(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002370
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】通気装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20221227BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20221227BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B1/94 G
E04B1/64 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103572
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】新田 光信
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA03
2E001DB02
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA04
2E001GA63
2E001HF12
2E001LA01
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND22
(57)【要約】
【課題】コストを低減し、意匠性及び防水性を向上させると共に、優れた施工性を実現すること。
【解決手段】建物の外壁側壁面100と、外壁側壁面100より隔てて設けられる支持部材101に支持される縦板104と、の間に設けられる通気装置Aにおける外気と室内空間とを通気する通気経路は、換気穴2k、底片2fと水返し片2cとの隙間、水返し片2cと下側通気抑え片1cとの隙間、及び水返し片1dと支持部材101との隙間によって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁側壁面と、前記外壁側壁面より隔てて設けられる支持部材に支持される縦板と、の間に設けられる通気装置であって、
前記外壁側壁面に当接する当接片と、
前記当接片の上方に接続される上側通気抑え片と、
前記当接片の下方に接続される下側通気抑え片と、
前記支持部材に固定される固定片と、
通気用の換気穴を備え、前記固定片に接続されると共に前記固定片より下方に延設される換気片と、
前記換気片の下端より前記外壁側壁面に向かって延設されると共に底面を構成する底片と、
前記上側通気抑え片に接続されて前記当接片に対向する第1の水返し片と、
前記固定片に接続されて前記換気穴と前記当接片との間に配置される第2の水返し片と、
を有し、
外気と室内空間とを通気する通気経路は、前記換気穴、前記底片と前記第2の水返し片との隙間、前記第2の水返し片と前記下側通気抑え片との隙間、及び前記第1の水返し片と前記支持部材との隙間によって形成される、
ことを特徴とする通気装置。
【請求項2】
前記外壁側壁面に固定される前記当接片と、前記上側通気抑え片と、前記下側通気抑え片と、前記第1の水返し片と、を備える水返し部材と、
前記固定片と、前記換気片と、前記底片と、前記第2の水返し片と、前記底辺に接続される側片と、前記側片に接続されると共に前記下側通気抑え片に接続される接続片と、を備える通気部材と、
により構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通気装置。
【請求項3】
前記当接片に接続する接続片と、前記下側通気抑え片と、を備える水返し部材と、
前記当接片と、前記上側通気抑え片と、前記固定片と、前記換気片と、前記底片と、前記第1の水返し片と、前記第2の水返し片と、を備える通気部材と、
により構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通気装置。
【請求項4】
前記上側通気抑え片の上面、前記下側通気抑え片の上面、前記底片の上面及び前記第1の水返し片の前記支持部材に対する対向面の少なくとも何れかに設けられると共に、熱によって膨張することにより前記通気経路を閉塞する不燃性体積膨張材を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁側壁面と、外壁側壁面より隔てて設けられる支持部材に支持される破風、鼻隠し又は幕板等の縦板と、の間に設けられる通気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の切妻の破風について、意匠性を向上させるために破風の背を小さくすることにより見付けを小さくする場合がある。この場合、建物躯体側の防水立ち上げを十分設けることができないため、軒裏部分に通気のための通気用開口を設ける場合、建物内への雨水の吹き込みに十分配慮しなければならない。
