(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023742
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】水処理用の薬品の添加率を決定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230209BHJP
【FI】
C02F1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129539
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512269041
【氏名又は名称】株式会社水みらい広島
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】隋 鵬哲
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚弥
(57)【要約】
【課題】水処理施設における水処理用の薬品の添加率を精度よく決定する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記過去の第1測定データおよび前記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含むデータを訓練データに使用した機械学習によって構築されたモデルに、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを入力し、前記モデルから前記薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記過去の第1測定データおよび前記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む訓練データを使用した機械学習によって構築されたモデルに、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを入力し、
前記モデルから前記薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法。
【請求項2】
前記予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、
前記予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、
前記訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、処理すべき水の水質の過去の第1時系列測定データであり、
前記訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データであることを特徴とする請求項1に記載の水処理のための薬品の添加率を決定する方法。
【請求項3】
第i-1薬品(iは2以上の自然数)が添加される前の処理すべき水の水質の過去の第i-1測定データと、前記第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第i測定データと、第i薬品の添加率の過去の算定データと、前記過去の第i-1測定データ、前記過去の第i測定データ、および前記第i薬品の添加率の過去の算定データに関連付けられた前記第i-1薬品の実際の添加率を含む第i-1訓練データを使用した機械学習によって構築された第i-1モデルに、前記水の水質の第i-1測定値と、第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の第i測定値と、前記第i薬品の添加率を少なくとも含む第i-1予測条件データを入力し、
前記第i-1モデルから前記第i-1薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法。
【請求項4】
前記第i-1予測条件データ(iは2以上の自然数)に含まれる前記第i-1測定値は、前記第i-1薬品が添加される前の水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i-1時系列測定データであり、
前記第i-1予測条件データおよび前記第i予測条件データに含まれる前記第i測定値は、前記第i-1薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i時系列測定データであり、
前記第i予測条件データに含まれる前記第i+1測定値は、前記第i-1薬品が添加された後に前記第i薬品がさらに添加された前記水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i+1時系列測定データであり、
前記第i-1訓練データに含まれる前記過去の第i-1測定データは、前記第i-1薬品が添加される前の水の水質の過去の第i-1時系列測定データであり、
前記第i-1訓練データおよび前記第i訓練データに含まれる前記過去の第i測定データは、前記第i-1薬品が添加された後の前記水質の過去の第i時系列測定データであり、
前記第i訓練データに含まれる前記過去の第i+1測定データは、前記第i-1薬品が添加された後に前記第i薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第i+1時系列測定データであることを特徴とする請求項3に記載の水処理のための薬品の添加率を決定する方法。
【請求項5】
機械学習によって構築されたモデルと、
処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを前記モデルに入力し、前記モデルから薬品の添加率を出力する薬品添加率出力手段を有することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置。
【請求項6】
機械学習によって構築された第iモデル(iは2以上の自然数)と、
第i-1薬品が添加される前の処理すべき水の水質の第i-1測定値と、前記第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の第i測定値と、前記第i-1薬品が添加された後に第i薬品がさらに添加された前記水の水質の第i+1測定値を取得する測定値取得手段と、
前記第i測定値と前記第i+1測定値を少なくとも含む第i予測条件データを前記第iモデルに入力し、前記第iモデルから前記第i薬品の添加率を出力する第i薬品添加率出力手段と、
機械学習によって構築された第i-1モデルと、
前記第i-1測定値と、前記第i測定値と、前記第i薬品の添加率を少なくとも含む第i-1予測条件データを前記第i-1モデルに入力し、前記第i-1モデルから前記第i-1薬品の添加率を出力する第i-1薬品添加率出力手段を有することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムで使用される薬品の添加率を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場においては、各浄水プロセスの過程において、次亜塩素酸ナトリウムを処理対象水に添加して所定の濃度の残留塩素濃度の管理が行われている(例えば、特許文献1参照)。浄水場の処理水における残留塩素濃度は、供給先の使用濃度に応じて(例えば家庭用、例えば工業利用)、それぞれの浄水場において設定されている管理目標値の範囲内となるように次亜塩素酸ナトリウムの添加率がコントロールされている。例えば、浄水場内の最終設備である浄水池の残留塩素濃度を測定している。浄水池の残留塩素濃度は、浄水池に流入する手前の管路において次亜塩素酸ナトリウムが添加され、所定の濃度の残留塩素濃度になるようにコントロールされている。
【0003】
特許文献1には、浄水場において被処理水に塩素を注入する際の塩素注入率設定方法であって、被処理水の水温と被処理水の残留塩素濃度との過去の測定データに基づいて得られる近似式であって、前記被処理水の昼間の残留塩素濃度と夜間の残留塩素濃度との差分を、前記被処理水の水温を変数とする指数関数で近似する前記近似式と、前記被処理水の水温の測定値と、に基づいて前記測定値の温を有する被処理水の昼間の残留塩素濃度と夜間の残留塩素濃度との差分を算出する差分算出工程と、前記夜間の残留塩素濃度に対して前記差分を加算して昼間の残留塩素濃度を設定する注入率設定工程と、を少なくとも備えた塩素注入率設定方法が記載されている。
【0004】
こうした残留塩素濃度の自動制御を行う場合には、例えば、濾過池出口の残留塩素濃度を測定し、浄水池の残留塩素に対して足りない分を注入するフィードフォワード制御を行うことで実現できるし、また、浄水池の残留塩素濃度を測定し、管理目標値に対して後塩素注入率をフィードバック制御することもできる。
【0005】
特許文献2には、原水から透過水を膜分離する膜分離装置において、分離膜に送水する水に酸化剤を添加する酸化剤添加装置と、分離膜に送水する水の温度を連続的又は間欠的に測定する水温測定器と、酸化剤を添加した位置より下流の水に残留する酸化剤濃度を測定する酸化剤濃度測定器と、分離膜に送水する水の温度と最適残留酸化剤濃度との設定相関関係に従って水温測定器にて測定した水温に基づく最適残留酸化剤濃度を連続的又は間欠的に算出し、酸化剤濃度測定器にて測定した残留酸化剤濃度測定値が最適残留酸化剤濃度になるように酸化剤添加装置の酸化剤添加量を制御する演算/制御装置を備える膜分離装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、被処理水に塩素又は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤を添加したのち、該被処理水を逆浸透装置に供給して純水を得る方法において、逆浸透装置より得られる製造水中の塩素濃度を連続的に検知しその濃度が所定値となるよう塩素系酸化剤の前記被処理水への注入量をフィードバック制御する純水製造装置の前処理方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、下水処理において、有機物とアンモニア又はアンモニウムイオンと雨水とを含む、雨天時に分流式下水道の雨水用下水道を流れ公共用水域に放流される雨天時下水を消毒する方法であって、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントインからなる固体消毒剤を水に添加・溶解して消毒水を得る工程と、前記消毒水を前記下水に添加して消毒する工程と、を含む方法が記載されている。この特許文献4には、さらに、雨天時下水等の排水を効率的に消毒することができることが記載されている。さらに、残留ハロゲン濃度をLC50値以下の0.4mg/L以下にしても消毒することが可能であり、残留ハロゲン濃度を検知することによって、残留ハロゲン濃度の管理値を超えた場合には、消毒剤又は消毒水の供給量を減じたり、遮断することができ、環境上の配慮ができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6466213号公報
