(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002358
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】クリップ及びクリップ取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 19/10 20060101AFI20221227BHJP
B60R 19/24 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
F16B19/10 B
B60R19/24 E
B60R19/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103554
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 壮平
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA06
3J036GA04
(57)【要約】
【課題】第1部材と第2部材とを備える構成において、第1部材に第2部材を取り付ける際に、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行えるクリップを提供する。
【解決手段】クリップは、基体と、前記基体から突出するピン部と、前記基体に設けられた凹部又は貫通孔である被挿入部と、を有する第1部材と、取付部材に形成された取付孔に挿入されると共に取り付けられ、内側に前記ピン部が挿入されると共に該ピン部に回転可能に取り付けられる筒部と、前記ピン部を前記筒部に挿入すると前記被挿入部に挿入される挿入部と、を有する第2部材と、を備え、前記基体における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部を前記筒部に挿入するときに前記挿入部と接して該挿入部を前記被挿入部へガイドするガイド部が設けられている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体から突出するピン部と、前記基体に設けられた凹部又は貫通孔である被挿入部と、を有する第1部材と、
取付部材に形成された取付孔に挿入されると共に取り付けられ、内側に前記ピン部が挿入されると共に該ピン部に回転可能に取り付けられる筒部と、前記ピン部を前記筒部に挿入すると前記被挿入部に挿入される挿入部と、を有する第2部材と、
を備え、
前記基体における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部を前記筒部に挿入するときに前記挿入部と接して該挿入部を前記被挿入部へガイドするガイド部が設けられている、クリップ。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記被挿入部の開口縁に向けて傾斜する傾斜面である、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記基体における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部と同じ方向に突出する突出部が設けられており、
前記突出部における前記被挿入部側の部分に前記ガイド部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記第2部材は、前記筒部から径方向外側へ延び、途中で折れ曲がり前記筒部の軸方向へ向けて延びるアーム部を有し、
前記挿入部は、前記アーム部の先端部であり、
前記ガイド部は、前記筒部を中心とする前記挿入部の回転軌跡上に配置されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記被挿入部を挟んで両側にそれぞれ配置されている、請求項4に記載のクリップ。
【請求項6】
前記アーム部は、前記先端部が前記被挿入部に挿入される第1回転位置と、前記第1回転位置から前記筒部を中心として回転させたときの第2回転位置との間を移動可能とされ、
前記筒部には、前記アーム部が前記第1回転位置にあるときに前記取付孔に非係合とされ、前記アーム部が前記第2回転位置にあるときに前記取付孔に係合する係合爪が設けられている、請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
基体と、前記基体から突出するピン部と、前記基体に設けられ、前記ピン部と同じ方向に突出する挿入部と、を有する第1部材と、
取付部材に形成された取付孔に挿入されると共に取り付けられ、内側に前記ピン部が挿入されると共に該ピン部に回転可能に取り付けられる筒部と、前記ピン部を前記筒部に挿入すると前記挿入部が挿入される被挿入部と、を有する第2部材と、
を備え、
