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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023711
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】輪止め装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 3/00 20060101AFI20230209BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20230209BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B60T3/00
B66F9/075 Z
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129490
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】庄司 光孝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 政孝
(72)【発明者】
【氏名】船津 俊明
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333CA15
3F333FA08
(57)【要約】
【課題】車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供する。
【解決手段】輪止めユニット70は、一対のアーム部材82を揺動可能にX状に交差させて連結してなる交差リンク体81と、アーム部材82の長手方向の一端側に設けられてタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込まれる輪止め部材71と、一対のアーム部材82の揺動を一対の輪止め部材71のスライド移動に変換して、一対の輪止め部材71をスライド自在に支持するベースフレーム100と、一対の輪止め部材71を互いに接近する方向に付勢するフレームバネ107とを備え、一対の輪止め部材71をフレームバネ107の付勢力によりタイヤ車輪5に対して互いに相反する方向から挟み込みながら、輪止め部材71をタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込み可能に構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、
一対のアーム部材を揺動可能にX状に交差させて連結してなる交差リンク体と、
前記アーム部材の長手方向の一端側に設けられて、前記車両に設けられた車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込まれる輪止め部材と、
一対の前記アーム部材の揺動を一対の前記輪止め部材のスライド移動に変換して、一対の前記輪止め部材を互いに接近および離間する方向にスライド移動自在に支持する支持部材と、
一対の前記輪止め部材を互いに接近する方向に付勢する輪止め付勢部材とを備え、
一対の前記輪止め部材を前記輪止め付勢部材の付勢力により互いに接近する方向にスライド移動させて前記車輪に対して互いに相反する方向から挟み込みながら、前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込み可能に構成したことを特徴とする輪止め装置。
【請求項2】
前記アーム部材の長手方向の他端側に設けられて、前記車輪の踏み面に当接可能な案内部材を備え、
一対の前記案内部材を前記車輪の踏み面に当接させた状態で、一対の前記輪止め部材を前記車輪に対して互いに相反する方向から挟み込みながら、前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込み可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の輪止め装置。
【請求項3】
前記アーム部材は、前記支持部材に連結されたアーム本体部材と、前記案内部材に連結されて前記アーム本体部材に対して伸縮自在に設けられたアームヘッド部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の輪止め装置。
【請求項4】
前記アーム本体部材に対して前記アームヘッド部材を縮小方向に付勢するアーム付勢部材を備え、
前記案内部材を前記アーム付勢部材の付勢力により前記車輪の踏み面に当接可能に構成したことを特徴とする請求項3に記載の輪止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止めを設置することで車両の逸走防止を図っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐312455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車輪に対して輪止めが正しく設置されていなければ、輪止めの効果が十分に発揮されず、車両が逸走するリスクが残り、作業の安全性を十分に確保できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る輪止め装置は、駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、一対のアーム部材を揺動可能にX状に交差させて連結してなる交差リンク体と、前記アーム部材の長手方向の一端側に設けられて、前記車両に設けられた車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込まれる輪止め部材と、一対の前記アーム部材の揺動を一対の前記輪止め部材のスライド移動に変換して、一対の前記輪止め部材を互いに接近および離間する方向にスライド移動自在に支持する支持部材と、一対の前記輪止め部材を互いに接近する方向に付勢する輪止め付勢部材とを備え、一対の前記輪止め部材を前記輪止め付勢部材の付勢力により互いに接近する方向にスライド移動させて前記車輪に対して互いに相反する方向から挟み込みながら、前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込み可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
