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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023633
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】導光板および発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20230209BHJP
   F21V 19/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F21S2/00 433
F21S2/00 435
F21V19/02 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129317
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】竹島 翔一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 挙史
【テーマコード(参考)】
3K013
3K244
【Fターム(参考)】
3K013CA05
3K013FA02
3K244AA05
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EC03
3K244EC14
3K244ED03
3K244ED14
3K244ED18
3K244JA01
(57)【要約】
【課題】見る角度によって発光の見え方が異なり、局所的に輝度を高めて煌めきを表現することができる導光板、および発光モジュールを提供する。
【解決手段】実施形態に係る導光板12,30,40,52は、透光性を有する透光基材16と、該透光基材16の表面に凸状に設けられ湾曲面により形成された光出射面18Bを備える複数の透光凸層18と、光散乱粒子を含む樹脂からなり複数の透光凸層18に対して透光基材16を挟んで重なり合うように透光基材16の裏面に設けられた複数の光散乱層20と、を含む。大きさおよび/または高さの異なる複数種の透光凸層18が混在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透光基材と、
透光性を有する樹脂からなり、前記透光基材の表面または裏面のいずれか一方面に凸状に設けられ、湾曲面により形成された光出射面を備える複数の透光凸層と、
光散乱粒子を含む樹脂からなり、前記複数の透光凸層に対して前記透光基材を挟んで重なり合うように前記透光基材の前記一方面に対向する他方面に設けられた複数の光散乱層と、
を含む導光板であって、
大きさおよび/または高さの異なる複数種の前記透光凸層が混在している、導光板。
【請求項2】
前記複数の透光凸層の各光出射面は、前記湾曲面が占める面積割合が80%以上である、請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
前記複数の透光凸層の各透光凸層と当該透光凸層に対応する前記光散乱層との重なり量が、前記透光基材の前記表面に垂直な方向からみて前記光散乱層の面積の30%以上である、請求項1または2に記載の導光板。
【請求項4】
前記透光基材の前記一方面に設けられた透光性を有する透光樹脂層をさらに備え、前記複数の透光凸層が前記透光樹脂層を介して前記透光基材の前記一方面に設けられた、請求項1~3のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項5】
前記複数の光散乱層をそれぞれ被覆する透光性を有する複数の被覆樹脂層をさらに備え、各被覆樹脂層の表面が湾曲面により形成された、請求項1~4のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の導光板と、前記透光基材の側面に光を入射可能な光源と、を備える発光モジュール。
【請求項7】
前記光源を前記透光基材の前記側面に沿って移動させる移動装置をさらに備える、請求項5に記載の発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、導光板、および該導光板を用いた発光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両内装の質感向上のため、加飾と間接照明を組み合わせた製品の採用が増えている。例えば、特許文献1には、加飾層による意匠を持った加飾シートにおいて、加飾シートの表面を部分的に発光させることにより、意匠性を向上することが開示されている。特許文献1に記載の加飾シートは、高屈折率樹脂層と、該高屈折率樹脂層の裏面に設けられた光放散層と、該高屈折率樹脂層の表面に低屈折率樹脂層を介して設けられた加飾層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-170801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両内装の更なる質感向上の観点から、クリスタル調やガラス調の発光が可能な内装部品が開発されている。しかしながら、クリスタルやガラスの実物で見られる煌めき、すなわち局所的な強い光や、見る角度によって輝度が変化するという効果が不十分であり、更なる質感向上が求められている。
【0005】
本発明の実施形態は、見る角度によって発光の見え方が異なり、局所的に輝度を高めて煌めきを表現することができる導光板、およびそれを用いた発光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る導光板は; 透光性を有する透光基材と; 透光性を有する樹脂からなり、前記透光基材の表面または裏面のいずれか一方面に凸状に設けられ、湾曲面により形成された光出射面を備える複数の透光凸層と; 光散乱粒子を含む樹脂からなり、前記複数の透光凸層に対して前記透光基材を挟んで重なり合うように前記透光基材の前記一方面に対向する他方面に設けられた複数の光散乱層と; を含む導光板であって、大きさおよび/または高さの異なる複数種の前記透光凸層が混在しているものである。
【0007】
一実施形態に係る前記導光板において、前記複数の透光凸層の各光出射面は、前記湾曲面が占める面積割合が80%以上でもよい。
【0008】
