(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023665
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】遠隔操作式フックおよび遠隔操作式フック着脱装置
(51)【国際特許分類】
F16B 45/02 20060101AFI20230209BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F16B45/02 Z
A62B35/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129384
(22)【出願日】2021-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】511211368
【氏名又は名称】株式会社特殊高所技術
(74)【代理人】
【識別番号】100140006
【弁理士】
【氏名又は名称】渕上 宏二
(72)【発明者】
【氏名】楠田 寧
(72)【発明者】
【氏名】山口 宇玄
【テーマコード(参考)】
2E184
3J038
【Fターム(参考)】
2E184LA16
3J038AA01
3J038BA02
3J038BA21
3J038BC04
3J038BC07
(57)【要約】
【課題】複雑な構造や動作を排除して直感的に操作することができる遠隔操作式フックを提供する。
【解決手段】開閉翼14と、補助翼16と、開閉翼14と連動する開閉補助具18とを備える遠隔操作式フックであって、補助翼16は、開閉翼14に備わる係合子22と係合することにより開閉翼14を閉位置に固定する第1の係合溝26aと、同じく開閉翼14を開位置に固定する第2の係合溝と26b、第1の係合溝26aおよび第2の係合溝26bと連続する第3の溝26cを備え、開閉補助具18は、開閉翼14を閉位置から開位置に変位させるための外力を作用させる被作用部18bを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉翼と、補助翼と、前記開閉翼と連動する開閉補助具とを備える遠隔操作式フックであって、
前記補助翼は、前記開閉翼に備わる係合子と係合することにより前記開閉翼を閉位置に固定する第1の係合溝と、前記係合子と係合することにより前記開閉翼を開位置に固定する第2の係合溝と、前記第1の係合溝および前記第2の係合溝と連続する第3の溝を備え、
前記開閉補助具は、前記開閉翼を閉位置から開位置に変位させるための外力を作用させる被作用部を備えることを特徴とする、
遠隔操作式フック。
【請求項2】
前記開閉補助具は、前記開閉翼および前記補助翼を両側方から挟み込むように配置された一対のプレートによって構成され、前記一対のプレートを前記開閉翼側および前記補助翼側において締結する2個の締結具のうち前記補助翼側にある締結具が前記被作用部を兼ねていることを特徴とする、
請求項1に記載の遠隔操作式フック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠隔操作式フックの操作に用いられる遠隔操作式フック着脱装置であって、
前記遠隔操作式フックを保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記開閉翼に当接する箇所と前記補助翼に当接する箇所とを含む3箇所において前記遠隔操作式フックを支持することにより前記遠隔操作式フックを保持することを特徴とする、
遠隔操作式フック着脱装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記開閉翼に当接する箇所と前記補助翼に当接する箇所に加えて、前記補助翼の上方の位置において前記遠隔操作式フックを支持することを特徴とする、
請求項3に記載の遠隔操作式フック着脱装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記遠隔操作式フックと当接する箇所にゴムを備えることを特徴とする、
請求項3または4に記載の遠隔操作式フック着脱装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の遠隔操作式フックに備わる被作用部に外力を作用させる作用部を備えることを特徴とする、
請求項3乃至5の何れかに記載の遠隔操作式フック着脱装置。
【請求項7】
前記作用部は、上方へ湾曲する形状の金具によって構成されていることを特徴とする、
請求項3乃至6の何れかに記載の遠隔操作式フック着脱装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の遠隔操作式フックを引っ掛けるための下方へ湾曲する形状の金具を備えることを特徴とする、