前記第2部材における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部を前記筒部に挿入するときに前記挿入部と接して該挿入部を前記被挿入部へガイドするガイド部が設けられている、クリップ。
【請求項8】
前記取付部材は、車体であり、
前記第1部材は、前記車体に取り付けられる車両用部品を保持するリテーナである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項9】
取付孔が形成された取付部材と、
前記取付部材に取り付けられた請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のクリップと、
を備えるクリップ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ及びクリップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体にバンパーを取り付けるためのリテーナについて開示されている。このリテーナは、ピン挿入穴を有しており、このピン挿入穴にピン部材のピン部を挿入し、その後ピン部材の操作レバーを90度回転することによってピン部材をリテーナにロックしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、リテーナのピン挿入穴にピン部材のピン部を挿入する際に、操作レバーの向きが正しい向き(言い換えると、操作レバーの回転位置が正しい回転位置)となるように調整しながらピン部材をリテーナに取り付ける必要がある。このため、特許文献1に開示の技術には、リテーナに対するピン部材の位置決めについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、第1部材と第2部材とを備える構成において、第1部材に第2部材を取り付ける際に、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行えるクリップ及びクリップ取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のクリップは、基体と、前記基体から突出するピン部と、前記基体に設けられた凹部又は貫通孔である被挿入部と、を有する第1部材と、取付部材に形成された取付孔に挿入されると共に取り付けられ、内側に前記ピン部が挿入されると共に該ピン部に回転可能に取り付けられる筒部と、前記ピン部を前記筒部に挿入すると前記被挿入部に挿入される挿入部と、を有する第2部材と、を備え、前記基体における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部を前記筒部に挿入するときに前記挿入部と接して該挿入部を前記被挿入部へガイドするガイド部が設けられている。
【0007】
第1態様のクリップでは、第1部材のピン部を筒部に挿入して該ピン部に筒部を取り付け、この取り付け状態で取付部材の取付孔に筒部を挿入して取り付けることで、第1部材が第2部材を介して取付部材に取り付けられる。すなわち、第1部材と第2部材とを備える上記クリップが取付部材に取り付けられる。
ここで上記クリップでは、基体における被挿入部の周辺部にガイド部を設けていることから、第1部材のピン部を第2部材の筒部に挿入すると挿入部がガイド部と接して被挿入部へガイドされる。このように上記クリップでは、ピン部を筒部に挿入する際に、挿入部がガイド部にガイドされるため、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行える。
以上のことから、第1態様のクリップによれば、第1部材に第2部材を取り付ける際に、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0008】
本発明の第2態様のクリップは、第1態様のクリップにおいて、前記ガイド部は、前記被挿入部の開口縁に向けて傾斜する傾斜面である。
【0009】
第2態様のクリップでは、ガイド部が被挿入部の開口縁に向けて傾斜する傾斜面であることから、ガイド部に接した挿入部を被挿入部へスムーズにガイドすることができる。
【0010】
本発明の第3態様のクリップは、第1態様又は第2態様のクリップにおいて、前記基体における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部と同じ方向に突出する突出部が設けられており、前記突出部における前記被挿入部側の部分に前記ガイド部が設けられている。
【0011】
第3態様のクリップでは、基体に設けた突出部にガイド部を設けているため、挿入部と接することで該挿入部から力を受けるガイド部の剛性が向上する。
【0012】
本発明の第4態様のクリップは、第1態様~第3態様のいずれか一態様のクリップにおいて、前記第2部材は、前記筒部から径方向外側へ延び、途中で折れ曲がり前記筒部の軸方向へ向けて延びるアーム部を有し、前記挿入部は、前記アーム部の先端部であり、前記ガイド部は、前記筒部を中心とする前記挿入部の回転軌跡上に配置されている。
