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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023675
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/60 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
A01F12/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129408
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 大地
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396JG03
2B396LA03
2B396LG12
2B396PA31
2B396PE06
2B396QA03
2B396QA27
2B396QE23
2B396QG08
(57)【要約】
【課題】安価な構成でありながら、算出される穀粒量の精度を確保できるコンバインを提供する。
【解決手段】制御装置が、ロードセルデータD0のうち、単位時間あたりの変化量が所定値以下となる状態が所定時間継続する部分の演算用データD0に基づいて、収量センサに穀粒が当接していないときの検出信号に相当するオフセット量Dを求めるオフセット量計算処理、ロードセルデータD0をオフセット量Dに基づいて補正してロードセルデータD1を生成する補正処理、及びロードセルデータD1に基づいてグレンタンクに貯留される穀粒量を算出する穀粒量算出処理を実行可能である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、
前記脱穀部から供給される穀粒を、回転することにより貯留部へ飛散させる回転体と、
前記回転体により飛散されて当接する穀粒による衝撃力に応じた検出信号を出力する検出手段と、
前記検出信号に基づく第1検出データのうち、単位時間あたりの変化量が所定値以下となる状態が所定時間継続する部分のデータに基づいて、前記検出手段に穀粒が当接していないときの前記検出信号に相当するオフセット量を求めるオフセット量計算処理、前記第1検出データを前記オフセット量に基づいて補正して第2検出データを生成する補正処理、及び前記第2検出データに基づいて前記貯留部に貯留される穀粒量を算出する穀粒量算出処理を実行可能な演算手段と、を備える、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記演算手段は、前記オフセット量計算処理を、少なくとも収穫作業中に実行可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記演算手段は、前記オフセット量計算処理を、前記収穫作業中以外にも実行可能である、
ことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記演算手段は、前記オフセット量計算処理を、自動的に繰り返し実行可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳しくは穀粒量を算出する演算手段を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、刈取られた穀稈を脱穀し、脱穀された穀粒をグレンタンクに貯留する。従来、特許文献1に示すように、穀粒タンクに羽根板の回転によって投入された穀粒による衝撃力を検出する圧力センサを備え、圧力センサにて検出した衝撃力に基づいて穀粒量を算出するコンバインが提案されている。特許文献1には、圧力センサの特性などに起因して、圧力センサにて検出される検出値に定常偏差が重畳することが記載されている。特許文献1には、羽根板の一回転の周期Pのうち、P/4~3P/4の間に穀粒が圧力センサに衝突し、0~P/4及び3P/4~Pの間に穀粒が圧力センサに衝突しないことに着目し、0~P/4及び3P/4~Pの間の積算値を補正変数としてEEPROMに格納し、P/4~3P/4の間の積算値から補正変数を減算することで、定常偏差を除去した補正値を求め、補正値に基づいて、穀粒タンクに貯留した穀粒量を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6338434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のコンバインでは、穀粒が圧力センサに衝突する期間と穀粒が圧力センサに衝突しない期間を決めるために、羽根板が1回転する毎にパルス波を発生するピックアップセンサを備える必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、安価な構成でありながら、算出される穀粒量の精度を確保できるコンバインを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部(35)と、
前記脱穀部(35)から供給される穀粒を、回転することにより貯留部(9)へ飛散させる回転体(61)と、
前記回転体(61)により飛散されて当接する穀粒による衝撃力に応じた検出信号(Sn1)を出力する検出手段(80)と、
前記検出信号(Sn1)に基づく第1検出データ(D0)のうち、単位時間(Δt)あたりの変化量(ΔD)が所定値(M1)以下となる状態が所定時間(Δt×N1)継続する部分のデータ(D0)に基づいて、前記検出手段(80)に穀粒が当接していないときの前記検出信号(Sn1)に相当するオフセット量(D)を求めるオフセット量計算処理、前記第1検出データ(D0)を前記オフセット量(D)に基づいて補正して第2検出データ(D1)を生成する補正処理、及び前記第2検出データ(D1)に基づいて前記貯留部(9)に貯留される穀粒量を算出する穀粒量算出処理を実行可能な演算手段(100)と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
例えば図8図9及び図17を参照して、前記演算手段(100)は、前記オフセット量計算処理を、少なくとも収穫作業中に実行可能である。
【0008】
例えば図8及び図9を参照して、前記演算手段(100)は、前記オフセット量計算処理を、前記収穫作業中以外にも実行可能である。
【0009】
例えば図8及び図9を参照して、前記演算手段(100)は、前記オフセット量計算処理を、自動的に繰り返し実行可能である。
