(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023511
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】位置調整機構
(51)【国際特許分類】
B62J 1/16 20060101AFI20230209BHJP
B62J 1/00 20060101ALI20230209BHJP
B62J 1/28 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B62J1/16 Z
B62J1/00 D
B62J1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129105
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000205292
【氏名又は名称】オージーケー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】正瑞 政之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真吾
(57)【要約】
【課題】二つの部材相互の位置を調整可能な位置調整機構において、構造の簡素化および操作性の向上を図る。
【解決手段】取付対象3に固定されるホルダ部材5と、取付対象3に対してホルダ部材5を介してスライド移動可能に保持される可動部材6と、所定の回動位置にて可動部材6に係合し、可動部材6のスライド移動を阻止可能な回転操作子7とを備え、ホルダ部材5は、回転操作子7を回動可能に保持する操作子受孔14を有し、回転操作子7は、操作子受孔14の周縁部と可動部材6とで挟持されることで、ホルダ部材5に対して抜け止め状態で回動可能に保持され、可動部材6は、スライド方向に複数並設され、回転操作子7がロック位置に回動されたときに、回転操作子7に対して係合状態となり、回転操作子7がアンロック位置に回動されたときに、回転操作子7に対して非係合状態となる操作子係合部16を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に固定されるホルダ部材と、
前記取付対象に対して前記ホルダ部材を介してスライド移動可能に保持される可動部材と、
所定の回動位置にて前記可動部材に係合し、前記可動部材のスライド移動を阻止可能な回転操作子と、を備えた前記取付対象と前記可動部材との位置調整機構であって、
前記ホルダ部材は、前記回転操作子を回動可能に保持する操作子受孔を有し、
前記回転操作子は、前記操作子受孔の周縁部と前記可動部材とで挟持されることで、前記ホルダ部材に対して抜け止め状態で回動可能に保持され、
前記可動部材は、前記スライド方向に複数並設され、前記回転操作子が所定のロック位置に回動されたときに、前記回転操作子に対して係合状態となり、前記回転操作子が所定のアンロック位置に回動されたときに、前記回転操作子に対して非係合状態となる操作子係合部を有する、位置調整機構。
【請求項2】
前記回転操作子は、前記可動部材がスライド移動されるときに、前記操作子係合部に弾性をもって押接可能な押接子を有する、請求項1に記載の位置調整機構。
【請求項3】
前記スライド方向を上下方向、前記スライド方向に直交し且つ前記回転操作子の回転中心を通る仮想軸線の延長方向を前後方向、前記スライド方向および前記延長方向のそれぞれに直交する方向を左右方向として、
前記操作子係合部は、前記可動部材における前記回転操作子との対向面に起立形成され、且つ前記左右方向に対向して配置される一対の保持枠部を有し、
前記回転操作子は、前記前後方向に延設され、且つ回転径方向に対向して配置される一対の連結枠部を有し、
前記回転操作子が前記ロック位置にあるときに、前記連結枠部が前記保持枠部に重なり合うことで、前記操作子係合部が前記回転操作子に対して係合状態となり、前記回転操作子が前記アンロック位置にあるときに、前記連結枠部と前記保持枠部との重なりが解除されることで、前記操作子係合部が前記回転操作子に対して非係合状態となる、請求項1または2に記載の位置調整機構。
【請求項4】
