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  • 特開-粘着性組成物および粘着性加工品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023563
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】粘着性組成物および粘着性加工品
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230209BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 157/02 20060101ALI20230209BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230209BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J157/02
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129189
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 庸祐
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】金谷 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】川辺 邦昭
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF061
4J040DN031
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA08
4J040LA10
(57)【要約】
【課題】薄膜でも十分な粘着性を有し、かつ透明性が高い粘着層を得ることができる粘着性組成物を提供すること。
【解決手段】上記課題を解決する粘着性組成物は、47質量部以上99質量部以下の(メタ)アクリル樹脂(A)と、0.5質量部以上50質量部以下の、前記(メタ)アクリル樹脂(A)とは異なる(共)重合体(B)と、0.5質量部以上3質量部以下の架橋剤(C)と、を含有し(ただし、(メタ)アクリル樹脂(A)、(共)重合体(B)、および架橋剤(C)の含有量の合計を100質量部とする)、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、特定の要件(A-1)および(A-2)を満たし、かつ、前記(共)重合体(B)は、特定の要件(B-1)~(B-5)をすべて満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
47質量部以上99質量部以下の(メタ)アクリル樹脂(A)と、
0.5質量部以上50質量部以下の、前記(メタ)アクリル樹脂(A)とは異なる(共)重合体(B)と、
0.5質量部以上3質量部以下の架橋剤(C)と、
を含有し(ただし、(メタ)アクリル樹脂(A)、(共)重合体(B)、および架橋剤(C)の含有量の合計を100質量部とする)、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、下記要件(A-1)および(A-2)を満たし、かつ、
前記(共)重合体(B)は、下記要件(B-1)~(B-5)をすべて満たす、
粘着性組成物。
(A-1)炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、水酸基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、を含有する。
(A-2)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-80℃以上0℃以下の範囲にある。
(B-1)イソプロペニルトルエンに由来する構造単位を、(共)重合体(B)の構造単位の全量に対して20モル%以上含む。
(B-2)JIS K2207に準拠して測定された軟化点が80℃以上120℃以下の範囲にある。
(B-3)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が30℃以上70℃以下の範囲にある。
(B-4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算の、数平均分子量(Mn)が750以上1200以下の範囲にあり、z平均分子量(Mz)が2000以上3000以下の範囲にあり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.5以上1.8以下である。
(B-5)溶解度パラメータが、9.80(cal/cm1/2以下である。
【請求項2】
前記(共)重合体(B)は、下記要件(B-6)を満たす、
請求項1に記載の粘着性組成物。
(B-6)炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を、前記(共)重合体(B)の全構造単位の全量に対して10モル%以上30モル%以下含む。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着性組成物から得られる粘着層を有し、
テープ、ラベル、シートまたは両面テープである、
粘着性加工品。
【請求項4】
前記粘着層の厚みが5μm以上50μm以下である、
請求項3に記載の粘着性加工品。
【請求項5】
JIS K7361に準拠して測定される全光線透過率が87%以上である、
請求項3または4に記載の粘着性加工品。
【請求項6】
被着体であるSUSに、前記粘着層を介して貼り付けたとき、180°ピール試験により測定される粘着力が10N/25mm以上である、
請求項3~5のいずれか1項に記載の粘着性加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物および粘着性加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤(感圧接着剤ともいう)は、簡便に使用でき、かつ、プラスチック、紙類、金属、ガラスなどの種々の対象物への接着性を有する。したがって、テープ、ラベル、シートおよび両面テープなどの粘着性加工品の粘着層として広く利用されている。上記粘着剤に使用される組成物(粘着性組成物)としては、アクリル樹脂またはスチレン樹脂(スチレン系ブロックコポリマーなど)をベースポリマーとする組成物が一般的である。
【0003】
特に、アクリル樹脂をベースポリマーとする粘着性組成物は、透明性に優れ、かつ、紙類、金属、ガラスなどの極性を有する被着体への粘着性も優れることが知られている。
【0004】
一方で、電子機器などの薄型化に伴い、内部の部材を張り合わせる両面テープにも薄膜化が求められつつある。そのため、粘着性組成物には、薄い粘着層としたときにも、十分な粘着性および密着性を有することが望まれる。
【0005】
