(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023520
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】情報提示装置および情報提示方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/9038 20190101AFI20230209BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230209BHJP
G06F 16/28 20190101ALI20230209BHJP
【FI】
G06F16/9038
G06Q50/10
G06F16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129115
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朝 康博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 猛
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175JB02
5B175KA12
5L049CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】価値観の違いから生じる対立箇所の明確化を図ることが可能な情報提示装置及び情報提示方法を提供する。
【解決手段】プログラムを実行するプロセッサと、プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する情報提示装置は、価値指標群内の一対の価値指標毎に一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を規定した選好データ群を記憶するデータベースにアクセス可能である。プロセッサは、選好データ群から少なくとも第1選好データおよび第2選好データを選択する選択処理と、選択処理によって選択された第1選好データの一対の価値指標のうち第1価値指標が第2価値指標よりも選好され、かつ、第2選好データの一対の価値指標において第2価値指標が第1価値指標よりも選好されたことを示す対立箇所を探索する第1探索処理と、第1探索処理によって探索された対立箇所を表示可能に出力する出力処理と、を実行する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する情報提示装置であって、
価値指標群内の一対の価値指標ごとに一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を規定した選好データ群を記憶するデータベースにアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
前記選好データ群から少なくとも第1選好データおよび第2選好データを選択する選択処理と、
前記選択処理によって選択された第1選好データの前記一対の価値指標のうち第1価値指標が第2価値指標よりも選好され、かつ、前記第2選好データの前記一対の価値指標において前記第2価値指標が前記第1価値指標よりも選好されたことを示す対立箇所を探索する第1探索処理と、
前記第1探索処理によって探索された対立箇所を表示可能に出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示装置であって、
前記第1探索処理では、前記プロセッサは、前記第1選好データおよび前記第2選好データを合成し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、合成した選好データ上に前記対立箇所を表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提示装置であって、
前記選好データは、前記価値指標群の各々をノードとし、前記一対の価値指標間において一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を前記他方の価値指標から前記一方の価値指標への有向線分となるエッジとして表現した有向グラフであり、
前記合成した選好データは、前記第1選好データの有向グラフおよび前記第2選好データの有向グラフを合成し、前記第1価値指標と前記第2価値指標との間のエッジが双方向の有向線分とした合成有向グラフであり、
前記第1探索処理では、前記プロセッサは、前記双方向の有向線分を探索し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記合成有向グラフ上における前記双方向の有向線分となるエッジを、前記対立箇所として表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報提示装置であって、
前記プロセッサは、
前記合成有向グラフをツリー構造に展開する生成処理を実行し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記生成処理によって生成されたツリー構造を表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報提示装置であって、
前記プロセッサは、
前記ツリー構造において、前記第2価値指標から前記第1価値指標および前記第2価値指標以外の他の価値指標を経由して前記第1価値指標に到達する第1逆選好経路を探索する第2探索処理を実行し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記第2探索処理によって探索された第1逆選好経路を表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の情報提示装置であって、
前記プロセッサは、
前記ツリー構造において、前記第1価値指標から前記第1価値指標および前記第2価値指標以外の他の価値指標を経由して前記第2価値指標に到達する第2逆選好経路を探索する第2探索処理を実行し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記第2探索処理によって探索された第2逆選好経路を表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の情報提示装置であって、
