(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023630
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】過電圧保護装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20230209BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20230209BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20230209BHJP
H03K 17/567 20060101ALN20230209BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20230209BHJP
【FI】
H02M1/00 F
H02M1/08 A
H03K17/082
H03K17/567
H03K17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129314
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和樹
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5J055AX33
5J055AX34
5J055BX16
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5J055DX09
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5J055EY14
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5J055EZ16
5J055EZ62
5J055FX04
5J055FX13
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX03
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子だけでなく駆動回路も過電圧に起因する破損から保護することができる過電圧保護装置を提供する。
【解決手段】過電圧保護装置は、IGBT30と、IGBT30のコレクタ端子30cとエミッタ端子30eとの間に電気的に接続されたツェナーダイオード32と、ツェナーダイオード32と電気的に直列に接続され、IGBT30に過電圧が印加された際に光信号を出力する発光ダイオード34と、IGBT30を駆動するための駆動回路8と、発光ダイオード34からの光信号を受信可能であり、受信した光信号に基づいて、駆動回路8に第1の制御信号を出力する制御回路10とを備える。駆動回路8は、第1の制御信号に基づいて、IGBT30のゲート端子30gに電圧を供給することにより、IGBT30を導通させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、第2の端子と、第3の端子と、を有し、前記第3の端子に入力される電圧又は電流に応じて、前記第1の端子と前記第2の端子との間の導通が制御されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の前記第1の端子と前記第2の端子との間に電気的に接続された定電圧素子と、
前記定電圧素子と電気的に直列に接続され、前記スイッチング素子に過電圧が印加された際に光信号を出力する発光素子と、
前記スイッチング素子を駆動するための駆動回路と、
前記発光素子からの前記光信号を受信可能であり、受信した前記光信号に基づいて、前記駆動回路に第1の制御信号を出力する制御回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記第1の制御信号に基づいて、前記スイッチング素子の前記第3の端子に電圧又は電流を供給することにより、前記スイッチング素子を導通させる
過電圧保護装置。
【請求項2】
前記過電圧保護装置は、さらに、
前記スイッチング素子を複数含み、電源からの電力が供給されるインバータ回路と、
前記電源から前記インバータ回路への電力の供給を許容する第1の状態と、前記電源から前記インバータ回路への電力の供給を遮断する第2の状態とに切り替え可能な切替スイッチと、を備え、
前記制御回路は、前記発光素子からの前記光信号に基づいて、前記切替スイッチに第2の制御信号を出力し、
前記切替スイッチは、前記第2の制御信号に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えられる
請求項1に記載の過電圧保護装置。