【0013】
第4態様のクリップでは、筒部を中心とする挿入部の回転軌跡上にガイド部を配置しているため、例えば、ガイド部が筒部を中心とする挿入部の回転軌跡からずれた位置に配置されている構成と比べて、挿入部を被挿入部へ確実にガイドすることができる。
【0014】
本発明の第5態様のクリップは、第4態様のクリップにおいて、前記ガイド部は、前記被挿入部を挟んで両側にそれぞれ配置されている。
【0015】
第5態様のクリップでは、ガイド部が被挿入部を挟んで両側にそれぞれ配置されていることから、例えば、ガイド部が被挿入部を挟んで片側のみに配置されている構成と比べて、挿入部を被挿入部へ確実にガイドすることができる。
【0016】
本発明の第6態様のクリップは、第5態様のクリップにおいて、前記アーム部は、前記先端部が前記被挿入部に挿入される第1回転位置と、前記第1回転位置から前記筒部を中心として回転させたときの第2回転位置との間を移動可能とされ、前記筒部には、前記アーム部が前記第1回転位置にあるときに前記取付孔に非係合とされ、前記アーム部が前記第2回転位置にあるときに前記取付孔に係合する係合爪が設けられている。
【0017】
第6態様のクリップでは、第2部材のアーム部を第1回転位置から第2回転位置に移動させることで筒部に設けられた係合爪が取付部材の取付孔に係合されて第2部材が取付部材に取り付けられる。また、第2部材のアーム部を第2回転位置から第1回転位置に移動させることで筒部に設けられた係合爪が取付部材の取付孔に非係合となるので、第2部材を取付部材から取り外すことができる。
【0018】
本発明の第7態様のクリップは、基体と、前記基体から突出するピン部と、前記基体に設けられ、前記ピン部と同じ方向に突出する挿入部と、を有する第1部材と、取付部材に形成された取付孔に挿入されると共に取り付けられ、内側に前記ピン部が挿入されると共に該ピン部に回転可能に取り付けられる筒部と、前記ピン部を前記筒部に挿入すると前記挿入部が挿入される被挿入部と、を有する第2部材と、を備え、前記第2部材における前記被挿入部の周辺部には、前記ピン部を前記筒部に挿入するときに前記挿入部と接して該挿入部を前記被挿入部へガイドするガイド部が設けられている。
【0019】
第7態様のクリップでは、第1部材のピン部を筒部に挿入して該ピン部に筒部を取り付け、この取り付け状態で取付部材の取付孔に筒部を挿入して取り付けることで、第1部材が第2部材を介して取付部材に取り付けられる。すなわち、第1部材と第2部材とを備える上記クリップが取付部材に取り付けられる。
ここで上記クリップでは、第2部材における被挿入部の周辺部にガイド部を設けていることから、第1部材のピン部を第2部材の筒部に挿入すると挿入部がガイド部と接して被挿入部へガイドされる。このように上記クリップでは、ピン部を筒部に挿入する際に、挿入部がガイド部にガイドされるため、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行える。
以上のことから、第7態様のクリップによれば、第1部材に第2部材を取り付ける際に、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
本発明の第8態様のクリップは、第1態様~第7態様のいずれか一態様のクリップにおいて、前記取付部材は、車体であり、前記第1部材は、前記車体に取り付けられる車両用部品を保持するリテーナである。
【0021】
本発明の第8態様のクリップでは、リテーナのピン部を筒部に挿入して該ピン部に筒部を取り付け、この取り付け状態で車体の取付孔に筒部を挿入して取り付けることで、リテーナが第2部材を介して車体に取り付けられる。また、リテーナで車両用部品を保持することで、リテーナと第2部材とを備える上記クリップを介して車体に車両用部品を取り付けることができる。
【0022】
本発明の第9態様のクリップ取付構造は、取付孔が形成された取付部材と、前記取付部材に取り付けられた第1態様~第8態様のいずれか一態様のクリップと、を備える。
【0023】
本発明の第9態様のクリップ取付構造では、第1部材のピン部を筒部に挿入して該ピン部に筒部を取り付け、この取り付け状態で取付部材の取付孔に筒部を挿入して取り付けることで、第1部材が第2部材を介して取付部材に取り付けられる。すなわち、第1部材と第2部材とを備えるクリップが取付部材に取り付けられる。
ここでクリップでは、第1部材に第2部材を取り付ける際に、挿入部がガイド部によって被挿入部へガイドされるため、第1部材に対して第2部材が正しい位置に位置決めされる。このようなクリップを用いるため、上記クリップ取付構造では、取付部材に第2部材を介して第1部材を取り付けるときの取付精度が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1部材と第2部材とを備える構成において、第1部材に第2部材を取り付ける際に、第1部材に対する第2部材の位置決めを容易に行えるクリップ及びクリップ取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るクリップを構成するリテーナをピン側から見た正面図である。