前記第2探索処理では、前記プロセッサは、前記ツリー構造において、前記第1価値指標から前記他の価値指標を経由して前記第2価値指標に到達する第2逆選好経路を探索し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記第1逆選好経路および前記第2逆選好経路を選択的に表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項8】
請求項4に記載の情報提示装置であって、
前記プロセッサは、
前記ツリー構造において、前記第1価値指標および前記第2価値指標のいずれか一方と選好関係がある第3価値指標の中から、前記第1価値指標および前記第2価値指標以外の他の価値指標との選好関係の数に基づいて、特定の第3価値指標を探索する第3探索処理を実行し、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記第3探索処理によって探索された前記特定の第3価値指標を、他の第3価値指標とは異なるように表示可能に出力する、
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項9】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する情報提示装置が実行する情報提示方法であって、
価値指標群内の一対の価値指標ごとに一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を規定した選好データ群を記憶するデータベースにアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
前記選好データ群から少なくとも第1選好データおよび第2選好データを選択する選択処理と、
前記選択処理によって選択された第1選好データの前記一対の価値指標のうち第1価値指標が第2価値指標よりも選好され、かつ、前記第2選好データの前記一対の価値指標において前記第2価値指標が前記第1価値指標よりも選好されたことを示す対立箇所を探索する第1探索処理と、
前記第1探索処理によって探索された対立箇所を表示可能に出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を提示する情報提示装置および情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グローバルな社会課題を解決すべく策定された、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)では、持続可能な開発を、社会、環境、および経済の三つの価値のバランスがとれ統合された形で達成することが期待されている。そのため、企業の事業などによる影響を、社会、環境、および経済の価値軸で定量的に評価し、価値を向上する活動を行っていくことが求められる。
【0003】
上記達成のため、たとえば、二酸化炭素排出量などの環境価値や企業利益などの経済価値は客観的に定量化することが可能である。一方、社会価値は、格差や公平度といった客観的側面の他、地域開発による地域文化の継続性や地域住民の生活の質、幸福感といった、主観的側面が含まれる。ゆえに、社会価値の定量化には価値観といった主観的側面の定量化が必要となる。ここで価値観とは、物事の好き/嫌い、重要である/ない、といった選好関係に代表される指標である。
【0004】
自治体や企業などが複数の施策を検討する際、検討すべき指標数が非常に多くなる可能性がある。多数の指標を扱う場合、指標Aより指標Bを好む、指標Bより指標Cを好む、指標Cより指標Aを好むのような、指標の各々が他の指標と優劣を付け合う関係が生じる為、住民やステークホルダー間で互いの意見を共有し合意形成を図ることは人手で対応するのに限界があった。
【0005】
下記特許文献1は、社会的合意形成を支援する合意形成支援装置を開示する。この合意形成支援装置は、ファシリテータおよび複数のオピニオンリーダ間のコミュニケーションと、一般参加者によるコミュニケーションと、の2階層のコミュニケーションを支援することにより、社会的合意形成を支援する。合意形成支援装置は、議論会場での議論の様子を一般参加者端末に表示するとともに、一般参加者端末に一般参加者の意見を入力させ、その意見を取得する。また、合意形成支援装置は、一般参加者によって入力された意見を、議論会場に設置された表示モニタや、議論に参加しているオピニオンリーダが参照する端末に表示する。これにより、オピニオンリーダは一般参加者の意見を考慮しつつ、議論を進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の合意形成支援装置では、個人またはグループ間で価値観が対立する選好関係については考慮されていない。したがって、どの価値観が対立しあっているかを明示的に提示することができない。
【0008】
本発明は、価値観の違いから生じる対立箇所の明確化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の一側面となる情報提示装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する情報提示装置であって、価値指標群内の一対の価値指標ごとに一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を規定した選好データ群を記憶するデータベースにアクセス可能であり、前記プロセッサは、前記選好データ群から少なくとも第1選好データおよび第2選好データを選択する選択処理と、前記選択処理によって選択された第1選好データの前記一対の価値指標のうち第1価値指標が第2価値指標よりも選好され、かつ、前記第2選好データの前記一対の価値指標において前記第2価値指標が前記第1価値指標よりも選好されたことを示す対立箇所を探索する第1探索処理と、前記第1探索処理によって探索された対立箇所を表示可能に出力する出力処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によれば、価値観の違いから生じる対立箇所の明確化を図ることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、情報提示システムのシステム構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、コンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、情報提示装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、選好データの有向グラフ表現を示す説明図である。
