(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023585
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】光触媒ウェットワイプ、光触媒ウェットワイプを用いた空気清浄装置及び光触媒ウェットワイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/46 20060101AFI20230209BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230209BHJP
B01J 35/06 20060101ALI20230209BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20230209BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230209BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230209BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230209BHJP
D06M 11/48 20060101ALI20230209BHJP
D06M 13/144 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
D06M11/46
B01J35/02 J
B01J35/06 A
B01J37/34
B01J37/02 101D
B01J37/02 101C
A61L9/00 C
A61L9/01 B
D06M11/48
D06M13/144
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129233
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】千藤 伸一
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA16
4C180CA10
4C180CC03
4C180CC16
4C180CC17
4C180EA03X
4C180EA05X
4C180EA06X
4C180EA07X
4C180EA16X
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EB05Y
4C180EB06Y
4C180EB22Y
4C180EB24Y
4C180EB30Y
4C180EB32Y
4C180EB34Y
4C180HH05
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA04A
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BC29A
4G169BC60A
4G169BC66A
4G169CA01
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EA07
4G169EA08
4G169EA09
4G169EA10
4G169EC29
4G169FA03
4G169FB23
4G169FB58
4G169HA02
4G169HA20
4G169HB01
4G169HB06
4G169HC02
4G169HD10
4G169HD24
4G169HE01
4G169HE07
4G169HE12
4L031AB31
4L031BA09
4L031BA33
4L031DA12
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA11
4L033DA06
(57)【要約】
【課題】 表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプ、このウェットワイプを用いた空気清浄装置及びこのウェットワイプの製造方法を提供する。
かつらを提供する。
【解決手段】 繊維材からなるシート部材Sと、酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む光触媒・アルコール溶液と、を備え、光触媒・アルコール溶液がシート部材Sの両面S1、S2側の領域で高い濃度を示すように分布しているウェットワイプ2、このウェットワイプを用いた空気清浄装置及びこのウェットワイプの製造方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む光触媒・アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒・アルコール溶液が前記シート部材の両面側の領域で高い濃度を示すように分布していることを特徴とする光触媒ウェットワイプ。
【請求項2】
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液と、
アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒溶液が前記シート部材の両面側の領域で高い濃度を示すように分布しており、
前記アルコール溶液が、その上の両面側の最外面の領域で高い濃度を示すように分布していることを特徴とする光触媒ウェットワイプ。
【請求項3】
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液と、
アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒溶液が前記シート部材の一方の面側の領域で高い濃度を示すように分布しており、
前記アルコール溶液が前記シート部材の他方の面側の領域で高い濃度を示すように分布していることを特徴とする光触媒ウェットワイプ。
【請求項4】
前記光触媒に遷移金属が担持されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光触媒ウェットワイプ。
【請求項5】
前記遷移金属が鉄であることを特徴とする請求項4に記載の光触媒ウェットワイプ。
【請求項6】
前記繊維材がメッシュ状に配置されて前記シート部材が形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光触媒ウェットワイプ。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の光触媒ウェットワイプ、特に使用済の光触媒ウェットワイプを収納する容器を備え、
前記容器が光及び大気を通す複数の開口を有することを特徴とする空気清浄装置。
【請求項8】
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む光触媒・アルコール溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の両面に攪拌された前記光触媒・アルコール溶液を塗布する塗布工程と、
を含むことを特徴とする光触媒ウェットワイプの製造方法。
【請求項9】
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の両面に攪拌された前記光触媒溶液を塗布する第1の塗布工程と、
前記第1の塗布工程の後、前記シート部材の両面にアルコール溶液を塗布する第2の塗布工程と、
を含むことを特徴とする光触媒ウェットワイプの製造方法。
【請求項10】
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の一方の面に攪拌された前記光触媒溶液を塗布し、他方の面にアルコール溶液を塗布する塗布工程と、
を含むことを特徴とする光触媒ウェットワイプの製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載の光触媒ウェットワイプの使用方法であって、
前記光触媒ウェットワイプの前記一方の面を用いて抗菌を行う表面を拭いた後、前記他方の面を用いて前記表面を拭くことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒が分散された溶液を含む光触媒ウェットワイプ、この光触媒ウェットワイプを用いた空気清浄装置及びこの光触媒ウェットワイプの製造方法に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光に照らされることにより活性酸素を発生させて有害物質を分解する光触媒に対する関心が高まっている。その中には、基材の表面に光触媒を被覆した光触媒シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の光触媒シートは接着面を有し、機器の表面に光触媒シートを貼り付けることにより、機器のメンテナンスを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抗菌を行う表面をシート部材で覆うことができない場合も多い。そのような場合には、例えば、光触媒を含むウェットティッシュやウェットシートのようなウェットワイプで表面を拭くことができれば、表面を覆うことなく、表面に光触媒を付与することができる。しかし、光触媒により抗菌機能を発揮するには、ある程度の期間を要するので、速やかな抗菌機能を要する用途には適さない。
【0005】
よって、本発明は、上記を問題に鑑みてなされたものであり、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプ、このウェットワイプを用いた空気清浄装置及びこのウェットワイプの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
、
本発明の第1の態様に係る光触媒ウェットワイプは、
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む光触媒・アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒・アルコール溶液が前記シート部材の両面側の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0007】
本発明の第1の態様に係る光触媒ウェットワイプの製造方法は、
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む光触媒・アルコール溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の両面に攪拌された前記光触媒・アルコール溶液を塗布する塗布工程と、
を含む。
【0008】
、
本発明の第2の態様に係る光触媒ウェットワイプは、
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液と、
アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒溶液が前記シート部材の両面側の領域で高い濃度を示すように分布しており、前記アルコール溶液が、その上の両面側の最外面の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0009】
本発明の第2の態様に係る光触媒ウェットワイプの製造方法は、
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の両面に攪拌された前記光触媒溶液を塗布する第1の塗布工程と、
前記第1の塗布工程の後、前記シート部材の両面にアルコール溶液を塗布する第2の塗布工程と、
を含む。
【0010】
、
本発明の第3の態様に係る光触媒ウェットワイプは、
繊維材からなるシート部材と、
酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液と、
アルコール溶液と、
を備え、
前記光触媒溶液が前記シート部材の一方の面側の領域で高い濃度を示すように分布しており、
前記アルコール溶液が前記シート部材の他方の面側の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0011】
本発明の第3の態様に係る光触媒ウェットワイプの製造方法は、
遷移金属が担持された酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された光触媒溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、
繊維材からなるシート部材の一方の面に攪拌された前記光触媒溶液を塗布し、他方の面にアルコール溶液を塗布する塗布工程と、
を含む。
【0012】
、
本発明の1つの態様に係る空気清浄装置は、
上記の光触媒ウェットワイプ、特に使用済の光触媒ウェットワイプを収納する容器を備え、
前記容器が光及び大気を通す複数の開口を有する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明では、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプ、このウェットワイプを用いた空気清浄装置及びこのウェットワイプの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】遷移金属が担持された酸化チタンが分散された溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプを模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプを模式的に示す図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るウェットワイプのメッシュ状に配置された繊維材を模式的に示す断面図である。
【
図9】使用済みの光触媒ウェットワイプを用いた本発明の1つの実施形態に係る空気清浄装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では前述の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0016】
(第1の実施形態)
<製造方法>
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプを製造する方法を説明する。
図1は、遷移金属が担持された酸化チタンが分散された溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程を模式的に示す図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
【0017】
[攪拌工程]
図1に示すように、容器12の中に酸化チタンが分散された溶液を充填されている。酸化チタンは、光触媒の代表的な物質であり、紫外光に照らされることにより、強力な活性酸素を発生して有害物質を分解する抗菌機能を有する。ここで、「抗菌」は、「滅菌」、「殺菌」、「消毒」、「静菌」、「除菌」といった全ての機能を含む用語として記載する。なお、光触媒として、酸化チタンの代わりに酸化タングステンを用いることもできる。以下の記載においては、光触媒として酸化チタンを用いる場合を例にして説明するが、光触媒として酸化タングステンを用いる場合も同様である。
【0018】
このような光触媒において、紫外光に照らされる屋外だけでなく、屋内で照明等から可視光に照らされたときも、十分な分解能力を発揮させるため、酸化チタンに遷移金属を担持することが極めて有効である。酸化チタンに担持する遷移金属としては、鉄(Fe)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)等が挙げられるが、低コストで高い性能が得られる点で、遷移金属として鉄を用いるのが好ましい。
【0019】
本実施形態では、酸化チタンに対して、重量比で0.5%程度の鉄が担持されている。本実施形態では、鉄が担持された酸化チタンを分散させる溶媒として、ペルオキソ酸水溶液が用いられている。ただし、溶媒はこれに限られるものではなく、酸化チタンを分散させるのに適した既知の任意の溶媒を用いることができる。更に、本実施形態では、酸化チタンが分散された溶液に、重量比で40%程度のアルコールが加えられた酸化チタン・アルコール溶液が用いられる。
【0020】
