(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023634
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305S
F16K31/06 305K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129319
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】岩永 弘行
(72)【発明者】
【氏名】野口 博史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直己
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 彰剛
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA04
3H106DA05
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD04
3H106EE42
3H106EE48
3H106GB01
3H106GB06
3H106GC13
(57)【要約】
【課題】安定した流体の流量や圧力の制御が可能なソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】弁体51と、弁体51が着座する弁座40aと、可動鉄心84、ロッド83および固定鉄心82を有し、弁体51に閉弁方向への駆動力を及ぼすソレノイド80と、弁体51を開弁方向に付勢するスプリング90と、弁体51および弁座40aが配置される弁室4を画成しているバルブハウジング10と、を備えているポペット式のソレノイドバルブ1であって、弁室4と固定鉄心82との間にスプリング90が配置されるスプリング室5が画成されおり、弁体51は、開弁時に弁室4およびスプリング室5を隔離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、
前記弁体が着座する弁座と、
可動鉄心、ロッドおよび固定鉄心を有し、前記弁体に閉弁方向への駆動力を及ぼすソレノイドと、
前記弁体を開弁方向に付勢するスプリングと、
前記弁体および前記弁座が配置される弁室を画成しているバルブハウジングと、を備えているポペット式のソレノイドバルブであって、
前記弁室と前記固定鉄心との間に前記スプリングが配置されるスプリング室が画成されおり、
前記弁体は、開弁時に前記弁室および前記スプリング室を隔離するソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記弁体は、開弁時に前記バルブハウジングに当接している請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記弁室および前記スプリング室を連通する通路が設けられている請求項1または2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記通路は、前記弁体に形成された溝によって構成されている請求項3に記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記スプリングは、円錐状のコイルスプリングであって、
前記ロッドには前記スプリングの小径端が当接するスプリングストッパが備えられている請求項1ないし4のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記弁体および前記ロッドは連結されている請求項1ないし5のいずれかに記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を制御するソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で流体の制御を行うために利用されているソレノイドバルブは、ソレノイドに入力される電力に応じて弁座に対して離接する弁体を備え、弁開度が調節されることで流体の流量や圧力の制御が可能となっている。
【0003】
このようなバルブには、弁体であるスプールが弁座である開口に対して平行に移動するスプール式、弁体が弁座である開口に対して直交するように移動するポペット式が代表的な形態として挙げられる。これらのバルブの中でも流量や圧力の制御に最も適しているのがポペット式のバルブである。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるポペット式のソレノイドバルブは、弁体および弁座が配置される弁室を画成しているバルブハウジングと、弁体に閉弁方向への駆動力を及ぼすためのソレノイドと、弁体を開放方向に付勢するスプリングと、から主に構成されている。ソレノイドにおいては、コイルに通電されることで可動鉄心は磁力によって固定鉄心に吸引される。可動鉄心が吸引されることによって、可動鉄心に固定されているロッドが従動し、ロッドと共に弁体が弁座に向かって移動し、弁体が弁座に着座し、ソレノイドバルブは閉弁する。また、コイルへの通電の停止により、スプリングの付勢力によって弁体が開弁方向に移動し、弁体が弁座から離間することで、ソレノイドバルブは開弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-50810号公報(第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように特許文献1のようなソレノイドバルブにあっては、スプリングは流入路および流出路よりもソレノイド側において弁体に外嵌されている。