【
図5】
図5は、選好データのデータ構造例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、情報提示装置による可視化処理手順例(前半)を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、通信端末における表示画面例1を示す説明図である。
【
図8】
図8は、情報提示装置による可視化処理手順例(後半1)を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、通信端末における表示画面例2を示す説明図である。
【
図10】
図10は、情報提示装置による可視化処理手順例(後半2)を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、通信端末における表示画面例3を示す説明図である。
【
図12】
図12は、計算機による可視化処理手順例(後半3)を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、通信端末における表示画面例4を示す説明図である。
【
図14】
図14は、通信端末における表示画面例5を示す説明図である。
【
図15】
図15は、情報提示装置による可視化処理手順例(後半4)を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、通信端末における表示画面例5を示す説明図である。
【
図17】
図17は、対立箇所探索の具体的な表示例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、ツリー構造生成の具体的な表示例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、逆選好探索の具体的な表示例を示す説明図である。
【
図20】
図20は、通信端末における表示画面例6を示す説明図である。
【
図21】
図21は、通信端末における表示画面例7を示す説明図である。
【
図22】
図22は、通信端末における表示画面例8を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<情報提示システムのシステム構成例>
図1は、情報提示システムのシステム構成例を示す説明図である。情報提示システム100は、情報提示装置101と、通信端末102と、により構成される。情報提示装置と通信端末とはインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワーク103により通信可能に接続される。
【0013】
情報提示装置101は、人々の価値観が対立する箇所を可視化するための計算を実行するコンピュータである。情報提示装置101は、選好DB110にアクセス可能である。選好DB110は、選好関係を規定した選好データ群を記憶するデータベースである。通信端末102は、ネットワーク103を介して情報提示装置101に対しデータを送信したり、情報提示装置101からのデータを表示したりするコンピュータであり、ファシリテータ120により操作される。ファシリテータは、参加者グループGからの価値観を示すデータを通信端末102に入力して情報提示装置101に送信したり、情報提示装置101からのデータを表示して、参加者に提示したりする。
【0014】
なお、図示はしないが、参加者も、ファシリテータの通信端末102と通信可能な通信端末を有してもよい。この場合、参加者の通信端末は、ファシリテータの通信端末102に価値観を示すデータを送信したり、情報提示装置101からのデータをファシリテータの通信端末102から受信したりしてもよい。また、情報提示装置101は、出力データを情報提示装置101のディスプレイに表示してもよい。
【0015】
<コンピュータのハードウェア構成例>
図2は、コンピュータ(情報提示装置101、通信端末102)のハードウェア構成例を示すブロック図である。コンピュータ200は、プロセッサ201と、記憶デバイス202と、入力デバイス203と、出力デバイス204と、通信インターフェース(通信IF)205と、を有する。プロセッサ201、記憶デバイス202、入力デバイス203、出力デバイス204、および通信IF205は、バス206により接続される。プロセッサ201は、コンピュータ200を制御する。記憶デバイス202は、プロセッサ201の作業エリアとなる。また、記憶デバイス202は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス202としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス203は、データを入力する。入力デバイス203としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイクがある。出力デバイス204は、データを出力する。出力デバイス204としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF205は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0016】
<情報提示装置101の機能的構成例>
図3は、情報提示装置101の機能的構成例を示すブロック図である。情報提示装置101は、選好DB110と、入力部301と、作成部302と、取得部303と、選択部304と、探索部305と、生成部306と、出力部307と、を有する。選好DB110は、具体的には、たとえば、
図2に示した記憶デバイス202によって実現される。入力部301~出力部307は、具体的には、たとえば、
図2に示した記憶デバイス202に記憶されたプログラムをプロセッサ201に実行させることにより実現される。
【0017】
選好DB110は、価値指標群内の一対の価値指標ごとに一方の価値指標が他方の価値指標よりも選好されたことを示す選好関係を規定した選好データ群300sを記憶するデータベースである。選好データ群300sは、n個(nは2以上の整数)の選好データ300-1,300-2,…,300-nの集合である。選好データ300-1,300-2,…,300-nを区別しない場合、単に選好データ300と表記する。選好データ群300sは、たとえば、エネルギー施策や待機児童問題、オリンピック誘致などの議題ごとに存在する。
【0018】
