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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023557
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/655 20150101AFI20230209BHJP
   E05F 15/40 20150101ALI20230209BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20230209BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E05F15/655
E05F15/40
B60J5/06 A
B60J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129170
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 康平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】大丸 高史
(72)【発明者】
【氏名】小島 侑也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠基
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA02
2E052CA06
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA01
2E052GA10
2E052GB01
2E052GB06
2E052GB12
2E052GC03
2E052HA01
2E052LA01
(57)【要約】
【課題】車外の人に対する開閉体の干渉を抑制することができる。
【解決手段】スライドドア装置10は、スライドドア4を開閉駆動するPSDアクチュエータ31と、PSDアクチュエータ31の作動を制御することによりスライドドア4の駆動制御を実行するPSDECU35とを備える。PSDECU35は、スライドドア4の移動位置Xsdを検出する。また、スライドドア4が設けられた車体2の側面2sには、そのドア開口部3よりもスライドドア4の開方向となる位置に、バックドア14の操作スイッチ56が設けられる。更に、PSDECU35は、この操作スイッチ56に対する操作入力の検出に基づいて、スライドドア4の移動範囲に、このスライドドア4の全開位置を含む開駆動規制領域を設定する。そして、PSDECU35は、開作動規制領域を設定した場合、その開作動規制領域におけるスライドドア4の開作動を規制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部に設けられた開閉体の移動位置を検出する移動位置検出部と、
駆動装置の作動を制御することにより前記開閉体の駆動制御を実行する駆動制御部と、
前記開口部よりも前記開閉体の開方向において前記車体に設けられた操作スイッチに対する操作入力の検出に基づいて、前記開閉体の移動範囲に該開閉体の全開位置を含む開作動規制領域を設定する開作動規制領域設定部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域における前記開閉体の開作動を規制する車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域における前記開閉体の開駆動制御を実行しない車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域内の前記開閉体に制動力を付与して該開閉体の前記開作動を規制する制動制御を実行すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開作動規制領域設定部は、前記操作スイッチに対する操作入力が検出されている間、前記設定した前記開作動規制領域を維持すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開作動規制領域設定部は、前記操作スイッチに対する操作入力により作動を開始した車載装置の前記作動が停止するまで、前記設定した前記開作動規制領域を維持すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開作動規制領域設定部は、前記開閉体の前記開作動中に、前記設定した前記開作動規制領域を維持する条件が解消した場合においても、前記開作動中は、前記設定した前記開作動規制領域を維持すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開作動規制領域設定部は、前記開閉体の前記開作動中に前記開作動規制領域を設定する場合には、前記開閉体が前記開作動していない状態で前記開作動規制領域として設定する第1開作動規制領域よりも狭い第2開作動規制領域を設定すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉体に生じた挟み込みを検出する挟み込み検出部を備え、
前記駆動制御部は、前記挟み込みが検出された場合には、前記開閉体の駆動方向を反転させる反転駆動制御を実行するとともに、該反転駆動制御の実行時には、前記開作動規制領域においても、前記開閉体を前記開方向に駆動すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記開閉体は、前記車体の側面に設けられたスライドドアであり、前記操作スイッチは、前記車体の後端部に設けられたバックドアの操作入力部であること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられた開閉体の開閉動作を制限することにより、その開閉体に生ずる挟み込みを回避するように構成された車両用開閉体制御装置がある。例えば、特許文献1には、開閉体に設けられた窓部が開状態にあり、且つ、この開閉体の移動位置が予め設定された特定開動作範囲内にある場合には、その移動速度を抑制する構成が開示されている。そして、このような構成を採用することで、その開状態にある開閉体の窓部と車体との間に生ずる挟み込みを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-57659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両においては、窓部の有無に依らず、開閉体の移動によって、この開閉体が車外の人に干渉する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、車体の開口部に設けられた開閉体の移動位置を検出する移動位置検出部と、駆動装置の作動を制御することにより前記開閉体の駆動制御を実行する駆動制御部と、前記開口部よりも前記開閉体の開方向において前記車体に設けられた操作スイッチに対する操作入力の検出に基づいて、前記開閉体の移動範囲に該開閉体の全開位置を含む開作動規制領域を設定する開作動規制領域設定部と、を備え、前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域における前記開閉体の開作動を規制する。