【0010】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、オフセット量を求めるために、ピックアップセンサのようなセンサを別途設ける必要がないため、安価な構成でありながらオフセット量を求めることができ、算出される穀粒量の精度を確保することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、オフセット量が必要となるのは収穫作業中であり、収穫作業中にオフセット量が求められるため、より高精度に穀粒量を算出することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、収穫作業中以外であってもオフセット量が求められるため、例えば収穫作業の開始直後においても、高精度に穀粒量を算出することができる。
【0014】
請求項4に係る本発明によると、検出手段の置かれている環境に応じて変化するオフセット量が繰り返し求められるため、より高精度に穀粒量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係るコンバインを示す左側面図。
図2】コンバインを示す平面図。
図3】運転操作部を示す平面図。
図4】脱穀装置を示す左側面図。
図5】脱穀装置及びグレンタンクを示す断面図。
図6】揚穀吐出部を示す側面図。
図7】揚穀吐出部を示す平面図で、(a)は上蓋を付けた図、(b)は上蓋を外した図。
図8】コンバインの制御系を示すブロック図。
図9】制御装置の処理を示すフローチャート。
図10】ロードセルデータを示す説明図で、(a)はオフセット補正前の図、(b)はオフセット補正後の図。
図11】オフセット量計算処理を示すフローチャート。
図12】収量計算処理を示すフローチャート。
図13】ロードセルデータに処理を施した際の遷移状態を示す説明図。
図14】正常モデルを示す説明図。
図15】フィルタ処理を示す説明図。
図16】異常判定処理を示すフローチャート。
図17】第2の実施形態に係る制御装置の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って、本発明の第1の実施の形態について説明する。自脱型のコンバイン1は、図1及び図2に示すように、クローラ走行装置2により支持され、不図示のエンジンを搭載した機体3を有しており、該機体3の前方には、穀稈を刈取ってフィードチェン5に受け渡す刈取部6が昇降自在かつ左右方向に開閉自在に設けられている。上記機体3の一側方には、上記刈取部6及びフィードチェン5で刈取・搬送された穀稈を脱穀処理及び選別処理する脱穀装置7が設けられており、他側方には、作業者が運転操作を行う運転操作部8が設けられている。
【0017】
上記運転操作部8の後方には、上記脱穀装置7で脱穀・選別された穀粒を貯留する貯留部の一例であるグレンタンク9が配置されており、該グレンタンク9の後方には、該グレンタンク9内に貯蔵された穀粒を機外に排出する昇降及び回動自在の排出オーガ10が設けられている。上記脱穀装置7で脱穀が終わった排藁は、該脱穀装置7の後部に配置されたカッター装置14(図4参照)で切断され、機体3後方の刈取跡地に拡散排出可能である。運転操作部8とグレンタンク9との間には、GNSSアンテナ(GPSアンテナ)12が設けられている。
【0018】
エンジンと刈取部6との間には刈取クラッチ97(図8参照)が設けられ、エンジンと脱穀装置7との間には脱穀クラッチ98(図8参照)が設けられている。刈取クラッチ97及び脱穀クラッチ98の断接により、刈取部6及び脱穀装置7の停止と駆動が切り換えられる。
【0019】
上記刈取部6は、圃場の穀稈を分草する回動自在のデバイダ13と、該デバイダ13の後方で分草された穀稈を引き起こす引起装置15と、引起された穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃16と、刈取った穀稈を搬送してフィードチェン5に受け渡す穀稈搬送装置17と、穀稈の扱ぎ深さを調節する扱深搬送体19と、などから構成されており、上記刈取部6の側方には、機体3前方に張り出して植立穀稈を分草案内する作業姿勢と、機体3側に引き寄せた格納姿勢と、に切換え可能に構成されたナローガイド20が設けられている。
【0020】
上記運転操作部8は、図3に示すように、該運転操作部8の中央に設けられた運転席21の左側方に、中立位置から前方又は後方に操作することにより、前進又は後進車速を無段階に調節可能な走行主変速レバー22と、低速の作業レンジと高速の走行レンジとに切換え操作し得る副変速レバー23と、等を有している。更に、上記運転席21の前方に、エンジンの回転数を調節するエンジン回転ダイヤル25と、ボタン操作で脱穀クラッチ98及び刈取クラッチ97を入切して、エンジンから上記脱穀装置7又は刈取部6への動力をそれぞれ入切し得るパワークラッチスイッチ26と、上記刈取部6の昇降操作及び上記機体3の旋回操作をし得るマルチステアリングレバー29と、タッチパネル式の液晶モニタ30と、液晶モニタ30の画面を切り換える表示切換スイッチ31と、等を有している。なお、液晶モニタ30の画面は、表示切換スイッチ31の操作ではなく、液晶モニタ30のタッチ操作によって切換え可能に構成してもよい。
【0021】
パワークラッチスイッチ26は、刈取部6及び脱穀装置7の駆動状態を切り換えるモーメンタリ式のシーソースイッチである。刈取部6及び脱穀装置7の駆動状態としては、刈取部6及び脱穀装置7の両方が駆動停止された停止状態と、刈取部6が駆動停止され且つ脱穀装置7が駆動された脱穀状態と、刈取部6及び脱穀装置7の両方が駆動された刈取状態との3つがある。脱穀クラッチ98及び刈取クラッチ97の両方を切断させることによって停止状態に遷移し、脱穀クラッチ98を接続させ且つ刈取クラッチ97を切断させることによって脱穀状態に遷移し、脱穀クラッチ98及び刈取クラッチ97の両方を接続状態とすることによって刈取状態に遷移する。
【0022】
図4及び図5に示すように、脱穀装置7は、刈取部6に刈取られた穀稈を脱穀する脱穀部35と、脱穀部35の真下に配置される選別部36と、脱穀部35及び選別部36の後方に配置される排藁処理部37と、を有しており、刈取部6(図1参照)によって刈り取られた穀稈は、フィードチェン5及び挟持レールによって後方に搬送され、穀稈の穂先側が脱穀部35に進入して脱穀される。該脱穀部35で脱穀された穀粒及び脱穀の際に発生する切れ藁等の夾雑物からなる処理物は、脱穀部35から上記選別部36に漏下し、該選別部36において揺動選別及び風選別されて、穀粒のみがグレンタンク9(図2参照)に貯留される。上記フィードチェン5の終端部には、排藁搬送装置39が連設されており、上記脱穀部35にて脱穀された後の排藁は、排藁処理部37へ搬送されて、該排藁処理部37で切断又は結束処理される。
【0023】