入力部301は、データの入力を受け付ける。具体的には、たとえば、入力部301は、通信端末102からのデータを受信したり、ファシリテータ120の操作により通信端末102で受け付けられた入力信号を受信したりする。通信端末102からのデータには、たとえば、参加者グループGからの価値観を示すデータがあり、具体的には、一対比較法による価値指標群に関するアンケート集計結果である。参加者グループGは1以上の参加者により構成される。アンケート集計結果は、より具体的には、価値指標群のうち1対の価値指標ごとに、参加者グループGに属する各参加者がどちらを選好したかを示すデータである。
【0019】
たとえば、ある地域におけるエネルギー施策について当該地域の住民に対し合意形成したい場合、価値指標群として、住民コスト、経済循環率、温室効果ガス排出量、森林面積、大気汚染、水質汚染、暮らしやすさ、住民満足度、罹病率、人口増加率、観光客数、電力消費量、失業率といった13個の価値指標があるとする。この13個の価値指標について、一対比較法によるアンケートが実施されると、参加者グループGごと(たとえば、当該地域内の各市区町村)に集計結果が得られる。一対比較法では、各参加者は、2つの価値指標のうちいずれかを選好する。これにより、参加者グループGごとに、一方の価値指標の他方の価値指標に対する選好数が計数される。
【0020】
作成部302は、参加者グループGごとに、アンケート集計結果を用いて分類データを作成する。具体的には、たとえば、作成部302は、アンケート集計結果を、入力部301を介して取得し、参加者グループGごとに、一方の価値指標の他方の価値指標に対する選好数を計数する。
【0021】
上述した13個の価値指標の例では、たとえば、住民コストについては、作成部302は、住民コストの経済循環率に対する選好数、住民コストの温室効果ガス排出量に対する選好数、住民コストの森林面積に対する選好数、住民コストの大気汚染に対する選好数、住民コストの水質汚染に対する選好数、住民コストのの暮らしやすさに対する選好数、住民コストの住民満足度に対する選好数、住民コストの罹病率に対する選好数、住民コストの人口増加率に対する選好数、住民コストの観光客数に対する選好数、住民コストの電力消費量に対する選好数、住民コストの失業率に対する選好数を計数する。作成部302は、他の価値指標についても同様に12種類の選好数を計数する。
【0022】
作成部302は、各価値指標の他の価値指標に対する選好数を用いて、選好データ300を作成する。選好データ300は、価値指標群を円環上の点として配置し、1対の価値指標を有向エッジで接続した有向グラフである。
【0023】
図4は、選好データ300の有向グラフ表現を示す説明図である。
図4において、価値指標をa~fのノードとし、円環上の黒点で表記する。選好データ300-1は、価値指標a~fに関するある参加者グループG1のアンケート結果に基づく有向グラフである。選好データ300―2は、価値指標a~fに関する他の参加者グループG2のアンケート結果に基づく有向グラフである。
【0024】
選好データ300において、2つの価値指標を示すノードx,yを接続するエッジE(x,y)は有向線分で表現され、2つの価値指標x,yの選好数Nx,NyがNx>Nyであれば、x←yという価値観で表現される。また、Nx=Nyであれば、エッジE(x,y)は無向線分で表現され、または、エッジE(x,y)は表示されない。
【0025】
また、選好数Nx,NyがNx>Nyであれば、x←yという価値観で表現されることとしたが、選好数Nx,Nyの差|Nx-Ny|が所定のしきい値未満であれば、Nx=Nyの場合と同様に、エッジE(x,y)は無向線分で表現され、または、エッジE(x,y)は表示されないこととしてもよい。作成部302は、このような選好データ300を作成して、選好DB110に格納する。ここで、選好データ300のデータ構造について
図5を用いて説明する。
【0026】
図5は、選好データ300のデータ構造例を示す説明図である。
図5では、選好データ300-1を例に挙げて説明する。選好データ300-1は、構成ノード501と、エッジID502と、を有する。構成ノード501は、エッジID502で特定されるエッジE(x,y)を構成するノードx,yであり、始点ノードID511と、終点ノードID512と、重み513と、を有する。
【0027】
始点ノードID511は、有向線分の始点(矢印がない側)のノードyを特定する識別情報である。終点ノードID512は、有向線分の終点(矢印がある側)のノードxを特定する識別情報である。重み513は、そのエッジID502で特定されるエッジE(x,y)の重要度を示し、たとえば、終点ノードxの選好数Nxから始点ノードyの選好数Nyを引いた値である。
【0028】
図3に戻り、取得部303は、対象となる議題に関する選好データ群300sを選好DB110から取得する。対象となる議題は、ファシリテータ120が通信端末102から入力部301を介して指定される。取得された選好データ群300sは、出力部307を介して通信端末102に送信される。
【0029】
選択部304は、取得部303によって取得された選好データ群300sから比較対象となる複数の選好データ300を選択する。比較対象となる複数の選好データ300は、たとえば、ファシリテータ120が通信端末102から入力部301を介して選択される。選択結果は、出力部307を介して通信端末102に送信される。
【0030】
探索部305は、選択部304によって選択された複数の選好データ300について、価値指標x,yが対立する箇所を探索する。具体的には、たとえば、探索部305は、
図4に示すように、選好データ300-1,300-2を合成した合成選好データ400を生成し、有向線分が互いに逆向きとなるエッジE(x,y)を合成選好データ400から探索し、対立箇所401とする。
【0031】
具体的には、たとえば、選好データ300-1,300-2の各々に、同一エッジID502のエッジE(x,y)がある場合、同じ向きであれば、その向きの有向線分とし、互いに逆向きであれば、双方向の有向線分になる。また、選好データ300-1,300-2のいずれか一方にエッジがある場合、当該エッジが採用される。また、選好データ300-1,300-2のいずれにもエッジE(x,y)がないノードx,y間については、合成選好データ400においてもそのノードx,y間にエッジE(x,y)はない。
【0032】
図4の例では、両選好データ300-1,300-2のエッジE(a,b)の向きは互いに逆方向になるため、双方向のエッジE(a,b)が価値観の対立箇所401として探索される。