遷移金属が担持された酸化チタンは、可視光に照らされても光触媒として機能する利点があるが、比重が増加するため、溶液の下に沈殿する傾向を示す。そこで、容器12内の遷移金属(ここでは鉄)が担持された酸化チタンが分散された酸化チタン・アルコール溶液中に、上側から超音波振動装置10の振動子10Aを入れて、超音波振動を用いて攪拌する。超音波振動装置10の振動子10Aの先端部が縦振動を起こし、これにより、20kHz程度の振動数で攪拌することができる。
【0021】
例えば、2~3日間、超音波を用いた攪拌を継続すると、攪拌終了後、1週間以上経過しても、鉄が担持された酸化チタンが溶液の下に沈殿しないことが知見されている。このため、酸化チタンが分散された溶液を攪拌した後、ある程度の日数が経過した後に後述する塗布工程を行ったとしても、溶液中に鉄が担持された酸化チタンが沈殿する虞がない。
【0022】
第1の実施形態では、酸化チタン・アルコール溶液を、超音波振動を用いて攪拌するが、後述する第2及び第3の実施形態では、原則としてアルコールが含まれない酸化チタン溶液を、超音波振動を用いて攪拌し、別途、アルコール溶液を用いるようになっている。アルコールとしては、殺菌用の任意のアルコールを用いることができる。また、アルコールとして、多価アルコールを用いることもできる。
【0023】
[塗布工程]
上記の攪拌工程の後、
図2に示すような塗布工程を行う。塗布工程では、ロール状に巻かれたシート部材Sを巻き戻しながら、シート部材Sを搬送し、スプレーノズル20A、20Bを用いて、その両面(広面)S1、S2に、超音波で攪拌された酸化チタン・アルコール溶液を塗布する。
【0024】
本実施形態で用いるシート部材Sは繊維材からなる。シート部材Sとして、所謂ウェットティッシュ、ウェットシート、ウェットタオル(おしぼり)に用いる既知のシート状の部材を用いることができる。このような表面を拭いて、清掃、抗菌等を行う液体を含むシート状の部材を、ウェットワイプと称することができる。本実施形態に係るウェットワイプに用いるシート部材Sは、天然繊維材からなるものあり得るし、化学繊維材からなるものもあり得るし、それらが混合された繊維材もあり得る。このような繊維材の不織物のシート部材Sもあり得るし、繊維材が織り込まれたシート部材Sもあり得る。
【0025】
天然繊維材としては、パルプやコットンを例示することができる。化学繊維材としては、再生繊維のレーヨン、アセテートや、合成繊維のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系の繊維材等を挙げることができる。なお、シート部材Sは、1枚のシート基材を備えるものに限定されず、重ね合わされた複数枚のシート基材を備えるものであってもよい。
【0026】
図2に示すように、容器40には、上記の攪拌工程で攪拌された酸化チタン・アルコール溶液が貯蔵されており、ポンプ30で吸引され、ポンプ30の吐出力により、スプレーノズル20A、20Bから、搬送されているシート部材Sの両面S1、S2に塗布される。スプレーノズル20Aにより、シート部材Sの一方の面S1に酸化チタン・アルコール溶液が塗布され、スプレーノズル20Bにより、シート部材Sの他方の面S2にも酸化チタン・アルコール溶液が塗布される。
【0027】
塗布された酸化チタン・アルコール溶液は、表面から、繊維と繊維の間の隙間や、繊維内での染み込みより、ある程度、内部側にも進んでいくと考えられる。よって、酸化チタン・アルコール溶液は、両面S1、S2表面から内側に進むにつれて濃度が低くなる分布を有すると考えられる。
【0028】
以上のようにして、酸化チタン・アルコール溶液が塗布されたシート部材Sを所定の長さで切断することにより、第1の実施形態に係る光触媒ウェットワイプ2を得ることができる。切断された光触媒ウェットワイプ2をシール性のある収納部材に収納することにより、長期間、保管することができる。
【0029】
なお、塗布工程は、上記のようなスプレーノズルを用いる場合に限られるものではなく、例えば、コーターを用いた塗布をはじめとする、その他の既知の任意の塗布方法を採用することができる。
【0030】
<第1の実施形態に係るウェットワイプ>
次に、
図3を参照しながら、上記のようにして製造された本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプの説明を行う。
図3に模式的に示すように、第1の実施形態に係るウェットワイプ2では、酸化チタン・アルコール溶液が両面S1、S2側から塗布されるので、酸化チタン・アルコール溶液の濃度は、シート部材Sの両面S1、S2側の領域で高く、内部に進むにつれて低くなると考えられる。抗菌を行う部材の表面にウェットワイプ2を置いて、表面の反対側からウェットワイプ2を若干押しながら動かして表面を拭くとき、表面にアルコール及び酸化チタンが付着する。
【0031】
まず、表面に付着したアルコールにより、速やかに表面を抗菌することができる。ある程度の時間が経過すると、表面に存在するアルコールは揮発するが、酸化チタンは表面に残存する。よって、酸化チタンが光に照らされることにより、強力な活性酸素を発生して有害物質を分解する抗菌機能を発揮する。酸化チタンにより、長期期間にわたって、表面の抗菌機能を維持することが期待できる。
【0032】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るウェットワイプ2は、繊維材からなるシート部材Sと、酸化チタンが分散され、アルコールを含む酸化チタン・アルコール溶液と、を備え、酸化チタン・アルコール溶液がシート部材Sの両面S1、S2側の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0033】
