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特開2023-23743ジルコニア系セラミックス仮焼結体及びその製造方法、並びに前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなる歯科用ジルコニアミルブランク及び該歯科用ジルコニアミルブランクを用いた歯科用補綴物の製造方法
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  • 特開-ジルコニア系セラミックス仮焼結体及びその製造方法、並びに前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなる歯科用ジルコニアミルブランク及び該歯科用ジルコニアミルブランクを用いた歯科用補綴物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023743
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ジルコニア系セラミックス仮焼結体及びその製造方法、並びに前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなる歯科用ジルコニアミルブランク及び該歯科用ジルコニアミルブランクを用いた歯科用補綴物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20230209BHJP
   C04B 35/626 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20230209BHJP
   A61K 6/831 20200101ALI20230209BHJP
   A61K 6/84 20200101ALI20230209BHJP
【FI】
C04B35/488
C04B35/626 200
A61K6/818
A61K6/831
A61K6/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129542
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明香里
(72)【発明者】
【氏名】原 裕
(72)【発明者】
【氏名】中島 慶
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA13
(57)【要約】
【課題】 歯科用ジルコニアミルブランクとして使用されるジルコニア系セラミックス仮焼結体において、良好な切削加工性を維持しながら、切削加工時の負荷及び落下等の偶発的な負荷による欠けや割れを抑制できるジルコニア系セラミックス仮焼結体を提供する。
【解決手段】 たとえば、従来のジルコニア系セラミックス仮焼結体の原料粉体として使用されている“安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニア粉体に高強度化のためにアルミナ添加剤を添加した粉体”:100質量部に対して平均1次粒子径が1~500nmである非晶質二酸化ケイ素粒子等からなる二酸化ケイ素源材料を二酸化ケイ素換算の合計質量部で0.05~5.0質量部配合した粉体を600~1200℃で仮焼結することにより、結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしの接合部となるネック部を非晶質性二酸化ケイ素で覆うようにする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を基本構造とするジルコニア系セラミックス仮焼結体であって、
安定化剤、酸化アルミニウム添加剤及び非晶質性二酸化ケイ素を含み、
前記ネットワーク骨格を構成する結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量:100質量部に対する前記安定化剤及び前記酸化アルミニウム添加剤の含有量が、夫々、安定化剤:4~14質量部及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部であり、
前記結晶性酸化ジルコニウム粒子、前記安定化剤及び前記酸化アルミニウム添加剤の総質量:100質量部に対する前記非晶質性二酸化ケイ素の含有量が0.05~5.0質量部であり、
前記非晶質性二酸化ケイ素の少なくとも一部は前記ネットワーク骨格の前記ネック部の表面を覆っている、
ことを特徴とする前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体。
【請求項2】
結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤を含み非晶質性二酸化ケイ素を含まないジルコニア系セラミックス完全焼結体であって、結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量に対する安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の含有量が前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体における含有量と同一である完全焼結体の理論密度に対する前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体の密度の割合として定義される相対密度が、45~65%である、請求項1に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体。
【請求項3】
前記非晶質性二酸化ケイ素が前記ネットワーク骨格におけるネック部の表面を覆うように付着している、請求項1又は2に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体を製造する方法であって、
結晶性酸化ジルコニウム粉体:100質量部、安定化剤:4~14質量部、及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部からなり、完全焼結することにより安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを与えるベース粉体:100質量部と、動的光散乱法で測定される平均1次粒子径が1~500nmである非晶質二酸化ケイ素粒子及び/又は焼成することにより二酸化ケイ素化合物に転化し得るケイ素含有物質からなる二酸化ケイ素源材料:二酸化ケイ素換算の合計質量部で0.05~5.0質量部と、を含み、前記ベース粉体と前記二酸化ケイ素源材料とが均一に分散している原料組成物を調製する原料組成物調製工程;
前記原料組成物を成形して所定の形状を有する成形体を得る成形工程;並びに
600~1200℃で前記成形体を焼成する仮焼結工程;
を含み、
前記仮焼結工程で、前記結晶性酸化ジルコニウム粉体を構成する粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を形成すると共に、前記ネットワーク骨格の表面に非晶質性二酸化ケイ素が付着したジルコニア系セラミックス仮焼結体を得る、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
