(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023625
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】接続不良検出回路及び回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20230209BHJP
H01H 83/20 20060101ALI20230209BHJP
H01H 83/02 20060101ALI20230209BHJP
H01H 73/20 20060101ALI20230209BHJP
H01H 73/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H01H9/54 C
H01H83/20
H01H83/02 E
H01H73/20 B
H01H73/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129303
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】林 文移
【テーマコード(参考)】
5G030
5G034
【Fターム(参考)】
5G030EA00
5G030XX20
5G030YY12
5G034AC01
5G034AE10
(57)【要約】
【課題】 発生した電位差がフォトカプラの動作電圧に至らない電圧値でも接続不良を検知でき、更に電路電流の影響を受けない接続不良検出回路及び回路遮断器を提供する。
【解決手段】 接続不良検出回路2は、端子部10の個々の接続端子6に、発生した電位差を検出する第1差動増幅器21を設け、また同一電路の極性の異なる任意の2つの接続端子6に設けられた第1差動増幅器21を組み合わせて、その出力の差分を抽出する第2差動増幅器22と、第2差動増幅器22の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断する判定部23とを有し、回路遮断器1は判定部23の出力により遮断信号を生成する出力部3を具備し、接続不良が発生したら、回路遮断器1は遮断動作する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路を電気的に接続する複数の接続端子を有する端子部の接続不良を検出する接続不良検出回路であって、
前記電路は、異なる極性から成る複数の電路部材で構成され、
個々の前記接続端子には、前記接続端子で発生する電位差を検出する電位差検出回路と、
同一電路の極性の異なる任意の2つの前記接続端子に設けられた前記電位差検出回路を組み合わせて、その出力の差分を抽出する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断する判定部とを有することを特徴とする接続不良検出回路。
【請求項2】
前記電路は3本の電路部材で構成されると共に、前記端子部は3個の接続端子を有し、それぞれの接続端子に前記電位差検出回路が設けられ、
3つの前記電位差検出回路の出力のうち、異なる2つを組み合わせてその出力の差分を抽出する3つの前記差動増幅回路を有し、
前記判定部は、少なくとも1つの前記差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断することを特徴とする請求項1記載の接続不良検出回路。
【請求項3】
前記電路は2本の電路部材で構成されると共に、前記端子部は2個の接続端子を有し、それぞれの接続端子に前記電位差検出回路が設けられ、
2つの前記電位差検出回路の出力の差分を抽出する1つの前記差動増幅回路を有し、
前記判定部は、前記差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断することを特徴とする請求項1記載の接続不良検出回路。
【請求項4】
1次側及び2次側の前記端子部が3つの接続端子で構成される回路遮断器であって、
1次側及び2次側の少なくとも一方の前記端子部に、請求項2に記載の接続不良検出回路が設けられると共に、
前記接続不良検出回路が接続不良発生と判断したら、遮断信号を出力する出力部を有し、
前記遮断信号により遮断動作することを特徴とする回路遮断器。
【請求項5】
1次側及び2次側の前記端子部が2つの接続端子で構成される回路遮断器であって、
1次側及び2次側の少なくとも一方の前記端子部に、請求項3に記載の接続不良検出回路が設けられると共に、
前記接続不良検出回路が接続不良発生と判断したら、遮断信号を出力する出力部を有し、
前記遮断信号により遮断動作することを特徴とする回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路接続部の接続不良を検出する接続不良検出回路、及び接続不良検出回路を備えた回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器の端子は、端子ネジにより電線側の圧着端子を座金に圧設して機械的接続及び電気的接続が成される構成が普及している。このような端子では、端子ネジが緩むと座金と圧着端子との接触状態が不安定となり、アーク放電が発生し過熱する問題があった。
