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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023618
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】糸処理機構及び紡糸引取装置
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
D02J1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129292
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】水谷 光範
(72)【発明者】
【氏名】岩木 孝之
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA03
4L036PA26
4L036PA42
4L036UA25
(57)【要約】
【課題】糸処理装置から飛散する油剤ミストの拡散を効果的に抑制可能な糸処理機構を提供する。
【解決手段】流体案内部23の基端から流体案内部23の案内方向に引いた仮想線L1、L2上に形成された導入口32と、導入口32とは異なる位置に形成された排気口33とを有する排気室31が、第1方向及び第2方向と直交する第3方向に延びるように形成されたカバー部材30が設けられている。第3方向に直交する断面において排気室31の内壁から内側に突出し、排気室31内の流体が導入口32から流出することを抑制する流出抑制部37、38が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油剤が付与された糸が走行する糸走行空間が第1方向に沿って形成された糸処理部を有し、前記糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置と、
前記第1方向において前記糸処理部から離れて配置され、前記第1方向と直交する第2方向の成分を有する案内方向に延びる流体案内部と、
前記流体案内部の基端から前記案内方向に引いた仮想線上に形成された導入口と、前記導入口とは異なる位置に形成された排気口とを有する排気室が、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に延びるように形成されたカバー部材と、
前記第3方向に直交する断面において前記排気室の内壁から内側に突出し、前記排気室内の前記流体が前記導入口から流出することを抑制する流出抑制部と、
を備えることを特徴とする糸処理機構。
【請求項2】
前記流出抑制部は、前記案内方向の成分を有し、且つ、前記仮想線に近づく成分を有する方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載の糸処理機構。
【請求項3】
前記流出抑制部が、前記第1方向において前記導入口の両側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の糸処理機構。
【請求項4】
前記排気室の内壁と前記流出抑制部とによって下側に凸の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項5】
前記流出抑制部は、前記カバー部材に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項6】
前記排気口は、前記第3方向において前記排気室の一端部に形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項7】
前記排気室の内壁は、前記第3方向に直交する断面において外側に凸の湾曲部を有することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項8】
前記湾曲部が、前記第1方向において前記導入口の両側に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の糸処理機構。
【請求項9】
前記第3方向に直交する断面において前記流体案内部を挟んで前記糸処理部の反対側に、前記流出抑制部の基端から前記案内方向の反対向きの成分を有し、且つ、前記仮想線に近づく成分を有する方向に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項10】
前記突出部は、前記カバー部材に一体的に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の糸処理機構。
【請求項11】
前記第1方向において前記糸走行空間の両側に前記流体案内部が配置されており、
前記排気室は、前記第1方向の一方側に配置された第1排気室と、前記第1方向の他方側に配置された第2排気室とに区画されており、
前記第1排気室及び前記第2排気室のそれぞれに前記導入口及び前記排気口が形成されていることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項12】
前記糸処理装置は、前記糸処理部及び前記流体案内部を支持する基体を有しており、
前記流体案内部は、前記基体から前記案内方向に立ち上がっていることを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項13】