一実施形態に係る前記導光板において、前記複数の透光凸層の各透光凸層と当該透光凸層に対応する前記光散乱層との重なり量は、前記透光基材の前記表面に垂直な方向からみて前記光散乱層の面積の30%以上でもよい。
【0009】
一実施形態に係る前記導光板は、前記透光基材の前記一方面に設けられた透光性を有する透光樹脂層をさらに備え、前記複数の透光凸層が前記透光樹脂層を介して前記透光基材の前記一方面に設けられてもよい。
【0010】
一実施形態に係る前記導光板は、前記複数の光散乱層をそれぞれ被覆する透光性を有する複数の被覆樹脂層をさらに備え、各被覆樹脂層の表面が湾曲面により形成されてもよい。
【0011】
本発明の実施形態に係る発光モジュールは、前記導光板と、前記透光基材の側面に光を入射可能な光源と、を備える。
【0012】
一実施形態において、前記発光モジュールは、前記光源を前記透光基材の前記側面に沿って移動させる移動装置をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、導光板の側面から入射された光は、光散乱層に含まれる光散乱粒子により散乱し、透光基材を通って透光凸層内に入射する。透光凸層に入射した光は光出射面を通って外部に出射される。その際、光出射面が湾曲面により形成されているので、そのレンズ効果により拡散し、見る角度によって発光の見え方が異なる。また、光を出射させる透光凸層として、大きさおよび/または高さの異なる複数種が混在していることにより、局所的に輝度の高い箇所や煌めきを表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る発光モジュールの断面模式図
図2】同発光モジュールの平面模式図であり、(A)はその一部の拡大図
図3図2のIII-III線断面図
図4図2のIV-IV線断面図
図5図2のV-V線断面図
図6】同発光モジュールにおける光の入出射状態を示す断面模式図
図7】透光凸層を光散乱層に対してずらして配置した例を示す断面模式図
図8図7に対応する平面模式図
図9】第2実施形態に係る導光板の一部拡大断面模式図
図10】第3実施形態に係る導光板の一部拡大断面模式図
図11】第4実施形態に係る発光モジュールの断面模式図
図12】(A)実施例における透光凸層の配置例の一部分を示す模式図、(B)その階調を数字で示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、導光板の表面とは、導光板の表裏両面のうち、使用時(即ち、発光モジュールとして使用する際)に主として人の目に触れる面(主たる意匠面)をいい、導光板の裏面とは、該表面とは反対側の面をいう。また、透光基材の表面とは、透光基材の表裏両面のうち、導光板の表面と同じ方向に向いた面をいい、透光基材の裏面とは、透光基材の表面とは反対側の面をいう。
【0016】
(第1実施形態)
図1および図2に示すように、第1実施形態に係る発光モジュール10は、導光板12と、光源14とを備える。
【0017】
導光板12は、透光基材16と、複数の透光凸層18と、複数の光散乱層20とを備える。なお、本明細書において、導光板とは、通常の意味での板状のものには限られず、シートやフィルムなどのように厚みが小さいものも包含するものとして用いられる。
【0018】
透光基材16は、導光板12の本体をなす基板であり、透光性を有する。本明細書において、透光性とは、光透過性、すなわち光を透すことができることをいい、無色透明には限られず、光を透すことができれば着色されていてもよく、半透明であってもよい。一実施形態において、透光基材16は無色透明であることが好ましい。
【0019】
透光基材16の材質は、特に限定されず、樹脂でもよく、ガラスでもよい。一実施形態において、透光基材16としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC); ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂; ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂; ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などのスチレン系樹脂; ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂; またはこれらの2種以上のブレンドからなる樹脂シートが挙げられる。透光基材16としては、また、例えば、鉛ガラスやソーダ石灰ガラスからなるガラス板を用いてもよい。透光基材16として、好ましくは熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが用いられる。
【0020】
透光基材16は、導光板12の本体として、その側面16Cから入射された光を全域にわたって広げる役割を持つ。すなわち、透光基材16の側面16Cから入射された光は、透光基材16の表裏の界面で全反射して透光基材16内に閉じ込められ、側方に伝わっていく。そのため、透光基材16は屈折率が高いことが好ましい。透光基材16の屈折率(絶対屈折率)は、特に限定されないが、例えば1.40~1.70でもよく、1.50~1.60でもよい。
【0021】
本明細書において、屈折率(絶対屈折率)は、波長589nmの光(D線)の屈折率であり、例えば、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製「DR-M4」)を用いて環境温度25℃で測定される。
【0022】
透光基材16の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1~3.0mmでもよく、0.5~2.5mmでもよく、1.0~2.0mmでもよい。
【0023】
透光凸層18は、透光性を有する樹脂からなる樹脂層であり、無色透明でもよく、有色透明でもよい。透光凸層18を形成する樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ウレタンアクリレート樹脂などのアクリル系樹脂; ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂; ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂; またはこれらの2種以上のブレンドが挙げられる。透光凸層18は、光散乱粒子を含有しないことが好ましい。