【請求項3】
前記過電圧保護装置は、さらに、前記発光素子からの前記光信号を前記制御回路へ導く光ファイバを備える
請求項1又は2に記載の過電圧保護装置。
【請求項4】
前記定電圧素子は、カソード側が前記スイッチング素子の前記第1の端子に電気的に接続され、且つ、アノード側が前記発光素子を介して前記スイッチング素子の前記第2の端子に電気的に接続されたツェナーダイオードである
請求項1~3のいずれか1項に記載の過電圧保護装置。
【請求項5】
前記定電圧素子は、バリスタである
請求項1~3のいずれか1項に記載の過電圧保護装置。
【請求項6】
前記発光素子は、アノード側が前記定電圧素子を介して前記スイッチング素子の前記第1の端子に電気的に接続され、且つ、カソード側が前記スイッチング素子の前記第2の端子に電気的に接続された発光ダイオードである
請求項1~5のいずれか1項に記載の過電圧保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を過電圧から保護するための過電圧保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を過電圧から保護するためのアクティブクランプ回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。アクティブクランプ回路は、IGBTのコレクタ端子とゲート端子との間に電気的に接続されたツェナーダイオードを備えている。また、IGBTのゲート端子には、IGBTを駆動するための駆動回路が電気的に接続されている。
【0003】
このアクティブクランプ回路では、IGBTのターンオフ時に、電源ラインのインダクタンス成分により、過電圧(サージ電圧)がIGBTのコレクタ端子に印加される。この過電圧がツェナーダイオードの降伏電圧を超えると、ツェナーダイオードが導通して、IGBTのコレクタ端子からツェナーダイオードを介してIGBTのゲート端子に電圧が入力される。これにより、IGBTが強制的にターンオンされ、IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間に電流が流れる。その結果、IGBTがインダクタンス成分のエネルギーから解放され、IGBTを過電圧から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したアクティブクランプ回路では、IGBT自体は過電圧から保護されるものの、IGBTのコレクタ端子からツェナーダイオードを介して駆動回路に電流が流れ込み、駆動回路が破損するおそれが生じる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、スイッチング素子だけでなく駆動回路も過電圧に起因する破損から保護することができる過電圧保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る過電圧保護装置は、第1の端子と、第2の端子と、第3の端子と、を有し、前記第3の端子に入力される電圧又は電流に応じて、前記第1の端子と前記第2の端子との間の導通が制御されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子の前記第1の端子と前記第2の端子との間に電気的に接続された定電圧素子と、前記定電圧素子と電気的に直列に接続され、前記スイッチング素子に過電圧が印加された際に光信号を出力する発光素子と、前記スイッチング素子を駆動するための駆動回路と、前記発光素子からの前記光信号を受信可能であり、受信した前記光信号に基づいて、前記駆動回路に第1の制御信号を出力する制御回路と、を備え、前記駆動回路は、前記第1の制御信号に基づいて、前記スイッチング素子の前記第3の端子に電圧又は電流を供給することにより、前記スイッチング素子を導通させる。
【0008】
本態様によれば、スイッチング素子の第1の端子と第2の端子との間には、定電圧素子及び発光素子が電気的に直列に接続されている。スイッチング素子に過電圧が印加された際には、発光素子は光信号を制御回路に出力する。制御回路は、発光素子からの光信号に基づいて、駆動回路に第1の制御信号を出力することにより、スイッチング素子を導通させる。これにより、スイッチング素子に過電圧を吸収させることができ、スイッチング素子を過電圧から保護することができる。また、スイッチング素子に過電圧が印加された際に、上述したアクティブクランプ回路のように駆動回路に過大な電流が流れ込むことが無いので、駆動回路が破損するのを回避することができる。
【0009】