前記流体案内部に、前記糸が挿入されるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項14】
前記糸処理部に、前記糸走行空間が前記第3方向に複数形成されており、
前記導入口は、前記第3方向において複数の前記糸走行空間が形成されている範囲にわたって形成されていることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の糸処理機構。
【請求項15】
前記糸に油剤を付与する油剤付与装置と、
糸走行方向において前記油剤付与装置の下流側に配置された請求項1~14の何れか1項に記載の糸処理機構と、
を備えることを特徴とする紡糸引取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射することで油剤が付与された糸に所定の処理を施す糸処理装置から飛散する油剤ミストの拡散を抑制可能な糸処理機構及び当該糸処理機構を備える紡糸引取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、摩擦低減、静電気抑制、パッケージ形状の向上、糸加熱の均一性向上等を目的として、糸に油剤が付与されることがある。油剤が付与された糸が走行する糸走行空間に流体を噴射することで糸に所定の処理を施す糸処理装置においては、流体の噴射によって、糸に付着している油剤の一部が吹き飛ばされ油剤ミストとなる。このような油剤ミストが糸処理装置から飛散すると、樹脂部品に付着してその樹脂部品を劣化させたり、油滴化した油剤が糸やパッケージに付着して糸品質を低下させたりするおそれがあった。このような糸処理装置として、例えば、交絡装置やマイグレーションノズル等が知られている。
【0003】
上記問題を解決するため、例えば特許文献1では、交絡装置の糸走行空間から噴出される噴流をダクト体に導き、ダクト体の内部に設けられたフィルタで油剤ミストを油滴化し回収する技術が開示されている。また、特許文献2には、交絡装置で発生する油剤ミストなどの浮遊成分を吸引する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-218706号公報
【特許文献2】特開2017-509810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように交絡装置の近くにダクト体を配置するだけでは、ダクト体に流入しない油剤ミストも多く存在し、油剤ミストの拡散を十分に抑えることができなかった。また、特許文献2のように吸引によって油剤ミストを回収する場合、油剤ミストをどれだけ回収できるかは、吸引装置の能力に大きく依存することになり、吸引装置の能力が低ければ油剤ミストが拡散するおそれがあった。
【0006】
以上の課題に鑑みて、本発明は、糸処理装置から飛散する油剤ミストの拡散を効果的に抑制可能な糸処理機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る糸処理機構は、油剤が付与された糸が走行する糸走行空間が第1方向に沿って形成された糸処理部を有し、前記糸走行空間に流体を噴射することで前記糸に所定の処理を施す糸処理装置と、前記第1方向において前記糸処理部から離れて配置され、前記第1方向と直交する第2方向の成分を有する案内方向に延びる流体案内部と、前記流体案内部の基端から前記案内方向に引いた仮想線上に形成された導入口と、前記導入口とは異なる位置に形成された排気口とを有する排気室が、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に延びるように形成されたカバー部材と、前記第3方向に直交する断面において前記排気室の内壁から内側に突出し、前記排気室内の前記流体が前記導入口から流出することを抑制する流出抑制部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、糸処理装置の糸走行空間に噴射された流体は、糸走行空間から排出された後、流体案内部に衝突する。流体案内部に衝突した流体の大部分は、流体案内部に沿って案内方向に流れ、導入口から排気室に流入する。排気室に一旦流入した流体は、流出抑制部が設けられているので、導入口から排気室の外へ流出することが抑制される。このため、継続的に導入口から排気室に流入する流体は、排気口へと向かわざるを得ず、排気口への流れが形成されやすくなる。したがって、油剤ミストを流体とともに排気口から効率的に排出することができ、ひいては、糸処理装置から飛散する油剤ミストの拡散を効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記流出抑制部は、前記案内方向の成分を有し、且つ、前記仮想線に近づく成分を有する方向に突出しているとよい。
【0010】
このような構成によれば、排気室内の流体が流出抑制部に衝突すると、その流体は流出抑制部の案内方向の成分を有する方向、すなわち、排気室の内部に向かう方向へと流れやすくなる。したがって、排気室内の流体が導入口から流出することをより効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記流出抑制部が、前記第1方向において前記導入口の両側に設けられているとよい。