【0024】
透光凸層18の屈折率(絶対屈折率)は、特に限定されず、透光基材16よりも高くてもよく、透光基材16よりも低くてもよく、同じ値でもよい。透光凸層18が透光基材16に接し設けられている場合において、透光凸層18の屈折率が透光基材16の屈折率よりも高いと、透光凸層18における光の取り出し効果を高めることができる。透光凸層18の屈折率は、例えば1.35~1.65でもよく、1.40~1.55でもよい。
【0025】
透光凸層18は、透光基材16の表面16Aまたは裏面16Bのいずれか一方面に凸状に設けられている。すなわち、透光凸層18は、当該一方面を部分的に覆う凸状の層として設けられている。透光凸層18について「凸状」とは、上記一方面(即ち、透光凸層18を設ける基準面)に対して湾曲面による膨らみを持って隆起していることをいい、上記一方面に対して相対的に高まっていればその高さは特に限定されない。好ましくは、「凸状」は、中央が盛り上がった形状をいう。透光凸層18は、当該一方面に点在して設けられている。点在とは、点状(ドット状)の透光凸層18が複数存在することをいう。この例では、透光凸層18は、透光基材16の表面16Aに接し設けられており、すなわち表面16Aに直接積層されている。
【0026】
透光凸層18は、透光基材16の上記一方面における全域にわたって分布して配置されてもよく、あるいは局所的に配置されてもよい。複数の点状の透光凸層18を上記一方面における所定位置に点在して配置させることにより、模様、図形、文字、記号、またはこれらの2種以上の組み合わせからなる意匠をクリスタル調の発光により表現することができる。
【0027】
透光凸層18は、その底面18Aから入射された光を出射する光出射面18Bを備える。ここで、光出射面18Bは、透光基材16の表面16Aから凸状に突出して外側に露出する透光凸層18の表面であり、透光凸層18と空気との界面をなす面である。透光凸層18の底面18Aは、透光凸層18の頂点に対する面であり、この例では透光基材16に接している面(透光凸層18と透光基材16との界面)である。
【0028】
複数の透光凸層18の各光出射面18Bは、湾曲面により形成されている。ここで、「湾曲面により形成される」とは、光出射面18Bが湾曲面のみにより形成される態様だけでなく、部分的に平面が含まれる態様も包含する。光出射面18Bから出射する光が拡散し、見る角度によって発光の見え方が異なる効果を高めるために、光出射面18Bは、主として湾曲面により形成されることが好ましく、光出射面18Bのうち湾曲面が占める面積割合が80%以上であることがより好ましい。すなわち、一実施形態において、各光出射面18Bは、湾曲面の面積割合が80%以上、平面の面積割合が20%以下であることが好ましい。より好ましくは、図1および図2に示すように湾曲面の面積割合が100%である。
【0029】
複数の透光凸層18の各光出射面18Bは、一または複数の湾曲面により形成される。
【0030】
例えば、図3に拡大して示す透光凸層18の光出射面18Bは単一の湾曲面により形成されている。図3の透光凸層18は、その一方面である底面18Aが平面であり、かつ他方面である光出射面18Bが湾曲凸面である平凸レンズ状をなしている。
【0031】
単一の湾曲面よりなる光出射面18Bを持つ透光凸層18は、それぞれ独立して設けられてもよいが、図4に示すように、複数の透光凸層18が繋がって形成されてもよい。光散乱層20同士の間隔が狭く、かつ透光凸層18を光散乱層20よりも大きく形成する場合、複数の透光凸層18はこのように繋がって形成されてもよい。
【0032】
図5に拡大して示す透光凸層18の光出射面18Bは複数の湾曲面により形成されている。図5の透光凸層18は、平凸レンズ状の凸部上に、より小さな平凸レンズ状の凸部を設けた形状をなしている。このように透光凸層18は、複数の凸状ドットを重ねて設けた形状を有してもよい。
【0033】
一実施形態において、透光凸層18は、湾曲面状をなして周縁から中央に向かって高く形成された凸状をなしており、平面視が円形、即ち円形の底面18Aを持つことが好ましい。しかしながら、これに限定されるものではなく、平面視が矩形または三角形状でもよく、種々の形状を採用することができる。例えば、平面視の形状は、インクジェット印刷により形成されるドットを重ねた複雑な形状を有してもよい。
【0034】
透光凸層18の大きさは、特に限定されず、例えば底面18Aの円相当径が20~150μmでもよく、30~100μmでもよい。円相当径とは、底面の面積に相当する真円の直径のことである。そのため、透光凸層18の底面18Aの面積は、例えば300~18000μmでもよく、700~8000μmでもよい。
【0035】
透光凸層18の高さH(図3参照)は、特に限定されず、例えば1~30μmでもよく、3~15μmでもよい。ここで、透光凸層18の高さHとは、透光凸層18の底面18Aから頂点までの距離である。
【0036】
透光凸層18の円相当径に対する高さの比(高さ/円相当径)は、特に限定されず、1/20~1/3でもよく、1/10~1/4でもよい。
【0037】
透光凸層18の配設密度は、特に限定されず、例えばクリスタル調やガラス調の発光からなる意匠を表現する意匠領域において、1cm当たりの透光凸層18の数が800~15,000個でもよく、1,000~12,000個でもよく、4,000~10,000個でもよい。
【0038】
透光凸層18の形成方法は特に限定されないが、例えばインクジェット印刷などの印刷により透光凸層18を形成することが好ましい。より好ましくは、複数の透光凸層18は、紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂を用いて印刷(好ましくはインクジェット印刷)により形成されることである。
【0039】
透光凸層18をインクジェット印刷により形成する場合、そのインクの粘度を調整することにより、上記のような湾曲面よりなる光出射面18Bを持つ透光凸層18を形成することができる。例えば、インクの粘度が高いほど、基材表面に吐出された液滴の接触角を大きい状態に維持して凸レンズ状の透光凸層18を形成しやすい。その場合のインクの粘度は、特に限定されず、例えば13~20mPa・sでもよく、15~18mPa・sでもよい。ここで、粘度は、コーン・プレート型粘度計RE105H(東機産業株式会社製)により測定される25℃での測定値である。