より詳しく説明すると、上記脱穀部35は、機体前後方向に沿って延設された扱室40を有しており、上記扱室40は、機体前後方向である搬送方向に長い円筒形状からなる扱胴41を回転自在に支持している。該扱胴41は、その中途部において前後に分割して構成されており、これら2つの扱胴41a,41bは、その外周面に多数の扱歯41c,…が取付けられ、かつ前方側の扱胴41aと後方側の扱胴41bとを異なる回転速度で駆動可能に構成されている。
【0024】
扱室40の上部には、多数の送塵ガイド42が配置されており、これら送塵ガイド42の角度を任意に変えることで、扱室40内の藁屑や穀粒等の滞留時間を制御することができる。上記扱室40の下方には、扱胴41に沿って、複数の孔が明いた受網43が配置されており、受網43からは、脱穀された穀粒及び切れ屑などの夾雑物が漏下物として上記選別部36へと漏下する。なお、扱室40の後方に、処理胴を回転自在に支持する処理室を更に設け、扱室40で脱穀処理しきれなかった処理物を処理室内で処理するように構成してもよい。
【0025】
選別部36は、上記受網43の下方に配設された揺動選別体45と、該揺動選別体45の前部下方側から後部上方側に向かって選別風を送風する唐箕ファン46及び送風ファン47と、排塵ファン48と、を有している。上記揺動選別体45は、上下三段構造となっており、上段のフィードパン49、チャフシーブ50、ストローラック51と、中段のチャフシーブ52、ストローラック53と、下段のグレンシーブ55と、からなり、これらが連続して設けられて、前後に揺動されることで処理物が篩選別される。上記チャフシーブ50,52は、前後方向に所定間隔を存して並設される複数のフィンによって構成されており、チャフシーブ52のフィンは開閉自在に構成されている。チャフシーブ52の上方には、フラグ及びポテンショメータ等からなる不図示の層厚センサが設けられており、処理物によって押圧されて揺動するフラグの開度を層厚センサによって検知することで、チャフシーブ52上の処理物の層厚を検知することができる。
【0026】
上記フィードパン49は、波板状の移送板であって、上記受網43から漏下する処理物を受け止めて後方移送する。後方移送されたこれら処理物を揺動選別体45で篩選別すると共に、上記唐箕ファン46及び送風ファン47によって起風された選別風によって風選別し、所定の目合の金網部材からなるグレンシーブ55を通過した穀粒は、一番物として一番ラセン56に落下する。上記揺動選別体45の終端部まで移送された処理物は、ストローラック51,チャフシーブ52及びストローラック53を介して二番ラセン57に落下する。また、上記ストローラック53にて落下規制された長藁及び排塵は、その終端まで移送され、排塵ファン48によって機外に排出される。
【0027】
グレンタンク9の上部には、揚穀吐出部70を介して揚穀筒58が接続されている。揚穀吐出部70は、揚穀筒58の上端に設けられている。図6に示すように、揚穀筒58及び揚穀吐出部70の内部には、回転体61が配置されている。回転体61は、揚穀筒58の内部に配置された一番縦ラセン59と、揚穀吐出部70の内部に配置された跳ね出し板60とを含む。一番縦ラセン59は、揚穀筒58の中心と略一致する回転軸61aを中心に回転する。跳ね出し板60は、一番縦ラセン59の上端に設けられ、一番縦ラセン59と一体に回転軸61aを中心に回転する。上記一番ラセン56に落下した一番物である穀粒は、一番ラセン56によって一番縦ラセン59に供給され、一番縦ラセン59によって揚送される。一番縦ラセン59によって揚穀筒58内を揚送された穀粒は、跳ね出し板60により、揚穀吐出部70からグレンタンク9内に広範囲に飛散され、グレンタンク9内に貯留される。上記二番ラセン57に落下した二番物は、二番縦ラセンによって揚送された後、再度、揺動選別体45に放出される。なお、二番物を扱室40に放出するように構成してもよい。
【0028】
揚穀吐出部70は、跳ね出し板60を覆う箱状の筐体である。揚穀吐出部70は、跳ね出し板60の上方かつ回転軸61aに対して略垂直に配置されている平面状の天板72、跳ね出し板60の下方かつ天板72に対向するように配置されている平面状の底板71、及び底板71と天板72とを接続して回転軸61aと平行に形成されている案内側壁73を有する。
【0029】
図7(a)及び図7(b)は、図6に示す揚穀吐出部70を矢印A方向に視た平面図であり、図7(a)は、天板72が取り付けられた状態の図、図7(b)は、天板72が取り外された状態の図である。底板71には、揚穀筒58の内径と略同径の連通口71bが形成されており、揚穀筒58の内部と揚穀吐出部70の内部とが連通する。また、案内側壁73には、吐出口76が形成されており、揚穀吐出部70の内部とグレンタンク9の内部とが連通している。案内側壁73は、矢印B方向に回転する跳ね出し板60の先端に近接する半円筒板73aと、半円筒板73aから延びる平面状の案内板73bと、を有する。揚穀吐出部70の内部に到達した穀粒は、跳ね出し板60の回転により飛散される。
【0030】
案内側壁73には、検出手段の一例である、衝撃力を検出する収量センサ80が固定されている。収量センサ80は、衝撃力(圧力)に応じた電気信号である検出信号Sn1を出力するセンサであり、検出板81と、検出板81に接続された、ひずみゲージを有するロードセル82と、を備える。ロードセル82は、例えばコラム型のロードセルである。案内側壁73の案内板73bには、図6に示す検出孔73cが形成されており、検出板81は、跳ね出し板60により飛散される穀粒が当接するように検出孔73cに配置されている。ロードセル82は、揚穀吐出部70の外側に配置されている。
【0031】
揚穀筒58と一番縦ラセン59とにより揚上搬送された穀粒は、底板71の連通口71bを通じて揚穀吐出部70の内部に搬入され、跳ね出し板60の回転により飛散されて天板72、底板71、案内側壁73及び検出板81に案内され吐出口76からグレンタンク9の内部に吐出される。跳ね出し板60により飛散される穀粒は、検出板81に衝突する。検出板81に穀粒が衝突すると、検出板81が変位する。検出板81の変位はロードセル82のひずみゲージにより電気信号(電圧)である検出信号Sn1に変換される。ロードセル82は、検出信号Sn1を、ケーブル77を介して図8の制御装置100に出力する。制御装置100は、収量センサ80のロードセル82から受けた電気信号である検出信号Sn1をAD変換して、吐出口76から吐出される穀粒量を測定する。
【0032】
図8に示すように、制御装置100には、測定スイッチ91、パワークラッチスイッチ26により断接される刈取クラッチ97及び脱穀クラッチ98、穀稈センサ92、収量センサ80、GNSSユニット93、機体傾斜センサ94、液晶モニタ30、ブザー95、並びに外部通信装置96が接続されている。
【0033】