上記の要求に対し、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、および石油系樹脂などの粘着付与樹脂をアクリル粘着性組成物に添加して、粘着性組成物の粘着性をより高める方法が提案されている。たとえば、特許文献1には、ロジン系樹脂など、(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が低い粘着付与樹脂をアクリル粘着性組成物に添加することで、常温および高温での接着力をともに発揮させ得ることが記載されている。特許文献1には、上記粘着付与樹脂を、粘着性組成物のフィルム化したときのヘイズ値が15~95%となるように添加すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64-16882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、上記ロジン系樹脂などの粘着付与樹脂の添加により、粘着性組成物の粘着性をより高め得ると記載されている。しかし、特許文献1にも記載されているように、上記粘着付与樹脂を添加すると、粘着性組成物の透明性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄膜でも十分な粘着性を有し、かつ透明性が高い粘着層を得ることができる粘着性組成物、および当該粘着性組成物から得られる粘着層を有する粘着性加工品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は以下の粘着性組成物を提供する。
47質量部以上99質量部以下の(メタ)アクリル樹脂(A)と、0.5質量部以上50質量部以下の、前記(メタ)アクリル樹脂(A)とは異なる(共)重合体(B)と、0.5質量部以上3質量部以下の架橋剤(C)と、を含有し(ただし、(メタ)アクリル樹脂(A)、(共)重合体(B)、および架橋剤(C)の含有量の合計を100質量部とする)、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、下記要件(A-1)および(A-2)を満たし、かつ、前記(共)重合体(B)は、下記要件(B-1)~(B-5)をすべて満たす、粘着性組成物。
(A-1)炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、水酸基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、を含有する。
(A-2)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-80℃以上0℃以下の範囲にある。
(B-1)イソプロペニルトルエンに由来する構造単位を、(共)重合体(B)の構造単位の全量に対して20モル%以上含む。
(B-2)JIS K2207に準拠して測定された軟化点が80℃以上120℃以下の範囲にある。
(B-3)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が30℃以上70℃以下の範囲にある。
(B-4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算の、数平均分子量(Mn)が750以上1200以下の範囲にあり、z平均分子量(Mz)が2000以上3000以下の範囲にあり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.5以上1.8以下である。
(B-5)溶解度パラメータが、9.80(cal/cm1/2以下である。
【0010】
また、本発明は以下の粘着性加工品も提供する。
上記粘着性組成物から得られる粘着層を有し、テープ、ラベル、シートまたは両面テープである、粘着性加工品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着性組成物によれば、薄膜でも十分な粘着性を有し、かつ透明性が高い粘着層を得ることができる。また、当該粘着性組成物から得られる粘着層を有する粘着性加工品は、各種用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1、2、および比較例1~7の粘着性加工品の全光線透過率と、当該粘着性加工品の粘着層の粘着力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、特定の要件を満たす(メタ)アクリル樹脂(A)、特定の要件を満たす(共)重合体(B)、および架橋剤(C)を含有する粘着性組成物に関する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは「アクリル、メタクリル、またはその両方」を意味し、(メタ)アクリレートとは「アクリレート、メタクリレート、またはその両方」を意味し、(共)重合体とは「単独重合体、共重合体、またはその両方」を意味する。
【0014】
[(メタ)アクリル樹脂(A)]
(メタ)アクリル樹脂(A)は、アクリル系モノマーまたはメタクリル系モノマーの(共)重合体である。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、以下の要件(A-1)および(A-2)を満たす。
(A-1)炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、水酸基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、を含有する。
(A-2)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-80℃以上0℃以下の範囲にある。
【0016】
(要件(A-1)について)
要件(A-1)は、本実施形態に関する粘着性組成物の粘着性を高めるための要件である。
【0017】
具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)が、炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含有すると、(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以下となり、粘着性組成物の粘着性がより高まる。
【0018】
上記観点からは、上記炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、炭素数が1以上10以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が2以上8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、上記アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0019】
上記炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、および(メタ)アクリル酸ラウリルなどが含まれる。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂(A)の構造単位の全量に対する、上記炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の量は、50モル%以上99モル%以下が好ましく、55モル%以上95モル%以下がより好ましく、60モル%以上90モル%以下がさらに好ましい。
【0021】
また、(メタ)アクリル樹脂(A)が、水酸基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含有すると、架橋剤(C)による架橋点が増えるため、粘着性組成物の架橋密度が高まって高分子量化しやすくなる。このような粘着性組成物によれば、高分子間の絡み合いが強くなり、圧着時の粘着性が低下しにくい。