そのため、固定鉄心や可動鉄心は、スプリングによる形状の制約を受けることがなく、十分な磁路を形成しやすくなっている。加えて、流入路から流出路に流れる流体の流れを阻害しにくくなっている。ところで、開弁時には弁室からソレノイド内の空間やスプリングが配置された弁体の外径空間に流体が流入する。流体にコンタミが含まれていると、ソレノイドやスプリングの機能が損ねられてしまい、流量や圧力の制御に支障を来す虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、安定した流体の流量や圧力の制御が可能なソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のソレノイドバルブは、
弁体と、
前記弁体が着座する弁座と、
可動鉄心、ロッドおよび固定鉄心を有し、前記弁体に閉弁方向への駆動力を及ぼすソレノイドと、
前記弁体を開弁方向に付勢するスプリングと、
前記弁体および前記弁座が配置される弁室を画成しているバルブハウジングと、を備えているポペット式のソレノイドバルブであって、
前記弁室と前記固定鉄心との間に前記スプリングが配置されるスプリング室が画成されおり、
前記弁体は、開弁時に前記弁室および前記スプリング室を隔離する。
これによれば、開弁時には弁体によってスプリング室は弁室から隔離される。そのため、開弁時におけるスプリング室には流体が極力流入しにくくなっている。これにより、開弁時に弁室からスプリング室にコンタミを含む流体が流入しソレノイドやスプリングの機能が損ねられにくくなっている。よって、ソレノイドバルブは安定した作動流体の流量や圧力の制御が可能である。
【0009】
前記弁体は、開弁時に前記バルブハウジングに当接してもよい。
これによれば、バルブハウジングに当接した弁体は、より好適にスプリング室内に流体が流入することを防ぐことができる。また、ハウジングは開弁時の弁体の位置を保持するストッパとして機能する。よって、ソレノイドバルブの構成は簡素になる。また、通電終了時に弁体が開弁方向に移動し、全開状態に至る際に、スプリング室および弁室間ではスプリング室から弁室に向かう流体の流れが生じる。これにより、コンタミはスプリング室から排出されやすくなっている。
【0010】
前記弁室および前記スプリング室を連通する通路が設けられていてもよい。
これによれば、開弁状態において、スプリング室には通路を通じて弁室から流体が流出入する。そのため、通電開始時に弁体は円滑に閉弁方向に移動するとともに、通電終了時に弁体は円滑に開弁方向に移動し、全開状態に至る。
【0011】
前記通路は、前記弁体に形成された溝によって構成されていてもよい。
これによれば、通路の構成は簡素になる。
【0012】
前記スプリングは、円錐状のコイルスプリングであって、
前記ロッドには前記スプリングの小径端が当接するスプリングストッパが備えられていてもよい。
これによれば、スプリングストッパは流体の抵抗を受けにくく、ソレノイドの駆動力を低減することができる。
【0013】
前記弁体および前記ロッドは連結されていてもよい。
これによれば、ロッドおよび弁体の一方が摺動ガイドされることにより、他方の摺動ガイドは省略することができる。すなわち、ソレノイドバルブは、調心構造が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施例1の閉弁時におけるソレノイドバルブの断面図である。
【
図2】実施例1のソレノイドバルブにおける弁体について説明するための図である。
【
図3】実施例1の開弁時におけるソレノイドバルブの要部の断面図である。
【
図4】実施例1の閉弁時におけるソレノイドバルブの要部の断面図である。
【
図5】本発明に係る実施例2の開弁時におけるソレノイドバルブの要部の断面図である。
【
図6】本発明に係る実施例3の開弁時におけるソレノイドバルブの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るソレノイドバルブを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例1に係るソレノイドバルブにつき、
図1から
図4を参照して説明する。以下、
図1の正面から見て上下をソレノイドバルブの上下として説明する。詳しくは、ソレノイドが配置される紙面上側をソレノイドバルブの上側、バルブハウジングが配置される紙面下側をソレノイドバルブの下側として説明する。
【0017】
図1に示されるように、ソレノイドバルブ1は、バルブ部9と、ソレノイド80とから構成されている。バルブ部9は、バルブハウジング10と、弁体51と、円錐状のコイルスプリング90から主に構成されている。バルブハウジング10は金属材料または樹脂材料により形成されている。弁体51およびコイルスプリング90は、バルブハウジング10内に配置されている。ソレノイド80はバルブハウジング10に接続され、弁体51に駆動力を及ぼすためのものである。
【0018】
まず、バルブ部9の構成について説明する。バルブ部9の要素はバルブハウジング10、弁50、コイルスプリング90である。バルブハウジング10は、ソレノイド80側すなわち上方側から順に、小径円筒部12と、内径が小径円筒部12よりも大きい中間円筒部14と、中間円筒部14よりも内径が僅かに小さい円筒部15が形成されている。
【0019】