ウェットワイプ2を用いて、抗菌を行う表面を拭くと、表面にアルコール及び酸化チタンが付着し、まず、アルコールにより速やかに表面を抗菌することができるとともに、酸化チタンにより、長期期間にわたって、表面の抗菌機能を維持することが期待できる。よって、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプ2を提供できる。
【0034】
特に、酸化チタンに遷移金属が担持されている場合は、屋内で可視光に照らされた場合でも、十分な抗菌機能を発揮する。更に、遷移金属が鉄である場合は、比較的低いコストで、室内でも十分な抗菌機能を発揮する光触媒を得ることができる。このような、遷移金属(鉄)の効果は、後述する第2、第3の実施形態に係るウェットワイプでも同様である。
【0035】
この第1の実施形態に係るウェットワイプ2の製造方法は、遷移金属が担持された酸化チタンが分散され、アルコールを含む酸化チタン・アルコール溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、繊維材からなるシート部材Sの両面S1、S2に攪拌された酸化チタン・アルコール溶液を塗布する塗布工程と、を含む。
【0036】
遷移金属が担持された酸化チタンを用いることにより、室内でも十分な抗菌機能が発揮されるが、酸化チタンの比重が増加するため、溶液中に沈殿する虞がある。しかし、超音波を用いた攪拌により、酸化チタンが沈殿することなく分散された酸化チタン・アルコール溶液をシート部材に塗布することができる。
【0037】
シート部材Sの両面S1、S2に攪拌された酸化チタン・アルコール溶液を塗布するので、酸化チタン・アルコール溶液がシート部材Sの両面S1、S2側の領域で高い濃度を示すように分布する。これにより、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプ2を確実に製造することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
<製造方法>
次に、
図1、
図4及び
図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプを製造する方法を説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
図5は、本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプを模式的に示す図である。
【0039】
[攪拌工程]
図1に示す攪拌工程において、上記の第1の実施形態では、鉄が担持された酸化チタンが分散され、アルコールが含まれる酸化チタン・アルコール溶液を攪拌したが、本実施形態では、鉄が担持された酸化チタンが分散されているが、基本的にアルコールが含まれない酸化チタン溶液を攪拌する点で異なる。容器12内の酸化チタン溶液中に、上側から超音波振動装置10の振動子10Aを入れて、超音波振動を用いて攪拌する。2~3日間、超音波による攪拌を継続することにより、攪拌終了後、1週間以上経過しても、鉄が担持された酸化チタンが溶液の下に沈殿しないようにすることができる。
【0040】
[塗布工程]
上記の攪拌工程の後、
図4に示すような塗布工程を行う。塗布工程では、ロール状に巻かれたシート部材Sを巻き戻しながら、シート部材Sを搬送し、酸化チタン用のスプレーノズル22A、22Bを用いて、その両面S1、S2に攪拌された酸化チタン溶液を塗布し、その後、アルコール用のスプレーノズル24A、24Bを用いて、その両面S1、S2にアルコール溶液を塗布する。
【0041】
図4に示すように、容器42には、上記の攪拌工程で攪拌された酸化チタン溶液が貯蔵されており、ポンプ32で吸引され、ポンプ32の吐出力により、酸化チタン用のスプレーノズル22A、22Bから、搬送されているシート部材Sの両面S1、S2に酸化チタン溶液が塗布される。
一方、容器44には、アルコール溶液が貯蔵されており、ポンプ34で吸引され、ポンプ34の吐出力により、アルコール用のスプレーノズル24A、24Bから、搬送されている酸化チタン溶液が塗布された後のシート部材Sの両面S1、S2に、アルコールが塗布される。
【0042】
塗布された酸化チタン溶液は、表面から、繊維と繊維の間の隙間や、繊維内での染み込みより、内部側にも浸透していくと考えられる。よって、酸化チタン溶液は、表面から内側に進むにつれて濃度が低くなる分布を有すると考えられる。一方、アルコール溶液は、酸化チタン溶液が塗布された表面の上に塗布されるので、酸化チタン溶液の上側の最外面の領域に高い濃度を示すと考えられる。
【0043】
以上のように酸化チタン溶液が塗布された後、アルコール溶液が塗布されたシート部材Sを所定の長さで切断することにより、第2の実施形態に係る光触媒ウェットワイプ2を得ることができる。切断された光触媒ウェットワイプ2をシール製のある収納部材に収納することにより、長期間、保管することができる。
【0044】
上記の実施形態では、1つの塗布ラインに酸化チタン用のスプレーノズル22A、22B及びアルコール用のスプレーノズル24A、24Bといった2組のスプレーノズルが配置されているが、これに限られるものではない。1つの塗布ラインに1組のスプレーノズルが配置され、はじめに酸化チタン溶液を塗布した後、スプレーノズルで塗布する溶液を、酸化チタン溶液からアルコール溶液に取り替えて、アルコール溶液を塗布することもできる。
【0045】
<第2の実施形態に係るウェットワイプ>
次に、
図5を参照しながら、上記のようにして製造された本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプの説明を行う。
図5に模式的に示すように、第2の実施形態に係るウェットワイプ2では、酸化チタン溶液が両面S1、S2側から塗布されるので、酸化チタン・アルコール溶液の濃度は、シート部材Sの両面S1、S2側の領域で高く、内部に進むにつれて低くなると考えられる。更にその上にアルコール溶液が塗布されるので、アルコール溶液の濃度は、シート部材Sの両面S1、S2側の最外面の領域で高くなると考えられる。アルコール溶液も、ある程度、内側の領域へも進むと思われるが、濃度は、両面S1、S2側の最外面の領域で高くなっていると考えられる。
【0046】
抗菌を行う表面にウェットワイプ2を置いて、表面の反対側からウェットワイプ2を若干押しながら動かして表面を拭くとき、まず表面に高い濃度を有するアルコールが付着し、次に酸化チタンが付着する。よって、表面に付着したアルコールにより、速やかに表面を抗菌することができる。ある程度の時間が経過すると、表目に存在するアルコールは揮発するが、酸化チタンは表面に残存する。よって、酸化チタンが光に照らされることにより、強力な活性酸素を発生して有害物質を分解する抗菌機能を発揮する。酸化チタンにより、長期期間にわたって、表面の抗菌機能を維持することが期待できる。
【0047】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係るウェットワイプ2は、繊維材からなるシート部材Sと、酸化チタンが分散された酸化チタン溶液と、アルコール溶液と、を備え、酸化チタン溶液がシート部材Sの両面S1、S2側の領域で高い濃度を示すように分布しており、アルコール溶液が、その上の両面S1、S2側の最外面の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0048】
ウェットワイプ2で抗菌を行う表面を拭くと、まず表面にアルコールが付着し、更に酸化チタンも付着する。よって、まずアルコールにより速やかに表面を抗菌することができるとともに、酸化チタンにより、長期期間にわたって、表面の抗菌機能を維持することが期待できる。よって、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプを提供できる。
【0049】
この第2の実施形態に係るウェットワイプ2の製造方法は、遷移金属が担持された酸化チタンが分散された酸化チタン溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、繊維材からなるシート部材Sの両面S1、S2に攪拌された酸化チタン溶液を塗布する第1の塗布工程と、第1の塗布工程の後、シート部材Sの両面S1、S2にアルコール溶液を塗布する第2の塗布工程と、を含む。
【0050】
鉄が担持された酸化チタンを用いることにより、室内でも十分な抗菌機能が発揮されるが、酸化チタンの比重が増加するため、溶液中に沈殿する虞がある。しかし、超音波を用いた攪拌により、酸化チタンが沈殿することなく分散された酸化チタン溶液をシート部材に塗布することができる。
【0051】
シート部材Sの両面S1、S2に攪拌された酸化チタン溶液を塗布し、その後、アルコール溶液を塗布するので、酸化チタン溶液がシート部材Sの両面S1、S2側の領域で高い濃度を示すように分布し、アルコール溶液が、その上の両面S1、S2側の最外面の領域で高い濃度を示すように分布する。これにより、表面を拭くだけで、速やかに抗菌機能が得られるとともに、長期間抗菌機能を持続できるウェットワイプを確実に製造することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
<製造方法>
次に、
図1、
図6及び
図7を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプを製造する方法を説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプを製造するときの塗布工程を模式的に示す図である。
図7は、本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプを模式的に示す図である。
【0053】
[攪拌工程]
図1に示す攪拌工程において、本実施形態では、上記の第2の実施形態と同様に、鉄が担持された酸化チタンが分散されているが、基本的にアルコールが含まれない酸化チタン溶液を攪拌する。容器12内の酸化チタン溶液中に、上側から超音波振動装置10の振動子10Aを入れて、超音波振動を用いて攪拌する。2~3日間、高音波による攪拌を継続することにより、攪拌終了後、1週間以上経過しても、鉄が担持された酸化チタンが溶液の下に沈殿しないようにすることができる。
【0054】
[塗布工程]
上記の攪拌工程の後、
図6に示すような塗布工程を行う。塗布工程では、ロール状に巻かれたシート部材Sを巻き戻しながら、シート部材Sを搬送し、酸化チタン用のスプレーノズル22Aを用いて、一方の面S1に攪拌された酸化チタン溶液を塗布するとともに、アルコール用のスプレーノズル24Bを用いて、他方の面S2にアルコール溶液を塗布する。
【0055】
図6に示すように、容器42には、上記の攪拌工程で攪拌された酸化チタン溶液が貯蔵されており、ポンプ32で吸引され、ポンプ32の吐出力により、酸化チタン用のスプレーノズル22Aから、搬送されているシート部材Sの一方の面S1に酸化チタン溶液が塗布される。