【0022】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートは、その分子中に水酸基を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。上記水酸基を含有する(メタ)アクリレートの例には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよびN-メチロール(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。これらのうち、上記観点からは、上記水酸基を含有する(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂(A)の構造単位の全量に対する、上記水酸基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、0.1モル%以上5モル%以下が好ましく、0.2モル%以上3モル%以下がより好ましく、0.3モル%以上2モル%以下がさらに好ましい。
【0024】
なお、(メタ)アクリル樹脂(A)は、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲において、上記炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートや水酸基を含有する(メタ)アクリレートと重合可能なモノマー(またはオリゴマー)由来の構造単位をさらに有していてもよい。当該モノマーの例には、架橋剤(C)と反応して、架橋構造を形成可能なモノマー(またはそのオリゴマー)や、ビニル系モノマー(またはそのオリゴマー)が含まれる。架橋構造を形成可能なモノマーの例には、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。一方、ビニル系モノマーの例には、スチレン、および酢酸ビニルなどが含まれる。
【0025】
(要件(A-2)について)
要件(A-2)は、本実施形態に関する粘着性組成物の粘着性を、より広い温度範囲で好適に発揮させるための要件である。
【0026】
具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)が、示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が-80℃以上0℃以下の範囲にある共重合体であると、薄膜状の粘着層とした粘着性組成物に広い温度範囲で粘着性を発現させることができる。上記観点からは、(メタ)アクリル樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が-70℃以上-5℃以下の範囲にあることが好ましく、-60℃以上-10℃以下の範囲にあることがより好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、(メタ)アクリル樹脂(A)を重合する際に使用する、炭素数が1以上12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートや、水酸基を含有する(メタ)アクリレートの種類、比率などによって調整できる。
【0028】
本実施形態において、(メタ)アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、下記FOXの式により求められる理論計算値から算出できる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
(式中、Tgは、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(K)であり、W1、W2、・・・、Wnは、各モノマーの重量分率であり、Tg1、Tg2、・・・、Tgnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度である)
上記計算に用いるホモポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができる。
【0029】
(合成法)
上記要件(A-1)および(A-2)を満たす(メタ)アクリル樹脂(A)は、上記各構造単位の材料となるモノマー(またはオリゴマー)を用いて、公知の重合方法により合成して得られる。上記重合方法は、バルク重合法、溶液重合法、および懸濁重合法などを含むラジカル重合法であれば特に限定されない。これらのうち、(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)や、その他の特性の制御が容易であるとの観点で、溶液重合法が好ましい。
【0030】
重合時には、重合開始剤を用いてもよい。上記重合開始剤の例には、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシピバレート、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ラウリロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、過酸化-ジ-t-ブチル、アゾジシクロヘキシルカルボニトリル、α,α-アゾジイソ酪酸ジメチル、コハク酸過酸化物、ジクメン過酸化物、およびジクロル過酸化ベンゾイルなどが含まれる。
【0031】
上記溶液重合に用いる溶媒の例には、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、およびメチルエチルケトンなどが含まれる。
【0032】
[(共)重合体(B)]
(共)重合体(B)は、(メタ)アクリル樹脂(A)とは異なる(共)重合体であり、かつ、下記要件(B-1)~(B-5)をすべて満たす(共)重合体である。
【0033】
(B-1)イソプロペニルトルエンに由来する構造単位を(共)重合体(B)の構造単位の全量に対して20モル%以上含む。
(B-2)JIS K2207に準拠して測定された軟化点が80℃以上120℃以下の範囲にある。
(B-3)示差走査熱量計(DSC)で測定されたガラス転移温度(Tg)が30℃以上70℃以下の範囲にある。
(B-4)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算の、数平均分子量(Mn)が750以上1200以下の範囲にあり、z平均分子量(Mz)が2000以上3000以下の範囲にあり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.5以上1.8以下である。
(B-5)溶解度パラメータが、9.80(cal/cm1/2以下である。
【0034】
(要件(B-1)について)
要件(B-1)は、本実施形態の粘着性組成物の透明性を低下させずに粘着性を高めるための要件である。
【0035】
具体的には、(共)重合体(B)が、その構造単位の全量に対して20モル%以上のイソプロペニルトルエン(o-イソプロペニルトルエン、m-イソプロペニルトルエン、p-イソプロペニルトルエンの同位体を含む)に由来する構造単位を含有すると、(共)重合体(B)の溶解度パラメータ(SP値)が(メタ)アクリル樹脂(A)のSP値(8.6~9.1)と近くなる。したがって、(メタ)アクリル樹脂(A)と(共)重合体(B)とが相溶しやすくなり、(共)重合体(B)が(メタ)アクリル樹脂(A)中に微分散しやすくなると考えられる。
【0036】