【0006】
即ち、開閉体が設けられた開口部よりも開閉体の開方向に位置する操作スイッチが操作された場合、この操作スイッチを操作する利用者が開閉体の移動軌跡内に進入している可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような場合、全開位置を含む開作動規制領域が設定されることで、その開作動規制領域内における開閉体の開作動が規制される。そして、これにより、開閉体の開方向に設けられた操作スイッチを操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。加えて、操作スイッチを操作する利用者に対し、その開閉体が近づいてくることの心理的な圧迫感を与えないようにすることができる。
【0007】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域における前記開閉体の開駆動制御を実行しないことが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、開駆動制御の実行により開作動規制領域内に移動した開閉体の開作動を規制し、及び開作動規制領域内に位置する開閉体について、その開駆動制御の実行による開作動の開始を規制することができる。そして、これにより、その操作を操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記駆動制御部は、前記開作動規制領域が設定された場合には、該開作動規制領域内の前記開閉体に制動力を付与して該開閉体の前記開作動を規制する制動制御を実行することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、手動操作による場合も含め、開作動規制領域内に移動した開閉体の開作動を規制し、及び開作動規制領域内に位置する開閉体について、その開作動の開始を規制することができる。そして、これにより、その開閉体の開方向に設けられた操作スイッチを操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開作動規制領域設定部は、前記操作スイッチに対する操作入力が検出されている間、前記設定した前記開作動規制領域を維持することが好ましい。
【0012】
即ち、操作スイッチが操作されている間は、この操作スイッチを操作する利用者が開閉体の移動軌跡内に進入している可能性が高いと推定される。従って、上記構成によれば、より効果的に、その開閉体の開方向に設けられた操作スイッチを操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開作動規制領域設定部は、前記操作スイッチに対する操作入力により作動を開始した車載装置の前記作動が停止するまで、前記設定した前記開作動規制領域を維持することが好ましい。
【0014】
即ち、操作スイッチの操作により作動を開始した開閉体が開閉動作している間は、この操作スイッチを操作する利用者が開閉体の移動軌跡内に進入している可能性が高いと推定される。従って、上記構成によれば、より効果的に、その開閉体の開方向に設けられた操作スイッチを操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開作動規制領域設定部は、前記開閉体の前記開作動中に、前記設定した前記開作動規制領域を維持する条件が解消した場合においても、前記開作動中は、前記設定した前記開作動規制領域を維持することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、一度でも操作スイッチに対する操作入力が検出されている場合、開閉体の開作動中は、その移動範囲に設定された開作動規制領域が解除されない。そして、これにより、より効果的に、その開閉体の開方向に設けられた操作スイッチを操作する利用者と開閉体との干渉を抑制することができる。
【0017】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開作動規制領域設定部は、前記開閉体の前記開作動中に前記開作動規制領域を設定する場合には、前記開閉体が前記開作動していない状態で前記開作動規制領域として設定する第1開作動規制領域よりも狭い第2開作動規制領域を設定することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、例えば、開閉体が開作動を開始した直後に操作スイッチが操作された場合であっても、この操作スイッチを操作した利用者と開閉体との干渉を抑制できる範囲で、その開閉体の開作動が継続される。そして、これにより、その開作動を開始した直後に開閉体が急停止するような状況の発生を回避して、高い質感を確保することができる。
【0019】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、前記開閉体に生じた挟み込みを検出する挟み込み検出部を備え、前記駆動制御部は、前記挟み込みが検出された場合には、前記開閉体の駆動方向を反転させる反転駆動制御を実行するとともに、該反転駆動制御の実行時には、前記開作動規制領域においても、前記開閉体を前記開方向に駆動することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、開閉体の挟み込みが検出されている場合には、その反転駆動制御の実行による挟み込みの解消が優先される。そして、これにより、高い安全性を確保することができる。
【0021】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記開閉体は、前記車体の側面に設けられたスライドドアであり、前記操作スイッチは、前記車体の後端部に設けられたバックドアの操作入力部であることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、スライドドアの開方向に設けられたバックドアの操作スイッチを操作する利用者とスライドドアとの干渉を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車外の人に対する開閉体の干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両用開閉体制御装置としてのスライドドア装置の概略構成図。
