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  • 特開-塗布装置および発泡体の製造方法 図1
  • 特開-塗布装置および発泡体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023523
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】塗布装置および発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20230209BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230209BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20230209BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230209BHJP
   B05B 15/70 20180101ALI20230209BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20230209BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230209BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20230209BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B29C44/00 A
B29C44/36
B29C39/24
B05B15/70
B05D7/02
B05D7/00 B
B05D1/02 B
B05D3/00 D
B05D7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129119
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山野井 智隆
(72)【発明者】
【氏名】天野 仁
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CA20
4D073CB02
4D073CB19
4D073CB21
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DA25
4D075DB31
4D075DC13
4D075DC38
4D075EA05
4F035AA03
4F035BA03
4F035BA22
4F035BA23
4F035BB06
4F035BB32
4F035BC02
4F204AB02
4F204AC05
4F204AG20
4F204AH26
4F204AJ08
4F204EA01
4F204EB01
4F204EF27
4F204EF47
4F204EK26
4F214AB02
4F214AC05
4F214AG20
4F214AH26
4F214AJ08
4F214AR15
4F214UA01
4F214UB01
4F214UD26
4F214UF27
4F214UF47
(57)【要約】
【課題】液体の塗布のばらつきを少なくできる塗布装置および発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布装置は、塗布対象物が配置される配置部と、配置部に対して相対的に予め決められた複数の位置に移動する塗布ヘッド部と、を備える。塗布ヘッド部は、液体を噴霧する第1ノズル及び第2ノズルを含み、第2ノズルの噴霧角度は、第1ノズルの噴霧角度よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物に液体を塗布する塗布装置であって、
前記塗布対象物が配置される配置部と、
前記配置部に対して相対的に予め決められた複数の位置に移動する塗布ヘッド部と、を備え、
前記塗布ヘッド部は、前記液体を噴霧する第1ノズル及び第2ノズルを含み、
前記第2ノズルの噴霧角度は、前記第1ノズルの噴霧角度よりも大きい塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ヘッド部は、接続部と、前記接続部から突き出た突出部と、を含み、
前記突出部の先端に前記第2ノズルの先端が存在し、
前記突出部の長さは、前記第1ノズルが前記接続部に取り付けられた位置と前記第1ノズルの先端との間の距離よりも長い請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記第2ノズルの軸は、前記第1ノズルの軸と異なる方向を向く請求項2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布対象物は、表面と、前記表面の厚さ方向の反対側の裏面と、を備えるクッションであり、
前記裏面は、基面と、前記基面から立ち上がる起立面と、前記起立面に接続し空間を設けて前記基面の一部に対向する対向面と、を有する請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