これと同時に、容器44には、アルコール溶液が貯蔵されており、ポンプ34で吸引され、ポンプ34の吐出力により、アルコール用のスプレーノズ24Bから、搬送されているシート部材Sの他方の面S2にアルコール溶液が塗布される。
【0056】
一方の面S1に塗布された酸化チタン溶液は、一方の面S1の表面から、繊維と繊維の間の隙間や、繊維内での染み込みより、内部側にも浸透していくと考えられる。よって、酸化チタン溶液は、一方の面S1の表面から内側に進むにつれて濃度が低くなる分布を有すると考えられる。
他方の面S2に塗布されたアルコール溶液は、他方の面S2の表面から、繊維と繊維の間の隙間や、繊維内での染み込みより、内部側にも浸透していくと考えられる。よって、アルコール溶液は、他方の面S2の表面から内側に進むにつれて濃度が低くなる分布を有すると考えられる。
【0057】
以上のように、一方の面S1に酸化チタン溶液が塗布され、他方の面S2にアルコール溶液が塗布されたシート部材Sを所定の長さで切断することにより、第3の実施形態に係る光触媒ウェットワイプ2を得ることができる。切断された光触媒ウェットワイプ2をシール製のある収納部材に収納することにより、長期間、保管することができる。
【0058】
なお、上記の第2、第3の実施形態で用いる酸化チタン溶液は、基本的にアルコール溶液を含んでいないように記載したが、酸化チタン溶液の塗布とは別にアルコール溶液の塗布を行うのであれば、酸化チタン溶液に所定の量のアルコールが含まれる場合もあり得る。
【0059】
<第3の実施形態に係るウェットワイプ>
次に、
図7を参照しながら、上記のようにして製造された本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプ2の説明を行う。
図7に模式的に示すように、第3の実施形態に係るウェットワイプ2では、酸化チタン溶液が一方の面S1側から塗布されるので、酸化チタン溶液の濃度は、シート部材Sの一方の面S1側の領域で高く、内部に進むにつれて低くなると考えられる。一方、アルコール溶液が他方の面S2側から塗布されるので、アルコール溶液の濃度は、シート部材Sの他方の面S2側の領域で高く、内部に進むにつれて低くなると考えられる。
【0060】
まず、抗菌を行う表面に一方の面S1が接するようにウェットワイプ2を置いて、表面の反対側からウェットワイプ2を若干押しながら動かして表面を拭くとき、表面にアルコールが付着する。よって、表面に付着したアルコールにより、速やかに表面を抗菌することができる。
【0061】
その後、ウェットワイプ2をひっくり返して、抗菌を行う表面に他方の面S2が接するようにウェットワイプ2を置いて、表面の反対側からウェットワイプ2を若干押しながら動かして表面を拭くとき、表面に酸化チタンが付着する。所定の時間が経過するとアルコールは揮発するが、酸化チタンは、長期間、表面に残存する。酸化チタンが光に照らされることにより、強力な活性酸素を発生して有害物質を分解する抗菌機能を発揮する。酸化チタンにより、長期期間にわたって、表面の抗菌機能を維持することが期待できる。
【0062】
本実施形態に係るウェットワイプ2は、酸化チタンが高い濃度で分布する一方の面S1とアルコールが高い濃度で分布する他方の面S2とを有するので、一方の面S1、他方の面S2の順で表面を拭くことにより、速やかな抗菌と、長期間での抗菌とを効率的に確実に実現することができる。
【0063】
このように、光触媒ウェットワイプ2の一方の面S1を用いて抗菌を行う表面を拭いた後、他方の面S2を用いてこの表面を拭くことにより、効率的かつ確実に、速やかな抗菌と、長期間の抗菌機能維持と実現することができる。
【0064】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係るウェットワイプ2は、繊維材からなるシート部材Sと、酸化チタンが分散された酸化チタン溶液と、アルコール溶液と、を備え、酸化チタン溶液がシート部材Sの一方の面S1側の領域で高い濃度を示すように分布しており、アルコール溶液がシート部材Sの他方の面S2側の領域で高い濃度を示すように分布している。
【0065】
本実施形態に係る光触媒ウェットワイプ2において、一方の面S1を用いて抗菌を行う表面を拭いた後、他方の面S2を用いてこの表面を拭くことにより、効率的かつ確実に、速やかな抗菌と長期間の抗菌機能維持を両立することができる。
【0066】
この第3の実施形態に係るウェットワイプ2の製造方法は、遷移金属が担持された酸化チタンが分散された酸化チタン溶液を、超音波振動を用いて攪拌する攪拌工程と、繊維材からなるシート部材Sの一方の面S1に攪拌された酸化チタン溶液を塗布し、他方の面S2にアルコール溶液を塗布する塗布工程と、を含む。
【0067】
鉄が担持された酸化チタンを用いることにより、室内でも十分な抗菌機能が発揮されるが、酸化チタンの比重が増加するため、溶液中に沈殿する虞がある。しかし、超音波を用いた攪拌により、酸化チタンが沈殿することなく分散された酸化チタン溶液をシート部材に塗布することができる。
【0068】
シート部材Sの一方の面S1に攪拌された酸化チタン溶液を塗布し、他方の面S2にアルコール溶液を塗布するので、酸化チタン溶液が高い濃度で分布する一方の面S1と、アルコール溶液が高い濃度で分布する他方の面S2とを有するウェットワイプ2を確実に製造することができる。これにより、一方の面S1を用いて抗菌を行う表面を拭いた後、他方の面S2を用いてこの表面を拭くことにより、効率的かつ確実に、速やかな抗菌と長期間の抗菌機能維持を両立することができる光触媒ウェットワイプ2を確実に製造することができる。