【0003】
特許文献1は、通気用のスリット穴がそれぞれ設けられる一対の通気片を有し、外壁の下地材に固定される断面コ字形状に形成された水返し部材の内部に嵌合される断面コ字形状に形成された通気部材と、通気部材の一対の通気片の間に挿入され、通気部材の下側のスリット穴を上方から被う遮蔽部材と、を有する通気装置を開示している。特許文献1の通気装置によれば、通気部材に二重の通気用のスリット穴を設け、かつそれらのスリット穴の間を覆う遮蔽部材と、スリット穴の外側に水返し部材を設けることで通気抵抗を高め防水性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、水返し部材、通気部材及び遮蔽部材によって通気装置を構成しているため、部品点数が多くなるという課題を有する。また、特許文献1においては、通気用のスリット穴が軒下から見えてしまうため、意匠性が損なわれるという課題を有する。また、特許文献1においては、通気装置を外壁に固定するため、外壁の壁面がアルコーブ等によって入り組んだ構造となって出隅及び入隅が生じた場合に、通気装置を専用の役物等を用いて外壁に固定する必要があることにより施工性が悪くなるという課題を有する。
【0006】
更に、特許文献1においては、鼻隠しの下地材の寸法に誤りが発生した場合等に、鼻隠しと通気装置との間に隙間を生じることにより、水の侵入経路が形成されて防水性が低下してしまう。また、このような隙間が生じることを防ぐためには、高い施工精度が必要となり、より容易な施工性への改善が望まれる。
【0007】
本発明の目的は、コストを低減することができ、意匠性及び防水性を向上させることができると共に、優れた施工性を実現することができる通気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通気装置は、建物の外壁側壁面と、前記外壁側壁面より隔てて設けられる支持部材に支持される縦板と、の間に設けられる通気装置であって、前記外壁側壁面に当接する当接片と、前記当接片の上方に接続される上側通気抑え片と、前記当接片の下方に接続される下側通気抑え片と、前記支持部材に固定される固定片と、通気用の換気穴を備え、前記固定片に接続されると共に前記固定片より下方に延設される換気片と、前記換気片の下端より前記外壁側壁面に向かって延設されると共に底面を構成する底片と、前記上側通気抑え片に接続されて前記当接片に対向する第1の水返し片と、前記固定片に接続されて前記換気穴と前記当接片との間に配置される第2の水返し片と、を有し、外気と室内空間とを通気する通気経路は、前記換気穴、前記底片と前記第2の水返し片との隙間、前記第2の水返し片と前記下側通気抑え片との隙間、及び前記第1の水返し片と前記支持部材との隙間によって形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストを低減することができ、意匠性及び防水性を向上させることができると共に、優れた施工性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る通気装置を用いた通気構造の断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る通気装置の水返し部材の正面図及び側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る通気装置の通気装置の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る通気装置の通気部材の正面図及び底面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る通気装置の施工手順を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る通気装置を用いた通気構造の断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る通気装置の斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る通気装置の底面図である。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る通気装置の施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態に係る通気装置につき、詳細に説明する。図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、y軸の正方向を前方向、y軸の負方向を後ろ方向、x軸の正方向を左方向、x軸の負方向を右方向、z軸の正方向を上方向、及びz軸の負方向を下方向として説明する。