【0033】
また、
図3に戻り、探索部305は、対立箇所401の選好とは逆の選好になる経路を探索したり、対立箇所401の接続ノードの中でハブとなるノードを探索したりする。探索結果は、出力部307を介して通信端末102に送信される。
【0034】
生成部306は、対立箇所401に基づいて選好データ300のツリー構造を生成する。生成されたツリー構造は、出力部307を介して通信端末102に送信される。
【0035】
出力部307は、取得部303、選択部304、探索部305および生成部306からのデータを表示可能に通信端末102に出力する。出力されたデータは、通信端末102の出力デバイス204の一例であるディスプレイに表示される。
【0036】
<可視化処理手順例>
つぎに、情報提示システム100による可視化処理手順例について、
図6~
図16を用いて説明する。
【0037】
図6は、情報提示装置101による可視化処理手順例(前半)を示すフローチャートである。情報提示装置101は、取得部303により、選好DB110から選好データ群を取得する(ステップS601)。つぎに、情報提示装置101は、取得した選好データ群を可視化する(ステップS602)。具体的には、たとえば、情報提示装置101は、取得した選好データ群を通信端末102に送信し、通信端末102に表示させる。
【0038】
図7は、通信端末102における表示画面例1を示す説明図である。表示画面700は、第1表示領域701と、第2表示領域702と、を有する。第1表示領域701には、情報提示装置101から送信された選好データ群300sが表示される。
図7では、選好データ群300sを、比較対象となる一方の参加者グループG1の選好データ300-1および他方の参加者グループG2の選好データ300-2とする。チェックボックス710は、選好データ300-1,300-2を選択するためのユーザインタフェースである。
【0039】
選好データ群取得ボタン711は、情報提示装置101から選好データ群300sを取得するためのユーザインタフェースである。終了ボタン712は、情報提示システム100による可視化処理を終了するためのユーザインタフェースである。
【0040】
対立箇所探索ボタン721は、探索部305で対立箇所401を探索するためのユーザインタフェースである。ツリー構造生成ボタン722は、生成部306でツリー構造を生成するためのユーザインタフェースである。逆選好探索ボタン723は、探索部305で逆選好を探索するためのユーザインタフェースである。ハブノード探索ボタン724は、探索部305でハブノードを探索するためのユーザインタフェースである。
【0041】
通信端末102において、選好データ群取得ボタン711が押下されると、議題表示画面730が表示される。議題表示画面730には、選択可能な議題が表示される。
図7では、ファシリテータ120の操作により、エネルギー施策のチェックボックス731にチェックが入力された状態を示す。決定ボタン732の押下により、通信端末102は、情報提示装置101に対し、チェックボックス731によって選択された議題についての選好データ群300sを取得要求する。情報提示装置101は、エネルギー施策に関する選好データ群300sとして選好データ300-1,300-2を通信端末102に送信する。これにより、第1表示領域701には、選好データ300-1,300-2が表示されている。
【0042】
図6に戻り、情報提示装置101は、比較対象となる2つの選好データ300-1,300-2を選択する(ステップS603)。具体的には、たとえば、
図7に示したように、ファシリテータ120がチェックボックス710にチェックを入力することにより、選好データ300-1,300-2が選択され、通信端末102から情報提示装置101に通知される。これにより、情報提示装置101は、選好データ300-1,300-2を選択する。また、情報提示装置101は、選好データ群300sから自動的に2つの選好データを選択してもよい。
【0043】
そして、情報提示装置101は、通信端末102からの対立箇所探索ボタン721による対立箇所探索、ツリー構造生成ボタン722によるツリー構造生成、逆選好探索ボタン723による逆選好探索およびハブノード探索ボタン724によるハブノード探索のいずれかの入力を待ち受ける(ステップS604)。
【0044】
通信端末102から対立箇所探索ボタン721による対立箇所探索を受け付けると(ステップS604:対立箇所探索)、情報提示装置101の処理は、
図8に移行し、ツリー構造生成ボタン722によるツリー構造生成を受け付けると(ステップS604:ツリー構造生成)、情報提示装置101の処理は、
図10に移行し、逆選好探索ボタン723による逆選好探索を受け付けると(ステップS604:逆選好探索)、情報提示装置101の処理は、
図12に移行し、ハブノード探索ボタン724によるハブノード探索を受け付けると(ステップS604:ハブノード探索)、情報提示装置101の処理は、
図15に移行する。
【0045】
図8は、情報提示装置101による可視化処理手順例(後半1)を示すフローチャートである。通信端末102から対立箇所探索ボタン721による対立箇所探索を受け付けると(ステップS604:対立箇所探索)、情報提示装置101は、
図4に示したように、対立箇所401を探索し、記憶デバイス202に保存する(ステップS801)。
【0046】
なお、探索部305は、重み513がしきい値未満のエッジE(x,y)を除外して、対立箇所401を探索してもよい。そして、情報提示装置101は、対立箇所401を可視化する(ステップS802)。具体的には、たとえば、情報提示装置101は、対立箇所401を含む合成選好データ400を通信端末102に送信し、通信端末102に表示させる。
【0047】
図9は、通信端末102における表示画面例2を示す説明図である。
図9では、通信端末102は、ファシリテータ120から対立箇所探索ボタン721の押下を受け付けると(ステップS604:対立箇所探索)、第2表示領域702に、情報提示装置101からの対立箇所401を含む合成選好データ400を表示する。
【0048】
このように対立箇所401が明確になるため、参加者グループG1,G2間で対立しあう価値観を共有し、意見交換できるため、参加者グループG1,G2間で議論した場合に、参加者グループG1,G2は納得感を得ることができる。
【0049】