例えば、前記過電圧保護装置は、さらに、前記スイッチング素子を複数含み、電源からの電力が供給されるインバータ回路と、前記電源から前記インバータ回路への電力の供給を許容する第1の状態と、前記電源から前記インバータ回路への電力の供給を遮断する第2の状態とに切り替え可能な切替スイッチと、を備え、前記制御回路は、前記発光素子からの前記光信号に基づいて、前記切替スイッチに第2の制御信号を出力し、前記切替スイッチは、前記第2の制御信号に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えられるように構成してもよい。
【0010】
本態様によれば、制御回路は、発光素子からの光信号に基づいて、切替スイッチに第2の制御信号を出力することにより、切替スイッチを第1の状態から第2の状態に切り替える。これにより、インバータ回路への通電が停止されるので、スイッチング素子を過電圧からより確実に保護することができる。
【0011】
例えば、前記過電圧保護装置は、さらに、前記発光素子からの前記光信号を前記制御回路へ導く光ファイバを備えるように構成してもよい。
【0012】
本態様によれば、スイッチング素子と制御回路との距離が離れている場合であっても、発光素子からの光信号を、光ファイバを介して制御回路へ容易に導くことができる。
【0013】
例えば、前記定電圧素子は、カソード側が前記スイッチング素子の前記第1の端子に電気的に接続され、且つ、アノード側が前記発光素子を介して前記スイッチング素子の前記第2の端子に電気的に接続されたツェナーダイオードであるように構成してもよい。
【0014】
本態様によれば、定電圧素子としてツェナーダイオードを用いることができる。
【0015】
例えば、前記定電圧素子は、バリスタであるように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、定電圧素子としてバリスタを用いることができる。
【0017】
例えば、前記発光素子は、アノード側が前記定電圧素子を介して前記スイッチング素子の前記第1の端子に電気的に接続され、且つ、カソード側が前記スイッチング素子の前記第2の端子に電気的に接続された発光ダイオードであるように構成してもよい。
【0018】
本態様によれば、発光素子として発光ダイオードを用いることができる。
【0019】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係る過電圧保護装置によれば、スイッチング素子だけでなく駆動回路も過電圧に起因する破損から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係る誘導加熱装置の回路構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る誘導加熱装置のIGBT及びその周辺回路を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る誘導加熱装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】比較例に係るアクティブクランプ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、特許請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0025】
(実施の形態)
[1.誘導加熱装置の回路構成]
まず、
図1及び
図2を参照しながら、実施の形態に係る誘導加熱装置2(過電圧保護装置の一例)の回路構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る誘導加熱装置2の回路構成を示す図である。
図2は、実施の形態に係るIGBT30及びその周辺回路を示す図である。
【0026】
図1に示すように、誘導加熱装置2は、被加熱物4を誘導加熱するための主回路6と、主回路6のインバータ回路26(後述する)を駆動するための駆動回路8と、駆動回路8等を制御するための制御回路10とを備えている。
【0027】
誘導加熱装置2は、被加熱物4を例えば数kHz~数百kHzの高周波で誘導加熱(いわゆる、高周波焼き入れ)するための装置である。なお、高周波焼き入れとは、高周波の電磁誘導を起こすことにより、被加熱物4の各表面を加熱させて焼き入れを行う熱処理である。被加熱物4は、例えば車両又は工作機械等に用いられる管状の金属部品等である。
【0028】
図1に示すように、主回路6は、切替スイッチ12と、電源回路14と、整合回路16と、誘導コイル17とを有している。
【0029】
切替スイッチ12は、例えばマグネットスイッチであり、電源18と電源回路14との間に電気的に接続されている。切替スイッチ12は、電源18から電源回路14への交流電力の供給を許容する第1の状態と、電源18から電源回路14への交流電力の供給を遮断する第2の状態とに切り替え可能である。なお、電源18は、例えば商用電源等の3相交流電源であり、3相60Hz(又は50Hz)の交流電力を供給する。