(共)重合体(B)の構造単位の全量に対する、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量は、30モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。上記イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量の上限は特に限定されないが、後述のように、当該(共)重合体(B)は、炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物からなるモノマー由来の構造を10モル%以上含むことが好ましい。したがって、イソプロペニルトルエン由来の構成単位の量は90モル%以下が好ましく、89モル%以下がより好ましく、88モル%以下がさらに好ましい。
【0037】
(要件(B-2)について)
要件(B-2)は、本実施形態の粘着性組成物の粘度を、所望の範囲にするための要件である。
【0038】
具体的には、(共)重合体(B)の示差走査熱量計(DSC)で測定された軟化点が80℃以上120℃以下の範囲にあると、粘着性組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすい。つまり、粘着性組成物を基材に塗布しやすくなる。上記観点から、(共)重合体(B)の軟化点は、85℃以上115℃以下が好ましく、90℃以上110℃以下がより好ましく、95℃以上105℃以下がさらに好ましい。
【0039】
(共)重合体(B)の軟化点は、共重合するモノマー種や分子量、分子量分布などによって調整できる。
【0040】
(要件(B-3)について)
要件(B-3)は、本実施形態の粘着性組成物の耐熱性を高めつつ、透明性および粘着性の両者を好適な範囲に調整するための要件である。
【0041】
具体的には、(共)重合体(B)のJIS K2207に準拠して測定されたガラス転移温度(Tg)が30℃以上であると、粘着性組成物の耐熱性がより高まる。また、(共)重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が70℃以下であると、粘着性組成物の透明性および粘着性の両者が好適な範囲となりやすい。上記観点から、(共)重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は35℃以上65℃以下が好ましく、40℃以上60℃以下がより好ましく、45℃以上55℃以下がさらに好ましい。
【0042】
上記(共)重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、共重合するモノマー種や分子量、分子量分布などによって調整できる。
【0043】
本発明において、(共)重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、上述のFOXの式により求められる理論計算値から算出できる。
【0044】
(要件(B-4)について)
要件(B-4)は、本実施形態に関する粘着性組成物の透明性を低下させずに粘着性を高めるための要件である。
【0045】
具体的には、(共)重合体(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が750以上1200以下の範囲にあり、z平均分子量(Mz)が2000以上3000以下の範囲にあり、かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.5以上1.8以下である。数平均分子量(Mn)が当該範囲であると、粘着性が低下しにくい。また、z平均分子量(Mz)が当該範囲であると透明性が維持される。さらに、分散度(Mw/Mn)が当該範囲であると、粘着性が向上する。
【0046】
(共)重合体(B)の上記数平均分子量(Mn)は780以上1180以下が好ましく、800以上1150以下がより好ましく、850以上1100以下がさらに好ましい。
【0047】
また、(共)重合体(B)の上記z平均分子量(Mz)は2050以上2800以下が好ましく、2100以上2500以下がより好ましい。
【0048】
さらに、(共)重合体(B)の上記重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、1.51以上1.7以下が好ましく、1.52以上1.6以下がより好ましい。
【0049】
上記(共)重合体(B)の数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、共重合するモノマー種や減圧蒸留することなどによって上記範囲に調整できる。
【0050】
(要件(B-5)について
要件(B-5)は、本実施形態の粘着性組成物の透明性を良好にするための要件である。
【0051】
具体的には、(共)重合体(B)の溶解度パラメータが9.80(cal/cm1/2以下であると、(メタ)アクリル樹脂(A)の溶解度パラメータと近くなる。これにより、(メタ)アクリル樹脂(A)と(共)重合体(B)との相溶性が非常に良好になり、(メタ)アクリル樹脂(A)中の(共)重合体(B)が、視認され難くなる。つまり、粘着性組成物の透明性が良好になる。(共)重合体(B)の溶解度パラメータは、9.50(cal/cm1/2以上9.79(cal/cm1/2以下が好ましく、9.56(cal/cm1/2以上9.78(cal/cm1/2以下がより好ましい。
【0052】
上記(共)重合体(B)および(メタ)アクリル樹脂(A)の溶解度パラメータは、Fedorsの式により特定する。Fedorsの式は、凝集エネルギー密度やモル体積(モル分子容)などからSP値を算出する計算式であり、R.F.Fedors著「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」(POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974年2月発行,Val.14,No.2、P147-152)に記載されている。すなわち、Fedorsの式により算出されるSP値は、化合物の分子構造により決定される計算値である。
【0053】
溶解度パラメータは、(共)重合体(B)を構成する構成単位の種類や組み合わせ、比率等によって調整可能である。
【0054】
(その他の要件について)
(共)重合体(B)は、さらに下記(B-6)を満たすことが好ましい。
【0055】
(B-6)炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を、(共)重合体(B)の全構造単位の全量に対して10モル%以上30モル%以下含む。
【0056】
(共)重合体(B)が炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位を有すると、(共)重合体(B)が架橋したりすることが可能となり、z平均分子量が上述の範囲になりやすい。
【0057】
一方、炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位の量を30モル%以下であると、(共)重合体(B)中のイソプロピルトルエンの量が十分に多くなり、上述のように粘着性組成物の透明性が良好になる。
【0058】
炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物の例には、石油精製、分解時に副生する、炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物を主成分として含む、C留分およびC留分などが含まれる。
【0059】