図10は、情報提示装置101による可視化処理手順例(後半2)を示すフローチャートである。通信端末102からツリー構造生成ボタン722によるツリー構造生成を受け付けると(ステップS604:ツリー構造生成)、情報提示装置101は、ステップS801による対立箇所401を探索済みであるか否かを判断する(ステップS1001)。対立箇所401が未探索であれば(ステップS1001:No)、情報提示装置101は対立箇所401を探索し(ステップS801)、ステップS1003に移行する。一方、対立箇所401が探索済みであれば(ステップS1001:Yes)、情報提示装置101は記憶デバイス202から対立箇所401を含む合成選好データ400を読み出し(ステップS1002)、ステップS1003に移行する。
【0050】
情報提示装置101は、対立箇所401の接続ノードa,bを抽出し、ツリー構造を生成し、記憶デバイス202に保存する(ステップS1003)。そして、情報提示装置101は、生成したツリー構造を可視化する(ステップS1004)。具体的には、たとえば、情報提示装置101は、ツリー構造を通信端末102に送信し、通信端末102に表示させる。
【0051】
図11は、通信端末102における表示画面例3を示す説明図である。
図11では、通信端末102は、ツリー構造生成ボタン722によるツリー構造生成を受け付けると(ステップS604:ツリー構造生成)、第2表示領域702に、情報提示装置101からのツリー構造1100を表示する。
【0052】
ツリー構造1100は、合成選好データ400を、対立箇所401を中心にツリー状に展開したデータである。ツリー構造1100は、対立箇所401のノードa,bから他ノードc~fがどのくらい離れているかを示す。具体的には、たとえば、生成部306は、対立箇所401のノードa,bの各々から、ホップ先のノードがなくなるまで、または、対立箇所401のノードに戻るまで展開する。
【0053】
点線L1aは対立箇所401のノードaから1ホップ先を示し、点線L2aは対立箇所401のノードaから2ホップ先を示す。点線L1bは対立箇所401のノードbから1ホップ先を示し、点線L2bは対立箇所401のノードbから2ホップ先を示す。
【0054】
最大ホップ数である点線L2a,L2b上には、終点となるノードc,eのみが配置される。ノードcを始点とするエッジは存在せず、また、ノードeを始点とした場合の終点のノードは、対立箇所401のノードaになるからである。
【0055】
また、最大ホップ数でない点線L1a,L1bには、終点となるノードd,eが配置されているが、点線L2a,L2b上のノードと接続されていない。ノードdを終点とした場合の始点のノードは、対立箇所401のノードaになるからである。また、ノードeを終点とした場合の始点のノードd,fは、最大ホップ数でない点線L1a,L1bに配置済みだからである。
【0056】
これにより、対立箇所401を構成するノードa,bから他ノードc~fへのホップ数の視認が容易になる。対立箇所401を構成するノードa,bはホップ数が小さい他ノードほど対立していないことが視認される。
【0057】
合成選好データ400をツリー構造1100で可視化することにより、どの指標(ノード)間で対立箇所401が発生しているかが明確になる。これにより、両参加者グループG1,G2間で対立箇所401の価値指標a,bを共有することができる。これにより、たとえば、両参加者グループG1,G2から対立箇所401の価値指標a,bについて意見を収集することができ、両参加者グループG1,G2は、相手方の意見を取得することが容易になる。
【0058】
また、ツリー構造1100を可視化することにより、対立箇所401のノードa,bから所定ホップ数(たとえば、1ホップ)以内の対立していない他ノードはどのような価値観であるかを、特定することができる。これにより、両参加者グループG1,G2間で対立箇所401の価値指標a,bに近い非対立な価値指標d~fを共有することができる。これにより、たとえば、価値指標a,bについては対立するが、価値指標d~fについては対立していないため、価値指標d~fについての議論を先に進めたりすることができる。
【0059】
図12は、情報提示装置101による可視化処理手順例(後半3)を示すフローチャートである。通信端末102から逆選好探索ボタン723による逆選好探索を受け付けると(ステップS604:逆選好探索)、情報提示装置101は、ステップS801による対立箇所401を探索済みであるか否かを判断する(ステップS1001)。
【0060】
対立箇所401が未探索であれば(ステップS1001:No)、情報提示装置101は対立箇所401を探索し(ステップS801)、ステップS1201に移行する。一方、対立箇所401が探索済みであれば(ステップS1001:Yes)、情報提示装置101は記憶デバイス202から対立箇所401を含む合成選好データ400を読み出し(ステップS1002)、ステップS1201に移行する。
【0061】
情報提示装置101は、ステップS1003によるツリー構造1100を生成済みであるか否かを判断する(ステップS1201)。ツリー構造1100が未生成であれば(ステップS1201:No)、情報提示装置101は、対立箇所401のノードa,bを特定してツリー構造1100を生成し、記憶デバイス202に保存し、ステップS1202に移行する(ステップS1003)。一方、ツリー構造1100が生成済みであれば(ステップS1201:Yes)、情報提示装置101は記憶デバイス202からツリー構造1100を読み出し(ステップS1202)、ステップS1203に移行する。
【0062】
情報提示装置101は、ツリー構造1100において、対立箇所401の選好とは逆の選好になる経路を探索する(ステップS1203)。そして、情報提示装置101は、探索した逆選好経路を可視化する(ステップS1204)。具体的には、たとえば、情報提示装置101は、逆選好経路を含むツリー構造1100を通信端末102に送信し、通信端末102に表示させる。
【0063】
図13は、通信端末102における表示画面例4を示す説明図である。
図13では、通信端末102は、逆選好探索ボタン723による逆選好探索を受け付けると(ステップS604:逆選好探索)、第2表示領域702に、逆選好探索されたツリー構造1100を表示する。
【0064】
タブ1311で選択された探索経路1300は、エッジE(a,b)がa→b(bはaよりも選好数が多い)である参加者グループG1に対して提示するための経路であり、対立箇所の順選好経路a→bと、逆選好経路1301,1302(b→f→e→a)とで構成される。逆選好経路1301,1302を構成するノードを仲介ノードと称す。