前記ホルダ部材または前記回転操作子の何れか一方は、前記回転操作子が前記ロック位置に回動されたとき、および前記アンロック位置に回動されたときのそれぞれにおいて、前記ホルダ部材または前記回転操作子の何れか他方に設けられた被係合部に弾性をもって係合可能な係合子を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の位置調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材相互の位置を調整可能な位置調整機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車に子供を同乗させるための自転車用子供座席において、子供の座高に合わせてヘッドレストの高さ位置を任意に調整可能な位置調整機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1および2)。
【0003】
特許文献1の位置調整機構は、ヘッドレストの下部に延設される支持脚と、座席本体の背もたれ部の後壁部に設けられる保持筒部と、支持脚および保持筒部相互間に貫設される締結具とを備えている。また、上記締結具は、操作つまみと、支持脚および保持筒部相互間に貫挿されるボルトと、ボルトの先端に螺合されるナットとを有しており、上記締結具によって支持脚および保持筒部相互を前後方向から締め付けることによって、ヘッドレストが座席本体に支持固定されるように構成されている。
【0004】
特許文献2の位置調整機構は、ヘッドレスト部材の下部に延設されるステム部と、幼児座席本体の後壁部に沿って左右に並行して形成される2つの取付リブと、上記後壁部に回動可能に取り付けられるロックハンドルとを備えている。また、上記ロックハンドルは、操作つまみとなる鍵部と、ステム部に設けられた長穴に挿通される軸部と、上記後壁部に鍵部と反対側から掛合する円板とを有しており、ステム部を長穴の形成範囲内で上下方向に移動させ、任意の位置にてロックハンドルの鍵部を長穴と交差する向きに回動させることによって、ヘッドレスト部材が幼児座席本体に支持固定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-203874号
【特許文献2】特開2007-125993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の位置調整機構では、ヘッドレストの高さ位置を調整するにあたり、締結具を一旦緩めた後、ヘッドレストを上下に所望の位置までスライド移動させ、再び締結具を締め付けるといった手順が必要であるため、操作に手間がかかるし、締め付けの際に相応の操作力も必要となる。しかも、このものでは、支持脚および保持筒部相互を締結具の操作つまみとナットとで前後から挟持するように構成されているため、部品点数も多くなる。
【0007】
特許文献2の位置調整機構も同様に、ステム部および後壁部相互をロックハンドルの鍵部と円板とで前後から挟持するように構成されているため、部品点数が多くなる問題がある。また、このものでは、鍵部の長手方向をステム部の長穴の延長方向と一致させる向き(縦向き)に回動させることで、鍵部を長穴から抜脱させ、ヘッドレスト部材を後壁部の後方へ傾倒可能に構成されているため、ヘッドレストの高さ位置を調整すべく、鍵部を縦向きに回動させたときに、ヘッドレスト部材が意図せず後壁部の後方に傾倒してしまう問題もある。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、二つの部材相互の位置を調整可能な位置調整機構において、全体構造の簡素化および操作性の向上を図ることを目的とする
。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の位置調整機構は、以下の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明は、取付対象に固定されるホルダ部材と、前記取付対象に対して前記ホルダ部材を介してスライド移動可能に保持される可動部材と、所定の回動位置にて前記可動部材に係合し、前記可動部材のスライド移動を阻止可能な回転操作子と、を備えた前記取付対象と前記可動部材との位置調整機構であって、前記ホルダ部材は、前記回転操作子を回動可能に保持する操作子受孔を有し、前記回転操作子は、前記操作子受孔の周縁部と前記可動部材とで挟持されることで、前記ホルダ部材に対して抜け止め状態で回動可能に保持され、前記可動部材は、前記スライド方向に複数並設され、前記回転操作子が所定のロック位置に回動されたときに、前記回転操作子に対して係合状態となり、前記回転操作子が所定のアンロック位置に回動されたときに、前記回転操作子に対して非係合状態となる操作子係合部を有することを特徴としている。