【特許文献2】特許第3251145号公報
【特許文献3】特開昭62-30599号公報
【特許文献4】特許第4628132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、浄水処理場にて、このような残留塩素濃度の自動制御において課題となるのは、水質が変動する場合である。水質が変動する場合は、フィードフォワードやフィードバックしたデータでは即時性に欠けて、タイムラグが生じてリアルタイムな追随ができず、目標管理値から大きく外れる場合もあった。このような場合は、運転員が経験により手動で調整しているケースも多く、この場合、運転員の負担が増えることも多かった。
【0010】
また、現在、浄水場の運営など水道事業においては、ベテラン職員の減少によって、浄水場の運転技術の継承が困難となっている。また、浄水場の運転管理の民間委託も進んでおり、委託を受けた民間企業においては、受託した浄水場の特性を踏まえて塩素注入の管理を行っていく必要があるが、運転員の手動による塩素注入率の設定に関しては負担が大きく、浄水の残留塩素濃度の安定化を図ることが難しいという課題があった。
【0011】
さらに、下水処理場(sewage works)にて、下水は、砂等を除去するための沈砂池、浮遊固体(suspended solid; SS)を除去するための固液分離処理、活性汚泥処理、次いで、消毒をこの順序で経て、河川、湖沼、港湾、沿岸海域等の公共用水域(public water)に放流されている。そして、消毒としては、一般的には、塩素ガスや、塩素系消毒剤で消毒することが一般的である。下水、屎尿、産業排水等には、感染症の源になる病原菌が含まれることがあるからである。一般的には、塩素系消毒剤が添加され、1ml当たりの大腸菌群数3000個以下にしている。なお、塩素系消毒剤を添加しないで、紫外線照射やオゾン添加が行われる場合もあるが、設備が膨大になるため用途が限られている。
【0012】
しかし、通常の下水処理に適用された技術を雨天時下水処理に転用すると次の問題点が生じる。まず、雨天時下水には、アンモニア、アミンが共存するため、それらの化学反応が生じ、活性塩素がクロラミンに変化し、殺菌効果がl/10以下に低下するので、酸化剤の濃度管理が重要となる。
【0013】
いずれの方法及び装置、システムにおいても過去のセンサーなどで検出した数値を用いた予測に留まり、それらのセンサー検出機から漏れた情報は獲得することができず、予測精度の向上が課題であった。
【0014】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑み成されたものであり、その目的は、水処理施設における水処理用の薬品の添加率を精度よく予測でき、さらに薬品コストダウンができる、水処理用の薬品の添加率を決定する方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記過去の第1測定データおよび前記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む訓練データを使用した機械学習によって構築されたモデルに、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを入力し、前記モデルから前記薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法が提供される。
【0016】
一態様では、前記予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、前記予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、処理すべき水の水質の過去の第1時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データであることを特徴とする。
【0017】
一態様では、第i-1薬品(iは2以上の自然数)が添加される前の処理すべき水の水質の過去の第i-1測定データと、前記第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第i測定データと、第i薬品の添加率の過去の算定データと、前記過去の第i-1測定データ、前記過去の第i測定データ、および前記第i薬品の添加率の過去の算定データに関連付けられた前記第i-1薬品の実際の添加率を含む第i-1訓練データを使用した機械学習によって構築された第i-1モデルに、前記水の水質の第i-1測定値と、第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の第i測定値と、前記第i薬品の添加率を少なくとも含む第i-1予測条件データを入力し、前記第i-1モデルから前記第i-1薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法が提供される。
【0018】
一態様では、前記第i-1予測条件データ(iは2以上の自然数)に含まれる前記第i-1測定値は、前記第i-1薬品が添加される前の水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i-1時系列測定データであり、前記第i-1予測条件データおよび前記第i予測条件データに含まれる前記第i測定値は、前記第i-1薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i時系列測定データであり、前記第i予測条件データに含まれる前記第i+1測定値は、前記第i-1薬品が添加された後に前記第i薬品がさらに添加された前記水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第i+1時系列測定データであり、前記第i-1訓練データに含まれる前記過去の第i-1測定データは、前記第i-1薬品が添加される前の水の水質の過去の第i-1時系列測定データであり、前記第i-1訓練データおよび前記第i訓練データに含まれる前記過去の第i測定データは、前記第i-1薬品が添加された後の前記水質の過去の第i時系列測定データであり、前記第i訓練データに含まれる前記過去の第i+1測定データは、前記第i-1薬品が添加された後に前記第i薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第i+1時系列測定データであることを特徴とする。
【0019】
一態様では、機械学習によって構築されたモデルと、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを前記モデルに入力し、前記モデルから薬品の添加率を出力する薬品添加率出力手段を有することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置が提供される。
【0020】
一態様では、機械学習によって構築された第iモデル(iは2以上の自然数)と、第i-1薬品が添加される前の処理すべき水の水質の第i-1測定値と、前記第i-1薬品が添加された後の前記水の水質の第i測定値と、前記第i-1薬品が添加された後に第i薬品がさらに添加された前記水の水質の第i+1測定値を取得する測定値取得手段と、前記第i測定値と前記第i+1測定値を少なくとも含む第i予測条件データを前記第iモデルに入力し、前記第iモデルから前記第i薬品の添加率を出力する第i薬品添加率出力手段と、機械学習によって構築された第i-1モデルと、前記第i-1測定値と、前記第i測定値と、前記第i薬品の添加率を少なくとも含む第i-1予測条件データを前記第i-1モデルに入力し、前記第i-1モデルから前記第i-1薬品の添加率を出力する第i-1薬品添加率出力手段を有することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する装置が提供される。
【0021】
一態様では、処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の時系列測定データを少なくとも含む予測条件データを、機械学習によって構築されたモデルに入力し、薬品が添加された後の前記水の水質の制御目標値により、前記モデルから薬品の添加率を出力する水処理のための薬品の添加率を決定する方法が提供される。
【0022】
一態様では、前記モデルは、訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記訓練データは、水質の過去の時系列測定データと、前記過去の時系列測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記方法は、前記モデルから出力された前記添加率を、前記薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整することをさらに含む。
【0023】
一態様では、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを、機械学習によって構築されたモデルに入力し、前記モデルから前記薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法が提供される。
【0024】
一態様では、前記方法は、前記モデルから出力された前記添加率を、前記薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整することをさらに含む。
一態様では、前記モデルは、訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、前記薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記過去の第1測定データおよび前記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、前記予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、処理すべき水の水質の過去の第1時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データである。
【0025】
一態様では、処理すべき水の水質の第1測定値と、第1薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値と、前記第1薬品が添加された後に第2薬品がさらに添加された前記水の水質の第3測定値を取得し、前記第2測定値と前記第3測定値を少なくとも含む第2予測条件データを、機械学習によって構築された第2モデルに入力し、前記第2モデルから前記第2薬品の添加率を出力し、前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記第2薬品の添加率を少なくとも含む第1予測条件データを、機械学習によって構築された第1モデルに入力し、前記第1モデルから前記第1薬品の添加率を出力することを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する方法が提供される。