図2】スライドドアの開閉駆動制御について処理手順を示すフローチャート。
図3】挟み込み検出時の反転駆動制御について処理手順を示すフローチャート。
図4】スライドドアの開方向に設けられたバックドアの操作スイッチ及びその利用者の説明図。
図5】スライドドアの移動範囲に設定される開作動規制領域の説明図。
図6】スライドドアの移動範囲に設定される開作動規制領域の説明図。
図7】開作動規制信号の出力制御について処理手順を示すフローチャート。
図8】開作動規制信号の受信に基づく開作動規制領域の設定、維持及び解除の処理手順を示すフローチャート。
図9】開作動規制領域を設定する際の処理手順を示すフローチャート。
図10】開作動規制領域を解除する際の処理手順を示すフローチャート。
図11】開作動規制領域の設定時に実行する制動制御の処理手順を示すフローチャート。
図12】開作動規制領域の設定時に開駆動制御を実行する際の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、車両用開閉体制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面2sに設けられたドア開口部3を開閉するスライドドア4を備えている。具体的には、この車両1には、その前後方向(図1中、左右方向)に延びる複数のガイドレール5a~5cと、これらの各ガイドレール5に連結される複数のガイドローラユニット6a~6cと、が設けられている。そして、本実施形態のスライドドア4は、これらの各ガイドレール5及び各ガイドローラユニット6を介して車体2の側面2sに支持されている。
【0026】
また、これらの各ガイドレール5及び各ガイドローラユニット6は、各ガイドレール5の延伸方向に沿って、その各ガイドレール5に対する各ガイドローラユニット6の連結位置を相対変位させることが可能となっている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのドア開口部3に設けられたスライドドア4の開閉動作を可能とするスライドドア装置10が形成されている。
【0027】
即ち、本実施形態のスライドドア装置10において、スライドドア4は、車両前方側(図1中、左側)に移動することにより、そのドア開口部3を閉塞する全閉状態となる。そして、スライドドア4は、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、そのドア開口部3を介して車両1の乗員が乗降することのできる開状態となるように構成されている。
【0028】
また、本実施形態の車両1は、車体2の後端部2rに設けられた後方に開口するドア開口部13を備えている。そして、このドア開口部13には、所謂跳ね上げ式のバックドア14が設けられている。
【0029】
即ち、このバックドア14は、ドア開口部13の上端部分を回動支点として上方に開動作する。また、ドア開口部13の幅方向両端部分には、伸縮自在に構成された軸形状を有するとともに、その軸方向端部が車体2側及びバックドア14側に対して回動可能に連結された一対の支持装置15が設けられている。そして、本実施形態の車両1においては、この支持装置15の動作に基づいて、その所謂リヤハッチとしての構成を有したドア開口部13を開閉するバックドア装置20が形成されている。
【0030】
また、本実施形態の車両1には、モータ30を駆動源としてスライドドア4を開閉駆動するPSDアクチュエータ31と、このPSDアクチュエータ31の作動を制御するPSDECU35とが設けられている。更に、この車両1には、同じくモータ40を駆動源としてバックドア14を開閉駆動するPBDアクチュエータ41と、このPBDアクチュエータ41の作動を制御するPBDECU45とが設けられている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、これらのスライドドア装置10及びバックドア装置20が、それぞれ、モータ駆動により開閉動作する所謂パワースライドドア及びパワーバックドアとしての構成を有するものとなっている。
【0031】
詳述すると、本実施形態の車両1において、PSDECU35には、PSDアクチュエータ31の作動に同期したパルス信号Sp1が入力される。そして、本実施形態のPSDECU35は、このパルス信号Sp1をカウントすることにより、そのPSDアクチュエータ31の駆動力に基づき開閉動作するスライドドア4の移動位置Xsdを検出する。
【0032】
同様に、PBDECU45にも、PBDアクチュエータ41の作動に同期したパルス信号Sp2が入力される。そして、本実施形態のPBDECU45は、このパルス信号Sp2をカウントすることにより、そのPBDアクチュエータ41の駆動力に基づき開閉動作するバックドア14の移動位置Xbdを検出する構成になっている。
【0033】
尚、スライドドア4の移動位置Xsdは、例えば、その全閉位置又は全閉位置を基準としたパルスカウント値等に表される。そして、バックドア14の移動位置Xbdも同様に、その全閉位置又は全閉位置を基準としたパルスカウント値等に表される。
【0034】
また、本実施形態のPSDECU35には、スライドドア4のドアハンドル51や車室内、及び車両1の利用者が保持する携帯機52等に設けられた操作入力部53に対する操作入力信号Scr1が入力される。そして、PSDECU35は、この操作入力信号Scr1に示されるスライドドア4の開閉動作要求、及び検出した移動位置Xsdに基づいて、そのPSDアクチュエータ31の作動を制御、つまりはスライドドア4の開閉駆動制御を実行する。
【0035】
同様に、PSDECU35にも、バックドア14や車体2、及び携帯機52等に設けられた操作入力部55に対する操作入力信号Scr2が入力される。具体的には、本実施形態の車両1は、バックドア14の操作入力部55として、そのバックドア14が設けられた後端部2r近傍において車体2の側面2sに設けられた操作スイッチ56を備えている。そして、本実施形態のPBDECU45は、この操作入力信号Scr2に示されるバックドア14の開閉動作要求、及び検出した移動位置Xbdに基づいて、PBDアクチュエータ41の作動を制御、つまりはバックドア14の開閉駆動制御を実行する。