【0011】
好ましくは、前記回転操作子は、前記可動部材がスライド移動されるときに、前記操作子係合部に弾性をもって押接可能な押接子を有する。
【0012】
好ましくは、前記スライド方向を上下方向、前記スライド方向に直交し且つ前記回転操作子の回転中心を通る仮想軸線の延長方向を前後方向、前記スライド方向および前記延長方向のそれぞれに直交する方向を左右方向として、前記操作子係合部は、前記可動部材における前記回転操作子との対向面に起立形成され、且つ前記左右方向に対向して配置される一対の保持枠部を有し、前記回転操作子は、前記前後方向に延設され、且つ回転径方向に対向して配置される一対の連結枠部を有し、前記回転操作子が前記ロック位置にあるときに、前記連結枠部が前記保持枠部に重なり合うことで、前記操作子係合部が前記回転操作子に対して係合状態となり、前記回転操作子が前記アンロック位置にあるときに、前記連結枠部と前記保持枠部との重なりが解除されることで、前記操作子係合部が前記回転操作子に対して非係合状態となる。
【0013】
好ましくは、前記ホルダ部材または前記回転操作子の何れか一方は、前記回転操作子が前記ロック位置に回動されたとき、および前記アンロック位置に回動されたときのそれぞれにおいて、前記ホルダ部材または前記回転操作子の何れか他方に設けられた被係合部に弾性をもって係合可能な係合子を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位置調整機構によれば、比較的簡素な構成で、手間なく可動部材をスライド移動させたりスライド移動を制限させたりすることが可能となる。これにより、全体構造が簡素で且つ操作性の良好な位置調整機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の位置調整機構を備えた自転車用子供座席の後方斜視図である。
【
図3】実施形態の位置調整機構の分解斜視図である。
【
図4】実施形態の位置調整機構の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る位置調整機構を、図面に基づき説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の位置調整機構1は、自転車用子供座席2の座席本体3の背凭れ部3Aに設けられ、座席本体3に対するヘッドレスト4の高さ位置を上下に調整可能に構成されている。即ち、本実施形態は、位置調整機構1を自転車用子供座席2に適用した例である。詳述すると、位置調整機構1は、取付対象である座席本体3に固定されるホルダ部材としての支柱ホルダ5と、座席本体3に対して支柱ホルダ5を介してスライド移動可能に保持される可動部材としての支柱6と、支柱ホルダ5にて回動可能に保持され、所定の回動位置にて支柱6に係合し、支柱6のスライド移動を阻止可能な回転操作子7とを備えている。
【0018】
なお、座席本体3の背凭れ部3Aは、座部3Bの後部からその後方へ傾倒して起立形成されており、支柱6は、支柱ホルダ5に対して背凭れ部3Aの延長方向と略同一方向へスライド移動可能に保持されている。また、回転操作子7は、自転車用子供座席2が自転車(図示せず)に対して適正な向きで取り付けられた状態において、回転中心を通る仮想軸線が背凭れ部3Aの延長方向に対して自転車用子供座席2の前後方向から直交する向きで、支柱ホルダ5に対して回動可能に保持されている。従って、本実施形態の説明においては、支柱6のスライド方向を位置調整機構1の上下方向、回転操作子7の仮想軸線の延長方向を位置調整機構1の前後方向、上記スライド方向および仮想軸線の延長方向のそれぞれに直交する方向を位置調整機構1の左右方向とする。
【0019】
図1~
図4に示すように、支柱ホルダ5は、略矩形箱状のホルダ本体8と、ホルダ本体8の左右の側壁から左右外向きに延設される一対の支持板部9と、ホルダ本体8の下縁部に沿って下方に延出する台座部10と、支持板部9の上縁部から上方に延出する引掛け片11とを備えている。また、台座部10には、固定ネジ5Eを挿通可能なネジ挿通孔12が設けられており、支柱ホルダ5は、座席本体3の背凭れ部3Aに対して固定ネジ5Eにより固定される。
【0020】