【0069】
<第4の実施形態に係るウェットワイプ>
次に、
図8を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係るウェットワイプの説明を行う。
図8は、本発明の第4の実施形態に係るウェットワイプのメッシュ状に配置された繊維材を模式的に示す断面図である。ウェットワイプ2を構成するシート部材Sは、不織物もあり得るし、繊維材が織り込まれたものもあり得るが、本実施形態に係るシート部材Sは、不織物ではなく、繊維材がメッシュ状に配置されている。
【0070】
図8は、第1の実施形態と同様に、酸化チタン・アルコール溶液がシート部材Sの両面S1、S2に塗布された場合を示す。そして、抗菌を行う表面Tにウェットワイプ2を置いて、表面Tの反対側からウェットワイプ2を若干押しながら動かして表面Tを拭くところを示す。シート部材Sの繊維材4がメッシュ状に配置されているので、繊維材4が均等に表面Tに接する。更に、メッシュ状に配置された繊維材4の繊維材の間にほぼ均等な空間が配置されているので、この均等な空間に酸化チタン・アルコール溶液を蓄えることができる。
【0071】
よって、ウェットワイプ2により、十分な量の酸化チタンやアルコールを表面Tに均等に供給することができる。
図8に模式的に示すように、まず、揮発性の高いアルコールが表面Tに近い領域に染み出してくると考えられるので、速やかにアルコールで表面Tの抗菌を行うことができる。
【0072】
上記の第2、第3の実施形態のように、酸化チタン溶液とアルコール溶液を個別に塗布する場合であっても、同様に、第4の実施形態に係るウェットワイプ2により、十分な量の酸化チタンやアルコールを表面Tに均等に供給することができる。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るウェットワイプ2は、繊維材4がメッシュ状に配置されてシート部材Sが形成されているので、十分な量の酸化チタンやアルコールを、抗菌を行う表面Tに均等に供給することができる。
【0074】
上記では、光触媒として酸化チタンを用いる場合を説明したが、酸化チタンの代わりに、光触媒として酸化タングステンを用いる場合も同様である。光触媒として、酸化チタンを用いる場合と酸化タングステンを用いる場合とを包括して記載すると、以下のようになる。
「酸化チタン」を、酸化チタンまたは酸化タングステンからなる「光触媒」と称し、「酸化チタン溶液」を、酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散された「光触媒溶液」と称し、「酸化チタン・アルコール溶液」を、酸化チタンまたは酸化タングステンからなる光触媒が分散され、アルコールを含む「光触媒・アルコール溶液」と称すれば、包括的な記載が実現する。
【0075】
(1つの実施形態に係る空気清浄装置)
次に、
図9を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る空気清浄装置の説明を行う。
図9は、使用済みの光触媒ウェットワイプを用いた本発明の1つの実施形態に係る空気清浄装置を模式的に示す斜視図である。
【0076】
上記の実施形態に係るウェットワイプ2を使用した後、アルコールは揮発するが、多くの酸化チタンが残存する。よって、使用済のウェットワイプ2を廃棄せずに、残存する酸化チタンを有効利用することは、エコロジーの観点からも好ましい。
【0077】
本実施形態に係る空気清浄装置50は、使用済の光触媒ウェットワイプ2を収納する容器52と、ファン52とを備える。容器52には、上方の開口52Aと、側方の4つの開口52Bとが設けられている。側方の開口52Bには、目の粗いメッシュが設けられ、内部の光触媒ウェットワイプ2は保持されるが、光や大気は十分に通すようになっている。
【0078】
ファン52により、使用済の光触媒ウェットワイプ2が収納された容器52に大気を送る(
図9の点線の矢印参照)と、光が照射された光触媒ウェットワイプ2により、通過する大気の抗菌処理を行うことができる。特に、光に照らされることにより、光触媒が強力な活性酸素を発生して有害物質を分解するので、高い防臭機能が期待できる。本実施形態では、ファン54を備えるが、ファン54を備えず、自然対流で、使用済の光触媒ウェットワイプ2が収納された容器52に大気を流入させることも可能である。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る空気清浄装置50は、上記の実施形態に係る光触媒ウェットワイプ2、特に使用済の光触媒ウェットワイプ2を収納する容器52を備え、容器52が光及び大気を通す複数の開口52A、52Bを有する。これにより、使用済み光触媒ウェットワイプ2を有効利用して、大気の抗菌を行う空気清浄装置を提供できる。
【0080】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0081】
2 光触媒ウェットワイプ
4 繊維材
10 超音波攪拌装置
12 容器
20A、20B 酸化チタン・アルコール溶液用のスプレーノズル
22A、22B 酸化チタン溶液用のスプレーノズル
24A、24B アルコール溶液用のスプレーノズル
30、32、34 ポンプ
40、42、44 容器
50 空気清浄装置
52 筐体
52A、52B 開口
54 ファン
S シート部材
S1 一方の面
S2 他方の面
T 抗菌を行う表面