前記原料組成物調製工程において、前記二酸化ケイ素源材料として動的光散乱法で測定される平均1次粒子径が5~100nmである非晶質ナノシリカ粒子及び/又はケイ素1分子換算の分子量が500以下である有機ケイ素化合物を使用し、前記原料組成物工程において、分散媒の存在下に前記ベース粉体と、前記二酸化ケイ素源材料と、を混合して前記原料組成物を調製し、
得られた分散媒を含む原料組成物から分散媒を除去した後に前記成形工程を行う、
請求項4に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体の製造方法。
【請求項6】
分散媒中に前記ベース粉体が分散したスラリー又は分散液と、分子量が500以下である前記有機ケイ素化合物の溶液及び/又は分散媒中に前記ナノシリカ粒子が分散したゾルと、を混合する、請求項5に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体によって構成される被切削加工部を有する、ことを特徴とする歯科用ジルコニアミルブランク。
【請求項8】
CAD/CAMシステムを用いて請求項7に記載の歯科用ジルコニアミルブランクの被切削加工部を切削加工することにより、目的とする歯科用補綴物の形状に対応する形状を有する、前記複合材料からなる半製品を得る工程;及び
前記工程で得られた半製品を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結して歯科用ジルコニアセラミックス補綴物を得る本焼結工程;
を含む、歯科用ジルコニアセラミックス補綴物の製造方法。
【請求項9】
安定化剤が固溶した同種又は異種のジルコニア結晶どうしが接合した多結晶体構造中に添加剤としての酸化アルミニウム結晶粒が分散した構造を基本構造として有し、二酸化ケイ素を更に含んでなるジルコニア複合セラミックスを製造する方法であって、
請求項1~3の何れか1項に記載のジルコニア系セラミックス仮焼結体を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結する本焼結工程を含む、
ことを特徴とするジルコニア複合セラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア系セラミックス仮焼結体及びその製造方法、並びに前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなる歯科用ジルコニアミルブランク及び該歯科用ジルコニアミルブランクを用いた歯科用補綴物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICTの発展により歯科分野において、コンピュータ支援設計(CAD:Computer Aided Design)やコンピュータ支援製造(CAM:Computer Aided Manufacturing)技術の導入が進んでいる。たとえば、歯冠補綴物の作製に関しては、口腔内の撮影画像から、CAD/CAM装置を用いて、非金属材料からなる歯科加工用ブランクに切削加工を施して歯科用補綴物を成形するCAD/CAMシステムが多用されるようになってきている。ここで、歯科加工用ブランクとは、CAD/CAMシステムにおける切削加工機に取り付け可能にされた被切削体(ミルブランクとも呼ばれる。)を意味し、通常は、被切削加工部と、これを切削加工機に取り付け可能にするための保持部と、を有する。そして、被切削加工部としては、直方体や円柱の形状に成形された(ソリッド)ブロック又は板状若しくは盤状に形成された(ソリッド)ディスク等が一般的に知られている。
【0003】
非金属材料としては、強度や靭性に優れ、審美性の高い歯科用補綴物を作製できることから、ジルコニア系セラミックス材料が使用されることが多い。完全焼結されたジルコニア系セラミックス材料は、その強度ゆえに切削加工が難しいため、CAD/CAMシステムを用いてジルコニア系セラミックスからなる歯科用補綴物(以下、「ジルコニア補綴物」ともいう。)を作製する場合には、歯科用ジルコニアミルブランク(単に、「ジルコニアミルブランク」ともいう。)の被切削加工部としては、比較的低い焼結温度で仮焼結したジルコニア系セラミックス仮焼結体が一般的に用いられている。そして、高温での本焼結を行った際に発生する収縮等を考慮したCADに基づいて、CAMにより最終的に得られる補綴物の形状に対応する形状に切削加工してから、本焼結を行って緻密化・高強度化されたジルコニア補綴物が作製されている。
【0004】
ジルコニア系セラミックスに関しては、純粋なジルコニア(酸化ジルコニウム)は、温度によって体積変化を伴う相転移を起こすため、焼結後の冷却過程において体積変化による応力によってクラックが発生して低強度化を招くことがある。そして、このような相転移を防ぐために、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの安定化剤を添加して、冷却しても低温で安定な単斜晶に転移せずに、高温で安定な正方晶又は正方晶と立方晶との混晶系として存在することができるようにした安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアが開発されている。ジルコニアミルブランクに使用されるジルコニア原料粉末としても、このような安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアが使用され、更に高強度化のためにアルミナ(添加剤)を添加したものが一般的に使用されている。例えば特許文献1には、常圧焼結することにより特に前歯用義歯として適した透光性及び強度を兼備したジルコニア焼結体を与えることができる原料粉末として、「4.0mol%を超え6.5mol%以下のイットリアと、0.1wt%未満のアルミナを含有し、BET比表面積が8~15m/gであることを特徴とするジルコニア粉末」が記載されている。
【0005】
さらに特許文献2には、このようなジルコニア粉末からなる成形体を本焼結して得られる安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアからなる歯科用補綴物の接着性を改良するための技術として安定化又は部分安定化ジルコニア仮焼結体の表層部に、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)及び硝酸アルミニウム九水和物からなる触媒を水に混合して得たゾル等からなる浸透剤を浸透させてから本焼結し、その後表層部をエッチングする技術が開示されている。
【0006】
ところで、ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなるジルコニアミルブランクにおいては、CAM装置に設置する際の締め付け応力や切削加工時にも振動等により割れや欠けが発生しやすいという問題が指摘されている(特許文献3参照)。そして、特許文献3によれば、CAM装置と接合する外周部を円筒状の樹脂製アダプターで覆うことにより、上記問題を解決できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/098765号パンフレット
【特許文献2】特表2007-534368号公報