【0012】
流出抑制部を導入口の両側に設けることで、排気室内の流体の導入口からの流出をより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記排気室の内壁と前記流出抑制部とによって下側に凸の溝部が形成されているとよい。
【0014】
このような構成によれば、排気室内で油剤ミストが油滴化して生じた油滴を溝部で回収することができ、油滴による装置や糸の汚染を抑えられる。
【0015】
本発明において、前記流出抑制部は、前記カバー部材に一体的に形成されているとよい。
【0016】
こうすることで、部品点数を削減できるとともに、流出抑制部の組み付けが不要となる。
【0017】
本発明において、前記排気口は、前記第3方向において前記排気室の一端部に形成されているとよい。
【0018】
このような構成であれば、排気室内で排気口がある第3方向の一端部に向かう流体の流れが形成されやすくなり、排気室内での流れの乱れを抑えられる。したがって、油剤ミストを流体とともに排気口からより効率的に排出することができる。
【0019】
本発明において、前記排気室の内壁は、前記第3方向に直交する断面において外側に凸の湾曲部を有するとよい。
【0020】
このような構成によれば、第3方向に直交する断面において、排気室内で旋回流が形成されやすくなるので、導入口付近において流体が排気室の内部へと向かう流れが優勢となる。したがって、排気室内の流体が導入口から流出することをより効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明において、前記湾曲部が、前記第1方向において前記導入口の両側に設けられているとよい。
【0022】
このような構成によれば、排気室内での旋回流の形成がより促進されることになり、排気室内の流体が導入口から流出することを一層効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明において、前記第3方向に直交する断面において前記流体案内部を挟んで前記糸処理部の反対側に、前記流出抑制部の基端から前記案内方向の反対向きの成分を有し、且つ、前記仮想線に近づく成分を有する方向に突出する突出部が設けられているとよい。
【0024】
このような構成によれば、糸走行空間から排出された流体の一部が流体案内部によって排気室へと案内されずに、流体案内部の外側に流れたとしても、その流体を突出部によって排気室へと導くことができる。したがって、油剤ミストの拡散をより効果的に抑制できる。
【0025】
本発明において、前記突出部は、前記カバー部材に一体的に形成されているとよい。
【0026】
こうすることで、部品点数を削減できるとともに、突出部の組み付けが不要となる。
【0027】
本発明において、前記第1方向において前記糸走行空間の両側に前記流体案内部が配置されており、前記排気室は、前記第1方向の一方側に配置された第1排気室と、前記第1方向の他方側に配置された第2排気室とに区画されており、前記第1排気室及び前記第2排気室のそれぞれに前記導入口及び前記排気口が形成されているとよい。
【0028】
このような構成であれば、糸走行空間の両側から排出された流体は排気室内で合流することなく、区画された第1排気室と第2排気室とにそれぞれ流入し、排気口から排出される。したがって、第1排気室及び第2排気室で流れが乱れにくくなり、排気口へと向かう流れをより形成しやすくなる。
【0029】
本発明において、前記糸処理装置は、前記糸処理部及び前記流体案内部を支持する基体を有しており、前記流体案内部は、前記基体から前記案内方向に立ち上がっているとよい。
【0030】
このような構成によれば、糸走行空間から排出され、流体案内部に衝突した流体が、基体に遮られることによって、排気室に導かれやすくなる。したがって、油剤ミストの拡散を一層効果的に抑えられる。
【0031】
本発明において、前記流体案内部に、前記糸が挿入されるガイド溝が形成されているとよい。
【0032】
このような構成によれば、流体案内部を糸規制部材としても利用できるので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0033】
本発明において、前記糸処理部に、前記糸走行空間が前記第3方向に複数形成されており、前記導入口は、前記第3方向において複数の前記糸走行空間が形成されている範囲にわたって形成されているとよい。
【0034】
このような糸処理装置によれば、複数の糸に対して同時に所定の処理を施すことができる。しかも、導入口を広く形成することで、複数の糸走行空間から排出された流体を排気室に効率的に取り込めるので、油剤ミストの拡散を効果的に抑えることができる。
【0035】
本発明に係る紡糸引取装置は、前記糸に油剤を付与する油剤付与装置と、糸走行方向において前記油剤付与装置の下流側に配置された上記何れかに記載の糸処理機構と、を備えることを特徴とする。
【0036】
このような紡糸引取装置であれば、すでに説明したように、糸処理装置から飛散する油剤ミストの拡散を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態に係る糸処理機構を備える紡糸引取装置の模式図である。
図2】交絡装置の斜視図である。
図3】糸処理機構の外観を示す斜視図である。
