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特開2023-23734局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023734
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプ
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/267 20060101AFI20230209BHJP
   A61C 13/01 20060101ALI20230209BHJP
   A61C 13/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A61C13/267
A61C13/01
A61C13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129524
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】521348513
【氏名又は名称】株式会社ベレッツァミリングセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】尾瀬 和久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴紀
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159FF11
4C159JJ02
4C159JJ15
(57)【要約】
【課題】容易に製造することができるようにした局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプを提供する。
【解決手段】この局部床義歯用の金属床ユニット10は、口腔A内の歯の欠損部Cを覆う土台の部分であり、人工歯2を保持する義歯用フレーム11と、欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けるクラスプ12と、を別体で備えている。クラスプ12は、義歯用フレーム11に重なり合う座部122と、当該座部122に形成されたクラスプ側嵌合部(嵌合孔部)122aとを備えている。義歯用フレーム11は、クラスプ側嵌合部122aに嵌合する義歯用フレーム側嵌合部(嵌合凸部)111bを備えている。義歯用フレーム側嵌合部111bとクラスプ側嵌合部122aとが連結されることにより、義歯用フレーム11とクラスプ12とが一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームと、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けるクラスプと、を別体で備え、
前記クラスプは、前記義歯用フレームに重なり合う座部と、当該座部に形成されたクラスプ側嵌合部とを備え、
前記義歯用フレームは、前記クラスプ側嵌合部に嵌合する義歯用フレーム側嵌合部を備え、
前記義歯用フレーム側嵌合部と前記クラスプ側嵌合部とが連結されることにより、前記義歯用フレームと前記クラスプとが一体化されている、
局部床義歯用の金属床ユニット。
【請求項2】
前記クラスプ側嵌合部と前記義歯用フレーム側嵌合部は、一方が孔部又は凹部、他方が凸部に形成されている、
請求項1に記載の局部床義歯用の金属床ユニット。
【請求項3】
前記義歯用フレームと前記クラスプとは、同じ素材又は異なる素材とされている、
請求項1又は2に記載の局部床義歯用の金属床ユニット。
【請求項4】
前記クラスプ側嵌合部と前記義歯用フレーム側嵌合部は、円形で2か所以上に形成され、又は楕円形若しくは長円形で1か所以上に形成されている、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の局部床義歯用の金属床ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の局部床義歯用の金属床ユニットと、
前記義歯用フレームの表面を覆うレジン部と、
前記義歯用フレームに保持され、前記レジン部に配列された人工歯と、
を備えている、
局部床義歯。
【請求項6】
口腔内の歯の欠損部を覆い、人工歯を保持する土台の部分であり、義歯用フレーム側嵌合部を有する義歯用フレームを形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部に嵌合するクラスプ側嵌合部を有し、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けるクラスプを形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部と前記クラスプ側嵌合部とを連結し、前記義歯用フレームと前記クラスプとを一体化する工程と、
