線方向Xに沿って第2テーパ部722に連続する。第2大径部723の直径は、第2小径部721の直径より大きい。また、第2小径部721、及び第2テーパ部722の直径は第2ロッドパッキン75bの内径より小さい。このため、第2小径部721の周面721a及び第2テーパ部722の周面722aは、第2ロッドパッキン75bの内周縁に接触しない。そのため、第2小径部721の周面721a及び第2テーパ部722の周面722aと、第2ロッドパッキン75bの内周縁との間にはエアの流路が形成される。
【0068】
したがって、第2ピン72は、開位置P6を取る。開位置P6では、第2小径部721又は第2テーパ部722の周面が第2ロッドパッキン75bの内周縁に接触しておらず、第2ロッドパッキン75bによる第2ピン72に対するシールが解除された状態で、第2スプール室76bと第2増圧室22bとの間の流路を開く。つまり、第2ピン72が開位置P6に位置すると、第2スプール室76bと第2増圧室22bとは連通する。
【0069】
一方、第2大径部723の直径は、第2ロッドパッキン75bの内径より大きい。このため、第2大径部723の周面723aは、第2ロッドパッキン75bの内周縁に接触し、第2ロッドパッキン75bの内周縁との間には流路が形成されない。
【0070】
したがって、第2ピン72は、閉位置P5を取る。閉位置P5では、第2大径部723の周面723aが第2ロッドパッキン75bの内周縁に接触し、第2ピン72に対する第2ロッドパッキン75bによってシールされた状態で、第2スプール室76bと第2増圧室22bとの間の流路を閉じる。つまり、第2ピン72が閉位置P5に位置すると、第2スプール室76bと第2増圧室22bとは、第2ロッドパッキン75bによって遮断される。したがって、第2ピン72は、閉位置P5及び開位置P6の2位置を取り得る。
【0071】
第2ロッドパッキン75bの内周縁が第2ピン72の第2テーパ部722の周面722aに対向する状態では、第2テーパ部722が小径になるに従い、第2ロッドパッキン75bによる第2増圧室22bと第2スプール室76bとの遮断が徐々に解除されていく。このように、第2テーパ部722による開閉によって第2ロッドパッキン75bの摩耗が低減される。
【0072】
本実施形態では、第1ピン71の第1先端部71aと第1ロッドパッキン75aにより、切換弁24の第1スプール室76aと第1増圧室22aとの間の流路を開閉する開閉弁25aが構成されている。また、第2ピン72の第2先端部72aと第2ロッドパッキン75bにより、切換弁24の第2スプール室76bと第2増圧室22bとの間の流路を開閉する開閉弁25bが構成されている。よって、増圧装置10では、第1ピン71及び第2ピン72にて第1スプール室76aと第2スプール室76bを区画することにより、第1スプール室76aと第2スプール室76bとを受圧動作側と大気圧側とに区画している。
【0073】
第1ピン71の第1先端部71a、及び第2ピン72の第2先端部72aは、各開閉弁25a,25bの弁体として機能する。第1ロッドパッキン75a及び第2ロッドパッキン75bは、各開閉弁25a,25bの弁座として機能する。また、第1ピン71及び第2ピン72は、第1接続部71c及び第2接続部72cがスプール38の両端に係合することで、切換弁24の機械的操作軸としても機能している。
【0074】
ここで、軸線方向Xにおける第1ピン71の第1基部71bと第2ピン72の第2基部72bとの間に区画されたばね収容室78について説明する。ばね収容室78には、復帰ばね79が収容されている。復帰ばね79の一端は、第1ピン71の第1基部71bの軸線方向Xの内側の端面710bに当接している。復帰ばね79の他端は、第2ピン72の軸線方向Xの内側の端面720bに当接している。
【0075】
第1ピン71が開位置P4に位置し、増圧されたエアが第1スプール室76aに一気に流れ込むと、増圧されたエアによって第1ピン71及びスプール38が軸線方向Xに沿って第2ピン72に向けて押圧される。復帰ばね79は、第1ピン71によって圧縮される。このため、復帰ばね79には圧縮反力が発生する。なお、スプール38が第2ピン72の第2接続部72cに接触するまで移動すると、スプール38の第2ピン72に向けた移動が規制される。