詳述すると、自転車用子供座席2の背凭れ部3Aには、支柱ホルダ5に設けられた引掛け片11を挿入掛合可能な複数の貫通孔3Hと、固定ネジ5Eを螺合接続可能なネジ孔(図示せず)とが設けられており、支柱ホルダ5は、引掛け片11をそれぞれ背凭れ部3Aの貫通孔3Hに後方から挿入掛合させた後、固定ネジ5Eを背凭れ部3Aのネジ孔に台座部10のネジ挿通孔12を通じて螺合接続させることによって、背凭れ部3Aに固定保持される。
【0021】
ホルダ本体8の上部および下部にはそれぞれ、支柱6を挿通可能な支柱挿通孔13A,13Bが設けられている。支柱挿通孔13A,13Bは、左右方向に長い略長方形状に形成されており、ホルダ本体8の内側空間を通じて上下に連通している。即ち、ホルダ本体8には、上下に開口する略矩形状の貫通孔が設けられている。
【0022】
ホルダ本体8の後壁8Rは、上下左右方向に広がる略平面状に形成されている。上記後壁8Rの上下左右間の略中央位置には、回転操作子7を回動可能に保持する操作子受孔14が設けられている。操作子受孔14は、略円形状に形成されており、ホルダ本体8の上記貫通孔から後壁8Rの後方に向かって開口している。
【0023】
操作子受孔14の内周部には、回転操作子7に設けられた溝部25に弾性をもって係合可能な係合子15が設けられている。係合子15は、操作子受孔14の内周の上下2箇所に対向して設けられている。また、係合子15は、基端が操作子受孔14の内周構成壁に
連結され、先端に半球状の突起が設けられた片持ち梁状の板片であり、上記突起が回転操作子7の外周面に当接することで、回転径方向外側へ弾性変形する。一方、上記突起が回転操作子7の溝部25に嵌入されることで、弾性変形する前の元の状態に戻る。
【0024】
支持板部9の上下間の略中央部にはそれぞれ、ベルト通し孔9Hが開設されている。ベルト通し孔9Hは、下端から上端に向かって縮幅する略砲弾状に形成されている。上記のような形状としたことで、安全ベルト(図示せず)を短手方向から僅かに曲げた状態で保持することができるから、安全ベルトが容易に長手方向へずれるのを防止できる。
【0025】
台座部10は、ホルダ本体8の後壁8Rよりも前方位置に、ホルダ本体8の左右側面相互間に亘って延設されている。ネジ挿通孔12は、台座部10の左右間の中央部に開設されている。ホルダ本体8の下側の支柱挿通孔13Bは、台座部10の後面に沿って形成されている。
【0026】
図1~
図5に示すように、支柱6は、上下方向に長い横断面略コ字状の板体であり、ヘッドレスト4の下縁部における左右間の中央から下方に向かって延設され、ホルダ本体8の支柱挿通孔13A,13Bにその上方から貫挿されている。また、支柱6は、支柱挿通孔13A,13Bと略同一の前後幅および左右幅に形成されており、支柱挿通孔13A,13Bの内周縁にて所定の摩擦抵抗をもって上下にスライド移動可能に保持されている。
【0027】
支柱6における回転操作子7との対向面、即ち、後面部(以下、「支柱後面」という)6Rには、回転操作子7に係合可能な操作子係合部16が設けられている。操作子係合部16は、支柱後面6Rにおける左右間の中央位置に、上下方向に所定の間隔で複数並設されており、使用者は、これら複数の操作子係合部16のうち、何れか1つを回転操作子7に係合させることによって、ヘッドレスト4の高さ位置を任意に複数段階で調整することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、操作子係合部16は、支柱後面6Rにおける左右間の中央位置に、上下等間隔で6つ並設されているが、操作子係合部16の数は、複数であれば特に限定されない。例えば、ヘッドレスト4を上段、中段、下段の3段階で調整できるよう、操作子係合部16は、上下に等間隔或いは上下異なる間隔で3つ設けられたものとしてもよい。
【0029】
また、操作子係合部16は、支柱後面6Rから後方に向かって起立形成され、且つ左右方向に対向して配置される一対の保持枠部17を備えている。左右の保持枠部17は何れも、後方視略円弧状に形成されており、凹曲面相互を対向させるようにして同一円周上に配置されている。
【0030】
保持枠部17の上下の端部(以下、「保持枠端部」という)18はそれぞれ、上下に隣接する保持枠部17に連結されている。このように、保持枠部17は、上下方向に所定の間隔で連設されており、支柱後面6Rにおける左右間の中央を挟んで左右位置に、後方視波形状の起立壁を構成している。また、左右に並ぶ保持枠端部18相互間には、所定幅の間隙18Sが設けられている。
【0031】