を含んでいる局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記義歯用フレーム及び前記クラスプの少なくともいずれか一方は、CADデータによるNC加工機の切削加工によって加工される、
請求項6に記載の局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法。
【請求項8】
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームと別体に形成されたクラスプであって、
前記義歯用フレームに形成された義歯用フレーム側嵌合部に連結されるクラスプ側嵌合部を備えている、
クラスプ。
【請求項9】
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームであって、
前記義歯用フレームとは別体に形成され、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けられるクラスプに形成されたクラスプ側嵌合部に連結される義歯用フレーム側嵌合部を備えている、
義歯用フレーム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の歯が1本から数本にわたったって欠損しているときに使用する局部床(しょう)義歯、この局部床義歯に備えられた局部床義歯用の金属床ユニット、この局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、局部床義歯用の金属床ユニットを構成する義歯用フレーム及びクラスプに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の歯が1本だけ欠損した場合から歯が1本しか残っていない場合において、その歯の欠損部は局部床義歯によって補綴(ほてつ)される。局部床義歯は、クラスプを有する義歯床や人工歯などを備えている。
【0003】
義歯床は、歯の欠損部などを覆い、歯茎と称される歯肉にぴったりと合う土台の部分である。義歯床は、製造される材質によって金属床とレジン床とに大別される。金属床は、金属床ユニットとレジン部とが一体化されている。レジン床は、金属床を備えず、すべてレジンによって形成されている。レジン床は、金属床に比べて強度が落ちるというデメリット、厚みがあるため違和感が多いというデメリット、熱伝導が悪いというデメリットなど種々のデメリットがある。金属床は、強度に優れた金属によって薄く形成された金属床ユニットを備えている。金属床は、厚みの薄い金属床ユニットにより、違和感が少ないというメリット、熱伝導のよさによって味覚を損ねないというメリットなど種々のメリットがある。
【0004】
人工歯は、樹脂や樹脂とセラミックの粉末から成る複合材料などで人工的に作られ、義歯床に保持される。クラスプは、欠損部に隣り合った鉤(こう)歯(支台歯)の上部にバネのように引っ掛かる金属鉤であり、人工歯や義歯床を安定させる。クラスプは、鉤歯を掴めるような変形C字形状や種々の形状に成形されている。局部床義歯は、クラスプが鉤歯をしっかりと把持することで、人工歯を欠損部に補綴し、咀嚼時などに固定することができる。
【0005】
クラスプを有する金属床ユニットを製造する従来の方法は、多数の工程を含む。すなわち、まず、患者の口腔内を印象採得(型取り)して石膏模型を製作する。次に、サベイヤーという装置などを用いて石膏模型上に設計を行い、この石膏模型を再度、印象採得する。次に、その印象採得した型に耐火材を流し込むことにより、耐火模型を製作する。次に、耐火模型上に設計を描記してワックスを用いて金属床形状を形成し、金属の流路を形成する。それらを類似の耐火材で埋没して鋳型を完成させる。鋳型には、電気炉内にて内部のワックスが焼却されることで、空洞部が設けられる。この空洞部には、融けた金属が流し込まれることによって、金属床の原型が成型(鋳造)される。金属床の原型は、鋳型から取り出され、研磨作業及び石膏模型への適合作業を経る。このようにして、所定の形状の金属床が完成する。
【0006】