【0040】
光散乱層20は、光散乱粒子を含む樹脂からなる樹脂層である。光散乱層20は、透光基材16の上記一方面に対向する他方面に複数設けられている。すなわち、光散乱層20は、当該他方面を部分的に覆う層として複数設けられている。光散乱層20は、上記一方面側の透光凸層18と同様、上記他方面に点在して設けられている。
【0041】
光散乱層20は他方面に部分的に接し設けられている。これにより、全反射により透光基材16内に閉じ込められて伝わっていく光が、光散乱粒子により散乱される。すなわち、光が乱反射して様々な角度に放出され、上記他方面に対向する一方面に対して垂直に近い角度(臨界角未満)で進む光が生じる。そのような光は全反射しないため、当該一方面から放射され、よって導光板12から光を取り出すことができる。
【0042】
光散乱層20は、この例では透光基材16の裏面16Bに接し設けられており、すなわち裏面16Bに直接積層されている。そのため、透光基材16内を進む光は、裏面16B側において光散乱層20の光散乱粒子により散乱する。これにより、表面16Aに対して臨界角未満で進む光が生じ、その少なくとも一部は表面16A側に設けられた透光凸層18に進入する。
【0043】
各光散乱層20の形状は、特に限定されず、例えば平面視が円形、即ち円形の底面を持つものでもよく、平面視が矩形または三角形状でもよく、更にはインクジェット印刷により形成されるドットを重ねた複雑な形状を有してもよい。光散乱層20は、透光凸層18と同様、その表面が湾曲面により形成されてもよいが、湾曲面により形成される必要はなく、例えば一定厚み(高さ)のフラットな断面形状を有してもよい。ここで、光散乱層20の底面とは、透光基材16に接している面(光散乱層20と透光基材16との界面)である。
【0044】
光散乱層20の大きさは、特に限定されず、例えば底面の円相当径が20~150μmでもよく、30~100μmでもよい。光散乱層20の厚み(高さ)は、特に限定されず、例えば0.5~15μmでもよく、1~10μmでもよい。円相当径とは、底面の面積に相当する真円の直径のことである。
【0045】
光散乱層20の配設密度は、特に限定されず、例えばクリスタル調やガラス調の発光からなる意匠を表現する意匠領域において、1cm当たりの光散乱層20の数が800~15,000個でもよく、1,000~12,000個でもよく、4,000~10,000個でもよい。
【0046】
光散乱層20に含まれる光散乱粒子としては、光を散乱させる効果を持つ種々の微粒子を用いることができ、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、アルミ粉などが挙げられ、これらをいずれか1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、酸化チタンは高い屈折率を持つことから輝度の向上効果に優れる。また鱗片状の酸化チタンであると、光との反射面で乱反射するため、局所的に輝度の高い発光や煌めきの発光効果を高めることができる。
【0047】
光散乱粒子の屈折率は、特に限定されないが、光散乱層20を形成するマトリックス樹脂の光屈折率よりも高いことが好ましく、例えば1.5~2.8でもよく、2.0~2.7でもよい。
【0048】
光散乱粒子の粒径は、特に限定されず、例えば、50%体積粒径(D50)が100~4000nmでもよく、200~800nmでもよい。
【0049】
光散乱層20を形成する樹脂(マトリックス樹脂)としては、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ウレタンアクリレート樹脂などのアクリル系樹脂; ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂; ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂; またはこれらの2種以上のブレンドが挙げられる。該マトリックス樹脂としては、透光性を有する樹脂を用いることが好ましく、無色透明でもよく、有色透明でもよい。
【0050】
光散乱層20の形成方法は特に限定されず、例えばインクジェット印刷などの印刷により光散乱層20を形成してもよい。好ましくは、複数の光散乱層20は、紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂を用いて印刷(好ましくはインクジェット印刷)により形成されることである。光散乱層20をインクジェット印刷により形成する場合、そのインクの粘度は特に限定されず、例えば7~13mPa・sでもよく、10~13mPa・sでもよい。ここで、粘度は、コーン・プレート型粘度計RE105H(東機産業株式会社製)により測定される25℃での測定値である。
【0051】
複数の光散乱層20は、複数の透光凸層18に対して透光基材16を挟んで重なり合うように設けられている。この例では、透光基材16の表面16Aに設けられた複数の透光凸層18のそれぞれに対応させて(即ち、一対一対応で)、当該透光凸層18と重なり合う光散乱層20が、透光基材16の裏面16Bに設けられている。これにより、光散乱層20で散乱された光が透光基材16をその厚み方向に透過して透光凸層18の底面18Aから透光凸層18内に入射されるようになっている。
【0052】
図3に拡大して示すように、透光凸層18は、透光基材16を介して、対応する光散乱層20の全体に重なるように設けられてもよい。すなわち、透光凸層18と当該透光凸層18に対応する光散乱層20との重なり量が、透光基材16の表面16Aに垂直な方向からみて光散乱層20の面積の100%でもよい。但し、このように全体で重なる必要はなく、透光凸層18は、対応する光散乱層20に対してその少なくとも一部で重なり合えばよい。
【0053】
図7は、透光凸層18が、対応する光散乱層20に対してその一部で重なり合うように、両者の位置をずらして設けた実施形態での断面模式図であり、図8はその平面模式図である。このようにずらして配置することにより、表面側から見る角度によって重なり量の変化が大きくなり、煌めき効果を高めることができる。透光凸層18を光散乱層20に対してその全体で重なり合うように設けたものと、透光凸層18を光散乱層20に対してその一部で重なり合うように設けたものとを混在させてもよく、これにより煌めき効果をより高めることができる。