測定スイッチ91は、オペレータの操作によって所定の測定を制御装置100に行わせるスイッチである。パワークラッチスイッチ26は、上述したように、オペレータの操作によってエンジンから脱穀装置7又は刈取部6への動力をそれぞれ入切するスイッチである。穀稈センサ92は、穀稈搬送装置17に搬送されている穀稈と接触して穀稈の存在を検出するセンサである。収量センサ80は、上述したように、グレンタンク9へ投入される穀粒による衝撃力を検出するセンサである。GNSSユニット93は、GNSSアンテナ12を介して測位衛星から機体3の位置情報を取得(受信)するユニット(GPSユニット)である。機体傾斜センサ94は、機体3の傾斜を検出するセンサである。液晶モニタ30は、上述したように、タッチパネル式の液晶モニタである。ブザー95は、オペレータに異常を報知するための報知部の一例であり、ブザー音を発する。外部通信装置96は、例えば無線通信(Bluetooth(登録商標)等)で外部機器とデータ通信可能に構成されている。外部機器は、通信機能を備えた機器であればよく、例えばタブレット端末やPC等の情報端末、運搬車両、乾燥機などである。
【0034】
制御装置100は、演算手段の一例であり、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータで構成されている。制御装置100は、プロセッサの一例である不図示のCPUと、記憶手段の一例であり、例えばROMやRAM等で構成された記憶部103と、不図示のI/Oとを備える。記憶部103には、制御装置100に、後述する演算処理を行わせるプログラムや演算処理に用いる各種のパラメータが格納されている。また、記憶部103には、収量センサ80などのセンサによって取得された検出データや、収量センサ80の検出データに基づいて測定された収量データ、GNSSユニット93によって取得された位置データ等の各種データが格納可能である。また、制御装置100は、これらのデータを、外部通信装置96を介して外部機器に送信することができる。これにより、外部機器は、収量データや位置データを用いて、圃場全体の収量を計算したり、収量マップを作成したりすることができる。
【0035】
エンジンを始動する不図示のイグニッションキーがオペレータによって操作されると、制御装置100は、図9に示す処理フローを、所定の周期(本実施の形態では、後述するサンプリング周期Δt)で自動的に繰り返し実行する。図9は、第1の実施の形態に係る制御装置100の演算処理(メインルーチン)を示すフローチャートである。
【0036】
制御装置100は、収量センサ80から入力された検出信号Sn1に基づく第1検出データとして、図10(a)に例示するロードセルデータD0を取得する(ステップS1)。図10(a)に示すグラフの横軸は時間、縦軸は衝撃力の大きさを示す検出値である。ロードセルデータD0は、本実施の形態ではデジタルデータである。具体的に説明すると、本実施の形態のロードセルデータD0は、検出信号Sn1を所定のサンプリング周期Δt(例えば5msec)でサンプリングし、所定の分解能でAD変換することで得られるサンプリングデータDAからなる。サンプリングデータDAは、サンプリング周期(単位時間)Δt毎に逐次取得される。検出信号Sn1は、収量センサ80が受ける衝撃力、即ち圧力が大きいほど大きい電圧となる。よって、サンプリングデータDAを示す検出値は、収量センサ80が受ける衝撃力、即ち圧力が大きいほど、大きい値となる。なお、サンプリングデータDAを示す検出値は、2進数、10進数、16進数など、どのような形式で表現されてもよい。
【0037】
ここで、跳ね出し板60から穀粒が受ける力の方向は跳ね出し板60の回転位置によって変化する。よって、跳ね出し板60が1回転する期間には、収量センサ80に穀粒が当接(衝突)する期間と収量センサ80に穀粒が当接(衝突)しない期間とが存在する。そのため、跳ね出し板60から正常に穀粒が飛散する場合、ロードセルデータD0には、穀粒が衝突する期間のデータと、穀粒が衝突しない期間のデータとが存在し、また穀粒が衝突する期間のデータは、跳ね出し板60の回転周期と同じ所定周期P0で、検出値のピークを含む波形(山)W0として現れる。
【0038】
図10(a)において、新たなサンプリングデータDAをDAとし、サンプリングデータDAに対して1つ前のサンプリングタイミングで取得されたサンプリングデータDAをDAn-1とする。新たにサンプリングデータDAが取得される度に、最新のサンプリングデータDAと1つ前のサンプリングデータDAn-1が更新される。なお、図10(a)には、あるタイミングにおけるサンプリングデータDAn-1,DAを例示的に図示しており、サンプリングデータDAよりも後のタイミングで取得されるサンプリングデータDAは破線で示している。
【0039】
ここで、ロードセルデータD0は、収量センサ80の取り付け状態によってオフセットすることがある。そのオフセット量Dは、収量センサ80に穀粒が当接していないときの検出信号Sn1に相当する。つまり、収量センサ80に穀粒が当接していなくても、収量センサ80の検出信号Sn1(電圧)が0Vからオフセットした状態となって出力され、ロードセルデータD0においては、検出信号Sn1のオフセット分が検出値のオフセットとして現れる。また、ロードセルデータD0におけるオフセット量Dは、収量センサ80の周囲の環境(例えば温度)の変化により変化する。
【0040】
そこで、制御装置100は、少なくとも収穫作業中、本実施の形態では、イグニッションキーがONになっていれば収穫作業中と収穫作業中以外のいずれにおいても、エンジンが動作している状態においては、ロードセルデータD0に含まれるオフセット量Dを計算する(ステップS2)。制御装置100は、収穫作業中であるか否かを判断し(ステップS3)、収穫作業中でなければ(ステップS3:NO)、ステップS1の処理に戻る。ここで、収穫作業中とは、例えば脱穀クラッチ98が接続された脱穀状態、刈取クラッチ97が接続された刈取状態、又は穀稈センサ92において穀稈が検知されている状態などをいう。また、上述した層厚センサなどの複数のセンサを併用して収穫作業中を判断してもよい。
【0041】
制御装置100は、収穫作業中であれば(ステップS3:YES)、グレンタンク9に貯留された穀粒量、即ち穀粒の合計収量を計算する(ステップS4)。制御装置100は、機体3に異常が生じたかどうか判定し(ステップS5)、ステップS1の処理に戻る。
【0042】
本実施の形態において、機体3は、回転体61の回転と同期した同期信号を発生するセンサ、即ち回転体61が1回転する毎にパルス信号を発生するピックアップセンサを備えていない。本実施の形態の制御装置100は、このようなセンサを用いずに、穀粒が収量センサ80に当接していない期間のデータを用いて、ステップS2におけるオフセット計算処理を実行する。図11は、オフセット量計算処理のフローチャートである。ここで、本実施の形態では、制御装置100において、3つのカウンタ111,112,113がソフトウェアによって実現される。エンジン始動直後、これらカウンタ111,112,113の初期値は0である。また、これらカウンタ111,112,113のカウント数と比較する判定値N1,N2,N3は、予め記憶部103に記憶されている。
【0043】
制御装置100は、ロードセルデータD0の最新値であるサンプリングデータDAと、最新値に対して直前の値であるサンプリングデータDAn-1との差分ΔDを算出する(ステップS201)。即ち、制御装置100は、ロードセルデータD0の単位時間あたりの変化量として、サンプリングデータDAとサンプリングデータDAn-1との差分ΔDを算出する。この場合、単位時間はサンプリング周期Δtということになる。なお、穀粒が収量センサ80に当接していない期間において取得した複数のサンプリングデータDAの中から、後述する演算用データD0を選択できればよく、単位時間は、サンプリング周期Δtの2倍以上であってもよい。例えば、単位時間をサンプリング周期Δtの2倍に設定したとき、ロードセルデータD0の単位時間あたりの変化量として、ロードセルデータD0の最新値であるサンプリングデータDAと、最新値に対して2つ前の値であるサンプリングデータとの差分ΔDを求めればよい。
【0044】
制御装置100は、差分ΔDが所定値M1を超えるか否かを判断する(ステップS202)。所定値M1のデータは、記憶部103に記憶されている。差分ΔDが所定値M1を超えない場合(ステップS202:NO)、即ち差分ΔDが所定値M1以下の場合、制御装置100は、カウンタ111におけるカウント数を+1インクリメントする(ステップS203)。このように、カウンタ111は、1つ前のサンプリングデータDAn-1に対して検出値がほとんど変化しないサンプリングデータDAの数を、新たなサンプリングデータDAを取得する毎にカウントする。なお、差分ΔDが所定値M1を超える場合(ステップS202:YES)、制御装置100は、カウンタ111におけるカウント数を0にリセットする(ステップS204)。
【0045】
制御装置100は、カウンタ111におけるカウント数が判定値N1(例えば3)以上か否か、即ちカウント数が判定値N1に達したかどうかを判断する(ステップS205)。このステップS205の判断により、偶然に差分ΔDが所定値M1以下となった場合が除外される。ここで、サンプリングデータはサンプリング周期Δtでサンプリングされることにより得られるため、判定値N1は、時間にしてΔt×N1に相当する。即ち、ステップS205において、制御装置100は、差分ΔDが所定値M1以下となる状態が所定時間(Δt×N1)継続したかどうかを判断していることになる。つまり、跳ね出し板60から正常に穀粒が飛散する場合において、所定値M1以下となる状態が所定時間継続すれば、収量センサ80に穀粒が当接していない期間と考えられる。
【0046】
カウンタ111におけるカウント数が判定値N1以上の場合(ステップS205:YES)、即ち差分ΔDが所定値M1以下の状態が所定時間継続した場合、制御装置100は、ロードセルデータD0の最新値であるサンプリングデータDAを、後述するステップS208においてオフセット量ΔDを算出するのに用いるデータに加える(ステップS206)。具体的には、制御装置100は、記憶部103に、当該サンプリングデータDAを、演算用データD0として蓄積していく。蓄積した演算用データD0の数は、カウンタ112においてカウントされる。
【0047】
次に、制御装置100は、カウンタ112における演算用データD0のデータ数が判定値N2(例えば50)に達したかどうかを判断する(ステップS207)。判定値N2の演算用データD0は、単位時間あたりの変化量が所定値M1以下となる状態が所定時間継続する部分のデータである。演算用データD0のデータ数が判定値N2に達した場合(ステップS207:YES)、制御装置100は、これらN2個の演算用データD0に基づいてオフセット量Dを算出する(ステップS208)。例えば、制御装置100は、オフセット量Dを示すデータとして、N2個の演算用データD0の平均値を算出する。なお、オフセット量Dのデータとして、N2個の演算用データD0の平均値とするのが好適であるが、これに限定するものではなく、例えばN2個の演算用データD0の中央値、最大値又は最小値としてもよい。また、抽出される演算用データD0は、複数であるのが好適であるが、1つであってもよく、この場合は該演算用データD0を、オフセット量Dを示すデータとすればよい。
【0048】
次に、制御装置100は、記憶部103に既にオフセット量Dを示すデータが格納されていれば、ステップS208で算出したオフセット量Dを示すデータで、ロードセルデータD0のオフセットを補正するのに用いるデータを更新する(ステップS209)。なお、記憶部103にオフセット量を示すデータが格納されていなければ、ステップS208で算出したオフセット量Dを示すデータを記憶部103に格納すればよい。制御装置100は、演算用データD0をリセット、即ち記憶部103における作業領域から消去し(ステップS210)、図9に示すメインルーチンに戻る。また、ステップS210において、制御装置100は、カウンタ111,112もリセットする。
【0049】
なお、カウンタ111におけるカウント数が判定値N1未満の場合(ステップS205:NO)、又はカウンタ112におけるデータ数が判定値N2未満の場合(ステップS207:NO)、制御装置100は、図9に示すメインルーチンに戻る。
【0050】
以上の制御装置100の処理動作により、N2個の演算用データD0が得られる度にオフセット量Dが求められ、記憶部103に記憶されるオフセット量Dのデータが更新される。
【0051】
次に、ステップS4における収量計算処理について説明する。図12は、収量計算処理のフローチャートである。
【0052】
制御装置100は、カウンタ113にカウントされたサンプリングデータDAのデータ数が判定値N3(例えば200)以上であるか否かを判断する。判定値N3は、判定値N2よりも多い数であり、回転体61の複数周期分のデータ数に相当する。
【0053】
カウンタ113にカウントされたサンプリングデータDAのデータ数が判定値N3以上の場合(ステップS401:YES)、即ちサンプリングデータDAのデータ数が判定値N3に達した場合、制御装置100は、N3個のサンプリングデータDAからなるロードセルデータD0を、記憶部103に記憶されているオフセット量Dのデータに基づいて補正し、図10(b)に例示する、第2検出データの一例であるロードセルデータD1を生成する(ステップS402:補正処理)。
【0054】