【0012】
(実施の形態1)
<通気装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る通気装置Aの構成につき、
図1から
図4を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0013】
図2において、
図2(a)は、水返し部材1の正面図であり、
図2(b)は、水返し部材1の側面図である。また、
図4において、
図4(a)は、通気部材2の正面図であり、
図4(b)は、通気部材2の底面図である。
【0014】
通気装置Aは、建物の外壁側壁面100と、外壁側壁面100より隔てて設けられる支持部材101に支持される縦板104と、の間に設けられて、外気と室内空間との換気を行う。通気装置Aは、水返し部材1と、通気部材2と、水密部材3と、熱発泡部材4と、から構成されている。ここで、縦板104は、破風、鼻隠し又は幕板等である。なお、
図3において、水密部材3及び熱発泡部材4の記載を省略する。
【0015】
水返し部材1は、外壁側壁面100にネジ102により固定されている。なお、水返し部材1は、ネジ102以外の釘等の他の固定手段によって外壁側壁面100に固定されていてもよい。
【0016】
具体的には、水返し部材1は、当接片1aと、上側通気抑え片1bと、下側通気抑え片1cと、水返し片1dと、を備えている。
【0017】
当接片1aには、ネジ102を挿通するための取付穴1eが設けられている。当接片1aは、外壁側壁面100に当接していると共に、ネジ102によって外壁側壁面100に固定されている。
【0018】
上側通気抑え片1bは、当接片1aの上端から左方に直角に折り曲げられて左方に延設されている。
【0019】
下側通気抑え片1cは、当接片1aの下端から左方に直角に折り曲げられて左方に延設されていると共に、上側通気抑え片1bに対向している。
【0020】
水返し片1dは、上側通気抑え片1bの左端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。水返し片1dは、当接片1aと支持部材101との間に配置されていると共に、当接片1aに対して間隔を有して対向している。
【0021】
通気部材2は、外壁側壁面100より隔てて設けられる支持部材101にネジ103により固定されていると共に、水返し部材1と接続している。なお、通気部材2は、ネジ103以外の釘等の他の固定手段によって支持部材101に固定されていてもよい。
【0022】
具体的には、通気部材2は、上片2aと、折り返し片2bと、水返し片2cと、延設片2dと、垂下片2eと、底片2fと、側片2gと、接続片2hと、を備えている。ここで、上片2aと折り返し片2bとは、ネジ103によって支持部材101に固定される固定片を構成している。また、延設片2dと垂下片2eとは、換気片を構成している。
【0023】
上片2aには、ネジ103を挿通するための取付穴2iが設けられている。
【0024】
折り返し片2bは、上片2aの左端から右方及び上片2aの上方に180度折り返されて右方に延設されている。折り返し片2bには、取付穴2iと対向すると共に、ネジ103を挿通するための取付穴2jが設けられている。
【0025】
水返し片2cは、折り返し片2bに接続していると共に折り返し片2bの右端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。水返し片2cは、換気穴2kと当接片1aとの間に配置されていると共に、換気穴2kに対して間隔を有して対向している。
【0026】
延設片2dは、上片2aの右端より下方に折り曲げられて下方に徐々に縦板104に近づくように延設されていると共に、水返し片2cに対して間隔を有して対向している。延設片2dには、延設方向に沿って長穴となる複数の換気穴2kが通気装置Aの長手方向(
図1において奥行き方向)に沿って複数並設されている。換気穴2kは、縦板104に対向している。
【0027】
垂下片2eは、延設片2dの下端より下方に折り曲げられて垂下されている。
【0028】
底片2fは、垂下片2eの下端より外壁側壁面100に向かって延設されて垂下片2eの下端と側片2gの下端とを接続していると共に、通気装置Aの底面を構成している。