【0076】
第2ピン72が開位置P6に位置し、増圧されたエアが第2スプール室76bに一気に流れ込むと、増圧されたエアによって第2ピン72及びスプール38が軸線方向Xに沿って第1ピン71に向けて押圧される。復帰ばね79は、第2ピン72によって圧縮される。このため、復帰ばね79には圧縮反力が発生する。なお、スプール38が第1ピン71の第1接続部71cに接触するまで移動すると、スプール38の第1ピン71に向けた移動が規制される。
【0077】
復帰ばね79のばね力は、以下に示す力の全てを合計した値以上の復帰力となるように調整されている。ばね力を決定する力としては、閉位置P3の状態で第1増圧室22aの圧力によって第1ピン71のロッド径に発生する推力、及び閉位置P5の状態で第2増圧室22bの圧力によって第2ピン72のロッド径に発生する推力が挙げられる。ばね力を決定する力としては、第1ロッドパッキン75aと第1ピン71との摺動抵抗、及び第2ロッドパッキン75bと第2ピン72との摺動抵抗が挙げられる。ばね力を決定する力としては、スプール38と第1ピン71との摺動抵抗、及びスプール38と第2ピン72との摺動抵抗が挙げられる。
【0078】
第1基部71bの外周面には、軸線方向Xに延びるスリットとしての第1スリット74aが形成されている。第1スリット74aの軸線方向Xの一端は、第1基部71bの外周面に位置し、第1スリット74aの軸線方向Xの他端は、第1基部71bの端面710bに位置している。そして、第1スリット74aは、軸線方向Xの他端においてばね収容室78に連通している。
【0079】
同様に、第2基部72bの外周面には、軸線方向Xに延びるスリットとしての第2スリット74bが形成されている。第2スリット74bの軸線方向Xの一端は、第2基部72bの外周面に位置し、第2スリット74bの軸線方向Xの他端は、第2基部72bの端面720bに位置している。そして、第2スリット74bは、軸線方向Xの他端においてばね収容室78に連通している。
【0080】
第1スリット74aの軸線方向Xに沿う長さは、第1ピン71が閉位置P3から開位置P4に変位し、かつ切換弁24が第1位置P1から第2位置P2に変位した時点で、ばね収容室78と第1スプール室76aとを連通させる長さである。したがって、切換弁24は、第1スリット74aによってばね収容室78と第1スプール室76aとを連通させる連通位置P7と、ばね収容室78と第1スプール室76aとを遮断する遮断位置P8とを取る。
【0081】
第2スリット74bの軸線方向Xに沿う長さは、第2ピン72が閉位置P5から開位置P6に変位し、かつ切換弁24が第2位置P2から第1位置P1に変位した時点で、ばね収容室78と第2スプール室76bとを連通させる長さである。したがって、切換弁24は、第2スリット74bによってばね収容室78と第2スプール室76bとを連通させる連通位置P9と、ばね収容室78と第2スプール室76bとを遮断する遮断位置P10とを取る。
【0082】
切換弁24が開位置P4及び連通位置P7に位置すると、第1スプール室76aとばね収容室78が連通し、同じ圧力になる。そして、第1ピストン15aが第1ピン71から離脱することによって、復帰ばね79の圧縮状態が解除されるとともに、復帰ばね79の圧縮反力により、第1ピン71には閉位置P3に向けた押圧力が作用する。
【0083】
同様に、切換弁24が開位置P6及び連通位置P9に位置すると、第2スプール室76bとばね収容室78が連通し、同じ圧力になる。そして、第2ピストン15bが第2ピン72から離脱することによって、復帰ばね79の圧縮状態が解除されるとともに、復帰ばね79の圧縮反力により、第2ピン72には閉位置P5に向けて押圧力が作用する。したがって、復帰ばね79と第1スリット74aとから、第1ピン71を開位置P4から閉位置P3に復帰させる復帰機構が構成されている。同様に、復帰ばね79と第2スリット74bとから、第2ピン72を開位置P6から閉位置P5に復帰させる復帰機構が構成されている。