【特許文献3】特開2019-72228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されている技術によれば、樹脂製アダプターを用いることにより、CAM装置への取り付け時や切削加工時の割れや欠けの発生は防止することはできるものの安定化又は部分安定化ジルコニア仮焼結体の強度自体を高めるものではないため、安定化又は部分安定化ジルコニア仮焼結体を製造する際や取扱う際の負荷や偶発的な落下等による割れや欠けの発生を防止することはできない。また、ジルコニアミルブランクの仮焼結温度を高くして緻密化による強度向上を図った場合には、切削加工性が低下してしまう。
【0009】
そこで本発明は、良好な切削加工性を維持しながら、切削加工時の負荷や落下等の偶発的な負荷などにより欠けや割れが発生することを抑制できるジルコニア系セラミックス仮焼結体及びその製造方法を提供し、延いては上記ジルコニア系セラミックス仮焼結体からなる歯科用ジルコニアミルブランク及び該歯科用ジルコニアミルブランクを用いた歯科用補綴物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、隣接する結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を基本構造とするジルコニア系セラミックス仮焼結体であって、
安定化剤、酸化アルミニウム添加剤及び非晶質性二酸化ケイ素を含み、
前記ネットワーク骨格を構成する結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量:100質量部に対する前記安定化剤及び前記酸化アルミニウム添加剤の含有量が、夫々、安定化剤:4~14質量部及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部であり、
前記結晶性酸化ジルコニウム粒子、前記安定化剤及び前記酸化アルミニウム添加剤の総質量:100質量部に対する前記非晶質性二酸化ケイ素の含有量が0.05~5.0質量部であり、
前記非晶質性二酸化ケイ素の少なくとも一部は前記ネットワーク骨格の前記ネック部の表面を覆っている、
ことを特徴とする前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体である。
【0011】
上記形態のジルコニア系セラミックス仮焼結体(以下、「本発明の仮焼結体」ともいう。)においては、結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤を含み非晶質性二酸化ケイ素を含まないジルコニア系セラミックス完全焼結体であって、結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量に対する安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の含有量が前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体における含有量と同一である完全焼結体の理論密度に対する前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体の密度の割合として定義される相対密度が、45~65%である、ことが好ましい。
【0012】
また、前記非晶質性二酸化ケイ素が前記ネットワーク骨格におけるネック部の表面を覆うように付着している、ことが好ましい。
【0013】
本発明の第二の形態は、本発明の仮焼結体を製造する方法であって、
結晶性酸化ジルコニウム粉体:100質量部、安定化剤:4~14質量部、及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部からなり、完全焼結することにより安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを与えるベース粉体:100質量部と、動的光散乱法で測定される平均1次粒子径が1~500nmである非晶質二酸化ケイ素粒子及び/又は焼成することにより二酸化ケイ素化合物に転化し得るケイ素含有物質からなる二酸化ケイ素源材料:二酸化ケイ素換算の合計質量部で0.05~5.0質量部と、を含み、前記ベース粉体と前記二酸化ケイ素源材料とが均一に分散している原料組成物を調製する原料組成物調製工程;
前記原料組成物を成形して所定の形状を有する成形体を得る成形工程;並びに
600~1200℃で前記成形体を焼成する仮焼結工程;
を含み、
前記仮焼結工程で、前記結晶性酸化ジルコニウム粉体を構成する粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を形成すると共に、前記ネットワーク骨格の表面に非晶質性二酸化ケイ素が付着したジルコニア系セラミックス仮焼結体を得る、
ことを特徴とする、前記方法である。
【0014】
上記形態の製造方法(以下、「本発明の仮焼結体製法」ともいう。)においては、前記原料組成物調製工程において、前記二酸化ケイ素源材料として動的光散乱法で測定される平均1次粒子径が5~100nmである非晶質ナノシリカ粒子及び/又はケイ素1分子換算の分子量が500以下である有機ケイ素化合物を使用し、前記原料組成物工程において、分散媒の存在下に前記ベース粉体と、前記二酸化ケイ素源材料と、を混合して前記原料組成物を調製し、得られた分散媒を含む原料組成物から分散媒を除去した後に前記成形工程を行う、ことが好ましい。また、当該好ましい態様においては、分散媒中に前記ベース粉体が分散したスラリー又は分散液と、ケイ素1分子換算の分子量が500以下である前記有機ケイ素化合物の溶液及び/又は分散媒中に前記ナノシリカ粒子が分散したゾルと、を混合する、ことが好ましい。
【0015】
本発明の第三の形態は、本発明の仮焼結体によって構成される被切削加工部を有する、ことを特徴とする歯科用ジルコニアミルブランク(以下、「本発明のジルコニアミルブランク」とも言う。)である。
【0016】
本発明の第四の形態は、CAD/CAMシステムを用いて本発明のジルコニアミルブランクの被切削加工部を切削加工することにより、目的とする歯科用補綴物の形状に対応する形状を有する、前記複合材料からなる半製品を得る工程;及び
前記工程で得られた半製品を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結して歯科用ジルコニアセラミックス補綴物を得る本焼結工程;
を含む、歯科用ジルコニアセラミックス補綴物(以下、「本発明の補綴物」とも言う。)の製造方法である。
【0017】
本発明の第五の形態は、安定化剤が固溶した同種又は異種のジルコニア結晶どうしが接合した多結晶体構造中に添加剤としての酸化アルミニウム結晶粒が分散した構造を基本構造として有し、二酸化ケイ素を更に含んでなるジルコニア複合セラミックスを製造する方法であって、本発明のジルコニア系セラミックス仮焼結体を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結する本焼結工程を含む、ことを特徴とするジルコニア複合セラミックスの製造方法(以下、「本発明の本焼結体製法」ともいう。)である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の仮焼結体は、切削加工性が良好で、且つ欠けや割れが起こり難いという優れた特長を有する。また、本発明の仮焼結体製法によれば、上記本発明の仮焼結体を効率よく製造することができる。
【0019】