この対策として、端子ネジの緩みが発生したら、それを検出して電路を遮断する回路遮断器がある。例えば、特許文献1では端子ネジと端子座の間に所定の電位差が発生したら、接続不良発生と判断して遮断機構部を遮断動作させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、接続端子に発生する電位差によりフォトカプラをオン動作させて、その出力により接続不良を検出した。そのため、検出部位の電位差がフォトカプラの動作電圧に至らなければ検出できない問題があった。また、電路電流の大きさにより検出する電位差が変化するため、感度にばらつきがあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、発生した電位差がフォトカプラの動作電圧に至らない電圧値でも接続不良を検知でき、更に電路電流の影響を受けない接続不良検出回路及び回路遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電路を電気的に接続する複数の接続端子を有する端子部の接続不良を検出する接続不良検出回路であって、電路は、異なる極性から成る複数の電路部材で構成され、個々の接続端子には、接続端子で発生する電位差を検出する電位差検出回路と、同一電路の極性の異なる任意の2つの接続端子に設けられた電位差検出回路を組み合わせて、その出力の差分を抽出する差動増幅回路と、差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断する判定部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、端子内の電位差でなく組み合わせた2つの接続端子において、端子間の相対的な差異から判断し、接続端子同士の間で一定値以上の電位差が発生したら接続不良発生と判断する。よって、電路電流の影響を受けること無く接続不良を検出できる。また差動増幅回路が電位差を抽出するため、従来のようにフォトカプラをオンさせる電圧に至らなくても検出が可能となり、接続不良を初期の段階で検知できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、電路は3本の電路部材で構成されると共に、端子部は3個の接続端子を有し、それぞれの接続端子に電位差検出回路が設けられ、3つの電位差検出回路の出力のうち、異なる2つを組み合わせてその出力の差分を抽出する3つの差動増幅回路を有し、判定部は、少なくとも1つの差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、3つの接続端子から成る端子部のうち、何れか1つの接続端子に接続不良が発生して電位差が他の接続端子より大きくなったら、それを検出する。よって、端子部が3端子で構成されても接続不良を確実に検出できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、電路は2本の電路部材で構成されると共に、端子部は2個の接続端子を有し、それぞれの接続端子に電位差検出回路が設けられ、2つの電位差検出回路の出力の差分を抽出する1つの差動増幅回路を有し、判定部は、差動増幅回路の出力電圧が一定値を超えたら接続不良発生と判断することを特徴とする。
この構成によれば、2つの接続端子から成る端子部は、2つの接続端子の電位差に差異が発生したら接続不良発生と判断するため、簡易な構成で接続不良を検出できる。
【0009】
請求項4の発明は、1次側及び2次側の端子部が3つの接続端子で構成される回路遮断器であって、1次側及び2次側の少なくとも一方の端子部に、請求項2に記載の接続不良検出回路が設けられると共に、接続不良検出回路が接続不良発生と判断したら、遮断信号を出力する出力部を有し、遮断信号により遮断動作することを特徴とする。
この構成によれば、端子部に接続不良が発生したら、端子間の相対的な電圧効果の差異からそれを検知して遮断動作する。よって、接続不良の検知動作が電路電流の大きさによりばらつくことが無い。
【0010】
請求項5の発明は、1次側及び2次側の端子部が2つの接続端子で構成される回路遮断器であって、1次側及び2次側の少なくとも一方の端子部に、請求項3に記載の接続不良検出回路が設けられると共に、接続不良検出回路が接続不良発生と判断したら、遮断信号を出力する出力部を有し、遮断信号により遮断動作することを特徴とする。
この構成によれば、端子部に接続不良が発生したら、端子間の相対的な電圧効果の差異からそれを検知して遮断動作する。よって、接続不良の検知動作が電路電流の大きさによりばらつくことが無い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接続不良検出回路及び回路遮断器によれば、端子内の電位差でなく組み合わせた2つの接続端子において、端子間ので相対的な差異から判断し、接続端子同士の間で一定値以上の電位差が発生したら接続不良発生と判断する。よって、電路電流の影響を受けること無く接続不良を検出できる。また差動増幅回路が電位差を抽出するため、従来のようにフォトカプラをオンさせる電圧に至らなくても検出が可能となり、接続不良を初期の段階で検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】接続不良検出回路を備えた回路遮断器の説明図である。
【
図3】接続不良検出回路と回路遮断器の他の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る接続不良検出回路を備えた回路遮断器の説明図である。1は回路遮断器、2は接続不良検出回路であり、接続不良検出回路2を回路遮断器1の2次側端子に設けた構成を示している。
回路遮断器1は、電路部材が3線式電路で構成される場合を示し、ここでは単相3線式電路(以下、単に「電路」と称する)4に使用される構成を示している。尚、接続不良検出回路2は、図示しない回路基板に組み付けられて、回路遮断器1のハウジングH内に組み込まれて構成される。
【0014】
回路遮断器1は、電路4を電気的に接続する1次側端子11及び2次側端子12を構成する端子部10が3つの接続端子を有しており、電圧極であるL1極、及びL2極と、中性極であるN極により構成されている。
回路遮断器1のハウジングH内部には、1次側端子11と2次側端子12の間に掛け渡された電路を開閉する接点部13、接点部13を遮断操作する開閉機構部(図示せず)が組み付けられている。また、ハウジングHの上部には開閉操作するハンドル(図示せず)が設けられている。但し、
図1では、説明のためハウジングH内を透視した図としている。
【0015】