【0065】
対立箇所401に着目すると、参加者グループG1の価値観はa→bとなるが、選好数が多いbを始点として探索経路1300を辿ると、逆選好経路1301では、b→f→eを経由してaに到達する。このノードeは逆選好経路1302の始点でもあり、逆選好経路1302においてe→aを辿る。
【0066】
すなわち、逆選好経路1301,1302では、b→f→e→aを辿る経路となるため、ノードaはノードeよりも選好数が多い価値指標であり、そのノードeはノードfよりも選好数が多い価値指標であり、そのノードfはノードbよりも選好数が多い価値指標である。したがって、参加者グループG1は、探索経路1300(b→f→e→a)を参照することにより、参加者グループG2と価値指標a,bで対立するよりも、価値指標b,f、価値指標f,e、価値指標e,aで意見を共有することができる。これにより、対立箇所401よりも価値指標b,f、価値指標f,e、価値指標e,aでの議論を優先すれば、対立箇所401について議論する必要がなくなる。
【0067】
このように、対立箇所401のノードbから直接、対立箇所401のノードaへ向かう選好方向ではなく、その逆の選好方向で探索することで、対立箇所401のノードbから仲介ノードを介して間接的にb→aとなる逆選好経路(b→f→e→a)を特定することができる。したがって、ファシリテータ120は、逆選好経路(b→f→e→a)における逆選好関係への理解を参加者グループG2に促すことができる。これにより、対立箇所401についての参加者グループG1,G2間の対立の緩和が期待される。
【0068】
図14は、通信端末102における表示画面例5を示す説明図である。
図14は、タブ1312が選択された場合に表示される探索経路1400を示す。
【0069】
タブ1312で選択された探索経路1400は、エッジE(a,b)がb→a(aはbよりも選好数が多い)である参加者グループG2に対して提示するための経路であり、対立箇所401の順選好経路b→aと、逆選好経路1401,1402(a→d→b)とで構成される。
【0070】
対立箇所401に着目すると、参加者グループG2の価値観はb→aとなるが、選好数が多いaを始点として探索経路1400を辿ると、逆選好経路1401では、a→dを経由してbに到達する。このdは逆選好経路1402の始点でもあり、逆選好経路1402においてd→bを辿る。
【0071】
すなわち、逆選好経路1401,1402では、a→d→bを辿る経路となるため、bはdよりも選好数が多い価値指標であり、そのノードdはノードaよりも選好数が多い価値指標である。したがって、参加者グループG2は、探索経路1400(a→d→b)を参照することにより、参加者グループG1と価値指標a,bで対立するよりも、価値指標a,d、価値指標d,bで意見を共有することができる。これにより、対立箇所401よりも価値指標a,d、価値指標d,bでの議論を優先すれば、対立箇所401について議論する必要がなくなる。
【0072】
このように、対立箇所401のノードaから直接、対立箇所401のノードbへ向かう選好方向ではなく、その逆の選好方向で探索することで、対立箇所401のノードaから仲介ノードを介して間接的にa→bとなる逆選好経路(a→d→b)を特定することができる。したがって、ファシリテータ120は、逆選好経路(a→d→b)における逆選好関係への理解を参加者グループG1に促すことができる。これにより、対立箇所401についての参加者グループG1,G2間の対立の緩和が期待される。
【0073】
図15は、情報提示装置101による可視化処理手順例(後半4)を示すフローチャートである。通信端末102からハブノード探索ボタン724によるハブノード探索を受け付けると(ステップS604:ハブノード探索)、情報提示装置101は、ステップS801による対立箇所401を探索済みであるか否かを判断する(ステップS1001)。
【0074】
対立箇所401が未探索であれば(ステップS1001:No)、情報提示装置101は対立箇所401を探索し(ステップS801)、ステップS1201に移行する。一方、対立箇所401が探索済みであれば(ステップS1001:Yes)、情報提示装置101は記憶デバイス202から対立箇所401を含む合成選好データ400を読み出し(ステップS1002)、ステップS1201に移行する。
【0075】
情報提示装置101は、ステップS1003によるツリー構造1100を生成済みであるか否かを判断する(ステップS1201)。ツリー構造1100が未生成であれば(ステップS1201:No)、情報提示装置101は、対立箇所401のノードa,bを特定してツリー構造1100を生成し、記憶デバイス202に保存し、ステップS1202に移行する(ステップS1003)。一方、ツリー構造1100が生成済みであれば(ステップS1201:Yes)、情報提示装置101は記憶デバイス202からツリー構造1100を読み出し(ステップS1202)、ステップS1203に移行する。
【0076】
情報提示装置101は、ツリー構造1100において、対立箇所401のノードa,bの中でハブとなるノードを探索する(ステップS1501)。そして、情報提示装置101は、探索したハブノードを可視化する(ステップS1502)。具体的には、たとえば、情報提示装置101は、ハブノードを含むツリー構造1100を通信端末102に送信し、通信端末102に表示させる。
【0077】
図16は、通信端末102における表示画面例5を示す説明図である。
図16では、通信端末102は、ハブノード探索ボタン724によるハブノード探索を受け付けると(ステップS604:ハブノード探索)、第2表示領域702に、ハブノードが可視的に特定されたツリー構造1100を表示する。
図16では、ハブノード表示1600で可視的に特定されたノードdがハブノードである。ハブノード表示1600は、
図16のような表示に限らず、ハブノードではない他のノードと区別できればどのような表示でもよい。
【0078】
ハブノードとは、対立箇所のノードに接続されたノード群の中で対立箇所401のノードa,b以外の他ノードc~fとの接続数(エッジ本数)が最大またはしきい値以上となるノードである。
図16では、対立箇所401のノードa,bに接続されたノードはノードd,e,fである。ノードdのの接続数は3本、ノードeは2本、ノードfは2本である。したがって、接続数が最大のノードはノードdであり、ノードdがハブノードとなる。しきい値を3とした場合でも、ノードdがハブノードになる。
【0079】