そして、本発明のジルコニアミルブランクはその被切削加工部が、このような特長を有する本発明のジルコニア系セラミックス仮焼結体で構成されるため、樹脂製アダプターを用いることなく、CAM装置に設置する際の締め付け応力や切削加工時の振動等により割れや欠けの発生を防止することができるばかりでなく、取り扱い時の偶発的な負荷による破損も起こり難い。
【0020】
さらに、本発明の本焼結体製法で得られるジルコニア複合セラミックスは、二酸化ケイ素を含有しない安定化又は部分安定化ジルコニア本焼結体と比べて二軸曲げ強さが有意に高いという特長を有し、本発明のジルコニアミルブランクを用いて作製される歯科用ジルコニアセラミックス補綴物も、このような特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本図は、実施例1で得られた本発明のジルコニア系セラミックス仮焼結体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】本図は、実施例7で得られた本発明のジルコニア系セラミックス仮焼結体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の仮焼結体が上記したような効果を奏する理由は必ずしも明らかではなく、また、本発明は何ら論理に拘束されるものではないが、走査型電子顕微鏡観察の結果、隣接する結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしがネック部を介して相互に連結した開口空隙を有するネットワーク骨格におけるネック部の表面が非晶質性二酸化ケイ素で覆われていたことから、破壊起点となり易いネック部に僅かにガラス層が形成されることで応力集中が起こり難くなったか、応力によって発生した微細クラックが非晶質性二酸化ケイ素の超微粒子内で分岐して伝播する途中で応力が緩和されるためではないかと推定している。そして、形成されるガラス層がごく微量であり、また、非晶質性二酸化ケイ素の超微粒子凝集体は強度が高くないことから、切削性の低下は起こらなかったものと推定される。
【0023】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。
【0024】
1.本発明の仮焼結体
本発明の仮焼結体は、所定量の非晶質性二酸化ケイ素を含む点を除いて、従来のジルコニアミルブランクの被切削加工部として用いられる“安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニア粉体に高強度化のためにアルミナ添加剤を添加したもの(従来の原料粉体)”の仮焼体(従来の仮焼結体)と同様に、結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤を含み、これらの含有割合も従来の仮焼結体における範疇である。そして、その基本構造も従来の仮焼結体における基本構造と同様である。すなわち、本発明の仮焼結体は、隣接する結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を基本構造として有する。このネットワーク骨格における安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の存在形態も従来の仮焼結体における存在形態ととくに変わることはなく、例えば、前記安定化剤は、基本的には結晶性酸化ジルコニウム粒子内に固溶して存在し、酸化アルミニウム添加剤を構成する酸化アルミニウム粒子は結晶性酸化ジルコニウム粒子を置換する形でネットワーク内に組み込まれ、一部はネットワーク表面に付着する。また、場合によっては、一部の酸化アルミニウムは、結晶性酸化ジルコニウム粒子内において固溶し或いは析出して存在する。
【0025】
本発明の仮焼結体は、非晶質性二酸化ケイ素を所定量、具体的には結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の総質量100質量部に対し0.05~5.0質量部含み、且つ、該非晶質性二酸化ケイ素が前記ネットワーク骨格の前記ネック部の表面を覆っている点に最大の特徴を有する。後述する比較例7に示されるように、非晶質性二酸化ケイ素が上記基準で0.05~5.0質量部含まれる場合であっても、非晶質性二酸化ケイ素の凝集体がローカルに分散して存在し、ネック部の表面を覆っていない場合には、耐チッピング性を改良することができない。
【0026】
なお、非晶質性二酸化ケイ素が前記ネットワーク骨格の前記ネック部の表面を覆うとは、非晶質性二酸化ケイ素の一部がネック部の表面を覆うように接触して存在することを意味し、ネック部以外の表面に存在していてもよい。このような本発明の仮焼結体における非晶質性二酸化ケイ素の存在状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により確認することができる。たとえば、図1に示されるように、ネットワーク骨格のネック部の表面を覆うように非晶質性二酸化ケイ素の超微粒子が多数凝集して付着する形態(図1では粒子径:約10nm程度の非晶質性二酸化ケイ素の超微粒子がネック部の表面を覆っており、表面が覆われたネック部がネック部の大部分を占めている。)、又は、図2に示されるように、ネック部の表面を包摂又はコートするような形態(図2では透明性の高い非晶質性二酸化ケイ素がネック部を覆っており、表面が覆われたネック部の数は、少なくともネック部の総数の30%を占めている。)として確認できる。
【0027】
本発明の仮焼結体においては走査型電子顕微鏡(SEM)観察したときに、非晶質二酸化ケイ素は大きく偏在したり、(例えば、直径10μm以上の球状体領域内に非晶質性二酸化ケイ素が全く存在しないといったように)疎らに存在したりすることなく、多少の粗密があっても前記ネットワークの全体にわたって分布し、たとえば50000倍の拡大視野において、前記ネットワークに多数存在するネック部の総数の20%以上、特に50%以上、最も好ましくは70%以上のネック部の表面が非晶質性二酸化ケイ素で覆われていることが好ましい。
【0028】
以下、本発明の仮焼結体の成分、組成及び構造的特徴について詳しく説明する。
【0029】
本発明の仮焼結体において、結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤としては、従来の仮焼結体におけるものと同じものが特に制限なく使用できる。ただし、安定化剤は酸化ジルコニウム100質量部に対して5~14質量部含まれる必要があり、5.5~12質量部含まれることが好ましい。酸化アルミニウム添加剤は酸化ジルコニウム100質量部に対し0.005~0.3質量部含まれる必要があり、0.005~0.1質量部含まれることが好ましい。
【0030】
非晶質性二酸化ケイ素は、結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の総質量100質量部に対し0.05~5.0質量部である必要がある。非晶質性二酸化ケイ素の含有量が0.05質量部より少ない場合には、チッピング耐性向上効果が得られない可能性があり、含有量が5.0質量部より多い場合には、非晶質性二酸化ケイ素部が仮焼結体中において低強度部となりチッピング耐性が低下する可能性があるだけでなく、本焼結後に非晶質性二酸化ケイ素の強度がジルコニアと比較し低いことから強度が低下し歯科用補綴物として適さない可能性がある。このような観点から、非晶質性二酸化ケイ素の上記基準の含有量は、0.1~3.0質量部であることが好ましく、0.1~1.0質量部であることがより好ましい。