接続不良検出回路2は、2次側端子12の各接続端子に接続された3つの電位差検出回路としての第1差動増幅器21(21a,21b,21c)と、異なる第1差動増幅器21のペアを3組形成し、形成したそれぞれのペアの出力を入力する3つの差動増幅回路である第2差動増幅器22(22a,22b,22c)と、第2差動増幅器22の出力電圧から接続不良を判定する判定部23とを有している。
そして、回路遮断器1は、判定部23が接続不良発生と判定したら回路遮断器1を遮断動作させる遮断信号を出力する出力部3を備えている。この遮断信号を受けて回路遮断器1の開閉機構部は遮断動作する。
【0016】
図2は、第1差動増幅器21が接続された2次側端子12の接続端子6の構成を示している。尚、接続端子6自体の構成は、1次側端子11及び2次側端子12の個々の接続端子6に共通である。
接続端子6は、座金61、端子ネジ62、ナット63を有し、電路である電線62の端部に固着された圧着端子65が接続される。
第1差動増幅器21は、正負一対の入力端子20a、20bのうち正極側入力端子20aが座金61に接続され、負極側入力端子20bが圧着端子65に接続されている。こうして、接続端子6の座金61と圧着端子65の間の電位差が入力される。
【0017】
尚、電圧を検出する部位は、座金61とナット63の間、座金61と端子ネジ62の間であってもよい。また、接続不良検出回路2が1次側端子11に設けられる場合、第1差動増幅器21の正負一対の入力端子が接続される部位は逆になる。
また、回路遮断器1は、端子部10が3端子で構成されているため、3個の第1差動増幅器21を有している。そして、対を形成する第1差動増幅器21の組み合わせは3通りあるため、組み合わせを網羅するために第2差動増幅器22も3個となる。
【0018】
上記の如く構成された接続不良検出回路2は以下のように動作する。例えば、第1差動増幅器21及び第2差動増幅器22の増幅度を100、判定部23の閾値電圧が絶対値で5Vとする。そして、座金61と圧着端子65の間の電位差が正常な接続状態で10mVであるとすると、第1差動増幅器21の出力は1Vの出力となる。
ただし、この値が正常な接続状態の数値であるため3端子ともほぼ10mVであり、第1差動増幅器21の出力は何れも1Vで同一電圧となる。そのため、第2差動増幅器22の差動入力に電位差が発生せず、増幅度が100であっても出力電圧は0Vに近い値となる。よって、判定部23は1Vの判定閾値に達しないため、接続不良発生とは判断しない。
【0019】
また、電路4の電流が増加して、例えばL1極端子の第1差動増幅器21の検出電位差が20mVに増加したとしても、他の極の接続端子6の検出電位差も同様に電流の増加により増加するため、第2差動増幅器22の作動入力は引き続き0Vに近い値が継続され、出力電圧も大きな変化を生じない。従って、接続不良発生とは判断しない。
【0020】
しかし、例えばL2極の接続端子6で接続不良が発生して検出電位差が10mVから20mVに変化したとすると、他の接続端子6とは10mVの差異が発生する。
この場合、L1、N極の第1差動増幅器21a,21bの出力が1Vとなるのに対して、L2極の第1差動増幅器21cの差動入力に20mVの差異が発生するため、出力は2Vとなる。
この電圧が入力される2つの第2差動増幅器22a、22cは共に差動入力に1Vの差異が発生するため、出力電圧の絶対値は設定された閾値の5Vを大きく超える。よって、判定部23は接続不良発生と判断して、所定の信号を出力部3に出力し、この信号を受けて出力部3は遮断信号を出力し、回路遮断器1は遮断動作する。
【0021】
このように、端子内の電位差でなく組み合わせた2つの接続端子6において、端子間の相対的な差異から判断し、接続端子6同士の間で一定値以上の電位差が発生したら接続不良発生と判断する。よって、電路電流の影響を受けること無く接続不良を検出できる。また第2差動増幅器22が電位差を抽出するため、従来のようにフォトカプラをオンさせる電圧に至らなくても検出が可能となり、接続不良を初期の段階で検知できる。
そして、3端子から成る端子部10のうち、何れか1つの接続端子6に接続不良が発生して電位差が他の端子より大きくなったら、それを検出するため、端子部10が3端子で構成されても接続不良を確実に検出できる。
【0022】
図3は、端子部10である1次側端子11及び2次側端子12が2端子で構成された回路遮断器1aを示している。そして、上記形態と同様に2次側端子12に接続不良検出回路2が設けられている。
2端子の回路遮断器1aの場合、第1差動増幅器21は1つの端子部10に2つとなるため、この出力が入力される第2差動増幅器22は1つで良く、全体で3つの差動増幅器を備えた構成となる。また、判定部23は、この1つの第2差動増幅器22の出力電圧のみで接続不良を判定する。判定閾値は上記形態と同様である。
このように、2端子から成る端子部10において、2つの接続端子6の電位差に差異が発生したら接続不良発生と判断するため、簡易な構成で接続不良を検出できる。
【0023】
尚、上記実施形態は、接続不良検出回路2を2次側端子12に設けているが、1次側端子11に設けても良いし、双方に設けても良い。
また、接続不良検出回路2を回路遮断器1に組み付けた場合を説明したが、遮断機構の無い例えば端子台に対しても適用でき、ブザー等の鳴動部を配置して、接続不良が発生したら鳴動させることで、有効に機能させることができる。
更に、圧着端子65と座金61の間の電位差を検出する構成を説明したが、他の端子構成、例えば速結端子に対しても、挿入する電線と端子金具との電位差を検出することで適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1,1a・・回路遮断器、2・・接続不良検出回路、3・・出力部、4・・電路(電路部材)、6・・接続端子、10・・端子部、11・・1次側端子、12・・2次側端子、13・・接点部、21・・第1差動増幅器(電位差検出回路)、22・・第2差動増幅器(差動増幅回路)、23・・判定部。