【0029】
側片2gは、底片2fの右端から上方に直角に折り曲げられて延設されている。側片2gは、外壁側壁面100に当接している。
【0030】
接続片2hは、側片2gの上端から左方に直角に折り曲げられて左方に延設されていると共に、下側通気抑え片1cに接続している。接続片2hは、底片2fに対して間隔を有して対向している。
【0031】
水密部材3は、長尺状であり、水返し部材1の下側通気抑え片1cの下面に、通気装置Aの長手方向に沿って両面テープ等により貼着されている。水密部材3は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の樹脂発泡体である。水密部材3は、通気部材2の接続片2hによって圧縮されることにより、水返し部材1の下側通気抑え片1cと通気部材2の接続片2hとの間の隙間を封止する。
【0032】
熱発泡部材4は、長尺状であり、水返し部材1の上側通気抑え片1bの上面に、通気装置Aの長手方向に沿って両面テープ等により貼着されている。熱発泡部材4は、不燃性の体積膨張材であり、火炎の熱を受けると熱膨張する。
【0033】
通気装置Aには、延設片2dと、水返し片2cと、底片2fと、垂下片2eと、によって囲まれた空間5aが形成されている。また、通気装置Aには、水返し片2cと、当接片1aと、上側通気抑え片1bと、下側通気抑え片1cと、水返し片1dと、支持部材101と、によって囲まれた空間5bが形成されている。更に、通気装置Aには、上側通気抑え片1bと、外壁側壁面100と、支持部材101と、によって囲まれた空間5cが形成されている。
【0034】
空間5aは、換気穴2kを介して外気と連通している。空間5bは、下側通気抑え片1cと水返し片2cとの隙間を介して空間5aと連通している。空間5cは、水返し片1dと支持部材101との隙間を介して空間5bと連通している。空間5cは、室内空間に連通している。
【0035】
上記の構成を有する通気装置Aにおいて、外気と室内空間とを通気する通気経路は、換気穴2k、底片2fと水返し片2cとの隙間、水返し片2cと下側通気抑え片1cとの隙間、及び水返し片1dと支持部材101との隙間によって形成されている。
【0036】
<通気装置の製造方法及び取付方法>
本発明の実施の形態1に係る通気装置Aの製造方法及び取付方法につき、
図5を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0037】
図5において、
図5(a)は、水返し部材1を外壁側壁面100に取り付ける工程を示しており、
図5(b)は、通気部材2を支持部材101に取り付ける工程を示していると共に、
図5(c)は、通気装置Aが完成した状態を示している。
【0038】
まず、水返し部材1の上側通気抑え片1bの上面に対して、通気装置Aの長手方向に沿って長尺状の熱発泡部材4を図示しない両面テープ等により貼着する。また、水返し部材1の下側通気抑え片1cの下面に対して、通気装置Aの長手方向に沿って長尺状の水密部材3を図示しない両面テープ等により貼着する。
【0039】
次に、水返し部材1の取付穴1eを挿通するネジ102によって、外壁側壁面100に対して水返し部材1を固定する(
図5(a))。
【0040】
次に、通気部材2の取付穴2i及び取付穴2jを挿通するネジ103によって、支持部材101に対して通気部材2を固定する(
図5(b))。この際に、接続片2hによって水密部材3を圧縮することにより、水返し部材1の下側通気抑え片1cと通気部材2の接続片2hとの間の隙間が水密部材3によって封止される。
【0041】
【0042】
このように、水返し部材1を外壁側壁面100に固定した後、通気部材2を水密部材3を介して水返し部材1に当接させて取り付けることにより、水返し部材1と通気部材2との固定を不要にすることができ、容易な施工が可能となる。
【0043】
また、アルコーブ等を有する複雑な形状の外壁側壁面100に通気装置を取り付ける場合に、外壁側壁面100の形状に応じて軒天材に通気部材2のみを取り付けることにより、外壁側壁面100の形状に関わらず軒先を通気部材2により連続した意匠によってつなげることができる。また、出隅及び入隅のための役物を不要にすることができ、通気装置を取り付けるためのコストを抑制することができる。
【0044】
更に、外壁側壁面100に対する支持部材101の位置がずれて軒の出が変わってしまった場合であっても、通気部材2を水密部材3を介して水返し部材1に当接させて取り付けることにより、外壁側壁面100と通気部材2の側片2gとの間の距離を可変にして通気装置Aを取り付けることができる。このように、軒の出が変わってしまった場合であっても、通気装置Aのみによって通気装置Aと、外壁側壁面100又は縦板104と、の間に隙間を生じないように調整することができるため、特許文献1と異なり防水性を確保することができる。