図4】糸処理機構の断面図である。
図5】糸処理機構における流体の流れを示す流体解析結果である。
図6】各変形例に係る糸処理機構における流体の流れを示す流体解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(紡糸引取装置)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る糸処理機構を備える紡糸引取装置の模式図である。図1に示される上下前後の方向を、それぞれ、紡糸引取装置1の上下前後の方向と定義する。
【0039】
紡糸引取装置1は、紡糸装置100から紡出される複数の合成繊維糸Yを引き取り、複数のボビンBに巻き取って複数のパッケージPを形成する。紡糸引取装置1は、油剤ガイド2(本発明の油剤付与装置に相当)、延伸装置3、第1糸処理機構4、第1引取ローラ5、第2糸処理機構6、第2引取ローラ7、巻取装置8を有する。紡糸装置100においては、ギヤポンプ等からなるポリマー供給装置(図示省略)から供給されたポリマーが、不図示の紡糸口金を介して下方に押し出される。
【0040】
紡糸装置100から紡出された複数の糸Yは、図1の紙面垂直方向に並んだ状態で、油剤ガイド2、延伸装置3、第1糸処理機構4、第1引取ローラ5、第2糸処理機構6、第2引取ローラ7に沿った糸道を走行する。さらに、複数の糸Yは、第2引取ローラ7から前後方向に分配され、巻取装置8において複数のボビンBにそれぞれ巻き取られる。
【0041】
紡糸装置100から紡出された複数の糸Yは、油剤ガイド2によって油剤が付与された後、延伸装置3に送られる。本実施形態の油剤ガイド2は、糸走行方向において紡糸装置100と延伸装置3との間に配置されているが、油剤ガイド2は、糸走行方向において第1糸処理機構4よりも上流側の任意の位置に配置可能である。延伸装置3は、不図示の複数の加熱ローラが保温ボックスに収容された構成となっている。延伸装置3は、複数の加熱ローラにより、紡糸装置100から紡出された複数の糸Yをそれぞれ加熱しつつ延伸する。延伸装置3で延伸された複数の糸Yは、第1引取ローラ5及び第2引取ローラ7によって巻取装置8に送られる。
【0042】
第1糸処理機構4は、マイグレーションノズル40(本発明の糸処理装置に相当)とカバー部材50を有して構成される。マイグレーションノズル40は、後で詳細に説明する交絡装置20と概ね同じ構成を有しており、圧縮空気を交絡装置20よりも低圧で噴射することで、糸Yに油剤をなじませる。第2糸処理機構6は、交絡装置20(本発明の糸処理装置に相当)とカバー部材30を有して構成される。交絡装置20は、圧縮空気を高圧で噴射することで、糸Yに交絡を付与する。第1糸処理機構4及び第2糸処理機構6は、同様の構成を有するので、以下では第2糸処理機構6についてのみ詳細に説明する。なお、第1糸処理機構4及び第2糸処理機構6の配置については、第2糸処理機構6が第1糸処理機構4よりも糸走行方向の下流側に配置されていれば、適宜変更が可能である。また、本実施形態のように第1糸処理機構4及び第2糸処理機構6の両方を設けることは必須ではなく、どちらか一方のみを設ける構成でもよい。
【0043】
巻取装置8は、機台11、ターレット12、2本のボビンホルダ13、支持枠体14、接触ローラ15、トラバース装置16を有する。巻取装置8は、ボビンホルダ13を回転させることによって、第2引取ローラ7から送られてきた複数の糸Yを、複数のボビンBに同時に巻き取り、複数のパッケージPを形成する。
【0044】
機台11には、円板状のターレット12が取り付けられている。ターレット12は、不図示のモータによって回転駆動される。ターレット12には、円筒状の2本のボビンホルダ13が、前後方向に延びる姿勢で片持ち支持されている。各ボビンホルダ13には、その軸方向(前後方向)に複数のボビンBが並んだ状態で装着される。ターレット12が回転することにより、2本のボビンホルダ13が、上側の巻取位置と下側の退避位置との間で移動可能となっている。
【0045】
支持枠体14は、前後方向に延びる部材であり、その後端部が機台11に固定されている。支持枠体14の下部には、前後方向に延びるローラ支持部材17が、支持枠体14に対して上下に移動可能に取り付けられている。ローラ支持部材17には、前後方向に延びる接触ローラ15が回転自在に支持されている。この接触ローラ15によってパッケージPに所定の接圧が付与されることにより、パッケージPの形状が整えられる。
【0046】
ローラ支持部材17には、トラバース装置16が配置されている。トラバース装置16は、前後方向に並んだ複数のトラバースガイド16aを有する。複数のトラバースガイド16aは、不図示のモータによって駆動されて、前後方向に往復移動する。糸Yが掛けられた状態でトラバースガイド16aが往復移動することにより、糸Yは、支点ガイド18を中心に前後に綾振りされながら、対応するボビンBに巻き取られる。
【0047】
(交絡装置)
図2は、交絡装置20の斜視図である。ここで、第1方向とは、後述の糸走行空間24aが貫通している方向を指す。換言すると、糸走行空間24aは第1方向に沿って形成されている。第2方向とは、第1方向と直交する方向である。第3方向とは、第1方向及び第2方向と直交する方向であり、複数の糸走行空間24aが並んでいる方向を指す。
【0048】