【0036】
即ち、図2に示すように、PSDECU35及びPBDECU45は、それぞれ、開閉動作要求を検出すると(ステップ101:YES)と、その開閉駆動対象となるスライドドア4及びバックドア14の駆動方向を特定する(ステップ102)。そして、PSDECU35及びPBDECU45は、それぞれ、この特定した駆動方向の開閉駆動制御を実行する(ステップ103)。
【0037】
また、本実施形態の車両1において、PSDECU35は、その開閉駆動制御の実行中、上記ステップ101において検出した開閉動作要求及び上記ステップ102において特定した駆動方向を保持する。そして、これにより、新たな操作入力信号Scr1の検出がない場合、このPSDECU35が実行する駆動制御によって、そのPSDアクチュエータ31に駆動されたスライドドア4が全閉位置又は全開位置まで移動する。
【0038】
同様に、PBDECU45もまた、その開閉駆動制御の実行中、上記ステップ101において検出した開閉動作要求及び上記ステップ102において特定した駆動方向を保持する。そして、本実施形態の車両1は、これにより、新たな操作入力信号Scr2の検出がない場合、このPBDECU45が実行する駆動制御によって、そのPBDアクチュエータ41に駆動されたバックドア14が全閉位置又は全開位置まで移動する構成になっている。
【0039】
尚、本実施形態の車両1において、スライドドア4は、そのドアハンドル51を把持部として、手動により開閉動作させることが可能となっている。そして、バックドア14についても同様に、手動により開閉動作させることが可能となっている。
【0040】
また、本実施形態の車両1においては、PSDECU35に対し、その駆動制御の実行又は手動により開閉動作しているスライドドア4、つまりは作動中のスライドドア4に挟み込みが生じたことを示す挟み込み検出信号Scd1が入力される。尚、このスライドドア4の挟み込み検出信号Scd1には、例えば、スライドドア4の前縁部4fに設けられた図示しないタッチセンサの出力信号等が用いられる。そして、これにより挟み込みが検出された場合には、そのスライドドア4の反転駆動制御が実行される。
【0041】
同様に、PBDECU45に対しても、その作動中のバックドア14に挟み込みが生じたことを示す挟み込み検出信号Scd2が入力される。尚、このバックドア14の挟み込み検出信号Scd2には、例えば、バックドア14に設けられた図示しないタッチセンサの出力信号等が用いられる。そして、これにより挟み込みが検出された場合には、そのバックドア14の反転駆動制御が実行される構成になっている。
【0042】
即ち、図3に示すように、PSDECU35及びPBDECU45は、それぞれ、挟み込みを検出すると(ステップ201:YES)と、その開閉駆動対象となるスライドドア4及びバックドア14の駆動制御を停止する(ステップ202)。そして、PSDECU35及びPBDECU45は、それぞれ、この停止した駆動制御において、その開閉動作要求に示された駆動方向とは逆向きの駆動、つまりは駆動要求の方向を反転させた反転駆動制御を実行する構成になっている(ステップ203)。
【0043】
(バックドアスイッチ操作時のスライドドア作動規制制御)
次に、本実施形態の車両1に実装されたバックドアスイッチ操作時のスライドドア作動規制制御について説明する。
【0044】
図4に示すように、本実施形態の車両1においては、その車体2の側面2sに設けられたバックドア14の操作スイッチ56が、ドア開口部3後方のセンターレールを構成するガイドレール5bの端末位置近傍に配置されている。即ち、この操作スイッチ56は、スライドドア4に開閉されるドア開口部3よりも、そのスライドドア4の開方向となる位置において、車体2の側面2sに設けられている。そして、これにより、この操作スイッチ56を操作してバックドア14を開閉動作させようとする車外の利用者60が、そのスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入する可能性が生ずる。
【0045】
この点を踏まえ、図5及び図6に示すように、本実施形態の車両1においては、操作スイッチ56に対する操作入力の検出に基づいて、スライドドア4の移動範囲4Xに、このスライドドア4の全開位置Xoを含む開作動規制領域αが設定される。つまり、バックドア14の操作スイッチ56が操作された場合、この操作スイッチ56を操作する利用者60がスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入している可能性が高いと推定される。そして、この開作動規制領域αにおいては、そのPSDECU35がスライドドア4の開駆動制御を実行しないことにより、バックドア14の操作スイッチ56を操作する車外の利用者60とスライドドア4との干渉を抑制する構成になっている。
【0046】
即ち、開作動規制領域αは、全閉位置Xcから全開位置Xoに至るスライドドア4の移動範囲4Xを二分する態様で設定される。そして、開作動規制領域αが設定された場合、PSDECU35は、この開作動規制領域α内のスライドドア4に制動力を付与して、その開作動を規制する制動制御を実行する。
【0047】
具体的には、本実施形態の車両1において、PSDアクチュエータ31のモータ30には、ブラシレスモータが採用されている。そして、上記開作動規制領域αの設定時に実行する制動制御は、そのモータ30のブレーキ制御、例えば、「一相通電」や「相固定通電」と呼称されるモータコイルの通電相を固定した通電制御、或いは回生ブレーキ制御等により行われる。
【0048】
また、開作動規制領域αが設定された場合、PSDECU35によるスライドドア4の開駆動制御は、その開作動規制領域αよりも全閉位置Xc側の開作動許可領域βにおいてのみ実行される。
【0049】
つまり、スライドドア4の移動位置Xsdが開作動規制領域α内にある場合、PSDECU35は、その開駆動制御を開始しない。また、開駆動制御の実行により開作動許可領域βを開方向に移動したスライドドア4が開作動規制領域αに進入することで、PSDECU35は、その開駆動制御を停止する。そして、本実施形態の車両1は、これにより、開作動規制領域α内に停止したスライドドア4が、その全開位置Xoに向かって開方向に移動、つまりは開作動しない構成となっている。
【0050】