【0045】
なお、熱発泡部材4は、上側通気抑え片1bの上面に設ける場合に限らず、下側通気抑え片1cの上面、底片2fの上面又は水返し片1dの左面(支持部材101に対する対向面)に設けてもよい。また、熱発泡部材4を1つ設ける場合に限らず、下側通気抑え片1cの上面、底辺2fの上面、上側通気抑え片1bの上面及び水返し片1dの左面の何れか2つ若しくは3つ又は全てに設けてもよい。
【0046】
<通気装置の動作>
本発明の実施の形態1に係る通気装置Aの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0047】
通気装置Aにおいて、
図1に矢線S1によって示すように、外気は延設片2dの換気穴2kを介して空間5aを通気し、水返し片2cと底片2fとの隙間を介して空間5bを通気すると共に、水返し片1dと支持部材101との隙間を介して空間5cを通気することにより、外気と室内空間との換気を行う。
【0048】
暴風雨時において、換気穴2kより空間5aに侵入した雨水は、水返し片2cに当たって落下又は水返し片2cに付着する。これにより、換気穴2kより空間5aに侵入した雨水の建物内部への吹き込みを軽減することができる。
【0049】
水返し片2cによって侵入を防ぐことができない雨水は、下側通気抑え片1cの下面に当たって落下又は下側通気抑え片1cの下面に付着する。また、水返し片2cによって侵入を防ぐことができない雨水は、下側通気抑え片1c、側片2g及び底片2fによって通気が渦となることにより、空間5bに侵入しようとする流れに対して、この流れの反対方向の流れによって圧力損失を生じさせる。これにより、水返し片2cによって侵入を防ぐことができない雨水の建物内部への吹き込みを軽減することができる。更に、下側通気抑え片1cに付着した雨水の下側通気抑え片1cと接続片2hとの間から建物内部への侵入を、水密部材3によって防ぐことができる。
【0050】
下側通気抑え片1cによって侵入を防ぐことができない雨水は、当接片1aに当たって跳ね返る。この際に、当接片1aに当たって支持部材101方向に跳ね返った雨水は、水返し片1dに当たって落下又は水返し片1dに付着する。また、下側通気抑え片1cによって侵入を防ぐことができない雨水は、当接片1a、上側通気抑え片1b及び水返し片1dによって通気が渦となることにより、空間5cに侵入しようとする流れに対して、この流れの反対方向の流れにより圧力損失を生じさせる。これにより、下側通気抑え片1cによって侵入を防ぐことができない雨水の建物内部への吹き込みを軽減することができる。
【0051】
通気装置Aが火炎の熱を受けた際に、火炎の熱を受けた熱発泡部材4が熱膨張して空間5cを塞ぐことにより、外壁側壁面100と支持部材101との隙間を塞いで
図1において矢線S1によって示す通気経路を閉塞して、室内空間への火炎の吹き込みを完全に遮断する。これにより、通気装置Aは、防火上優れた性能を発揮することができる。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、換気穴2k、底片2fと水返し片2cの下端との隙間、水返し片2cの下端と下側通気抑え片1cの左端との隙間、及び水返し片1dと支持部材101との隙間によって外気と室内空間とを通気する通気経路を形成することにより、高い防水性能を得ることができると共に、優れた施工性を実現することができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、外壁側壁面100に固定される当接片1a、上側通気抑え片1b、下側通気抑え片1c及び水返し片1dを備える水返し部材1と、上片2a、折り返し片2b、延設片2d、垂下片2e、底片2f、水返し片2c及び下側通気抑え片1cに接続される接続片2hを備える通気部材2と、により通気装置Aを構成することにより、更に優れた施工性を実現することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、下側通気抑え片1cと接続片2hとの間に水密部材3を有することにより、水返し部材1と通気部材2との接続部分から室内空間への雨水の侵入を防ぐことができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、上側通気抑え片1bに設けられると共に、熱によって膨張することにより空間5cを閉塞する熱発泡部材4を有することにより、通気装置Aが火炎の熱を受けた際に、室内空間への火炎の吹き込みを完全に遮断することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、上片2aに接続されると共に上片2aより下方に延設される延設片2dに換気穴2kを設けることにより、換気穴2kを軒下から見えないようにすることができ、意匠性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、水返し部材1及び通気部材2により通気装置Aを構成することにより、特許文献1と比較して部品点数を少なくすることができる。
【0058】
なお、本実施の形態において、水密部材3及び熱発泡部材4を設けたが、これに限らず、水密部材3及び熱発泡部材4のうちの何れか一方又は両方を設けなくてもよい。
【0059】
また、本実施の形態において、水返し部材1を外壁側壁面100に固定すると共に通気部材2を支持部材101に固定したが、これに限らず、水返し部材1の下側通気抑え片1cと通気部材2の接続片2hとを接続した後に、通気部材2の上片2a及び折り返し片2bを支持部材101に固定してもよい。この場合には、ネジ102を不要にすることができると共に、水返し部材1を外壁側壁面100に固定する作業を不要にすることができる。
【0060】
また、本実施の形態において、通気部材2に延設片2d及び垂下片2eを設けたが、これに限らず、上片2aから下方に直角に折り曲げて垂下させた換気穴を備える換気片を設けると共にこの換気片の下端と側片2gの下端とを底片によって接続してもよい。
【0061】
(実施の形態2)
<通気装置の構成>
本発明の実施の形態2に係る通気装置Bの構成につき、
図6から
図8を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0062】
通気装置Bは、建物の外壁側壁面100と、外壁側壁面100より隔てて設けられる支持部材101に支持される縦板104と、の間に設けられて、外気と室内空間との換気を行う。通気装置Bは、水返し部材6と、通気部材7と、熱発泡部材8と、から構成されている。なお、
図7において、熱発泡部材8の記載を省略する。
【0063】
水返し部材6は、断面形状が逆L字状であり、通気部材7に接続している。
【0064】
具体的には、水返し部材6は、接続片6aと、下側通気抑え片6bと、を備えている。
【0065】
接続片6aは、通気部材7の当接片7fに図示しない両面テープ等の固定手段によって固定されている。
【0066】
下側通気抑え片6bは、接続片6aの下端から左方に直角に折り曲げられて左方に延設されていると共に、通気部材7の上側通気抑え片7gに対向している。
【0067】
通気部材7は、外壁側壁面100より隔てて設けられる支持部材101にネジ105により固定されていると共に、水返し部材6と接続している。なお、通気部材7は、ネジ105以外の釘等の他の固定手段によって支持部材101に固定されていてもよい。
【0068】
具体的には、通気部材7は、上片7aと、折り返し片7bと、水返し片7cと、換気片7dと、底片7eと、当接片7fと、上側通気抑え片7gと、水返し片7hと、を備えている。ここで、上片7aと折り返し片7bとは、固定片を構成している。
【0069】
上片7aには、ネジ105を挿通するための取付穴7iが設けられている。
【0070】
折り返し片7bは、上片7aの左端から右方及び上片7aの上方に180度折り返されて右方に延設されている。折り返し片7bには、取付穴7iに対向すると共にネジ105を挿通するための取付穴7jが設けられている。
【0071】
水返し片7cは、折り返し片7bに接続していると共に折り返し片7bの右端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。水返し片7cは、換気穴7kと当接片7fとの間に配置されていると共に、換気穴7kに対して間隔を有して対向している。
【0072】
換気片7dは、上片7aの右端より下方に直角に折り曲げられて垂下されていると共に、水返し片7cに対して間隔を有して対向している。換気片7dには、延設方向に沿って長穴となる複数の換気穴7kが通気装置Bの長手方向(
図6において奥行き方向)に沿って複数並設されている。換気穴7kは、縦板104に対向している。
【0073】
底片7eは、換気片7dの下端より外壁側壁面100に向かって延設されて換気片7dの下端と当接片7fの下端とを接続していると共に、通気装置Bの底面を構成している。
【0074】
当接片7fは、外壁側壁面100に当接している。