交絡装置20は、圧縮空気によって複数の糸Yに交絡を付与する。交絡装置20は、基体21と、糸処理部22と、2つの糸規制部材23(本発明の流体案内部に相当)とを有する。基体21は、糸処理部22及び糸規制部材23を第2方向の一方側において支持する。基体21には、糸処理部22に圧縮空気を供給するための流路(図示省略)が形成されている。
【0049】
糸処理部22は、複数の糸処理ブロック24が第3方向に並べられた構成を有する。各糸処理ブロック24には糸走行空間24aが第1方向に沿って形成されており、糸走行空間24aの内部を糸Yが走行する。互いに隣接する糸処理ブロック24の間の上部には、糸走行空間24aに糸Yを挿入するための糸挿入路24bが形成されている。第1方向における糸処理ブロック24の中央部には、糸走行空間24aに向かって圧縮空気を噴射する噴射口(図示省略)が形成されている。糸走行空間24aを走行している糸Yは、噴射口から噴射される圧縮空気の作用を受けることで交絡が付与される。噴射された圧縮空気は、糸走行空間24aの両端から噴流となって排出される。
【0050】
2つの糸規制部材23は、第1方向において糸処理部22の両側に糸処理部22と間隔を空けてそれぞれ配置されている。糸規制部材23は、基体21から第2方向の他方側に立ち上がっており、第3方向に延びる板状の部材である。糸規制部材23には、複数のガイド溝23aが第3方向に等間隔で形成されている。ガイド溝23aは、上向きに開放されたスリット形状を有する。各糸Yが対応するガイド溝23aに挿入されることで、交絡装置20における複数の糸Yの糸道が規定される。本実施形態では、糸規制部材23が基体21から延びる(立ち上がっている)案内方向が、第2方向の他方側に向かう方向と一致している。しかしながら、糸規制部材23の案内方向は、第2方向の他方側への成分を有する方向であれば、第2方向に対して傾いていても構わない。
【0051】
(糸処理機構)
上述のように構成された交絡装置20では、圧縮空気(本発明における流体の一例。以下、流体と言う)が噴射されることによって、糸Yに付着している油剤の一部が吹き飛ばされ油剤ミストとなる。このような油剤ミストが糸走行空間24aからの噴流とともに交絡装置20から飛散すると、樹脂部品に付着してその樹脂部品を劣化させたり、糸YやパッケージPに付着して糸品質を低下させたりするおそれがある。そこで、第2糸処理機構6には、交絡装置20から飛散する油剤ミストを効率的に回収し、油剤ミストの拡散を抑制するためのカバー部材30が設けられている。以下では、第2糸処理機構6(以下、単に糸処理機構6と言う)のカバー部材30について説明するが、第1糸処理機構4のカバー部材50も同様の構成である。
【0052】
図3は、糸処理機構6の外観を示す斜視図である。図4は、糸処理機構6の断面図であり、より詳細には、第3方向と直交する断面における断面図である。図3に示すように、糸処理機構6は、交絡装置20と、筐体29と、カバー部材30を有して構成される。筐体29は、交絡装置20を収容する箱状の部材であり、第2方向の他方側の面が開口面となっている。筐体29の第3方向における一方側の端部は、紡糸引取装置1の不図示の機台等に支持体60を介して固定されている。
【0053】
図4に示すように、カバー部材30は、第2方向において交絡装置20の他方側に配置されており、交絡装置20を覆っている。筐体29とカバー部材30との間には、交絡装置20で交絡が付与される糸Yが通過できる隙間が確保されている。カバー部材30は第3方向に延びており、その内部には同じく第3方向に延びる排気室31が形成されている。本実施形態の排気室31は、糸走行方向上流側の糸規制部材23と対向する第1排気室31aと、糸走行方向下流側の糸規制部材23と対向する第2排気室31bとに区画されている。つまり、排気室31が、第1方向の一方側に配置された第1排気室31aと、第1方向の他方側に配置された第2排気室31bとに区画されている。以下、第1排気室31aと第2排気室31bとを特に区別しない場合は、単に排気室31と言う。
【0054】
排気室31の第2方向における一方側には導入口32が形成されており、排気室31の第3方向における一方側の端部には排気口33(図3参照)が形成されている。第1排気室31aの導入口32は、糸走行方向上流側に配置された糸規制部材23の基端から糸規制部材23の案内方向に引いた仮想線L1上に形成されている。第2排気室31bの導入口32は、糸走行方向下流側に配置された糸規制部材23の基端から糸規制部材23の案内方向に引いた仮想線L2上に形成されている。導入口32は、第3方向において複数の糸走行空間24aが形成されている範囲にわたって形成されている。
【0055】
導入口32は、第1方向において排気室31の中央部に形成されている。第3方向に直交する断面において、排気室31の内壁は楕円に近い形状を有しており、導入口32を挟んで第1方向の両側に湾曲部34、35を有する。湾曲部34、35は、第3方向に直交する断面において外側に凸の湾曲形状を有している。湾曲部34、35は、第2方向における他方側において直線部36とつながっている。
【0056】
湾曲部34、35のうち、直線部36とつながっている側と反対側の端部には、排気室31の内側に突出する流出抑制部37、38が形成されている。流出抑制部37、38は、排気室31の内壁から、糸規制部材23の案内方向の成分(本実施形態では第2方向の他方側への成分)を有し、且つ、仮想線L1(L2)に近づく成分を有する方向に突出している。流出抑制部37の先端と流出抑制部38の先端との間の開口部が導入口32となっている。