本実施形態では、操作子係合部16のうち、最上位に配された操作子係合部(以下、「上端係合部」という)16Tは、保持枠部17の上側の端部相互が保持枠部17と同一円周上に配置される後方視略円弧状の上端枠部19によって連結されている。即ち、上端係合部16Tは、左右の保持枠部17および上端枠部19によって略3/4円弧状に形成されている。
【0032】
図3、
図4、
図6、および
図7に示すように、回転操作子7は、略円筒状の操作子本体20と、操作子本体20の前端部7Fの外周に沿って環設されるフランジ部21と、操作子本体20の前端部7Fから前方へ向かって延設される連結枠部22および押接子23とを備えている。また、操作子本体20の後端部7Rには、操作子本体20の円中心を通って上下方向に延びるリブ状のつまみ部24が設けられている。さらに、操作子本体20の外周面には、ホルダ本体8の操作子受孔14に設けられた係合子15が係合可能な被係合部としての溝部25が設けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、回転操作子7について、つまみ部24を横向き(左右に延長する向き)にした状態を説明する場合を除き、つまみ部24を縦向き(上下に延長する向き)にした状態を基準に説明する。
図4は、つまみ部24を横向きにした状態の位置調整機構1の中央縦断面図である。
【0034】
操作子本体20は、ホルダ本体8の操作子受孔14と略同径に形成されており、操作子受孔14に対してホルダ本体8の前方、即ち、支柱ホルダ5の内側空間(貫通孔)から挿通されている。これにより、操作子本体20は、操作子受孔14に対してその円中心を通る仮想軸線を中心に360度回動可能に保持される。
【0035】
フランジ部21は、操作子本体20より大径に形成されており、上記のように操作子本体20が操作子受孔14に挿通されたときに、操作子受孔14の周縁部にその前方側(支柱6側)から当接係合される。また、上記のようにフランジ部21が操作子受孔14の周縁部に当接係合されることで、操作子本体20の後端部7Rは、ホルダ本体8の後壁8Rに面一致した状態で保持される。
【0036】
連結枠部22は、操作子本体20の前端部7Fにて前後方向に起立形成され、且つ回転操作子7の回転径方向(ここでは、上下方向)に対向して一対配置されている。また、連結枠部22は、前端部が支柱後面6Rに近接対向する位置まで延設されており、回転操作子7が操作子受孔14から前方へ抜脱するのを阻止するための支持枠となる。このように、回転操作子7は、連結枠部22が支柱後面6Rによって前方から押さえられるとともに、フランジ部21に操作子受孔14の周縁部が後方から係合されることによって、支柱ホルダ5に抜け止め状態で回動可能に保持されている。即ち、回転操作子7は、操作子受孔14の周縁部と支柱後面6Rとで前後方向から挟持されることで、支柱ホルダ5に対して抜け止め状態で回動可能に保持されている。
【0037】
上下の連結枠部22は何れも、後方視略円弧状に形成されており、凹曲面相互を対向させるようにして同一円周上に配置されている。連結枠部22の外周半径は、支柱後面6Rに設けられた保持枠部17の内周半径と同一か或いは接触しないよう僅かに小さく設定されている。従って、支柱6の操作子掛合部16が回転操作子7と同一中心位置にあり、且つ回転操作子7が所定のロック位置(ここでは、つまみ部24を横向きにした位置)に回動されたとき、連結枠部22は、保持枠部17の内側に重なり合うようにして係合保持される。これにより、支柱6は、支柱ホルダ5に対して所定位置にて支持固定された状態となる。
【0038】
連結枠部22の左右幅は、保持枠部17の上下の間隙18Sの左右幅より小さく設定されている。従って、回転操作子7が上記ロック位置から所定のアンロック位置(ここでは、つまみ部24を縦向きにした位置)まで回動されたとき、連結枠部22は、上記間隙18Sに対向配置され、保持枠部17との係合状態が解消される。これにより、支柱6は、支柱ホルダ5に対して上下方向へ移動可能となる。
【0039】
また、上記のように、2つの連結枠部22は、つまみ部24の延長方向と同方向に対向
して配置されているから、使用者は、回転操作子7のロック位置およびアンロック位置をつまみ部24の向きから容易に認識することもできる。
【0040】