発泡合成樹脂製の塗布対象物に液体を塗布した発泡体の製造方法であって、
請求項1記載の塗布装置によって、前記塗布対象物に前記液体を塗布する塗布工程を備え、
前記塗布対象物は、表面と、前記表面の厚さ方向の反対側の裏面と、を備え、
前記裏面は、基面と、前記基面から立ち上がる起立面と、前記起立面に接続し空間を設けて前記基面の一部と対向する対向面と、を有し、
前記塗布工程において、前記第1ノズルは、少なくとも前記基面に前記液体を噴霧し、
前記第2ノズルは、少なくとも前記起立面および前記対向面に前記液体を噴霧する発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記塗布工程において、前記起立面および前記対向面に前記液体を噴霧するときに、前記第2ノズルの先端を前記起立面に向けて、前記第2ノズルの先端が前記空間内に位置する請求項5記載の発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置および発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布対象物に液体を塗布する技術として、特許文献1には、発泡樹脂材料で作られた塗布対象物(シートパッド)を圧縮するローラーなどに孔を設けて、塗布対象物の圧縮と同時に孔から塗布対象物へ液体を供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-85021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、塗布対象物の圧縮と同時に塗布対象物へ液体を供給するので、液体を塗布する全面にローラーなどが接する必要があるが、袋状や奥まった形状などの複雑な形状を有する塗布対象物では、袋状や奥まった形状の部分にローラーなどが接しないことがあり、液体の塗布のばらつきが発生する。作業者が単一のスプレーガンを使って手作業で塗布対象物に液体を塗布しても、特に袋状や奥まった形状の部分に液体の塗布が十分な部分と液体の塗布が不十分な部分とが生じ、液体の塗布のばらつきが発生する。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、袋状や奥まった形状などの複雑な形状を有する塗布対象物であっても液体の塗布のばらつきを少なくできる塗布装置および発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の塗布装置は、塗布対象物が配置される配置部と、配置部に対して相対的に予め決められた複数の位置に移動する塗布ヘッド部と、を備える。塗布ヘッド部は、液体を噴霧する第1ノズル及び第2ノズルを含み、第2ノズルの噴霧角度は、第1ノズルの噴霧角度よりも大きい。
【0007】
本発明の発泡体の製造方法は、塗布装置によって、塗布対象物に液体を塗布する塗布工程を備える。塗布対象物は、表面と、表面の厚さ方向の反対側の裏面と、を備える。塗布対象物の裏面は、基面と、基面から立ち上がる起立面と、起立面に接続し空間を設けて基面の一部と対向する対向面と、を有する。塗布工程において、第1ノズルは、少なくとも基面に液体を噴霧し、第2ノズルは、少なくとも起立面および対向面に前記液体を噴霧する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の塗布装置によれば、第1ノズルよりも噴霧角度が大きい第2ノズルを備えるから、第1ノズルのみでは塗布し難い袋状や奥まった形状をもつ塗布対象物であっても、液体を塗布し易くなり、液体の塗布が不十分になる部分を少なくできる。よって塗布対象物への液体の塗布のばらつきを低減できる。
【0009】
請求項2記載の塗布装置によれば、請求項1記載の塗布装置において、突出部の長さが、第1ノズルが接続部に取り付けられた位置と第1ノズルの先端との間の距離よりも長いから、袋状や奥まった形状をもつ塗布対象物であっても、奥の部分に液体を塗布し易くなり、液体の塗布が不十分になる部分を少なくできる。よって塗布対象物への液体の塗布のばらつきをさらに低減できる。
【0010】
請求項3記載の塗布装置によれば、請求項2記載の塗布装置において、第2ノズルの軸は、第1ノズルの軸とは異なる方向を向くから、第1ノズルで塗布対象物に液体を塗布するときに、第1ノズルの先端よりも接続部からの距離の長い第2ノズルの先端が塗布対象物に干渉し難くなり、第1ノズルの先端を塗布対象物に近づけることができる。よって第1ノズルでの液体の塗布の精度を向上できる。
【0011】
請求項4記載の塗布装置によれば、請求項1から3のいずれかと同様の効果が得られる。
【0012】
請求項5記載の発泡体の製造方法によれば、第1ノズルよりも噴霧角度の大きい第2ノズルで起立面および対向面を塗布するから、第1ノズルのみでは塗布し難い起立面や対向面をもつ塗布対象物であっても、起立面、対向面および対向面に対向する部分の基面に液体を塗布し易くなり、液体の塗布が不十分になる部分を少なくできる。よって塗布対象物への液体の塗布のばらつきを低減できる。