上記C留分およびC留分は、常圧下における沸点範囲が通常-15~+45℃の留分である。上記C留分およびC留分は、1-ブテン、イソブテン、2-ブテン、1,3-ブタジエン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-ペンテン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、およびシクロペンタジエンなどの不飽和脂肪族炭化水素化合物を含んでいる。
【0060】
上記C留分およびC留分は、製油所などにおける原油等の常圧蒸留(トッピング)に際して副生するガス留分を含む軽質油留分、石油のクラッキングまたはリフォーミング処理工程において副生する同様な軽質油留分、および石油化学工場における石油ナフサ分解などにおいて得られるガスを含む軽質油留分などを含む石油留分をそのまま使用してもよいし、または蒸留、抽出その他の処理を加えて所望の留分として使用してもよい。
【0061】
(共)重合体(B)の構造単位の全量に対する、炭素数4または5の不飽和脂肪族炭化水素化合物に由来する構造単位の含有量は、10モル%以上30モル%以下がより好ましく、11モル%以上25モル%以下がさらに好ましく、12モル%以上20モル%以下が特に好ましい。
【0062】
(その他のモノマーについて)
(共)重合体(B)は、必要に応じて、上述したイソプロペニルトルエンまたは炭素数4または5の不飽和炭化水素化合物以外のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。イソプロペニルトルエンおよび炭素数4または5の不飽和炭化水素化合物と、これら以外のモノマーとを共重合とすると、(共)重合体(B)の軟化点やガラス転移温度(Tg)などの調整が容易となる。
【0063】
上記以外のモノマーの例には、ビニル芳香族化合物や、炭素数4または5以外の不飽和脂肪族炭化水素化合物などが含まれる。
【0064】
上記ビニル芳香族化合物の例には、芳香環に置換基を有する置換スチレン、芳香環に置換基を有する置換α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマーが含まれる。上記芳香環が有する置換基の例には、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数6以上20以下のアリール基、およびハロゲン原子などが含まれる。上記ビニル芳香族化合物は、芳香環に1つの上記置換基を有してもよいし、芳香環に2つ以上の上記置換基を有してもよい。
【0065】
上記置換スチレンの具体例には、メチルスチレン(α-メチルスチレンを除く)、エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、および3,4-ジクロロスチレンなどが含まれる。
【0066】
(合成法)
(共)重合体(B)は、イソプロペニルトルエンと、炭素数4または5の不飽和炭化水素化合物と、その他のモノマーなどとを、公知の重合方法により合成することで得られる。上記重合は、カチオン重合であることが好ましく、フリーデル-クラフツ触媒の存在化で行われることがより好ましい。
【0067】
上記フリーデル-クラフツ触媒は、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ジクロロモノエチルアルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三弗化ホウ素、および、三弗化ホウ素のエーテル錯体またはフェノール錯体などの各種錯体などを含む、公知のフリーデル-クラフツ触媒であれば特に限定されない。これらのうち、三弗化ホウ素のフェノール錯体が好ましい。上記フリーデル-クラフツ触媒の使用量は、原料モノマーの合計100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下とすることができ、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
【0068】
重合反応は、重合反応時に生じる反応熱の除去、反応液粘度の抑制、分子量の調整などの観点から、原料モノマーの濃度が10~60質量%程度になるように溶媒を用いて行うことが好ましい。上記溶媒の例には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンなどを含む脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素;ならびに、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびメシチレンなどを含む芳香族炭化水素;などが含まれる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
上記重合は、反応器内において、原料モノマーを、上記触媒の存在下、上記溶媒中で重合反応させて行うことができる。上記重合は、1段で行うこともできるが、複数段に分けて行うことが好ましい。このときの重合温度は、原料組成や目的とする分子量領域等によって異なるが、-50~+50℃であることが好ましい。また、このときの反応時間は、10分~10時間が好ましい。重合終了後は、塩基性水溶液、またはメタノ-ルなどのアルコールなどを含む塩基性化合物、を用いて触媒を分解した後、水洗し、未反応の原料および溶媒などをストリッピングや蒸留することによって除き、目的の(共)重合体(B)を得ることができる。
【0070】
上記未反応の原料および溶媒などの除去は、たとえば、常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留などを含む物質毎の蒸気圧の差を利用して濃縮する操作、ならびに、オープンカラムおよびフラッシュカラムなどを含むシリカゲルなどの充填剤に対する親和性や分子サイズの差を利用して濃縮する方法により行うことができる。これらのうち、熱分解抑制や濃縮効率の観点から減圧蒸留が好ましい。上記減圧の範囲は特に限定されない。一方で、(共)重合体(B)の熱分解を抑制する観点からは、加熱温度は250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることがさらに好ましい。
【0071】
[架橋剤(C)]
架橋剤(C)は、(メタ)アクリル樹脂(A)を架橋して、本実施形態に関する粘着性組成物の粘着性をより高めることが可能であれば特に制限されない。
【0072】
架橋剤(C)の例には、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、およびレソルシンジグリシジルエーテルなどを含むエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、およびポリイソシアネートなどを含むイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネートなどを含むアジリジン系化合物;ならびにヘキサメトキシメチロールメラミンなどを含むメラミン系化合物などが含まれる。架橋剤(C)は、一種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
架橋剤(C)は、架橋剤(C)中の(メタ)アクリル樹脂(A)と結合できる官能基数(架橋剤(C)がブロックイソシアネートを含むときは、ブロック剤の解離により生成する官能基数を含む。)が、(メタ)アクリル樹脂(A)が有する官能基数よりも多くならない程度に配合されることが好ましいが、架橋反応により新たな官能基が生じるときや、架橋反応の進行が遅いときなどは、当該値より多く配合されてもよい。