回転操作子7が上端係合部16Tにおいてアンロック位置に回動された場合、上側に位置する連結枠部22は、上端係合部16Tの上端枠部19の下面側に重なり合うようにして係合保持される。これにより、支柱6は、下方への移動が阻止される。即ち、上端係合部16Tの上端枠部19が支柱6の下方へのスライド移動を阻止するストッパの役割を担う。なお、支柱6や支柱ホルダ5の他の箇所に、支柱6が所定位置より下方へ移動するのを阻止可能なストッパ機構が設けられていれば、上端枠部19は、必ずしも設けられていなくてよい。
【0041】
連結枠部22の前端部7Fの中央相互間には、上下の連結枠部22の内側相互を繋ぐ中板部26が設けられている。中板部26は、操作子本体20の円中心を通って上下方向に延設されている。これにより、回転操作子7がロック位置にあるときに、保持枠部17と連結枠部22との係合部に対して上下方向や左右方向から押圧力が加わっても、連結枠部22は、操作子本体20の円中心側へ容易に撓まない。
【0042】
なお、本実施形態では、中板部26は、上下の連結枠部22の左右間の中央部相互を繋ぐように上下方向に延設されているが、中板部26は、上下の連結枠部22の左端部相互および右端部相互を繋ぐように上下方向に延設されたものとしてもよい。
【0043】
押接子23は、操作子本体20の前端部7Fから前方に向かって起立形成され、且つ中板部26を挟んで回転操作子7の回転径方向(ここでは、左右方向)に対向して一対配置されている。押接子23は、基端が上記前端部7Fに連結され、先端に突出部27を有する片持ち梁状の板片であり、支柱6を上下に移動させる際に、上記突出部27が保持枠端部18に当接することで、回転操作子7の左右間の中央側へ弾性変形する。即ち、連結枠部22が間隙18Sを通じて上下方向に移動する際、押接子23が保持枠端部18(間隙18Sの内側構成壁)に弾性をもって押接し、支柱6を上下動させるときの抵抗となる。従って、支柱6は、回転操作子7をアンロック位置に回動させても、上下方向に一定以上の力を加えなければ上下動しない。
【0044】
上記突出部27は、押接子23の上下の端縁から外向きに湾曲する円弧曲面状に形成されている。左右の押接子23における突出部27の頂部相互間の距離は、左右に並ぶ保持枠端部18相互の離間距離、即ち、間隙18Sの左右幅より大きく設定されている。従って、支柱6を上下に移動させる際、保持枠端部18が上記突出部27の円弧曲面に沿って摺接しながら、押接子23を回転操作子7の中央側へ緩やかに押し曲げる。
【0045】
溝部25は、断面略半円弧状に形成されており、フランジ部21の内側周縁から操作子本体20の後端部7Rに亘って延設されている。また、溝部25は、操作子本体20の外周の上下左右4箇所に設けられている。従って、回転操作子7がアンロック位置にあるとき、操作子受孔14の内周の上下2箇所に設けられた係合子15は、操作子本体20の上下2箇所の溝部25にそれぞれ係合する。また、この状態より、回転操作子7が一方向へ回動されれば、係合子15は、操作子本体20の外周面に押されて、溝部25との係合状態が解消される。さらに、回転操作子7がロック位置まで回動されると、係合子15は、操作子本体20の左右2箇所の溝部25にそれぞれ係合する。これにより、使用者は、回転操作子7のロック位置およびアンロック位置を、係合子15が溝部25に係合されたときの振動(クリック感)によって明確に認識することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、係合子15は、操作子受孔14の内周の上下2箇所に対向して設けられる一方、溝部25は、操作子本体20の上下左右4箇所に設けられているが、係
合子15および溝部25の数は特に限定されない。例えば、回転操作子7の少なくともロック位置を使用者が適切に認識できるよう、係合子15は、操作子受孔14の内周の下1箇所にのみ設けられる一方、溝部25は、操作子本体20の左右の2箇所に設けられたものとしてもよい。
【0047】
このように、本実施形態の位置調整機構1は、自転車用子供座席2の座席本体(取付対象)3に固定される支柱ホルダ(ホルダ部材)5と、座席本体3に対して支柱ホルダ5を介してスライド移動可能に保持される支柱(可動部材)6と、所定の回動位置にて支柱6に係合し、支柱6のスライド移動を阻止可能な回転操作子7と、を備えた座席本体3と支柱6との位置調整機構であって、支柱ホルダ5は、回転操作子7を回動可能に保持する操作子受孔14を有し、回転操作子7は、操作子受孔14の周縁部と支柱6とで挟持されることで、支柱ホルダ5に対して抜け止め状態で回動可能に保持され、支柱6は、スライド方向に複数並設され、回転操作子7が所定のロック位置に回動されたときに、回転操作子7に対して係合状態となり、回転操作子7が所定のアンロック位置に回動されたときに、回転操作子7に対して非係合状態となる操作子係合部16を有している。