【0084】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、増圧装置10において、第2増圧室22bのエアの圧縮が完了し、切換弁24が第1位置P1、第1ピン71が閉位置P3、第2ピン72が閉位置P5、第1スリット74aが遮断位置P8、第2スリット74bが連通位置P9、にそれぞれ位置し、第1ピストン15a及び第2ピストン15bはストローク途中にある。
【0085】
さて、第1増圧室22aのエアが増圧される場合、エア供給源1から供給されたエアが入口チェック弁18aを通過して第1増圧室22aに供給される。
図3又は図4に示すように、切換弁24が第1位置P1に位置した状態において、給気ポート32から供給されたエアは、第1出力ポート33及び第1流路3を通じて第1駆動室21aに供給される。第1駆動室21aに供給されたエアにより、第1ピストン15aが第1増圧室22aに向けて押圧される。これと同時に、エア供給源1から供給されたエアが入口チェック弁18aを通過して第2増圧室22bに供給される。これらにより、第1増圧室22aのエアが圧縮される。
【0086】
このとき、第1ピン71の開閉弁25aは閉位置P3に位置し、第1増圧室22aと第1スプール室76aとの間は遮断されている。第2ピン72の開閉弁25bは閉位置P5に位置し、第2増圧室22bと第2スプール室76bとの間は遮断されている。第1スプール室76a及び第2スプール室76bは第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bにより、第1排気ポート35及び第2排気ポート36に接続されている。この時点では、第1スプール室76a及び第2スプール室76bは大気圧である。また、第1ピン71の第1スリット74aは、遮断位置P8に位置し、ばね収容室78と第1スプール室76aとは連通していない。第2ピン72の第2スリット74bは、連通位置P9に位置し、ばね収容室78と第2スプール室76bとは連通し、ばね収容室78は大気圧である。
【0087】
図3又は図4に示す状態により増圧動作が進むと、図5又は図6に示す状態に至る。
図5図6、又は図11に示すように、第1ピストン15aが第1増圧室22aに向けて押圧され、第1ピストン15aが第1ピン71を押し込むと、第1ロッドパッキン75aによる第1ピン71のシール状態が解除される。これにより、開閉弁25aが開位置P4に位置する。すると、第1増圧室22a内の増圧されたエアが第1スプール室76aに一気に流れ込む。このとき、第1スプール室76a内の圧力は、大気圧である第2スプール室76b内の圧力に比べて遥かに大きい。したがって、第1スプール室76a内に流れ込んだエアは、スプール38を第2スプール室76bに向けて速やかに移動させる。すると、切換弁24が第2位置P2に位置する。これにより、第1スプール室76aは、第1スリット74aを介してばね収容室78と連通する。また、スプール38が第2スプール室76bに向けて移動することに伴い、第2スリット74bを介した第2スプール室76bとばね収容室78との連通が遮断され、第2スリット74bは遮断位置P10に位置する。第1増圧室22a内の増圧されたエアの圧力によってスプール38を速やかに移動させることができない場合、第1ピストン15aの推力によってスプール38を移動させる。
【0088】
切換弁24が第2位置P2に位置することにより、調整弁19により制御される駆動室が、第1駆動室21aから第2駆動室21bに切り換わるとともに、調整弁19により制御される増圧室が、第1増圧室22aから第2増圧室22bに切り換わる。すると、第1ピストン15a及び第2ピストン15bの動作する方向が反転する。そして、第1ピストン15aと第1ピン71との接触が解除されることにより、図7又は図8に示す状態へ移行する。
【0089】
図7図8、又は図11に示すように、切換弁24が第2位置P2に位置する状態において、第1スリット74aが連通位置P7に位置するため、第1スプール室76aとばね収容室78とが連通している。復帰ばね79の圧縮反力により第1ピン71が第1ピストン15aに向けて押圧される。第1ピン71は開位置P4から閉位置P3に向けて移動し、第1増圧室22aと第1スプール室76aとの間がシールされている。これにより、第1ピストン15aは、第1駆動室21a側に移動する。そして、第1増圧室22aの容積は増加し圧力が低下しようとする。すると、第1増圧室22aにはエア供給源1から入口チェック弁18aを介してエアが供給される。