小径円筒部12の上端には、外径方向に拡開された環状段部11が形成されている。環状段部11は、上下方向に延びる環状の内周面に直交して内径方向に延びる環状の底面を有している。
【0020】
小径円筒部12の下端には、内径側に延びる環状リブ13が形成されている。環状リブ13の上面は環状段部11の底面12aとなっている。環状段部11と環状リブ13の間は内径が一定となっている。
【0021】
小径円筒部12は、後述するセンタポスト82と共に、コイルスプリング90が配置されるスプリング室5を画成している。
【0022】
ここで、コイルスプリング90について説明する。コイルスプリング90は、上方側から下方に向かって拡径する円錐状であり、小径端91と、大径端92を有している。小径端91はスプリングストッパ93に当接し、大径端92は小径円筒部12における底面12aに当接している。
【0023】
コイルスプリング90は、小径円筒部12の底面12aとスプリングストッパ93との間に圧縮された状態で配置されている。これによりコイルスプリング90は、ロッド83を弁50の開弁方向、すなわち軸方向上方に付勢している。
【0024】
バルブハウジング10の説明に戻って、中間円筒部14は、環状リブ13に連続して形成されており、天井面14a、内周面14b、底面14cを有している。
【0025】
天井面14aは外径方向に延び、環状に形成されている。なお、天井面14aの一部は、環状リブ13の内径側端面ともなっている。
【0026】
内周面14bは、天井面14aの外径縁に略直交して下方向に延びている。
【0027】
底面14cは、内周面14bの下縁に略直交して内径方向に延び、環状に形成されている。
【0028】
また、天井面14aは、底面14cよりも内径方向に長く延出している。
【0029】
また、中間円筒部14における周壁には、径方向に連通する流入路2が周方向に6等配されている。
【0030】
また、中間円筒部14には、有底円筒状の弁体51が配置されている。
【0031】
弁体51の外径は、中間円筒部14における内周面14bの内径よりも小径である。弁体51における外周面は、中間円筒部14における内周面14bとは離間している。
【0032】
ここで、弁体51について説明する。弁体51は、天井部52と、筒状部53を有している。
【0033】
弁体51における天井部52は、円板状に形成されており、その径方向中央に軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。また、天井部52の外径は、中間円筒部14における天井面14aの内径よりも長寸となっている。このように、天井部52は、その上端面52aが天井面14aに当接可能に構成されている。
【0034】
また、
図1,
図2(a)に示されるように、天井部52における上端面52aには、外径方向および上方向に開放され、内径方向に延びる溝52bが一つ形成されている。溝52bは、後述する弁50の全開状態において、弁体51が配置される弁室4とスプリング室5とを連通している。
【0035】
図1,
図2(b)に示されるように、弁体51における筒状部53は、天井部52における外径端に略直交して下方向に延びている。また、筒状部53における下端には、下方向に向かって縮径するテーパ面53aが形成されている。
【0036】
また、弁体51には、ロッド83における下端が貫通孔に圧入されて固定されている。なお、弁体51へのロッド83の固定は圧入以外であってもよい。
【0037】
バルブハウジング10の説明に戻って、下方の円筒部15は、中間円筒部14に連続し、中間円筒部14の底面14cに略直交して下方向に延び、その下端部内径側に2段階で拡開している2つの段部が形成されている。
【0038】
また、円筒部15には、弁座部材40が内嵌されて加締め固定されている。なお、中間円筒部14への弁座部材40の固定は加締め以外であってもよい。
【0039】
ここで、弁座部材40について説明する。弁座部材40は、軸方向に貫通する流出路3を有し、円筒部15に内嵌可能な外径側段付き円筒状に形成されている。また、弁座部材40の上端内径側には、下方に向かって縮径するテーパ面状の弁座40aが形成されている。
【0040】
弁座部材40における弁座40aには、弁体51におけるテーパ面53aが着座可能となっている。すなわち、弁座40aおよびテーパ面53aによって弁50が構成されている。
【0041】
また、弁体51が配置される中間円筒部14および弁座40aを有する弁座部材40は、弁室4を画成している。
【0042】
次いで、ソレノイド80について説明する。ソレノイド80は、ホルダ81と、固定鉄心としてのセンタポスト82と、ロッド83と、可動鉄心84と、キャン85と、コイル86と、軸受87,88と、から主に構成されている。
【0043】
ホルダ81は、センタポスト82が軸方向下方から挿嵌・固定されている段付き円筒状に形成されている。
【0044】
また、ホルダ81には、下方向に開放している開口部81aが形成されている。
【0045】
センタポスト82は、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から段付き円筒状に形成されている。
【0046】
センタポスト82は、軸方向に延びる円筒状の本体部82aを備えている。本体部82aにおける上端には軸受87が軸方向上方から挿嵌・固定されている。また、本体部82aにおける上端には軸受88が軸方向下方から挿嵌・固定されている。
【0047】