【0054】
複数の透光凸層18の各透光凸層18と当該透光凸層18に対応する光散乱層20との重なり量は、透光基材16の表面16Aに垂直な方向からみて光散乱層20の面積の30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは70%以上である。これにより、光散乱層20により散乱された光を効果的に透光凸層18内に入射させることができる。ここで、透光凸層18と光散乱層20との重なり量とは、図8に示す例では符号18で示す実線の円と符号20で示す点線の円との重複部分である。そのため、この重複部分が、符号20で示す点線の円の面積を100%として、その30%以上、50%以上、又は70%以上であることが好ましい。
【0055】
光散乱層20に対する透光凸層18の大きさの比は、特に限定されないが、透光凸層18の底面面積が光散乱層20の底面面積に対して40~200%であることが好ましく、より好ましくは70~150%である。透光凸層18が光散乱層20よりも大きく、そのため平面視で光散乱層20から透光凸層18がはみ出していてもよい。逆に、光散乱層20が透光凸層18よりも大きく、そのため平面視で透光凸層18から光散乱層20がはみ出してもよい。前者の場合、光散乱層20により散乱された光をより広い範囲で透光凸層18に入射させることができる。後者の場合、透光凸層18を介して出射される光と、透光凸層18を介さずに透光基材16から直接出射される光が混在することになり、見る角度によって煌めきの状態に変化を出すことができる。
【0056】
本実施形態において、複数の透光凸層18は、大きさ(即ち、円相当径)および/または高さの異なる複数種が混在するように形成されている。すなわち、図2にその一例を示すように、透光基材16の上記一方面(この例では表面16A)には、大きさおよび高さのうちの少なくとも一方が異なる複数種の透光凸層18が設けられ、かつそれらがいりまじって存在している。そのため、大きさおよび高さが同じ透光凸層を透光基材の一面全体に複数列に整列させる態様や、光源から遠ざかるに従って大きさが徐々に増加する透光凸層を透光基材の一面全体に複数列に整列させる態様は、混在しているとはいえず、本実施形態には含まれない。すなわち、複数種が混在とは、大きさおよび/または高さの異なる複数種の透光凸層18が光源からの距離とは無関係にいりまじって配置されていることをいい、必ずしもランダムに配置される必要はなく、例えば大小いりまじった透光凸層18からなる配列パターンを複数繰り返して配置した場合も「複数種が混在」の概念に包含される。
【0057】
複数種の透光凸層18を設ける態様としては、例えば、大きさおよび/または高さに応じて複数階調の透光凸層18を設定し、これら複数階調の透光凸層18を混在させて設ける態様が挙げられる。一例としてインクジェット印刷により透光凸層18を形成する場合、ノズルから噴射される液滴(インク粒)の数(ドロップ数)により複数階調を設定してもよい。ノズルから噴射された複数の液滴は、空中で1つの液滴となって透光基材16に着弾するか、または透光基材16上で一体となって1つの液滴となり、噴射された液滴の数に応じた大きさおよび/または高さの透光凸層18が形成される。その際、インクの粘度や透光基材16の表面状態によって液滴の広がり具合に幅が生じる場合もあるが、そのような幅を持つ場合も含めて、液滴の数に応じた大きさおよび/または高さを持つ複数階調の透光凸層18が形成される。そのため、かかる複数階調の透光凸層18をいりまじって形成すればよい。なお、階調数としては、特に限定されず、例えば3~20でもよく、5~15でもよい。
【0058】
光散乱層20については上記のように透光凸層18に対応させて互いに重なり合うように設けられるため、透光凸層18と同様に、大きさおよび/または高さの異なる複数種の光散乱層20を混在させて設けてもよい。そのためには、例えば、大きさに応じて複数階調の光散乱層20を設定し、これら複数階調の光散乱層20を混在させて設ける態様が挙げられる。一例としてインクジェット印刷により光散乱層20を形成する場合、ノズルから噴射される液滴(インク粒)の数(ドロップ数)により複数階調を設定してもよい。階調数としては、特に限定されず、例えば3~20でもよく、5~15でもよい。
【0059】
一実施形態において、透光凸層18と光散乱層20が同じ階調数に設定され、複数の透光凸層18の各透光凸層18と当該透光凸層18に対応する光散乱層20とが同じ階調を持つように、透光凸層18と光散乱層20を配置することが好ましい。
【0060】
図1および図2に示すように、第1実施形態に係る発光モジュール10は、導光板12と、光源14とを備える。光源14は、透光基材16の側面(入光端面)16Cに光を入射可能である。光源14としては、例えば発光ダイオード(LED)を用いることができる。
【0061】
光源14は、導光板12の全周縁のうちの少なくとも一部の縁部に設けられており、当該縁部において透光基材16の側面16Cに対して光を照射可能に配されている。例えば、多角形状をなす透光基材16の一辺に1つの光源14を設けてもよく、当該一辺に沿って複数の光源14を並べて設けてもよい。光源14は、不図示のホルダにより導光板12の一部の縁部に取り付けられる。
【0062】
一実施形態において、発光モジュール10は、光源14を透光基材16の側面16Cに沿って移動させる移動装置22を備える。移動装置22は、光源14を移動させることができれば特に限定されず、ギアやベルト駆動などを用いて構成することができる。
【0063】
移動装置22は、図1において矢印Xで示すように、光源14を透光基材16の厚み方向に移動させることができるように構成されてもよい。移動装置22は、また、図2において矢印Yで示すように、光源14を透光基材16の上記一辺に沿う横方向に移動させることができるように構成されてもよい。あるいはまた、移動装置22は、光源14を透光基材16の側面16Cに対して斜め方向に移動させることができるように、即ち上記横方向Yに移動させつつ上記厚み方向Xに移動させるように構成されてもよい。
【0064】
なお、発光モジュール10は、図示しないが、光源14への配線、電源及び制御装置などの電機部品の他、フレームなどの他の部品を含んで構成されてもよい。
【0065】