上記構成の輪止め装置において、前記アーム部材の長手方向の他端側に設けられて、前記車輪の踏み面に当接可能な案内部材を備え、一対の前記案内部材を前記車輪の踏み面に当接させた状態で、一対の前記輪止め部材を前記車輪に対して互いに相反する方向から挟み込みながら、前記輪止め部材を前記車輪の踏み面と駐車路面との間に差し込み可能に構成することが好ましい。
【0008】
また、上記構成の輪止め装置において、前記アーム部材は、前記支持部材に連結されたアーム本体部材と、前記案内部材に連結されて前記アーム本体部材に対して伸縮自在に設けられたアームヘッド部材とを備えて構成されることが好ましい。
【0009】
さらに、上記構成の輪止め装置において、前記アーム本体部材に対して前記アームヘッド部材を縮小方向に付勢するアーム付勢部材を備え、前記案内部材を前記アーム付勢部材の付勢力により前記車輪の踏み面に当接可能に構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る輪止め装置によれば、一対のアーム部材を開閉操作して一対の輪止め部材を輪止め付勢部材の付勢力により車輪の前後から挟み込むという簡単な作業で、各輪止め部材を車輪の前後に正しく設置することができるため、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、一対の輪止め部材が輪止め付勢部材の付勢力により車輪を前後から挟み込んで車輪の踏み面に対して押圧状態で密着することで、この踏み面との間に働く摩擦力の作用によって、輪止めユニット全体を車輪に対して所定姿勢(輪止め部材が車輪と駐車路面との間に差し込まれていたときの姿勢)を維持した状態で固定することができる。それにより、車両のジャッキアップ時に車輪を地面から浮かせたとしても、当該車輪に固定された状態で輪止め装置も地面から浮き上がることになるため、車両のジャッキダウン時に車輪を再び地面に接地させても、この車輪の前後に輪止め部材が正しく設置された状態とすることができ、ジャッキアップ時およびジャッキダウン時に車両が逸走するリスクを一層低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る高所作業車の側面図である。
図2】本実施形態に係る安全装置の機能ブロック図である。
図3】本実施形態の輪止めユニットをタイヤ車輪に設置した状態の斜視図である。
図4】上記輪止めユニットをタイヤ車輪に設置した状態の側面図である。
図5】上記輪止めユニットをタイヤ車輪に設置した状態の平面図である。
図6】上記輪止めユニットの輪止め部材の斜視図である。
図7】上記輪止めユニットのアーム部材の断面斜視図である。
図8】上記輪止めユニットのベースフレームの縦断面図である。
図9】上記ベースフレームの横断面図である。
図10】上記安全装置の輪止め検出装置の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0013】
高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0014】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0015】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作
業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0016】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0017】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0018】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0019】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0020】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0021】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油
の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0022】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面とタイヤ車輪5の踏み面(トレッド面)との間に楔形状の輪止め部材71(図3等を参照)を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。また、本実施形態では、タイヤ車輪5に輪止め部材71が正しく設置されていない状態で、ジャッキ10f,10rの作動操作が行われることを防止するための安全装置が備えられている。
【0023】