【
図2】
図1のリテーナをピン部の位置で長手方向に切断した断面を示す断面図である。
【
図3】
図2の矢印3Xで指し示す部分の拡大図である。
【
図5】
図1のリテーナのピン部周りをピン側から見た拡大正面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るクリップを構成するグロメットの側面図である。
【
図8】
図6の矢印8X方向からグロメットを見た側面図である。
【
図11】リテーナにグロメットを取り付ける前の状態を示す、リテーナ及びグロメットの斜視図である。
【
図12】リテーナにグロメットを取り付ける前の状態を示す、リテーナ及びグロメットの側断面図である。
【
図13】リテーナにグロメットを取り付けるときの状態を示す、リテーナ及びグロメットの拡大正面図である。
【
図14】リテーナのピン部に対してグロメットが正しい位置に仮付けされている状態を示す、リテーナ及びグロメットの拡大正面図である。
【
図15】リテーナにグロメットを取り付けるときの状態を示す、リテーナ及びグロメットの側断面図である。
【
図16】アーム部の先端部がガイド部にガイドされている状態を模式的に示す図である。
【
図17】リテーナのピン部に対してグロメットが正しい位置に仮付けされている状態を示す、リテーナ及びグロメットの拡大側面図である。
【
図18】グロメットに車体が仮付けされている状態を示す、リテーナ及びグロメットの拡大側面図である。
【
図19】グロメットに車体が本付けされている状態を示す、リテーナをピン部と反対側から見た背面図である。
【
図20】操作レバーが第1回転位置にある状態を示すリテーナの背面図である。
【
図21】操作レバーが第2回転位置にある状態を示すリテーナの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係るクリップ及びクリップ取付構造を
図1~
図21を用いて説明する。
【0027】
本実施形態のクリップ20は、
図2及び
図3に示されるように、車両用部品(一例として、バンパー)90を車体(一例として、ボディパネル)100に取り付けるために用いられる部材である。なお、本実施形態の車体100は、本発明の取付部材の一例である。
【0028】
クリップ20は、第1部材の一例としてのリテーナ22と、第2部材の一例としてのグロメット40とを備えている。
【0029】
<リテーナ22>
リテーナ22は、車両用部品90を保持した状態で車体100に取り付けられる部材である。言い換えると、車両用部品90は、リテーナ22を介して車体100に取り付けられる。このリテーナ22は、樹脂で形成されている。具体的には、本実施形態のリテーナ22は、樹脂の一体成形品である。
【0030】
図1~
図3に示されるように、リテーナ22は、基体24と、ピン部26と、被挿入部の一例としての挿入孔60(
図4及び
図5参照)と、ガイド部64(
図5及び
図11参照)とを有している。
【0031】
(基体24)
図1及び
図2に示されるように、基体24は、リテーナ22の本体部を構成している。また、基体24は、長尺とされている。
【0032】
(ピン部26)
図1及び
図2に示されるように、ピン部26は、基体24の長手方向に間隔をあけて複数設けられている。一例として本実施形態では、基体24に4つのピン部26が設けられている。これらのピン部26は、基体24の厚み方向に突出している(
図2参照)。
【0033】
図11に示されるように、ピン部26の断面形状は略円形の棒状である。以下では、ピン部26の軸方向を適宜軸方向Xとして説明する。
【0034】
図4に示されるように、ピン部26の軸方向と直交する第1方向(
図4ではFD方向)で対向する一対の側部26Cには、ピン部26の軸方向Xの一方側(
図4では下側)に位置する一端部26A(言い換えると、ピン部26の突出方向先端部)と他方側(
図4では上側)に位置する他端部26B(言い換えると、ピン部26の突出方向基端部)との間に許容部28と、阻止部30とがそれぞれ設けられている。具体的には、ピン部26の一端部26A側に許容部28が設けられ、ピン部26の許容部28よりも他端部26B側に阻止部30が設けられている。
【0035】
図4に示されるように、許容部28は、ピン部26の側部26Cに設けられた凹形状部分であり、
図4の二点鎖線で示されるように、グロメット40が第1挿入位置(
図17参照)にあるときに後述する係合爪46の筒部内側(筒部42の内側)への弾性変形を許容する部分である。ここで、グロメット40の係合爪46の筒部内側への弾性変形とは、係合爪46が筒部42の軸心AL側へ向けて弾性変形することを指している。なお、グロメット40の係合爪46の筒部外側への弾性変形とは、係合爪46がグロメット40の筒部42の軸心AL側と反対側へ向けて弾性変形することを指している。