詳述すると、本実施形態のPSDECU35は、バックドア14の操作スイッチ56に対する操作入力が検出されている間、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αを維持する。また、PSDECU35は、その操作スイッチ56に対する操作入力により作動を介したバックドア14の開閉動作が停止、つまりはPBDECU45による開閉駆動制御が終了するまで、その開作動規制領域αを維持する。更に、PSDECU35は、これら開作動規制領域αを維持する条件が解消した場合であっても、スライドドア4の開作動中は、その設定した開作動規制領域αを維持する。つまりは、一度でも操作スイッチ56に対する操作入力が検出されている場合、スライドドア4の開作動中は、その移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αが解除されない。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、より効果的に、そのバックドア14の操作スイッチ56を操作する車外の利用者60とスライドドア4との干渉を抑制する構成になっている。
【0051】
また、本実施形態のPSDECU35は、開作動規制領域αの設定時、スライドドア4が開作動中であるか否かによって、その設定する開作動規制領域αの大きさを変更する。即ち、この場合における「開作動」には、PSDECU35の開駆動制御によるスライドドア4の開方向移動、及び手動操作によるスライドドア4の開方向移動が含まれる。そして、本実施形態のPSDECU35は、スライドドア4の開作動中に開作動規制領域αを設定する場合には、スライドドア4が開作動していない状態で開作動規制領域αを設定する場合、つまり非開作動時よりも開作動規制領域αを狭く設定する。
【0052】
換言すると、開作動中に設定される第2開作動規制領域α2は、スライドドア4の非開作動時に設定される第1開作動規制領域α1よりも全開位置Xoに近い位置に、その開作動許可領域βとの境界位置Xbを有している。そして、これにより、開作動を開始する時点で開作動規制領域αが設定されている場合よりも、その開作動を開始した後に開作動規制領域αが設定された場合の方が、より全開位置Xoに近い位置までスライドドア4が開作動することのできる構成となっている。
【0053】
具体的には、本実施形態の車両1において、第1開作動規制領域α1は、全閉位置Xcを基準として、その境界位置Xb1でスライドドア4が停止した場合に、そのドア開口部3を介して乗員が乗降できる程度の開口量が確保されるように設定されている。そして、第2開作動規制領域α2は、全開位置Xoを基準として、その境界位置Xb2でスライドドア4が停止した場合でも、このスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入した操作スイッチ56を操作する利用者60との干渉を回避できるように設定されている。
【0054】
さらに詳述すると、図1に示すように、本実施形態の車両1において、PBDECU45は、PSDECU35に対し、バックドア14の操作スイッチ56に対する操作入力の検出に基づいたスライドドア4の開作動規制信号Sldを送信する。尚、この開作動規制信号Sldの送受信は、図示しない車内ネットワークを用いて行われる。そして、本実施形態のPSDECU35は、この開作動規制信号Sldに基づいて、そのスライドドア4の移動範囲4Xに対する開作動規制領域αの設定を実行する。
【0055】
具体的には、図7に示すように、PBDECU45は、バックドア14の操作スイッチ56に対する操作入力を検出した場合(ステップ301:YES)に、PSDECU35に対してスライドドア4の開作動規制信号Sldを送信する(ステップ302)。更に、本実施形態のPBDECU45は、所定の演算周期で、上記ステップ301及びステップ302、並びに以下に示すステップ303~ステップ305の各処理を実行する。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、車外の利用者60がバックドア14の操作スイッチ56を操作している間、PBDECU45が継続して、その開作動規制信号SldをPSDECU35に送信する構成となっている。
【0056】
また、PBDECU45は、上記ステップ301において、バックドア14の操作スイッチ56に対する操作入力を検出しなかった場合(ステップ301:NO)、そのバックドア14が作動中であるかを判定する(ステップ303)。更に、PBDECU45は、バックドア14が作動中である場合(ステップ303:YES)、そのバックドア14の作動が操作スイッチ56に対する操作入力の検出によって開始された駆動制御によるものであるかを判定する(ステップ304)。そして、本実施形態のPBDECU45は、バックドア14の作動が操作スイッチ56に対する操作入力の検出によって開始された駆動制御によるものである場合(ステップ304:YES)にも、上記ステップ302の処理を実行する。つまりは、操作スイッチ56に対する操作入力の検出が途絶した後も、その操作入力の検出により開始したバックドア14の駆動制御が終了するまで、PSDECU35に対する開作動規制信号Sldの送信を継続する構成になっている。
【0057】
尚、本実施形態のPBDECU45は、バックドア14が作動中でない場合(ステップ303:NO)、操作スイッチ56に対する操作入力を検出しないときには(ステップ301:NO)、開作動規制信号Sldの送信を行わない(ステップ305)。そして、操作スイッチ56に対する操作入力の検出以外をトリガとしてバックドア14が作動している場合(ステップ304:NO)にも、操作スイッチ56に対する操作入力の検出がない場合、PSDECU35に対する開作動規制信号Sldの送信を行わない。
【0058】
一方、図8に示すように、本実施形態のPSDECU35は、開作動規制信号Sldを受信すると(ステップ401:YES)、スライドドア4の移動範囲4Xに対して開作動規制領域αが設定されているか、即ち設定中であるかを判定する(ステップ402)。そして、既に開作動規制領域αが設定されている場合(ステップ402:YES)、その設定中の開作動規制領域αを維持し(ステップ403)、未設定である場合(ステップ402:NO)には、その開作動規制領域αの設定判定を実行する(ステップ404)。
【0059】
具体的には、図9に示すように、この開作動規制領域αの設定判定において、本実施形態のPSDECU35は、スライドドア4が開作動中であるか否かを判定する(ステップ501)。更に、PSDECU35は、スライドドア4が開作動中ではない場合、即ち非開作動時である場合(ステップ501:NO)には、その開作動規制領域αとして、第1開作動規制領域α1を設定する(ステップ502、図5参照)。そして、PSDECU35は、スライドドア4が開作動中である場合(ステップ501:YES)には、その開作動規制領域αとして、第2開作動規制領域α2を設定する(ステップ503、図6参照)。