請求項3乃至7の何れかに記載の遠隔操作式フック着脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作によりフックの着脱を行う技術に関し、詳細には、遠隔操作による着脱を可能にした遠隔操作式フック、および当該フックの脱着に用いられる遠隔操作式フック着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業時における墜落事故の発生を未然に防止するため、安全帯の親綱と連結されたフックを親綱支柱等の強固な固定物に確実に掛止しておかなければならない。一般に使用されるフック(大径フック、大口径フックなどと呼ばれている。)は、開閉翼と呼ばれる部位を動かしてゲートを開け閉めすることにより親綱支柱に着脱する構造である。フックには開閉翼の他に補助翼が備わっており、補助翼は開閉翼が不意に動いてゲートが開いてしまうことがないように開閉翼の動きをロックする安全装置の役割を担っている。これらの開閉翼と補助翼は、意図的な外力が加わらない限りゲートが閉じた状態を維持するように設計されており、補助翼を動かしてロックを解除し、その後に開閉翼を動かさなければ決してゲートを開くことはできない。このようにフックは安全面において最大限の配慮がなされた構造であるため、人の手によって意識的な操作をしない限りゲートを開くことはほとんど不可能である。しかしながら、作業員の進入が困難な場所、危険が予想される場所などでフックの着脱を行わなければならない状況下において、離れた場所から道具を用いて遠隔操作が可能であれば、作業員の安全の確保はもとより作業性も大幅に向上するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、大径フックを遠隔操作によって親綱支柱に着脱する装置が開示されている。この着脱装置によれば、人の手によることなく大径フックのゲートの開け閉めを行うことができるため、離れた位置にある親綱支柱にフックを掛けたり外したりすることが可能になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような着脱装置は、既存のフックに対する加工こそは必要としていないが、開閉翼および補助翼を動かすための仕組みが複雑であり、また、その複雑さに起因して遠隔操作にも特殊な技法を強いられるといった問題がある。安全に関わる分野においてはルーティンの変更には細心の注意を払わなければならない。また作業員に違和感を与えることのないように最大限の配慮をしなければならない。
【0006】
発明者は、このような点に鑑みて、違和感や不自然さを覚えることなく直感的な操作を可能にすることを目的として、遠隔操作式フックおよび遠隔操作式フック着脱装置を新たに創作した。使い慣れたフックへの加工は最小限に留めながら、加工による構造の変更点やその作用を容易に把握することができ、かつ遠隔操作に違和感や不自然さを持ち込まないことにより、作業効率の向上とともに安全性の確保にも配慮されている。
【0007】
本発明は、遠隔操作による着脱を可能にした遠隔操作式フックおよび当該フックの脱着に用いられる遠隔操作式フック着脱装置に関するものであり、複雑な構造や動作を排除して直感的に操作することができる遠隔操作式フックおよび遠隔操作式フック着脱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本発明は以下のように構成される。
【0009】
本発明の遠隔操作式フックは、開閉翼と、補助翼と、前記開閉翼と連動する開閉補助具とを備える遠隔操作式フックであって、前記補助翼は、前記開閉翼に備わる係合子と係合することにより前記開閉翼を閉位置に固定する第1の係合溝と、前記係合子と係合することにより前記開閉翼を開位置に固定する第2の係合溝と、前記第1の係合溝および前記第2の係合溝と連続する第3の溝を備え、前記開閉補助具は、前記開閉翼を閉位置から開位置に変位させるための外力を作用させる被作用部を備えることを特徴とする。
【0010】
前記開閉補助具は、前記開閉翼および前記補助翼を両側方から挟み込むように配置された一対のプレートによって構成され、前記一対のプレートを前記開閉翼側および前記補助翼側において締結する2個の締結具のうち前記補助翼側にある締結具が前記被作用部を兼ねていることが好ましい。
【0011】
本発明の遠隔操作式フック着脱装置は、前記遠隔操作式フックを保持する保持部を備え、前記保持部は、前記開閉翼に当接する箇所と前記補助翼に当接する箇所とを含む3箇所において前記遠隔操作式フックを支持することにより前記遠隔操作式フックを保持することを特徴とする。
【0012】
前記保持部は、前記開閉翼に当接する箇所と前記補助翼に当接する箇所に加えて、前記補助翼の上方の位置において前記遠隔操作式フックを支持することが好ましい。
【0013】
前記保持部は、前記遠隔操作式フックと当接する箇所にゴムを備えることが好ましい。
【0014】