以上よりなる第1実施形態であると、導光板12の本体をなす透光基材16の側面16Cから光が入射すると、光は全反射により透光基材16内に閉じ込められて透光基材16内に広がっていく。その際、図6に示すように、光は光散乱層20において光散乱粒子により散乱し、透光基材16の表面16Aに対して垂直に近い角度(臨界角未満)で入射する光が生じる。その光は、光散乱層20に対向して設けられた透光凸層18の底面18Aから透光凸層18内に入射する。透光凸層18に入射した光は、光出射面18Bを通って外部に出射される。その際、光出射面18Bが湾曲面により形成されているので、そのレンズ効果により光が拡散し、見る角度によって発光の見え方が異なる角度依存性が得られる。また、光を出射させる透光凸層18として、大きさおよび/または高さの異なる複数種が混在していることにより、局所的に輝度の高い箇所や煌めきを表現することができる。そのため、本物のクリスタルに類似したクリスタル調の光の煌めきや角度依存性による光の動きを実現することができ、高級感を付与することができる。
【0066】
第1実施形態であると、また、移動装置22により光源14を移動させることにより、発光方向を変化させることができる。そのため、見る角度を変えなくても光に動きを出すことができ、また見る角度を変えることと相俟って光の動きを強調することができる。また、光源14を移動させることにより、光が流れているような照明効果を実現することもできる。
【0067】
なお、第1実施形態において、光散乱層20で光が散乱すること、および、透光凸層18において光が反射することにより、導光板12の裏面側からも一部の光が出射されることがある。すなわち、透光凸層18が設けられた導光板12の表面側を主たる光出射面としつつ、光散乱層20が設けられた導光板12の裏面側を、当該主たる光出射面よりも光量の少ない従たる光出射面とすることができる。そのため、導光板12を、表裏両面が光出射可能なパーティション(仕切り)として用いることもできる。
【0068】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る発光モジュールの導光板30を示した要部拡大断面図である。第2実施形態の導光板30は、透光基材16の上記一方面(この例では表面16A)に保護層として透光樹脂層32を設けた点で第1実施形態の導光板12と異なる。
【0069】
透光樹脂層32は、高屈折率層である透光基材16を保護するために設けられた透光性を有する樹脂層であり、この例では、透光基材16よりも屈折率の低い樹脂からなる。透光樹脂層32の屈折率(絶対屈折率)は、透光基材16よりも低ければ特に限定されず、例えば1.35~1.65でもよく、1.40~1.55でもよい。
【0070】
透光樹脂層32は、無色透明でもよく、有色透明でもよい。透光樹脂層32を形成する樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ウレタンアクリレート樹脂などのアクリル系樹脂; ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体樹脂(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂; ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂; またはこれらの2種以上のブレンドが挙げられる。
【0071】
透光樹脂層32の厚みは、特に限定されず、例えば10~100μmでもよく、20~50μmでもよい。
【0072】
第2実施形態において、透光樹脂層32は、透光基材16の表面16Aの全体にわたって当該表面16Aに接し設けられている。そして、該透光樹脂層32上に複数の透光凸層18が当該透光樹脂層32の表面に接し設けられている。すなわち、第2実施形態において、複数の透光凸層18は、透光基材16の上記一方面(表面16A)に対して透光樹脂層32を介して設けられている。従って、この場合、透光樹脂層32の表面が透光凸層18を設ける基準面である。
【0073】
透光樹脂層32の形成方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、ディッピング、スピンコート、バーコートなどの公知の塗装方法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷などの印刷方法が挙げられる。
【0074】
第2実施形態では、透光凸層18を透光基材16上に直接設けるのではなく、透光樹脂層32を介して設けている。透光樹脂層32は、透光基材16よりも屈折率が小さいが、透光凸層18を介して外部に出射される光は、裏面側の光散乱層20で散乱された臨界角未満の角度で表面16Aに向かう光であるため、透光樹脂層32を設けたことによる輝度の低下は小さい。また、透光樹脂層32がない場合、仮に透光基材16の表面16Aに傷がつくと、その部分から光漏れが生じるおそれがあるが、屈折率の小さい透光樹脂層32を設けたことにより、傷がついてもその部分からの光漏れは発生しにくい。
【0075】
第2実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0076】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る発光モジュールの導光板40を示した要部拡大断面図である。第3実施形態の導光板40は、透光基材16の表面16Aに設ける保護層としての透光樹脂層42の構成が第2実施形態とは異なる。
【0077】
第3実施形態では、第1実施形態と同様、透光凸層18を透光基材16の表面16Aに直接設けた上で、当該表面16Aにおける透光凸層18以外の部分に透光樹脂層42を設けている。このように透光凸層18を透光基材16の表面16Aに直接設けることにより、第2実施形態のように透光樹脂層32を介在させることによる輝度低下の可能性を無くすことができる。但し、製造のしやすさという点では第2実施形態の方が好ましい。
【0078】
第3実施形態について、その他の構成及び作用効果は第2実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0079】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態に係る発光モジュール50の断面模式図である。第4実施形態に係る発光モジュール50では、その導光板52が、光散乱層20を被覆する被覆樹脂層54を備える点で、第1実施形態に係る発光モジュール10と異なる。