【0075】
上側通気抑え片7gは、当接片7fの上端から左方に直角に折り曲げられて左方に延設されている。
【0076】
水返し片7hは、上側通気抑え片7gの左端から下方に直角に折り曲げられて垂下されている。水返し片7hは、当接片7fと支持部材101との間に配置されていると共に、当接片7fに対して間隔を有して対向している。
【0077】
熱発泡部材8は、長尺状であり、通気部材7の上側通気抑え片7gの上面に、通気装置Bの長手方向に沿って両面テープ等により貼着されている。熱発泡部材8は、不燃性の体積膨張材であり、火炎の熱を受けると熱膨張する。
【0078】
通気装置Bには、換気片7dと、水返し片7cと、底片7eと、によって囲まれた空間9aが形成されている。また、通気装置Bには、接続片6aと、水返し片7cと、当接片7fと、上側通気抑え片7gと、下側通気抑え片6bと、支持部材101と、によって囲まれた空間9bが形成されている。更に、通気装置Bには、上側通気抑え片7gと、外壁側壁面100と、支持部材101と、によって囲まれた空間9cが形成されている。
【0079】
空間9aは、換気穴7kを介して外気と連通している。空間9bは、下側通気抑え片6bと水返し片7cとの隙間を介して空間9aと連通している。空間9cは、及び水返し片7hと支持部材101との隙間を介して空間9bと連通している。空間9cは、室内空間に連通している。
【0080】
上記の構成を有する通気装置Bにおいて、外気と室内空間とを通気する通気経路は、換気穴7k、底片7eと水返し片7cとの隙間、水返し片7cと下側通気抑え片6bとの隙間、及び水返し片7hと支持部材101との隙間によって形成されている。
【0081】
<通気装置の製造方法及び取付方法>
本発明の実施の形態2に係る通気装置Bの製造方法及び取付方法につき、
図9を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0082】
図9において、
図9(a)は、通気装置Bを支持部材101に取り付ける工程を示していると共に、
図9(b)は、通気装置Bが完成した状態を示している。
【0083】
まず、水返し部材6の接続片6aを通気部材7の当接片7fの外壁側壁面100との対向面の反対面に固定することにより通気装置Bを生成する。
【0084】
次に、通気部材7の上側通気抑え片7gの上面に対して、通気装置Bの長手方向に沿って長尺状の熱発泡部材8を図示しない両面テープ等により貼着する。
【0085】
次に、通気装置Bの通気部材7の取付穴7i及び取付穴7jを挿通するネジ105によって、支持部材101に対して通気部材7を固定する(
図9(a))。
【0086】
【0087】
なお、熱発泡部材8は、上側通気抑え片7gの上面に設ける場合に限らず、下側通気抑え片6bの上面、底片7eの上面又は水返し片7hの左面(支持部材101に対する対向面)に設けてもよい。また、熱発泡部材8を1つ設ける場合に限らず、下側通気抑え片6bの上面、底片7eの上面、上側通気抑え片7gの上面及び水返し片7hの左面の何れか2つ若しくは3つ又は全てに設けてもよい。
【0088】
<通気装置の動作>
本発明の実施の形態2に係る通気装置Bの動作につき、以下に詳細に説明する。
【0089】
通気装置Bにおいて、
図6に矢線S2によって示すように、外気は換気片7dの換気穴7kを介して空間9aを通気し、底片7eと水返し片7cとの隙間、水返し片7cと下側通気抑え片6bとの隙間を介して空間9bを通気すると共に、水返し片7hと支持部材101との隙間を介して空間9cを通気することにより、外気と室内空間との換気を行う。
【0090】
暴風雨時において、換気穴7kより空間9aに侵入した雨水は、水返し片7cに当たって落下又は水返し片7cに付着することにより、空間9bまで到達しない。これにより、換気穴7kより空間9aに侵入した雨水の一部が室内空間に侵入することを防ぐことができる。
【0091】
水返し片7cによって侵入を防ぐことができない雨水は、下側通気抑え片6bの下面に当たって落下又は下側通気抑え片6bの下面に付着する。また、水返し片7cによって侵入を防ぐことができない雨水は、下側通気抑え片6b、当接片7f及び底片7eによって通気が渦となることにより、空間9bに侵入しようとする流れに対して、この流れの反対方向の流れによって圧力損失を生じさせる。これにより、水返し片7cによって侵入を防ぐことができない雨水の建物内部への吹き込みを軽減することができる。
【0092】