【0026】
一態様では、前記方法は、前記第1薬品の添加率を、前記第1薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整することをさらに含む。
一態様では、前記方法は、前記第2薬品の添加率を、前記第2薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整することをさらに含む。
一態様では、前記第1モデルは、第1訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記第1訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、前記第1薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記第2薬品の添加率の過去の算定データと、前記過去の第1測定データ、前記過去の第2測定データ、および前記第2薬品の添加率の過去の算定データに関連付けられた前記第1薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記第2モデルは、第2訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記第2訓練データは、前記過去の第2測定データと、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第3測定データと、前記過去の第2測定データおよび前記過去の第3測定データに関連付けられた前記第2薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記第1予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記第1薬品が添加される前の水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、前記第1予測条件データおよび前記第2予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記第1薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、前記第2予測条件データに含まれる前記第3測定値は、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第3時系列測定データであり、前記第1訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、前記第1薬品が添加される前の水の水質の過去の第1時系列測定データであり、前記第1訓練データおよび前記第2訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記第1薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データであり、前記第2訓練データに含まれる前記過去の第3測定データは、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第3時系列測定データである。
【0027】
一態様では、機械学習によって構築されたモデルを備え、処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の時系列測定データを少なくとも含む予測条件データを前記モデルに入力し、前記モデルから薬品の添加率を出力するように構成されていることを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置が提供される。
【0028】
一態様では、前記モデルは、訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記訓練データは、水質の過去の時系列測定データと、前記過去の時系列測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記薬品添加率決定装置は、前記モデルから出力された前記添加率を、前記薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整するようにさらに構成されている。
【0029】
一態様では、機械学習によって構築されたモデルを備え、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値を少なくとも含む予測条件データを前記モデルに入力し、前記モデルから前記薬品の添加率を出力するように構成されていることを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置が提供される。
【0030】
一態様では、前記薬品添加率決定装置は、前記モデルから出力された前記添加率を、前記薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整するようにさらに構成されている。
一態様では、前記モデルは、訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、前記薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記過去の第1測定データおよび前記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、前記予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、処理すべき水の水質の過去の第1時系列測定データであり、前記訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データである。
【0031】
一態様では、機械学習によって構築された第1モデルと、機械学習によって構築された第2モデルを備え、処理すべき水の水質の第1測定値と、第1薬品が添加された後の前記水の水質の第2測定値と、前記第1薬品が添加された後に第2薬品がさらに添加された前記水の水質の第3測定値を取得し、前記第2測定値と前記第3測定値を少なくとも含む第2予測条件データを前記第2モデルに入力し、前記第2モデルから前記第2薬品の添加率を出力し、前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記第2薬品の添加率を少なくとも含む第1予測条件データを前記第1モデルに入力し、前記第1モデルから前記第1薬品の添加率を出力するように構成されていることを特徴とする水処理のための薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置が提供される。
【0032】
一態様では、前記薬品添加率決定装置は、前記第1薬品の添加率を、前記第1薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整するようにさらに構成されている。
一態様では、前記薬品添加率決定装置は、前記第2薬品の添加率を、前記第2薬品が添加された前記水の水質の測定値に基づいて調整するようにさらに構成されている。
一態様では、前記第1モデルは、第1訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記第1訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、前記第1薬品が添加された後の前記水の水質の過去の第2測定データと、前記第2薬品の添加率の過去の算定データと、前記過去の第1測定データ、前記過去の第2測定データ、および前記第2薬品の添加率の過去の算定データに関連付けられた前記第1薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記第2モデルは、第2訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルであり、前記第2訓練データは、前記過去の第2測定データと、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第3測定データと、前記過去の第2測定データおよび前記過去の第3測定データに関連付けられた前記第2薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
一態様では、前記第1予測条件データに含まれる前記第1測定値は、前記第1薬品が添加される前の水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データであり、前記第1予測条件データおよび前記第2予測条件データに含まれる前記第2測定値は、前記第1薬品が添加された後の前記水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データであり、前記第2予測条件データに含まれる前記第3測定値は、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第3時系列測定データであり、前記第1訓練データに含まれる前記過去の第1測定データは、前記第1薬品が添加される前の水の水質の過去の第1時系列測定データであり、前記第1訓練データおよび前記第2訓練データに含まれる前記過去の第2測定データは、前記第1薬品が添加された後の前記水質の過去の第2時系列測定データであり、前記第2訓練データに含まれる前記過去の第3測定データは、前記第1薬品が添加された後に前記第2薬品がさらに添加された前記水の水質の過去の第3時系列測定データである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、時系列的な測定データと、機械学習によって構築されたモデルによって、薬品添加率を精度よく決定することができる。
また、本発明によれば、薬品が添加される前の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の水質の第2測定値の両方がモデルに入力されるので、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の両方がモデル内で行われ、結果として、薬品添加率を精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】水処理のために薬品を添加する水処理システムの一実施形態の模式図である。
【
図2】
図1に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【
図3】水処理システムの他の実施形態の模式図である。
【
図4】
図3に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1および
図2を参照して説明した実施形態と、
図3および
図4を参照して説明した実施形態とを組み合わせた水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【