ハブノードは、対立箇所401のノードa,bおよび他ノードc~fにつながるため、影響力が強いノードになる。すなわち、ハブノードdと接続先のノードとの間の選好関係(エッジの方向や有無)が変わると、ツリー構造1100の形状や逆選好経路が変わるため、結果的に対立箇所にも影響を及ぼす。このため、ハブノードdを参加者グループG1,G2に提示することにより、接続先ノードa,c,eの価値指標や接続先ノードa,c,eとハブノードdとの選好関係について議論を促すことができる。
【0080】
ここで、価値指標群を、a~fから、上述したエネルギー施策に関する13個の価値指標(住民コスト、経済循環率、温室効果ガス排出量、森林面積、大気汚染、水質汚染、暮らしやすさ、住民満足度、罹病率、人口増加率、観光客数、電力消費量、失業率)に替えた場合の、対立箇所探索、ツリー構造生成、および逆選好探索の具体的な表示例を示す。
【0081】
図17は、対立箇所探索の具体的な表示例を示す説明図であり、
図18は、ツリー構造生成の具体的な表示例を示す説明図であり、
図19は、逆選好探索の具体的な表示例を示す説明図である。
【0082】
また、上述した例では、参加者グループG1,G2の対立箇所は1か所だけであったが、対立箇所が複数存在する場合もある。対立箇所が複数存在する場合の表示例を
図20に示す。
【0083】
図20は、通信端末における表示画面例6を示す説明図である。
図20は、
図9において、選好データ300-1,300-2を合成したことにより、合成選好データ2000が生成された表示例を示す。なお、
図20の選好データ300-1は、
図9の選好データ300-1とは異なり、ノードa,e間の選考関係は、a→eとなっている。なお、選好データ300-1,300-2のエッジの太さは、重み513の大きさ(太いほど大きい)を示す。なお、探索部305は、重み513がしきい値未満のエッジを除外して、対立箇所401,2042,2043を探索してもよい。
【0084】
第2表示領域702は、小窓領域2001を有する。小窓領域2001には、すべての対立箇所401,2042,2043が表示された合成選好データ2002が表示されている。合成選好データ2000は、対立箇所401,2042,2043のうち対立箇所401を強調表示したデータである。
【0085】
ファシリテータ120は、切替ボタン2003を押下することにより、強調表示される対立関係を対立箇所401から他の対立関係に切り替えて表示することができる。具体的には、たとえば、対立箇所401→対立箇所2042→対立箇所2043→対立箇所401,2042,2043→対立箇所401→…のようにサイクリックに切り替えることができる。このような切替は、対立関係のエッジの重み513の大きさ(選好データ300-1,300-2のうち大きい方の重み、または、選好データ300-1,300-2の重みの和)順に実行されてもよい。
【0086】
また、上述した例では、参加者グループがG1,G2の2グループであったが、3グループ以上選択される場合もある。選択された参加者グループがG1~G3である場合の表示例を
図21に示す。
【0087】
図21は、通信端末102における表示画面例7を示す説明図である。
図21は、
図9において、選好データ300-1,300-2,300-3を合成したことにより、合成選好データ2101が生成された表示例を示す。小窓領域2001には、合成選好データ2101が表示される。合成選好データ2101は、対立箇所401,2042,2043,2144を含む。
【0088】
ファシリテータ120は、切替ボタン2003を押下することにより、強調表示される対立関係を対立箇所401から他の対立関係に切り替えて表示することができる。具体的には、たとえば、対立箇所401→対立箇所2042→対立箇所2043→対立箇所2144→対立箇所401,2042,2043,2144→対立箇所401→…のようにサイクリックに切り替えることができる。
【0089】
図22は、通信端末102における表示画面例8を示す説明図である。
図22は、
図21において、切替ボタン2003の押下により、合成選好データ2101を第2表示領域702に表示した例である。
【0090】
なお、
図21および
図22の選好データ300-1は、
図9の選好データ300-1とは異なり、ノードa,e間の選考関係は、a→eとなっている。すなわち、
図20の選好データ300-1と同じである。なお、選好データ300-1,300-2, 300-3のエッジの太さは、重み513の大きさ(太いほど大きい)を示す。また、重み513はエッジの中途部近傍に表示されてもよい。
【0091】
選好データ300-1,300-2,300-3の合成選好データ2101であっても、選好データ300-1,300-2,300-3間で、同一ノード間のエッジの方向が異なっていれば対立関係が成立する。ただし、探索部305は、重み513がしきい値未満のエッジを除外して、対立箇所401,2042,2043,2144を探索してもよい。
【0092】
このように、本実施例によれば、合意形成の場における参加者グループ間での価値観の違いから生じる対立箇所を可視化することにより、お互いの価値観の理解の促進を図ることができる。これにより、両者の対立を解消し納得感のある合意へ促すことができる。本実施例は、自治体や地域コミュニティでの社会政策や事業計画の合意形成、企業における経営戦略の合意形成等を支援することが期待される。
【0093】
以上、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【0094】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0095】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサ201がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0096】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0097】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0098】
100 情報提示システム
101 情報提示装置
102 通信端末
110 選好DB
120 ファシリテータ
140 参加者グループ
300 選好データ
301 入力部
302 作成部
303 取得部
304 選択部
305 探索部
306 生成部
307 出力部
400 合成選好データ
401,2042,2043,2144 対立箇所