次に、本実施形態の輪止めユニット(輪止め装置)70の構造について図3図9を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、輪止め部材71の長さ方向(差し込み方向)を「前後方向」、輪止め部材71の幅方向を「左右方向」、輪止め部材71の高さ方向を「上下方向」と定めるが、輪止めユニット70(輪止め部材71)の配置方向を特定するものではない。また、輪止めユニット70の左右方向の向きとして、作業者と対向する側(後述の取手94が設けられている側)を「手前側」とも呼称し、タイヤ車輪5の外側面5aと対向する側(後述のローラ95が設けられている側)を「奥側」とも呼称する。
【0024】
輪止めユニット70は、タイヤ車輪5の踏み面5tと駐車路面Gとの間に差し込まれる一対の輪止め部材71(第1輪止め部材71A、第2輪止め部材71B)と、一対の輪止め部材71をスライド自在に支持するリンク機構80とを主体に構成される。一対の輪止め部材71は、左右対称の構成(実質的に同一の構成)であるため、同一構造の部位または同一の機能を有する部位には同一の符号を付して説明する。また、本実施形態においては、第1輪止め部材71Aと第2輪止め部材71Bとを特に区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して、単に「輪止め部材71」と呼称する。
【0025】
輪止め部材71は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材71は、駐車路面Gに接地される底部をなす接地部72と、タイヤ車輪5の踏み面5tに当接する車輪当接部73と、最上部を形成する頂部74と、接地部72と頂部74とを繋ぐ背面部75と、一対の側面部76とを有している。
【0026】
接地部72には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面に対する滑り止めをなす滑り止め部72aが形成されている。車輪当接部73は、輪止め部材71の先端側(タイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込まれる側)から基端側に向けて高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の踏み面5tに当接可能に構成されている。なお、この車輪当接部73は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。また、輪止め部材71の側面部76には、後述の外フレーム104の角棒108が挿入される固定孔76aが表裏に貫通形成されている。
【0027】
リンク機構80は、2本のアーム部材82(第1アーム部材82A、第2アーム部材82B)をX状に連結してなる交差リンク体81と、この2本のアーム部材82の下端部に連結されて一対の輪止め部材71を互いに接近する方向および離間する方向にスライド自在に支持するベースフレーム100とを備えて構成される。
【0028】
交差リンク体81は、第1アーム部材82Aおよび第2アーム部材82Bを備え、この第1アーム部材82Aおよび第2アーム部材82Bの中間部を揺動軸ピン83にてX状(パンタグラフ状)に連結して構成されている。なお、第1アーム部材82Aおよび第2アーム部材82Bは、長手方向の中間部の構成(後述の凹部85,86の構成)のみが異な
り、その他の構成は同一であるため、同一の部位については同一の符号を付して説明する。また、本実施形態においては、第1アーム部材82Aと第2アーム部材82Bとを特に区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して、単に「アーム部材82」と呼称する。
【0029】
アーム部材82は、揺動軸ピン83を中心に揺動自在なアーム本体84と、このアーム本体84に対して伸縮自在に挿入されたアームヘッド90とが入れ子式に組み合わされて構成されている。
【0030】
アーム本体84は、例えばスチール材やアルミ材などの金属材料を用いて角筒状に形成されている。アーム本体84の長手方向の一端側(下端側)にはベースフレーム100が取り付けられ、アーム本体84の長手方向の他端側(上端側)にはアームヘッド90が取り付けられている。アーム本体84の長手方向の中間部には、当該長手方向と直交する方向(左右方向)に延びる略円筒状の揺動軸ピン83が軸着されている。ここで、第1アーム部材82Aのアーム本体84の中間部には、第2アーム部材82B側(タイヤ車輪5の側面側)に向けて開放された凹部85が形成され、第2アーム部材82Bのアーム本体84の中間部には、第1アーム部材82A側(作業者側)に向けて開放された凹部86が形成されている。そして、この2本のアーム本体84を互いの凹部85,86同士を受け入れた状態で揺動軸ピン83により連結することで、この2本のアーム本体84が同一平面内でX状に交差した状態でそれぞれ揺動可能となる。なお、2本のアーム部材82の揺動中心(揺動軸ピン83の位置)は、輪止めユニット70がタイヤ車輪5に設置された状態(図4に示す状態)において、タイヤ車輪5の回転中心と略一致するように設計されている。
【0031】
アーム本体84の上端側には、アームヘッド90の下端側を受容するヘッド収容部87が空間形成されている。このヘッド収容部87内には、アーム本体84の長手方向と直交する方向(左右方向)に延びる固定側ピン88が取り付けられている。また、このヘッド収容部87の手前側の側面には、アーム本体84の長手方向に沿って延びる長溝89が表裏に貫通形成されている。
【0032】
アームヘッド90は、例えばスチール材やアルミ材などの金属材料を用いて形成されており、アーム本体84と同一方向に延びてアーム本体84のヘッド収容部87に挿入されるロッド部91と、このロッド部91の長手方向の中間部に設けられた取手(グリップ)94とを備えて構成される。