図6】水処理システムのさらに他の実施形態の模式図である。
【
図7】
図6に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートの前半である。
【
図8】
図6に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートの後半である。
【
図9】
図1および
図2を参照して説明した実施形態と、
図6乃至
図8を参照して説明した実施形態とを組み合わせた水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートの前半である。
【
図10】
図1および
図2を参照して説明した実施形態と、
図6乃至
図8を参照して説明した実施形態とを組み合わせた水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートの後半である。
【
図11】
図3に示す水処理システムおよび
図5に示すフローチャートを参照して説明した実施形態の運転結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、水処理のために薬品を添加する水処理システムの一実施形態の模式図である。本実施形態の水処理システムは、浄水処理、下水処理などの施設に適用可能である。水処理に使用される薬品の例としては、浄水処理である場合には、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤が挙げられる。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の水処理システムは、処理すべき水の水質を測定するための水質測定器2と、水に薬品を添加するための薬品供給装置としてのポンプ3と、水への薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置10を備えている。水質測定器2およびポンプ3は、薬品添加率決定装置10に接続されている。水質測定器2によって取得された水質の測定値は、薬品添加率決定装置10に送られるようになっている。また、薬品供給装置としてのポンプ3の動作(すなわち、水への薬品の添加量)は、薬品添加率決定装置10によって制御される。薬品の添加率は、水の流量または水の単位体積に対する、添加される薬品の量である。一実施形態では、薬品添加率決定装置10は、薬品が添加された後の水の水質の制御目標値により、水への薬品の添加率を決定する。
【0037】
本実施形態では、薬品供給装置としてポンプ3が使用されているが、薬品を水に供給できるのであれば、ポンプに限定されない。例えば、薬品供給装置としてスクリューフィーダが使用されてもよい。
【0038】
水質測定器2が水質を測定する位置(以下、水質測定位置という)は、ポンプ3によって薬品が水に添加される位置(以下、薬品添加位置という)よりも、水の流れ方向において下流である。つまり、水の流れ方向に沿って、水質測定位置および薬品添加位置が並んでいる。ろ過器または混合槽などの水処理要素が薬品添加位置の下流に配置されてもよい。
【0039】
薬品添加率決定装置10は、後述する機械学習を実行してモデルを構築し、そのモデルを使用するためのプログラムが格納された記憶装置10aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置10bを備えている。記憶装置10aは、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、薬品添加率決定装置10の具体的構成はこの例に限定されない。
【0040】
薬品添加率決定装置10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。薬品添加率決定装置10は、水質測定器2およびポンプ3に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって水質測定器2およびポンプ3に接続されたクラウドサーバまたはフォグサーバであってもよい。
【0041】
薬品添加率決定装置10は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、薬品添加率決定装置10は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。記憶装置10aと演算装置10bは、別々の場所に設置された複数のコンピュータ内にそれぞれ配置されてもよい。
【0042】
次に、薬品添加率決定装置10の機能について説明する。薬品添加率決定装置10は、ポンプ3によって水に添加される薬品の添加率を、機械学習により構築されたモデル(すなわち学習済みモデル)を用いて算定するように構成されている。モデルは、記憶装置10a内に格納されている。薬品添加率決定装置10の演算装置10bは、予測条件データを、機械学習によって構築されたモデルに入力し、モデルのアルゴリズムに従って演算を実行することでモデルから薬品の添加率を出力するように構成されている。予測条件データは、水質測定器2によって取得された水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の時系列測定データを少なくとも含む。薬品添加率決定装置10は、予測条件データを、機械学習により構築されたモデルに入力し、モデルから薬品の添加率を出力する薬品添加率出力手段としての機能を有し、さらに水の水質の測定値を取得する測定値取得手段としての機能を有する。
【0043】
直近の時系列測定データは、所定の日数分の水質の直近の測定値を含む。例えば、直近の5日分の水質の測定値を含む。上記所定の日数は、設定により変更可能である。直近の時系列測定データは、水質の現在の測定値のみならず、最近取得された過去の測定値も含むので、水質の傾向が薬品の添加率に反映できる。
【0044】
水質の具体的な物理量は、処理される水の種類によって異なるが、例えば、水のpH、水の濁度、水中に含まれる薬品の残留濃度、化学的酸素要求量(COD)などが挙げられる。
【0045】
モデルは、訓練データを用いた機械学習によって作成される。モデルには、説明変数が入力され、モデルからは目的変数が出力される。
説明変数:予測したい変数(目的変数)を導出するため変数。
目的変数:予測したい変数。本実施形態では、ポンプ3によって水に添加される薬品の添加率が目的変数である。
【0046】
訓練データに含まれる説明変数は、水質の過去の時系列測定データを少なくとも含む。この水質の過去の時系列測定データは、水質測定器2によって取得され、記憶装置10a内に格納される。訓練データに含まれる目的変数は、説明変数としての上記過去の時系列測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率である。
【0047】
薬品添加率決定装置10は、水質の過去の時系列測定データ、および薬品の実際の添加率を含む訓練データを用いて、モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築されたモデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。
【0048】
機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、または決定木法などが挙げられる。本実施形態では、機械学習にディープラーニング法が採用される。特に、本実施形態では、モデルは、長・短期記憶(LSTM、Long short-term memory)からなるニューラルネットワークから構成されている。ただし、本発明に使用されるモデルは、時系列データが使用できるものであれば、LSTM型モデルに限定されない。
【0049】
図1に示す水処理システムの運転について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップ1では、水質測定器2は、予め定められた時間間隔で水質を測定し、測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、水質測定器2から送られてきた水質の測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の測定値を受け取るたびに、その測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の時系列測定データ)が保存される。
【0050】
ステップ2では、薬品添加率決定装置10は、水質の直近の時系列測定データを記憶装置10aから読み出し、モデルに入力する。
ステップ3では、薬品添加率決定装置10は、モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、薬品の添加率をモデルから出力する。
ステップ4では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率で薬品が水に添加されるようにポンプ3の運転を制御する。その結果、薬品は水に添加され、水が薬品により処理される。
【0051】
上述したように、本実施形態のモデルは、長・短期記憶モデル(LSTM,Long short-term memory)である。長・短期記憶モデルは、再帰型ニューラルネットワーク(RNN,Recurrent Neural Network)の拡張タイプとして、時系列データを取り扱うことができるモデルの1種である。長・短期記憶モデル(LSTM)は、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)の中間層のユニットを、LSTMブロックと呼ばれるメモリと、3つのゲート(入力ゲート、出力ゲート、忘却ゲート)を持つブロックに置き換えることで実現されている。
【0052】
長・短期記憶モデル(LSTM)の最も大きな特長は、従来のRNNでは学習できなかった長期依存性を学習可能であるところにある。通常のRNNでも数十ステップの短期の時系列データには対応できるが、1000ステップのような長期の時系列データを学習することはできなかった。長・短期記憶モデル(LSTM)はこのような長期の時系列データに対しても適切な出力を行うことができる。
【0053】
本実施形態は、長・短期記憶モデル(LSTM)の長期の時系列データを学習して記憶できる特徴を利用し、水処理プロセスにおける薬品の添加率を予測する。長・短期記憶モデル(LSTM)を備える本実施形態の薬品添加率決定装置10は、長期の時系列データを用いて、最近の水質の傾向に基づいた適切な薬品の添加率を算定することができる。
【0054】