【0031】
本発明の仮焼結体中に含まれる二酸化ケイ素は非結晶性である必要がある。後述する比較例6に示されるように、二酸化ケイ素が上記基準で0.05~5.0質量部含まれていても結晶性である場合には、耐チッピング性を改良することができない。
【0032】
なお、本発明における非晶性の二酸化ケイ素とは、(1)本発明の仮焼結体と、(2)二酸化ケイ素を含まず且つ結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量に対する安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の含有量が同一である仮焼結体と、についてX線回折装置を用いて測定したときに、(1)で得られた回折パターンにおいて、二酸化ケイ素結晶(石英、クリストバライトなど)に由来する明瞭な回折ピークが確認できず、(2)で得られた回折パターンと比較して、非晶質二酸化ケイ素に由来するハローピーク以外には違いが見られないような状態で存在する二酸化ケイ素であることを意味する。
【0033】
本発明の仮焼結体は、切削性の観点から、相対密度が45~65%、特に48~55%であることが好ましい。ここで、相対密度とは、「結晶性酸化ジルコニウム粒子、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤を含み非晶質性二酸化ケイ素を含まないジルコニア系セラミックス完全焼結体であって、結晶性酸化ジルコニウム粒子の総質量に対する安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の含有量が前記ジルコニア系セラミックス仮焼結体における含有量と同一である完全焼結体」、すなわち、酸化ジルコニウム、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤からなり、これらの組成が同一であるジルコニア完全焼結体の理論密度:d(g/cm)に対するジルコニア系セラミックス仮焼結体の密度:d(g/cm)の割合:(d/d)×100(%)して定義されるものである。
【0034】
なお、上記ジルコニア完全焼結体の理論密度は、安定化剤の種類及び含有量並びにアルミナ添加剤の含有量によって異なり、正方晶ジルコニア完全焼結体の理論密度である6.10g/cmからこれらの含有量が増えるに従って、僅かに減少する傾向がある。例えば特許文献1の表1には、イットリア、アルミナ配合系のジルコニアの理論密度:dが示されているので、以下に転載する。
【0035】
【表1】
【0036】
2.本発明の仮焼結体製法
本発明の仮焼結体製法は、
結晶性酸化ジルコニウム粉体:100質量部、安定化剤:4~14質量部、及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部からなり、完全焼結することにより安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを与えるベース粉体:100質量部と、二酸化ケイ素及び/又は焼成することにより二酸化ケイ素化合物に転化し得るケイ素含有物質からなる二酸化ケイ素源材料:二酸化ケイ素換算の合計質量部で0.05~5.0質量部と、を含み、前記ベース粉体と前記二酸化ケイ素源材料とが均一に分散している原料組成物を調製する原料組成物調製工程;
前記原料組成物を成形して所定の形状を有する成形体を得る成形工程;並びに
600~1200℃で前記成形体を焼成する仮焼結工程;
を含み、
前記仮焼結工程で、前記結晶性酸化ジルコニウム粉体を構成する粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有するネットワーク骨格を形成すると共に、前記ネットワーク骨格の表面に非晶質性二酸化ケイ素が付着したジルコニア系セラミックス仮焼結体を得る、ことを特徴とする。
【0037】
以下これら各工程について詳しく説明する。
【0038】
2-1.原料組成物調製工程
原料組成物調製工程では、結晶性酸化ジルコニウム粉体、安定化剤、及び酸化アルミニウム添加剤からなるベース粉体と、二酸化ケイ素源材料とが均一に分散している原料組成物を製造する。
【0039】
(1)ベース粉体
ベース粉体は、結晶性酸化ジルコニウム粉体:100質量部、安定化剤:4~14質量部、及び酸化アルミニウム添加剤:0.005~0.3質量部からなり、完全焼結することにより安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを与える粉体組成物を意味する。
【0040】
上記結晶性酸化ジルコニウム粉体は、結晶性酸化ジルコニウム粒子からなるものであれば特に限定されないが、安定化剤が固溶して正方晶又は正方晶と立方晶との混晶系の結晶性を有する結晶性酸化ジルコニウム粒子(安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアからなる粒子)で構成されるものを使用することが好ましく、結晶の相変態が生じにくいという理由及び焼結により粒成長が進みすぎないという理由から、平均結晶子径が0.001μm~50μm、特に0.003μm~20μmであるものを使用することが好ましい。また、粉体の取り扱い易さの観点から、ベース粉体の結晶性酸化ジルコニウム粉体の平均二次粒子径は0.01~500μm、特に0.05~100μmが好ましい。
【0041】
安定化剤としては、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化エルビウム等の従来の酸化ジルコニウムの安定化剤として用いられるものを制限なく用いることができるが、特に酸化イットリウムが好ましい。なお、安定化剤は、上記したように、結晶性酸化ジルコニウム粉体に固溶した形で配合されることが好ましい。安定化剤の含有量は結晶性酸化ジルコニウム粉体100質量部に対して4~14質量部である必要があり、5~11質量部が好ましい。安定化剤の含有量が4質量部より少ない場合には、完全焼結した際に安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアとならない可能性があり、含有量が14質量部より多い場合には、完全焼結後のジルコニア焼結体が十分の強度を有さず、歯科用補綴物に適さない可能性がある。
【0042】
酸化アルミニウム添加剤は焼結助剤としてベース粉体に含まれる。その含有量は結晶性酸化ジルコニウム粉体100質量部に対して0.005~0.3質量部である必要があり、0.005~0.1質量部が好ましい。酸化アルミニウム添加剤の含有量が0.005質量部より少ない場合には、焼結助剤としての効果が得られない可能性があり、含有量が0.3質量部より多い場合には、酸化ジルコニウムとの屈折率差から透光性が低下し、完全焼結後のジルコニア焼結体が歯科用補綴物に適さない可能性がある。
【0043】
ベース粉体は、その用途等に応じて、顔料、バインダー、微細フィラー、遮光剤、蛍光剤等の「その他成分」を適宜含むことができる。
【0044】
顔料としては、酸化エルビウム、酸化コバルト、酸化鉄、酸化マンガン等の無機系顔料が好適に使用できる。また、焼結前は白色であっても、焼結後に着色し顔料として使用可能であるものも使用できる。また、バインダー成分としては、アクリル系バインダーやオレフィン系バインダー、ワックス等が好適に使用でき、成形方法等に応じて適宜選択して使用される。