【0033】
ロッド部91は、アーム本体84のヘッド収容部87に収まる大きさの角筒状に形成されている。ロッド部91の下端側には、このロッド部91の長手方向に沿って延びる空洞部92が形成されており、この空洞部92に左右方向に延びる可動側ピン93が取り付けられている。この可動側ピン93の手前側は、長溝89に抜け止め状態で係合しており、アーム本体84に対するアームヘッド90の伸縮動に応じて長溝89に沿って移動自在になっている。取手94は、アーム部材82の揺動時や、輪止めユニット70の運搬時、設置時および撤去時などに作業者が把持する部分である。
【0034】
アームヘッド90の上端側には、自由回転可能なローラ95が片持ち状に取り付けられている。ローラ95は、例えば金属材料もしくは合成樹脂材料を用いて長尺の円筒状に形成されており、その外周面にタイヤ車輪5の踏み面5tを当接可能に構成されている。ローラ95は、取手94とは反対方向に突出した状態でロッド部91の先端側に取り付けられ、このロッド部92の先端側に設けられた回転軸ピン96を介してアーム部材82の揺動軸ピン83と平行な軸周りに回転自在に軸支されている。
【0035】
アーム本体84の固定側ピン88とアームヘッド90の可動側ピン93との間には、弾
性部材としてのアームバネ(引張コイルバネ)97が介装されている。アームバネ97は、一端側(図7の下端側)が固定側ピン88に係止され、他端側(図7の上端側)が可動側ピン93に係止されている。このアームバネ97は、アームヘッド90がアーム本体84に対して縮小する方向(可動側ピン93が固定側ピン88に接近する方向)に常時付勢する。
【0036】
ベースフレーム100は、前後方向に延びる内フレーム101と、この内フレーム101の両端部にスライド自在に連結される一対の外フレーム104(第1外フレーム104A、第2外フレーム104B)とを備えて構成されており、第1外フレーム104Aには第1アーム部材82Aが枢結され、第2外フレーム104Bには第2アーム部材82Bが枢結されている。第1外フレーム104Aおよび第2外フレーム104Bは、左右対称の構成(実質的に同一の構成)であるため、同一構造の部位または同一の機能を有する部位には同一の符号を付して説明する。また、本実施形態においては、第1外フレーム104Aと第2外フレーム104Bとを特に区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して、単に「外フレーム104」と呼称する。
【0037】
内フレーム101は、前後方向に沿って延びる中空の角筒状に形成されている。内フレーム101の中空部102には、後述のフレームバネ107が配設されている。この内フレーム101の長手方向(前後方向)の一端側は第1外フレーム104Aに挿入されており、内フレーム101の長手方向(前後方向)の他端側は第2外フレーム104Bに挿入されている。内フレーム101の手前側の側面には、外フレーム104のスライド方向(前後方向)に沿って延びる一対のガイド孔103が表裏に貫通形成されている。
【0038】
外フレーム104は、前後方向に延びる中空の角筒状に形成されている。この外フレーム104の中空部105には、内フレーム101の端部が入れ子式に挿入されており、この内フレーム101に対して外フレーム104が長手方向に相対移動自在(スライド自在)に組み合わされている。外フレーム104の長手方向の端部(内フレーム101が挿入される側の端部)には、該外フレーム104の左右の側壁に跨ってガイドピン106が固定されている。ガイドピン106は、外フレーム104のスライド方向と直交する方向に延びる細長い円筒状に形成されており、このガイドピン106を支点として、アーム部材82の下端部が外フレーム104に対して揺動可能に枢結されている。また、このガイドピン106は、内フレーム101のガイド孔103に抜け止め状態で挿通されており、このガイドピン106がガイド孔103に沿って前後方向に移動することで、外フレーム104のスライド動作が案内されるようになっている。
【0039】
内フレーム101の中空部102内において、第1外フレーム104Aのガイドピン106と第2外フレーム104Bのガイドピン106との間には、フレームバネ(引張コイルバネ)107が介装されている。フレームバネ107の一端側は、第1外フレーム104Aのガイドピン106に係止され、フレームバネ107の他端側は、第2外フレーム104Bのガイドピン106に係止されている。このフレームバネ107は、一対の外フレーム104A,104B同士が接近する方向、すなわち、一対の輪止め部材71が接近する方向に常時付勢する。
【0040】
外フレーム104の前後方向の外端側には、左右方向に延びる角棒108が挿通状態で固定されている。この角棒108は、輪止め部材71側に向けて突出しており、その突出端部は輪止め部材71の側面部76の固定孔76aに嵌合固定されている。この角棒108の突出長さ(外フレーム104の奥端から輪止め部材71へ向けて突出する長さ)は、タイヤ車輪5の外側面5aに外フレーム104の奥端を当接または近接させたときに、タイヤ車輪5の幅方向の中心と輪止め部材71の幅方向の中心とが一致する長さに設定されている。
【0041】
また、外フレーム104の上面側には、後述の輪止め検出装置110により検出される被検出体109が取り付けられている。被検出体109は、例えば、合成樹脂材料にアルミニウムなどの金属を蒸着させて反射面を形成してなる反射部材である。
【0042】