一実施形態では、モデルに入力される予測条件データは、水質の直近の時系列測定データに加えて、水の流量、水の温度、気象データのうちの少なくとも1つを含む運転条件の直近の時系列定データをさらに含んでもよい。気象データには、雨量、気温などが含まれる。この実施形態のモデルの機械学習に使用される訓練データは、水質の過去の時系列測定データと、運転条件の過去の時系列データと、水質の過去の時系列測定データおよび運転条件の過去の時系列データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。水処理システムの運転では、薬品添加率決定装置10は、水質の直近の時系列測定データおよび運転条件の直近の時系列データの両方をモデルに入力し、モデルから薬品の添加率を出力する。
【0055】
次に、水処理システムの他の実施形態の模式図について
図3を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1および
図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図3に示すように、水処理システムは、処理すべき水の水質を測定するための第1水質測定器2と、水に薬品を添加するための薬品供給装置としてのポンプ3と、薬品が添加された水の水質を測定するための第2水質測定器5と、水への薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置10を備えている。
【0056】
第1水質測定器2、第2水質測定器5、およびポンプ3は、薬品添加率決定装置10に接続されている。第1水質測定器2によって取得された水質の第1測定値、および第2水質測定器5によって取得された水質の第2測定値は、薬品添加率決定装置10に送られるようになっている。また、ポンプ3の動作(すなわち、水への薬品の添加量)は、薬品添加率決定装置10によって制御される。
【0057】
第2水質測定器5が水質を測定する位置(以下、第2水質測定位置という)は、第1水質測定器2が水質を測定する位置(以下、第1水質測定位置という)よりも水の流れ方向において下流である。ポンプ3によって薬品が水に添加される位置(以下、薬品添加位置という)は、第1水質測定位置と第2水質測定位置との間である。つまり、水の流れ方向に沿って、第1水質測定位置、薬品添加位置、第2水質測定位置が並んでいる。したがって、第1水質測定器2は、ポンプ3から薬品が添加される前の水の水質を測定し、第2水質測定器5は、ポンプ3から薬品が添加された後の水の水質を測定する。薬品添加位置と第2水質測定位置との間に、ろ過器または混合槽などの水処理要素が配置されてもよい。
【0058】
薬品添加率決定装置10の演算装置10bは、予測条件データを、機械学習によって構築されたモデルに入力し、モデルから薬品の添加率を出力するように構成されている。予測条件データは、処理すべき水の水質の第1測定値と、薬品が添加された後の水の水質の第2測定値を少なくとも含む。
【0059】
本実施形態のモデルも、訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルである。訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、薬品が添加された後の水の水質の過去の第2測定データと、過去の第1測定データおよび過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
【0060】
訓練データに含まれる説明変数は、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、薬品が添加された後の水の水質の過去の第2測定データを少なくとも含む。水質の過去の第1測定データは、第1水質測定器2によって取得され、記憶装置10a内に格納される。水質の過去の第2測定データは、第2水質測定器5によって取得され、記憶装置10a内に格納される。訓練データに含まれる目的変数は、説明変数としての上記過去の第1測定データおよび上記過去の第2測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率である。
【0061】
薬品添加率決定装置10は、水質の過去の第1測定データ、水質の過去の第2測定データ、および薬品の実際の添加率を含む訓練データを用いて、モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築されたモデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。
【0062】
機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、または決定木法などが挙げられる。本実施形態では、機械学習にディープラーニング法が採用される。
図1および
図2を参照して説明した実施形態では、モデルは、長・短期記憶(LSTM)モデルであるが、本実施形態のモデルはLSTM型モデルでなくてもよい。
【0063】
本実施形態によれば、ポンプ3から薬品が添加される前の水質の第1測定値と、ポンプ3から薬品が添加された後の水質の第2測定値の両方がモデルに入力されるので、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の両方が行われ、結果として、薬品添加率を精度よく決定することができる。
【0064】
一実施形態では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率を、薬品が添加された後の水の水質の測定値である添加後測定値に基づいて調整してもよい。一例では、添加後測定値は、薬品添加率の算出のためにモデルに入力された、第2水質測定位置での水質の上記第2測定値である。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、添加後測定値と目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に添加率を調整する。例えば、水質が、水中の薬品の残留濃度である場合に、添加後測定値(測定残留濃度)が目標水質値(目標残留濃度)よりも高ければ、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率を低下させる。このような動作により、薬品が添加された後の水の水質を目標水質値に近づけることができる。
【0065】
図4は、
図3に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
ステップ1では、第1水質測定器2は、薬品添加位置の上流側の第1水質測定位置での水質を測定して第1測定値を取得し、第1測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加位置では、ポンプ3は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
ステップ2では、第2水質測定器5は、薬品添加位置の下流側の第2水質測定位置での水質を測定して第2測定値を取得し、第2測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第1水質測定器2および第2水質測定器5から送られてきた水質の第1測定値および第2測定値を記憶装置10a内に保存する。
上記ステップ1~2は、同時に行われてもよく、あるいは
図4に示す例とは異なる順序で行われてもよい。
【0066】
ステップ3では、薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値および第2測定値を記憶装置10aから読み出し、モデルに入力する。
ステップ4では、薬品添加率決定装置10は、モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、薬品の添加率をモデルから出力する。
ステップ5では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率で薬品が水に添加されるようにポンプ3の運転を制御する。
【0067】
ステップ6では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率を、添加後測定値(例えば、上記ステップ2で得られた第2測定値)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、添加後測定値と目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に添加率を調整する。
ステップ7では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で薬品が水に添加されるようにポンプ3の運転を制御する。
【0068】
添加後測定値と目標水質値との差が小さい場合、すなわち、モデルから出力された薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ6,7は省略してもよい。
【0069】
一実施形態では、モデルに入力される予測条件データは、水質の第1測定値および第2測定値に加えて、水の流量、水の温度、気象データのうちの少なくとも1つを含む運転条件の現在のデータをさらに含んでもよい。気象データには、雨量、気温などが含まれる。この実施形態のモデルの機械学習に使用される訓練データは、第1水質測定器2によって得られた水質の過去の第1測定データと、第2水質測定器5によって得られた水質の過去の第2測定データと、運転条件の過去のデータと、薬品の実際の添加率を少なくとも含む。水処理システムの運転では、薬品添加率決定装置10は、処理すべき水の水質の第1測定値、薬品が添加された水の水質の第2測定値、および運転条件の現在のデータをモデルに入力し、モデルから薬品の添加率を出力する。
【0070】
図1および
図2を参照して説明した実施形態は、
図3および
図4を参照して説明した実施形態に組み合わせてもよい。以下、時系列測定データ、フィードフォワード制御、およびフィードバック制御を組み合わせた実施形態について説明する。
【0071】
この実施形態では、モデルに入力される予測条件データは、処理すべき水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データと、ポンプ3から薬品が添加された後の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データを少なくとも含む。直近の第1時系列測定データは、
図3に示す第1水質測定器2によって取得され、直近の第2時系列測定データは、
図3に示す第2水質測定器5によって取得される。直近の第1時系列測定データおよび直近の第2時系列測定データのそれぞれは、所定の日数分の水質の直近の測定値を含む。
【0072】
第1水質測定器2および第2水質測定器5は、所定の時間間隔で水質を測定し、水質の第1測定値および第2測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値および第2測定値を受け取るたびに、その第1測定値および第2測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第1測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第1時系列測定データ)および水質の第2測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第2時系列測定データ)が保存される。