【0048】
また、回転操作子7は、支柱6がスライド移動されるときに、操作子係合部16に弾性をもって押接可能な押接子23を有している。
【0049】
また、支柱6のスライド方向を上下方向、上記スライド方向に直交し且つ回転操作子7の回転中心を通る仮想軸線の延長方向を前後方向、上記スライド方向および延長方向のそれぞれに直交する方向を左右方向として、操作子係合部16は、支柱後面(支柱6における回転操作子7との対向面)6Rに起立形成され、且つ上記左右方向に対向して配置される一対の保持枠部17を有し、回転操作子7は、上記前後方向に延設され、且つ回転径方向に対向して配置される一対の連結枠部22を有し、回転操作子7がロック位置にあるときに、連結枠部22が保持枠部17に重なり合うことで、操作子係合部16が回転操作子7に対して係合状態となり、回転操作子7がアンロック位置にあるときに、連結枠部22と保持枠部17との重なりが解除されることで、操作子係合部16が回転操作子7に対して非係合状態となる。
【0050】
また、支柱ホルダ5または回転操作子7の何れか一方(ここでは、支柱ホルダ5)は、回転操作子7がロック位置に回動されたとき、およびアンロック位置に回動されたときのそれぞれにおいて、支柱ホルダ5または回転操作子7の何れか他方(ここでは、回転操作子7)に設けられた被係合部(溝部25)に弾性をもって係合可能な係合子15を有している。
【0051】
上記位置調整機構1によれば、操作つまみやナット、板体などで支柱6を挟持するように構成されたものに比べて、部品点数を削減できるから、全体構造の簡素化を図ることができる。しかも、このものでは、回転操作子7をロック位置に回動させたりアンロック位置に回動させたりするだけで、支柱6をスライド移動させたり、スライド移動を制限させたりすることもできるから、操作性の向上も実現できる。
【0052】
また、既述従来の位置調整機構のように、操作つまみとナットとによって支柱6を挟持固定するように構成されたものでは、自転車走行中の振動や部材の撓み等によってナットが緩んだ場合に、支柱6が意図せず動いてしまう虞がある。しかしながら、上記位置調整機構1によれば、回転操作子7が操作子受孔14の周縁部と支柱6とで挟持されることで、支柱ホルダ5に対して抜け止め状態で回動可能に保持されるように構成されているから、振動等の影響を受け難い。しかも、このものでは、支柱6がスライド移動する際、押接子23が操作子係合部16に弾性をもって押接し、抵抗となるから、たとえ回転操作子7と支柱6との係合状態が何らかの原因によって解消されたとしても、支柱6が不用意にス
ライド移動するのを防止できる。また、回転操作子7をロック操作する際に、支柱6が適切な固定位置から大きくずれるのも防止できるから、操作性も一層向上する。
【0053】
さらに、このものでは、回転操作子7をロック位置やアンロック位置に回動させたときに、係合子15が回転操作子7の溝部25に係合することで、使用者に対して回転操作子7の回動位置を明確に認識させることができるから、操作性がより一層向上する。
【0054】
なお、上記実施形態では、支柱ホルダ5に、回転操作子7がロック位置に回動されたとき、およびアンロック位置に回動されたときのそれぞれにおいて、回転操作子7に設けられた溝部25に弾性をもって係合可能な係合子15が設けられたものを説明したが、回転操作子7に、回転操作子7がロック位置に回動されたとき、およびアンロック位置に回動されたときのそれぞれにおいて、支柱ホルダ5に設けられた被係合部に弾性をもって係合可能な係合子が設けられたものとしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態の位置調整機構1は、自転車用子供座席2のヘッドレスト4の高さ位置を調整するものとして説明したが、二つの部材相互の位置を調整することができれば、上記位置調整機構1の適用対象や適用する向きは特に限定されない。
【符号の説明】
【0056】
1 位置調整機構
3 座席本体(取付対象)
5 支柱ホルダ(ホルダ部材)
6 支柱(可動部材)
7 回転操作子
14 操作子受孔
15 係合子
16 操作子係合部
17 保持枠部
22 連結枠部
23 押接子
25 溝部(被係合部)