【0036】
図4に示されるように、阻止部30は、ピン部26に設けられた盛上り部分(本実施形態では、側部26C表面から突出した部分)であり、係合爪46を筒部内側から支持して係合爪46の筒部内側への弾性変形を阻止する部分である。
【0037】
図4に示されるように、ピン部26の一対の側部26Cには、ピン部26の軸方向Xの一端部26Aと他端部26Bとの間にグロメット40の係合爪44が係合する係合凹部34及び係合凹部36が設けられている。具体的には、ピン部26の一端部26A側に係合凹部34が設けられ、ピン部26の係合凹部34よりも他端部26B側に係合凹部36が設けられている。
【0038】
係合凹部34は、ピン部26の側部26Dに設けられた凹形状部分であり、グロメット40の後述する係合爪44が係合する部分である。
【0039】
係合凹部36は、ピン部26の側部26Dに設けられた凹形状部分であり、グロメット40の係合爪44が係合する部分である。また、係合凹部34は、ピン部26の側部26Cにも設けられている。すなわち、本実施形態の係合凹部34は、ピン部26の周方向に連続して形成された環状の凹形状部分である。
【0040】
基体24におけるピン部26の周辺部24Aには、
図3及び
図4に示されるように、ピン部26を取り囲むように環状凸部38が設けられている。この環状凸部38は、周辺部24Aのピン部26側の面から軸方向Xに沿って突出した円環状の凸部分である。また、環状凸部38は、径方向内側の角部がテーパー面38Aとされている。この環状凸部38には、グロメット40の後述するシール部52が接するようになっている。
【0041】
また、周辺部24Aには、環状凸部38よりも径方向内側にピン部26を取り囲むように環状凸部39が設けられている。この環状凸部39は、環状凸部38よりも突出高さが低くなっている。この環状凸部39は、グロメット40の後述するフランジ部50に接することで、グロメット40に対してピン部26を挿入し過ぎるのを制限することができる。
【0042】
図5に示されるように、挿入孔60は、基体24に形成された貫通孔である。この挿入孔60は、基体24において環状凸部38の径方向外側に形成されている。この挿入孔60には、グロメット40の操作レバー56における操作部58が挿入されるようになっている。また、挿入孔60のピン部26側の部分から環状凸部38と平行にスリット62が延びている。このスリット62は、途中で終端している。また、スリット62には、操作レバー56のアーム部57が挿入されるようになっている。ここで、ピン部26が第2挿入位置にあるときに操作レバー56を操作(回転操作)すると、アーム部57がスリット62に沿って移動する。
【0043】
図5及び
図11に示されるように、ガイド部64は、ピン部26を筒部42に挿入する際に操作レバー56の操作部58と接して該操作部58を挿入孔60へガイドする部分である。ガイド部64は、基体24における挿入孔60の周辺部に設けられている。具体的には、ガイド部64は、挿入孔60の開口縁60Aに向けて傾斜する傾斜面である。このガイド部64は、筒部42を中心とする操作部58の回転軌跡上に配置されている。また、ガイド部64は、挿入孔60を挟んで両側にそれぞれ配置されている。一例として、本実施形態では、基体24における挿入孔60の周辺部には、ピン部26と同じ方向に突出する突出部65が設けられている。ガイド部64である傾斜面は、突出部65における挿入孔60側の部分に設けられている。
ここでいう「傾斜面」とは、ピン部26の軸方向に対して傾斜している面であれば、特に限定されない。例えば、平面、曲面、階段状の斜面でもよい。なお、本実施形態の傾斜面は、ピン部26の軸方向に対して傾斜する平面である。
【0044】
<グロメット40>
グロメット40は、リテーナ22のピン部26に取り付けられると共に車体100の取付孔100Aに取り付けられる部材である。すなわち、グロメット40は、車体100にリテーナ22を取り付けるための部材である。このグロメット40は、樹脂で形成されている。具体的には、本実施形態のグロメット40は、樹脂の一体成形品である。
【0045】
図5に示されるように、グロメット40は、筒部42と、係合爪44と、係合爪46とを有している。
【0046】
(筒部42)
筒部42は、
図6~
図11に示されるように、断面形状が略円形とされた円筒状であり、内側にリテーナ22のピン部26が挿入されるようになっている。すなわち、筒部42の内形は、ピン部26の外形に対応した形状とされている。このため、筒部42は、ピン部26を中心としてピン部26に対して相対回転可能となっている。また、筒部42は、車体100に形成された取付孔100Aに挿入されるようになっている。なお、本実施形態の取付孔100Aは、略正四角形の貫通孔(具体的には、隅部が丸められた正四角形)である。また、以下では、筒部42の筒軸方向を符号Yで示し、筒部42の軸心を符号ALで示す。なお、リテーナ22にグロメット40を取り付けた状態では、リテーナ22のピン部26の軸心CLとグロメット40の筒部42の軸心ALが略一致するため、取付状態を示す図面においては、軸心CL及び軸方向Xのみを示し、軸心AL及び筒軸方向Yについては省略する。