【0057】
カバー部材30には、第3方向に直交する断面において糸規制部材23を挟んで糸処理部22の反対側に、突出部39が形成されている。突出部39は、流出抑制部38の基端から案内方向の反対向きの成分(本実施形態では第2方向の一方側への成分)を有し、且つ、仮想線L1(L2)に近づく成分を有する方向に突出している。
【0058】
第1排気室31a及び第2排気室31bのそれぞれの第3方向における一方側の端部に設けられた排気口33は、不図示の排気ダクトと接続されている。これによって、導入口32から排気室31に流入した流体を排気口33から排出することができる。排気口33に接続されている排気ダクトは、大気開放されていてもよいし、吸引装置に接続されていてもよい。なお、カバー部材30の第3方向における他方側の端部は閉じている。
【0059】
交絡装置20を覆うようにカバー部材30を設けると、交絡装置20への糸掛けが困難となる。そこで、本実施形態では、カバー部材30を第3方向の一方側に移動できるように、不図示の移動機構が設けられている。カバー部材30を支持体60の奥側に移動させれば、交絡装置20が開放された状態となり、容易に糸掛けが行える。なお、糸処理部22及び糸規制部材23の一部は筐体29の開口面から突出しており、カバー部材30を移動させるときにカバー部材30の第3方向の他方側の端面と干渉してしまう。そこで、図3に示すように、カバー部材30の第3方向の他方側の端面には、糸規制部材23との干渉を避けるための切欠き30a、及び、糸処理部22との干渉を避けるための切欠き30bが形成されている。しかし、カバー部材30を移動させるための具体的な構成は、ここで説明した構成に限定されない。また、カバー部材30を簡単に着脱可能に構成することで、糸掛けを容易にしてもよい。
【0060】
(流体解析結果)
図5は、糸処理機構6における流体の流れを示す流体解析結果である。ここでは、図5を参照しながら、糸処理機構6における流体の流れについて説明する。
【0061】
糸処理部22の糸走行空間24aに噴射された流体は、糸走行空間24aの両側から排出され、糸規制部材23に達する。糸規制部材23に達した流体の大部分は、糸規制部材23に衝突した後、糸規制部材23に沿って第2方向の他方側に流れることで、導入口32から排気室31へと流入する(矢印A参照)。このように、糸規制部材23を排気室31に流体を導く部材として利用することで、糸処理部22から排出された流体の大部分を排気室31に流入させることができる。
【0062】
一方、糸規制部材23に達した流体の一部は、糸規制部材23のガイド溝23aを通過する。ガイド溝23aを通過した流体の一部は、カバー部材30の突出部39及び流出抑制部38によって導入口32に導かれ、導入口32から排気室31へと流入する(矢印B参照)。ガイド溝23aを通過した流体は、筐体29とカバー部材30との間の隙間を通って外部へ流出しやすいが、突出部39を設けることで流体の外部への流出を抑えることができる。
【0063】
排気室31に流入した流体は、排気室31の内壁に衝突した後、湾曲部34に向かう流れ(矢印C参照)と、湾曲部35に向かう流れ(矢印D参照)とに分岐する。何れの流れも、湾曲部34、35に沿って流れることで、渦を巻くような旋回流となる。さらに、流出抑制部37、38が設けられていることで、旋回流が導入口32から流出しにくくなり、排気室31の内部で安定した旋回流が形成される。排気口33が排気室31の第3方向の一方側の端部に設けられているので、旋回流が螺旋を描くように排気口33へと向かう三次元的な流れが形成され、排気口33からの排気が促進される。
【0064】
以上のように、糸処理機構6では、糸処理部22の糸走行空間24aに噴射された流体の大部分を排気室31に取り込み、さらに、一旦排気室31に流入した流体を排気室31から逃がさないようにする工夫が施されている。したがって、多くの流体とともに多くの油剤ミストが排気室31に取り込まれ、排気口33から排出されることで、油剤ミストの拡散を効果的に抑えることができる。流体解析結果によれば、流出抑制部37、38を設けなかった糸処理機構では、排気口33からの流体の回収率が79.5%だったのに対し、本実施形態での流体の回収率は99.0%と大幅に向上した。
【0065】
(効果)
糸処理機構6によれば、交絡装置20(糸処理装置)の糸走行空間24aに噴射された流体は、糸走行空間24aから排出された後、糸規制部材23(流体案内部)に衝突する。糸規制部材23に衝突した流体の大部分は、糸規制部材23に沿って糸規制部材23の案内方向に流れ、導入口32から排気室31に流入する。排気室31に一旦流入した流体は、流出抑制部37、38が設けられているので、導入口32から排気室31の外へ流出することが抑制される。このため、継続的に導入口32から排気室31に流入する流体は、排気口33へと向かわざるを得ず、排気口33への流れが形成されやすくなる。したがって、油剤ミストを流体とともに排気口33から効率的に排出することができ、ひいては、交絡装置20から飛散する油剤ミストの拡散を効果的に抑制することができる。
【0066】