【0045】
(2)二酸化ケイ素源材料
二酸化ケイ素源材料とは、動的光散乱法で測定される平均1次粒子径が1~500nmである非晶質二酸化ケイ素粒子及び/又は焼成することにより二酸化ケイ素化合物に転化し得るケイ素含有物質を意味し、仮焼結工程時に非晶質性二酸化ケイ素となるものであれば特に限定されず使用できる。
【0046】
二酸化ケイ素源材料として非晶質二酸化ケイ素粒子を使用する場合は、効果の観点から、動的光散乱法(例えば、測定装置として大塚電子株式会社製ELSZ-2000ZSを用い、分散媒として水を使用)で測定される平均1次粒子径が5~100nm、特に5~50nmである非晶質ナノシリカ粒子であることが好ましい。
【0047】
二酸化ケイ素源材料としてケイ素含有物質を使用する場合の、当該ケイ素含有物質は、焼成することにより二酸化ケイ素化合物に転化し得るものであれば特に限定されず、無機あるいは有機のケイ素化合物が使用できる。焼成することにより二酸化ケイ素化合物に容易に転化し得るという観点から、有機ケイ素化合物を使用することが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、Si―O結合を有し、ケイ素1分子換算の前記有機ケイ素化合物の分子量が500以下である有機ケイ素化合物が好適である。好適に使用できる有機ケイ素化合物を例示すれば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリエチルシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、シリコーンオイルなどを挙げることができる。ケイ素含有量が多い点から、テトラエトキシシラン及び/又はテトラメトキシシランを使用することが特に好ましい。
【0048】
(3)調製方法
原料組成物調製工程では、ベース粉体と二酸化ケイ素源材料とが均一に分散している原料組成物を製造する。この時の調製方法は、ベース粉体とケイ素含有化合物が均一に分散する方法であれば特に限定されないが、分散媒の存在下に前記ベース粉体と前記二酸化ケイ素源材料と、を混合して前記原料組成物を調製し、得られた分散媒を含む原料組成物から分散媒を除去する湿式調製が好ましい。
【0049】
ベース粉体と二酸化ケイ素源材料とを混合する方法としては、分散媒中に前記ベース粉体が分散したスラリー又は分散液と、有機ケイ素化合物の溶液及び/又は分散媒中に前記ナノシリカ粒子が分散したゾルと、を混合するのがより好ましい。湿式調製で用いる分散媒としては、二酸化ケイ素源材料が分散もしくは溶解する溶媒であれば限定されず、例えば、水、エタノール等のアルコール類、アセトン等公知のものが使用可能であるが、安全性及び溶媒除去の容易性の観点から水もしくはアルコール類を使用することが好ましい。さらに、仮焼結工程後に結晶性酸化ジルコニウム粉体が形成するネットワーク骨格の表面に非晶質性二酸化ケイ素が付着し易いことから、調製時にジルコニア粉体の二次粒子を崩さない混合方法がより好ましい。具体的には、湿式下での撹拌、振盪、振動、超音波等による方法が採用できるが、湿式下での撹拌、振盪による混合がより好ましい。
【0050】
分散媒を含む原料組成物から分散媒を除去する方法としては、分散媒が除去できる方法であれば特に限定されないが、溶媒除去にかかる時間の短さや溶媒をほぼ全て除去できるという観点から、減圧乾燥法及び/又は加熱乾燥法を採用することが好ましい。ここで、減圧乾燥法とは、例えば800ヘクトパスカル以下での減圧下にて溶媒を除去する方法であり、加熱乾燥法とは、室温以上の温度にて溶媒を除去する方法であり、減圧下で加熱することにより、有機溶媒の沸点よりも低い温度で有機溶媒の除去(乾燥)を行うことができる。高温下での処理を必要としないと言う観点から、加熱乾燥法を採用する場合でも、適宜減圧乾燥法と併用する等して100℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。さらに、スプレードライ等を用いて乾燥と共に造粒を行ってもよい。
【0051】
2-2.成形工程
成形工程では、原料組成物調製工程にて製造した原料組成物を成形し、所定の形状を有する成形体を製造する。このとき成形方法は、従来の原料組成物を用いて焼結或いは仮焼前のミルブランク用成形体を得る従来の方法と特に変わる点は無く、プレス成形、押出成形、射出成形、鋳込成形、テープ成形、積層造形による成形、粉体造形による成形、光造形による成形等、粉体成形法或いはグリーン体成形法として知られている方法が特に制限なく使用できる。また、多段階的な成形を施してもよい。例えば、原料組成物を一軸プレス成形した後に、さらにCIP(Cold Isostatic Pressing;冷間静水等方圧プレス)処理を施したものでもよい。また、成形工程において、複数種の原料組成物を積層し成形してもよい。
【0052】
成形工程で得られる成形体の形状は、目的とするミルブランクの形状に応じて適宜決定すればよいが、通常は円盤状のもの(ディスクタイプ)、或いは直方体又は略直方体形状のもの(ブロックタイプ)などが一般的である。
【0053】
2-3.仮焼結工程
仮焼結工程では、前記成形工程で得られた成形体を本焼結処理よりも低い温度で領域である600~1200℃で焼結することで本発明の仮焼結体を得る。仮焼結工程の前に必要に応じて、600℃未満の温度で脱脂処理を行ってもよい。ここで、脱脂処理とは、前記成形工程で得られた成形体に含まれる水分、溶媒、バインダーなどを揮発除去或いは分解除去する処理を意味する。また、仮焼結工程を、順次温度を上げる多段で行い、低温での仮焼結工程で脱脂処理を行ってもよい。
【0054】
仮焼結工程では、加熱により結晶性酸化ジルコニウム粉体を構成する結晶性酸化ジルコニウム粒子の表面における分子や原子の拡散(凝着、融着)現象を引き起こし、前記結晶性酸化ジルコニウム粉体を構成する粒子どうしがネック部を介して相互に連結した、開口空隙を有する(多結晶体からなる)ネットワーク骨格が形成される。そして、このとき同時に、二酸化ケイ素源材料として前記ケイ素含有物質を使用した場合には、該ケイ素含有物質が結晶性酸化ジルコニウム粒子の表面で非晶質性二酸化ケイ素へと転化すると共にネック部が非晶質性二酸化ケイ素で覆われる。また、二酸化ケイ素源材料として前記非晶質二酸化ケイ素粒子を使用した場合には、結晶性酸化ジルコニウム粒子の表面に付着した該非晶質二酸化ケイ素粒子がネック部で凝集してその表面を覆うようになる。
【0055】
仮焼結温度が600℃より低い場合には、加工の際に形状を保つことのできる強度が得られない可能性があり、1200℃より高い場合には、本発明の仮焼結体の密度が高くなり、良好な切削加工性が得られない可能性がある。得られる仮焼結体の強度を取り扱い易く且つ加工しやすい強度まで向上させるという観点から、仮焼結温度は800~1150℃とすることが好ましい。
【0056】
脱脂及び/又は仮焼処理の方法としては、従来から知られている方法が特に制限されず使用でき、連続的に行っても、多段階的に行ってもよいが、二酸化ケイ素源材料として有機ケイ素化合物を使用する際は、有機物の除去の観点から酸素を含む空気雰囲気下で行うことが好ましい。なお、脱脂及び/又は仮焼処理は、その前工程である成形工程と同一の装置を用いた方法、例えばSPS(放電プラズマ焼結:Spark Plasma Sintering)法やHP(ホットプレス)法等により、連続的に行うこともできる。