なお、義歯床とクラスプとを一体した超塑性合金板製義歯床の製造方法が特許文献1に記載されている。この超塑性合金板製義歯床の製造方法は、残存した鉤歯(特許文献1では残留歯)が存在する状態で型取りした後、鉤歯のアンダーカット部と鉤歯側面との立ち上がり角が90°以上となるようにし、成形型を用いて超塑性合金素材板の超塑性加工を行い、得られた成形体の残留歯相当部位からクラスプ(特許文献1では「クラスプ部」)を切り出し加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2542297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サベイヤーなどを用いて金属床ユニットを製造する従来の方法は、描記した設計を耐火模型上へ正確に転写することを目的に石膏模型を印象採得することができる。しかし、描記した設計を耐火模型上へ正確に転写することは困難であるる。さらに、金属床ユニットを製造する従来の方法は、ワックスで形成した部品の厚みなどを確認できないなどの操作上の問題もある。
【0009】
さらに、鋳造された金属床は、鋳造工程で金属の品質が劣化する。また鋳造によって金属床ユニットを製造する従来の方法では、サンドブラストや電解研磨などによって酸化膜を除去する作業が必要である。しかし、研磨作業も難易度が高いため、従来の製造方法は、酸化膜を除去するための手間暇が掛かったり、酸化膜を完全に除去できなかったりすることがある。
【0010】
さらに、鋳造体の石膏模型への適合作業は、金属床ユニットの義歯用フレームに多くのクラスプが金属床に取り付けられる場合、すべて鉤歯に同時に適合させるとなると、クラスプは、患者ごとに形状や向きが異なっていることから、従来の製造方法は、この作業にも手間暇が掛かる。
【0011】
また、特許文献1に記載された超塑性合金板製義歯床の製造方法は、得られた成形体の鉤歯相当部位からクラスプを切り出し加工する工程を含んでいる。このクラスプは、鉤歯から外れないように金属床側を窄(すぼ)めた形状に加工される。しかし、このような加工は、手間暇が掛かる。
【0012】
本発明は、容易に製造することができるようにした局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットは、
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームと、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けるクラスプと、を別体で備え、
前記クラスプは、前記義歯用フレームに重なり合う座部と、当該座部に形成されたクラスプ側嵌合部とを備え、
前記義歯用フレームは、前記クラスプ側嵌合部に嵌合する義歯用フレーム側嵌合部を備え、
前記義歯用フレーム側嵌合部と前記クラスプ側嵌合部とが連結されることにより、前記義歯用フレームと前記クラスプとが一体化されている。
【0014】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットにおいて、
前記クラスプ側嵌合部と前記義歯用フレーム側嵌合部は、一方が孔部又は凹部、他方が凸部に形成されている。
【0015】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットにおいて、
前記義歯用フレームと前記クラスプとは、同じ素材又は異なる素材とされている。
【0016】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットにおいて、
前記嵌合部クラスプ側嵌合部と前記義歯用フレーム側は、円形で2か所以上に形成され、又は楕円形若しくは長円形で1か所以上に形成されている。
【0017】
本発明に係る局部床義歯は、
前記いずれかの本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットと、
前記義歯用フレームの表面を覆うレジン部と、
前記義歯用フレームに保持され、前記レジン部に配列された人工歯と、
を備えている。
【0018】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法は、
口腔内の歯の欠損部を覆い、人工歯を保持する土台の部分であり、義歯用フレーム側嵌合部を有する義歯用フレームを形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部に嵌合するクラスプ側嵌合部を有し、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けるクラスプを形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部と前記クラスプ側嵌合部とを連結し、前記義歯用フレームと前記クラスプとを一体化する工程と、
を含んでいる。
【0019】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法において、
前記義歯用フレーム及び前記クラスプの少なくともいずれか一方は、CADデータによるNC加工機の切削加工によって加工される。