【0090】
また、調整弁19から給気ポート32を通して供給されたエアは、第2出力ポート34及び第2流路4を通じて第2駆動室21bに供給される。これにより、第2ピストン15bは、第1増圧室22a側に押圧される。これと同時に、エア供給源1から供給されたエアが入口チェック弁18aを通過して第1増圧室22aに供給される。このようにして、第2増圧室22bのエアが圧縮される。このとき、第2ピン72の開閉弁25bは閉位置P5に位置し、第2増圧室22bと第2スプール室76bとの間は遮断されている。また、第2スリット74bは遮断位置P10に位置し、第2スプール室76bと第2スリット74bとは連通しておらず、ばね収容室78にはエアが供給されない。
【0091】
また、第1スプール室76a内の残圧は、第1絞り流路80aから第1排気ポート35へと排出される。すると、第1スプール室76aとばね収容室78は大気圧になる。
図5に示す状態により増圧動作が進むと、図6に示す状態に至る。
【0092】
図9図10、又は図11に示すように、第2ピストン15bが第2ピン72を押し込むと、第2ロッドパッキン75bによる第2ピン72のシール状態が解除され、第2ピン72における開閉弁25bが開位置P6に位置する。すると、第2増圧室22b内の増圧されたエアが第2スプール室76bに一気に流れ込む。このとき、第2スプール室76b内の圧力は、大気圧である第1スプール室76a内の圧力に比べて遥かに大きい。したがって、第2スプール室76b内に流れ込んだエアは、スプール38を第1スプール室76aに向けて速やかに移動させる。すると、切換弁24が第1位置P1に位置する。これにより、第2スプール室76bは、第2スリット74bを介してばね収容室78と連通する。また、スプール38が第1スプール室76aに向けて移動することに伴い、第1スリット74aを介した第1スプール室76aとばね収容室78との連通が遮断され、第1スリット74aは遮断位置P8に位置する。第2増圧室22b内の増圧されたエアの圧力によってスプール38を速やかに移動させることができない場合、第2ピストン15bの推力によってスプール38を移動させる。
【0093】
切換弁24が第1位置P1に位置することにより、調整弁19により制御される駆動室が、第2駆動室21bから第1駆動室21aに切り換わるとともに、調整弁19により制御される増圧室が、第2増圧室22bから第1増圧室22aに切り換わる。すると、第1ピストン15a及び第2ピストン15bの動作する方向が反転する。そして、第2ピストン15bと第2ピン72との接触が解除されることにより、図3又は図4に示す状態へ移行する。
【0094】
増圧装置10は、圧縮されたエアが調整弁19で設定した圧力に達するまで、上記のように図3又は図4に示す状態から図9又は図10に示す状態までの第1増圧室22a及び第2増圧室22bの切換動作を繰り返すことにより、連続して増圧動作を行う。
【0095】
調整弁19は、設定圧力と吐出圧力とを比較して、その偏差に応じて調整弁19の弁開度を調整する。これにより、第1駆動室21a及び第2駆動室21bへのエアの供給流量を調整する。設定圧力と吐出圧力とが一致すると、調整弁19は、第1駆動室21a及び第2駆動室21bへの供給を止める。このようにして吐出口2の出力圧力を設定圧力に調節する。
【0096】
<効果>
上記実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1)増圧装置10では、切換機構20の各開閉弁25a,25bを開位置に位置させることにより、増圧室で増圧されたエアの圧力でスプール38を一気に、しかもピストンの移動速度が遅くなっても流体駆動により移動させることができる。このため、スプール38の切換速度を早くできる。これにより、第1ピストン15aによる第1ピン71の押圧、又は第2ピストン15bによる第2ピン72の押圧によってスプール38を移動させる場合と比べて、スプール38の動作速度を大きくできるとともに、切換弁24が中立位置で停止することを抑制できる。
【0097】