【0060】
また、図8に示すように、本実施形態のPSDECU35は、開作動規制信号Sldを受信しない場合(ステップ401:NO)にも、既に開作動規制領域αが設定されているかを判定する(ステップ405)。そして、PSDECU35は、既に開作動規制領域αが設定されている場合(ステップ402:YES)には、その設定された開作動規制領域αの解除判定を実行する。
【0061】
具体的には、図10に示すように、この開作動規制領域αの解除判定においてもまた、本実施形態のPSDECU35は、そのスライドドア4が開作動中であるか否か判定する(ステップ601)。更に、PSDECU35は、スライドドア4が開作動中ではない場合、即ち非開作動時である場合(ステップ601:NO)に、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αを解除する(ステップ602)。そして、PSDECU35は、スライドドア4が開作動中である場合(ステップ601:YES)には、そのスライドドア4の移動範囲4Xに対する開作動規制領域αの設定を維持する(ステップ603)。
【0062】
また、図11に示すように、本実施形態のPSDECU35は、スライドドア4の移動範囲4Xに開作動規制領域αが設定されている場合(ステップ701:YES)、スライドドア4が、この開作動規制領域α内に位置するか否かを判定する(ステップ702)。更に、PSDECU35は、スライドドア4が開作動規制領域α内に位置する場合(ステップ702:YES)、このスライドドア4の移動方向を判定する(ステップ703)。そして、PSDECU35は、この開作動規制領域α内に位置するスライドドア4が開方向に移動、又は開方向移動を開始しようとしている場合(ステップ702:YES)に、その開作動を規制すべくスライドドア4の制動制御を実行する(ステップ704)。
【0063】
更に、本実施形態のPSDECU35は、上記のようにスライドドア4の挟み込みを検出した場合には、このスライドドア4の反転駆動制御を実行する(図3参照)。そして、この反転駆動制御の実行時には、そのスライドドア4の開作動規制領域α内に位置する場合であっても、このスライドドア4を開方向に駆動する構成になっている。
【0064】
具体的には、図12に示すように、本実施形態のPSDECU35は、スライドドア4の開駆動要求がある場合(ステップ801:YES)、そのスライドドア4が開作動規制領域αに位置しているかを判定する(ステップ802)。そして、スライドドア4が開作動規制領域αに位置していない場合(ステップ802:NO)、即ち全閉位置Xc側の開作動許可領域βに位置する場合には、その開駆動要求に基づいたスライドドア4の開駆動制御を実行する(ステップ803)。
【0065】
即ち、本実施形態のPSDECU35は、この場合、開作動規制領域αの設定に起因したスライドドア4の制動制御を実行しない。そして、PSDECU35は、これにより、上記ステップ801の開駆動要求に基づいて、新たなスライドドア4の開駆動制御を開始し、及び、その実行中の開駆動制御を継続する。
【0066】
また、PSDECU35は、上記ステップ802において、スライドドア4が開作動規制領域αに位置する場合(ステップ802:YES)、続いて、上記ステップ801の開駆動要求が反転駆動制御によるものであるかを判定する(ステップ804)。更に、PSDECU35は、その開駆動要求が反転駆動制御によるものである場合(ステップ804:YES)にも、上記ステップ803を実行することにより、そのスライドドア4を開方向に駆動する。そして、PSDECU35は、その開駆動要求が反転駆動制御によるものではない場合(ステップ804:NO)には、上記ステップ801の開駆動要求を却下する(ステップ805)。
【0067】
つまり、本実施形態のPSDECU35は、開駆動要求が操作入力信号Scr1に基づくものである場合には、開作動規制領域α内におけるスライドドア4の開作動を規制すべく制動制御を実行する。更に、PSDECU35は、開作動規制領域αにおけるスライドドア4の開駆動制御を実行しない。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、開作動規制領域αに位置するスライドドア4について、その新たな開駆動制御が開始されず、及び、実行中の開駆動制御が停止される構成になっている。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
即ち、車外の利用者60がバックドア14の操作スイッチ56を操作している間、継続して、そのPBDECU45からPSDECU35に対して開作動規制信号Sldが送信される。更に、この開作動規制信号SldをPSDECU35が受信している間、この開作動規制信号Sldの受信によりスライドドア4の移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αが維持される。このため、車外の利用者60がバックドア14の操作スイッチ56を操作している間は、その開作動規制領域αにおけるスライドドア4の開作動が規制される。
【0069】
また、操作スイッチ56に対する操作入力の検出により開始されたバックドア14の駆動制御が終了するまで、継続して、そのPBDECU45からPSDECU35に対して開作動規制信号Sldが送信される。そして、これにより、その操作スイッチ56に対する操作入力に基づいたバックドア14の駆動制御が終了するまで、その開作動規制領域αにおけるスライドドア4の開作動が規制される。
【0070】
更に、PBDECU45による開作動規制信号Sldが途絶した場合であっても、スライドドア4の開作動中は、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αが維持される。つまり、一度でもPBDECU45が送信した開作動規制信号SldをPSDECU35が受信した場合、スライドドア4の開作動中は、その設定した開作動規制領域αが解除されない。このため、開作動許可領域βを開作動中のスライドドア4については、開作動規制領域αに進入することにより開駆動制御が停止され、及び制動制御が実行される。そして、これにより、このスライドドア4の開作動が停止した後、その開作動規制信号Sldの途絶に基づいて、スライドドア4の移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αが解除される。