【0020】
本発明に係るクラスプは、
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームと別体に形成されたクラスプであって、
前記義歯用フレームに形成された義歯用フレーム側嵌合部に連結されるクラスプ側嵌合部を備えている。
【0021】
本発明に係る義歯床は、
口腔内の歯の欠損部を覆う土台の部分であり、人工歯を保持する義歯用フレームであって、
前記義歯用フレームとは別体に形成され、前記欠損部に隣り合う鉤歯に引っ掛けられるクラスプに形成されたクラスプ側嵌合部に連結される義歯用フレーム側嵌合部を備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容易に製造し、品質を向上させることができるようにした局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】口腔内及び本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示し、(a)は口腔内の上顎を下方から見た斜視図であり、(b)は金属床ユニットを下から見た斜視図である。
図2】本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を下から見た分解斜視図であって、(a)は義歯床フレームの斜視図、(b)、(c)、(d)は異なるクラスプの斜視図である。
図3】本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示す正面図あって、(a)は義歯用フレームの正面図、(b)、(c)、(d)は異なるクラスプの正面図である。
図4】本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示す正面図である。
図5】本発明に係る金属床ユニットを口腔内に装着した状態を示す概略図である。
図6】本発明に係る局部床義歯を口腔内に装着した状態を示す正面図である。
図7】本発明に係るクラスプの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯、局部床義歯用の金属床ユニット、局部床義歯用の金属床ユニットの製造方法、義歯用フレーム及びクラスプの一の実施形態について図1乃至図6を参照しながら説明する。図1は、口腔内及び本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示し、(a)は口腔内の上顎を下方から見た斜視図であり、(b)は金属床ユニットを下から見た斜視図である。図2は、本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を下から見た分解斜視図であって、(a)は義歯床フレームの斜視図、(b)、(c)、(d)は異なるクラスプの斜視図である。図3は、本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示す正面図あって、(a)は義歯用フレームの正面図、(b)、(c)、(d)は異なるクラスプの正面図である。図4は、本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニットの一実施形態を示す正面図である。図5は、本発明に係る金属床ユニットを口腔内に装着した状態を示す概略図である。図6は、本発明に係る局部床義歯を口腔内に装着した状態を示す正面図である。
【0025】
口腔A内の1本ないし複数本の歯が欠損しているときは、局部床義歯が使用される。図1乃至図6に示す局部床義歯は、口腔A内の上側の歯の欠損部Kを補綴するため、上顎(あご)Bに装着される。図1は、上顎Bを下方から見た状態を示している。図1図5及び図6に示す口腔Aには、左上5番の歯及び左上6番の歯(以下、2本の歯を含めて「左上奥歯」という。)と、右上5番の歯ないし右上7番の歯(以下、3本の歯を「右上奥歯」という。)と、が欠けた欠損部Cがある。
【0026】
このような欠損部Cを補綴する局部床義歯は、義歯床1と人工歯2(ともに図6参照)とによって構成されている。義歯床1は、金属床ユニット10とレジン部20(図6参照)とを一体化したものである。なお、図1及び図5では、金属床ユニット10の特徴が表れるようにするため、局部床義歯が備える人工歯2及びレジン部20を描いていない。図2及び図3に示すように、金属床ユニット10は、別体で形成された義歯用フレーム11とクラスプ12とを一体化している。なお、図3乃至図6は、下から見た金属床ユニット10を上から見たように描いているため、図1及び図2と向きが逆になっている。
【0027】