【0074】
[含有量比]
本実施形態に関する粘着性組成物は、47質量部以上99質量部以下の(メタ)アクリル樹脂(A)、0.5質量部以上50質量部以下の(共)重合体(B)、および、0.5質量部以上3質量部以下の架橋剤(C)を含有する。ただし、(メタ)アクリル樹脂(A)、(共)重合体(B)および架橋剤(C)の含有量の合計を100質量部とする。
【0075】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が47質量部以上であると、比較的多量の(メタ)アクリル樹脂(A)が粘着性組成物に含有されることになり、粘着性組成物が架橋構造を形成しやすい。その結果、粘着性組成物が高分子量化し、貼り合わせ時に粘着性の低下が生じにくい。一方で、上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が99質量部以下であると、十分な量の(共)重合体(B)および架橋剤(C)が粘着性組成物に含有されることになる。したがって、粘着性組成物の粘着性が良好になりやすい。上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、57.2質量部以上94質量部以下が好ましく、62.5質量部以上88.5質量部以下がより好ましい。
【0076】
上記(共)重合体(B)の含有量が0.5質量部以上であると、粘着性組成物の粘着性が高まる。一方、上記(共)重合体(B)の含有量が50質量部以下であると、粘着性組成物の透明性が高まる。上記観点から、上記(共)重合体(B)の含有量は、5質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0077】
上記架橋剤(C)の含有量が0.5質量部以上であると、粘着性組成物が適度に凝集しやすく、粘着性組成物を剥離した後の被着体の表面に、粘着性組成物が残留しにくい。上記架橋剤(C)の含有量が3質量部以下であると、(メタ)アクリル樹脂(A)や(共)重合体(B)の量を十分に含むため、粘着性が良好になりやすい。上記架橋剤(C)の含有量は、1質量部以上2.8質量部以下が好ましく、1.5質量部以上2.5質量部以下がより好ましい。
【0078】
なお、本実施形態に関する粘着性組成物は、ロジン樹脂またはテルペン樹脂を実質的に含まないことが好ましい。ロジン樹脂またはテルペン樹脂は、粘着性組成物を着色または変色させてしまう。なお、上記着色などを抑制するためにロジン樹脂またはテルペン樹脂を水添した水添樹脂ものを粘着性組成物に使用することがあるが、これらは粘着性の保持力を低下させやすい。さらには、ロジン樹脂またはテルペン樹脂は酸価を有するため、これらを含む粘着性組成物を金属に付着させると、当該金属を腐食させてしまうおそれがある。
【0079】
なお、「実質的に含まない」とは、粘着性組成物の全質量に対するロジン樹脂またはテルペン樹脂の含有量が0.1質量%以下であることを意味する。
【0080】
[製造方法]
本実施形態に関する粘着性組成物は、上述した(メタ)アクリル樹脂(A)、(共)重合体(B)、および架橋剤(C)を、上述した含有量に応じた配合量で、任意に使用される溶媒とともに混合して、調製することができる。
【0081】
上記溶媒の例には、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、およびメチルエチルケトンなどが含まれる。
【0082】
[用途]
本実施形態に関する粘着性組成物は、テープ、ラベル、シートおよび両面テープなどの粘着性加工品として、粘着性が要求される各種用途に使用することができる。
【0083】
粘着性加工品の形状は特に制限されないが、例えば、基材と、上記粘着性組成物から得られる粘着層と、を有する構成とすることができる。なお、粘着層の両面に基材を有していてもよい。
【0084】
上記粘着層の厚みは特に限定されないものの、所望の粘着性を上記粘着性加工品に付与し、かつ、粘着性加工品の生産性への影響を低くする観点からは、5μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下がさらに好ましい。上述の粘着性組成物は、薄膜でも粘着性を十分に発揮可能である。したがって、例えば粘着層の厚みを30μm以下としても、十分な粘着力が得られる。
【0085】
また、基材の種類は特に制限されず、樹脂フィルム等であってもよく、金属フィルム等であってもよい。基材の形状も特に限定されず、平板状であってもよく、立体的な構造を有していてもよく、用途に応じて適宜選択される。また、その透明性は特に制限されないが、上述のように、粘着性組成物は透明性に優れる。したがって、粘着性加工品を透明性が要求される用途にも使用することが可能であり、この場合、基材も透明性に優れることが好ましい。
【0086】
たとえば、粘着性加工品に透明性が要求される場合、粘着性加工品のJIS K7361に準拠して測定される全光線透過率は87%以上が好ましい。このような用途では、基材に透明なPETフィルム等を使用することが好ましい。
【0087】
また、粘着性加工品を被着体であるSUSに、粘着性加工品を、粘着層を介して貼り付けたときの、180°ピール試験により測定される粘着力は9N/25mm以上が好ましく、10N/25mm以上がより好ましく、10.5N/25mm以上がさらに好ましい。
【0088】
上記粘着性加工品は、基材の表面に上記粘着性組成物を塗布し、塗布された上記粘着性組成物を乾燥させて各成分を架橋させることにより、作製することができる。
【0089】
上記塗布方法は特に限定されず、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、およびダイコーター法などの公知の方法で塗布すればよい。上記乾燥条件も特に限定されず、80~200℃で10秒~10分間乾燥することが好ましく、80~170℃で15秒~5分間乾燥することがより好ましい。
【実施例0090】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を説明するが、本発明は何ら以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
[物性の測定]
<構造単位の含有率>
(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)の構造単位の含有割合(モル%)は、以下の条件で測定した13C-NMRスペクトルの解析により求めた。
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII cryo-500型核磁気共鳴装置
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(-55~195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:128回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1(体積比))
試料濃度:60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:δδシグナル29.73ppm
【0092】
<軟化点>
(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)の軟化点は、JIS K2207に準拠し、環球法により測定した。