【0030】
電源回路14は、所定の周波数の高周波電流を出力するための発振器である。電源回路14は、整流回路20と、チョークコイル22,24と、インバータ回路26とを有している。
【0031】
整流回路20は、例えば6個のサイリスタ28を用いた全波整流回路であり、電源18からの交流電力を直流電力に変換する。
【0032】
チョークコイル22,24は、整流回路20の出力側(直流側)に電気的に接続されており、整流回路20からの直流電力を平滑化する。
【0033】
インバータ回路26は、チョークコイル22,24を介して整流回路20の出力側に電気的に接続されている。インバータ回路26は、例えば4個のIGBT30(スイッチング素子の一例)を用いた単相フルブリッジ型のインバータ回路であり、4個のIGBT30を高速でオン・オフさせることにより、平滑化された直流電力を単相の高周波電力に変換する。これにより、電源回路14は、所定の周波数の高周波電流を生成する。
【0034】
各IGBT30は、コレクタ端子30c(第1の端子の一例)と、エミッタ端子30e(第2の端子の一例)と、ゲート端子30g(第3の端子の一例)とを有しており、ゲート端子30gに入力される電圧に応じて、コレクタ端子30cとエミッタ端子30eとの間の導通が制御される。
【0035】
各IGBT30のコレクタ端子30cとエミッタ端子30eとの間には、ツェナーダイオード32(定電圧素子の一例)及び発光ダイオード34(発光素子の一例)が電気的に直列に接続されている。
【0036】
ツェナーダイオード32のカソード側は、IGBT30のコレクタ端子30cに電気的に接続され、ツェナーダイオード32のアノード側は、発光ダイオード34を介してIGBT30のエミッタ端子30eに電気的に接続されている。
【0037】
発光ダイオード34のアノード側は、ツェナーダイオード32を介してIGBT30のコレクタ端子に電気的に接続され、発光ダイオード34のカソード側は、IGBT30のエミッタ端子に電気的に接続されている。発光ダイオード34は、当該発光ダイオード34に電気的に接続されたIGBT30のコレクタ端子30cに過電圧が印加された際に、発光することにより光信号を出力する。
【0038】
なお、本実施の形態では、スイッチング素子としてIGBT30を用いたが、これに限定されず、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はバイポーラトランジスタ等を用いてもよい。MOSFETは、ドレイン端子(第1の端子の一例)と、ソース端子(第2の端子の一例)と、ゲート端子(第3の端子の一例)とを有しており、ゲート端子に入力される電圧に応じて、ドレイン端子とソース端子との間の導通が制御される。また、バイポーラトランジスタは、コレクタ端子(第1の端子の一例)と、エミッタ端子(第2の端子の一例)と、ベース端子(第3の端子の一例)とを有しており、ベース端子に入力される電流に応じて、コレクタ端子とエミッタ端子との間の導通が制御される。
【0039】
整合回路16は、電源回路14により生成された有効電力を高効率で誘導コイル17に供給するためのものである。整合回路16の入力側は、インバータ回路26の交流側に電気的に接続されている。整合回路16は、コンデンサ38及び整合トランス40で構成された並列共振回路である。
【0040】
誘導コイル17は、整合回路16の出力側に電気的に接続されている。誘導コイル17は、被加熱物4を誘導加熱するためのものであり、被加熱物4の周囲を覆うように配置される。電源回路14からの高周波電流が整合回路16を介して誘導コイル17に供給されることにより、被加熱物4が誘導加熱される。
【0041】
駆動回路8は、主回路6のインバータ回路26を駆動するための回路であり、駆動基板に実装されている。
図2に示すように、駆動回路8は、各IGBT30のゲート端子30g及びエミッタ端子30eに電気的に接続されており、各IGBT30を駆動する。具体的には、駆動回路8は、各IGBT30のゲート端子30gに電圧を供給することにより、各IGBT30を導通(ターンオン)させる。また、駆動回路8は、各IGBT30のゲート端子30gへの電圧の供給を遮断することにより、各IGBT30を非導通(ターンオフ)にさせる。
【0042】
なお、説明の都合上、
図2では、駆動回路8は、1個のIGBT30のゲート端子30g及びエミッタ端子30eに電気的に接続されているが、実際には、残りの3個のIGBT30のゲート端子30g及びエミッタ端子30eにも電気的に接続されている。
【0043】
制御回路10は、駆動回路8及び切替スイッチ12を制御するための回路であり、制御基板に実装されている。