【0073】
この実施形態で使用されるモデルは、以下に説明する訓練データを用いて機械学習により構築された学習済みモデルである。訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1時系列測定データと、ポンプ3から薬品が添加された後の水質の過去の第2時系列測定データと、過去の第1時系列測定データおよび過去の第2時系列測定データに関連付けられた薬品の実際の添加率を含む。過去の第1時系列測定データは、
図3に示す第1水質測定器2によって取得され、過去の第2時系列測定データは、
図3に示す第2水質測定器5によって取得される。
【0074】
薬品添加率決定装置10は、水質の過去の第1時系列測定データ、水質の過去の第2時系列測定データ、および薬品の実際の添加率を含む訓練データを用いて、モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築されたモデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。本実施形態では、モデルは、長・短期記憶(LSTM,Long short-term memory)からなるニューラルネットワークから構成されている。ただし、本発明に使用されるモデルは、時系列データが使用できるものであれば、LSTM型モデルに限定されない。
【0075】
図5は、
図1および
図2を参照して説明した実施形態と、
図3および
図4を参照して説明した実施形態とを組み合わせた水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
ステップ1では、第1水質測定器2は、薬品添加位置の上流側の第1水質測定位置での水質を予め定められた時間間隔で測定して複数の第1測定値を取得し、これら第1測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第1水質測定器2から送られてきた水質の第1測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値を受け取るたびに、その第1測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第1測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第1時系列測定データ)が保存される。薬品添加位置では、ポンプ3は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
【0076】
ステップ2では、第2水質測定器5は、薬品添加位置の下流側の第2水質測定位置での水質を予め定められた時間間隔で測定して複数の第2測定値を取得し、これら第2測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第2水質測定器5から送られてきた水質の第2測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の第2測定値を受け取るたびに、その第2測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第2測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第2時系列測定データ)が保存される。
上記ステップ1~2は、同時に行われてもよく、あるいは
図5に示す例とは異なる順序で行われてもよい。
【0077】
ステップ3では、薬品添加率決定装置10は、水質の直近の第1時系列測定データおよび直近の第2時系列測定データを記憶装置10aから読み出し、モデルに入力する。
ステップ4では、薬品添加率決定装置10は、モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、薬品の添加率をモデルから出力する。
ステップ5では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率で薬品が水に添加されるようにポンプ3の運転を制御する。
【0078】
ステップ6では、薬品添加率決定装置10は、モデルから出力された添加率を、添加後測定値(例えば、上記ステップ2で得られた複数の第2測定値のうちの直近の1つ)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、添加後測定値と目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に添加率を調整する。
ステップ7では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で薬品が水に添加されるようにポンプ3の運転を制御する。
【0079】
添加後測定値と目標水質値との差が小さい場合、すなわち、モデルから出力された薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ6,7は省略してもよい。
【0080】
図5に示す実施形態は、時系列測定データ、フィードフォワード制御、およびフィードバック制御の組み合わせにより、薬品の添加率をさらに精度よく決定することができる。
【0081】
次に、水処理システムのさらに他の実施形態の模式図について
図6を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図6に示すように、水処理システムは、処理すべき水の水質を測定するための第1水質測定器2と、水に第1薬品を添加するための第1薬品供給装置としての第1ポンプ3と、第1薬品が添加された水の水質を測定するための第2水質測定器5と、第1薬品が添加された水に第2薬品をさらに添加するための第2薬品供給装置としての第2ポンプ7と、第2薬品が添加された水の水質を測定するための第3水質測定器6と、水への第1薬品の添加率および第2薬品の添加率を決定する薬品添加率決定装置10を備えている。薬品添加率決定装置10は、単一のコンピュータから構成されてもよいし、あるいは通信ネットワークで接続された複数のコンピュータから構成されてもよい。
【0082】
第1薬品および第2薬品は、同じ種類の薬品であってもよいし、あるいは異なる種類の薬品であってもよい。例えば、第1薬品および第2薬品は、いずれも、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤であってもよい。本実施形態では、第1薬品供給装置および第2薬品供給装置としてポンプ3,7が使用されているが、第1薬品および第2薬品を水に供給できるのであれば、ポンプに限定されない。例えば、第1薬品供給装置および第2薬品供給装置としてスクリューフィーダが使用されてもよい。
【0083】
第1水質測定器2、第2水質測定器5、第3水質測定器6、第1ポンプ3、および第2ポンプ7は、薬品添加率決定装置10に接続されている。第1水質測定器2によって取得された水質の第1測定値、第2水質測定器5によって取得された水質の第2測定値、および第3水質測定器6によって取得された水質の第3測定値は、薬品添加率決定装置10に送られるようになっている。また、第1ポンプ3および第2ポンプ7の動作(すなわち、水への第1薬品の添加率および第2薬品の添加率)は、薬品添加率決定装置10によって制御される。
【0084】
第2水質測定器5が水質を測定する位置(以下、第2水質測定位置という)は、第1水質測定器2が水質を測定する位置(以下、第1水質測定位置という)よりも水の流れ方向において下流である。第1ポンプ3によって第1薬品が水に添加される位置(以下、第1薬品添加位置という)は、第1水質測定位置と第2水質測定位置との間である。第3水質測定器6が水質を測定する位置(以下、第3水質測定位置という)は、第2水質測定位置よりも水の流れ方向において下流である。第2ポンプ7によって第2薬品が水に添加される位置(以下、第2薬品添加位置という)は、第2水質測定位置と第3水質測定位置との間である。
【0085】
つまり、水の流れ方向に沿って、第1水質測定位置、第1薬品添加位置、第2水質測定位置、第2薬品添加位置、および第3水質測定位置が並んでいる。第1水質測定器2は、第1薬品が添加される前の水の水質を測定し、第2水質測定器5は、第1薬品が添加された後であって、かつ第2薬品が添加される前の水の水質を測定する。第3水質測定器6は、第1薬品が添加された後に第2薬品がさらに添加された水の水質を測定する。
【0086】
第1薬品添加位置と第2水質測定位置との間に、ろ過器または混合槽などの水処理要素が配置されてもよい。同様に、第2薬品添加位置と第3水質測定位置との間に、ろ過器または混合槽などの水処理要素が配置されてもよい。
【0087】
薬品添加率決定装置10は、第1ポンプ3によって水に添加される第1薬品の添加率を決定するための第1モデルと、第2ポンプ7によって水に添加される第2薬品の添加率を決定するための第2モデルを有している。第1モデルおよび第2モデルは、機械学習によって構築された学習済みモデルであり、記憶装置10a内に格納されている。
【0088】
薬品添加率決定装置10は、第1予測条件データを第1モデルに入力し、第1モデルから第1薬品の添加率を出力するように構成されている。第1予測条件データは、第1薬品を添加する前の水の水質の第1測定値と、第1薬品を添加した後であって第2薬品を添加する前の水の水質の第2測定値と、第2モデルから出力された第2薬品の添加率を少なくとも含む。
【0089】
さらに、薬品添加率決定装置10は、第2予測条件データを第2モデルに入力し、第2モデルから第2薬品の添加率を出力するように構成されている。第2予測条件データは、水質の第2測定値と、第1薬品および第2薬品が添加された水の水質の第3測定値を少なくとも含む。この第2薬品の添加率は、上述したように、第1モデルに入力される。つまり、第2モデルの算定結果は、第1モデルの第1薬品の添加率の算定にフィードバックされる。
【0090】
第1モデルは、第1訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルである。第1訓練データは、処理すべき水の水質の過去の第1測定データと、第1薬品が添加された後であって、かつ第2薬品が添加される前の水の水質の過去の第2測定データと、第2モデルから出力された第2薬品の添加率の過去の算定データと、上記過去の第1測定データ、上記過去の第2測定データ、および第2薬品の添加率の上記過去の算定データに関連付けられた第1薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
【0091】