義歯用フレーム11は、純チタンやチタン合金、コバルトクロム合金、金合金、パラジウム合金などの金属によって、薄肉に一体に形成された歯台部111と大連結子112とを備えている。歯台部111と大連結子112は、CADデータによるNC加工機の切削加工により一体成形されている。鋳造によって成形された義歯用フレーム11は、鋳造欠陥によって、さらに酸化反応層が発生することによって品質が低下する。しかし、切削加工された義歯用フレーム11は、鋳造欠陥のような品質低下がないだけでなく、鋳造によって形成されるような酸化反応層を研磨する作業を解消することができる。
【0028】
義歯用フレーム11の歯台部111は、レジン部20を介在させて歯肉にぴったりと合う土台の部分であり、歯の欠損部Cを覆い、人工歯2の根元を固定する。換言すれば、人工歯2は、義歯用フレーム11に保持され、レジン部20に配列される。歯台部111には、パンチングメタルのように多数の小孔111aが形成されている。図示した歯台部111は、左上奥歯の欠損部Cと右上奥歯の欠損部Cを覆うように左右に備えられている。図示した義歯用フレーム11では、左上奥歯の欠損部Cを補綴する左側の歯台部111(図3乃至図6では右側に図示)が短く、右上奥歯の欠損部Cを補綴する右側の歯台部111(図3乃至図6では左側に図示)が長く形成されている。左側の歯台部111と右側の歯台部111とは、大連結子112によって連結されている。大連結子112は、上顎Bに沿うようにアーチ状に成形されている。
【0029】
義歯用フレーム11の各歯台部111には、義歯用フレーム側嵌合部111bが設けられている。義歯用フレーム側嵌合部111bは、欠損部Cに隣り合う位置に突起のような凸部で設けられている。この義歯用フレーム側嵌合部111bを以下、主として「嵌合凸部111b」という。嵌合凸部111bは、右側の歯台部111と左側の歯台部111とに設けられている。右側の歯台部111の嵌合凸部111bは、左上4番の歯付近の内寄りと、左上7番歯付近の外寄りとに、斜交いに並んで長円形柱状に設けられる。左側の歯台部111の嵌合凸部111bは、近接して2個並んで円柱状に設けられる。
【0030】
クラスプ12は、欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けられ、局部床義歯がずれないようにする。クラスプ12は、CADデータによるNC加工機の切削加工によって、義歯用フレーム11とは別体に形成される。クラスプ12は、義歯用フレーム11と同一又は同質の純チタンやチタン合金、コバルトクロム合金、金合金、パラジウム合金などの材質で作られる。すなわち、義歯用フレーム11が純チタンやチタン合金で径生成されるときは、クラスプ12も純チタンやチタン合金で形成される。義歯用フレーム11がコバルトクロム合金で作られるときは、クラスプ12もコバルトクロム合金で形成される。このような材質によって形成されたクラスプ12には、鋳造欠陥のような品質低下がないだけでなく、酸化反応層を研磨する作業を解消することができる。
【0031】
このようなクラスプ12は、把持部121と、座部122と、起立部123と、が一体成形されている。把持部121は、鉤歯Dを掴む変形C字状に形成され、人工歯2を安定させる。把持部121に掴まれる鉤歯Dは、種々の複雑な形状をしている。また、クラスプ12の中心には、鉤歯Dの端面に引っ掛かるレスト124が突設されている。したがって、把持部121も鉤歯Dに合わせて種々の複雑な形状に形成される。
【0032】
把持部121は、義歯用フレーム11と別体で、CADデータによるNC加工機の切削加工によって形成される。したがって、クラスプ12は、義歯用フレーム11と一体に形成されるよりも容易に形成することができる。また、クラスプ12は、鉤歯Dの根元側が縮径するようなアンダーカットを容易に形成することができる。
【0033】
クラスプ12の座部122は、義歯用フレーム11の歯台部111の表面に重なる部分で、クラスプ側嵌合部122aが設けられている。このクラスプ側嵌合部122aは、義歯用フレーム11の歯台部111に設けられた嵌合凸部111bに嵌合する。したがって、クラスプ側嵌合部122aは、長円形又は円形の貫通穴によって形成される。クラスプ側嵌合部122aを以下、主として「嵌合孔部122a」という。
【0034】
義歯用フレーム11の左の歯台部111が短いため、左上奥側には座部122が短い2個のクラスプ12が固定される。座部122が短いクラスプ12には、長円形の嵌合孔が形成される。義歯用フレーム11の右の歯台部111が長いため、右上奥には座部122が長い1個のクラスプ12が固定される。座部122が長いクラスプ12には2個の円形の嵌合孔部122aが形成される。
【0035】