【0047】
(係合爪44)
係合爪44は、
図6及び
図10に示されるように、リテーナ22にグロメット40を取り付けた状態(仮付け及び本付け含む)で、ピン部26の一対の側部26Cにそれぞれ対向する一対の側部42Cにそれぞれ設けられている。この係合爪44は、側部42Cの先端部から筒部42の内側へ向けて張り出している。なお、本実施形態では、ピン部26の一対の側部26Cにそれぞれ対向する一対の側部42Cは、筒部42の筒軸方向Yの一端部から中央部付近に亘って切り欠きが形成されている。この切り欠きによって側部42Cの先端部が自由端とされている。
【0048】
ここで、ピン部26を筒部42に挿入し、係合爪44が係合凹部34に係合したときのピン部26の挿入位置(
図17の挿入位置、
図4の二点鎖線で示す挿入位置)を第1挿入位置と称し、ピン部26を第1挿入位置よりも更に筒部42の奥まで挿入し、係合爪44が係合凹部36に係合したときのピン部26の挿入位置(
図4及び
図18の挿入位置)を第2挿入位置と称するものとする。
【0049】
(係合爪46)
係合爪46は、リテーナ22にグロメット40を取り付けた状態(仮付け及び本付け含む)で、ピン部26の一対の側部26Cにそれぞれ対向する一対の側部42Cにそれぞれ設けられている。この係合爪46は、側部26Cに対して、筒部42の筒軸方向の他端部42Bから一端部42A側へ向けて延ばした2本のスリット47間に形成された板状部分であり、弾性変形可能とされている。この係合爪46は、筒軸方向Yの他端部(他方側の端部)が側部42Dにつながる固定端とされ、筒軸方向Yの一端部(一方側の端部)が自由端とされた片持ち状態で支持されている。また、係合爪46は、筒軸方向Yの一端部から筒軸方向Yに沿って延びる直線部46Aと、直線部46Aの外面から軸心ALから離間する方向に突出する凸状分である爪部46Bとを有している。この爪部46Bの断面形状は、頂部46B1と、頂部46B1の両側に連なる傾斜部46B2を有する山形状とされている。ここで、車体100の取付孔102を弾性変形した係合爪46の爪部46Bが通り抜けた後は、直線部46Aが弾性復帰して爪部46Bが取付孔102の縁部に係合する。
【0050】
なお、本実施形態では、ピン部26が第1挿入位置にあるときには、許容部28が係合爪46の筒部内側に位置し、ピン部26が第2挿入位置にあるときには、阻止部30が係合爪46の筒部内側に位置するようにピン部26が構成されている。このため、係合爪46は、ピン部26が第1挿入位置にあるときには、許容部28が筒部内側に位置するため、筒部内側への弾性変形が許容される。また、ピン部26が第2挿入位置にあるときには、阻止部30が筒部42の内側に位置するため、阻止部30によって筒部42の内側から支持されて筒部42の内側への弾性変形が阻止される。さらに、ピン部26が第1挿入位置にあるときには、後述する操作部58の側面が挿入孔60の孔壁に対向している。このため、ピン部26が第1挿入位置にあるときには、操作部58が挿入孔60の孔壁に接することから、誤って筒部42がピン部26に対して回転するのが抑制される。
【0051】
また、グロメット40は、
図10及び
図11に示されるように、フランジ部50と、シール部52と、シール部54とを有している。
【0052】
フランジ部50は、筒部42の他端部42Bから筒軸方向Yと直交する方向に張り出す円環状部分である。
【0053】
シール部52は、フランジ部50の外周から張り出した部分であり、フランジ部50よりも厚みが薄い円環状部分である。このシール部52は、弾性変形可能とされており、ピン部26が第2挿入位置にあるときに環状凸部38(詳細にはテーパー面38A)に接して、リテーナ22とグロメット40との間をシールする。
【0054】
シール部54は、フランジ部50の外周から張り出した部分であり、フランジ部50よりも厚みが薄い円環状部分である。なお、シール部54は、シール部52よりも筒軸方向Yの一方側(筒部42の一端部42A側)に配置されている。このシール部54は、弾性変形可能とされており、筒部42が取付孔100Aに挿入されると取付孔100Aの周辺部に接して、グロメット40と車体100との間をシールする。
【0055】
また、グロメット40は、