また、センタポスト82には、本体部82aにおける下端に連続し、外径方向に突出するフランジ82bが形成されている。
【0048】
ロッド83は、円柱状に形成されている。ロッド83は、センタポスト82および軸受87,88に挿通され、軸方向に往復動自在に配置されている。
【0049】
また、軸受87,88によって、ロッド83は調心されるとともに、軸方向への移動がガイドされる。すなわち、軸受87,88は、ロッド83の調心構造を構成している。
【0050】
また、ロッド83には、その下端よりの位置において、外径方向に開放され、内径方向に凹設されている環状溝83aが形成されている。この環状溝83aには、C字状の薄板であるスプリングストッパ93が外嵌されて固定されている。なお、スプリングストッパ93のロッド83への固定方法は適宜変更されてもよい。
【0051】
また、ロッド83における上端は、可動鉄心84の下端に当接している。これにより、ソレノイド80への通電時に、ロッド83は、閉弁方向に移動する可動鉄心84に従動して移動する。これに伴って、ロッド83は、弁体51を閉弁方向、すなわち軸方向下方に移動させる。
【0052】
キャン85は、有底筒状に形成されており、ホルダ81における軸方向上方側に開放している開口部に内嵌されて固定されている。
【0053】
キャン85内には、ロッド83の一部および可動鉄心84が軸方向に移動可能に配置されている。また、可動鉄心84はキャン85の内周面によって軸方向の移動がガイドされる。なお、可動鉄心84がキャン85にガイドされなくてもよい。
【0054】
コイル86は、センタポスト82の外側にボビンを介して巻き付けられた励磁用のコイルである。
【0055】
次に、ソレノイドバルブ1の動作について、
図3,4を参照して説明する。
【0056】
まず、非通電状態におけるソレノイドバルブ1について説明する。
図1を参照して、非通電状態において弁50は、コイルスプリング90の付勢力により弁体51が弁座40aから離間した開放状態にあり、全開状態となっている。
【0057】
詳しくは、コイルスプリング90の付勢力により、スプリングストッパ93を介してロッド83は軸方向上方側へと押圧されている。これにより弁体51における上端面52aはバルブハウジング10における天井面14aに押圧されている。
【0058】
言い換えれば、弁体51およびロッド83はバルブハウジング10によって上方側への移動が規制されている。このように、バルブハウジング10は開弁時の弁体51の位置を保持するストッパとして機能するため、別途開弁時のストッパを要する構成と比較して、ソレノイドバルブ1の構成は簡素になる。
【0059】
また、コイルスプリング90は、小径円筒部12における底面12aと、スプリングストッパ93とによって伸長が規制され、圧縮された状態にある。
【0060】
弁50の開弁時に、各流入路2を通じて弁室4内に流入した流体は、流出路3を通じてソレノイドバルブ1の外方に流出する。
【0061】
このとき、バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが圧接されることによって、スプリング室5は弁室4から隔離されている。そのため、スプリング室5には、弁50の開弁時において流体が極力流入しにくくなっている。
【0062】
これにより、開弁時に弁室4からスプリング室5に流体と共にコンタミが流入しソレノイド80やコイルスプリング90の機能が損ねられにくくなっている。そのため、ソレノイドバルブ1は、安定した流体の流量や圧力の制御が可能である。
【0063】
また、スプリング室5は弁室4から隔離されていることから、流体は流入路2から流出路3に向かって円滑に流れる。
【0064】
また、バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが圧接されているため、弁体51はスプリング室5内に流体が流入することを防ぐことができる。例えば、スプリング室5と弁室4とを隔離しつつも弁体51がバルブハウジング10に非接触状態で停止しており、これらの間にわずかな隙間が形成されている構成と比較して、格段にスプリング室5内に流体が流入しにくくなっている。
【0065】
また、バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが圧接されている状態において、弁体51における溝52bは、天井面14aと共に弁室4とスプリング室5とを連通する通路を構成している。すなわち、本実施例における通路の構成は簡素である。
【0066】
溝52bは、流路断面積が十分に狭く絞り機能を有している。弁室4とスプリング室5とを隔離した状態において、弁室4内における流体圧とスプリング室5内における流体圧とで圧力差が生じた場合には、流体は徐々に高圧側の室から低圧側の室に移動する。
【0067】
また、溝52bが複数形成されている場合と比較して、一つの溝52bだけが形成されている本実施例のソレノイドバルブ1では、弁室4およびスプリング室5間の流体の流れが生じにくくなっている。
【0068】
そのため、弁50の開弁時においてソレノイドバルブ1においては、溝52bによる弁室4およびスプリング室5間における圧力差を解消するための流体の移動は許容しつつも、溝52bを通じてのスプリング室5内への流体の流出入は極力防止されている。
【0069】
次いで、通電状態におけるソレノイドバルブ1について説明する。通電状態(すなわち所謂デューティ制御時)において、ソレノイド80に電流が印加されることにより発生する電磁力がコイルスプリング90の付勢力を上回ると、可動鉄心84はセンタポスト82側、すなわち軸方向下側に引き寄せられる。