座部122は、鉤歯Dの根元側に隣り合う歯台部111側に重ねられるように設けられ、把持部121は鉤歯Dの先端側を掴む側に設けられるため、座部122と把持部121とは段違いになっている。したがって、座部122と把持部121とは、起立部123によって連結されている。起立部123は、座部122の先端部からカーブするように延長して把持部121の中間部を接続するように形成される。
【0036】
図4に示すように、クラスプ12と義歯用フレーム11とは、嵌合凸部111bが嵌合孔部122aに嵌め込まれることで所定の位置で所定の向きに一体化される。左奥側の2個のクラスプ12は、座部122が短いため、義歯用フレーム11の短い歯台部111に固定することができる。また、左奥側の2個のクラスプ12は、嵌合凸部111bが長円形柱状に形成され、嵌合孔部122a長円形に形成され、両者122a,111bが嵌合するため、左奥側のクラスプ12は、嵌合凸部111bを軸にして向きが変わるようなことがない。右側のクラスプ12は、2個の円形の嵌合孔部122aに右側の歯台部111の嵌合凸部111bが嵌入することで、所定の位置に所定の向きで歯台部111に固定される。
【0037】
クラスプ12と義歯用フレーム11とは、同一又は同質の素材によって形成されているため、例えばレーザ溶接によって両者12,11を一体化し、金属床ユニット10を形成することができる。嵌合凸部111bは、溶接によって先端側が広がるため、固定力が向上する。金属床ユニット10は、複雑な形状のクラスプ12と複雑な形状の義歯用フレーム11とを一体成形したものであり、全体としても複雑な形状をしている。しかし、クラスプ12と義歯用フレーム11とは、それぞれCADデータによるNC加工機の切削加工によって形成されるため、金属床ユニット10も容易に形成することができる。
【0038】
図6に示すように、クラスプ12を一体化した義歯用フレーム11の歯台部111の表面がレジン部20で覆われると義歯床1が完成する。レジン部20は、歯肉のようにピンク色をした樹脂であり、義歯床1を装着していることを目立ちにくくする。レジン部20は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂(化学重合タイプでPMMA-MMA系の粉液混合タイプ)のレジンによって成形される。図6に示したレジン部20は、大連結子112を覆っていない。熱可塑性樹脂からなるレジンは、高温で溶融された状態で型に填入されて成形される。熱硬化性樹脂からなるレジンは、完全重合前の餅状化状態で型に填入される。いずれのレジンも、義歯用フレーム11の小孔111a内に充填される状態となり、硬化したときに義歯用フレーム11の歯台部111と分離できないように一体化される。
【0039】
義歯用フレーム11の歯台部111をレジン部20が覆い、義歯用フレーム11の支台部に人工歯2が固定されると、局部床義歯が完成する。図6に示すように、この局部床義歯は、口腔A内に装着される。局部床義歯の人工歯2が欠損部Cに補綴される。レジン部20を備えていない金属床ユニット10と人工歯2を備えていない局部床義歯は、図5に示すような位置関係で口腔A内に装着される。
【0040】
局部床義歯のクラスプ12が鉤歯Dを把持する。クラスプ12の中心に突設されたレスト124が鉤歯Dに引っ掛かる。クラスプ12は、アンダーカットを有することから、鉤歯Dからより外れにくくなっている。また、レスト124が鉤歯Dに咬合力を負担させたり、咬合による局部床義歯の沈下を防止させたりする。歯台部111が左側と右側とに離れていても、左右の歯台部111が大連結子112によって連結されていることから、左右の歯台部111に固定された人工歯2は、安定する。
【0041】
したがって、この局部床義歯は、口腔A内から外れることなく、長期間、安定して使用することができる。
【0042】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10、局部床義歯用の金属床ユニット10の製造方法、義歯床1及びクラスプ12の実施の形態は、前記内容に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で変形や改良などを含む。
【0043】
例えば、クラスプ12は、図7に示すような形状に形成してもよい。図7は、本発明に係るクラスプ12の変形例を示す正面図である。このクラスプ12のクラスプ側嵌合部122aは、彎曲状に複数か所(図7では3か所)に形成される。図示しないが、この場合は、このクラスプ側嵌合部122aに嵌合する義歯用フレーム側嵌合部111bが義歯用フレーム11の歯台部111に形成される。
【0044】