【0071】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両用開閉体制御装置としてのスライドドア装置10は、開閉体としてのスライドドア4を開閉駆動する駆動装置としてのPSDアクチュエータ31を備える。また、スライドドア装置10は、このPSDアクチュエータ31の作動を制御することにより、そのスライドドア4の駆動制御を実行する駆動制御部70aとしての機能を有したPSDECU35を備える。そして、PSDECU35は、スライドドア4の移動位置Xsdを検出する移動位置検出部70bとしての機能を有する。また、スライドドア4に開閉される開口部としてのドア開口部3が設けられた車体2の側面2sには、そのドア開口部3よりもスライドドア4の開方向となる位置に、バックドア14の操作スイッチ56が設けられる。更に、PSDECU35は、この操作スイッチ56に対する操作入力の検出に基づいて、そのスライドドア4の移動範囲4Xに、このスライドドア4の全開位置Xoを含む開作動規制領域αを設定する開作動規制領域設定部70cとしての機能を有する。そして、PSDECU35は、開作動規制領域αを設定した場合、この開作動規制領域αにおけるスライドドア4の開作動を規制する。
【0072】
即ち、スライドドア4が設けられたドア開口部3よりもスライドドア4の開方向に位置するバックドア14の操作スイッチ56が操作された場合、この操作スイッチ56を操作する利用者60がスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入している可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このような場合、全開位置Xoを含む開作動規制領域αが設定されることで、その開作動規制領域α内におけるスライドドア4の開作動が規制される。そして、これにより、スライドドア4の開方向に設けられた操作スイッチ56を操作する車外の利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。加えて、バックドア14の操作スイッチ56を操作する利用者60に対し、そのスライドドア4が近づいてくることの心理的な圧迫感を与えないようにすることができる。
【0073】
(2)PSDECU35は、開作動規制領域αを設定した場合には、この開作動規制領域αにおけるスライドドア4の開駆動制御を実行しない。
上記構成によれば、開駆動制御の実行により開作動規制領域α内に移動したスライドドア4の開作動を規制し、及び開作動規制領域α内に位置するスライドドア4について、その開駆動制御の実行による開作動の開始を規制することができる。そして、これにより、その操作スイッチ56を操作する利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。
【0074】
(3)PSDECU35は、開作動規制領域αを設定した場合には、この開作動規制領域α内のスライドドア4に制動力を付与して、このスライドドア4の開作動を規制する制動制御を実行する。
【0075】
上記構成によれば、乗員の手動操作による場合も含め、開作動規制領域α内に移動したスライドドア4の開作動を規制し、及び開作動規制領域α内に位置するスライドドア4について、その開作動の開始を規制することができる。そして、これにより、そのスライドドア4の開方向に設けられた操作スイッチ56を操作する利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。
【0076】
(4)PSDECU35は、操作スイッチ56に対する操作入力が検出されている間、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αを維持する。
即ち、操作スイッチ56が操作されている間は、この操作スイッチ56を操作する利用者60がスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入している可能性が高いと推定される。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのスライドドア4の開方向に設けられた操作スイッチ56を操作する利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。
【0077】
(5)PSDECU35は、操作スイッチ56に対する操作入力により作動を開始した車載装置としてのバックドア14の開閉動作が停止するまで、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αを維持する。
【0078】
即ち、操作スイッチ56の操作により作動を開始したバックドア14が開閉動作している間は、この操作スイッチ56を操作する利用者60がスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入している可能性が高いと推定される。従って、上記構成によれば、より効果的に、そのスライドドア4の開方向に設けられた操作スイッチ56を操作する利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。
【0079】
(6)PSDECU35は、スライドドア4の開駆動制御を実行している間に、上記(4)(5)に記載の開作動規制領域αを維持する条件が解消した場合でも、その開駆動制御の実行中は、スライドドア4の移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αを維持する。
【0080】
上記構成によれば、一度でも操作スイッチ56に対する操作入力が検出されている場合、スライドドア4の開作動中は、その移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αが解除されない。また、開作動許可領域βを開方向に移動するスライドドア4については、このスライドドア4が開作動規制領域αに進入することにより、その開作動が規制される。そして、スライドドア4の開作動が停止した後、操作スイッチ56に対する操作入力が検出されていない場合に、その移動範囲4Xに設定された開作動規制領域αが解除される。
【0081】
その結果、操作スイッチ56を操作する利用者60がスライドドア4の移動軌跡Tsd内に進入している可能性が低下した状態で、そのスライドドア4の開作動が可能になる。そして、これにより、より効果的に、そのスライドドア4の開方向に設けられた操作スイッチ56を操作する利用者60とスライドドア4との干渉を抑制することができる。
【0082】