前記遠隔操作式フックに備わる被作用部に外力を作用させる作用部を備えることが好ましい。
【0015】
前記作用部は、上方へ湾曲する形状の金具によって構成されていることが好ましい。
【0016】
前記遠隔操作式フックを引っ掛けるための下方へ湾曲する形状の金具を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、親綱支柱から離れた位置において遠隔操作によるフックの取り付けおよび取り外しが可能になる。遠隔操作のための構造も比較的簡素であり、直感的に理解できるため、非熟練者であっても操作に戸惑うことなく容易に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】遠隔操作式フックのゲートが閉じた状態を示す図
【
図2】遠隔操作式フックのゲートが開いた状態を示す図
【
図3】遠隔操作式フックのゲートを開く動作を示す図
【
図4】遠隔操作式フックのゲートを遠隔操作によって開く動作を示す図
【
図5】遠隔操作式フック着脱装置に遠隔操作式フックが保持された状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔遠隔操作式フックの構成〕
最初に、遠隔操作式フックの構成について、
図1、
図2、
図3を参照しながら説明する。遠隔操作式フック10は、構造物等の固定物に設置されている親綱支柱に安全帯の親綱を連結することにより高所作業中の落下事故を防止するための安全装置である。遠隔操作式フック10は、フック本体12と、フック本体12に付属する開閉翼14、補助翼16、開閉補助具18によって構成されている。
【0020】
開閉翼14は支点20を中心とした回転移動が可能な状態でフック本体12に装着されている。開閉翼14は遠隔操作式フック10のゲートが開いた状態となる開位置と、ゲートが閉じた状態となる閉位置とに回転移動が可能である。
図1は開閉翼14が閉位置にある状態を示し、
図2は開閉翼14が開位置にある状態を示している。開閉翼14は、閉位置からフック本体12の内側に向けて押し込まれると、支点20を中心として回転移動して閉位置から開位置に変位する。さらに開閉翼14にはストッパー22が設けられている。ストッパー22は後述する補助翼16と協働して開閉翼14を閉位置または開位置に固定する役割を担っている。
【0021】
補助翼16は支点24を中心とした回転移動が可能な状態でフック本体12に装着されている。補助翼16は開閉翼14を開位置または閉位置の何れかの位置に固定するためのロック機能を備えている。補助翼16には開閉翼14を閉位置に固定するための第1の溝部26aと、開位置に固定するための第2の溝部26bと、第1の溝部26aと第2の溝部26bとを連続させる第3の溝部26cとが備わっている。
【0022】
図1は開閉翼14が閉位置に固定されている状態を示している。この状態においてゲートを開こうとしても、開閉翼14のストッパー22が補助翼16の第1の溝部26aと係合してロックが掛かっているため、開閉翼14を動かすことはできない。このように遠隔操作式フック10は補助翼16が開閉翼14の動きを規制するロック機構の役割を担っているため、高所作業中に意図せずゲートが開いてしまうような不慮の事故が起きないようになっている。
【0023】
遠隔操作式フック10のゲートを開くためには、
図3に示すように補助翼16をフック本体12の内側に押し込みながら同時に開閉翼14をフック本体12の内側に押し込むといった一連の操作が必要である。補助翼16を押し込むと、ストッパー22と第1の溝部26aとが係合することによりロックが掛かっていた状態から解除される。これによりストッパー22は第3の溝部26cに沿って下方に移動することができるようになり、開閉翼14を閉位置から開位置まで変位させることが可能になる。開閉翼14が開位置まで変位するとストッパー22は第2の溝部26bのところまで移動している。補助翼16は内蔵されているバネの反力により外側に押し戻されるため、開閉翼14が開位置まで変位するとストッパー22と第2の溝部26bとが自動的に係合し、開閉翼14は開位置に固定される。これにより遠隔操作式フック10にはロックが掛かり、ゲートが開いたままの状態に維持される。
【0024】
一方、遠隔操作式フック10のゲートを閉じるには、補助翼16をフック本体12の内側に押し込むだけでよい。補助翼16を押し込むと、ストッパー22と第2の溝部26bとが係合することによりロックが掛かっていた状態から解除される。これによりストッパー22は第3の溝部26cに沿って上方に移動することができるようになり、開閉翼14を開位置から閉位置まで変位させることが可能になる。開閉翼14は内蔵されているバネの反力により外側に押し戻されるため、遠隔操作式フック10のゲートが開いた状態から補助翼16を押し込むと、ロックが解除された開閉翼14は閉位置まで自動的に変位する。開閉翼14は閉位置まで変位するとストッパー22と第1の溝部26aとが自動的に係合し、開閉翼14は閉位置に固定される。これにより遠隔操作式フック10にはロックが掛かり、ゲートが閉じた状態に維持される。