図2に示すように、制御回路10は、受光素子42と、信号出力部44とを有している。受光素子42と発光ダイオード34との間には、発光ダイオード34からの光信号を受光素子42へ導くための光ファイバ46が配置されている。
【0044】
受光素子42は、例えばフォトダイオードであり、光ファイバ46を介して、発光ダイオード34からの光信号を受信可能である。受光素子42は、受信した光信号を信号出力部44に出力する。
【0045】
信号出力部44は、受光素子42からの光信号に基づいて、駆動回路8に第1の制御信号を出力し、且つ、切替スイッチ12に第2の制御信号を出力する。駆動回路8は、第1の制御信号に基づいて、光信号を出力した発光ダイオード34に対応するIGBT30のゲート端子30gに電圧を供給することにより、当該IGBT30を導通(ターンオン)させる。また、切替スイッチ12は、第2の制御信号に基づいて、第1の状態から第2の状態に切り替えられる。
【0046】
[2.誘導加熱装置の動作]
次に、
図3を参照しながら、実施の形態に係る誘導加熱装置2の動作について説明する。
図3は、実施の形態に係る誘導加熱装置2の動作の流れを示すフローチャートである。
【0047】
被加熱物4を誘導コイル17により誘導加熱する際には、制御回路10は、切替スイッチ12を第1の状態に切り替えるように制御し、且つ、インバータ回路26を駆動するように駆動回路8を制御する。
【0048】
これにより、電源18からの交流電力は、切替スイッチ12を介して電源回路14の整流回路20に供給される。整流回路20は、電源18からの交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を、チョークコイル22,24を介してインバータ回路26に出力する。インバータ回路26は、整流回路20からの直流電力を高周波電力に変換し、当該高周波電力を、整合回路16を介して誘導コイル17に出力する。これにより、被加熱物4が誘導加熱される。
【0049】
以下、上述のように被加熱物4が誘導加熱されている状態で、4個のIGBT30うちいずれかのIGBT30が意図せず非導通(ターンオフ)になった場合について説明する。
【0050】
この場合、電源回路14のインダクタンス成分(例えば、チョークコイル22,34)に起因する過電圧(サージ電圧)が発生し、当該過電圧が非導通になった上記IGBT30のコレクタ端子30cに印加される(S101)。この過電圧がツェナーダイオード32の降伏電圧を超えると、ツェナーダイオード32が導通して(S102)、ツェナーダイオード32に逆方向電流が流れるようになる。これにより、ツェナーダイオード32に電気的に直列に接続された発光ダイオード34に電流が流れて、発光ダイオード34が光信号を出力する(S103)。
【0051】
発光ダイオード34からの光信号は、光ファイバ46を介して制御回路10の受光素子42へ導かれる。これにより、制御回路10の受光素子42は、発光ダイオード34からの光信号を受信し(S104)、受信した光信号を信号出力部44に出力する。信号出力部44は、受光素子42からの光信号に基づいて、駆動回路8に第1の制御信号を出力し、且つ、切替スイッチ12に第2の制御信号を出力する(S105)。
【0052】
駆動回路8は、信号出力部44からの第1の制御信号に基づいて、過電圧が印加されたIGBT30を導通(ターンオン)させる(S106)。これにより、IGBT30のコレクタ端子30cとエミッタ端子30eとの間に電流が流れて、IGBT30にインダクタンス成分のエネルギーを吸収させることができ、IGBT30を過電圧から保護することができる。
【0053】
また、切替スイッチ12は、信号出力部44からの第2の制御信号に基づいて、第1の状態から第2の状態に切り替えられる(S107)。これにより、電源18から電源回路14への交流電力の供給が遮断され、インバータ回路26への通電が停止される。
【0054】
なお、信号出力部44が第1の制御信号を出力してから駆動回路8がIGBT30を導通させるまでの応答時間T1と、信号出力部44が第2の制御信号を出力してから切替スイッチ12が第2の状態に切り替えられるまでの応答時間T2との間には、タイムラグ(T1<T2)がある。そのため、駆動回路8がIGBT30を導通させてから少し遅れて、切替スイッチ12が第2の状態に切り替えられるようになる。
【0055】
[3.効果]
ここで、
図4を参照しながら、比較例に係るアクティブクランプ回路について説明する。
図4は、比較例に係るアクティブクランプ回路を示す図である。
【0056】
図4に示すように、比較例に係るアクティブクランプ回路では、IGBT100のコレクタ端子100cとゲート端子100gとの間に、ツェナーダイオード102が電気的に接続されている。また、IGBT100のゲート端子100g及びエミッタ端子100eには、IGBT100を駆動するための駆動回路104が電気的に接続されている。