ロードセルデータD1は、サンプリングデータDAと対応するデータDBを含む。データDBは、サンプリングデータDAをオフセット量Dのデータに基づいて補正したデータである。ステップS402の補正処理の具体例について説明すると、制御装置100は、サンプリングデータDAを記憶部103に記憶されているオフセット量Dのデータで減算することでデータDBを生成する。これにより、オフセット補正されたロードセルデータD1が生成される。そして、制御装置100は、これらN3個のデータDBにステップS403の処理と、ステップS404のフィルタ処理とを施して生成されるN3個のデータを積算して積算値を求める(ステップS405)。そして、制御装置100は、積算値を重量に変換することで、ロードセルデータD1に基づく穀粒量を算出する(ステップS406)。例えば、サンプリング周期Δtが5msecで判定値N3が200の場合、これらステップS405,406により、1sec(Δt×N3)の間にグレンタンク9に貯留される穀粒量が算出される。
【0055】
次に、制御装置100は、ステップS406において計算した穀粒量(重量)を、合計収量に加算する(ステップS407)。以上のステップS405~S407(穀粒量算出処理)により、グレンタンク9に貯留される穀粒量が求められる。なお、ステップS405~S407により算出される穀粒量は、穀粒の重量に限らず、穀粒の体積やグレンタンク9に貯留可能な穀粒の最大量に対する割合であってもよい。
【0056】
ここで、ロードセルデータD0をオフセット補正したロードセルデータD1であっても、図13に示すように、微小振動や所定周期P0の波形(山)W0以外の波形(山)W1が含まれていることがある。そこで、本実施の形態では、制御装置100は、ステップS403において、ロードセルデータD1から微小振動を除去する処理を実行してロードセルデータD2を生成し、ロードセルデータD2をフィルタリングするフィルタ処理を実行することにより、ロードセルデータD3を生成する。以下、ステップS403及びステップS404の処理について詳細に説明する。
【0057】
ステップS403において、制御装置100は、ロードセルデータD1に含まれる微小振動を除去する。具体的には、制御装置100は、ロードセルデータD1から閾値TH1以下の微小振動を除去する、即ち閾値TH1を超えるデータのみを抽出することで、ロードセルデータD2を生成する。ロードセルデータD2において、ステップS403で除去された部分のデータは、例えば0などのNULL値とする。
【0058】
次に、ステップS404において、制御装置100は、ロードセルデータD2の中から、波形W0以外の波形W1(異常周期データ)を除去する、即ち波形W0のデータのみを抽出し、ロードセルデータD3を生成する。その際、制御装置100は、予め記憶部103に記憶させておいた参照条件RFを用いて、波形W0のデータのみを抽出する。
【0059】
所定周期P0の波形W0以外に、所定周期P0から外れた波形W1が発生する要因の一つとして、収穫作業時に、図3に示す副変速レバー23がオペレータによって作業レンジから走行レンジに切り換え操作されることが挙げられる。このように、オペレータにより副変速レバー23が誤操作された場合に波形W1が発生することがある。
【0060】
ここで、参照条件RFについて具体的に説明する。参照条件RFは、実験又は理論計算などを行うことにより決められる。図14は、参照条件RFを決定するのに用いる正常モデルDXを示す説明図である。図15は、ロードセルデータD2に対するフィルタ処理の説明図である。図15に示すように、ロードセルデータD2は、サンプリング周期Δtでサンプリングされた複数のデータDCを含む。即ち、データDCは、サンプリングデータDAと対応する。データDCは、上記したオフセット補正及び微小振動除去済みのデータである。図14に示すように、実験又は理論計算により、ロードセルデータD2と対応する正常モデルDXを用意する。横軸は時間、縦軸は検出値と対応する。正常モデルDXは、サンプリング周期Δtの間隔の複数のデータDYからなるモデルである。各データDYには、フラグが割り当てられている。データDYのうち、閾値TH1(図13)以下のデータに割り当てられたフラグは、第1値、例えば「0」に設定され、閾値TH1を超えるデータに割り当てられたフラグは、第2値、例えば「1」に設定される。正常モデルDXにおいては、所定周期P0で現れる閾値TH1を超える波形(山)が存在し、所定周期P0以外の部分には山は存在しない。正常モデルDXにおいて、山となる部分の各データDYのフラグには、「1」が設定され、山以外の部分の各データDYのフラグには、「0」が設定される。
【0061】
正常モデルDXにおける1つの所定周期P0は、フラグが「0」となるデータDYが連続する期間と、フラグが「1」となるデータDYが連続する期間とに分けることができる。正常モデルDXの1つの周期P0において、フラグが「0」となるデータDYの数、フラグが「1」となるデータDYの数は決まっている。図14の例では、フラグが「0」となるデータDYの数は10個、フラグが「1」となるデータDYの数は5個である。
【0062】
図14において、連続してフラグが「1」となる5つのデータDYのうち、時系列で最も古いデータDY1に着目する。このデータDY1よりも前のデータのうち、次にフラグが「1」となるデータが現れるのは、データDY1に対して11個後のデータであり、データDY1に対して1個前のデータから10個前のデータまでの10個のデータは、フラグが「0」である。
【0063】
次に、連続してフラグが「1」となる5つのデータDYのうち、時系列で最も新しいデータDY2と、データDY2に対して1個前のデータから10個前のデータまでの10個のデータに着目する。これら10個のデータのうち、データDY2に対して1個前のデータから4個前のデータまでの4個のデータはフラグが「1」であり、データDY2に対して5個前のデータから10個前のデータまでの6個のデータは、フラグが「0」である。
【0064】
つまり、フラグが「1」のデータに着目したとき、着目したデータが所定周期P0の波形W0に含まれるデータであれば、着目したデータに対して5個前のデータから10個前のデータまでの6個のデータは、常にフラグが「0」となるはずである。逆に、これら6個のデータのうち1つでもフラグが「1」であったら、着目したデータは、波形W0以外の波形W1に含まれるデータということになる。以上の結果から、フラグが「1」の着目データをデータDRとし、データDRよりも前の所定数(2個以上が好ましく、この例の場合6個)のデータDRを、判定範囲R0とする。参照条件RFは、着目したデータDRよりも前の判定範囲R0内のデータDRの全てが閾値TH1(図13)を超えない場合、着目したデータDRをロードセルデータD3に含め、判定範囲R0内のデータDRの1つでも閾値TH1を超える場合、着目したデータDRをロードセルデータD3に含めないという条件である。この参照条件RFは、記憶部103に記憶させておく。つまり、本実施の形態では、フラグが「1」のデータDRと、データDRよりも前の、判定範囲R0に含まれるフラグが「0」である複数のデータDRとを、参照データ、即ち参照条件RFとして記憶部103に記憶させておく。なお、記憶部103には、参照条件RFを記憶させておけばよく、正常モデルDXは記憶させておかなくてもよい。