【0013】
請求項6記載の発泡体の製造方法によれば、請求項5記載の発泡体の製造方法において、起立面および対向面に液体を噴霧するときに、第1ノズルよりも噴霧角度が大きい第2ノズルの先端が起立面に向けて空間内に位置するから、噴霧された液体を空間の外に広がり難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態における塗布装置の模式図である。
図2】塗布対象物の背面図である。
図3】(a)は第1ノズルを用いて液体を塗布するときの図2のIII-III線における塗布対象物の断面図であり、(b)は第2ノズルを用いて液体を塗布するときの図2のIII-III線における塗布対象物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1を参照して一実施の形態における塗布装置10について説明する。図1は一実施の形態における塗布装置10の模式図である。塗布装置10は、配置部20に配置された塗布対象物30(図2参照)に液体を噴霧して塗布する装置である。
【0016】
塗布装置10は、塗布対象物30をその上に配置する台状の配置部20を備えている。本実施の形態では、配置部20は台状のものであるが、ベルトコンベアのように塗布対象物30をその上に載せて搬送するものであっても良いし、塗布対象物30をつかんで固定するものでも良い。塗布対象物30は、液体を塗布する面を露出した状態で配置部20に配置される。
【0017】
塗布装置10は、ロボット40を備えている。ロボット40は、複数の関節を有するアーム42と、アーム42を支える台41と、を備える。アーム42の先端に塗布ヘッド部43(エンドエフェクタ)が設けられている。ロボット40は、配置部20に対して、高さ方向(図1紙面上下方向)、高さ方向に直交する横方向(図1紙面左右方向)、高さ方向と横方向とのそれぞれに直交する縦方向(図1紙面垂直方向)及び高さ方向、横方向、縦方向にそれぞれ延びる軸の周りをそれぞれ回転する方向、の計6軸方向に塗布ヘッド部43を動作可能な6軸ロボットである。塗布ヘッド部43は、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置に移動する。
【0018】
塗布ヘッド部43は、アーム42と第1ノズル45及び第2ノズル46とをつなぐ接続部44を含む。接続部44には、直接または他の部材を介して、第1ノズル45及び第2ノズル46が、ねじによる螺合などの機械的方法によりそれぞれ取り付けられている。第2ノズル46の軸は、第1ノズル45の軸に対して、角度θ1だけ傾いて異なる方向を向いている。例えば、角度θ1は20°~90°である。図1では、第1ノズル45及び第2ノズル46にエアや液体を供給するための配管の図示は省略されている。第1ノズル45及び第2ノズル46からの液体は、霧状となって噴射され、塗布対象物30に小さい液体の粒子が付着して塗布される。
【0019】
塗布ヘッド部43は、接続部44から突き出た突出部50を含む。突出部50は、突出部50の先端に第2ノズル46の先端48が存在するように、第2ノズル46を含んでいる。突出部50の長さL2は、第1ノズル45が接続部44に取り付けられた位置と第1ノズル45の先端47との間の距離L1よりも長い。突出部50の長さL2は、突出部50が接続部44から突き出た根元と第2ノズル46の先端48との間の距離である。例えば、長さL2は50mm~250mmであり、好ましくは100mm~200mmである。
【0020】
第2ノズル46及び突出部50の太さは、第1ノズル45の太さより小さい。従って液体を塗布するときに、第1ノズル45が入らない狭い部分に第2ノズル46及び突出部50を入れて塗布することができる。よって液体の塗布が不十分な部分を少なくできる。
【0021】
第2ノズル46は、噴霧される液体の広がる角度である噴霧角度が第1ノズル45の噴霧角度よりも大きい。例えば、第2ノズル46の噴霧角度β(図3(b)参照)は40°~160°であり、第1ノズル45の噴霧角度α(図3(a)参照)はこれよりも小さい。従って第1ノズル45から噴霧される液体よりも第2ノズル46から噴霧される液体を一度に広範囲に塗布できる。
【0022】
第2ノズル46は、単位時間当たりの液体の噴霧量が第1ノズル45の単位時間当たりの液体の噴霧量よりも多いと好ましい。この場合、第2ノズル46の噴霧角度が第1ノズル45の噴霧角度よりも大きくても、第2ノズル46から噴霧される単位面積当たりの液体の量を第1ノズル45から噴霧される単位面積当たりの液体の量に近づけたり、多くしたりすることができる。よって第1ノズル45と第2ノズル46とで塗布した部分の単位時間当たりの塗布される量の差を少なくして、塗布対象物30への液体の塗布のばらつきを低減できる。
【0023】
第2ノズル46から噴霧される液体の粒子の大きさを、第1ノズル45から噴霧される液体の粒子の大きさよりも小さくするのが好ましい。第2ノズル46から噴霧される液体の粒子の大きさが小さいと、第1ノズル45から噴霧される液体に比べて霧状になりやすい。よって第2ノズル46から噴霧される液体をより遠くに飛ばすことができ、奥まった形状を有する部分にも液体を塗布し易くできる。