前記実施の形態の局部床義歯用の金属床ユニット10は、義歯用フレーム11に嵌合凸部111bが形成され、クラスプ12に嵌合孔部122aが形成された。しかし、金属床ユニット10は、義歯用フレーム11に嵌合孔部122aが形成され、クラスプ12に嵌合凸部が形成されてもよい。また、前記実施の形態の金属床ユニット10は、左側の歯台部111に2個の円柱状の嵌合凸部111bを設け、左側のクラスプ12に2個の円形の嵌合孔部122aを形成した。しかし、左側の歯台部111に1個の長円形柱状の嵌合凸部111bを設け、左側のクラスプ12に1個の長円形の嵌合孔部122aを形成してもよい。また、左側の歯台部111に長円形の嵌合孔部122aを形成し、左側のクラスプ12に長円形の嵌合凸部を設けてもよい。また、クラスプ側嵌合部122aは嵌合孔部122aによって形成されるとした。しかし、クラスプ側嵌合部122aは窪みになどによって形成してもよい。
【0045】
前記実施の形態では、金属床ユニット10は義歯用フレーム11とクラスプ12とが同じ材質であるとした。しかし、金属床ユニット10は、歯台部111と大連結子112とからなる義歯用フレーム11など強度が必要な部分に強度の高い金属を使用し、クラスプ12など強度を与えたくない部分に靭性が高い金属を使用してもよい。義歯用フレーム11とクラスプ12とが異なる素材とされるときは、接着剤などによって両者11,12を固定する。
【0046】
前記実施の形態では、左上奥歯及び右上奥歯が欠損している歯を補綴する場合について説明した。しかし、局部床義歯は、左上奥歯だけ又は右上奥歯が欠損しているだけでなく、下の歯が欠損している場合でも実施することができる。左上奥歯若しくは右上奥歯が欠損している場合、又は左下奥歯若しくは右下奥歯が欠損している場合に使用する義歯床1フレームは、大連結子112を備えず、歯台部111によって構成される。
【0047】
前記実施の形態では、クラスプ12と義歯用フレーム11とは、それぞれCADデータによるNC加工機の切削加工によって形成されるとした。しかし、クラスプ12と義歯用フレーム11はCADデータによらない切削加工によって形成してもよいし、鍛造などによって形成してもよい。また、嵌合凸部111bと義歯用フレーム11の本体とは別体に形成し、両者を溶接、ろう付け、又は接着剤などによって一体化してもよい。
【0048】
以上まとめると、本発明が適用されるパーティションは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態をとることができる。
【0049】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10は、
口腔A内の歯の欠損部Cを覆う土台の部分であり、人工歯2を保持する義歯用フレーム11と、前記欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けるクラスプ12と、を別体で備え、
前記クラスプ12は、前記義歯用フレーム11に重なり合う座部122と、当該座部122に形成されたクラスプ側嵌合部122aとを備え、
前記義歯用フレーム11は、前記クラスプ側嵌合部122aに嵌合する義歯用フレーム側嵌合部111bを備え、
前記義歯用フレーム側嵌合部111bと前記クラスプ側嵌合部122aとが連結されることにより、前記義歯用フレーム11と前記クラスプ12とが一体化されている。
【0050】
この金属床ユニット10は、義歯用フレーム11とクラスプ12とが別体で形成され、それぞれに形成された義歯用フレーム側嵌合部111bと前記クラスプ側嵌合部122aとが連結されることによって一体化されるため、複雑な形状のクラスプ12を容易に形成することができる。
【0051】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10において、
前記クラスプ側嵌合部122aと前記義歯用フレーム側嵌合部111bは、一方が孔部又は凹部、他方が凸部に形成されている。
【0052】
この金属床ユニット10は、クラスプ側嵌合部122aと義歯用フレーム側嵌合部111bは、一方が孔部又は凹部、他方が凸部に形成されていることにより、義歯用フレーム側嵌合部111bと前記クラスプ側嵌合部122aとを容易に連結することができる。
【0053】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10において、
前記義歯用フレーム11と前記クラスプ12とは、同じ素材又は異なる素材とされている。
【0054】
この金属床ユニット10は、義歯用フレーム11とクラスプ12とが同じ素材によって形成されていることにより、レーザ溶接などによって容易に強固に両者11,12を一体化することができる。強固に一体化された義歯用フレーム11とクラスプ12とは、口腔A内で破損することがない。義歯用フレーム11とクラスプ12とを異なる素材とした義歯床1ユニットは、割高な金属の使用量を必要最小限とし、コストダウンを図ることができる。