【0057】
なお、前記原料組成物の組成によって本発明の仮焼結体の成分組成が決定され、本仮焼結工程によって本発明の仮焼結体における非晶質性二酸化ケイ素の存在形態が決定される。そして、非晶質性二酸化ケイ素の存在形態はSEM観察によってある程度定量的に確認することはできるものの厳密性には限界がある。したがって、本発明の仮焼結体は本発明の製造方法で得られる仮焼結体であるともいえる。
【0058】
3.本発明のジルコニアミルブランク
本発明のジルコニアミルブランクは、被切削加工部に本発明の仮焼結体を用いること以外は、従来のジルコニアミルブランクと特に変わる点は無い。
【0059】
本発明のジルコニアミルブランクの形状は、目的とするミルブランクの形状に応じて適宜決定すればよいが、歯科用として用いられることから円盤状のもの(ディスクタイプ)、或いは直方体又は略直方体形状のもの(ブロックタイプ)などが一般的である。
【0060】
4.本発明の補綴物の製造方法
本発明の補綴物の製造方法は、
CAD/CAMシステムを用いて本発明のジルコニアミルブランクの被切削加工部を切削加工することにより、目的とする歯科用補綴物の形状に対応する形状を有する、前記複合材料からなる半製品を得る工程;及び
前記工程で得られた半製品を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結して歯科用ジルコニアセラミックス補綴物を得る本焼結工程;
を含むことを特徴とする。
【0061】
前記複合材料からなる半製品を得る工程では、CAD/CAMシステムを用いて本発明のジルコニアミルブランクの被切削加工部を切削加工することにより、目的とする歯科用補綴物の形状に対応する形状を有する、前記複合材料からなる半製品を得る。切削加工の際にはジルコニアミルブランクをCAM装置に取り付ける必要があるため、ミルブランクの形状は直方体や円柱の形状に成形された(ソリッド)ブロック状又は板状若しくは盤状に形成された(ソリッド)ディスク状が好ましく、必要に応じてこれを切削加工機に取り付け可能にするための保持部を有してもよい。
【0062】
得られた半製品は、CAD/CAMシステムを用いて切削加工後、技工エンジン等を用いてさらに形態を修正したり、表面を研磨したりしてもよい。また、必要に応じて、浸透タイプの着色剤や透明化液等を用いて色調の調整を行ってもよい。
【0063】
本焼成工程では、前記複合材料からなる半製品を得る工程で得られた半製品を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結し、歯科用ジルコニアセラミックス補綴物に変化させる。本焼結は、1200~1800℃で行うのが好ましく、1400~1600℃で行うことがより好ましい。本焼結の温度が1200℃以下の場合には、十分な焼結密度、透光性、及び強度が得られない可能性があり、焼結温度が1800℃より高い場合には、酸化ジルコニウムの粒成長が進みすぎることにより十分な強度が得られない可能性がある。
【0064】
焼結方法としては、従来から知られている方法が特に制限されず使用でき、焼結温度での保持時間は、30分~4時間が好ましい。
【0065】
また、本焼結工程後に、ダイヤモンドバーなどを用いた形態修正工程、ダイヤモンドペーストなどを用いた研磨工程を行ってもよい。さらに、色調をより天然歯に近づけ審美的にするために陶材等を本発明の歯科用ジルコニアセラミックス補綴物の表面に焼き付けてもよい。
【0066】
5.本発明の本焼結体製法
本発明の本焼結体製法は、
安定化剤が固溶した同種又は異種のジルコニア結晶どうしが接合した多結晶体構造中に添加剤としての酸化アルミニウム結晶粒が分散した構造を基本構造として有し、二酸化ケイ素を更に含んでなるジルコニア複合セラミックスを製造する方法であって、
本発明の仮焼結体を、1200℃を越え1800℃以下の温度で焼結する本焼結工程を含むことを特徴とする。
【0067】
そして、発明の本焼結体製法にて製造されるジルコニア複合セラミックスは、ジルコニア結晶どうしが接合した多結晶体構造の基本構造として有し、二酸化ケイ素をさらに含んでなるものであり、該二酸化ケイ素が結晶粒界に偏在しているという特徴を有し、さらに、安定化剤及び酸化アルミニウム添加剤の含有量が同一であるジルコニアセラミックスと比較して、JIS T6526:2018に従って測定される二軸曲げ強さが有意に高いという特長を有する。
【実施例0068】
本発明の仮焼結体は、隣接する結晶性酸化ジルコニウム粒子どうしの開口空隙を有するネットワーク骨格のネック部表層に非晶質性二酸化ケイ素を有する基本構造に主たる特徴を有するものであり、その製造方法も本発明の仮焼結体を製造する点に主たる特徴を有する。また、本発明の補綴物の製造方法及び本発明の本焼結体製法は、共に本発明の仮焼結体を本焼結して特定の機械強度を有するジルコニア複合セラミックスを得る点に主たる特徴を有する。そこで、本発明の仮焼結体を得る本発明の仮焼結体製法及び本発明の本焼結体製法について、実施例および比較例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0069】
先ず、各実施例および比較例で用いた原材料及びその略称・略号等について説明する。
【0070】
1.ベース粉体
・ZpexSmile:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.05質量%、酸化イットリウム含有量9.3質量%、理論密度:6.050g/cm、平均二次粒子径:17μm
・Zpex4:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.05質量%、酸化イットリウム含有量6.9質量%、理論密度:6.078g/cm、平均二次粒子径:17μm
・TZ-3YSB-E:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.26質量%、酸化イットリウム含有量5.2質量%、理論密度:6.085g/cm、平均二次粒子径:20μm。
【0071】
2.二酸化ケイ素源材料
・LUDOX-LS:GRACE社製二酸化ケイ素ゾル、含有量30質量パーセント、一次粒子径12nm、分散媒水
・LUDOX-SM:GRACE社製二酸化ケイ素ゾル、含有量30質量パーセント、一次粒子径7nm、分散媒水
・TEOS:テトラエトキシシランSi(OC、東京化成工業株式会社製、ケイ素1分子換算の分子量208g/mol
・KF-96A-6CS:信越化学工業株式会社製シリコーンオイル、ケイ素1分子換算の分子量74g/mol
・デカメチルシクロペンタシロキサン:TCI社製、ケイ素1分子換算の分子量74g/mol
・メタケイ酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬株式会社製、ケイ素1分子換算の分子量284g/mol
・TiO sol:株式会社大阪ガスケミカル社製二酸化チタンゾル、含有量5質量パーセント、一次粒子径3ナノメートル、分散媒水
・HZ-NB:テトラブトキシジルコニウムZr(OC4H9)4、北興化学工業株式会社製
・結晶性シリカ:石英砂、富士フィルム和光純薬株式会社製
・QS-102:乾式シリカ粉(非晶質、平均一粒子径:12nm、平均二次粒子径:70μm)、株式会社トクヤマ製。
【0072】
3.分散媒