図11に示されるように、ピン部26に対して筒部42を回転させるための操作レバー56を備えている。この操作レバー56は、筒部42から径方向外側へ延び、途中で折れ曲がり筒部42の軸方向へ向けて延びるアーム部57を有している。具体的には、操作レバー56は、フランジ部50の外周で、シール部52とシール部54との間からフランジ部50の径方向外側へ張り出し、途中で筒軸方向Yの他方側へ向けて延びている板状のアーム部57を有している。このアーム部57の先端部は、筒軸方向と直交する方向に折り返されて操作部58を形成している。この操作レバー56が第1回転位置(
図20の位置)にあるときは係合爪46と取付孔100Aの縁部とが非係合となり、操作レバー56が第2回転位置(
図21の位置)にあるときは係合爪46と取付孔100Aの縁部とが係合する。一例として、操作レバー56を第2回転位置から第1回転位置へ回転操作すると、筒部42がピン部26に対して回転し、一対の係合爪46が取付孔100Aの対角線上に並び、一対の係合爪46が取付孔100Aの内側に位置する。この状態では、筒部42を車体100から外すことが可能となる。
また、車体100の取付孔100Aは、係合爪46を弾性変形させずに筒部42を挿入可能なサイズの第1領域と、第1領域に隣接し、係合爪46を弾性変形させることで筒部42を挿入可能な大きさであり第1領域よりもサイズが小さい第2領域と、を有している。ここで、本実施形態の取付孔100Aは、略正方形のため、対角線上が第1領域となり、対向する2辺間が第2領域となる。なお、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、取付孔100Aを楕円、長孔等としてもよい。
【0056】
なお、本実施形態のクリップ取付構造は、取付孔100Aが形成された車体100と、車体100に取り付けられたクリップ20と、で構成されている。
【0057】
リテーナ22のピン部26をグロメット40の筒部42に挿入する挿入方向は、軸方向Xに沿った方向であり、符号Iで示す。また、グロメット40の筒部42を車体100の取付孔100Aに挿入する挿入方向は、筒軸方向Yに沿った方向で、上記のピン部26を筒部42に挿入する挿入方向と同じため、同じ符号Iを用いる。
【0058】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
クリップ20では、まず、リテーナ22のピン部26をグロメット40の筒部42の内側に第1挿入位置まで挿入する。ピン部26が第1挿入位置まで挿入されると、ピン部26と係合爪44が係合する。具体的には、ピン部26の係合凹部34に筒部42の係合爪44の爪部44Bの先端部が嵌って、係合凹部34と係合爪44が係合する。この係合により、ピン部26が筒部42に対して抜け出し方向に移動するのが制限される。このように、ピン部26が第1挿入位置にあるときは、係合凹部34と係合爪44が係合しているため、リテーナ22とグロメット40の仮付け状態が保持される。
【0059】
次に、リテーナ22を押して、グロメット40の筒部42を車体100の取付孔100Aへ挿入する。ここで、筒部42を取付孔100Aへ挿入する際には、グロメット40の操作レバー56が第1回転位置にあるため、グロメット40の筒部42が取付孔100Aをスムーズに挿入される。そして、フランジ部50が車体100に取付孔100Aの周辺部に接した状態で更にリテーナ22を車体100側へ押圧すると、ピン部26が第2挿入位置に達する。ピン部26が第2挿入位置に達すると、係合爪46がピン部26の阻止部30によって筒部42の内側から支持されて係合爪46の筒部42の内側への弾性変形が阻止される。さらに、本実施形態では、ピン部26が第2挿入位置にあるときに阻止部30によって係合爪46が筒部42の外側へ向けて押し出される。この状態で操作レバー56を第1回転位置から第2回転位置へ回転操作すると、爪部46Bが取付孔100Aの縁部に係合する(
図20参照)。この係合により、グロメット40の取付孔100Aからの抜け出しが抑制される。このように、本実施形態では、ピン部26が第2挿入位置にありかつ操作レバー56が第2回転位置にあるとき、阻止部30によって筒部42の外側へ向けて押し出された係合爪46が取付孔100Aの縁部へ係合するため、係合爪46と取付孔100Aの係合強度が向上する。これにより、グロメット40が車体100に強固に保持される。
このようにして、リテーナ22が車体100に取り付けられる。
【0060】
本実施形態のクリップ20では、基体24における挿入孔60の周辺部にガイド部64を設けていることから、リテーナ22のピン部26をグロメット40の筒部42に挿入すると、操作レバー56の操作部58がガイド部64と接して挿入孔60へガイドされる(
図13~
図16参照)。このようにクリップ20では、ピン部26を筒部42に挿入する際に、操作部58がガイド部64にガイド(誘導)されるため、リテーナ22に対するグロメット40の位置決めを容易に行える。
以上のことから、クリップ20によれば、リテーナ22にグロメット40を取り付ける際に、リテーナ22に対するグロメット40の位置決めを容易に行うことができる。
【0061】