かかる構成のリンク機構80において、2本のアーム部材82は、長手方向の中間部に軸着された共通の揺動軸ピン83を中心として、互いに相反する方向(接近する方向または離間する方向)に揺動可能に構成されている。以下では、説明の便宜上、2本のアーム部材82の揺動方向として、互いのローラ95同士が接近する方向を「閉方向」と呼称し、互いのローラ95同士が離間する方向を「開方向」と呼称する。また、各アーム部材82は、アーム本体84に対してアームヘッド90を長手方向に沿って伸縮させることで、該アーム部材82の長さを変化させることができる。このアーム部材82の長さを変化させることで、アーム部材82の揺動中心(揺動軸ピン83)からローラ82までの距離を調整することができる。
【0043】
また、このリンク機構80において、2本のアーム部材82の揺動運動は、内フレーム101に対する外フレーム104の前後方向へのスライド運動(直線運動)に変換され、アーム部材82の揺動方向に応じたスライド方向に外フレーム104がスライドする。具体的には、2本のアーム部材82が開方向に揺動すると、外フレーム104同士が離間する方向(外向き方向)にスライドして、一対の輪止め部材71間の距離が離れることになる。一方、2本のアーム部材82が閉方向に揺動すると、外フレーム104同士が接近する方向(内向き方向)にスライドして、一対の輪止め部材71間の距離が縮まることになる。
【0044】
次に、本実施形態の輪止めユニット70を設置する手順について説明する。なお、この輪止めユニット70の設置作業は、目的の作業現場に停車した車両に対して、運転キャビン7内から駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて、左右の後輪5rを制動状態に保持してから行う。この高所作業車1の駐車路面Gが平坦地である場合には、少なくとも後輪5rに対して輪止めユニット70を設置し、駐車路面Gが傾斜地である場合には、全ての車輪5(前輪5fおよび後輪5r)に対して輪止めユニット70を設置する。
【0045】
まず、この輪止めユニット70を設置するには、2本のアーム部材82の取手94をそれぞれ把持して外向き方向に力を加えることで、この2本のアーム部材82を開方向に揺動させる。アーム部材82を開方向に揺動させると、アーム部材82の下端と外フレーム104とを枢結するガイドピン106がフレームバネ107の付勢力に抗してガイド孔103に沿って水平方向外側にスライドすることで、内フレーム101に対して外フレーム104が同方向にスライドする。それにより、一対の輪止め部材71が互いに離間する方向に移動して、一対の輪止め部材71間の距離が押し広げられる。このとき、取手95を把持してアーム部材82に加える外向き方向の力は、アーム部材82の長手方向と直交する方向に作用する力の成分(アーム部材82を開方向に揺動させる力の成分)と、アーム部材92の長手方向に作用する力の成分(アームヘッド90を伸長方向に移動させる力の成分)とに分解されることで、2本のアーム部材82を開方向に揺動させながら、それと同時にアーム本体84に対してアームヘッド90を伸長方向(突出方向)に移動させることができる。このようにアーム部材82を揺動させながらアーム部材90を長手方向に伸長させることで、このアーム部材82の端部に設けられたローラ95を揺動中心から離して、一対のローラ95と一対の輪止め部材71との間にタイヤ車輪5を受け入れるためのスペースを拡大させることができる。
【0046】
続いて、2本のアーム部材82を開いた状態で、輪止めユニット70をタイヤ車輪5の外側面5a側から挿入して、一対のローラ95をタイヤ車輪5の上方に配置するとともに
、一対の輪止め部材71をタイヤ車輪5の下方に配置する。
【0047】
続いて、取手95に加える力(アーム部材82を開く力)を緩めて、2本のアーム部材82をフレームバネ107の付勢力により閉方向に揺動させる。2本のアーム部材82が閉方向に揺動すると、アームバネ97の付勢力によりアーム本体84に対してアームヘッド90が縮小方向(格納方向)に移動して、ローラ95がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接して該踏み面5tに沿って転動する。また、2本のアーム部材82を閉方向に揺動させると、一対の外フレーム104が互いに接近する方向にスライドすることで、一対の輪止め部材71がタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に前後から差し込まれ、各輪止め部材71の車輪当接部73がタイヤ車輪5の踏み面5tに当接することになる。それにより、一対の輪止め部材71がタイヤ車輪5を前後から挟み込んだ状態で該タイヤ車輪5の前後の適正位置に設置されることで、ジャッキ10f,10rの張出作動時における車両の逸走を効果的に防止することが可能となる。
【0048】
輪止めユニット70の設置が完了した後は、下部操作装置27を操作して、ジャッキ10f,10rを伸長作動させることで、全てのタイヤ車輪5を地切りさせて、車両全体を持ち上げて支持する。このとき、輪止めユニット70は、一対の輪止め部材71がフレームバネ107の付勢力によりタイヤ車輪5を前後から挟み込み、各輪止め部材71がタイヤ車輪5の踏み面5tに対して押圧状態で密着することで、この踏み面5tとの間に働く摩擦力の作用によって、輪止めユニット70全体がタイヤ車輪5に対して所定姿勢(輪止め部材71がタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込まれていたときの姿勢)を維持した状態で固定されている。また、2本のアーム部材82をX状に交差させて一対のローラ95と一対の輪止め部材71との間でタイヤ車輪5を対角線上に挟み込むことで(4方向から挟み込むことで)、輪止めユニット70がタイヤ車輪5に対してより強固に固定されるとともに、輪止めユニット70全体がタイヤ車輪5に対して前後方向および上下方向に位置ずれや離脱することを防止する。このようにして輪止めユニット70は、前記の所定姿勢を自己保持した状態でタイヤ車輪5に固定される。それにより、ジャッキ10f,10rの伸長作動に応じてタイヤ車輪5が地面から離れた場合でも、輪止めユニット70はタイヤ車輪5に固定された状態(且つ抜け止め状態)で該タイヤ車輪5と共に地面から浮き上がることになる。