【0024】
本実施の形態では、塗布ヘッド部43は第1ノズル45、第2ノズル46の2本が接続部44に取り付けられるものを例示したが、これに限られない。接続部44に取り付けられるノズルは3本以上でも構わない。その場合、それぞれのノズルの軸は互いにそれぞれ所定の角度だけずれて異なる方向を向いている。
【0025】
塗布装置10は、配置部20に配置された塗布対象物30の形状と、塗布対象物30の位置情報と、を取得する認識装置60を備える。認識装置60は、配置部20の上方に取り付けられている。認識装置60が取得する塗布対象物30の形状の情報は、例えばカメラで撮影した画像の情報であって、認識装置60は画像を解析して形状を認識する。塗布対象物30の位置情報は、塗布対象物30のある点における配置部20の所定の点からの相対的な距離であって、配置部20からの高さ方向、高さ方向に直交する横方向および高さ方向と横方向とのそれぞれに直交する縦方向、のそれぞれの距離のことである。
【0026】
認識装置60が情報を取得する手段としては、カメラで画像を撮影するものの他、レーザーを利用したもの、赤外線を利用したもの、などの非接触式のものが好適に採用される。本実施の形態では、認識装置60は、ロボット40の塗布ヘッド部43とは別に設けられているが、ロボット40の塗布ヘッド部43に設けても良い。この場合、認識装置60は、塗布ヘッド部43の位置する位置情報に関連づけられて、塗布対象物30の形状と、塗布対象物30の位置情報と、を取得する。
【0027】
塗布装置10は、認識装置60に接続された処理装置70を備える。認識装置60は、取得した情報を処理装置70に送信する。処理装置70は、予め処理装置70内に記録してある複数の塗布対象物の形状の中から、認識装置60から取得した塗布対象物30の形状と整合する塗布対象物を判別する。処理装置70は、認識装置60から送信された塗布対象物30の位置情報に基づいて、配置部20に対する塗布対象物30の位置情報と処理装置70に予め記録された位置情報との差の補正を行う。さらに、処理装置70は、ロボット40と接続し、その判別した塗布対象物30の形状に基づいて、予め記録された塗布プログラムが選択され、補正した後の位置情報によって、アーム42への移動指令と、第1ノズル45及び第2ノズル46への噴霧指令と、を与える部分である。
【0028】
処理装置70から移動指令を受けたアーム42は、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置に塗布ヘッド部43を移動させる。この複数の位置は、塗布対象物30を配置部20に配置したときに、塗布対象物30に液体を塗布するために第1ノズル45の先端47及び第2ノズル46の先端48を塗布対象物30の所定の各部位に向ける位置である。この複数の位置は塗布対象物30の形状ごとにそれぞれ設定される。
【0029】
塗布ヘッド部43は、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置において停止したり、複数の位置へ移動したりしながら、液体を噴霧する。さらに第1ノズル45及び第2ノズル46からの液体の噴霧は、連続的に行われても良いし、断続的であっても良い。
【0030】
第1ノズル45及び第2ノズル46からの液体の噴霧のタイミング及び順番は、塗布対象物30の形状、大きさによって、適宜設定される。また第1ノズル45及び第2ノズル46からの液体の噴霧は、同時に行ったり、各ノズル毎で行ったり又はその組み合わせであっても良い。
【0031】
図2図3(a)及び図3(b)を参照して、塗布対象物30に液体を塗布した発泡体の製造方法を説明する。図2は、塗布対象物30の背面図である。図3(a)は、第1ノズル45を用いて液体を塗布するときのIII-III線における塗布対象物30の断面図であり、図3(b)は、第2ノズル46を用いて液体を塗布するときのIII-III線における塗布対象物30の断面図である。図2図3(a)及び図3(b)において、図中、矢印U-D,L-R,F-Bは、塗布対象物30の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0032】
塗布対象物30は、発泡合成樹脂製で、例えば、乗物用、事務用、家庭用の軟質ウレタンのシートクッション、シートバック、ヘッドレスト、アームレスト及びオットマン、乗物用のインストルメントパネル、ドア部分の硬質ウレタンの内装部品に用いられるクッションである。本実施の形態では、塗布対象物30はシートバックに用いられるクッション(シートパッド)を例示する。
【0033】
図2に示すように、塗布対象物30は、上下方向に延びる本体部33と、本体部33の左右方向の両端に接続するサイド部34,34と、本体部33の上方から後方(図2紙面手前側)に延び、本体部33と空間をあけて対向する折曲部35と、を有している。サイド部34は折曲部35と同様に、本体部33の左右方向の両端から後方に延び、本体部33と空間をあけて対向する部分を有している。サイド部34,34は上方で折曲部35の左右方向のそれぞれの端と接続している。サイド部34は本体部33から前方(図2紙面奥側)に向かって膨らんでいる。