また、クリップ20では、ピン部26を筒部42に挿入する際に、操作部58がガイド部64にガイド(誘導)されるため、操作部58が挿入孔60の正しい位置に位置決めされるため、リテーナ22に対してグロメット40を誤った位置に取り付けるのを抑制することができる。
【0062】
また、クリップ20では、ガイド部64が挿入孔60の開口縁に向けて傾斜する傾斜面であることから、ガイド部64に接した操作部58を挿入孔60へスムーズにガイドすることができる。
【0063】
また、クリップ20では、基体24に設けた突出部65にガイド部64を設けているため、操作部58と接することで該操作部58から力を受けるガイド部64の剛性が向上する。すなわち、本実施形態では、基体24のガイド部64が形成される部分の厚みを薄くすることなく、突出部65にガイド部64を設けているため、ガイド部64の剛性が向上している。
【0064】
クリップ20では、筒部42を中心とする操作部58の回転軌跡上にガイド部64を配置しているため、例えば、ガイド部が筒部を中心とする挿入部の回転軌跡からずれた位置に配置されている構成と比べて、操作部58を挿入孔60へ確実にガイドすることができる。
【0065】
また、クリップ20では、ガイド部64が挿入孔60を挟んで両側にそれぞれ配置されていることから、例えば、ガイド部が挿入孔を挟んで片側のみに配置されている構成と比べて、操作部58を挿入孔60へ確実にガイドすることができる。
【0066】
また、クリップ20では、グロメット40の操作レバー56を第1回転位置から第2回転位置に移動させることで筒部42に設けられた係合爪46が車体100の取付孔100Aに係合されてグロメット40が車体100に取り付けられる。また、グロメット40の操作レバー56を第2回転位置から第1回転位置に移動させることで筒部42に設けられた係合爪46が車体100の取付孔100Aに非係合とされ、グロメット40を車体100から取り外すことができる。すなわち、操作レバー56を回転させる簡単な操作で車体100にグロメット40を取り付けたり、車体100からグロメット40を離脱させたり(取り外したり)することができる。
【0067】
そして、クリップ20では、リテーナ22のピン部26を筒部42に挿入して該ピン部26に筒部42を取り付け、この取り付け状態で車体100の取付孔100Aに筒部42を挿入して取り付けることで、リテーナ22がグロメット40を介して車体100に取り付けられる。また、リテーナ22で車両用部品を保持することで、リテーナ22とグロメット40とを備えるクリップ20を介して車体100に車両用部品を取り付けることができる。
【0068】
さらにクリップ取付構造では、上記の通り、リテーナ22にグロメット40を取り付ける際に、操作部58がガイド部64によって挿入孔60へガイドされるため、リテーナ22に対してグロメット40が正しい位置に位置決めされる。このようなクリップ20を用いるため、クリップ取付構造では、車体100にグロメット40を介してリテーナ22を取り付けるときの取付精度が向上する。
【0069】
前述の実施形態のクリップ20では、被挿入部として挿入孔60を用いているが本発明はこの構成に限定されない。例えば、挿入孔60の代わりに被挿入部として凹状の挿入凹部を用いてもよい。この場合でも、リテーナ22にグロメット40を取り付ける際に、リテーナ22に対するグロメット40の位置決めを容易に行うことができる、という作用効果を得ることができる。
【0070】
前述の実施形態のクリップ20では、挿入孔60を挟んで両側にそれぞれガイド部64を配置しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、挿入孔60を取り囲むように環状にガイド部を形成してもよい。この場合でも、リテーナ22にグロメット40を取り付ける際に、リテーナ22に対するグロメット40の位置決めを容易に行うことができる、という作用効果を得ることができる。
【0071】
前述の実施形態のクリップ20では、基体24に挿入孔60及びガイド部64を設け、操作レバー56に操作部58を設けているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、基体24にピン部26と同じ方向に突出する挿入凸部を設け、筒部42から突出した部分に挿入凸部が挿入される挿入孔を形成し、この挿入孔の周辺部に挿入凸部をガイドするガイド部を設けてもよい。この場合でも、リテーナ22にグロメット40を取り付ける際に、リテーナ22に対するグロメット40の位置決めを容易に行うことができる、という作用効果を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
20 クリップ
22 リテーナ(第1部材)
26 ピン部
40 グロメット(第2部材)
42 筒部
46 係合爪
56 操作レバー
57 アーム部
58 操作部(挿入部)
60 挿入孔(被挿入部)
64 ガイド部
65 突出部
100 車体
100A 取付孔