【0049】
そして、所要の高所作業が終了すると、下部操作装置27を操作して、ジャッキ10f,10rを格納作動(ジャッキ10f,10rの縮小作動)させることで、車両全体を降下させて再びタイヤ車輪5を駐車路面Gに接地させる。このとき、タイヤ車輪5には輪止めユニット70が所定姿勢で固定されているため、ジャッキ10f,10rの格納作動に応じてタイヤ車輪5が地面に接地したときに、このタイヤ車輪5の前後の適正位置に一対の輪止め部材71が設置された状態(タイヤ車輪5と駐車地面Gとの間に輪止め部材71が差し込まれた状態)とすることができる。それにより、ジャッキ10f,10rの格納作動時における車両の逸走を効果的に防止することが可能となる。なお、輪止めユニット70をタイヤ車輪5から脱着するには、基本的には、輪止めユニット70を設置するときの上記の手順と逆の手順を行えばよい(2本のアーム部材82を開方向に揺動させて、輪止めユニット70を手前側に引き抜けばよい)。
【0050】
なお、本実施形態では、車両をジャッキアップしたときに輪止め部材71に作用する力(フレームバネ107の弾性力、タイヤ車輪5と車輪当接部73との間の摩擦力、タイヤ車輪5から受ける抗力、輪止めユニット70全体の重量など)のつり合いを保つことにより(力のつり合い条件を満足することにより)、タイヤ車輪5に対する輪止め部材71の相対移動が抑制され、輪止めユニット70全体がタイヤ車輪5に対して固定されるようになっている。
【0051】
次に、本実施形態の高所作業車1に設けられた安全装置について説明する。本実施形態の安全装置は、図2等に示すように、タイヤ車輪5に設置された輪止めユニット70を検出する輪止め検出装置110と、車体2の傾斜を検出する車体傾斜検出器120と、車体2に設けられたコントローラ60とを備えて構成されている。
【0052】
輪止め検出装置110は、図2および図10に示すように、車体2の下部において左右の前輪5fの前方に取り付けられた一対の前輪側前設置輪止め検出器111(111L,111R)と、車体2の下部において左右の前輪5fの後方に取り付けられた一対の前輪側後設置輪止め検出器112(112L,112R)と、車体2の下部において左右の後輪5rの前方に取り付けられた一対の後輪側前設置輪止め検出器113(113L,113R)と、車体2の下部において左右の後輪5rの後方に取り付けられた一対の後輪側後設置輪止め検出器114(114L,114R)とを備えている。前輪側前設置輪止め検出器111は、前輪5fに設置された輪止めユニット70の2つの被検出体109のうち、前輪5fの前側に配置されている方の被検出体109を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。前輪側後設置輪止め検出器112は、前輪5fに設置された輪止めユニット70の2つの被検出体109のうち、前輪5fの後側に配置されている方の被検出体109を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。後輪側前設置輪止め検出器113は、後輪5rに設置された輪止めユニット70の2つの被検出体109のうち、後輪5rの前側に配置されている方の被検出体109を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。後輪側後設置輪止め検出器114は、後輪5rに設置された輪止めユニット70の2つの被検出体109のうち、後輪5rの後側に配置されている方の被検出体109を検出して、この検出信号をコントローラ60に出力する。
【0053】
各輪止め検出器111,112,113,114は、対象物に向けてレーザ光を照射する発光部(発光素子)と、対象物から反射した光を受光する受光部(受光素子)とを備えた反射型のレーザセンサである。各輪止め検出器111,112,113,114は、輪止めユニット70に設けられた被検出体(対象物)109からの反射光を検出することにより、輪止めユニット70がタイヤ車輪5(前輪5fまたは後輪5r)に設置されているか否かを検出する。本実施形態では、輪止めユニット70のベースフレーム100に設けられた2つの被検出体109をそれぞれ検出することで、タイヤ車輪5の側面位置にベースフレーム100が配置されたこと、すなわち、輪止めユニット70(一対の輪止め部材71)がタイヤ車輪5に対する適正位置に設置されたこと(輪止めユニット70が正しく設置されたこと)を検出する。
【0054】
車体傾斜検出器120は、水平面に対する車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出する。車体傾斜検出器120は、車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出して、その検出した傾斜角度に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。この車体2の傾斜角度は、例えば、車体2が前上がり(頭上げ)になっている状態では正の角度(プラスの角度)となり、車体2が前下がり(頭下げ)になっている状態では負の角度(マイナスの角度)となる。
【0055】
コントローラ60は、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め判定部63とを有している。