第1訓練データに含まれる説明変数は、水質の過去の第1測定データと、水質の過去の第2測定データと、第2薬品の添加率の過去の算定データを少なくとも含む。水質の過去の第1測定データは、第1水質測定器2によって取得され、記憶装置10a内に格納される。水質の過去の第2測定データは、第2水質測定器5によって取得され、記憶装置10a内に格納される。第2薬品の添加率の過去の算定データは、第2モデルから出力され、記憶装置10a内に格納される。第1訓練データに含まれる目的変数は、上記過去の第1測定データ、上記過去の第2測定データ、および第2薬品の添加率の上記過去の算定データに関連付けられた第1薬品の実際の添加率である。
【0092】
薬品添加率決定装置10は、上述した第1訓練データを用いて、第1モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築された第1モデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。
【0093】
第2モデルは、第2訓練データを用いて機械学習によって構築された学習済みモデルである。第2訓練データは、第1薬品が添加された後であって、かつ第2薬品が添加される前の水の水質の過去の第2測定データと、第1薬品が添加された後に第2薬品がさらに添加された水の水質の過去の第3測定データと、上記過去の第2測定データおよび上記過去の第3測定データに関連付けられた第2薬品の実際の添加率を少なくとも含む。
【0094】
第2訓練データに含まれる説明変数は、水質の過去の第2測定データと、水質の過去の第3測定データを少なくとも含む。水質の過去の第2測定データは、第2水質測定器5によって取得され、記憶装置10a内に格納される。水質の過去の第3測定データは、第3水質測定器6によって取得され、記憶装置10a内に格納される。第2訓練データに含まれる目的変数は、上記過去の第2測定データおよび上記過去の第3測定データに関連付けられた第2薬品の実際の添加率である。
【0095】
薬品添加率決定装置10は、上述した第2訓練データを用いて、第2モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築された第2モデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。
【0096】
本実施形態の水処理システムの運転では、薬品添加率決定装置10は、第1ポンプ3により第1薬品が添加される前の水の水質の第1測定値と、第1ポンプ3により第1薬品が添加された後の水の水質の第2測定値と、第2ポンプ7により第2薬品がさらに添加された後の水の水質の第3測定値を取得する。薬品添加率決定装置10は、第2測定値と第3測定値を少なくとも含む第2予測条件データを第2モデルに入力し、第2モデルから第2薬品の添加率を出力する。さらに、薬品添加率決定装置10は、上記第1測定値と、上記第2測定値と、第2モデルから出力された第2薬品の上記添加率を少なくとも含む第1予測条件データを第1モデルに入力し、第1モデルから第1薬品の添加率を出力する。
【0097】
一実施形態では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルから出力された添加率を、第1薬品が添加された後の第2水質測定位置での水の水質の測定値である第1添加後測定値に基づいて調整してもよい。一例では、第1添加後測定値は、第1薬品の添加率の算出のために第1モデルに入力された水質の上記第2測定値である。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第1添加後測定値と、第2水質測定位置での第1目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第1薬品の添加率を調整する。同様に、薬品添加率決定装置10は、第2モデルから出力された添加率を、第2薬品が添加された後の第3水質測定位置での水の水質の測定値である第2添加後測定値に基づいて調整してもよい。一例では、第2添加後測定値は、第2薬品の添加率の算出のために第2モデルに入力された水質の上記第3測定値である。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第2添加後測定値と、第3水質測定位置での第2目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第2薬品の添加率を調整する。
【0098】
図7および
図8は、
図6に示す水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
ステップ1では、第1水質測定器2は、第1薬品添加位置の上流側の第1水質測定位置での水質を測定して第1測定値を取得し、第1測定値を薬品添加率決定装置10に送る。第1薬品添加位置では、第1ポンプ3は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
ステップ2では、第2水質測定器5は、第1薬品添加位置の下流側の第2水質測定位置での水質を測定して第2測定値を取得し、第2測定値を薬品添加率決定装置10に送る。
ステップ3では、第3水質測定器6は、第2薬品添加位置の下流側の第3水質測定位置での水質を測定して第3測定値を取得し、第3測定値を薬品添加率決定装置10に送る。第2薬品添加位置では、第2ポンプ7は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
上記ステップ1~3は、同時に行われてもよく、あるいは
図7に示す例とは異なる順序で行われてもよい。
【0099】
ステップ4では、薬品添加率決定装置10は、第1水質測定器2、第2水質測定器5、および第3水質測定器6から送られてきた水質の第1測定値、第2測定値、および第3測定値を取得し、記憶装置10a内に保存する。
ステップ5では、薬品添加率決定装置10は、水質の第2測定値および第3測定値を記憶装置10aから読み出し、第2モデルに入力する。
ステップ6では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、第2薬品の添加率を第2モデルから出力する。
ステップ7では、薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値、水質の第2測定値、および第2薬品の添加率を第1モデルに入力する。
ステップ8では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、第1薬品の添加率を第1モデルから出力する。
【0100】
ステップ9では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルから出力された添加率で第1薬品が水に添加されるように第1ポンプ3の運転を制御する。
ステップ10では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルから出力された第1薬品の添加率を、第1添加後測定値(例えば、上記ステップ2で得られた第2測定値)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第1添加後測定値と、第2水質測定位置での第1目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第1薬品の添加率を調整する。
ステップ11では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で第1薬品が水に添加されるように第1ポンプ3の運転を制御する。
【0101】
ステップ12では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルから出力された添加率で第2薬品が水に添加されるように第2ポンプ7の運転を制御する。
ステップ13では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルから出力された第2薬品の添加率を、第2添加後測定値(例えば、上記ステップ3で得られた第3測定値)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第2添加後測定値と、第3水質測定位置での第2目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第2薬品の添加率を調整する。
ステップ14では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で第2薬品が水に添加されるように第2ポンプ7の運転を制御する。
【0102】
第1添加後測定値と第1目標水質値との差が小さい場合、すなわち、第1モデルから出力された第1薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ10,11は省略してもよい。同様に、第2添加後測定値と第2目標水質値との差が小さい場合、すなわち、第2モデルから出力された第2薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ13,14は省略してもよい。
【0103】
本実施形態によれば、薬品の多段添加において、水処理プロセス上の後段の添加点での添加情報をその前段の添加点にフィードバックし、前段の添加率の予測精度をさらに向上することができる。
図6に示す実施形態では、2つの薬品添加位置と、3つの水質測定位置が設けられているが、本発明はこの実施形態に限定されず、3つ以上の薬品添加位置と、4つ以上の水質測定位置が設けられてもよい。その場合に、機械学習によって構築された3つ以上のモデルが設けられてもよい。
【0104】
一実施形態では、第1モデルに使用される第1予測条件データおよび第1訓練データは、水質の第1測定値、水質の第2測定値、および第2薬品の添加率に加えて、水の流量、水の温度、気象データのうちの少なくとも1つを含む運転条件の現在のデータをさらに含んでもよい。同様に、一実施形態では、第2モデルに使用される第2予測条件データおよび第2訓練データは、水質の第2測定値および水質の第3測定値に加えて、水の流量、水の温度、気象データのうちの少なくとも1つを含む運転条件の現在のデータをさらに含んでもよい。気象データには、雨量、気温などが含まれる。
【0105】
図1および
図2を参照して説明した実施形態は、
図6乃至
図8を参照して説明した実施形態に組み合わせてもよい。以下、時系列測定データ、フィードフォワード制御、およびフィードバック制御を組み合わせた薬品の多段添加の実施形態について説明する。
【0106】
この実施形態では、第1モデルに入力される第1予測条件データは、第1薬品が添加される前の水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第1時系列測定データと、第1薬品が添加された後の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第2時系列測定データと、第2モデルから出力された第2薬品の添加率を少なくとも含む。直近の第1時系列測定データは、
図6に示す第1水質測定器2によって取得され、直近の第2時系列測定データは、