(2)増圧装置10は、第1ピン71又は第2ピン72による機械的操作によってもスプール38を移動させることができる。例えば、供給されるエアの圧力が低い場合のように、エアの圧力によるスプール38の移動が不安定である場合、第1ピストン15a及び第2ピストン15bの駆動力を受けた第1ピン71及び第2ピン72の推力によってもスプール38を移動させることができる。つまり、エアの圧力による切換動作、及び第1ピン71と第2ピン72の推力による切換動作、のいずれか速い切換動作によって、切換弁24が切り換わる。その結果、増圧装置10の信頼性が向上するとともに、切換弁24の切換速度が向上する。
【0098】
(3)増圧装置10では、スプール38の移動先に位置するスプール室を排気ポートと連通させることができる。したがって、スプール38の移動先に位置するスプール室には残圧が残り難いため、残圧がスプール38の移動の妨げになり難い。その結果、増圧装置10は、設定した圧力に達するまで、速い速度でスプール38を交互に切り換え続けることができる。そのため、切換弁24が中立位置で停止することを抑制できる。
【0099】
(4)第1ピン71は、第1スリット74aを有するため、第1増圧室22aから第1スプール室76aに導入されたエアでスプール38が押圧された後、第1スリット74aを介して第1スプール室76aとばね収容室78とが連通する。すると、第1スプール室76aとばね収容室78とが同じ圧力になり、第1スプール室76aの圧力による第1ピン71の推力を抑えることができるため、圧縮された復帰ばね79が復帰し易くなる。
【0100】
同様に、第2ピン72は、第2スリット74bを有するため、第2増圧室22bから第2スプール室76bに導入されたエアでスプール38が押圧された後、第2スリット74bを介して第2スプール室76bとばね収容室78とが連通する。すると、第2スプール室76bとばね収容室78とが同じ圧力になり、第2スプール室76bの圧力による第2ピン72の推力を抑えることができるため、圧縮された復帰ばね79が復帰し易くなる。
【0101】
(5)増圧装置10は、エアを大気へ排出するための第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bを有する。このため、切換弁24は、各開閉弁25a,25bと、第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bとで三方弁として機能する。
【0102】
(6)第1絞り流路80aは、第1受圧部61と第1弁座41との間の嵌合隙間によって構成されるとともに、第2絞り流路80bは、第2受圧部62と第6弁座46との間の嵌合隙間によって構成される。このため、スリーブ31とスプール38との間の嵌合隙間とは別に絞り流路を設けることなく、切換弁24を三方弁として機能させることができる。したがって、スリーブ31とスプール38との間の嵌合隙間とは別に絞り流路を設ける場合と比べて、切換弁24の構成を簡素化できる。
【0103】
(7)増圧装置10は、第1ピン71及び第2ピン72を有する既存の構成に各開閉弁25a,25bを設けるだけで、スプール38が中立位置で停止することを抑制できる。したがって、第1ピン71及び第2ピン72を加工するだけで切換弁24が中立位置で停止することを抑制できる。その結果、増圧装置10の大型化を抑制しつつ、増圧装置10の製造コストを低減できる。
【0104】
(8)増圧装置10では、第1ピン71及び第2ピン72にて第1スプール室76aと第2スプール室76bを区画することにより、第1スプール室76aと第2スプール室76bとを受圧動作側と大気圧側とに区画している。したがって、例えば、第1ピン71及び第2ピン72とは別の部材によって第1スプール室76aと第2スプール室76bとを受圧動作側と大気圧側とに区画する場合と比べて、増圧装置10の構造を簡素化できる。
【0105】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0106】
図13に示すように、第1ピン71の開閉弁25aは、第1先端部71aが第1テーパ部712を有する構成に限らない。例えば、第1ピン71の第1先端部71aにおける周方向の一部に、軸線方向Xに延びるスリット80を備える構成としてもよい。図示しないが、第2ピン72の開閉弁25bは、第2先端部72aにおける周方向の一部に、軸線方向Xに延びるスリットを備える構成としてもよい。