【0070】
これにより、可動鉄心84と共にロッド83および弁体51は軸方向下方へ一体に移動を開始する。
【0071】
このとき、弁50の開弁状態において、弁体51における溝52bを通じて弁室4からスプリング室5に流体が流出入することにより差圧が低減されているため、通電開始時に弁体51は円滑に閉弁方向に移動する。
【0072】
また、バルブハウジング10における天井面14aから弁体51における上端面52aが離間しようとすると、瞬間的にスプリング室5に連通する空間の容積が増加するが、溝52bが設けられているためスプリング室5に相対的な負圧はほぼ生じない。
【0073】
そのため、通電直後に、弁体51は円滑に閉弁方向に移動する。
【0074】
また、スプリングストッパ93は小径であるから、流体の抵抗を受けにくく、ソレノイド80の駆動力を低減することができる。例えば、コイルスプリング90における大径端92と同径の円筒状のコイルスプリングを用いた場合に比べ、スプリングストッパ93は小径でよいからである。
【0075】
また、コイルスプリング90は円錐形であるから、スプリング室5の軸方向長を短くできる。
【0076】
また、弁体51およびロッド83は連結されているため、軸受87,88によってロッド83が調心されることにより、弁体51についても調心される。例えば、弁体とロッドが単に当接しているだけであれば、ロッドの調心構造と弁体の調心構造が個別に必要となる。すなわち、連結されている弁体51およびロッド83は、弁体51を摺動ガイドする必要がなく、調心構造を簡素にすることができる。
【0077】
また、本実施例では、コイルスプリング90がスプリング室5に配置されることにより、センタポスト82や可動鉄心84は、コイルスプリング90による形状の制約を受けることなく、十分な磁路を形成しやすくなっている。
【0078】
また、有底円筒状に形成されている弁体51は、円柱状に形成されている中実の弁体と比較して軽量化がなされている。そのため、コイルスプリング90は付勢力が小さなものでよい。これにより、コイルスプリング90の付勢力に抗するに足るソレノイド80の駆動力についても低減されている。
【0079】
弁50は、弁体51が閉弁方向に移動することに応じて弁開度が小さくなる。また、所定以上の電流が通電されると弁50は閉塞される(
図4参照)。
【0080】
また、弁50の閉弁時には、弁室4内への流体の流入も停止する。これにより、ロッド83と軸受88との間にコンタミは噛み込まれにくくなっている。
【0081】
ソレノイド80に印加されている電流が低下されると、コイルスプリング90の付勢力によりロッド83が開弁方向へと移動し、これに弁体51および可動鉄心84は従動する。
【0082】
ソレノイド80に印加されている電流が特定以下またはゼロとなると、バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが当接して、全開状態となる。
【0083】
バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが当接する直前では、スプリング室5に連通する空間の容積が瞬間的に減少するものの、溝52bが設けられているためスプリング室5に相対的な正圧はほぼ生じない。
【0084】
これにより、通電終了時に、弁体51は円滑に開弁方向に移動し、全開状態に至る。すなわち、ソレノイドバルブ1は、弁室4およびスプリング室5を円滑に隔離することができる。
【0085】
また、バルブハウジング10における天井面14aに弁体51における上端面52aが当接する直前、すなわち弁50が全開状態に至る際に、スプリング室5および弁室4間ではスプリング室5から弁室4に向かう流体の流れが生じる。これにより、コンタミはスプリング室5から排出されやすくなっている。
第1分割体111における内径側には、小径円筒部12が形成されている。また、第1分割体111における外径側には、軸方向中央において外周面よりも外径側に突出している環状リブ113が形成されている。
第2分割体112における内径側には、軸方向上方側から順に、第1分割体111の外周面に外嵌可能な大径円筒部116と、内径が大径円筒部116よりも大きい中間円筒部114と、中間円筒部14よりも内径が僅かに小さい円筒部115が形成されている。
円筒部115は、流出路103を有している。また、円筒部115の上端には、下方に向かって縮径するテーパ面状の弁座140aが形成されている。この弁座140aと弁体51におけるテーパ面53aによって弁150が構成されている。
バルブハウジング110は、第1分割体111の環状リブ113が第2分割体112における薄壁117に略直交している端面に当接するまで大径円筒部116内に圧入し、第2分割体112における薄壁117を加締め、環状リブ113に係止させることによって組み立てられている。
すなわち、バルブハウジング110は、弁体51が配置される中間円筒部114よりも上方側で第1分割体111および第2分割体112に分割されている。そのため、バルブハウジング110は、前記実施例1のように弁座部材40を用いずとも、弁室104内に弁体51を配置することができる。これにより、弁座部材40や、これを支持する円筒部15の周壁の強度を共に確保する必要がない。また、バルブハウジング110の体格は、前記実施例1のバルブハウジング10の体格と比較して小さいものとすることができる。