【0093】
<ガラス転移温度(Tg)>
(メタ)アクリル樹脂(A)および(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)のガラス転移温度(Tg)は、これらの樹脂を簡易密閉パンに封入し、窒素気流下、-100℃から200℃まで、10℃/分の速度で昇温させた際のDSC曲線をJIS K7121に準拠して解析して求めた。
【0094】
<数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、重量平均分子量(Mw/Mn)、および分子量400以下の化合物の含有率>
(メタ)アクリル樹脂(A)および(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。そして、市販の単分散標準ポリスチレンを用いた検量線から、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)を求め、Mw/Mnを算出した。
装置:GPC HLC-8320(東ソー社製)
溶剤:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:20mg/mL テトラヒドロフラン溶液
温度:40℃
【0095】
<溶解度パラメータ(SP値)>
(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)の溶解度パラメータは、Fedorsの式より計算した。Fedorsの式は、凝集エネルギー密度やモル体積(モル分子容)などからSP値を算出する計算式であり、R.F.Fedors著「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」(POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974年2月発行,Val.14,No.2、P147-152)に記載されている。すなわち、Fedorsの式により算出されるSP値は、化合物の分子構造により決定される計算値である。
【0096】
[(メタ)アクリル樹脂(A)の合成]
以下のモノマーを用いて、(メタ)アクリル樹脂(A)を合成した。
【0097】
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)
アクリル酸エチル(EA)
酢酸ビニル(VA)
アクリル酸(AA)
アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)
【0098】
((メタ)アクリル樹脂(A1)の合成)
攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に、重合溶媒としての350質量部の酢酸エチル、および40質量部のトルエンを仕込み、窒素置換し、昇温した。75℃に昇温した後、反応器に、316質量部の2EHA、43質量部のEA、50質量部のVA、9質量部のAA、2質量部のHEA、および重合開始剤としての2質量部のベンゾイルパーオキサイドを混合した溶液を連続的に添加し、5時間反応させた。5時間後、120質量部のトルエンで希釈して、固形分45%の(メタ)アクリル樹脂(A1)を含む酢酸エチル/トルエン溶液を得た。
【0099】
得られた溶液から溶媒を揮発させて得た(メタ)アクリル樹脂(A1)のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、-60℃であった。
【0100】
[(共)重合体(B)の合成]
以下のように、(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)を調製した。表1に、組成、軟化点、ガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)、および溶解度パラメータを示す。なお、表1中、「IPT」とは、イソプロペニルトルエンを表し、Cとは、石油ナフサの熱分解によって得られるC留分を表す。C留分は、主に炭素数5の不飽和脂肪族炭化水素化合物を含む。
【0101】
((共)重合体(B1)の合成)
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブの1段目に、イソプロペニルトルエン、石油ナフサの熱分解によって得られるC留分および脱水精製したトルエンの混合物(モノマーの合計/トルエン=1/1(容量比))と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)と、を連続的に供給し、5℃で重合反応させた。イソプロペニルトルエンとC留分との質量比(イソプロペニルトルエン/C留分)は71/29とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は116ミリリットル/時間とした。
【0102】
当該反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた。そして、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった時点で、連続的に反応混合物をオートクレーブから排出し、滞留時間の3倍となった時点で1リットルの反応混合物を採取して重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰させた。さらに、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、イソプロペニルトルエン・C留分の共重合体である、(共)重合体(B1)を得た。(共)重合体(B1)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が87モル%、軟化点が95℃、ガラス転移温度(Tg)が42℃、数平均分子量(Mn)が890、z平均分子量(Mz)が2120、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.55であり、溶解度パラメータが、9.77(cal/cm1/2であった。
【0103】
((共)重合体(B2)の合成)
イソプロペニルトルエンとC留分との質量比(イソプロペニルトルエン/C留分)は56/44とし、希釈した触媒の供給量は84ミリリットル/時間とした以外は(共)重合体(B1)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエン・C留分の共重合体である、(共)重合体(B2)を得た。(共)重合体(B2)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が88モル%、軟化点が105℃、ガラス転移温度(Tg)が50℃、数平均分子量(Mn)が1050、z平均分子量(Mz)が2380、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.54であり、溶解度パラメータが、9.78(cal/cm1/2であったった。
【0104】
((共)重合体(B3)の合成)
