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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023624
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230209BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20230209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230209BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230209BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/396
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129302
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AA06
2G216BA23
2G216BA53
2G216CB51
2G216CD03
5G503BA03
5G503BB01
5G503EA09
5H030AA09
5H030AS20
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】 等価モデルの作成等面倒な演算が必要無く、更に外部電源を必要としない診断機能を備えた蓄電池システムを提供する。
【解決手段】 複数の蓄電池セルが直列接続されて構成された蓄電池ユニット1、蓄電池ユニット1を診断る診断回路2を備え、診断回路2は、蓄電池ユニット1を2つの蓄電池ブロック11に分け、それぞれの蓄電池ブロック11に対して抵抗体21を介して短絡させる短絡路6と、短絡路6のオン/オフを制御するコントローラCPU77と、短絡オン操作により発生した電流を計測する電流センサ21aと、蓄電池ブロック11の電圧を計測する電圧センサ3とを有し、コントローラCPU77は計測した電流及び電圧から蓄電池ブロック11の内部抵抗を算出して蓄電池ユニット1の劣化度を診断する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池セルが直列接続されて構成された蓄電池ユニットを備えた蓄電池システムであって、
前記蓄電池ユニットを診断する診断回路を備え、
前記診断回路は、前記蓄電池ユニットを少なくとも2つの蓄電池ブロックに分け、それぞれの蓄電池ブロックに対して電流制限手段を介して短絡させる短絡路と、
前記短絡路のオン/オフを制御する短絡制御部と、
短絡オン操作により前記短絡路に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記蓄電池ブロックの一部の蓄電池セルの電圧、或いは蓄電池ブロック全体の電圧を計測する電圧計測部と、
計測した電流及び電圧から前記蓄電池ブロックの内部抵抗を算出して前記蓄電池ユニットの劣化度を診断する劣化診断部と、
診断結果を通知する通知部と、を有することを特徴とする蓄電池システム。
【請求項2】
前記診断回路は、前記蓄電池ユニットを動作電源とすることを特徴とする請求項1記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記蓄電池ユニットは正極側と負極側の2つの蓄電池ブロックから成り、双方の蓄電池ブロックに前記短絡路が設けられ、
2つの前記短絡路は共通する中間電路を有して、当該中間電路には短絡電流により発生するエネルギーを蓄えるリアクトルが配置されており、
前記短絡制御部は、前記2つの蓄電池ブロックの間で交互に短絡制御を実施し、その際、双方の短絡路が一定時間同時にオフとなる制御を実施して、一方の前記短絡路の短絡電流で前記リアクトルに蓄えられたエネルギーが、切替操作の際に他方の前記蓄電池ブロックの充電電流として使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、備えている蓄電池ユニットの劣化レベルを診断する機能を備えた蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池は劣化するとその機能を十分に発揮できなくなるため、定期的に診断する必要がある。この診断は内部抵抗を計測することで判定される。
例えば特許文献1では、蓄電池に外部電源で発生させた交流電流を加えて、蓄電池に発生する電圧値から内部抵抗値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-134467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の内部抵抗を算出する技術は、交流電流を注入するための外部電源を必要としているし、二次電池の等価モデルを作成するために、各周波数の内部インピーダンスを観測した特性図を作成しなければならなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、等価モデルの作成等面倒な演算が必要無く、更に外部電源を必要としない診断機能を備えた蓄電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、複数の蓄電池セルが直列接続されて構成された蓄電池ユニットを備えた蓄電池システムであって、蓄電池ユニットを診断する診断回路を備え、診断回路は、蓄電池ユニットを少なくとも2つの蓄電池ブロックに分け、それぞれの蓄電池ブロックに対して電流制限手段を介して短絡させる短絡路と、短絡路のオン/オフを制御する短絡制御部と、短絡オン操作により短絡路に流れる電流を計測する電流計測部と、蓄電池ブロックの一部の蓄電池セルの電圧、或いは蓄電池ブロック全体の電圧を計測する電圧計測部と、計測した電流及び電圧から蓄電池ブロックの内部抵抗を算出して蓄電池ユニットの劣化度を診断する劣化診断部と、診断結果を通知する通知部と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、蓄電池ブロックを短絡させて内部抵抗を算出することで劣化度を判定するため、等価モデルの作成等面倒な演算を必要とせず、簡易な制御で判定できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、診断回路は、蓄電池ユニットを動作電源とすることを特徴とする。
この構成によれば、外部電源が必要無い。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、蓄電池ユニットは正極側と負極側の2つの蓄電池ブロックから成り、双方の蓄電池ブロックに短絡路が設けられ、2つの短絡路は共通する中間電路を有して、当該中間電路には短絡電流により発生するエネルギーを蓄えるリアクトルが配置されており、短絡制御部は、2つの蓄電池ブロックの間で交互に短絡制御を実施し、その際、双方の短絡路が一定時間同時にオフとなる制御を実施して、一方の短絡路の短絡電流でリアクトルに蓄えられたエネルギーが、切替操作の際に他方の蓄電池ブロックの充電電流として使用されることを特徴とする。
この構成によれば、短絡電流が他のブロックの充電に使用されるため、劣化診断に使用される電力は僅かな電力で済む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電池ブロックを短絡させて内部抵抗を算出して劣化度を判定するため、等価モデルの作成等面倒な演算を必要とせず、簡易な制御で判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る蓄電池システムの一例を示す構成図である。
図2】コントローラのブロック図である。
図3図1の蓄電池システムの短絡制御の流れを示し、(a)は上側ブロックを短絡させる説明図、(b)は短絡を終了した後の電流の流れを示す説明図である。
図4図1の蓄電池システムの短絡制御の流れを示し、(a)は下側ブロックを短絡させる説明図、(b)は短絡を終了した後の電流の流れを示す説明図である。
図5】蓄電池システムの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る蓄電池システムの一例を示す構成図であり、1は蓄電池ユニット、2は蓄電池の状態を診断する診断回路、3は蓄電池の電圧を計測する電圧センサであり、4は蓄電池ユニット1の出力電力を図示しない負荷に供給するために所定の電圧の交流或いは直流に変換する電力変換装置である。
【0012】
蓄電池ユニット1は、蓄電池セルを複数直列接続して形成され、蓄電池ユニット1の正極端子部P1及び負極端子部P2が、電力線L11,L12を介して電力変換装置4に接続されている。但し、直列接続された蓄電池セルは2つの蓄電池ブロック11(第1蓄電池ブロック11a、第2蓄電池ブロック11b)に分けて構成されている。
【0013】
2つの蓄電池ブロック11は、ほぼ同一数の蓄電池セルを有して構成され、それぞれ短絡路6(第1短絡路6a、第2短絡路6b)を備えている。
蓄電池ブロック11同士の接続部である蓄電池ユニット1の中間点Qには、短絡路6の共通の電路である中間電路9が接続されている。
電圧センサ3は、それぞれの蓄電池ブロック11の電圧を計測するよう設置され、計測データは診断回路2に送信される。
【0014】
診断回路2は、短絡路6及びこの短絡路6による短絡を制御して劣化を診断するコントローラ7により構成されている。
短絡路6は、第1短絡路6a、第2短絡路6bの双方に、短絡電流を制限する電流制限手段としての抵抗体21、短絡路6をオン/オフする半導体素子22が設けられ、抵抗体21には短絡電流を計測する電流センサ21aが設けられている。
【0015】
図2はコントローラ7のブロック図を示している。図2において、71は2つの電圧センサ3が出力する電圧計測データが入力される第1入力IF、72は抵抗体21に設けられた2つの電流センサ21aが出力する電流計測データが入力される第2入力IF、73は2つの半導体素子22をオン/オフ制御する制御出力部、74は蓄電池ユニット1の劣化を診断するための閾値情報を記憶する記憶部、75は診断結果を表示する表示部、76は外部に診断結果を送信する通信部、77はコントローラ7を制御するコントローラCPU、78はコントローラ7の電源部である。通信部76は通信線接続部を有して、有線で外部に診断結果を送信する。
そして、コントローラCPU77は、半導体素子22を制御する短絡制御部として機能するし、蓄電池ユニット1の劣化を診断する劣化診断部として機能する。
【0016】
尚、第1短絡路6aの正極端子部P1に接続された電路は、コントローラ7の電源部78にも電路L21を介して接続されている。また、第2短絡路6bの負極端子部P2に接続された電路も、コントローラ7の電源部78に電路L22を介して接続されており、蓄電池ユニット1自体がコントローラ7の動作電源となっている。