【0025】
開閉補助具18は遠隔操作式フック10の下部に配置され、開閉翼14と補助翼16に跨るように装着されている。開閉補助具18は離れた位置から遠隔操作式フック10のゲートを開け閉めするための遠隔操作用装置としての機能を備えている。開閉補助具18は2枚のプレート18aと2組の締結具18bによって構成されている。2枚のプレート18aは開閉翼14および補助翼16の表側と裏側にそれぞれ配置され、開閉翼14側にある端部と補助翼16側にある端部がそれぞれボルト・ナット等の締結具18bによって締結されている。プレート18aには支点20との干渉を避けるための孔部18cと、ストッパー22との干渉を避けるための孔部18dが設けられている。
【0026】
〔遠隔操作式フックの作用〕
次に、遠隔操作式フックの作用について、
図4を参照しながら説明する。遠隔操作式フック10は、一般のフックと同様に人の手によってゲートの開け閉めが可能であることは言うまでもないが、最大の特徴は、後述するように直接手を触れることなく遠隔操作にてゲートの開け閉めを行うことが可能である点にある。遠隔操作式フック10の遠隔操作には遠隔操作式フック着脱装置30を用いる。遠隔操作式フック10の開閉補助具18に備わる2組の締結具18bのうち補助翼16側にある締結具は、遠隔操作式フック着脱装置30による外力を作用させる被作用部として機能する。この被作用部に外力を作用させる作用部として、遠隔操作式フック着脱装置30には逆J字型フック32が備わっている。
【0027】
遠隔操作式フック10のゲートを遠隔操作によって開くための操作は次の手順による。先ず、逆J字型フック32を補助翼16に押し当てながら締結具18bに引っ掛ける。これにより補助翼16がフック本体12の内側に押し込まれるため、遠隔操作式フック10のロックが解除される。次に、逆J字型フック32を締結具18bに引っ掛けたまま柄34を下方に引っ張る。ロックは既に解除されているため、開閉翼14が閉位置から開位置に変位し、遠隔操作式フック10のゲートが開く。さらに柄34を引き下げると補助翼16がバネの反力により自動的に元の位置に戻り、開閉翼14が開位置に固定される。これにより遠隔操作式フック10にはロックが掛かり、ゲートが開いたままの状態に維持される。
【0028】
これに対して、遠隔操作式フック10のゲートを遠隔操作によって閉じる場合は、遠隔操作式フック着脱装置30を用いて補助翼16を軽く叩くなどしてフック本体12の内側に押し込むだけでよい。補助翼16の変位によってロックが解除された開閉翼14は、バネの反力によって開位置から閉位置に自動的に変位する。開閉翼14が閉位置まで変位すると補助翼16がバネの反力によって自動的に元の位置に戻るため、開閉翼14は閉位置に固定される。これにより遠隔操作式フック10にはロックが掛かり、ゲートが閉じた状態に維持される。
【0029】
〔遠隔操作式フック着脱装置の構成〕
次に、遠隔操作式フック着脱装置の構成について、
図5を参照しながら説明する。遠隔操作式フック着脱装置30は、離れた位置にある親綱支柱等に遠隔操作式フック10を取り付ける際に用いられる装置であり、さらには親綱支柱等に取り付けられている遠隔操作式フック10を離れた位置から取り外す際に用いられる装置である。このような装置には、遠隔操作式フック10を容易に装着できること、装着された遠隔操作式フック10を安定して保持すること、遠隔操作式フック10を容易に離脱できることが要求されるが、遠隔操作式フック着脱装置30はこれらの全ての要求に応えるものである。
【0030】
遠隔操作式フック着脱装置30は、前述した逆J字型フック32と、使用者が把持するための柄34と、遠隔操作式フックを保持するための保持部36と、逆J字型フック32の下方に配置されたJ字型フック38によって構成される。逆J字型フック32と保持部36は柄34の先端に配置されている。
【0031】
遠隔操作式フック着脱装置30は、遠隔操作式フック10を保持部36に装着することによって保持する。保持部36は、遠隔操作式フック10を3点で支持する支持部40、42、44と、支持部40、42、44を所定の位置に固定するためのプレート46、48によって構成されている。プレート46は、逆J字型フック32の反対側に突き出した一対の金属板で構成されており、これらの金属板は柄34の先端部を挟み込む位置に互いに平行になるように配置されている。プレート46の対向面には支持部40、42が配置されている。プレート46の先端側に配置された支持部34は開閉翼14と当接し、後端側に配置された支持部42は補助翼16の上方の箇所でフック本体12と当接する。支持部40は一対のゴム部材で構成されており、両者の間には隙間が設けられている。この隙間は、フック本体12は通り抜けることができるが、開閉翼14は通り抜けることができない程度の大きさに設定されている。