【0055】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10において、
前記クラスプ側嵌合部122aと前記義歯用フレーム側嵌合部111bは、円形で2か所以上に形成され、又は楕円形若しくは長円形で1か所以上に形成されている。
【0056】
金属床ユニット10は、嵌合部が円形で2か所以上に形成され、又は楕円形若しくは長円形で1か所以上に形成されていることにより、位置決めと向きを容易に設定することができる。
【0057】
本発明に係る局部床義歯は、
前記いずれかの本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10と、
前記義歯用フレーム11の表面を覆うレジン部20と、
前記義歯用フレーム11に保持され、前記レジン部20に配列された人工歯2と、
を備えている。
【0058】
この局部床義歯は、備えられた金属床ユニット10を容易に製造することができる。
【0059】
本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10の製造方法は、
口腔内の歯の欠損部Cを覆い、人工歯2を保持する土台の部分であり、義歯用フレーム側嵌合部111bを有する義歯用フレーム11を形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部111bに嵌合するクラスプ側嵌合部122aを有し、前記欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けるクラスプ12を形成する工程と、
前記義歯用フレーム側嵌合部111bと前記クラスプ側嵌合部122aとを連結し、前記義歯用フレーム11と前記クラスプ12とを一体化する工程と、
を含んでいる。
【0060】
この局部床義歯用の金属床ユニット10の製造方法は、義歯用フレーム側嵌合部111bと前記クラスプ側嵌合部122aとを連結し、前記義歯用フレーム11と前記クラスプ12とを一体化する工程を含んでいるため、複雑な形状のクラスプ12を容易に形成することができる。
【0061】
前記本発明に係る局部床義歯用の金属床ユニット10の製造方法において、
前記義歯用フレーム11及び前記クラスプ12の少なくともいずれか一方は、CADデータによるNC加工機の切削加工によって加工される。
【0062】
この局部床義歯用の金属床ユニット10の製造方法は、義歯用フレーム11及びクラスプ12の少なくともいずれか一方は、CADデータによるNC加工機の切削加工によって加工されることにより、鋳造欠陥のような品質低下がないだけでなく、鋳造によって形成された酸化反応層を研磨する作業を解消することができる。
【0063】
本発明に係るクラスプ12は、
口腔A内の歯の欠損部Cを覆う土台の部分であり、人工歯2を保持する義歯用フレーム11と別体に形成されたクラスプ12であって、
前記義歯用フレーム11に形成された義歯用フレーム側嵌合部111bに連結されるクラスプ側嵌合部122aを備えている。
【0064】
このクラスプ12は、義歯用フレーム11に形成された義歯用フレーム側嵌合部111bに連結されるクラスプ側嵌合部122aを備えていることにより、複雑な形状のクラスプ12を容易に形成することができる。
【0065】
本発明に係る義歯床1は、
口腔A内の歯の欠損部Cを覆う土台の部分であり、人工歯2を保持する義歯用フレーム11であって、
前記義歯用フレーム11とは別体に形成され、前記欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けられるクラスプ12に形成されたクラスプ側嵌合部122aに連結される義歯用フレーム側嵌合部111bを備えている。
【0066】
この義歯床1は、義歯用フレーム11とは別体に形成され、前記欠損部Cに隣り合う鉤歯Dに引っ掛けられるクラスプ12に形成されたクラスプ側嵌合部122aに連結される義歯用フレーム側嵌合部111bを備えていることにより、複雑な形状のクラスプ12に義歯用フレーム11を容易に一体化することができる。
【符号の説明】
【0067】
1……………義歯床
10…………金属床ユニット
11…………義歯用フレーム
111………歯台部
111b……義歯用フレーム側嵌合部(嵌合凸部)
112………大連結子
12…………クラスプ
121………把持部
122………座部
122a……クラスプ側嵌合部(嵌合孔部)
123………起立部
124………レスト
2……………人工歯
20…………レジン部
A……………口腔
B……………上顎
C……………欠損部
D……………鉤歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7