【0065】
制御装置100は、ロードセルデータD2に含まれる複数のデータDCのうち、フラグが「1」のデータの各々に対して、参照条件RFを用いて、ロードセルデータD3に含めるかどうかを判定する。判定に際しては、時系列で古ものから新しいものの順に行うのが好ましい。ここで、ロードセルデータD2に含まれる複数のデータDCのそれぞれについても、正常モデルDXと同様に、閾値TH1以下のデータのフラグには、「0」が設定され、閾値TH1を超えるデータのフラグには、「1」が設定される。
【0066】
制御装置100は、フラグが「1」となるデータDCについて、参照条件RFを用いてロードセルデータD3に含めるか否かの判定を行う。閾値TH1を超えるデータDCとして、例えば4つのデータDC~DCについて説明する。各データDC~DCは、閾値TH1を超える第1データの一例である。
【0067】
まず、制御装置100は、データDCについて、データDCよりも前に取得した判定範囲R0に含まれる6個のデータ(第2データ)DCA0の全てのフラグが「0」、即ち6個のデータDCA0の全てが閾値TH1以下であるため、当該データDCをロードセルデータD3に含める。よって、データDCは、後のステップS405~S407の穀粒量の算出に使用される。
【0068】
同様に、制御装置100は、データDCについて、データDCよりも前に取得した判定範囲R0に含まれる6個のデータ(第2データ)DCB0の全てのフラグが「0」、即ち6個のデータDCB0の全てが閾値TH1以下であるため、当該データDCをロードセルデータD3に含める。よって、データDCは、後のステップS405~S407の穀粒量の算出に使用される。
【0069】
次に、制御装置100は、データDCについて、データDCよりも前に取得した判定範囲R0に含まれる6個のデータ(第2データ)DCC0のうち、いずれかのフラグが「1」、即ちいずれかが閾値TH1を超えるため、当該データDCをロードセルデータD3に含めない。よって、データDCは、後のステップS405~S407の穀粒量の算出に使用されない。その際、制御装置100は、後のデータDCの判定、例えばデータDCの判定のために、当該データDCのフラグを「1」から「0」に変更しておくことが好ましい。つまり、データDCは、後のデータDCの判定において、閾値以下とみなされる。
【0070】
同様に、制御装置100は、データDCについて、データDCよりも前に取得した判定範囲R0に含まれる6個のデータ(第2データ)DCD0のうち、いずれかのフラグが「1」、即ちいずれかが閾値TH1を超えるため、当該データDCをロードセルデータD3に含めない。よって、データDCは、後のステップS405~S407の穀粒量の算出に使用されない。その際、制御装置100は、後のデータDCの判定、例えばデータDCの判定のために、当該データDCのフラグを「1」から「0」に変更しておくことが好ましい。つまり、データDCは、後のデータDCの判定において、閾値以下とみなされる。
【0071】
以上、本実施の形態では、制御装置100は、参照データである参照条件RFを用いて、ロードセルデータD2に含まれるデータDCのうち、参照条件RFに含まれるデータDRとフラグが合致するデータとして例えばデータDCを探し出した場合、判定範囲R0のデータDRのフラグと、データDCよりも前の判定範囲R0に対応するデータDCA0のフラグとが一致するかどうかを判定する。一致する場合は、制御装置100は、当該データDCをロードセルデータD3に含める。また、制御装置100は、データDRとフラグが合致するデータとして例えばデータDCを探し出した場合、判定範囲R0のデータDRのフラグと、データDCよりも前の判定範囲R0に対応するデータDCC0のフラグとが一致するかどうかを判定する。一致しない場合は、制御装置100は、当該データDCをロードセルデータD3に含めない。以上の処理は、ロードセルデータD2に含まれる、フラグが「1」の全てのデータDCに対して実施する。
【0072】
次に、図9に示すステップS5の異常判定処理について詳細に説明する。図16は、異常判定処理のフローチャートである。
【0073】
制御装置100は、ロードセルデータD2が生成済みか否かを判断する(ステップS501)。ロードセルデータD2が生成済みの場合(ステップS501:YES)、制御装置100は、ロードセルデータD2に基づいて異常が発生したかどうかを判定する(ステップS502:判定処理)。異常が発生したと判定した場合(ステップS502:YES)、制御装置100は、ブザー95にブザー音を発生させることにより、異常を報知させる(ステップS503)。
【0074】
ロードセルデータD2が生成済みでない場合(ステップS501:NO)、又は異常なしと判定した場合(ステップS502:NO)、制御装置100は、図9に示すメインルーチンに戻る。
【0075】
制御装置100は、ステップS502において、ロードセルデータD2に基づいて回転体61の回転数(回転周波数)を推定し、回転体61の推定回転数と回転体61の定格回転数との差ΔMが所定値M2よりも大きければ異常が発生したと判定するのが好ましい。回転体61の回転数の異常が発生する要因の一例として、穀粒が回転体61の一番縦ラセン59と揚穀筒58との間に穀粒が挟まることが挙げられる。また、回転体61の回転数の異常が発生する要因の別の例として、エンジンの回転数とエンジンの定格回転数との差が大きい、ベルトの緩み、もしくは水分計型式の切り換えの間違い等が挙げられる。オペレータは、これらの異常に対して迅速に対応することができる。
【0076】
ここで、回転体61の推定回転数は、図15に示すロードセルデータD2においてデータDCが0となるのが連続する数と対応する。よって、制御装置100は、データDCが0となるのが連続する数をカウントし、当該カウント数と、回転体61の定格回転数と対応する数との差分を求め、当該差分が、所定値M2と対応する値よりも大きければ、異常が発生したと判定するようにしてもよい。
【0077】
以上、第1の実施の形態では、制御装置100は、差分ΔDが所定値M1以下となる状態が所定時間(Δt×N1)継続する部分の演算用データD0に基づいてオフセット量Dを求めるので、回転体61が1回転する毎にパルス信号を発生するピックアップセンサのようなセンサを、別途設ける必要がない。このため、安価な構成でありながらオフセット量Dを求めることができ、ステップS405~S407の処理によって算出される穀粒量の精度を確保することができる。