【0080】
第4実施形態の導光板52は、第1実施形態の導光板12と同様の透光基材16、複数の透光凸層18および複数の光散乱層20を有するものであり、その上で、該複数の光散乱層20に対してそれらをそれぞれ被覆する複数の被覆樹脂層54が設けられている。
【0081】
被覆樹脂層54は、透光性を有する樹脂からなり、無色透明でもよく、有色透明でもよい。被覆樹脂層54は光散乱粒子を含有しない樹脂層である。被覆樹脂層54を形成する樹脂としては、透光凸層18と同様の樹脂、すなわち、上記のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの2種以上のブレンドが例示される。
【0082】
被覆樹脂層54の屈折率(絶対屈折率)は、特に限定されず、透光基材16よりも高くてもよく、透光基材16よりも低くてもよく、同じ値でもよい。被覆樹脂層54の屈折率は、例えば1.35~1.65でもよく、1.40~1.55でもよい。
【0083】
被覆樹脂層54は、透光基材16の上記他方面(裏面16B)に設けられた複数の光散乱層20に対し、各光散乱層20のみをそれぞれ覆うように複数設けられている。但し、被覆樹脂層54は、各光散乱層20の表面全体を被覆するように、各光散乱層20の周囲を取り囲んで透光基材16と接する部分を有して形成されている。このように被覆樹脂層54は光散乱層20よりも大きく形成されているため、図11に示すように、光散乱層20同士の間隔が狭い場合、複数の被覆樹脂層54が繋がって形成されてもよい。
【0084】
被覆樹脂層54の表面54Aは、図11に示すように湾曲面により形成されている。被覆樹脂層54の表面54Aは、被覆樹脂層54と空気との界面をなす面である。該表面54Aは、湾曲面のみで形成されてもよいが、部分的に平面を含んでもよい。該表面54Aは、主として湾曲面により形成されることが好ましく、表面54Aのうち湾曲面が占める面積割合が80%以上であることがより好ましい。
【0085】
被覆樹脂層54の表面54Aは、透光凸層18と同様、一または複数の湾曲面により形成され、図11に示すように単一の湾曲凸面からなる凸レンズ状に形成されてもよい。かかる単一の湾曲凸面からなる表面54Aを有する被覆樹脂層54は、それぞれ独立して設けてもよく、また、上記のように複数の被覆樹脂層54が繋がって形成されてもよい。また、図5に示す透光凸層18と同様に平凸レンズ状の凸部を2段に重ねて設けることにより、複数の湾曲面を持つ表面54Aとしてもよい。
【0086】
被覆樹脂層54は、湾曲面状をなして周縁から中央に向かって高く形成された凸状をなして形成されることが好ましく、平面視は円形であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、平面視が矩形または三角形状でもよく、種々の形状を採用することができる。
【0087】
被覆樹脂層54は、例えばインクジェット印刷により形成することができ、そのインクの粘度を調整することにより、上記のような湾曲面よりなる表面54Aを持つ被覆樹脂層54を形成することができる。
【0088】
被覆樹脂層54は、各光散乱層20を覆うように設けられているため、光散乱層20と同様に、大きさおよび/または高さの異なる複数種の被覆樹脂層54を混在させて設けてもよい。そのためには、例えば、大きさに応じて複数階調の被覆樹脂層54を設定し、これら複数階調の被覆樹脂層54を混在させて設ける態様が挙げられる。一例としてインクジェット印刷により被覆樹脂層54を形成する場合、ノズルから噴射される液滴(インク粒)の数(ドロップ数)により複数階調を設定してもよい。
【0089】
第4実施形態によれば、光散乱層20を被覆する被覆樹脂層54を設け、その表面54Aを湾曲面により形成したことにより、光散乱層20で散乱した光を被覆樹脂層54でのレンズ効果により拡散させることができる。そのため、導光板52の表面側においてより一層輝度の差を生じさせて、意匠表現の幅を広げることができる。また、導光板52の裏面側においても煌めきのある光の出射が可能となる。そのため、例えば導光板52をパーティション(仕切り)として用いたときに、その表面および裏面ともに煌めき効果のある光の意匠表現を得ることができる。
【0090】
第4実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0091】
(その他の実施形態)
上記実施形態における導光板12,30,40,52には、追加の層を形成してもよい。例えば、導光板12,30,40,52の裏面側に、極端に屈折率の低い樹脂層を設けてもよく、また該裏面側に、金属鏡面となるような塗料を塗布して鏡面層を設けてもよい。
【0092】
上記実施形態においては、透光基材16の裏面16B側に設けた各光散乱層20に対して、湾曲面により形成された光出射面18Bを持つ透光凸層18を表面16A側に設けている。しかしながら、全ての光散乱層20に対応させて湾曲状の透光凸層18を形成する必要はない。例えば、一部の光散乱層20については、それに対応させて、湾曲面により形成されていないフラットな断面形状の光出射面を持つ透光性の樹脂層を表面16A側に設けてもよい。あるいはまた、一部の光散乱層20については、対応する樹脂層を表面16A側に設けなくてもよい。
【0093】
上記実施形態における各構成は適宜に組み合わせることができ、例えば、第4実施形態の導光板52において、第2実施形態の透光樹脂層32や第3実施形態の透光樹脂層42を設けてもよい。なお、表面側の透光凸層18について、その光出射面18Bは他の樹脂層で覆われないことが好ましい。
【実施例0094】
[実施例1]
基材として、住化アクリル販売株式会社製「テクノロイ(登録商標)C003」を用いた(短辺の長さ180mm、長辺の長さ400mmの長方形シート)。該基材は、透光基材16に相当するポリカーボネート層(厚み1.97mm、屈折率1.587)の表面16Aに、透光樹脂層32(保護層)に相当するPMMA層(厚み0.03mm、屈折率1.49)を積層した2層構造の樹脂シートである。
【0095】
光散乱層用インクおよび透光凸層用インクの配合は下記表1および表2に示す通りである。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