【0034】
図3(a)に示すように、塗布対象物30は、本体部33の前方側の面と、サイド部34及び折曲部35の面のうち外側に向いている面と、を含む表面31と、表面31の厚さ方向の反対側の面である裏面32と、を有している。裏面32は、本体部33の後方側の面を形成する基面36と、基面36から後方に向かって立ち上がる起立面37と、起立面37と接続し、基面36の一部と空間39を設けて対向する対向面38と、を備える。サイド部34,34及び折曲部35の裏面32は、起立面37及び対向面38によって構成されている。塗布対象物30の裏面32のうち、起立面37、対向面38及び対向面38に対向する部分の基面36は、袋状や奥まった形状をしている。
【0035】
対向面38が基面36の一部と空間を設けて対向するとは、対向面38と基面36の一部とが互いに平行であるものに限定されない。対向面38は、基面36の一部と空間を設けて角度θ2だけ傾いていても良い。この場合、基面36の一部に対する対向面38の角度θ2は0°<θ2≦90°である。
【0036】
塗布対象物30は、乗物のシートフレームやシートパンなどに取り付けられ、その後、塗布対象物30の外形に表皮が取付けられる。裏面32には、シートフレームやシートパンと擦れて異音が発生するのを防止するため、異音防止剤(液体)が塗布される。異音防止剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、パラフィンワックスなどのパラフィン系の潤滑剤が好適に用いられる。本実施の形態では、塗布対象物30に塗布される液体は異音防止剤であるがこれに限定されない。所望の目的のために液体は、接着剤、中和剤、表面処理剤、防錆剤などが適宜採用される。
【0037】
発泡体の製造方法を説明する。発泡体は、塗布対象物30と、塗布対象物30に塗布された液体と、を備えている。まず、発泡合成樹脂材料の原料液を成形型内で発泡させて、発泡合成樹脂製の塗布対象物30(シートパッド)を成形する。成形した塗布対象物30を成形型内から取り出し、ローラーや上下に分かれた型により塗布対象物30を圧縮したり、塗布対象物30を減圧下に配置したりして、塗布対象物30内の独立気泡をつぶして発泡成形後の温度変化による塗布対象物30の変形を抑制するクラッシング工程を行う。クラッシング工程の後、ローラーなどの圧縮を解除したり、減圧した圧力を戻したりして、塗布対象物30の形状を復元する。
【0038】
その後、図3(a)及び図3(b)に示すように、塗布装置10によって塗布対象物30に液体を塗布する塗布工程を行い、発泡合成樹脂製の塗布対象物30に液体を塗布した発泡体を得る。
【0039】
塗布工程では、塗布対象物30を裏面32が露出した状態で配置部20に配置する。配置部20に配置された塗布対象物30に対して、配置部20の高さ方向の上方に取り付けた認識装置60により、塗布対象物30の形状の情報と、配置部20に対する塗布対象物30の位置情報と、を取得する。認識装置60は、取得した情報を処理装置70に送信する。
【0040】
処理装置70は、認識装置60が取得した塗布対象物30の形状の情報と、塗布対象物30の位置情報と、に対応する塗布プログラム及び補正後の位置情報に基づいて、処理装置70からの移動指令によりアーム42が動作して、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置へ塗布ヘッド部43が移動する。処理装置70からの噴霧指令により第1ノズル45及び第2ノズル46が液体を噴霧する。
【0041】
図3(a)に示すように対向面38に対向する部分以外の基面36は、第1ノズル45からの液体の噴霧によって塗布される。このとき第1ノズル45は、第1ノズル45の先端47を対向面38に対向する部分以外の基面36に向けて液体を噴霧する。第2ノズル46の軸が第1ノズル45の軸と異なる方向を向いているから、第1ノズル45の先端47を基面36に近づけても互いの軸が傾く角度θ1の分だけ、接続部44からの距離の長い第2ノズル46の先端48が塗布対象物30に干渉し難い。よって第1ノズル45の先端47を基面36に近づけて、精度よく液体を噴霧できる。
【0042】
図3(b)に示すように起立面37、対向面38および対向面38に対向する部分の基面36は、第2ノズル46からの液体の噴霧によって塗布される。このとき第2ノズル46は、第2ノズル46の先端48が空間39内に位置する状態で液体を噴霧する。第2ノズル46及び突出部50の太さは、対向面38と対向面38に対向する部分の基面36との間の距離に対して十分に小さい。従って塗布するときに空間39内に第2ノズル46の先端48や突出部50を位置させることができる。
【0043】
このとき、第2ノズル46の先端48は、起立面37に向けられる。空間39内に第1ノズル45よりも噴霧角度が大きい第2ノズル46の先端48が位置するから、起立面37、対向面38及び対向面38に対向する部分の基面36に同時に液体を噴霧して塗布できる。