図6に示す第2水質測定器5によって取得される。直近の第1時系列測定データおよび直近の第2時系列測定データのそれぞれは、所定の日数分の水質の直近の測定値を含む。
【0107】
第2モデルに入力される第2予測条件データは、上記直近の第2時系列測定データと、第1薬品が添加された後に第2薬品がさらに添加された水の水質の現在の測定値および過去の測定値を含む直近の第3時系列測定データを少なくとも含む。直近の第3時系列測定データは、
図6に示す第3水質測定器6によって取得される。
【0108】
第1水質測定器2、第2水質測定器5、および第3水質測定器6は、所定の時間間隔で水質を測定し、複数の第1測定値、複数の第2測定値、および複数の第3測定値を取得する。これらの複数の第1測定値、複数の第2測定値、および複数の第3測定値は、薬品添加率決定装置10に送られる。薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値、第2測定値、および第3測定値を受け取るたびに、その第1測定値、第2測定値、および第3測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第1測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第1時系列測定データ)、水質の第2測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第2時系列測定データ)、および水質の第3測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第3時系列測定データ)が保存される。
【0109】
この実施形態で使用される第1モデルは、以下に説明する第1訓練データを用いて機械学習により構築された学習済みモデルである。第1訓練データは、第1ポンプ3から第1薬品が添加される前の水の水質の過去の第1時系列測定データと、第1ポンプ3から第1薬品が添加された後の水質の過去の第2時系列測定データと、第2薬品の添加率の過去の算定データと、上記過去の第1時系列測定データ、上記過去の第2時系列測定データ、および第2薬品の添加率の上記過去の算定データに関連付けられた第1薬品の実際の添加率を含む。過去の第1時系列測定データは、
図6に示す第1水質測定器2によって取得され、過去の第2時系列測定データは、
図6に示す第2水質測定器5によって取得される。
【0110】
この実施形態で使用される第2モデルは、以下に説明する第2訓練データを用いて機械学習により構築された学習済みモデルである。第2訓練データは、上記過去の第2時系列測定データと、第1薬品が添加された後に第2ポンプ7によって第2薬品がさらに添加された水の水質の過去の第3時系列測定データと、上記過去の第2時系列測定データおよび上記過去の第3時系列測定データに関連付けられた第2薬品の実際の添加率を含む。過去の第3時系列測定データは、
図6に示す第3水質測定器6によって取得される。
【0111】
薬品添加率決定装置10は、上記第1訓練データを用いて、第1モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成し、上記第2訓練データを用いて、第2モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築された第1モデルおよび第2モデルは、学習済みモデルとして、記憶装置10a内に格納される。本実施形態では、第1モデルおよび第2モデルは、それぞれ、長・短期記憶(LSTM,Long short-term memory)からなるニューラルネットワークから構成されている。ただし、本発明に使用される第1モデルおよび第2モデルは、時系列データが使用できるものであれば、LSTM型モデルに限定されない。
【0112】
図9および
図10は、
図1および
図2を参照して説明した実施形態と、
図6乃至
図8を参照して説明した実施形態とを組み合わせた水処理システムの運転の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
ステップ1では、第1水質測定器2は、第1薬品添加位置の上流側の第1水質測定位置での水質を予め定められた時間間隔で測定して複数の第1測定値を取得し、これら第1測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第1水質測定器2から送られてきた水質の第1測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の第1測定値を受け取るたびに、その第1測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第1測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第1時系列測定データ)が保存される。第1薬品添加位置では、第1ポンプ3は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
【0113】
ステップ2では、第2水質測定器5は、第1薬品添加位置の下流側であって第2薬品添加位置の上流側の第2水質測定位置での水質を予め定められた時間間隔で測定して複数の第2測定値を取得し、これら第2測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第2水質測定器5から送られてきた水質の第2測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の第2測定値を受け取るたびに、その第2測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第2測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第2時系列測定データ)が保存される。
【0114】
ステップ3では、第3水質測定器6は、第2薬品添加位置の下流側の第3水質測定位置での水質を予め定められた時間間隔で測定して複数の第3測定値を取得し、これら第3測定値を薬品添加率決定装置10に送る。薬品添加率決定装置10は、第3水質測定器6から送られてきた水質の第3測定値を記憶装置10a内に保存する。薬品添加率決定装置10は、水質の第3測定値を受け取るたびに、その第3測定値を時間に関連付けて記憶装置10a内に保存する。したがって、記憶装置10a内には、水質の第3測定値の時系列的なデータ(すなわち、水質の第3時系列測定データ)が保存される。第2薬品添加位置では、第2ポンプ7は、予め設定された添加率で薬品を水に添加する。
上記ステップ1~3は、同時に行われてもよく、あるいは
図9に示す例とは異なる順序で行われてもよい。
【0115】
ステップ4では、薬品添加率決定装置10は、水質の第2時系列測定データおよび第3時系列測定データを記憶装置10aから読み出し、第2モデルに入力する。
ステップ5では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、第2薬品の添加率を第2モデルから出力する。
ステップ6では、薬品添加率決定装置10は、水質の第1時系列測定データ、水質の第2時系列測定データ、および第2薬品の添加率を第1モデルに入力する。
ステップ7では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルにより定義されるアルゴリズムに従って演算を実行し、第1薬品の添加率を第1モデルから出力する。
【0116】
ステップ8では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルから出力された添加率で第1薬品が水に添加されるように第1ポンプ3の運転を制御する。
ステップ9では、薬品添加率決定装置10は、第1モデルから出力された第1薬品の添加率を、第1添加後測定値(例えば、上記ステップ2で得られた複数の第2測定値のうちの直近の1つ)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第1添加後測定値と、第2水質測定位置での第1目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第1薬品の添加率を調整する。
ステップ10では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で第1薬品が水に添加されるように第1ポンプ3の運転を制御する。
【0117】
ステップ11では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルから出力された添加率で第2薬品が水に添加されるように第2ポンプ7の運転を制御する。
ステップ12では、薬品添加率決定装置10は、第2モデルから出力された第2薬品の添加率を、第2添加後測定値(例えば、上記ステップ3で得られた複数の第3測定値のうちの直近の1つ)に基づいて調整する。より具体的には、薬品添加率決定装置10は、第2添加後測定値と、第3水質測定位置での第2目標水質値との差を算定し、この差が小さくなる方向に第2薬品の添加率を調整する。
ステップ13では、薬品添加率決定装置10は、調整された添加率で第2薬品が水に添加されるように第2ポンプ7の運転を制御する。
【0118】
第1添加後測定値と第1目標水質値との差が小さい場合、すなわち、第1モデルから出力された第1薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ9,10は省略してもよい。同様に、第2添加後測定値と第2目標水質値との差が小さい場合、すなわち、第2モデルから出力された第2薬品の添加率の精度が高い場合には、上記ステップ12,13は省略してもよい。
【0119】
図9および
図10に示す実施形態では、2つの薬品添加位置と、3つの水質測定位置が設けられているが、本発明はこの実施形態に限定されず、3つ以上の薬品添加位置と、4つ以上の水質測定位置が設けられてもよい。その場合に、機械学習によって構築された3つ以上のモデルが設けられてもよい。
【0120】
次に、上述した実施形態に係る水処理システムの運転結果について説明する。
図11は、
図3に示す水処理システムおよび
図5に示すフローチャートを参照して説明した実施形態の運転結果を示すグラフである。この運転では、薬品として次亜塩素酸ナトリウムを用い、薬品添加位置の上流側と下流側で水質を測定した。モデルの機械学習に使用された訓練データは、2年間の運転で得られた過去の第1時系列測定データおよび過去の第2時系列測定データを含むものであった。
【0121】
図11の縦軸は薬品の添加率を表し、
図11の横軸は時間を表す。
図11に示すように、熟練した作業員による薬品の実際の添加率と、モデルを使用して算定した添加率との誤差は非常に小さかった。この運転結果から、機械学習により構築されたモデルを備えた薬品添加率決定装置10は、非常に高い精度で薬品の添加率を予測できることが分かる。
【符号の説明】
【0122】
2 水質測定器、第1水質測定器
3 ポンプ、第1ポンプ
5 第2水質測定器
6 第3水質測定器
7 第2ポンプ
10 薬品添加率決定装置