【0107】
図14に示すように、第1ピン71の開閉弁25aは、第1ロッドカバー63aの内面630aにおいて第1先端部71aを囲む位置に設けられたバルブシート82と、第1接続部71cにおいて、バルブシート82に着座可能な弁部81と、から構成してもよい。
【0108】
この場合において、弁部81がバルブシート82に着座することにより、バルブシート82によって第1ピン71に対するシール状態が形成され、閉位置が形成される。この閉位置では、第1増圧室22aと第1スプール室76aとの流路が遮断されている。
【0109】
第1ピン71が第1ピストン15aに押し込まれ、弁部81がバルブシート82から離間すると、バルブシート82による第1ピン71に対するシールが解除されることにより、開位置が形成される。この開位置では、第1増圧室22aと第1スプール室76aとが連通する。
【0110】
・ 実施形態において、第1絞り流路80aは、第1受圧部61と第1弁座41との間の嵌合隙間とは別に設けられていてもよい。
・ 実施形態において、第2絞り流路80bは、第2受圧部62と第6弁座46との間の嵌合隙間とは別に設けられていてもよい。
【0111】
・ 実施形態において、第1基部71bが第1スリット74aを有する構成に限らない。要は、スプール38が一方の端まで押圧されたときに押圧された方のスプール室と排気ポートが連通することにより、残圧が排気されるような構成であればよい。
【0112】
・ 実施形態において、第1増圧室22aと第1スプール室76aとが連通するタイミングは、第1ピストン15aが第1ピン71に接触した瞬間から第1ピン71がスプール38に接触する直前であれば、どのようなタイミングであってもよい。
【0113】
・ 実施形態において、第1受圧部61の径方向における外周面61aと第1弁座41の内周面410とが例えばパッキンシールのようなシール部材でシールされていてもよい。同様に、第2受圧部62の径方向における外周面62aと第6弁座46の内周面460とがパッキンシールのようなシール部材でシールされていてもよい。この場合、実施形態に示す大気への隙間である第1絞り流路80a及び第2絞り流路80bは、嵌合隙間とは別に設ける必要がある。パッキンシールを使用する場合、デテント効果が期待できる。
【0114】
・ 実施形態において、スプール38は金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…増圧装置、13…本体ブロック、14a…シリンダ室としての第1シリンダ室、14b…シリンダ室としての第2シリンダ室、15a…ピストンとしての第1ピストン、15b…ピストンとしての第2ピストン、16…軸部材、21a…駆動室としての第1駆動室、21b…駆動室としての第2駆動室、22a…増圧室としての第1増圧室、22b…増圧室としての第2増圧室、24…切換弁、25a,25b…開閉弁、31…スリーブ、32…給気ポート、33…出力ポートとしての第1出力ポート、34…出力ポートとしての第2出力ポート、35…排気ポートとしての第1排気ポート、36…排気ポートとしての第2排気ポート、38…スプール、41…弁座としての第1弁座、42…弁座としての第2弁座、61…受圧部としての第1受圧部、62…受圧部としての第2受圧部、71…ピンとしての第1ピン、72…ピンとしての第2ピン、71a…先端部としての第1先端部、71b…基部としての第1基部、72a…先端部としての第2先端部、72b…基部としての第2基部、74a…スリットとしての第1スリット、74b…スリットとしての第2スリット、75a…シール部材としての第1ロッドパッキン、75b…シール部材としての第2ロッドパッキン、76a…スプール室としての第1スプール室、76b…スプール室としての第2スプール室、78…ばね収容室、79…復帰ばね、80a…絞り流路としての第1絞り流路、80b…絞り流路としての第2絞り流路、P4,P6…開位置、P3,P5…閉位置、X…軸線方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16