【0057】
このアクティブクランプ回路では、IGBT100のターンオフ時に、電源ラインのインダクタンス成分により、過電圧がIGBT100のコレクタ端子100cに印加される。この過電圧がツェナーダイオード102の降伏電圧を超えると、ツェナーダイオード102が導通して、IGBT100のコレクタ端子100cからツェナーダイオード102を介してIGBT100のゲート端子100gに電圧が入力される。これにより、IGBT100が強制的にターンオンされ、IGBT100のコレクタ端子100cとエミッタ端子100eとの間に電流が流れる。その結果、IGBT100がインダクタンス成分のエネルギーから解放され、IGBT100が過電圧から保護される。
【0058】
しかしながら、上述したアクティブクランプ回路では、IGBT100自体は過電圧から保護されるものの、IGBT100のコレクタ端子100cからツェナーダイオード102を介して駆動回路104に電流が流れ込み、駆動回路104が破損するおそれが生じる。また、駆動回路104は、IGBT100に過電圧が印加されたことを感知しないため、故障するまで動作し続けるおそれが生じる。
【0059】
これに対して、本実施の形態では、IGBT30のコレクタ端子30cとエミッタ端子30eとの間には、ツェナーダイオード32及び発光ダイオード34が電気的に直列に接続されている。IGBT30のコレクタ端子30cに過電圧が印加された際には、発光ダイオード34は光信号を制御回路10に出力する。
【0060】
制御回路10は、発光ダイオード34からの光信号を受信することにより、IGBT30に過電圧が印加されていると判定し、IGBT30をターンオンさせる。これにより、IGBT30がインダクタンス成分のエネルギーから解放され、IGBT30を過電圧から保護することができる。
【0061】
さらに、制御回路10は、切替スイッチ12を第1の状態から第2の状態に切り替える。これにより、インバータ回路26への通電が停止されるので、IGBT30を過電圧からより確実に保護することができる。
【0062】
また、ツェナーダイオード32及び発光ダイオード34は、IGBT30のゲート端子30gに電気的に接続されていない。そのため、IGBT30のコレクタ端子30cに過電圧が印加された際に、上述したアクティブクランプ回路のように駆動回路8に電流が流れ込むことが無く、駆動回路8が破損するのを回避することができる。
【0063】
(変形例等)
以上、本発明の1つ又は複数の態様に係る過電圧保護装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、定電圧素子としてツェナーダイオードを用いたが、これに限定されず、例えばバリスタを用いてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、過電圧保護装置を誘導加熱装置2に適用したが、これに限定されず、例えば産業用機械又は家電機器等の各種装置に適用してもよい。
【0066】
上記実施の形態における制御回路10は、専用の電子回路によって実現されてもよい。専用の電子回路は、1個のチップ上に集積されてもよいし、複数のチップ上に形成されてもよい。また、制御回路10は、汎用プロセッサと、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリとによって実現されてもよい。この場合、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが実行されたときに、プロセッサは、制御回路10として機能する。
【0067】
また、本発明の一態様は、このような誘導加熱装置2だけではなく、誘導加熱装置2に含まれる特徴的な構成要素をステップとする方法であってもよい。また、本発明の一態様は、上記方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る過電圧保護装置は、例えば金属部品の高周波焼き入れを行うための誘導加熱装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 誘導加熱装置
4 被加熱物
6 主回路
8,104 駆動回路
10 制御回路
12 切替スイッチ
14 電源回路
16 整合回路
17 誘導コイル
18 電源
20 整流回路
22,24 チョークコイル
26 インバータ回路
28 サイリスタ
30,100 IGBT
30c,100c コレクタ端子
30e,100e エミッタ端子
30g,100g ゲート端子
32,102 ツェナーダイオード
34 発光ダイオード
38 コンデンサ
40 整合トランス
42 受光素子
44 信号出力部
46 光ファイバ