【0056】
作動制御部61は、前述したように、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、ブーム30やジャッキ10f,10rなどの作動を制御する。
【0057】
車体傾斜判定部62は、車体傾斜検出器120により検出された車体2の傾斜角度と、予め定められた所定角度範囲とを比較して、車体2の傾斜角度が所定角度範囲内である場
合には、車体2が水平姿勢である(駐車路面Gが平坦地である)ことを判定し、車体2の傾斜角度が所定角度範囲を超過している場合には、車体2が傾斜姿勢である(駐車路面Gが傾斜地である)ことを判定する。「所定角度範囲」は、車体2が水平姿勢であるとみなすことのできる角度範囲(例えば±3度)に設定されている。
【0058】
さらに、車体傾斜判定部62は、車体2の傾斜角度が所定角度範囲を超過していると判定した場合、すなわち、車体2が傾斜姿勢である(駐車路面Gが傾斜地である)ことを判定した場合には、車体2の傾斜角度が正の角度(プラスの角度)であるか負の角度(マイナスの角度)であるかを判定する。車体傾斜判定部62は、車体2の傾斜角度が正の角度である場合には、車体2が前上がりの傾斜姿勢(前上がり駐車)であると判定し、車体2の傾斜角度が負の角度である場合には、車体2が前下がりの傾斜姿勢(前下がり駐車)であると判定する。
【0059】
(駐車路面が平坦地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が水平姿勢である(駐車路面Gが平坦地である)と判定された場合、後輪側前設置輪止め検出器113および後輪側後設置輪止め検出器114からの検出情報に基づき、後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されているか否かを判定する(後輪5rの前後に輪止め部材71が正しく設置されているか否かを判定する)。この輪止め判定部63は、後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されていると判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を許可し、後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されていないと判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0060】
(駐車路面が前下がりの傾斜地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が前下がりの傾斜姿勢である(駐車路面Gが前下がりの傾斜地である)と判定された場合、前輪側前設置輪止め検出器111、前輪側後設置輪止め検出器112、後輪側前設置輪止め検出器113および後輪側後設置輪止め検出器114からの検出情報に基づき、前輪5fおよび後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されているか否かを判定する(少なくとも前輪5fの前側(坂下側)と後輪5rの前側(坂下側)とに輪止め70が正しく設置されているか否かを判定する)。この輪止め判定部63は、前輪5fおよび後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されていると判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を許可し、前輪5fおよび後輪5rに輪止めユニット70が正しく設置されていないと判定した場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0061】
(駐車路面が前上がりの傾斜地である場合)
輪止め判定部63は、車体傾斜判定部62により車体2が前上がりの傾斜姿勢である(駐車路面Gが前上がりの傾斜地である)と判定された場合には、車体2が不安定な状態でのジャッキ10f,10rの伸縮作動となるおそれがあるため、各輪止め検出器111,112,113,114からの検出情報の如何を問わず(輪止めユニット70が正しく設置されているかどうかを問わず)、ジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。
【0062】
なお、このような輪止め判定部63によるジャッキ10f,10rの作動規制は、ジャッキ操作が行われても作動制御部61がその操作信号を受け付けないようにする、あるいは、作動制御部61がジャッキ操作に基づく操作信号を受け付けたとしてもジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1を電磁駆動しないようにする、など作動制御部61に対して動作制限が課されるようにすることにより行われる。
【0063】
以上、本実施形態によれば、2本のアーム部材82を開閉操作して一対の輪止め部材71をフレームバネ107の付勢力によりタイヤ車輪5の前後から挟み込むという簡単な作