(7)PSDECU35は、スライドドア4の開作動中に開作動規制領域αを設定する場合には、スライドドア4が開作動していない状態で開作動規制領域αとして設定する第1開作動規制領域α1よりも狭い第2開作動規制領域α2を設定する。
【0083】
上記構成によれば、例えば、スライドドア4が開作動を開始した直後に操作スイッチ56が操作された場合であっても、操作スイッチ56を操作した利用者60とスライドドア4との干渉を抑制できる範囲で、そのスライドドア4の開作動が継続される。即ち、開作動規制領域αにおいて、その移動軌跡Tsd内に進入した利用者60とスライドドア4との干渉が生じやすいとすれば、この開作動規制領域α内をスライドドア4が開作動している間に、そのバックドア14の操作スイッチ56が操作される可能性は低い。従って、上記構成によれば、開作動の開始直後に操作スイッチ56が操作された場合であっても、干渉を抑制しつつ、少なくとも第1開作動規制領域α1と第2開作動規制領域α2との差分相当量、そのスライドドア4の開作動を継続させることができる。そして、これにより、その開作動を開始した直後にスライドドア4が急停止するような状況の発生を回避して、高い質感を確保することができる。
【0084】
(8)PSDECU35は、スライドドア4に生じた挟み込みを検出する挟み込み検出部70dとしての機能を有する。また、PSDECU35は、スライドドア4の挟み込みを検出した場合には、このスライドドア4の駆動方向を反転させる反転駆動制御を実行する。そして、PSDECU35は、この反転駆動制御の実行時には、開作動規制領域αにおいても、そのスライドドア4を開方向に駆動する。
【0085】
上記構成によれば、スライドドア4の挟み込みが検出されている場合には、その反転駆動制御の実行による挟み込みの解消が優先される。そして、これにより、高い安全性を確保することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・上記実施形態では、PBDECU45が送信した開作動規制信号SldをPSDECU35が受信することで、そのスライドドア4の移動範囲4Xに開作動規制領域αが設定されることとした。しかし、これに限らず、PSDECU35に対し、バックドア14の操作スイッチ56に対する操作入力の検出信号、及びPBDECU45によるバックドア14の駆動状態信号が入力される。そして、これにより、PSDECU35において、そのPBDECU45による開作動規制信号Sldの送信に相当するスライドドア4の移動軌跡Tsdへの利用者60の進入可能性判定を実行する構成としてもよい。
【0088】
即ち、操作スイッチ56に対する操作入力の検出は、PSDECU35が実行してもよい。そして、その操作入力の検出に基づく開作動規制領域αの設定についての要否判定、及び、その設定した開作動規制領域αの維持判定についてもまた、PSDECU35が単独で行う構成であってもよい。
【0089】
・また、スライドドア4の移動範囲4Xに設定した開作動規制領域αの維持条件は、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、第1開作動規制領域α1の境界位置Xb1及び第2開作動規制領域α2の境界位置Xb2の設定位置は、任意に変更してもよい。そして、スライドドア4の作動中に開作動規制領域αを設定する場合と、非開作動中に開作動規制領域αを設定する場合とで、そのスライドドア4の移動範囲4Xに設定する開作動規制領域αの大きさが等しい構成であってもよい。
【0090】
・上記実施形態では、スライドドア4が設けられたドア開口部3よりもスライドドア4の開方向において、その車体2に設けられる操作スイッチ56の構成については、任意に設定してもよい。例えば、ボタン式でもよく、スライド式でもよい。更に、タッチセンサを用いる構成であってもよい。そして、例えば、静電容量式等、非接触型のスイッチであってもよい。
【0091】
・上記実施形態では、PSDアクチュエータ31の駆動源であるモータ30のブレーキ制御によって、開作動規制領域α内に位置するスライドドア4の制動制御が実行されることとした。しかし、これに限らず、例えば、電磁クラッチの接続によって、そのPSDアクチュエータ31の減速機構に付与された耐逆入力特性を利用する構成等、機械的な構成により制動力を生じさせるものであってもよい。そして、駆動源となるモータ30の構成についてもまた、例えばブラシ付き直流モータ等、任意に変更してもよい。
【0092】
・また、制動制御の実行により開作動規制領域α内のスライドドア4に付与する制動力の大きさは任意に設定してもよい。例えば、乗員の手動操作によってもスライドドア4が開作動しないような強い制動力を付与するものであってもよく、手動によりスライドドア4を開作動させる乗員が大きな操作力を必要とするような制動力を付与するものであってもよい。また、例えば、非常時用のドアハンドル51のみがスライドドア4に設けられている場合等、主にPSDECU35が実行する開駆動制御によりスライドドア4が開作動する構成では、そのスライドドア4の停止位置を保持する程度の制動力であってもよい。そして、明示的な制動制御ではなく、位置制御の実行によって、その開作動規制領域α内におけるスライドドア4の開作動が規制される構成であってもよい。
【0093】
・上記実施形態では、車体2の側面2sに設けられたドア開口部3を開閉するスライドドア4を開閉体として、このスライドドア4の開閉駆動制御を実行するPSDECU35及びPSDアクチュエータ31を備えたスライドドア装置10に具体化した。そして、ドア開口部3が設けられた車体2の側面2sには、そのドア開口部3よりもスライドドア4の開方向となる位置にバックドア14の操作スイッチ56が設けられることとした。
【0094】
しかし、これに限らず、例えば、サンルーフ装置等、スライドドア以外の開閉体を対象とする車両用開閉体制御装置に適用してもよい。更に、開閉体の開方向に設けられた操作スイッチ56は、バックドア14の操作入力部55以外の操作スイッチ56であってもよい。そして、その操作スイッチ56に対する操作入力により作動を開始する車載装置については、必ずしもバックドア14のような可動部材を駆動するものでなくともよい。
【符号の説明】
【0095】
2…車体
3…ドア開口部(開口部)
4…スライドドア(開閉体)
4X…移動範囲
10…スライドドア装置(車両用開閉体制御装置)
14…バックドア(車載装置)
31…PSDアクチュエータ(駆動装置)
35…PSDECU
56…操作スイッチ
70a…駆動制御部
70b…移動位置検出部
70c…開作動規制領域設定部
Xsd…移動位置
Xo…全開位置
α…開作動規制領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12