・蒸留水:富士フィルム和光純薬株式会社製
・エタノール:富士フィルム和光純薬株式会社製。
【0073】
実施例1
(1)仮焼結体作製工程及び得られた仮焼結体の評価
ZpexSmile 30gと蒸留水 150gを秤量後、LUDOX―LS 0.2gを添加し、10分撹拌子を用いて混合した。その後、エバポレーターを用い、50℃にて減圧することで水を除去し、複合材料粉体を得た。
【0074】
得られた複合材料粉体1.5gを直径20mmのプレス用金型を用いて、最大荷重200MPaで一軸プレスすることにより円盤状の成形体(厚さ:1.45mm)を得た。その後、成形体を、リングファーネスを用いて、1000℃、30分の条件で仮焼結して仮焼結体(厚さ:1.45mm)を得た。得られた円盤状の仮焼結体の質量と体積から密度を算出し、これを理論焼結密度で除することにより相対密度を求めたころ、49.8%であった。さらに、得られた仮焼結体について、次のようにして含有する二酸化ケイ素の結晶性及び仮焼結体のチッピング耐性を評価したところ、二酸化ケイ素の存在状態は○であり、二酸化ケイ素は非晶質性であり、チッピング耐性は○であった。
【0075】
[二酸化ケイ素の結晶性の評価]
株式会社リガク社製のX線回折装置を用い、測定範囲2θ10~70deg.、ステップ幅0.05deg.、スキャンスピード40deg/minの条件で測定を行った。得られたスペクトルはベース粉体のみからなる仮焼結体のスペクトルと比較し、非結晶の存在を示すハローピーク以外に違いが見られないものについては非晶質性、違いが見られるものについては結晶質性とした。
【0076】
[チッピング耐性の評価]
仮焼結体を5枚作成し、円板状の仮焼結体を地面に平行にしながら高さ20cmから落とした後の試験片の様子を評価した。以下に評価基準を示す。
評価基準
○:5枚全て、割れや欠けが発生しなかった。
△:4枚もしくは3枚、割れや欠けが発生しなかった。
×:2枚以下、割れや欠けが発生しなかった。
【0077】
また、これとは別に、使用する粉体量を6.5gに変更、使用するプレス金型を15.5mm×19.5mm×20.5mmに変更、仮焼結時間を2時間に変更する以外は同様にして仮焼結体を得た。得られた角柱状の仮焼結体の切削加工性を次のようにして評価したところ、切削加工性は○であった。
【0078】
[切削加工性の評価]
得られた角柱状の仮焼結体の最も表面積が小さい面に切削加工機に取り付けるためのピンを接着した。その後、ローランド社製の切削加工機にて臼歯クラウン形状に切削加工を行い、切削加工性を評価した。以下に評価基準を示す。
評価基準
○:問題なく切削加工ができた
×:問題が発生し、切削加工ができなかった。ここでの問題とは、被切削加工部の破損、バーの破損、加工機のプログラム中のエラーなどを指す。
【0079】
(2)本焼成工程並びに得られた本焼結体の評価
得られた仮焼結体を電気炉にて1450℃、2時間の条件で焼結させ、本焼結体を得た。得られた本焼結体について、次のようにして二軸曲げ強さを評価したところ、二軸曲げ強さは1044MPaであった。
【0080】
[二軸曲げ強さの評価]
株式会社島津製作所社製の試験機を用い、JIS T6526:2018に従い、クロスヘッド速度1.0mm/min、支持円の直径10mm、圧子直径1.4mmの条件で測定を行った。また、下記式にて二軸曲げ強さを算出した。
δ=-0.2387×P×(X-Y)/b
X=(1+ν)×ln[(r2/r3)]+[(1-ν)/2]×(r2/r3)
Y=(1+ν)×[1+{ln(r1/r3)}]+(1-ν)×(r1/r3)
δ[MPa]:2軸曲げ強さ
P[N]:試験力
b[mm]:試験片厚さ
ν:ポアソン比(0.31)
r1[mm]:支持円半径
r2[mm]:圧子半径
r3[mm]:試験片半径
実施例2~15及び比較例1~6
ベース粉体の種類、二酸化ケイ素源材料の種類と配合量、分散媒の種類及び仮焼結体の温度を表2及び表3に示すように変える他は実施例1と同様にして仮焼結体及び焼結体を製造し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。なお、表2及び3中の「↑」は「同上」を意味する。
【0081】
比較例7
ZpexSmile 30gとQS-102 0.20gを秤量し、乾式、手振動にて10分間混合し、原料組成物を得た。
【0082】
得られた原料組成物は、実施例1と同様にして仮焼結体及び本焼結体を製造し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0083】
実施例1~15の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満たす仮焼結体を製造した場合に、図1に類似した結晶性ジルコニアネットワーク構造中のネック部表面に存在する二酸化ケイ素を確認し、十分な切削加工性と耐チッピング性を有する仮焼結体が得られ、さらに高い強度を有する本焼結体が得られることが分かる。
【0084】
これに対し、二酸化ケイ素源材料の含有量が本発明で規定する下限値未満である比較例1では、非晶質性二酸化ケイ素の含有量が少ないために、結晶性ジルコニアネットワーク構造中のネック部表面にごく微量の二酸化ケイ素の存在を確認したが、十分なチッピング耐性の向上効果が得られなかった。一方、二酸化ケイ素源材料の含有量が本発明で規定する上限値より多い比較例2では、十分なチッピング耐性が得られなかっただけでなく二軸曲げ強さが低下した。また、仮焼結温度が高い比較例3は、仮焼結温度を上げることで仮焼結体の緻密性を向上させた例であり、チッピング耐性が向上したものの切削加工性が低下した。
【0085】
ベース粉体に添加する化合物に二酸化ケイ素源材料以外を使用した比較例4及び比較例5では、チッピング耐性が得られなかった。さらに二酸化ケイ素源材料として結晶性を有する二酸化ケイ素を使用した比較例6では、仮焼後に非晶質性にならずチッピング耐性が得られず、非晶質性であるものの凝集体の状態でケイ素含有化合物を添加した比較例7は、非晶質シリカの凝集粒子(二次粒子)からなるQS-102を所謂ドライブレンドして原料粉体を調製した例であり、SEM観察の結果、非晶質シリカは凝集した二次粒子の状態で前記ネットワーク骨格からなるマトリックス中に分散しており(一次粒子がネック部の表面を覆うように存在せず)、チッピング耐性が得られなかった。
【0086】
参考例1~3(従来の仮焼結体を用いて従来のジルコニア焼結体を製造した例)
参考例1では、二酸化ケイ素源材料を使用しない以外は実施例1と同様にして仮焼結体及び本焼結体を得た。また参考例2及び3では、ベース粉体の種類を表4に示すように変える他は参考例1と同様にして仮焼結体及び本焼結体を製造した。なお、ベース粉体組成、仮焼結条件及び本焼結条件については、参考例1は実施例1と同じであり、参考例2及び3は、夫々実施例12及び15と同じである。得られた仮焼結体及び本焼結体の評価結果を表5に示す。
【0087】
表5に示されるように、実施例1、12及び15で得られた仮焼結体は同等の切削加工性を有しながらチッピング耐性が向上しており、さらに本焼結体の二軸曲げ強さは何れの場合も有意に向上している。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【符号の説明】
【0092】
1・・・ネットワーク骨格
2・・・結晶性酸化ジルコニウム(1次)粒子
3・・・非晶質性二酸化ケイ素
4・・・開口空隙
図1
図2