本実施形態では、流出抑制部37、38は、糸規制部材23の案内方向の成分を有し、且つ、仮想線L1(L2)に近づく成分を有する方向に突出している。このような構成によれば、排気室31内の流体が流出抑制部37、38に衝突すると、その流体は流出抑制部37、38の案内方向の成分を有する方向、すなわち、排気室31の内部に向かう方向へと流れやすくなる。したがって、排気室31内の流体が導入口32から流出することをより効果的に抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、流出抑制部37、38が、第1方向において導入口32の両側に設けられている。流出抑制部37、38を導入口32の両側に設けることで、排気室31内の流体の導入口32からの流出をより効果的に抑制することができる。
【0068】
本実施形態において、例えば、図4において第2方向の一方側が鉛直方向の下側、第2方向の他方側が鉛直方向の上側となるようにカバー部材30を配置し、排気室31の内壁と流出抑制部37、38とによって下側に凸の溝部が形成されることが好ましい。このような構成によれば、排気室31内で油剤ミストが油滴化して生じた油滴を溝部で回収することができ、油滴による装置や糸Yの汚染を抑えられる。ただし、カバー部材30の配置は上述の配置に限定されるものではない。
【0069】
本実施形態では、流出抑制部37、38は、カバー部材30に一体的に形成されている。こうすることで、部品点数を削減できるとともに、流出抑制部37、38の組み付けが不要となる。
【0070】
本実施形態では、排気口33は、第3方向において排気室31の一端部に形成されている。このような構成であれば、排気室31内で排気口33がある第3方向の一端部に向かう流体の流れが形成されやすくなり、排気室31内での流れの乱れを抑えられる。したがって、油剤ミストを流体とともに排気口33からより効率的に排出することができる。
【0071】
本実施形態では、排気室31の内壁は、第3方向に直交する断面において外側に凸の湾曲部34、35を有する。このような構成によれば、第3方向に直交する断面において、排気室31内で旋回流が形成されやすくなるので、導入口32付近において流体が排気室31の内部へと向かう流れが優勢となる。したがって、排気室31内の流体が導入口32から流出することをより効果的に抑制することができる。
【0072】
本実施形態では、湾曲部34、35が、第1方向において導入口32の両側に設けられている。このような構成によれば、排気室31内での旋回流の形成がより促進されることになり、排気室31内の流体が導入口32から流出することを一層効果的に抑制することができる。
【0073】
本実施形態では、第3方向に直交する断面において糸規制部材23を挟んで糸処理部22の反対側に、流出抑制部38の基端から案内方向の反対向きの成分を有し、且つ、仮想線L1(L2)に近づく成分を有する方向に突出する突出部39が設けられている。このような構成によれば、糸走行空間24aから排出された流体の一部が糸規制部材23によって排気室31へと案内されずに、糸規制部材23の外側に流れたとしても、その流体を突出部39によって排気室31へと導くことができる。したがって、油剤ミストの拡散をより効果的に抑制できる。
【0074】
本実施形態では、突出部39は、カバー部材30に一体的に形成されている。こうすることで、部品点数を削減できるとともに、突出部39の組み付けが不要となる。
【0075】
本実施形態では、第1方向において糸走行空間24aの両側に糸規制部材23が配置されており、排気室31は、第1方向の一方側に配置された第1排気室31aと、第1方向の他方側に配置された第2排気室31bとに区画されており、第1排気室31a及び第2排気室31bのそれぞれに導入口32及び排気口33が形成されている。このような構成であれば、糸走行空間24aの両側から排出された流体は排気室31内で合流することなく、区画された第1排気室31aと第2排気室31bとにそれぞれ流入し、排気口33から排出される。したがって、第1排気室31a及び第2排気室31bで流れが乱れにくくなり、排気口33へと向かう流れをより形成しやすくなる。
【0076】
本実施形態では、交絡装置20は、糸処理部22及び糸規制部材23を支持する基体21を有しており、糸規制部材23は、基体21から案内方向に立ち上がっている。このような構成によれば、糸走行空間24aから排出され、糸規制部材23に衝突した流体が、基体21に遮られることによって、排気室31に導かれやすくなる。したがって、油剤ミストの拡散を一層効果的に抑えられる。
【0077】
本実施形態では、流体案内部(糸規制部材23)に、糸Yが挿入されるガイド溝23aが形成されている。このような構成によれば、流体案内部を糸規制部材23としても利用できるので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0078】
本実施形態では、糸処理部22に、糸走行空間24aが第3方向に複数形成されており、導入口32は、第3方向において複数の糸走行空間24aが形成されている範囲にわたって形成されている。このような交絡装置20によれば、複数の糸Yに対して同時に所定の処理を施すことができる。しかも、導入口32を広く形成することで、複数の糸走行空間24aから排出された流体を排気室31に効率的に取り込めるので、油剤ミストの拡散を効果的に抑えることができる。