このコントローラ7に供給される電力は僅かであるため無視でき、電流センサ21aの計測電流値を蓄電池ブロック11の短絡電流と見ることができる。
【0017】
上記の如く構成された診断回路2による蓄電池ユニット1の診断は以下のように実施される。図3,4は、短絡路6に電流を通電した説明図であり、この図3,4を参照して説明する。
コントローラCPU77の制御により、2つの半導体素子22を交互にオン動作させることで、第1短絡路6a、第2短絡路6bに交互に短絡電流I1,I3が流れる。図3(a)は第1短絡路6aに設けられた半導体素子22をオンさせて、第1蓄電池ブロック11aを短絡させた状態、図4(a)は第2短絡路6bに設けられた半導体素子22をオンして、第2蓄電池ブロック11bを短絡させた状態を示している。
【0018】
コントローラCPU77は、この短絡制御により抵抗体21に流れる短絡電流I1、I3の情報を電流センサ21aから入手する一方、蓄電池ブロック11の電圧情報を電圧センサ3から入手し、これらの情報を基に蓄電池ブロック11の内部抵抗を算出する。
算出した内部抵抗値と記憶部74に記憶されている閾値とが比較されて、劣化が診断される。閾値は複数段階設定されており、算出された内部抵抗値が何れの段階にあるか判断して、診断結果が出力される。
この診断結果が、例えば計測した内部抵抗値が蓄電池セルの交換が必要なレベルの値であったら、交換時期が来たことを通知する警報情報が出力される。この出力により表示部75にはその旨を示す警報表示がなされるし、外部には「交換時期が来ています」等の情報が送信される。
尚、閾値は複数段階設定しなくとも良く、交換を判断するための1つの閾値だけでも良い。
【0019】
このように、蓄電池ブロック11を短絡操作して内部抵抗を算出し、劣化度を判定するため、等価モデルの作成等面倒な演算を必要とせず、簡易な制御で蓄電池ユニット1の劣化度を判定できる。
また、診断回路2の電源は蓄電池ユニット1から供給されるため、外部電源が必要無い。
【0020】
ここで、短絡の切り替え制御を具体的に説明する。第1短絡路6aと第2短絡路6bの短絡操作の切り替えは連続して行わず、短絡電流によるエネルギーを蓄えたリアクトル8が放電を完了する時間を待って(一定時間の間隔を置いて)実施される。図3(b)、図4(b)は、このときのリアクトル8の作用説明図であり、図3(b)は第1短絡路6aの半導体素子22をオフした直後の状態、図4(b)は第2短絡路6bの半導体素子22をオフした直後の状態を示している。
図3(b)、図4(b)に示すように、半導体素子22がオフすると、リアクトル8に蓄えられた電力が他方の蓄電池ブロック11の充電電力となり、充電に利用される。I2,I4はこの放電電流を示している。この充電動作の終了を見計らって他方の半導体素子22がオン操作される。
例えば、半導体素子22のオン時間は1.0秒、オフしてから他方の半導体素子22がオンするまでの切り替え時間を0.5秒としている。
【0021】
このように、一方の蓄電池ブロック11の充電電流が他方の蓄電池ブロック11の充電に使用されるため、劣化診断に使用される電力は僅かな電力で済む。
【0022】
尚、図1では、蓄電池ユニット1の第1蓄電池ブロック11aと第2蓄電池ブロック11bとが、ほぼ同数の蓄電池セルで構成され、中間点Qに短絡路6の共通する中間電路9を接続したが、蓄電池ユニット1の正極側或いは負極側に偏った位置で分割しても良い。蓄電池ブロック11を構成する蓄電池セルの数に応じて、劣化度を判断する閾値を設定することで、診断を実施できる。
【0023】
図5は、蓄電池システムの他の例を示す構成図である。図5では3つの蓄電池ブロック11に分けた場合を示し、形成された蓄電池ブロック11毎に短絡路6が形成される。但し、この場合短絡路6にリアクトルはないし、蓄電池ブロック11を構成する蓄電池セル12の数も各ブロックで異なる数となっている。
また、電圧センサ3も、蓄電池ブロック11全体の電圧を計測する必要は無く、ここではブロック毎に任意の1つの蓄電池セル12の電圧を計測している。蓄電池セル12は、個々の劣化スピードが異なる訳では無いため、1つの蓄電池セルの電圧を計測するだけでも蓄電池ブロック11全体の状態を把握することは可能である。
図5に示すように、蓄電池ユニット1を3ブロックに分けた場合は、1つの蓄電池ブロック11毎に順に短絡操作して、内部抵抗値が算出される。
【0024】
尚、上記実施形態では、蓄電池ユニット1の温度を考慮していないが、蓄電池ユニット1或いは個々の蓄電池ブロック11の温度情報を入手すると共に、劣化度を判断する閾値を温度情報に基づいて変化させても良い。
また、通信部76は、通信線を介して診断結果を外部に送信するが、電力線を介するPLC通信により情報を送信しても良いし、IP通信により送信しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・蓄電池ユニット、2・・診断回路、3・・電圧センサ(電圧計測部)、6・・短絡路、7・・コントローラ、8・・リアクトル、9・・中間電路、11・・蓄電池ブロック、12・・蓄電池セル、21・・抵抗体(電流制限手段)、21a・・電流センサ(電流計測部)、22・・半導体素子、74・・記憶部、75・・表示部(通知部)、76・・通信部(通知部)、77・・コントローラCPU(短絡制御部、劣化診断部)、78・・電源部。
図1
図2
図3
図4
図5