【0044】
第2ノズル46の軸は、対向面38と、対向面38に対向する部分の基面36と、の間の中央を通っている。第2ノズル46の先端48からの対向面38及び対向面38に対向する部分の基面36までの距離を略等しくできるから、対向面38及び対向面38に対向する部分の基面36に同時に液体を噴霧したときに、対向面38及び対向面38に対向する部分の基面36への液体の塗布のばらつきを少なくできる。
【0045】
さらに、空間39が外側に開放している部分の少ない起立面37に向かって、空間39内に第2ノズル46の先端48を位置させて液体を噴霧するから、噴霧角度が第1ノズル45より大きい第2ノズル46からの液体の噴霧であっても、噴霧された液体が空間39の外側に広がり難い。よって噴霧される液体のムダが少なくなる。
【0046】
塗布工程において、配置部20に塗布対象物30を配置後から、塗布対象物30への液体の塗布動作完了までは、すべて認識装置60、処理装置70、ロボット40が自動で行うから、省力化できる。
【0047】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
実施形態では、ロボット40は、6軸ロボットである場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ロボット40は、門型のローダ-や6軸よりも動作可能な軸数が少ない、又は、多いロボットであっても良い。このうち、ロボット40が6軸よりも動作可能な軸が少ない場合であっても、角度θ1だけ第2ノズル46の軸が第1ノズル45の軸と異なる方向を向いているから、第1ノズル45又は第2ノズル46のどちらか一方のみでは塗布できない塗布対象物30の部位にも、他方のノズルで塗布できる。
【0049】
実施形態では、配置部20が移動せず、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置に塗布ヘッド部43が移動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。認識装置60が情報を取得可能な範囲内および塗布ヘッド部43が移動可能な範囲内で、配置部20は、塗布対象物30をつかんで、配置部20の移動と共に塗布対象物30を移動させるものでも良い。この場合、配置部20と塗布ヘッド部43との両方が移動しても良いし、配置部20のみが移動しても良い。このとき、配置部20に対して相対的に予め決められた複数の位置は、配置部20が移動するいずれの場合であっても、その移動に伴って、配置部20に対する高さ方向、横方向および縦方向それぞれの距離との関係が、配置部20が移動しない場合と変わらない複数の位置である。配置部20が移動後のいずれの位置にあっても、配置部20と、塗布ヘッド部43が移動する予め決められた複数の位置と、の相対的な位置関係は変わらない。従って第1ノズル45の先端47及び第2ノズル46の先端48を配置部20に対して同じ距離に位置させ、同じ方向に向けることができる。
【0050】
実施形態では、第2ノズル46が突出部50の一部である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2ノズル46の先端48が突出部50の先端に存在するように、第2ノズル46の全体を接続部44から突き出た突出部50とすることは当然可能である。
【0051】
実施形態では、対向面38は、図3(a)に示した角度θ2だけ傾く場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。対向面38の起立面37に接続する側と反対側の先端が、基面36から離間しているものであれば、対向面38の起立面37に接続する側と反対側の先端から、起立面37に向かうにつれて対向面38と基面36との間の距離が大きくなるものであっても良い。この場合、対向面38は、対向面38の起立面37に接続する側と反対側の先端から、起立面37に向かって、基面36に対して角度θ3だけ傾いている。このとき、対向面38は、対向面38が角度θ2傾いている場合とは反対側に傾いている。例えば、角度θ3は0°<θ3≦10°である。
【0052】
対向面38は、対向面38が基面36から離間しているものであれば、対向面38が後方に凹む部分があるものであっても、前方に膨らむ部分があるものであっても良い。また、対向面38は、対向面38の先端を基面36に近づける、又は、離れるように折れ曲がる形状であっても良い。いずれの場合であっても、対向面38の凹む部分、膨らむ部分および折れ曲がる形状のうち、起立面37から対向面38の先端に向かって基面36に近づくように傾く部分の基面36に対する角度は、10°以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10 塗布装置
20 配置部
30 塗布対象物
32 裏面
36 基面
37 起立面
38 対向面
39 空間
43 塗布ヘッド部
44 接続部
45 第1ノズル
46 第2ノズル
50 突出部
図1
図2
図3