イソプロペニルトルエンとC留分との質量比(イソプロペニルトルエン/C留分)は90/10とし、希釈した触媒の供給量は105ミリリットル/時間とした以外は(共)重合体(B1)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエン・C留分の共重合体である、(共)重合体(B3)を得た。(共)重合体(B3)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が96モル%、軟化点が97℃、ガラス転移温度(Tg)が41℃、数平均分子量(Mn)が710、z平均分子量(Mz)が1510、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.45であり、溶解度パラメータが、9.86(cal/cm1/2であった。
【0105】
((共)重合体(B4)の合成)
イソプロペニルトルエンとC留分との質量比(イソプロペニルトルエン/C留分)は90/10とし、希釈した触媒の供給量は56ミリリットル/時間とした以外は(共)重合体(B1)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエン・C留分の共重合体である、(共)重合体(B4)を得た。(共)重合体(B4)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が96モル%、軟化点が124℃、ガラス転移温度(Tg)が62℃、数平均分子量(Mn)が1140、z平均分子量(Mz)が3100、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.74であり、溶解度パラメータが、9.86(cal/cm1/2であった。
【0106】
(重合体(B5)の合成)
石油ナフサの熱分解によって得られるC留分を供給せず、さらに希釈した触媒の供給量は105ミリリットル/時間とした以外は(共)重合体(B1)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエンの単独重合体である、(共)重合体(B5)を得た。(共)重合体(B5)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が100モル%、軟化点が100℃、ガラス転移温度(Tg)が45℃、数平均分子量(Mn)が760、z平均分子量(Mz)が1700、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.50であり、溶解度パラメータが、9.90(cal/cm1/2であった。
【0107】
((共)重合体(B6)の合成)
希釈した触媒の供給量は82ミリリットル/時間とした以外は、(共)重合体(B5)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエンの単独重合体である、(共)重合体(B6)を得た。(共)重合体(B6)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が100モル%、軟化点が118℃、ガラス転移温度(Tg)が62℃、数平均分子量(Mn)が980、z平均分子量(Mz)が2910、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.80であり、溶解度パラメータが、9.90(cal/cm1/2であった。
【0108】
((共)重合体(B7)の合成)
希釈した触媒の供給量は68ミリリットル/時間とした以外は、(共)重合体(B5)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエンの単独重合体である、(共)重合体(B7)を得た。(共)重合体(B7)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が100モル%、軟化点が133℃、ガラス転移温度(Tg)が72℃、数平均分子量(Mn)が1110、z平均分子量(Mz)が3510、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.89であり、溶解度パラメータが、9.90(cal/cm1/2であった。
【0109】
((共)重合体(B8)の合成)
希釈した触媒の供給量は53ミリリットル/時間とした以外は、(共)重合体(B5)の合成と同じ方法で、イソプロペニルトルエンの単独重合体である、(共)重合体(B8)を得た。(共)重合体(B8)は、イソプロペニルトルエンに由来する構造単位の含有量が100モル%、軟化点が145℃、ガラス転移温度(Tg)が78℃、数平均分子量(Mn)が1520、z平均分子量(Mz)が4740、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.99であり、溶解度パラメータが、9.90(cal/cm1/2であった。
【0110】
【表1】
【0111】
[架橋剤(C)]
架橋剤(C1)として、三井化学株式会社製 タケネートD-101E(イソシアネート系化合物、「タケネート」は同社の登録商標)を使用した。
【0112】
[粘着性加工品の作製および評価]
上記(メタ)アクリル樹脂(A1)を含む酢酸エチル/トルエン溶液と、(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)のいずれかと、架橋剤(C)と、を、溶液中に含有する(メタ)アクリル樹脂(A1)と(共)重合体(B1)~(共)重合体(B8)のいずれかと架橋剤(C)との比率が、表2に記載の質量比になるように室温で混合し、粘着性組成物の酢酸エチル/トルエン溶液を得た。
【0113】
得られた粘着性組成物の酢酸エチル/トルエン溶液を、乾燥後の膜厚が10~50μmになるように剥離紙に塗布し、100℃で10分間乾燥した後、塗布面にPETフィルム 25μmを圧着させ、粘着シートを作製した。50℃、3日間放置し、粘着性組成物を十分に架橋させた。
【0114】
<全光線透過率の測定>
粘着層の膜厚が50μmである上記粘着シートの剥離紙をはがして粘着層を露出させ、厚みが25μmのPETフィルムを上記露出した粘着層に圧着させて試験片を得た。試験片の構成は、PETフィルム/粘着層/PETフィルム=25μm/50μm/25μmとした。そして、JIS K7361に準拠して、上記試験片の全光線透過率を測定した。
【0115】
<粘着力の測定>
粘着層の膜厚が30μmである上記粘着シートを幅25mm、長さ150mmに切断して、試験片とした。上記試験片の上記剥離紙をはがして粘着層を露出させ、23℃の雰囲気下において、ステンレス板(SUS)に上記露出した粘着層を接触させて、2kg質量のゴムロールを2往復させて上記試験片を圧着した。20分間放置後、JIS Z0237に準拠し、300mm/分の速さで180°ピール強度を測定した。
【0116】
作製した粘着性加工品を構成する粘着性組成物の配合、ならびに粘着性加工品の全光線透過率および粘着層の粘着力を、表2に示す。さらに、実施例1、2、および比較例1~7の全光線透過率と粘着力との関係を図1に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表2および図1に示すように、要件(B-1)~(B-5)をすべて満たす(共)重合体(B)を含有する粘着性組成物(実施例1および2)は、要件(B-1)~(B-5)のいずれかを満たさない(共)重合体(B)を含有する粘着性組成物(比較例2~7)よりも、粘着力および透明性の両方が高くなっていた。また、(共)重合体(B)を含まない場合(比較例1)には、粘着力が非常に低かった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、透明性および粘着性がいずれも高い粘着性組成物が提供される。本発明は、特に粘着性組成物の透明性が要求される各種用途において好適に実施することができる。
図1