業で、各輪止め部材71をタイヤ車輪5の前後に正しく設置することができるため、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。また、一対の輪止め部材71がフレームバネ107の付勢力によりタイヤ車輪5を前後から挟み込んでタイヤ車輪5の踏み面5tに対して押圧状態で密着することで、この踏み面5tとの間に働く摩擦力の作用によって、輪止めユニット70全体をタイヤ車輪5に対して所定姿勢(輪止め部材71がタイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込まれていたときの姿勢)を維持した状態で固定することができる。それにより、車両のジャッキアップ時にタイヤ車輪5を地面から浮かせたとしても、当該タイヤ車輪5に固定された状態で輪止めユニット70も地面から浮き上がることになるため、車両のジャッキダウン時にタイヤ車輪5を再び地面に接地させても、このタイヤ車輪5の前後に輪止め部材71が正しく設置された状態とすることができ、ジャッキアップ時およびジャッキダウン時に車両が逸走するリスクを一層低減することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、2本のアーム部材82をX状に交差させて一対のローラ95と一対の輪止め部材71との間でタイヤ車輪5を対角線上に挟み込むことで(4方向から挟み込むことで)、輪止めユニット70をタイヤ車輪5に対してより強固に固定することができるとともに、タイヤ車輪5に対して前後方向および上下方向に位置ずれや離脱することを防止することができるため、ジャッキアップ時における輪止め部材71の抜け止めをより確実なものとして、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態によれば、アーム部材82を長手方向に伸縮可能に構成することで、タイヤ車輪5の直径に合わせてアーム部材82の長さを調整することができるため、あらゆるサイズのタイヤ車輪5に適応可能となり(タイヤ車輪5のサイズに応じて輪止めユニット70を使い分ける必要もなく)、輪止めユニット70の設置や管理、保管が容易になる。
【0066】
また、本実施形態によれば、アーム部材70の手前側に取手94が設けられ、この取手94を把持してタイヤ車輪5の左右外側から輪止めユニット70の設置作業を行うことができるため、車体2の下方に潜り込むことなく容易な姿勢で作業を行うことができ、作業者の手足や衣服が汚れ難くなるとともに、作業性および安全性を向上させることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、輪止めユニット70の外フレーム104(輪止め部材71と一体的にスライドする部分)に検出体109を設けて、輪止め検出装置110により該検出体109を検出することで、輪止めユニット70がタイヤ車輪5に対して適正な位置に設置されたことを検出できるため、作業者が誤って輪止めユニット70の設置を忘れたり、輪止めユニット70の設置位置がばらついたりするといった、ヒューマンエラーを防止することが可能になるとともに、タイヤ車輪5に輪止めユニット70が設置されていない状態で作業が開始されること(例えばジャッキ10f,10rの伸縮作動が行われること)が未然に防止され、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0069】
上記実施形態では、被検出体109を反射部材により構成して、この反射部材をレーザセンサ(輪止め検出器111~114)により検出するように構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、被検出体109をICタグにより構成して、このICタグをICタグリーダ(輪止め検出器111~114)により検出するように構成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、外フレーム104の上面の外端側に被検出体109を設けているが、この構成に限定されるものではなく、例えば検出方式や作業環境などに応じて被検出体109の設置位置は適宜変更可能であり、その一例としてはアーム部材82の揺動中心(揺動軸ピン83)や、アームヘッド90の上端面、外フレーム104の外側面、輪止め部材71の背面部75、角棒108の上端面などを挙げることができる。また、輪止め検出器111~114の検出部は、輪止めユニット70がタイヤ車輪5に正しく設置された状態で、被検出体109に向けて指向していることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態において、車両のジャッキアップ時に輪止めユニット70をタイヤ車輪5に所定姿勢(タイヤ車輪5と駐車地面Gとの間に輪止め部材71が差し込まれた状態)で拘束するためのロック機構として、内フレーム101に対する外フレーム104のスライドを規制するスライドロック機構や、アーム部材82の揺動を規制する揺動ロック機構などを設けてもよい。なお、このロック機構としては、例えばインデックスプランジャなどが適用可能である。
【0072】
上記実施形態では、本発明に係る車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
5a 外側面
5t 踏み面
10 ジャッキ装置
27 下部操作装置
45 上部操作装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 車体傾斜判定部
63 輪止め判定部
70 輪止めユニット(輪止め装置)
71 輪止め部材
72 接地部
73 車輪当接部
80 リンク機構
81 交差リンク体
82 アーム部材
83 揺動軸ピン
84 アーム本体(アーム本体部材)
90 アームヘッド(アームヘッド部材)
95 ローラ(案内部材)
97 アームバネ(アーム付勢部材)
100 ベースフレーム(支持部材)
101 内フレーム
104 外フレーム
107 フレームバネ(輪止め付勢部材)
110 輪止め検出装置
111 前輪側前設置輪止め検出器
112 前輪側後設置輪止め検出器
113 後輪側前設置輪止め検出器
114 後輪側後設置輪止め検出器
120 車体傾斜検出器
G 駐車路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10