上記基材の裏面(透光基材16の裏面16B)に、シリアル型インクジェットプリンターを用いて、光散乱層用インクを付与した後、直ちに紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、インクを硬化させて平面視円形の光散乱層20を複数形成した。インクの粘度(25℃)は12.2mPa・sであった。印刷条件は、ヘッド加熱温度:35℃、ノズル径:20μm、印加電圧:21V、パルス幅:15μs、解像度:300dpiとした。紫外線照射条件は、ランプ種類:メタルハライドランプ、ランプ出力:100W、照射時間:0.5s、照射回数:4回、照射距離:5mm、積算光量:200mJ/cmとした。
【0099】
その際、複数種の光散乱層20として、ノズルから噴射される液滴のドロップ数に応じて下記1~7階調を設定した。
・1階調:1ドロップ、直径20~25μm
・2階調:2ドロップ、直径25~30μm
・3階調:3ドロップ、直径30~35μm
・4階調:4ドロップ、直径40~50μm
・5階調:5ドロップ、直径55~65μm
・6階調:6ドロップ、直径70~80μm
・7階調:7ドロップ、直径80~100μm
【0100】
次いで、上記基材の表面(透光樹脂層32の表面)に、シリアル型インクジェットプリンターを用いて、透光凸層用インクを付与した後、直ちに紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、インクを硬化させて平面視円形の平凸レンズ状の透光凸層18を複数形成した。透光凸層18は、裏面側に設けた光散乱層20と基材を挟んで重なり合うように、光散乱層20と同じ位置に設けた。インクの粘度(25℃)は15.0mPa・sであった。印刷条件は、ヘッド加熱温度:35℃、ノズル径:20μm、印加電圧:22V、パルス幅:15μs、解像度:300dpiとした。紫外線照射条件は、ランプ種類:メタルハライドランプ、ランプ出力:160W、照射時間:0.5s、照射回数:8回、照射距離:40mm、積算光量:640mJ/cmとした。透光凸層180の屈折率は1.458であった。
【0101】
その際、複数種の透光凸層18として、ノズルから噴射される液滴のドロップ数に応じて下記1~7階調を設定した。
・1階調:1ドロップ、直径20~25μm、高さ1~2μm
・2階調:2ドロップ、直径25~30μm、高さ3~4μm
・3階調:3ドロップ、直径30~35μm、高さ5~6μm
・4階調:4ドロップ、直径40~45μm、高さ7~8μm
・5階調:5ドロップ、直径45~50μm、高さ9~10μm
・6階調:6ドロップ、直径55~65μm、高さ11~13μm
・7階調:7ドロップ、直径70~90μm、高さ14~17μm
【0102】
このように透光凸層18と光散乱層20を同じ階調数に設定した上で、複数の透光凸層18の各透光凸層18と当該透光凸層18に対応する光散乱層20とが同じ階調を持つように配置した。すなわち、例えば「3階調」の透光凸層18に対しては透光基材16を挟んで重なり合う位置に「3階調」の光散乱層20を設けた。
【0103】
上記複数種の透光凸層18の配置例の一部分を図12に示す。図12において、マス目の一辺は約85μmであり、一辺約0.85mmの正方形の領域における透光凸層18の配設パターンを、図12(A)では透光凸層18の平面図として示し、図12(B)ではその階調を数字で示している。上記複数種の光散乱層20の配置例は、透光凸層18の配置例と同じであり、一対一対応とした。なお、空白のマス目は、透光凸層18を設けない、0階調の部位を意味する。
【0104】
以上により得られた導光板は、図9に示す第2実施形態の導光板30に相当する。該導光板の短辺側の側面にLEDを取り付け、LEDを点灯させて当該側面から光を入射したところ、表面側の透光凸層18から光が出射され、局所的に輝度の高い箇所や煌めきを有していた。また、見る角度によって発光の見え方が異なる角度依存性を持っていた。そのため、クリスタル調の光の煌めきや角度依存性による光の動きを実現することができ、高級感のある意匠が得られた。
【0105】
[実施例2]
実施例1で得られた導光板において、複数の光散乱層20に対してそれらをそれぞれ被覆する複数の被覆樹脂層54を設けた。被覆樹脂層54は、シリアル型インクジェットプリンターを用いて、上記実施例1の透光凸層用インクを光散乱層20の表面に付与した後、直ちに紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、インクを硬化させることにより形成した。被覆樹脂層54の印刷条件、紫外線照射条件、および階調の設定は、実施例1の透光凸層18と同様とした。被覆樹脂層54は、表面側の透光凸層18と同等の平面視円形の凸レンズ状の表面を有していた。
【0106】
これにより得られた導光板は、上記第4実施形態と第2実施形態を組み合わせた構成を持つものである。該導光板の短辺側の側面にLEDを取り付け、LEDを点灯させて当該側面から光を入射したところ、表面側の透光凸層18から光が出射され、局所的に輝度の高い箇所や煌めきを有していた。また、見る角度によって発光の見え方が異なる角度依存性を持っていた。実施例1の導光板と比べて、部位による輝度の差がより一層強調されて表面側の意匠効果に優れていた。また、裏面側についても煌めき効果のある光の出射がみられた。よって、導光板の表面側だけでなく裏面側についても煌めき効果のある光の意匠表現が得られた。
【0107】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0108】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本実施形態に係る導光板および発光モジュールの用途は、特に限定されず、例えば、自動車のインストルメントパネルやドア内側材などの自動車内装材を始めとした各種の車両内装部品、家電製品や通信機器などの各種電気製品の筺体などに用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
10,50…発光モジュール、12,30,40,52…導光板、14…光源、16…透光基材、18…透光凸層、20…光散乱層、32,42…透光樹脂層、54…被覆樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12