【0079】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0080】
上記実施形態では、第1方向において導入口32の両側に流出抑制部37、38が設けられているものとした。しかしながら、第1方向において導入口32の片側のみに流出抑制部が設けられていてもよい。例えば、図6のa図に解析結果を示している変形例では、流出抑制部38を省略しているが、それでも流体の回収率は87.3%と良好な結果となった。
【0081】
上記実施形態では、排気室31が第1排気室31aと第2排気室31bとに区画されているものとした。しかしながら、図6のb図に解析結果を示している変形例のように、第1排気室31aと第2排気室31bとを1つに統合してもよい。排気室31内での旋回流は乱れやすくなるが、それでも流体の回収率は93.1%と良好な結果となった。
【0082】
上記実施形態では、第1方向において導入口32の両側において、排気室31の内壁に外側に凸の湾曲部34、35が設けられるものとした。しかしながら、第1方向において導入口32の片側のみに湾曲部が設けられていてもよいし、湾曲部を設けなくてもよい。例えば、図6のc図に解析結果を示している変形例では、湾曲部34、35を設けずに、第3方向に直交する断面において排気室31の内壁を矩形状としたが、それでも流体の回収率は86.2%と良好な結果となった。
【0083】
上記実施形態では、排気口33が第3方向において排気室31の一端部に形成されているものとした。しかしながら、排気口が第3方向において排気室31の両端部に形成されていてもよいし、他の部位に排気口が形成されていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、第1方向において糸処理部22の両側に、糸規制部材23と、導入口32及び排気口33を有する排気室31とがそれぞれ配置されるものとした。しかしながら、糸規制部材23及び排気室31は、第1方向において糸処理部22の片側のみに配置されてもよい。この場合、糸規制部材23及び排気室31は、糸処理部22の糸走行方向下流側に設けるのが好ましい。なぜなら、糸処理部22の糸走行方向下流側では、糸走行空間24aから排出された油剤ミストを含む流体が、糸Yの走行に伴う随伴流とともに筐体29とカバー部材30との間から流出しやすいからである。また、排気室31及び排気口33は1つのみとし、導入口32のみを第1方向において糸処理部22の両側に形成するようにしてもよい。
【0085】
上記実施形態では、流出抑制部37、38がカバー部材30に一体的に形成されているものとした。しかしながら、流出抑制部37、38をカバー部材30とは別の部材として設けてもよい。
【0086】
上記実施形態では、突出部39がカバー部材30に一体的に形成されているものとした。しかしながら、突出部39をカバー部材30とは別の部材として設けてもよい。また、突出部39を設けることは必須ではなく、突出部39を省略してもよい。
【0087】
上記実施形態では、糸規制部材23が基体21から立ち上がっているものとした。しかしながら、糸規制部材23が基体21から立ち上がることは必須ではなく、他の態様で設けられてもよい。仮に基体21が省略される場合、糸走行空間24aから排出された流体は糸規制部材23に沿って、カバー部材30の反対側にも向かうことになるが、それでも油剤ミストの拡散を抑制する効果は得られる。この場合、流体が糸規制部材23に沿ってカバー部材30の反対側に向かうことを抑制するためのかえし部が糸規制部材23に設けられると好適である。あるいは、糸規制部材23が第2方向の一方側においてもカバー部材30によって覆われるようにカバー部材30の形状を変更してもよい。あるいは、カバー部材30を第2方向において糸規制部材23の両側に設けるようにしてもよい。
【0088】
上記実施形態では、交絡装置20(糸処理装置)に設けられた糸規制部材23を本発明の流体案内部として兼用するものとした。しかしながら、糸規制部材23とは別に流体案内部を設けるようにしてもよいし、流体案内部を交絡装置20以外に設けてもよい。例えば、カバー部材30に、糸走行空間24aから排出された流体を排気室31の導入口32に案内する部位を設け、この部位を流体案内部として機能させるようにしてもよい。
【0089】
上記実施形態では、本発明の糸処理装置に相当する交絡装置20及びマイグレーションノズル40が何れも複数の糸Yに所定の処理を行うものとした。しかしながら、糸処理装置は1本の糸Yに所定の処理を行うものでもよい。
【0090】
上記実施形態では、紡糸引取装置1が延伸装置3を備えるものとした。しかしながら、本発明を、延伸装置3を備えない紡糸引取装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1:紡糸引取装置
2:油剤ガイド(油剤付与装置)
6:糸処理機構
20:交絡装置(糸処理装置)
21:基体
22:糸処理部
23:糸規制部材(流体案内部)
23a:ガイド溝
24a:糸走行空間
30:カバー部材
31:排気室
31a:第1排気室
31b:第2排気室
32:導入口
33:排気口
34、35:湾曲部
37、38:流出抑制部
39:突出部
Y:糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6