【0032】
プレート48はプレート44の下方に配置されている。プレート48はJ字型フック38の反対側に突き出した一対の金属板で構成されており、これらの金属板は柄34を挟み込む位置に互いに平行になるように配置されている。プレート48の対向面には支持部44が配置されており、支持部44は遠隔操作式フック10の補助翼16と当接する。
【0033】
遠隔操作式フック着脱装置30は、バランスよく配置された支持部40、42、44によって遠隔操作式フック10を安定的に保持し、容易に脱落しない程度に拘束する。遠隔操作式フック着脱装置30に遠隔操作式フック10を装着するには、遠隔操作式フック10を遠隔操作式フック着脱装置30に沿って平行に移動させるだけでよい。最初にフック本体12を支持部40の隙間に通し、開閉翼14が支持部40に当接する位置まで移動させると、支持部42がフック本体12に当接し、支持部44が補助翼16に当接して遠隔操作式フック10は3点で支持される。遠隔操作式フック着脱装置30から遠隔操作式フック10を離脱させるときは装着時とは逆方向の動きとなる。このように遠隔操作式フック10の着脱に際しては、遠隔操作式フック着脱装置30と遠隔操作式フック10とを相対的に平行移動させるだけでよいため、作業員の習熟の度合いを問わず誰でも容易に使用することができる。
【0034】
〔遠隔操作式フック着脱装置の作用〕
次に、遠隔操作式フック着脱装置30の作用について説明する。最初に、遠隔操作式フック着脱装置30を使用して遠隔操作式フック10を親綱支柱に取り付けるときの手順に沿って説明する。第一に、遠隔操作式フック10のゲートを開いた状態にする。第二に、遠隔操作式フック10を遠隔操作式フック着脱装置30に装着する。第三に、遠隔操作式フック着脱装置30の柄34を使って遠隔操作式フック10を押し上げ、目標とする親綱支柱に遠隔操作式フック10のフック本体12を引っ掛ける。第四に、遠隔操作式フック10を親綱支柱に引っ掛けたまま遠隔操作式フック着脱装置30を軽く持ち上げる。このとき遠隔操作式フック10を一緒に持ち上げてしまうことがないように親綱50を手繰り寄せて遠隔操作式フック10が親綱支柱から離れないようにしながら遠隔操作式フック着脱装置30を持ち上げるとよい。これにより遠隔操作式フック着脱装置30から遠隔操作式フック10が離脱し、遠隔操作式フック10はゲートが開いたままの状態で親綱支柱に引っ掛かった状態となる。第五に、遠隔操作式フック着脱装置30のプレート46の先端部を用いて遠隔操作式フック10の補助翼16を軽く叩くと、前述のようにロックを解除された開閉翼14が自動的に閉位置まで変位し、ゲートが閉じる。これにより遠隔操作式フック10が親綱支柱に安全に取り付けられた状態となる。
【0035】
次に、遠隔操作式フック10を親綱支柱から取り外すときの遠隔操作式フック着脱装置30の作用について説明する。遠隔操作式フック10の取り外しに際しては、遠隔操作式フック10のゲートを開くとき、ゲートが開いた遠隔操作式フック10を親綱支柱から取り外すときの遠隔操作式フック着脱装置30の操作が重要なポイントとなる。第一に、遠隔操作式フック着脱装置30の逆J字型フック32を遠隔操作式フック10の補助翼16に押し当てながら締結具18bに引っ掛ける。第二に、作用部32を締結具18bに引っ掛けた状態のまま遠隔操作式フック着脱装置30を引き下げる。これによりロックが解除された開閉翼14が閉位置から開位置に変位し、遠隔操作式フック10のゲートが開いた状態となる。第三に、遠隔操作式フック着脱装置30のJ字型フック38をフック本体12に引っ掛けながら軽く持ち上げ、親綱支柱から遠隔操作式フック10を離脱させる。これにより遠隔操作式フック10が親綱支柱から取り外された状態となる。
【0036】
以上、詳細に述べたとおり、遠隔操作式フック10と遠隔操作式フック着脱装置30を使用することにより、親綱支柱から離れた位置から遠隔操作式フック10を親綱支柱に取り付け、また親綱支柱から取り外すことが可能になる。遠隔操作式フック10は市販の大径フックに僅かな加工(補助翼16に第2の溝部26bを新設、開閉補助具18を新設)を施したものであるが、市販品への加工だけではなく新規に製造してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 遠隔操作式フック
12 フック本体
14 開閉翼
16 補助翼
16a 第1の溝部
16b 第2の溝部
16c 第3の溝部
18 開閉補助具
18b 締結具
22 ストッパー
30 遠隔操作式フック着脱装置
32 逆J字型フック
34 柄
36 保持部
38 J字型フック
40 支持部
42 支持部
44 支持部
46 プレート
48 プレート
50 親綱