【0078】
また、ロードセルデータD0におけるオフセット量Dは、収量センサ80の置かれている環境に応じて変化するため、オフセット補正に用いるオフセット量Dのデータは、収穫作業中のものが正確である。制御装置100は、オフセット量計算処理を、少なくとも収穫作業中に実行可能であるため、オフセット補正に用いるオフセット量Dのデータを収穫作業中に取得したロードセルデータD0に基づいて求めることができ、より高精度に穀粒量を算出することができる。
【0079】
また、制御装置100は、オフセット量計算処理を、収穫作業中以外にも実行可能であるため、例えば収穫作業の開始直後においても、新しいオフセット量Dのデータを用いることができ、高精度に穀粒量を算出することができる。
【0080】
また、制御装置100は、オフセット量計算処理を、自動的に繰り返し実行可能であるため、収量センサ80の置かれている環境に応じて変化するオフセット量Dが繰り返し求められ、記憶部103におけるオフセット量Dのデータが頻繁に更新される。これにより、より新しいオフセット量Dのデータを用いてロードセルデータD0をオフセット補正することができ、より高精度に穀粒量を算出することができる。
【0081】
また、本実施の形態では、制御装置100は、ステップS404のフィルタ処理において、ロードセルデータD2の中から、閾値H1を超えるデータであって所定周期P0で現れる波形W0のデータを、記憶部103に記憶されている参照条件RFを用いて抽出することで、ロードセルデータD3を生成している。これにより、回転体61の回転を検出しなくても、所定周期P0で現れる波形W0以外の波形W1が除去されたロードセルデータD3が生成されるので、ピックアップセンサのようなセンサを別途設ける必要がない。このように、安価な構成でありながら波形W1が除去されたロードセルデータD3を生成することができ、ステップS405~S407の処理によって、波形W1が除去されたロードセルデータD3に基づいて穀粒量が算出されるので、算出される穀粒量の精度を確保することができる。
【0082】
また、ロードセルデータD2に含まれる閾値TH1を超えるデータDCについて、データDCよりも前の判定範囲R0のデータの全てが閾値TH1を超えない場合、当該データDCをロードセルデータD3に含め、判定範囲R0のデータの1つでも閾値TH1を超える場合、当該データDCをロードセルデータD3に含めないため、ピックアップセンサのようなセンサを用いなくても、より確実に波形W1を除去することができ、より高精度に所定周期P0で現れる波形W0を抽出することが可能となる。これにより、より高精度に穀粒量を算出することができる。
【0083】
また、ステップS503において、制御装置100は、ブザー95にブザー音を発生させることにより、異常を報知させる。これにより、オペレータは、異常に気が付くことができ、その異常に対して迅速に対応することができる。また、ロードセルデータD2に基づいて異常が発生したかどうかを判定するため、異常を検出するためのセンサを別途設ける必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0084】
また、回転体61の回転数の異常は、検出信号Sn1の電圧、即ちロードセルデータD0の値の異常として現れることもある。また、グレンタンク9の不図示の満杯センサが故障した場合にも、ロードセルデータD0の値の異常として現れることがある。したがって、本実施の形態では、制御装置100は、脱穀クラッチ98が接続された状態において、ロードセルデータD0のサンプリングデータDAが所定数(例えば10個)連続して閾値TH2(図13)を超える場合に、ブザー95にブザー音を発生させて異常を報知させるようにしてもよい。これにより、オペレータは、異常に気が付くことができ、この異常に対して迅速に対応することができる。
【0085】
また、制御装置100は、機体傾斜センサ94により検出された機体3の傾斜角度が所定角度を超えた場合に、ブザー95にブザー音を発生させるようにしてもよい。これによりオペレータは、機体3が水平となるようにコンバイン1を操作することで、穀粒量の算出誤差を低減することができる。また、制御装置100は、機体傾斜センサ94により検出された機体3の傾斜角度に応じて、算出した穀粒量を補正してもよい。これにより、穀粒量の精度が更に向上する。
【0086】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、ロードセルデータに含まれるオフセット量を計算開始するタイミングが、第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態のコンバインの構成については、第1の実施の形態と同様であるため、図示および説明を省略する。
【0087】
図17は、第2の実施の形態に係る制御装置100の演算処理(メインルーチン)を示すフローチャートである。制御装置100は、図8に示す測定スイッチ91がオペレータによってONされた場合(ステップS11:YES)、収穫作業中であれば(ステップS12:YES)、ステップS13~S16の処理を実行する。ステップS13の処理は、図9のステップS1の処理と同様であり、ステップS14の処理は、図9のステップS2の処理と同様であり、ステップS15の処理は、図9のステップS4の処理と同様であり、ステップS16の処理は、図9のステップS5の処理と同様である。即ち、第2の実施の形態では、図8に示す測定スイッチ91がオペレータによってONされ、かつ収穫作業中であれば、第1の実施の形態において説明したオフセット量計算処理を実行する。このように、オペレータの判断でオフセット量計算処理を制御装置100に指示することができる。
【0088】
なお、異常を報知する報知部の一例として、ブザー95である場合について説明したがこれに限定するものではなく、例えば液晶モニタ30や不図示のスピーカ、不図示の警報ランプであってもよく、液晶モニタ30に異常を報知する画像を表示させたり、不図示のスピーカに異常を報知する音声を出力させたり、不図示の警報ランプを点灯させたりしてもよく、またこれらの処理を組み合わせたりしてもよい。
【0089】
また、収量センサ80は、コラム型のロードセル82を使用したものに限られず、検出板81に衝突する穀粒の量を検出できるものであれば、ビーム型のロードセルや加速度センサ等、他の手段を使用するものでもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 コンバイン
35 脱穀部
61 回転体
80 収量センサ(検出手段)
100 制御装置(演算手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17