下側通気抑え片6bによって侵入を防ぐことができない雨水は、当接片7fに当たって跳ね返る。この際に、当接片7fに当たって支持部材101方向に跳ね返った雨水は、水返し片7hに当たって落下又は水返し片7hに付着する。また、下側通気抑え片6bによって侵入を防ぐことができない雨水は、当接片7f、上側通気抑え片7g及び水返し片7hによって通気が渦となることにより、空間9cに侵入しようとする流れに対して、この流れの反対方向の流れにより圧力損失を生じさせる。これにより、下側通気抑え片6bによって侵入を防ぐことができない雨水の建物内部への吹き込みを軽減することができる。
【0093】
通気装置Bが火炎の熱を受けた際に、火炎の熱を受けた熱発泡部材8が熱膨張して空間9cを塞ぐことにより、外壁側壁面100と支持部材101との隙間を塞いで
図6において矢線S2によって示す通気経路を閉塞して、室内空間への火炎の吹き込みを完全に遮断する。これにより、通気装置Bは、防火上優れた性能を発揮することができる。
【0094】
上記の通り、ネジ105のみによって通気装置Bを軒下に取り付けることができるため、更に優れた施工性を実現することができる。
【0095】
このように、本実施の形態によれば、換気穴7k、底片7eと水返し片7cの下端との隙間、水返し片7cの下端と下側通気抑え片6bの左端との隙間、及び水返し片7hと支持部材101との隙間によって外気と室内空間とを通気する通気経路を形成することにより、高い防水性能を得ることができると共に、優れた施工性を実現することができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、当接片7fに接続する接続片6a及び下側通気抑え片6bを備える水返し部材6と、当接片7f、上側通気抑え片7g、上片7a、折り返し片7b、換気片7d、底片7e、水返し片7h及び水返し片7cを備える通気部材7と、により通気装置Bを構成することにより、水密部材を不要にすることができる。
【0097】
また、本実施の形態によれば、上側通気抑え片7gに設けられると共に、熱によって膨張することにより空間9cを閉塞する熱発泡部材8を有することにより、通気装置Bが火炎の熱を受けた際に、室内空間への火炎の吹き込みを完全に遮断することができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、上片7aに接続されると共に上片7aより下方に延設される換気片7dに換気穴7kを設けることにより、換気穴7kを軒下から見えないようにすることができ、意匠性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、水返し部材6及び通気部材7により通気装置Bを構成することにより、特許文献1と比較して部品点数を少なくすることができる。
【0100】
なお、本実施の形態において、熱発泡部材8を設けたが、これに限らず、熱発泡部材8を設けなくてもよい。
【0101】
また、本実施の形態において、通気部材7に換気片7dを設けたが、これに限らず、上片7aの右端より下方に折り曲げられると共に下方に向かって徐々に縦板104に近づくように延設させた換気穴を備える延設片と、この延設片から下方に垂下させた垂下片と、を設けると共にこの垂下片の下端と当接片7fの下端とを底片によって接続してもよい。
【0102】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0103】
具体的には、上記実施の形態1及び実施の形態2において、2つの部材を接続することによって通気装置を形成したが、これに限らず、1つの部材によって通気装置を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、建物の外壁側壁面と、外壁側壁面より隔てて設けられる支持部材に支持される破風、鼻隠し又は幕板等の縦板と、の間に設けられる通気装置に好適である。
【符号の説明】
【0105】
A 通気装置
B 通気装置
1 水返し部材
1a 当接片
1b 上側通気抑え片
1c 下側通気抑え片
1d 水返し片
2 通気部材
2a 上片
2b 折り返し片
2c 水返し片
2d 延設片
2e 垂下片
2f 底片
2g 側片
2h 接続片
2i 取付穴
2j 取付穴
2k 換気穴
3 水密部材
4 熱発泡部材
5a 空間
5b 空間
5c 空間
6 水返し部材
6a 接続片
6b 下側通気抑え片
7 通気部材
7a 上片
7b 折り返し片
7c 水返し片
7d 換気片
7e 底片
7f 当接片
7g 上側通気抑え片
7h 水返し片
7i 取付穴
7j 取付穴
7k 換気穴
8 熱発泡部材
9a 空間
9b 空間
9c 空間
100 外壁側壁面
101 支持部材
102 ネジ
103 ネジ
104 縦板
105 ネジ